説明

III族窒化物半導体電子デバイス、III族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法、及びエピタキシャルウエハ

【課題】AlNからなる半導体表面上に設けられると共に向上されたトランジスタ特性を有するIII族窒化物半導体電子デバイスを提供する。
【解決手段】5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面21a上に、第1のエピタキシャル半導体層13はコヒーレントに設けられる。第2のエピタキシャル半導体層15は、第1のエピタキシャル半導体層13にヘテロ接合23aを成すように第1のエピタキシャル半導体層13上に設けられる。第1のエピタキシャル半導体層13がこの半導体表面21aへのコヒーレントな成長により、第1のエピタキシャル半導体層13は、半導体表面21aの格子定数に合わせて歪んであり、緩和していない。AlNに対してコヒーレントに設けられた第1のエピタキシャル半導体層13により、III族窒化物半導体電子デバイス11のトランジスタ特性が向上可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体電子デバイス、III族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法、及びエピタキシャルウエハに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、III族窒化物半導体積層ウエハ及びIII族窒化物半導体デバイスが記載されている。III族窒化物半導体積層ウエハ及びIII族窒化物半導体デバイスでは、二次元電子ガスの移動度を高め電流特性を向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−49486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、AlGaNチャネル層のシート抵抗(Rs)とX線ロッキングカーブ(XRC)の半値全幅との関係を示す。XRCの半値全幅が小さいほど、高電子移動度トランジスタのシート抵抗は小さい。特許文献1とは別の特許出願(特願2011−025375号)は未公開であり、この未公開の特許出願では、AlGaNチャネル層は下地のAlNに対して緩和している。
【0005】
III族窒化物半導体を用いる電子デバイスでは、最大ドレイン電流及びゲートリーク電流といったトランジスタ特性の向上が望まれている。発明者らは、特許文献1におけるAlGaNチャネル層の半値全幅とX線ロッキングカーブ(XRC)との関係とは異なる更なる検討を行ってきた。この検討によれば、X線ロッキングカーブとは異なる別の指標を用いることでトランジスタ特性を向上できる。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、AlNからなる半導体表面上に設けられると共に向上されたトランジスタ特性を有するIII族窒化物半導体電子デバイスを提供することを目的とし、またそのIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法を提供することを目的とし、さらにIII族窒化物半導体電子デバイスのためのエピタキシャルウエハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスは、(a)5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面の上にコヒーレントに設けられ、第1のIII族窒化物半導体材料からなる第1のエピタキシャル半導体層と、(b)前記第1のエピタキシャル半導体層の上に設けられ、第2のIII族窒化物半導体材料からなる第2のエピタキシャル半導体層と、(c)前記第1及び第2のエピタキシャル半導体層の上に設けられたゲート電極とを備える。前記第1のエピタキシャル半導体層は前記第2のエピタキシャル半導体層にヘテロ接合を成し、前記第2のIII族窒化物半導体材料は前記第1のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップより大きいバンドギャップを有し、前記第1のIII族窒化物半導体材料はAlNと異なる。
【0008】
このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面上には、第1のエピタキシャル半導体層がコヒーレントに設けられることが可能になる。これ故に、第1のエピタキシャル半導体層は緩和しておらず、この第1のエピタキシャル半導体層にヘテロ接合を成すように、第2のエピタキシャル半導体層が第1のエピタキシャル半導体層上に設けられる。このヘテロ接合を有するIII族窒化物半導体電子デバイスは、AlNに対してコヒーレントに設けられた第1のエピタキシャル半導体層の無緩和を利用して、III族窒化物半導体電子デバイスのトランジスタ特性が向上可能である。
【0009】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスでは、前記III族窒化物半導体電子デバイスのチャネル層は前記第1のエピタキシャル半導体層を含み、前記III族窒化物半導体電子デバイスのバリア層は前記第2のエピタキシャル半導体層を含むことができる。前記第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなると共に、前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成Zはゼロより大きく1以下である(0<Z≦1)ことができる。前記第1のエピタキシャル半導体層はAlGa1−YNからなると共に、前記AlGa1−YNのアルミニウム組成はゼロより大きく1未満である(0<Y<1)ことができる。前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成は前記AlGa1−YNのアルミニウム組成Yより大きい(Y<Z)。当該III族窒化物半導体電子デバイスは、前記チャネル層にキャリアを供給するように前記半導体表面の上に設けられたソース電極及びドレイン電極を更に備えることができる。
【0010】
このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、第1のエピタキシャル半導体層はAlGa1−YNからなると共に、第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなる。このIII族窒化物半導体電子デバイスは、ソース電極及びドレイン電極に電気的に接続されたAlGaNチャネル層を含み、このAlGaNチャネル層によりトランジスタ特性を向上可能である。
【0011】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスでは、前記第2のエピタキシャル半導体層が前記AlNと前記第1のエピタキシャル半導体層とにコヒーレントに成長しており、前記ゲート電極は、前記第2のエピタキシャル半導体層に接合を成すことができる。このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面上には、第1のエピタキシャル半導体層がコヒーレントに設けられることが可能になり、これ故に、このAlN及び第1のエピタキシャル半導体層上にコヒーレントに、第2のエピタキシャル半導体層が設けられることが可能になる。この第2のエピタキシャル半導体層にゲート電極が接合を成すとき、この第2のエピタキシャル半導体層の無緩和の利用によりトランジスタ特性が向上可能である。
【0012】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスでは、前記第1のエピタキシャル半導体層の転位密度が1×10cm−2未満であることができる。このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、第1のエピタキシャル半導体層がコヒーレントに成長されるので、転位密度1×10cm−2未満の第1のエピタキシャル半導体層をIII族窒化物半導体電子デバイスに提供できる。
【0013】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスでは、前記第1のエピタキシャル半導体層の(10−12)面のX線ロッキングカーブの半値全幅が200s未満であることができる。
【0014】
このIII族窒化物半導体電子デバイスでは、AlN半導体表面が5×10cm−2以下の転位密度を有すると共に第1のエピタキシャル半導体層がコヒーレントに成長されるので、上記の半値全幅が200s未満であることができる。
【0015】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスでは、前記第1のエピタキシャル半導体層は三元AlGaNからなり、前記第2のエピタキシャル半導体層は二元AlNからなり、前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.5以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層のAlGaNは前記半導体表面の前記AlNに接合を成すことができる。
【0016】
このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、第1及び第2のエピタキシャル半導体層は、5×10cm−2以下の転位密度を有するAlN半導体表面上に設けられる。第2のエピタキシャル半導体層(AlN)が、0.5以上のアルミニウム組成を有する第1のエピタキシャル半導体層(AlGaN)に接合を成す。これらの構成を有する電子デバイスは実用的な形態である。第1のエピタキシャル半導体層(例えばAlGaNチャネル層)と第2のエピタキシャル半導体層(例えばAlNバリア層)のAl組成差を大きくでき、III族窒化物半導体電子デバイスの二次元電子ガスの濃度(Ns)を高めることができ、これ故により優れたデバイス特性が得られる。
【0017】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスでは、前記第1のエピタキシャル半導体層は三元AlGaNからなり、前記第2のエピタキシャル半導体層は三元AlGaNからなり、前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.5以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層のAlGaNは前記半導体表面の前記AlGaNに接合を成すことができる。
【0018】
このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、第1及び第2のエピタキシャル半導体層は、5×10cm−2以下の転位密度を有するAlN半導体表面上に設けられる。第2のエピタキシャル半導体層(AlGaN)が、0.5以上のアルミニウム組成を有する第1のエピタキシャル半導体層(AlGaN)に接合を成す。これらの構成を有する電子デバイスは実用的な形態である。第1のエピタキシャル半導体層(例えばAlGaNチャネル層)及び第2のエピタキシャル半導体層(例えばAlGaNバリア層)によりプロセスウィンドウを広めることができる。
【0019】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスは、前記半導体表面を提供する主面を有するAlN基板を更に備えることができる。このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、AlN基板は、その主面に、5×10cm−2以下の転位密度を有するAlN半導体面を提供できる。
【0020】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスは、前記半導体表面を提供する主面を有するAlNテンプレートを更に備えることができる。前記AlNテンプレートの転位密度は5×10cm−2以下である。このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、AlNテンプレートは、その主面に、5×10cm−2以下の転位密度を有するAlN半導体表面を提供できる。
【0021】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスでは、前記第1のエピタキシャル半導体層及び前記第2のエピタキシャル半導体層は前記AlNのc軸の方向に配列されており、前記AlNのa軸格子定数は前記第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しく、前記第1のエピタキシャル半導体層がAlGaNからなることができる。このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、第1のエピタキシャル半導体層がAlNのc軸の方向にコヒーレント成長で形成されるので、AlNのa軸格子定数が第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しい。
【0022】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスでは、前記第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数は前記第2のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しく、前記第2のエピタキシャル半導体層がAlNからなることができる。このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、第2のエピタキシャル半導体層がAlNのc軸の方向にコヒーレント成長で形成されるとき、第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数は第2のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しい。第1のエピタキシャル半導体層はAlNと第2のエピタキシャル半導体層のAlNとの間に挟まれる。
【0023】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスでは、前記第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数は前記第2のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しく、前記第2のエピタキシャル半導体層がAlGaNからなることができる。このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、第2のエピタキシャル半導体層がAlNのc軸の方向にコヒーレント成長で形成されるとき、第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数は第2のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しい。第1のエピタキシャル半導体層はAlNと第2のエピタキシャル半導体層のAlGaNとの間に挟まれる。
【0024】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスは、第1のエピタキシャル半導体層がAlGaNからなるとき、以下のいずれかの形態を有することができる。これによって、5×10cm−2以下の低転位のAlN表面上にコヒーレントなAlGaNを成長できる。
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.5以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは150nm未満であることができる。
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.55以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは300nm未満であることができる。
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.60以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは500nm未満であることができる。
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.70以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは1000nm未満であることができる。
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.75以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは2000nm未満であることができる。
【0025】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスは、(a)AlNからなる半導体表面の上に設けられ、第1のIII族窒化物半導体材料からなる第1のエピタキシャル半導体層と、(b)前記第1のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップより大きいバンドギャップを有する第2のIII族窒化物半導体材料からなる第2のエピタキシャル半導体層と、(c)前記第1及び第2のエピタキシャル半導体層の上に設けられたゲート電極とを備える。前記AlNの前記半導体表面の転位密度は5×10cm−2以下であり、前記第1のエピタキシャル半導体層がAlGa1−YNからなると共に、前記AlGa1−YNのアルミニウム組成はゼロより大きく1未満であり(0<Y<1)、前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成及び前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは以下の範囲(a)、範囲(b)、範囲(c)、範囲(d)及び範囲(e)のいずれかを満たす。
前記範囲(a):前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.5以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは150nm未満である。
前記範囲(b):前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.55以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは300nm未満である。
前記範囲(c):前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.60以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは500nm未満である。
前記範囲(d):前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.70以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは1000nm未満である。
前記範囲(e):前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.75以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは2000nm未満である。
【0026】
このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成及び第1のエピタキシャル半導体層の厚さが上記の範囲(a)〜範囲(e)のいずれにあるとき、5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面上に、第1のエピタキシャル半導体層がコヒーレントに設けられる。このIII族窒化物半導体電子デバイスは、AlNに対してコヒーレントに設けられた第1のエピタキシャル半導体層を利用して、III族窒化物半導体電子デバイスのトランジスタ特性が向上可能である。
【0027】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスでは、前記III族窒化物半導体電子デバイスのチャネル層は前記第1のエピタキシャル半導体層を含み、前記III族窒化物半導体電子デバイスのバリア層は前記第2のエピタキシャル半導体層を含み、前記第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなると共に、前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成はゼロより大きく1以下であり(0<Z≦1)、前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成は前記AlGa1−YNのアルミニウム組成より大きいことができる。
【0028】
このIII族窒化物半導体電子デバイスによれば、第1のエピタキシャル半導体層はAlGa1−YNからなると共に、第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなることができる。このIII族窒化物半導体電子デバイスは、AlGaNチャネル層を含み、AlGaNチャネル層によりトランジスタ特性が向上可能である。
【0029】
本発明に係るIII族窒化物半導体電子デバイスでは、前記AlNのa軸格子定数は前記第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しい。このIII族窒化物半導体電子デバイスでは、第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成及び第1のエピタキシャル半導体層の厚さが上記の範囲(a)〜範囲(e)のいずれかにあるとき、第1のエピタキシャル半導体層がAlNのc軸の方向にコヒーレント成長で形成され、これ故にAlNのa軸格子定数が第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しい。
【0030】
本発明に係る、III族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法は、(a)5×10cm−2以下の転位密度を有するAlNからなる半導体表面の上に、第1のIII族窒化物半導体材料からなる第1のエピタキシャル半導体層をコヒーレントに成長する工程と、(b)第2のIII族窒化物半導体材料からなる第2のエピタキシャル半導体層を前記第1のエピタキシャル半導体層の上に成長する工程と、(c)前記第1及び第2のエピタキシャル半導体層の上にゲート電極を形成する工程とを備える。前記第2のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップは、前記第1のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップより大きく、前記第1のIII族窒化物半導体材料は前記AlNと異なる。
【0031】
このIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法(以下、「作製方法」として参照される)によれば、第1のエピタキシャル半導体層が、5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面上に成長されるので、第1のエピタキシャル半導体層を緩和させることなく成長することが可能になる。また、第1のエピタキシャル半導体層にヘテロ接合を成すように、第2のエピタキシャル半導体層を第1のエピタキシャル半導体層上に成長できる。AlNに対してコヒーレントに成長された第1のエピタキシャル半導体層を用いて、III族窒化物半導体電子デバイスのトランジスタ特性を向上できる。
【0032】
本発明に係る作製方法では、前記III族窒化物半導体電子デバイスのチャネル層は前記第1のエピタキシャル半導体層を含み、前記III族窒化物半導体電子デバイスのバリア層は前記第2のエピタキシャル半導体層を含むことができる。前記第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなると共に、前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成はゼロより大きく1以下であることができる(0<Z≦1)。前記第1のエピタキシャル半導体層はAlGa1−YNからなると共に、前記AlGa1−YNのアルミニウム組成はゼロより大きく1未満であることができる(0<Y<1)。
【0033】
この作製方法によれば、第1のエピタキシャル半導体層はAlGa1−YNからなると共に、第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなることができる。AlGaNチャネル層を含むIII族窒化物半導体電子デバイスを作製可能であり、AlGaNチャネル層によりトランジスタ特性を向上できる。
【0034】
本発明に係る作製方法では、前記第1のエピタキシャル半導体層及び前記第2のエピタキシャル半導体層は前記AlNのc軸の方向に配列されており、前記AlNのa軸格子定数は前記第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しく、前記第2のエピタキシャル半導体層がAlGaN及びAlNのいずれか一方を含むことができる。この作製方法によれば、第1のエピタキシャル半導体層がAlNのc軸の方向にコヒーレント成長で形成され、これ故にAlNのa軸格子定数が第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しくなる。
【0035】
本発明に係る、III族窒化物半導体電子デバイスのためのエピタキシャルウエハは、(a)5×10cm−2以下の転位密度を有するAlNからなる半導体表面の上に設けられ、前記III族窒化物半導体電子デバイスのチャネル層のための第1のエピタキシャル半導体層と、(b)前記第1のエピタキシャル半導体層の上にコヒーレントに設けられ、前記III族窒化物半導体電子デバイスのバリア層のための第2のエピタキシャル半導体層とを備える。前記第1のエピタキシャル半導体層は第1のIII族窒化物半導体材料からなり、前記第2のエピタキシャル半導体層は第2のIII族窒化物半導体材料からなり、前記第2のIII族窒化物半導体材料は前記第1のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップより大きいバンドギャップを有し、前記第1のIII族窒化物半導体材料はAlNと異なる。
【0036】
このエピタキシャルウエハによれば、5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面上には、第1のエピタキシャル半導体層がコヒーレントに設けられることが可能になる。第2のエピタキシャル半導体層は、第1のエピタキシャル半導体層にヘテロ接合を成すようには第1のエピタキシャル半導体層上に設けられる。このヘテロ接合を有するエピタキシャルウエハは、AlNに対してコヒーレントに設けられた第1のエピタキシャル半導体層の無緩和を用いて、III族窒化物半導体電子デバイスのトランジスタ特性を向上可能である。
【0037】
本発明に係るエピタキシャルウエハでは、前記第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなると共に、前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成はゼロより大きく1以下であることができる(0<Z≦1)。前記第1のエピタキシャル半導体層はAlGa1−YNからなると共に、前記AlGa1−YNのアルミニウム組成はゼロより大きく1未満である(0<Y<1)ことができる。
【0038】
このエピタキシャルウエハによれば、第1のエピタキシャル半導体層はAlGa1−YNからなると共に、第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなることができる。このエピタキシャルウエハは、AlGaNチャネル層を含み、このAlGaNチャネル層により良好なトランジスタ特性をIII族窒化物半導体電子デバイスに提供可能である。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、AlNからなる半導体表面上に設けられると共に向上されたトランジスタ特性を有するIII族窒化物半導体電子デバイスが提供される。また、本発明によれば、このIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法が提供される。さらに、本発明によれば、III族窒化物半導体電子デバイスのためのエピタキシャルウエハが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体電子デバイスを概略的に示す図面である。
【図2】図2は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体電子デバイスにおけるチャネル層及びバリア層と下地AlNとの格子定数に関する関係を示す図面である。
【図3】図3は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法及びエピタキシャルウエハを作製する方法おける主要な工程を示す工程フロー図である。
【図4】図4は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法及びエピタキシャルウエハを作製する方法おける主要な工程を模式的に示す図面である。
【図5】図5は、低転位AlN基板上のエピ構造のための逆格子マッピング像を示す図面である。
【図6】図6は、高転位AlNテンプレート上にエピ積層のための逆格子マッピングの像を示す図面である。
【図7】図7は、AlGaNチャネル層と下地のAlN面との関係(コヒーレント、或いは緩和している)を示す図面である。
【図8】図8は、コヒーレント成長が可能なAl組成及びAlGaN厚の関係を示す図面である。
【図9】図9は、厚さ30nmのAlNバリア層及びAl組成0.55のAlGaNチャネル層を有する4種類のトランジスタの特性を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
引き続いて、添付図面を参照しながら、III族窒化物半導体電子デバイス、エピタキシャルウエハ、並びにエピタキシャルウエハ及びIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0042】
図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体電子デバイスを概略的に示す図面である。III族窒化物半導体電子デバイス11は、第1のエピタキシャル半導体層13と、第2のエピタキシャル半導体層15とを備える。第1のエピタキシャル半導体層13及び第2のエピタキシャル半導体層15は、エピタキシャル半導体積層19に含まれている。支持基体21はエピタキシャル半導体積層19を搭載している。第1のエピタキシャル半導体層13は、支持基体21の半導体表面21a上にコヒーレントに設けられる。この半導体表面21aは5×10cm−2以下の転位密度を有し、AlNからなる。第2のエピタキシャル半導体層15は第1のエピタキシャル半導体層13上に設けられる。第1のエピタキシャル半導体層13がこの半導体表面21aへのコヒーレントに成長することにより、第1のエピタキシャル半導体層13は、半導体表面21aの格子定数に合わせて歪んでおり、緩和していない。
【0043】
第1のエピタキシャル半導体層13は第1のIII族窒化物半導体材料からなり、第2のエピタキシャル半導体層15は第2のIII族窒化物半導体材料からなる。第1のIII族窒化物半導体材料はAlNと異なる。第2のエピタキシャル半導体層15の第2のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップは第1のエピタキシャル半導体層13の第1のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップより大きい。第1のエピタキシャル半導体層13は第2のエピタキシャル半導体層15にヘテロ接合23aを成し、ヘテロ接合23aに沿って二次元電子ガス層が生成される。また、第1のエピタキシャル半導体層13は半導体表面21aにヘテロ接合23bを成すことができるが、第1のエピタキシャル半導体層13は半導体表面21a上のバッファ層上に成長されることができる。
【0044】
このIII族窒化物半導体電子デバイス11によれば、5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面21a上には、第1のエピタキシャル半導体層13がコヒーレントに設けられることが可能になる。第2のエピタキシャル半導体層15は、第1のエピタキシャル半導体層13にヘテロ接合23aを成すように第1のエピタキシャル半導体層13上に設けられる。このヘテロ接合23aを有するIII族窒化物半導体電子デバイス11は、AlNに対してコヒーレントに設けられた第1のエピタキシャル半導体層13の無緩和を利用して、III族窒化物半導体電子デバイス11のトランジスタ特性が向上可能である。
【0045】
この半導体表面21aの転位密度が5×10cm−2以下であるとき、この半導体表面21aの上に成長したエピタキシャル層をコヒーレントに成長することが可能となる。これよりも高い転位密度の場合、コヒーレントに成長することは、困難である。転位密度が高い場合、半導体表面21aとエピタキシャル層の界面において、転位を起因とした凹凸が高い密度で発生し、緩和が起こる。
【0046】
III族窒化物半導体電子デバイス11は、チャネル層は第1のエピタキシャル半導体層13を含み、バリア層は第2のエピタキシャル半導体層15を含む。電極(例えばゲート電極17)が第1及び第2のエピタキシャル半導体層13、15上に設けられ、一実施例では、ゲート電極17はショットキ電極を含むことができる。ゲート電極17は、第2のエピタキシャル半導体層15にショットキ接触27bを成すことができる。ゲート電極17はチャネル層のキャリア濃度を制御する。
【0047】
III族窒化物半導体電子デバイス11は、チャネル層にキャリアを供給するように半導体表面21a上に設けられたソース電極25a及びドレイン電極25bを更に備えることができる。ソース電極25a及びドレイン電極25bは、第2のエピタキシャル半導体層15上に設けられ、第2のエピタキシャル半導体層15の表面に接合を成す。本実施例では、ソース電極25a及びドレイン電極25bは、半導体積層19の表面19aに接触27aを成し、この接触27aはオーミック接触であることがよい。
【0048】
III族窒化物半導体電子デバイス11では、第1のIII族窒化物半導体材料がIII族構造元素としてアルミニウムを含む窒化物からなると共に、第2のIII族窒化物半導体材料がIII族構造元素としてアルミニウムを含む窒化物からなるとき、第2のIII族窒化物半導体材料のアルミニウム組成は第1のIII族窒化物半導体材料のアルミニウム組成より大きい。第1のエピタキシャル半導体層13は例えばAlGa1−YNからなると共に、このAlGa1−YNのアルミニウム組成Yはゼロより大きく1未満である(0<Y<1)ことができる。また、第2のエピタキシャル半導体層15は例えばAlGa1−ZNからなると共に、このAlGa1−ZNのアルミニウム組成Zはゼロより大きく1以下である(0<Z≦1)(Y<Z)ことができる。
【0049】
このIII族窒化物半導体電子デバイス11において、第1のエピタキシャル半導体層13はAlGa1−YNからなると共に、第2のエピタキシャル半導体層15はAlGa1−ZNからなるとき、AlGaNチャネル層は、ソース電極25a及びドレイン電極25bに電気的に接続され、このAlGaNチャネル層の利用によりトランジスタ特性を向上可能である。
【0050】
III族窒化物半導体電子デバイス11では、第2のエピタキシャル半導体層15が半導体表面21aのAlNと第1のエピタキシャル半導体層13とにコヒーレントに成長している。このIII族窒化物半導体電子デバイス11によれば、5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面21a上には、第1のエピタキシャル半導体層13がコヒーレントに設けられることが可能になり、また第2のエピタキシャル半導体層15がAlN及び第1のエピタキシャル半導体層13上にコヒーレントに設けられることが可能になる。この第2のエピタキシャル半導体層15にゲート電極17が接合を成すことが可能になるので、この第2のエピタキシャル半導体層15の利用によりトランジスタ特性が向上可能である。
【0051】
5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面21a上への成長では、第1のエピタキシャル半導体層13の転位密度が1×10cm−2未満であることができる。第1のエピタキシャル半導体層13がコヒーレントに成長されるので、1×10cm−2未満の転位密度を第1のエピタキシャル半導体層13に提供できる。これ故に、第1のエピタキシャル半導体層13の(10−12)面のX線ロッキングカーブの半値全幅が200s未満であることができる。発明者らの実験によれば、AlNの半導体表面21aが5×10cm−2以下の転位密度を有すると共にこの表面21a上に第1のエピタキシャル半導体層13がコヒーレントに成長されるので、上記の半値全幅が200s未満であることができる。
【0052】
一実施例では、第1のエピタキシャル半導体層13は三元AlGaNからなり、第2のエピタキシャル半導体層15は二元AlNからなることが良い。第1のエピタキシャル半導体層13のアルミニウム組成は0.5以上であることがよく、0.5未満である場合、AlNの半導体表面21aが5×10cm−2以下の転位密度を有していても、その上のエピタキシャル層が緩和するためである。第1のエピタキシャル半導体層13のAlGaNは半導体主面21aのAlNに接合23b(ここではヘテロ接合)を成すことができる。
【0053】
この構造は、電子デバイスの実用的な形態である。第1及び第2のエピタキシャル半導体層13、15は、5×10cm−2以下の転位密度を有するAlN半導体表面21a上に設けられる。第2のエピタキシャル半導体層15のAlNは0.5以上のアルミニウム組成を有する第1のエピタキシャル半導体層13のAlGaNに接合を成す。
【0054】
この実施例のIII族窒化物半導体電子デバイス11によれば、第1のエピタキシャル半導体層(例えばAlGaNチャネル層)13と第2のエピタキシャル半導体層(例えばAlNバリア層)15とのアルミニウム組成差を大きくでき、III族窒化物半導体電子デバイス11の二次元電子ガス濃度(Ns)を高めることができ、これ故により高いデバイス特性が得られる。
【0055】
別の実施例では、第1のエピタキシャル半導体層13は三元AlGaNからなり、第2のエピタキシャル半導体層15は三元AlGaNからなることが良い。第1のエピタキシャル半導体層13のアルミニウム組成は0.5以上であることが良く、第1のエピタキシャル半導体層13のAlGaNは半導体主面21aのAlNに接合を成す。
【0056】
この構造は、電子デバイスの実用的な形態である。第1及び第2のエピタキシャル半導体層13、15が、5×10cm−2以下の転位密度を有するAlN半導体表面21a上に設けられる。第1のエピタキシャル半導体層13のアルミニウム組成が0.5以上であることがよく、0.5未満である場合、AlNの半導体表面21aが5×10cm−2以下の転位密度を有していても、その上のエピタキシャル層が緩和するためである。第2のエピタキシャル半導体層(AlGaN)15が第1のエピタキシャル半導体層13のAlGaNに接合を成す。
【0057】
この実施例のIII族窒化物半導体電子デバイス11によれば、第1のエピタキシャル半導体層(例えばAlGaNチャネル層)13及び第2のエピタキシャル半導体層(例えばAlGaNバリア層)15の使用により、両者のともAlとGaを含むエピタキシャル半導体層であるため、両者の成長条件は近く、良好なヘテロ界面を形成しやすくなる。また、プロセスウィンドウも広くすることが可能となる。これ故に、III族窒化物半導体電子デバイス11に良好な二次元電子ガストランジスタが提供される。
【0058】
III族窒化物半導体電子デバイス11は、AlN基板31を更に備えることができる。AlN基板31は半導体積層19を搭載する主面31aを有しており、主面31aは5×10cm−2以下の転位密度を有するAlNからなる。AlN基板31は、5×10cm−2以下の転位密度を有する単結晶AlNからなり、半導体表面21aを提供する。
【0059】
III族窒化物半導体電子デバイス11は、AlNテンプレート33を更に備えることができる。AlNテンプレート33は主面33aを有し、また半導体表面21aを提供する。AlNテンプレート33は、5×10cm−2以下の転位密度を有するAlN膜35aと、このAlN膜35aを搭載する支持体35bとを含む。AlNテンプレート33の主面33aは、5×10cm−2以下の転位密度を有するAlN半導体表面を提供できる。支持体35bの材料は例えばサファイア、SiC、Si等からなることができる。
【0060】
図2の(a)部に示されるように、第1のエピタキシャル半導体層13及び第2のエピタキシャル半導体層15はAlNの表面21aの法線方向(例えば、AlNのc軸の方向)に配列されている。第1のエピタキシャル半導体層13が法線方向にコヒーレント成長で形成されるので、下地のAlNのa軸格子定数L0(AlN)と第1のエピタキシャル半導体層13のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数L13(AlGaN)は等しい。
【0061】
第2のエピタキシャル半導体層15がAlNからなることができる。このとき、第2のエピタキシャル半導体層15が半導体表面21aのAlNのc軸の方向にコヒーレント成長で形成されるときには、a軸格子定数L13(AlGaN)と第2のエピタキシャル半導体層15のa軸格子定数L15(AlN)は等しくなる。第1のエピタキシャル半導体層13は半導体表面21aのAlNと第2のエピタキシャル半導体層15のAlNとの間に設けられる。第2のエピタキシャル半導体層15の歪みは第1のエピタキシャル半導体層13に内包される歪みに比べて非常に小さい。
【0062】
第2のエピタキシャル半導体層15はAlGaNからなることができる。このとき、第2のエピタキシャル半導体層15が半導体表面21aのAlNのc軸の方向にコヒーレント成長で形成されるときには、a軸格子定数L13(AlGaN)は第2のエピタキシャル半導体層15のa軸格子定数L15(AlGaN)に等しくなる。第1のエピタキシャル半導体層13は半導体表面21aのAlNと第2のエピタキシャル半導体層15のAlGaNとの間に設けられる。第2のエピタキシャル半導体層15は第1のエピタキシャル半導体層13に内包される歪みに比べて小さい。
【0063】
次いで、より具体的な形態について説明する。第1のエピタキシャル半導体層13がAlGaNからなるとき、以下の形態及び範囲を有することができる。これによって、5×10cm−2以下の低転位といったAlN表面上にコヒーレントなAlGaNを成長できる。第1のエピタキシャル半導体層13はアルミニウム組成Y及び厚さD13を有する。
範囲(a):アルミニウム組成Yが0.5以上であり、厚さD13が150nm未満であることができる。
範囲(b):アルミニウム組成Yが0.55以上であり、厚さD13が300nm未満であることができる。
範囲(c):アルミニウム組成Yが0.60以上であり、厚さD13が500nm未満であることができる。
範囲(d):アルミニウム組成Yが0.70以上であり、厚さD13が1000nm未満であることができる。
範囲(e):アルミニウム組成Yが0.75以上であり、厚さD13が2000nm未満であることができる。
第1のエピタキシャル半導体層13が上記のいずれかの形態におけるアルミニウム組成Y及び厚さD13を有するとき、第1のエピタキシャル半導体層13は、5×10cm−2以下の低転位の半導体表面21a上においてコヒーレントな状態に維持され、従って格子緩和が第1のエピタキシャル半導体層13に生成されていない。このIII族窒化物半導体電子デバイス11は、AlNに対してコヒーレントに設けられた第1のエピタキシャル半導体層13を用いて、III族窒化物半導体電子デバイスのトランジスタ特性が向上可能である。
【0064】
図2の(b)部に示されるように、エピタキシャル半導体層3及びエピタキシャル半導体層5はAlNの表面1aの法線方向(例えば、AlNのc軸の方向)に配列されている。エピタキシャル半導体層3、5が、1×10cm−2程度の転位密度のAlN上に成長される。エピタキシャル半導体層3が法線方向に格子緩和しながら成長されるので、AlNのa軸格子定数L1(AlN)はエピタキシャル半導体層3のa軸格子定数L3(AlGaN)と異なる。なお、エピタキシャル半導体層5のa軸格子定数L5(AlN)はエピタキシャル半導体層3のa軸格子定数L3(AlGaN)と同じになる。このIII族窒化物半導体電子デバイス2は、高転位密度のAlN表面1aに対して緩和して設けられたエピタキシャル半導体層3に起因して、III族窒化物半導体電子デバイスのトランジスタ特性は、最大ドレイン電流やゲートリーク電流特性の点で劣ったものになる。
【0065】
図3は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法及びエピタキシャルウエハを作製する方法おける主要な工程を示す工程フロー図である。図4は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法及びエピタキシャルウエハを作製する方法おける主要な工程を模式的に示す図面である。
【0066】
工程S101では、III族窒化物半導体電子デバイスの作製に使用する基板を準備する。この基板は、図4の(a)部においては、符号41として参照される。基板41は、5×10cm−2以下の転位密度を有するAlNからなる半導体表面41aを有する。基板41としては、既に説明したように、AlN単結晶基板やAlNテンプレートを用いることができる。半導体表面41aの面方位は典型的には{0001}面であることができる。
【0067】
工程S102では、図4の(a)部に示されるように、この基板41を反応炉10aに配置した後に、基板41のAlN表面41aに熱処理を行う。AlN表面41aの熱処理は、例えばアンモニア雰囲気中で行われ、熱処理温度は例えば摂氏1050度であることができる。その後、反応炉10aでは、例えば有機金属気相成長法により結晶成長が行われる。
【0068】
工程S103では、図4の(b)部に示されるように、反応炉10aで、チャネル層のための第1のエピタキシャル半導体層43を半導体表面41a上に対してコヒーレントに成長する。半導体表面41aは、工程S102におけるサーマルクリーニングにより清浄化されており、清浄化されたAlN表面は、5×10cm−2以下の転位密度を有する。第1のエピタキシャル半導体層43は、例えばIII族構成元素としてアルミニウムを含む第1のIII族窒化物半導体材料からなることができ、また基板41のAlNと異なる。第1のエピタキシャル半導体層43は、例えばアンドープAlGaNからなる。第1のエピタキシャル半導体層43の厚さの範囲及びAl組成の範囲は、以下に示すとおりである。
第1のエピタキシャル半導体層13はアルミニウム組成Y及び厚さD13を有する。
範囲(a):アルミニウム組成Yが0.5以上であり、厚さD13が150nm未満であることができる。
範囲(b):アルミニウム組成Yが0.55以上であり、厚さD13が300nm未満であることができる。
範囲(c):アルミニウム組成Yが0.60以上であり、厚さD13が500nm未満であることができる。
範囲(d):アルミニウム組成Yが0.70以上であり、厚さD13が1000nm未満であることができる。
範囲(e):アルミニウム組成Yが0.75以上であり、厚さD13が2000nm未満であることができる。
第1のエピタキシャル半導体層43がコヒーレント態様の成長であるので、第1のエピタキシャル半導体層43は格子緩和無しに、第1のエピタキシャル半導体層43のAlGaNのAl組成と下地のAlNとのAl組成差に応じた歪を内包する。この歪は緩和されていない。
【0069】
工程S104では、図4の(c)部に示されるように、バリア層のための第2のエピタキシャル半導体層45を第1のエピタキシャル半導体層43上に反応炉10aで成長する。第2のエピタキシャル半導体層45は第2のIII族窒化物半導体材料からなり、第2のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップは、第1のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップより大きい。第2のエピタキシャル半導体層45は、例えばIII族構成元素としてアルミニウムを含む第2のIII族窒化物半導体材料からなることができ、例えばアンドープAlGaN、アンドープAlN、SiドープAlGaN、又はSiドープAlNからなることができる。第2のエピタキシャル半導体層45の厚さの範囲は、例えば5nm以上であり、50nm以下であることができる。第2のエピタキシャル半導体層45のAlGaNにおけるAl組成は、例えば第1のエピタキシャル半導体層43のAl組成より0.1以上大きく、1以下であることができる。第2のエピタキシャル半導体層45がコヒーレント態様の成長になるので、第2のエピタキシャル半導体層45は格子緩和無しに、第2のエピタキシャル半導体層45のAlGaNのAl組成と下地のAlNとのAl組成差に応じた歪を内包する。この歪は緩和されていない。
【0070】
工程S105では、工程S102〜工程S104までのエピ成長により作成されたエピタキシャル基板Eを反応炉10aから取り出す。上記の作製方法において、第1のエピタキシャル半導体層43及び第2のエピタキシャル半導体層45はAlN表面41aの法線方向に配列されており、本実施例では、表面41aを提供するAlNのc軸の方向に順に成長される。第1のエピタキシャル半導体層43がAlNのc軸の方向にコヒーレント成長で形成されるので、第1のIII族窒化物半導体材料43のa軸格子定数がAlNのa軸格子定数に等しい。第2のエピタキシャル半導体層45がAlNのc軸の方向にコヒーレント成長で形成されるとき、第2のIII族窒化物半導体材料45の第2のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数がAlNのa軸格子定数に等しくなる。
【0071】
エピタキシャルウエハEは、5×10cm−2以下の転位密度を有するAlNからなる半導体表面41a上にコヒーレントに設けられ、チャネル層のための第1のエピタキシャル半導体層43と、第1のエピタキシャル半導体層43上にコヒーレントに設けられバリア層のための第2のエピタキシャル半導体層43とを備える。
【0072】
工程S106では、エピタキシャル基板E上に電極を形成する。この電極の形成では。ゲート電極を形成すると共にソース電極及びドレイン電極を形成する。ゲート電極の材料は例えばNi/Au等であり、ソース電極及びドレイン電極の材料は例えばTi/Al、Zr/Al等である。これらの電極の作製方法としては、例えば蒸着により金属膜の成長とリフトオフによるパターン形成を用いる。ソース電極・ドレイン電極の場合は、オーミック接合形成のため、合金化を行うことが好ましい。
【0073】
この作製方法によれば、第1のエピタキシャル半導体層43が、5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面41a上に成長されるので、第1のエピタキシャル半導体層43はコヒーレントに設けられることが可能になる。また、第2のエピタキシャル半導体層45は、第1のエピタキシャル半導体層43にヘテロ接合を成すようには第1のエピタキシャル半導体層43上に成長される。AlNに対してコヒーレントに成長された第1のエピタキシャル半導体層43を用いて、III族窒化物半導体電子デバイスのトランジスタ特性を向上できる。
【0074】
(実施例1)
・低転位のAlN基板を用意する。AlN基板の特性の一例。
厚み:400μm。
転位密度:5×10cm−2
X線ロッキングカーブの半値全幅:(0002)面で66秒、(10−12)面で76秒。ここで、X線ロッキングカーブの半値全幅において、スリット幅は0.2mm×0.5mmである。
・意図的に転位密度を大きく形成したAlNテンプレートを用意する。AlNテンプレートはサファイア基板上に成長される。AlNテンプレートは、MOVPE法を用いて、摂氏1300度の成長温度で成長される。
テンプレートの厚み:1μm。
転位密度:1×10cm−2
X線ロッキングカーブの半値全幅:(0002)面で281秒、(10−12)面で623秒。ここで、X線ロッキングカーブの半値全幅において、スリット幅は0.2mm×0.5mmである。
【0075】
低転位AlN基板及び高転位AlNテンプレートを反応炉にセットした後に、摂氏1050度の温度及びアンモニア雰囲気中で、これらの熱処理を行う。この後、摂氏1050度で、厚さ500nmのAlN膜をバッファ層として成長する。その後に、厚さ300nm及びAl組成0.75のAlGaN膜をチャネル層として成長し、次いで、摂氏1050度で、厚さ30nmのAlN膜をバリア層として成長して、エピ基板を作製する。また、上記のエピ基板に加えて、厚さ150nm、50nm、20nmのAlGaN膜をチャネル層として有するエピ基板を低転位AlN基板及び高転位AlNテンプレートを用いて作製する。
【0076】
高転位AlNテンプレート上のエピ構造及び低転位AlN基板上のエピ構造について、逆格子マッピングの測定を行う。図5は、低転位AlN基板上のエピ積層したときの逆格子マッピング像を示す。図6は、高転位AlNテンプレート上にエピ積層したときの逆格子マッピング像を示す。図5及び図6では、AlN・AlGaNの(20−24)面における逆格子マッピング像が測定される。図5に示されるように、低転位AlN単結晶基板のエピ構造では、2つの信号ピーク(SP0(AlN)及びSP0(AlGaN))がラインL0上に整列しているので、低転位AlN単結晶基板のAlGaN膜に緩和は観察されない。図5において、ラインOBは完全緩和を示し、完全緩和のときAlNからの信号ピークとAlGaNからの信号ピークがラインOB上に整列される。一方、図6に示されるように、高転位AlNテンプレートのエピ構造では、2つの信号ピーク(SPR(AlN)及びSPR(AlGaN))がラインL0上に整列していないので、高転位AlNテンプレート上のAlGaN膜に若干の緩和が観察される。したがって、低転位AlN単結晶基板のエピ構造では、低転位のAlN表面上にAlGaN膜のコヒーレントな成長が実現されている。しかしながら、高転位AlNテンプレート上のAlGaN膜ではコヒーレントな成長が実現されていない。
【0077】
厚さ150nm、50nm、20nmのAlGaN膜をチャネル層として有するエピ基板についても逆格子マッピング像を測定するとき、低転位AlN単結晶基板のエピ構造では、低転位のAlN表面上にAlGaN膜のコヒーレントな成長が実現されているけれども、高転位AlNテンプレート上のAlGaN膜ではコヒーレントな成長が実現されていない。AlGaN膜の厚みが薄いときには、AlNテンプレート上のエピ構造において緩和の程度は小さいけれども、コヒーレント成長は達成されていない。
【0078】
以上説明したように、低転位AlN単結晶基板のエピ構造では、AlGaN膜のコヒーレントな成長が可能である。
【0079】
(実施例2)
低転位のAlN基板を用意する。AlN基板の特性の一例。
厚み:400μm。
転位密度:5×10cm−2
X線ロッキングカーブの半値全幅:(0002)面で66秒、(10−12)面で76秒。ここで、X線ロッキングカーブの半値全幅において、スリット幅は0.2mm×0.5mmである。
このAlN基板を反応炉にセットした後に、摂氏1050度の温度及びアンモニア雰囲気中で熱処理を行う。この熱処理の後に、AlN膜(成長温度1050度、厚さ500nm)を成長する。このAlN膜上に、AlGaN膜(成長温度1050度、Al組成Yパーセント、厚さXnm)をチャネル層として成長する。このAlGaN膜上に、AlN膜(成長温度1050度、厚さ30nm)をバリア層として成長する。これらの工程によりエピタキシャル基板を作製する。これらのエピタキシャル基板について、(20−24)面の逆格子マッピングの測定を行う。図7は、AlGaNチャネル層と下地のAlN面との関係(コヒーレント、或いは緩和している)を示す図面である。図7において、クロス印は「緩和」を示し、丸印は「コヒーレント」を示す。図8は、コヒーレント成長が可能なAl組成及びAlGaN厚の関係を示す図面である。
【0080】
5点P1、P2、P3、P4、P5で示される値を以下に示す。
点P1:Al組成が0.50であり、AlGaN厚が150nmである。
点P2:Al組成が0.55であり、AlGaN厚が300nmである。
点P3:Al組成が0.60であり、AlGaN厚が500nmである。
点P4:Al組成が0.70であり、AlGaN厚が1000nmである。
点P5:Al組成が0.75であり、AlGaN厚が2000nmである。
【0081】
「コヒーレント」の達成が可能の範囲の一例を以下に示す。
範囲1:Al組成Yが0.5以上であるとき、AlGaN厚さXが150nm未満である。
範囲2:Al組成Yが0.55以上であるとき、AlGaN厚さXが300nm未満である。
範囲3:Al組成Yが0.60以上であるとき、AlGaN厚さXが500nm未満である。
範囲4:Al組成Yが0.70以上であるとき、AlGaN厚さXが1000nm未満である。
範囲5:Al組成Yが0.75以上であるとき、AlGaN厚さXが2000nm未満である。
【0082】
これらの実験の詳細な検討によれば、これらの範囲に限定されることなく、図8のように、上記の点P1〜P5のうち隣接する2点を繋ぐ近似線を導くことができる。
【0083】
このように、5×10cm−2以下の転位密度を有する低転位AlN上に、上記実験により示されるAlGaNチャネル層の厚み及び組成で、AlGaNチャネルHEMTエピを成長するとき、AlGaNチャネル層をコヒーレントに成長することが可能となる。また、AlNバリア層あるいはAlGaNバリア層もコヒーレントに成長することが可能となる。
【0084】
(実施例3)
上記のようにコヒーレントに成長されたAlGaNチャネル層を含む高電子移動度トランジスタ(HEMT)のトランジスタ特性を測定する。
図9は、厚さ30nmのAlNバリア層及び0.55のAl組成のAlGaNチャネル層を有する4種類のトランジスタの特性を示す。
トランジスタA:AlGaNチャネル層の厚さ150nm。
トランジスタB:AlGaNチャネル層の厚さ300nm。
トランジスタC:AlGaNチャネル層の厚さ500nm。
トランジスタD:AlGaNチャネル層の厚さ1000nm。
これらのトランジスタA〜Dのためのエピタキシャル基板について、(20−24)面の逆格子マッピング測定を行う。これらの逆格子マッピング像からAlN層に対するAlGaNチャネル層の緩和の有無を判定する。また、AlN層及びAlGaNチャネル層の転位密度を測定する。さらに、AlN層及びAlGaNチャネル層のXRC半値全幅((0002)面及び(10−12)面)の測定を行う。ここで、XRC半値全幅において、スリット幅は0.2mm×0.5mmである。これらのトランジスタA〜Dにおいて最大ドレイン電流密度及びゲートリーク電流密度を測定する。トランジスタA及びBについては、最大ドレイン電流密度が100mA/mm以上であり、ゲートリーク電流密度が10nA/mm以下である。一方、トランジスタC及びDについては、最大ドレイン電流密度が63nA/mm未満であり、ゲートリーク電流密度が1.3μA/mm以上である。このように、緩和/コヒーレントに応じて、最大ドレイン電流密度及びゲートリーク電流密度といったトランジスタ特性が大きく変化する。本実験及び他の実験の結果から、AlGaNチャネル層がAlN面にコヒーレントに成長されるとき、AlGaNチャネル層の転位密度が1×10cm−2未満である。AlGaNチャネル層の(10−12)面のX線ロッキングカーブの半値全幅が200s未満である。
【0085】
上記の実験、及び追加の実験から、AlGaNチャネル層の結晶品質については、AlGaNチャネル層の緩和が起こらない範囲において、ある程度の厚みを有している方が結晶品質が向上し、より優れたデバイス特性が実現可能となる。厚いAlGaNチャネル層は、下地AlNからの不純物の影響等を低減可能である。図9を参照すると、トランジスタBのためのAlGaNチャネル層の品質(転位密度やXRC半値全幅)はトランジスタAのためのAlGaNチャネル層の品質より優れる。また、トランジスタBの特性はトランジスタAの特性より優れる。トランジスタA及びBをトランジスタC及びDと比較するとき、HEMTエピ構造においてコヒーレントなAlGaNチャネル層の優位性が示される。
【0086】
実施例1〜3に示されるように、下地AlNに対し、コヒーレントなAlGaNチャネル層を有するAlGaNチャネルHEMTを作製することによって、AlGaNチャネルHEMTの特性を大幅に向上させることが可能となる。
本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本実施の形態によれば、AlNからなる半導体表面上に設けられると共に向上されたトランジスタ特性を有するIII族窒化物半導体電子デバイスが提供される。また、本実施の形態によれば、このIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法が提供される。さらに、本実施の形態によれば、III族窒化物半導体電子デバイスのためのエピタキシャルウエハが提供される。
【符号の説明】
【0088】
11…III族窒化物半導体電子デバイス、13…第1のエピタキシャル半導体層、15…第2のエピタキシャル半導体層、17…ゲート電極、21a…半導体表面、23a…ヘテロ接合、23b…接合、25a…ソース電極、25b…ドレイン電極、19…半導体積層、27a…接触(オーミック接触)、27b…ショットキ接触、31…AlN基板、33…AlNテンプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物半導体電子デバイスであって、
5×10cm−2以下の転位密度を有しAlNからなる半導体表面の上に設けられ、第1のIII族窒化物半導体材料からなる第1のエピタキシャル半導体層と、
前記第1のエピタキシャル半導体層の上にコヒーレントに設けられ、第2のIII族窒化物半導体材料からなる第2のエピタキシャル半導体層と、
前記第1及び第2のエピタキシャル半導体層の上に設けられたゲート電極と、
を備え、
前記第1のエピタキシャル半導体層は前記第2のエピタキシャル半導体層にヘテロ接合を成し、
前記第2のIII族窒化物半導体材料は前記第1のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップより大きいバンドギャップを有し、
前記第1のIII族窒化物半導体材料はAlNと異なる、III族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項2】
前記III族窒化物半導体電子デバイスのチャネル層は前記第1のエピタキシャル半導体層を含み、
前記III族窒化物半導体電子デバイスのバリア層は前記第2のエピタキシャル半導体層を含み、
前記第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなると共に、前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成はゼロより大きく1以下であり(0<Z≦1)、
前記第1のエピタキシャル半導体層はAlGa1−YNからなると共に、前記AlGa1−YNのアルミニウム組成はゼロより大きく1未満であり(0<Y<1)、
前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成は前記AlGa1−YNのアルミニウム組成より大きく、
当該III族窒化物半導体電子デバイスは、前記チャネル層にキャリアを供給するように前記半導体表面の上に設けられたソース電極及びドレイン電極を更に備える、請求項1に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項3】
前記第2のエピタキシャル半導体層が前記AlNと前記第1のエピタキシャル半導体層とにコヒーレントに成長されており、
前記ゲート電極は、前記第2のエピタキシャル半導体層に接合を成す、請求項1又は請求項2に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項4】
前記第1のエピタキシャル半導体層の転位密度が1×10cm−2未満である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項5】
前記第1のエピタキシャル半導体層の(10−12)面のX線ロッキングカーブの半値全幅が、200s未満である、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項6】
前記第1のエピタキシャル半導体層は三元AlGaNからなり、
前記第2のエピタキシャル半導体層は三元AlGaNからなり、
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.5以上であり、
前記第1のエピタキシャル半導体層のAlGaNは前記半導体表面の前記AlNに接合を成す、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項7】
前記第1のエピタキシャル半導体層は三元AlGaNからなり、
前記第2のエピタキシャル半導体層は二元AlNからなり、
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.5以上であり、
前記第1のエピタキシャル半導体層のAlGaNは前記半導体表面の前記AlNに接合を成す、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項8】
前記半導体表面を提供する主面を有するAlN基板を更に備える、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項9】
前記半導体表面を提供する主面を有するAlNテンプレートを更に備え、
前記AlNテンプレートの転位密度は5×10cm−2以下である、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項10】
前記第1のエピタキシャル半導体層及び前記第2のエピタキシャル半導体層は前記AlNのc軸の方向に配列されており、
前記AlNのa軸格子定数は前記第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しく、
前記第1のエピタキシャル半導体層がAlGaNからなる、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項11】
前記第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数は前記第2のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しく、
前記第2のエピタキシャル半導体層がAlNからなる、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項12】
前記第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数は前記第2のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数に等しく、
前記第2のエピタキシャル半導体層がAlGaNからなる、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項13】
前記第1のエピタキシャル半導体層がAlGaNからなり、
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.5以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは150nm未満である、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項14】
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.55以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは300nm未満である、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項15】
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.60以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは500nm未満である、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項16】
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.70以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは1000nm未満である、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項17】
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成は0.75以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは2000nm未満である、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項18】
III族窒化物半導体電子デバイスであって、
AlNからなる半導体表面の上に設けられ、第1のIII族窒化物半導体材料からなる第1のエピタキシャル半導体層と、
前記第1のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップより大きいバンドギャップを有する第2のIII族窒化物半導体材料からなる第2のエピタキシャル半導体層と、
前記第2のエピタキシャル半導体層の上に設けられたゲート電極と、
を備え、
前記AlNの前記半導体表面の転位密度は5×10cm−2以下であり、
前記第1のエピタキシャル半導体層がAlGa1−YNからなると共に、前記AlGa1−YNのアルミニウム組成はゼロより大きく1未満であり(0<Y<1)、
前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成及び前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは以下の範囲(a)、範囲(b)、範囲(c)、範囲(d)及び範囲(e)のいずれかを満たし、
前記範囲(a):前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成Yは0.5以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは150nm未満であり;
前記範囲(b):前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成Yは0.55以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは300nm未満であり;
前記範囲(c):前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成Yは0.60以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは500nm未満であり;
前記範囲(d):前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成Yは0.70以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは1000nm未満であり;
前記範囲(e):前記第1のエピタキシャル半導体層のアルミニウム組成Yは0.75以上であり、前記第1のエピタキシャル半導体層の厚さは2000nm未満である、III族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項19】
前記III族窒化物半導体電子デバイスのチャネル層は前記第1のエピタキシャル半導体層を含み、
前記III族窒化物半導体電子デバイスのバリア層は前記第2のエピタキシャル半導体層を含み、
前記第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなると共に、前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成はゼロより大きく1以下であり(0<Z≦1)、
前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成Zは前記AlGa1−YNのアルミニウム組成Yより大きい、請求項18に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項20】
前記第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数は、前記AlNのa軸格子定数に等しい、請求項18又は請求項19に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイス。
【請求項21】
III族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法であって、
5×10cm−2以下の転位密度を有するAlNからなる半導体表面の上に、第1のIII族窒化物半導体材料からなる第1のエピタキシャル半導体層をコヒーレントに成長する工程と、
第2のIII族窒化物半導体材料からなる第2のエピタキシャル半導体層を前記第1のエピタキシャル半導体層の上に成長する工程と、
前記第2のエピタキシャル半導体層の上にゲート電極を形成する工程と、
を備え、
前記第2のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップは、前記第1のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップより大きく、
前記第1のIII族窒化物半導体材料はAlNと異なる、III族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法。
【請求項22】
前記III族窒化物半導体電子デバイスのチャネル層は前記第1のエピタキシャル半導体層を含み、
前記III族窒化物半導体電子デバイスのバリア層は前記第2のエピタキシャル半導体層を含み、
前記第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなると共に、前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成Zはゼロより大きく1以下であり(0<Z≦1)、
前記第1のエピタキシャル半導体層はAlGa1−YNからなると共に、前記AlGa1−YNのアルミニウム組成Yはゼロより大きく1未満である(0<Y<1)、請求項21に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法。
【請求項23】
前記第1のエピタキシャル半導体層及び前記第2のエピタキシャル半導体層は、前記AlNのc軸の方向に配列されており、
前記第1のIII族窒化物半導体材料のa軸格子定数は、前記AlNのa軸格子定数に等しく、
前記第2のエピタキシャル半導体層がAlGaN及びAlNのいずれか一方を含む、請求項21又は請求項22に記載されたIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法。
【請求項24】
III族窒化物半導体電子デバイスのためのエピタキシャルウエハであって、
5×10cm−2以下の転位密度を有するAlNからなる半導体表面の上にコヒーレントに設けられ、前記III族窒化物半導体電子デバイスのチャネル層のための第1のエピタキシャル半導体層と、
前記第1のエピタキシャル半導体層の上に設けられ、前記III族窒化物半導体電子デバイスのバリア層のための第2のエピタキシャル半導体層と、
を備え、
前記第1のエピタキシャル半導体層は第1のIII族窒化物半導体材料からなり、
前記第2のエピタキシャル半導体層は第2のIII族窒化物半導体材料からなり、
前記第2のIII族窒化物半導体材料は前記第1のIII族窒化物半導体材料のバンドギャップより大きいバンドギャップを有し、
前記第1のIII族窒化物半導体材料はAlNと異なる、エピタキシャルウエハ。
【請求項25】
前記第2のエピタキシャル半導体層はAlGa1−ZNからなると共に、前記AlGa1−ZNのアルミニウム組成Zはゼロより大きく1以下であり(0<Z≦1)、
前記第1のエピタキシャル半導体層はAlGa1−YNからなると共に、前記AlGa1−YNのアルミニウム組成Yはゼロより大きく1未満である(0<Y<1)、請求項24に記載されたエピタキシャルウエハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−93384(P2013−93384A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233244(P2011−233244)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合研究機構「ナノエレクトロニクス半導体新材料・新構造技術開発−窒化物系化合物半導体基板・エピタキシャル成長技術の開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】