説明

アキシャルモータ及びインホイールモータ

【課題】寸法の大形化を最小限に抑えて回転検出機能を低コストで備えることができるアキシャルモータ及びインホイールモータを提供する。
【解決手段】周方向に磁心が配された円環状の出力側ステータ3、ロータ5及び反出力側ステータ4をその回転軸方向に対向配置し、出力側ステータ3、ロータ5、及び反出力側ステータ4をモータハウジング2に収容してなるアキシャルモータ1において、ロータ5の外周面に溝部74を一体形成し、溝部74を検出する凹凸検出部70を備え、ロータ5の外周面に対向するようにモータハウジング2に検出器支持孔22cを設け、検出器支持孔22cに凹凸検出部70を嵌挿する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周方向に磁心が配された円盤状のステータ及びロータをその回転軸方向に対向配置してなるアキシャルモータ、並びに該アキシャルモータを備えたインホイールモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動モータにて駆動される電気自動車が実用化されている。自動車のホイール内に電動モータを配置する場合、電動モータを小型化する必要がある。
【0003】
特許文献1には、周方向に磁心が配された円盤状のステータ及びロータを回転軸方向に対向配置してなるアキシャルモータをホイール内に配置したインホイールモータが提案されている(例えば、特許文献1)。
電動モータとしてアキシャルモータを採用することにより、インホイールモータを薄型化することができる。
【0004】
一方、ロータに設けられた被検出体の回転位置をホール素子にて検出して、ステータの各相コイルへの通電方向を切り換えるように構成したブラシレス型のアキシャルモータが提案されている。なお、ホール素子及びロータは回転軸方向に対向配置されている。
【特許文献1】特開2005−341779号公報
【特許文献2】特開2006−258289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアキシャルモータにおいては、ロータに被検出体を設け、更に軸まわりの高温環境で動作可能なホール素子を備える必要があるため、高コストになるという問題があった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ロータの外周面に凹凸を一体形成し、該外周面に対向するように形成されたハウジングの凹部に凹凸検出部を嵌挿することにより、寸法の大形化を最小限に抑えて回転検出機能を低コストで備えることができるアキシャルモータ及びインホイールモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係るアキシャルモータは、周方向に磁心が配された円盤状のステータ及びロータをその回転軸方向に対向配置し、該ステータ及びロータをハウジングに収容してなるアキシャルモータにおいて、前記ロータの外周面に一体形成された凹凸と、前記凹凸を検出する凹凸検出部とを備え、前記ハウジングは凹部を備え、前記凹凸検出部は前記外周面に対向するように前記凹部に嵌挿されていることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係るアキシャルモータは、前記凹凸が、前記外周面の回転軸方向一端側に形成された第1溝部と、回転軸方向他端側に形成された第2溝部とを有し、前記凹凸検出部は、前記第1溝部及び前記第2溝部を夫々検出する2つの検出素子を備えていることを特徴とする。
【0009】
第3発明に係るアキシャルモータは、前記第1溝部は、前記第2溝部に対して周方向に偏倚していることを特徴とする。
【0010】
第4発明に係るアキシャルモータは、前記凹凸は歯車状であることを特徴とする。
【0011】
第5発明に係るアキシャルモータは、前記凹凸は、前記磁心よりも前記ステータの径方向外側に位置していることを特徴とする。
【0012】
第6発明に係るアキシャルモータは、前記磁心は圧粉磁性体を有することを特徴とする。
【0013】
第7発明に係るインホイールモータは、第1発明乃至第6発明のいずれか一つに記載のアキシャルモータと、該アキシャルモータにて回転する有底円筒状のホイールとを備え、前記アキシャルモータは、前記ホイールの内側に配されていることを特徴とする。
【0014】
第1及び第7発明にあっては、回転位置検出用の凹凸とロータとが一体形成されているため、別体の被検出体をロータに設ける場合に比べて、部品点数及び組立工数を減少させ、低コストで凹凸を構成することができる。
凹凸検出部はロータの外周面に対向するように、ロータの径方向外側に配されている。ロータの径方向外側は、摩擦部分が少ないため、ロータの回転軸まわりに比べて低温である。また、凹凸検出部はハウジングの凹部に嵌挿されているため、凹凸検出部の熱はハウジングに伝導し易く、効果的に外部に放出される。従って、従来のアキシャルモータに比べて温度特性が劣る安価な凹凸検出部で構成することができる。
従ってまた、上述のアキシャルモータを有底円筒状のホイールの内側に配することにより、部品点数及び組立工数を減少させ、安価な凹凸検出部を用いて低コストで構成することができるインホイールモータを構成することができる。
なお、ステータ及びロータは円盤状であるが、外形が円盤状であれば、その一部に凹凸又は孔部が形成されていても良い。例えばステータを円環状に構成しても良い。また、ハウジングの凹部は、底を有する穴状のみならず、内外に嵌通した孔状の凹部も含まれる。
【0015】
第2及び第7発明にあっては、回転位置検出用の第1溝部は、ロータの外周面における回転軸方向一端側に形成され、第2溝部は他端側に形成されている。凹凸検出部は、一の検出素子で第1溝部を検出し、他の検出素子で第2溝部を検出する。凹凸検出部は異なる2つの検出系でロータの回転位置を検出するため、検出精度が向上する。
【0016】
第3及び第7発明にあっては、第1溝部及び第2溝部は周方向に偏倚しており、凹凸検出部は2つの検出素子にて第1溝部及び第2溝部を夫々検出する。第1溝部及び第2溝部は周方向に偏倚しているため、凹凸検出部の各検出素子は異なるタイミングで第1溝部及び第2溝部を検出する。一の方向にロータが回転している場合、第1溝部が検出された直後に第2溝部が検出され、他の方向にロータが回転している場合、第2溝部が検出された直後に第1溝部が検出される。従って、各検出素子による凹凸の検出タイミングを比較することによって、ロータの回転方向を特定する情報を得ることができる。
【0017】
第4及び第7発明にあっては、回転位置検出用の凹凸は歯車状である。従って、ロータに溝部を形成する場合に比べて切削等の形成が容易であり、より低コストで凹凸及びロータを一体形成することができる。
【0018】
第5及び第7発明にあっては、ロータに形成された凹凸は、ステータの磁心よりも径方向外側に位置しているため、径方向内側に位置する場合に比べて、凹凸検出部はステータで発生した磁場の影響を受けにくく、正確にロータの回転位置を検出することができる。
【0019】
第6及び第7発明にあっては、ステータは圧粉磁性体からなる磁心を備えているため、渦電流損失を効果的に低減することができる。また、磁気特性が等方的であるため、積層鋼板にてステータを構成する場合に比して、磁心部の成形が容易であり、アキシャルモータの磁気結合を効率的に形成することができる。結果として、アキシャルモータのトルクを向上させることができる。言い換えれば、アキシャルモータのトルクを低下させずに、アキシャルモータの径方向及び軸方向の寸法、又は径方向若しくは軸方向の寸法を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被検出体である凹凸とロータとを一体形成することによって、部品点数及び組立工数を減少させ、更にロータの外周面に対向するハウジングの凹部に凹凸検出部を挿嵌することによって、寸法の大形化を最小限に抑えてロータの回転検出機能を低コストで備えることができることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るアキシャルモータ1を模式的に示す側断面図である。本発明の実施の形態に係るアキシャルモータ1は、回転軸方向に偏平な中空略円柱状のモータハウジング2を備えている。
【0022】
モータハウジング2は、回転軸方向に分離可能な金属製の出力側ハウジング半体21及び反出力側ハウジング半体22にて構成されている。なお、出力側は図1中左側、反出力側は右側を示している。モータハウジング2は、円盤状のロータ5と、ロータ5の回転軸方向両側に夫々対向配置した円環状の出力側ステータ3及び反出力側ステータ4と、回転検出器7とを収容しており、出力側ハウジング半体21及び反出力側ハウジング半体22は、ボルト23にて締結されている。
【0023】
図2は、図1のII−II線断面図である。出力側ハウジング半体21はモータハウジング2の出力側(左側)を構成する底浅の有底円筒状であり、出力側ハウジング半体21の円板状部分21a内面には出力側ステータ3が配されている。
【0024】
出力側ステータ3は、円環状のステータ基板30を備えている。ステータ基板30の周縁部分にはねじ止め用のねじ挿通孔が複数形成されており、ステータ基板30はボルト33にて、出力側ハウジング半体21の円板状部分21aにねじ止め固定されている。
ステータ基板30の反出力側(右側)の円環面には、複数の扇状の磁心部31が周方向に等配されており、磁心部31には夫々コイル32が巻回されている。磁心部31は圧粉磁性体にて構成されており、ステータ基板30は磁心部31に比べて高強度の金属にて構成されている。
磁心部31は、金属磁性粒子と、金属磁性粒子の表面を取り囲む絶縁被膜とを有する複数の複合磁性粒子を備えている。なお、複数の複合磁性粒子は、該複合磁性粒子が有する凹凸の噛み合わせ及びバインダの結着力等によって結合されている。
絶縁被膜は、金属磁性粒子間の絶縁層として機能する。金属磁性粒子を絶縁被膜で覆うことによって、この軟磁性材料を加圧成形して得られる磁心部31の電気抵抗率を大きくすることができる。これにより、金属磁性粒子間に渦電流が流れるのを抑制して、磁心部31の渦電流損を低減させることができる。また、磁気特性が等方的であるため、積層鋼板にてステータを構成する場合に比して、磁心部31の成形が容易であり、アキシャルモータ1の磁気結合を効率的に形成することができ、アキシャルモータ1の出力を向上させることができる。
【0025】
絶縁被膜の平均膜厚は、10nm以上1μm以下であることが好ましい。絶縁被膜の平均膜厚を10nm以上とすることによって、トンネル電流を抑制するとともに、渦電流損を効果的に抑制することができる。絶縁被膜の平均膜厚を1μm以下とすることによって、加圧成形時に絶縁被膜がせん断破壊することを防止できる。また、軟磁性材料に占める絶縁被膜の割合が大きくなりすぎないので、軟磁性材料を加圧成形して得られる磁心部31の磁束密度が著しく低下することを防止できる。
【0026】
絶縁被膜は、リン酸鉄、リン酸マンガン等のガラス系被膜、シリカ等のセラミックス被膜、及びシリコン樹脂等の樹脂被膜のいずれかを用いてなる一層又は複数層の構造であることが好ましい。
なお、金属磁性粒子、絶縁被膜等の混合により、金属磁性粒子を絶縁被膜にて被覆してなる磁心部31を説明したが、単に樹脂、潤滑剤等を金属磁性粒子に添加して磁心部を構成しても良い。
【0027】
反出力側ステータ4は、出力側ステータ3と同様の構成であり、円環状のステータ基板40、磁心部41、及びコイル42を備えている。反出力側ハウジング半体22は反出力側(右側)を構成する底浅の有底円筒状であり、反出力側ステータ4は、出力側ステータ3と同様、反出力側ハウジング半体22の円板状部分22aにボルト43にてねじ止め固定されている。
【0028】
図3は、図1のIII−III線断面図である。
ロータ5は、円盤状のロータ本体50を備えた永久磁石型である。ロータ本体50の出力側(左側)には、図1に示すように出力側ステータ3の磁心部31及びコイル32に対向するように複数の扇状の出力側永久磁石51が等配されている。各出力側永久磁石51は、隣同士が異極となるように磁化されている。同様に、ロータ5の反出力側(右側)には反出力側ステータ4の磁心部41及びコイル42に対向するように複数の扇状の反出力側永久磁石52が等配されている。
また、ロータ本体50の中心部分には孔部50aが形成されており、孔部50aには、ロータ5と一体的に回転するように出力軸53が圧入されている。出力軸53の一端部は反出力側ハウジング半体22に軸受60を介して回動可能に支持されている。より詳細には反出力側ハウジング半体22を構成する円板状部分22aの内面、略中心部分に凹状の軸受座22bが形成されていて、軸受座22bに軸受60の外輪が圧入され、軸受60の内輪に出力軸53の一端部が圧入されている。出力軸53の他端側も同様にして、出力側ハウジング半体21の略中心部分に形成された出力軸挿通孔50aに軸受61を介して回動可能に支持されている。なお、なお、軸受60,61は、潤滑油がモータハウジング2内に漏れ出ないように封止するシール部材を備えたものを使用すると良い。該潤滑油が、電気系統に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0029】
図4は、回転検出器7の要部を模式的に示す側断面図、図5は、ロータ5の外周面を示す模式図である。図6は、回転検出器7を取り外した状態を示すアキシャルモータ1の分解斜視図である。
【0030】
回転検出器7はホールIC72をモールドしてなる円柱状の凹凸検出部70と、凹凸検出部70の上端部から径方向外側に延設された検出器固定用フランジ71とを備えている。また、回転検出器7は、ロータ本体50の外周面に沿って刻設された回転検出用の複数の溝部74を備えている。各溝部74は磁心部31,41及びコイル32,42の径方向外側に位置するように形成されている。つまり、溝部74は、回転軸方向から見て、溝部74と、磁心部31,41及びコイル32,42とが重なり合わないような位置に形成されている。
また、各溝部74の周方向一端部と、出力側永久磁石51及び反出力側永久磁石52の周方向端部とが略一致するように形成されている。溝部74の端部と、出力側永久磁石51及び反出力側永久磁石52の周方向端部とが略一致しているため、出力側永久磁石51と、反出力側永久磁石52との境界部分を検出することができ、ブラシレス型のアキシャルモータにおける各相コイル32,42への通電方向の切り換え制御を簡単に行うことができる。
【0031】
ホールIC72は、磁気量を検出する一又は複数のホール素子、ホール素子の信号を増幅するオペアンプ、増幅された信号及び基準信号を比較するコンパレータ等を備えており、例えば溝部74がホールIC72の検出域内にある場合、ハイレベルの検出信号を出力し、溝部74が検出域外にある場合、ローレベルの検出信号を出力するように構成されている。
【0032】
反出力側ハウジング半体22は、モータハウジング2の外側から回転検出器7を着脱可能に支持する検出器支持孔22c(凹部)を外周面の適宜箇所に有しており、検出器支持孔22cに凹凸検出部70が密着するように挿入された状態で検出器固定用フランジ71が反出力側ハウジング半体22にボルト75にて固定されている。ホールIC72には検出信号を出力するためのリード線73の一端が接続されており、他端が凹凸検出部70及び検出器固定用フランジ71を通じてモータハウジング2の外部に引き出されている。
【0033】
図7は、本発明の実施の形態に係るアキシャルモータ1を備えたインホイールモータの構成を模式的に示す側断面図である。インホイールモータは、有底円筒状のホイール9及びアキシャルモータ1を備えており、懸架装置の適宜箇所、例えばサスペンションアームに配設されている。
【0034】
ホイール9は、中心部に孔部が形成されたディスク部90と、該ディスク部90の周縁部から車体側へ延設された筒部91とを有しており、アキシャルモータ1の出力軸53の先端部分がディスク部90の孔部に挿通し、ナット94にて締結されている。筒部91の外周面にはタイヤ93が装着されるホイールリム92が溶接されている。
なお、アキシャルモータ1は四輪の電気自動車のみならず、ハイブリッド車、電動二輪車、電動車椅子等、タイヤの電動駆動を要する各種機器に適用することができる。
【0035】
実施の形態に係るアキシャルモータ1及びインホイールモータにあっては、回転位置を検出するための被検出体を構成する溝部74と、ロータ5とが一体形成されているため、部品点数及び組立工数を削減することができる。
また、反出力側ハウジング半体22に形成された検出器支持孔22cに凹凸検出部70が嵌挿しているため、アキシャルモータ1の寸法の大形化を最小限に抑えることができる。
更に、金属製の反出力側ハウジング半体22に形成された検出器支持孔22cと円柱状の凹凸検出部70とが密着しているため、凹凸検出部70が帯びた熱はモータを説明に伝導し、効率的に放熱される。また、アキシャルモータ1の回転軸周りに比べて、ロータ5の径方向外側の方が低温である。従って、耐熱温度が低い安価な凹凸検出部70にて構成することができる。
【0036】
以上より、本実施の形態によれば、回転検出機能を低コストで備えることができ、寸法の大形化を最小限に抑えることができる。
【0037】
また、溝部74は磁心部31,41及びコイル32,42よりも径方向外側に位置しているため、出力側ステータ3及び反出力側ステータ4で発生する磁場の影響を回避することができ、より正確にロータ5の回転を検出することができる。
【0038】
更に、磁心部31,41を圧粉磁性体にて構成することにより、アキシャルモータ1のトルクを低下させずに、アキシャルモータ1の径方向及び軸方向の寸法、又は径方向若しくは軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0039】
更にまた、ロータ5に形成した溝部74にてロータ5の回転を検出するように構成してあるため、凸部を形成する場合に比べて、アキシャルモータ1の径方向寸法をより小さくすることができる。
【0040】
更にまた、ロータ5の回転軸方向両側に2つの出力側ステータ3及び反出力側ステータ4を配することにより、より出力を向上させることができる。
【0041】
更にまた、回転検出器7はモータハウジング2の外側から挿脱できる構成である。従って、モータハウジング2を分解することなく、回転検出器7を着脱することができ、製造及び修理時における取扱性を向上させることができる。
【0042】
更にまた、回転検出器7はロータ5の径方向外側に配されているため、径方向内側に配される場合に比べて、溝部74の長さを長く、また溝部74の数を多く設けることができるため、回転検出精度を向上させることができる。
【0043】
なお、実施の形態にあっては、周方向に並設された1組の溝部を形成し、ロータの回転を検出するように構成してあるが、凹凸の形状はこれに限定されない。
【0044】
図8は、第1の変形例に係る回転検出器207の構成を模式的に示す側断面図、図9は、ロータ250の外周面を示す模式図である。第1の変形例に係る回転検出系を構成するロータ250の外周面の出力側(左側)には、周方向に沿って複数の第1溝部274aが刻設されており、反出力側(右側)には、周方向に沿って複数の第2溝部274bが刻設されている。また、第1溝部274aは第2溝部274bに対して周方向に適宜長偏倚している。
【0045】
回転検出器207は、第1溝部274a及び第2溝部274bを夫々検出可能なホールIC272を備えている。ホールIC272は、第1溝部274aを検出する第1ホール素子272aと、第2溝部274bを検出する第2ホール素子272bと、集積回路272cとを備えている。集積回路272cは、第1及び第2ホール素子272a,272bの検出結果に基づいて、回転数、回転方向、回転位置等を算出し、回転数等を示す情報を出力する。なお、単純に第1溝部274a及び第2溝部274bを検出した場合にハイレベル又はローレベルの信号を出力するように構成しても良い。
【0046】
第1の変形例にあっては、第1溝部274a及び第1ホール素子272aと、第2溝部274b及び第2ホール素子272bとが異なる検出系を構成しているため、回転に係る検出精度をより向上させることができる。
【0047】
また、第1溝部274aは第2溝部274bに対して偏倚しているため、第1溝部274aを検出する第1ホール素子272aの信号と、第2溝部274bを検出する第2ホール素子272bの信号とを比較することによって、ロータ250の回転方向を特定することができる。
【0048】
図10は、第2の変形例に係る回転検出器を構成するロータ350の正面図である。第2の変形例に係るアキシャルモータは、溝部に代えて平歯車状の凹凸374を外周面に形成したロータ350を備えている。回転検出器は平歯車状の凹凸374を検出することによって、ロータ350の回転を検出する。
【0049】
第2の変形例にあっては、回転位置検出用の凹凸374は平歯車状である。従って、ロータ350に溝部を形成する場合に比べて、簡易に切削して形成することができ、より低コストで凹凸374及びロータ350を一体形成することができる。従って、回転検出機能を有するアキシャルモータ及びインホイールモータをより低コストで構成することができる。なお、平歯車状の凹凸374を説明したが、はすば歯車状に形成しても良い。
【0050】
また本実施の形態にあっては、2つの出力側ステータ及び反出力側ステータを備えたアキシャルモータを説明したが、一つのステータを備えるように構成しても良い。
【0051】
更に、圧粉磁性体を構成する金属磁性粒子を被覆する絶縁被膜として、リン酸鉄、シリカ、シリコン樹脂等を説明したが、後述するような他の材質であっても良い。
【0052】
例えば、ガラス系被膜としては、リン酸化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物、又はホウ素化合物などよりなっていることが好ましい。具体的には、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、硅リン酸、酸化シリコン、酸化チタン、又は酸化ジルコニウムなどよりなっていることが好ましい。
【0053】
セラミックス被膜としては、アルミナ、又はマグネシア等を含んでいることが好ましい。
【0054】
樹脂としては、イミド系樹脂、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂、又は高級脂肪酸が用いられることが好ましい。具体的には、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド又はポリエーテルエーテルケトン、高分子量ポリエチレン、全芳香族ポリエステルなどの熱可塑性樹脂や、全芳香族ポリイミド、非熱可塑性ポリアミドイミドなどの非熱可塑性樹脂や、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸カルシウム、オレイン酸リチウム又はオレイン酸カルシウムなどの高級脂肪酸塩が用いられることが好ましい。また、これらの有機物を互いに混合して用いることもできる。なお、高分子量ポリエチレンとは、分子量が10万以上のポリエチレンをいう。
【0055】
なお、絶縁被膜は、金属としてFe,Al,Ca,Mn,Zn,Mg,V,Cr,Y,Ba,Sr,又は希土類元素を用いた金属酸化物、金属窒化物、金属酸化物、リン酸金属塩化合物、ホウ酸金属塩化合物、又はケイ酸金属塩化合物などよりなっていても良い。
【0056】
また、絶縁被膜はAl,Si,Mg,Y,Ca,Zr,及びFeからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質のリン酸塩の非晶質化合物、前記物質のホウ酸塩の非晶質化合物よりなっていても良い。
【0057】
更に、絶縁被膜はAl,Si,Mg,Y,Ca,及びZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質の酸化物の非晶質化合物よりなっていても良い。
【0058】
なお、磁心部を構成する複合磁性粒子が1層の絶縁被膜により構成されている場合について示しているが、磁心部21aを構成する複合磁性粒子が以下に述べるように複数層の絶縁被膜により構成されていても良い。
【0059】
具体的には、例えば磁心部において、絶縁被膜は一の絶縁被膜と、他の絶縁被膜とを有していても良い。そして、一の絶縁被膜は金属磁性粒子の表面を取り囲んでおり、他の絶縁被膜は一の絶縁被膜の表面を取り囲んでいる。この場合には、一の絶縁被膜として、ガラス系被膜、セラミックス被膜を用い、他の絶縁被膜として、樹脂被膜を用いることが好ましい。
【0060】
また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係るアキシャルモータを模式的に示す側断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】回転検出器の要部を模式的に示す側断面図である。
【図5】ロータの外周面を示す模式図である。
【図6】回転検出器を取り外した状態を示すアキシャルモータの分解斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るアキシャルモータを備えたインホイールモータの構成を模式的に示す側断面図である。
【図8】第1の変形例に係る回転検出器の構成を模式的に示す側断面図である。
【図9】ロータの外周面を示す模式図である。
【図10】第2の変形例に係る回転検出器を構成するロータの正面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 アキシャルモータ
2 モータハウジング
3 出力側ステータ
4 反出力側ステータ
5 ロータ
9 ホイール
31,41 磁心部
7 回転検出器
70 検出部
71 検出器固定用フランジ
72 ホールIC
73 リード線
74 溝部
272a 第1ホール素子
272b 第2ホール素子
274a 第1溝部
274b 第2溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に磁心が配された円盤状のステータ及びロータをその回転軸方向に対向配置し、該ステータ及びロータをハウジングに収容してなるアキシャルモータにおいて、
前記ロータの外周面に一体形成された凹凸と、
前記凹凸を検出する凹凸検出部と
を備え、
前記ハウジングは凹部を備え、前記凹凸検出部は前記外周面に対向するように前記凹部に嵌挿されている
ことを特徴とするアキシャルモータ。
【請求項2】
前記凹凸は、前記外周面の回転軸方向一端側に形成された第1溝部と、回転軸方向他端側に形成された第2溝部とを有し、
前記凹凸検出部は、
前記第1溝部及び前記第2溝部を夫々検出する2つの検出素子を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のアキシャルモータ。
【請求項3】
前記第1溝部は、前記第2溝部に対して周方向に偏倚している
ことを特徴とする請求項2に記載のアキシャルモータ。
【請求項4】
前記凹凸は歯車状である
ことを特徴とする請求項1に記載のアキシャルモータ。
【請求項5】
前記凹凸は、
前記磁心よりも前記ステータの径方向外側に位置している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載のアキシャルモータ。
【請求項6】
前記磁心は圧粉磁性体を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載のアキシャルモータ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載のアキシャルモータと、
該アキシャルモータにて回転する有底円筒状のホイールと
を備え、
前記アキシャルモータは、前記ホイールの内側に配されていることを特徴とするインホイールモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−295212(P2008−295212A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138309(P2007−138309)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】