アモルファスカーボン膜の形成方法および形成装置
【課題】カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜の形成方法および形成装置を提供する。
【解決手段】制御部100は、昇温用ヒータ16を制御して、複数枚の半導体ウエハWが収容された反応管2内を所定の温度に加熱する。次に、制御部100は、MFC制御部を制御して、加熱された反応管2内にアミノ系シランガスを供給する。そして、制御部100は、昇温用ヒータ16を制御して、反応管2内を所定の温度に加熱し、MFC制御部を制御して、加熱された反応管2内に処理ガス導入管17からエチレンを供給することにより、半導体ウエハWにアモルファスカーボン膜を形成する。
【解決手段】制御部100は、昇温用ヒータ16を制御して、複数枚の半導体ウエハWが収容された反応管2内を所定の温度に加熱する。次に、制御部100は、MFC制御部を制御して、加熱された反応管2内にアミノ系シランガスを供給する。そして、制御部100は、昇温用ヒータ16を制御して、反応管2内を所定の温度に加熱し、MFC制御部を制御して、加熱された反応管2内に処理ガス導入管17からエチレンを供給することにより、半導体ウエハWにアモルファスカーボン膜を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファスカーボン膜の形成方法および形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の製造プロセスにおいては、配線部の抵抗や容量の一層の低減を図るために、低誘電率の層間絶縁膜の開発が進められており、低誘電率の層間絶縁膜として、アモルファスカーボン膜を用いることが提案されている。また、集積回路の製造工程では、ハードマスクとして、アモルファスカーボン膜が使用されている。
【0003】
このようなアモルファスカーボン膜は、例えば、特許文献1に、平行平板型のプラズマCVD装置を用いて、チャンバ内に環状炭化水素ガスを供給し、チャンバ内にプラズマを生成して成膜することが提案されているように、枚葉式のプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5981000号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような枚葉式のプラズマCVD装置を用いた薄膜の形成では、一般に、カバレッジ性能が悪いという傾向がある。このため、カバレッジ性能の良い装置、例えば、バッチ式の縦型CVD装置を用いて、アモルファスカーボン膜を形成することが検討されている。
【0006】
しかし、縦型のバッチ式CVD装置を用いてアモルファスカーボン膜を形成すると、形成されたアモルファスカーボン膜表面の平坦度が悪く、表面ラフネスが悪化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜の形成方法および形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかるアモルファスカーボン膜の形成方法は、
複数枚の被処理体が収容された反応室内を所定の温度に加熱し、加熱した反応室内に成膜用ガスを供給して被処理体にアモルファスカーボン膜を形成するアモルファスカーボン膜の形成方法であって、
前記被処理体にアモルファスカーボン膜を形成する前に、前記反応室内にアミノ系シランガスを供給する、ことを特徴とする。
【0009】
前記反応室内に、前記アモルファスカーボン膜を形成する反応室内の温度よりも低い温度で前記アミノ系シランガスを供給することが好ましい。
前記反応室内の温度を室温〜700℃に設定することが好ましい。
【0010】
本発明の第2の観点にかかるアモルファスカーボン膜の形成装置は、
複数枚の被処理体を収容する反応室と、
前記反応室内を所定の温度に加熱する加熱手段と、
前記反応室内に成膜用ガスを供給する成膜用ガス供給手段と、
前記反応室内にアミノ系シランガスを供給するアミノ系シランガス供給手段と、
装置の各部を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記アミノ系シランガス供給手段を制御して前記反応室内にアミノ系シランガスを供給した後、前記加熱手段を制御して反応室内を所定の温度に加熱し、前記成膜用ガス供給手段を制御して所定の温度に加熱された反応室内に成膜用ガスを供給して当該被処理体にアモルファスカーボン膜を形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の熱処理装置を示す図である。
【図2】図1の制御部の構成を示す図である。
【図3】高温N2パージ工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するレシピを示した図である。
【図4】高温N2パージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の成膜レートを示す図である。
【図5】高温N2パージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の表面ラフネス及びカバレッジ性能を示す図である。
【図6】アンモニアパージ工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するレシピを示した図である。
【図7】アンモニアパージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の成膜レートを示す図である。
【図8】アンモニアパージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の表面ラフネス及びカバレッジ性能を示す図である。
【図9】アンモニアパージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の形成条件及び表面粗さ(Ra)を示す図である。
【図10】BTBASを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するレシピを示した図である。
【図11】BTBASを用いて疎水性層形成工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜、及び、アンモニアパージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の表面粗さ(Ra)を示す図である。
【図12】DCSを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するレシピを示した図である。
【図13】DCS、BTBASを用いて疎水性層形成工程を実施し、成膜したアモルファスカーボン膜の表面粗さ(Ra)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のアモルファスカーボン膜の形成方法および形成装置について説明する。本実施の形態では、図1に示すバッチ式の縦型熱処理装置を用いた場合を例に本発明を説明する。
【0014】
図1に示すように、熱処理装置1は、反応室を形成する反応管2を備えている。反応管2は、例えば、長手方向が垂直方向に向けられた略円筒状に形成されている。反応管2は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0015】
反応管2の上端には、上端側に向かって縮径するように略円錐状に形成された頂部3が設けられている。頂部3の中央には反応管2内のガスを排気するための排気口4が設けられ、排気口4には排気管5が気密に接続されている。排気管5には、図示しないバルブ、後述する真空ポンプ127などの圧力調整機構が設けられ、反応管2内を所望の圧力(真空度)に制御する。
【0016】
反応管2の下方には、蓋体6が配置されている。蓋体6は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。また、蓋体6は、後述するボートエレベータ128により上下動可能に構成されている。そして、ボートエレベータ128により蓋体6が上昇すると、反応管2の下方側(炉口部分)が閉鎖され、ボートエレベータ128により蓋体6が下降すると、反応管2の下方側(炉口部分)が開口される。
【0017】
蓋体6の上部には、保温筒7が設けられている。保温筒7は、反応管2の炉口部分からの放熱による反応管2内の温度低下を防止する抵抗発熱体からなる平面状のヒータ8と、このヒータ8を蓋体6の上面から所定の高さに支持する筒状の支持体9とから主に構成されている。
【0018】
また、保温筒7の上方には、回転テーブル10が設けられている。回転テーブル10は、被処理体、例えば、半導体ウエハWを収容するウエハボート11を回転可能に載置する載置台として機能する。具体的には、回転テーブル10の下部には回転支柱12が設けられ、回転支柱12はヒータ8の中央部を貫通して回転テーブル10を回転させる回転機構13に接続されている。回転機構13は図示しないモータと、蓋体6の下面側から上面側に気密状態で貫通導入された回転軸14を備える回転導入部15とから主に構成されている。回転軸14は回転テーブル10の回転支柱12に連結され、モータの回転力を回転支柱12を介して回転テーブル10に伝える。このため、回転機構13のモータにより回転軸14が回転すると、回転軸14の回転力が回転支柱12に伝えられて回転テーブル10が回転する。
【0019】
回転テーブル10上には、ウエハボート11が載置されている。ウエハボート11は、半導体ウエハWが垂直方向に所定の間隔をおいて複数枚収容可能に構成されている。このため、回転テーブル10を回転させるとウエハボート11が回転し、この回転により、ウエハボート11内に収容された半導体ウエハWが回転する。ウエハボート11は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0020】
また、反応管2の周囲には、反応管2を取り囲むように、例えば、抵抗発熱体からなる昇温用ヒータ16が設けられている。この昇温用ヒータ16により反応管2の内部が所定の温度に加熱され、この結果、半導体ウエハWが所定の温度に加熱される。
【0021】
反応管2の下端近傍の側壁には、複数の処理ガス導入管17が挿通(接続)されている。なお、図1では処理ガス導入管17を1つだけ描いている。処理ガス導入管17には、図示しない処理ガス供給源が接続されており、処理ガス供給源から処理ガス供給管17を介して所望量の処理ガスが反応管2内に供給される。
【0022】
処理ガスとしては、アモルファスカーボン膜を成膜する成膜用ガスがある。アモルファスカーボン膜を成膜する成膜用ガスとしては、例えば、エチレン(C2H4)、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、アセチレン(C2H2)、ブチン(C4H6)等が挙げられる。本実施の形態では、後述するように、成膜用ガスとして、C2H4が用いられている。
【0023】
また、後述するように、アモルファスカーボン膜を成膜する被処理体(半導体ウエハW)にシリコン層(Si層)を形成する場合、Si層を形成するためのシリコンソースが処理ガスとして、処理ガス供給管17を介して、反応管2内に供給される。
シリコンソースとしては、アミノ系シラン、DCS(ジクロロシラン)、HCD(ヘキサクロロジシラン)等が用いられる。アミノ系シランとしては、塩素(Cl)を含まないアミノ系シランであることが好ましい。塩素を含まないことにより、インキュベーションタイムが短くすることができるためである。このようなアミノ系シランとしては、例えば、TDMAS(トリジメチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)、BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)、BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、DMAS(ジメチルアミノシラン)、DEAS(ジエチルアミノシラン)、DPAS(ジプロピルアミノシラン)、およびBAS(ブチルアミノシラン)が挙げられる。本実施の形態では、後述するように、シリコンソースとして、BTBAS、DCSが用いられている。
【0024】
反応管2の下端近傍の側面には、パージガス供給管18が挿通されている。パージガス供給管18には、図示しないパージガス供給源が接続されており、パージガス供給源からパージガス供給管18を介して所望量のパージガス、例えば、窒素ガスが反応管2内に供給される。
【0025】
また、後述するように、パージガスとして、アンモニアを反応管2内に供給する場合、図示しないアンモニア供給源がパージガス供給管18または処理ガス導入管17に接続され、アンモニア供給源からパージガス供給管18または処理ガス導入管17を介して、所望量のアンモニアが反応管2内に供給される。本実施の形態では、アンモニア供給源が処理ガス導入管17に接続され、処理ガス導入管17を介して、所望量のアンモニアが反応管2内に供給される。
【0026】
また、熱処理装置1は、装置各部の制御を行う制御部100を備えている。図2に制御部100の構成を示す。図2に示すように、制御部100には、操作パネル121、温度センサ(群)122、圧力計(群)123、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127、ボートエレベータ128等が接続されている。
【0027】
操作パネル121は、表示画面と操作ボタンとを備え、オペレータの操作指示を制御部100に伝え、また、制御部100からの様々な情報を表示画面に表示する。
【0028】
温度センサ(群)122は、反応管2内、排気管5内、処理ガス導入管17内等の各部の温度を測定し、その測定値を制御部100に通知する。
圧力計(群)123は、反応管2内、排気管5内、処理ガス導入管17内等の各部の圧力を測定し、その測定値を制御部100に通知する。
【0029】
ヒータコントローラ124は、ヒータ8、及び、昇温用ヒータ16を個別に制御するためのものであり、制御部100からの指示に応答して、これらに通電してこれらを加熱し、また、これらの消費電力を個別に測定して、制御部100に通知する。
【0030】
MFC制御部125は、処理ガス導入管17、及び、パージガス供給管18に設けられた図示しないマスフローコントローラ(MFC)を制御して、これらに流れるガスの流量を制御部100から指示された量にするとともに、実際に流れたガスの流量を測定して、制御部100に通知する。
【0031】
バルブ制御部126は、各管に配置されたバルブの開度を制御部100から指示された値に制御する。真空ポンプ127は、排気管5に接続され、反応管2内のガスを排気する。
【0032】
ボートエレベータ128は、蓋体6を上昇させることにより、回転テーブル10上に載置されたウエハボート11(半導体ウエハW)を反応管2内にロードし、蓋体6を下降させることにより、回転テーブル10上に載置されたウエハボート11(半導体ウエハW)を反応管2内からアンロードする。
【0033】
制御部100は、レシピ記憶部111と、ROM112と、RAM113と、I/Oポート114と、CPU115と、これらを相互に接続するバス116とから構成されている。
【0034】
レシピ記憶部111には、セットアップ用レシピと複数のプロセス用レシピとが記憶されている。熱処理装置1の製造当初は、セットアップ用レシピのみが格納される。セットアップ用レシピは、各熱処理装置に応じた熱モデル等を生成する際に実行されるものである。プロセス用レシピは、ユーザが実際に行う熱処理(プロセス)毎に用意されるレシピであり、例えば、反応管2への半導体ウエハWのロードから、処理済みのウエハWをアンロードするまでの、各部の温度の変化、反応管2内の圧力変化、処理ガスの供給の開始及び停止のタイミングと供給量などを規定する。
【0035】
ROM112は、EEPROM、フラッシュメモリ、ハードディスクなどから構成され、CPU115の動作プログラム等を記憶する記録媒体である。
RAM113は、CPU115のワークエリアなどとして機能する。
【0036】
I/Oポート114は、操作パネル121、温度センサ122、圧力計123、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127、ボートエレベータ128等に接続され、データや信号の入出力を制御する。
【0037】
CPU(Central Processing Unit)115は、制御部100の中枢を構成し、ROM112に記憶された制御プログラムを実行し、操作パネル121からの指示に従って、レシピ記憶部111に記憶されているレシピ(プロセス用レシピ)に沿って、熱処理装置1の動作を制御する。すなわち、CPU115は、温度センサ(群)122、圧力計(群)123、MFC制御部125等に反応管2内、処理ガス導入管17内、及び、排気管5内の各部の温度、圧力、流量等を測定させ、この測定データに基づいて、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127等に制御信号等を出力し、上記各部がプロセス用レシピに従うように制御する。
バス116は、各部の間で情報を伝達する。
【0038】
次に、以上のように構成された熱処理装置1を用いたアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。本発明のアモルファスカーボン膜の形成方法は、被処理体としての半導体ウエハWにアモルファスカーボン膜を形成する前に、半導体ウエハWのアモルファスカーボン膜形成領域に水が吸着されることを防止する吸着防止工程を実施する。吸着防止工程としては、高温N2パージにより半導体ウエハWからの水を除去する窒素パージ工程(高温N2パージ工程)、アンモニアパージにより半導体ウエハWからの水を除去するアンモニアパージ工程、半導体ウエハWに疎水性材料、例えば、ケイ素(Si)の層を形成する疎水性層形成工程などが挙げられる。以下、これらの工程を含むアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。
【0039】
まず、吸着防止工程として、高温N2パージにより半導体ウエハWからの水を除去する高温N2パージ工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。図3に高温N2パージ工程を備えるアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するためのレシピを示す。
【0040】
なお、本実施の形態では、半導体ウエハWにエチレン(C2H4)を供給して、半導体ウエハW上に所定厚のアモルファスカーボン膜を形成する場合を例に本発明を説明する。また、以下の説明において、熱処理装置1を構成する各部の動作は、制御部100(CPU115)により制御されている。また、各処理における反応管2内の温度、圧力、ガスの流量等は、前述のように、制御部100(CPU115)がヒータコントローラ124(ヒータ8、昇温用ヒータ16)、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127等を制御することにより、図3に示すレシピに従った条件になる。
【0041】
まず、反応管2内を所定の温度、例えば、図3(a)に示すように、300℃に設定する。また、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図3(c)に示すように、1slm(1リットル/min)の窒素を供給し、アモルファスカーボン膜を形成する被処理体としての半導体ウエハWが収容されているウエハボート11を蓋体6上に載置する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を上昇させ、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0042】
次に、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図3(c)に示すように、1slmの窒素を供給するとともに、反応管2内を所定の温度、例えば、図3(a)に示すように、950℃に設定する。また、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図3(b)に示すように、2000Pa(15Torr)に減圧する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(安定化工程)。
【0043】
ここで、反応管2内の温度は、800℃〜950℃であることが好ましく、850℃〜900℃であることがより好ましい。800℃より低いと半導体ウエハWからの水を除去できないおそれがあり、950℃より高いと半導体ウエハW上で表面荒れが発生するおそれがあるためである。
また、反応管2内の圧力は、13.3Pa(0.1Torr)〜6650Pa(50Torr)であることが好ましく、13.3Pa(0.1Torr)〜2660Pa(20Torr)であることがより好ましい。
【0044】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18から所定量、例えば、図3(c)に示すように、5slmの窒素(N2)を供給する窒素パージを行う(高温N2パージ工程)。この高温N2パージにより半導体ウエハWからの水が除去され、アモルファスカーボン膜形成領域に水が発生(吸着)しなくなる。このため、アモルファスカーボン膜成膜の際に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜反応が起こりにくくなり、表面ラフネスを良好にすることができる。
【0045】
次に、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図3(c)に示すように、1slmの窒素を供給する。続いて、反応管2内のガスを排気管5に排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図3(b)に示すように、2660Pa(20Torr)に設定する。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図3(a)に示すように、850℃に設定する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(パージ・安定化工程)。
【0046】
反応管2内の温度は、800℃〜900℃であることが好ましく、800℃〜850℃であることがより好ましい。反応管2内の温度が900℃より高いと、表面ラフネスが悪化するおそれがあるためである。一方、反応管2内の温度が800℃より低いと、反応管2内の圧力を低くすることができず、形成されるアモルファスカーボン膜表面の平坦度が悪化するおそれがあるためである。反応管2内の圧力は、13.3Pa(0.1Torr)〜6650Pa(50Torr)であることが好ましく、13.3Pa(0.1Torr)〜2660Pa(20Torr)であることがより好ましい。
【0047】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18からの窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量の成膜用ガスを反応管2内に導入する。本実施の形態では、例えば、図3(d)に示すように、エチレン(C2H4)を1slm(1リットル/min)供給する。反応管2内に成膜用ガスが導入されると、成膜用ガスが反応管2内で加熱され、半導体ウエハWの表面にアモルファスカーボン膜が形成される(成膜工程)。
【0048】
このように、成膜工程前に、半導体ウエハWからの水を除去する高温N2パージを実施しているので、成膜工程中に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜反応が起こりにくくなり、表面ラフネスが良好になる。また、バッチ式の縦型CVD装置を用いてアモルファスカーボン膜を形成しているので、カバレッジ性能が良好なアモルファスカーボン膜を形成できる。このため、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜を形成することができる。
【0049】
半導体ウエハWの表面に所定厚、例えば、30nmのアモルファスカーボン膜が形成されると、処理ガス導入管17からの成膜用ガスの導入を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から所定量、例えば、図3(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、反応管2内のガスを排気管5に排出する(パージ工程)。なお、反応管2内のガスを確実に排出するために、反応管2内のガスの排出及び窒素ガスの供給を複数回繰り返すことが好ましい。
【0050】
続いて、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図3(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、図3(b)に示すように、反応管2内の圧力を常圧に戻す。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図3(a)に示すように、300℃に設定する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を下降させることにより、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内からアンロードする(アンロード工程)。これにより、アモルファスカーボン膜の形成が終了する。
【0051】
次に、高温N2パージの効果を確認するため、被処理体としてSiウエハ、SiO2ウエハ、SiNウエハのそれぞれについて、前述の条件でアモルファスカーボン膜を形成した場合(実施例1)、成膜工程での反応管2内の温度及び圧力を800℃、6650Pa(50Torr)としてアモルファスカーボン膜を形成した場合(実施例2)、実施例1、2の条件で高温N2パージ工程を実施せずにアモルファスカーボン膜を形成した場合(比較例1、2)の成膜レートを測定した。その結果を図4に示す。また、その表面及び断面を電子顕微鏡(SEM)で観察し、表面ラフネスについて、非常に良い「◎」、良い「○」、やや悪い「△」、悪い「×」の4段階で評価した。さらに、カバレッジ性能についても測定した。これらの結果を図5に示す。
【0052】
実施例1、2と、比較例1、2とから、全ての被処理体について、高温N2パージ工程を実施することにより、成膜レート(nm/min)が向上することが確認できた。また、全ての被処理体について、高温N2パージ工程を実施することにより、表面ラフネスが良好になることが確認できた。なお、カバレッジ性能は、高温N2パージ工程の実施の有無に拘わらず、全て90%以上と良好であった。このように、高温N2パージ工程を実施することにより、成膜レートが向上するとともに、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜が形成されることが確認できた。
【0053】
次に、吸着防止工程として、アンモニアパージにより半導体ウエハWからの水を除去するアンモニアパージ工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。図6にアンモニアパージ工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するためのレシピを示す。
【0054】
まず、反応管2内を、図6(a)に示すように、300℃に設定する。また、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図6(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、半導体ウエハWが収容されているウエハボート11を蓋体6上に載置し、ボートエレベータ128により蓋体6を上昇させ、半導体ウエハWを反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0055】
次に、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図6(c)に示すように、1slmの窒素を供給するとともに、反応管2内を所定の温度、例えば、図6(a)に示すように、950℃に設定する。また、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図6(b)に示すように、16000Pa(120Torr)に減圧する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(安定化工程)。
【0056】
ここで、反応管2内の温度は、800℃〜950℃であることが好ましい。800℃より低いと表面ラフネスを良好にできないおそれがあり、950℃より高いと半導体ウエハW上で表面荒れが発生するおそれがあるためである。さらに、反応管2内の温度は、850℃〜950℃であることがより好ましい。係る範囲内で表面ラフネスが特に良好になるためである。
また、反応管2内の圧力は、133Pa(1Torr)〜53200Pa(400Torr)であることが好ましく、133Pa(1Torr)〜26600Pa(200Torr)であることがより好ましい。
【0057】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18から窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量、例えば、図6(e)に示すように、2slmのアンモニア(NH3)を供給するアンモニアパージを行う(アンモニアパージ工程)。このアンモニアパージにより半導体ウエハWからの水が除去され、アモルファスカーボン膜形成領域に水が発生(吸着)しなくなる。このため、アモルファスカーボン膜成膜の際に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜反応が起こりにくくなる。さらに、アンモニアパージにより、半導体ウエハWの表面窒化が促進されるので、半導体ウエハW上で表面荒れが発生しにくくなる。
【0058】
アンモニアパージが終了すると、処理ガス導入管17からのアンモニアの供給を停止する。次に、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図6(c)に示すように、1slmの窒素を供給する。続いて、反応管2内のガスを排気管5に排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図6(b)に示すように、2660Pa(20Torr)に設定する。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図6(a)に示すように、850℃に設定する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(パージ・安定化工程)。
【0059】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18からの窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量の成膜用ガス、例えば、図6(d)に示すように、エチレン(C2H4)を1slm供給する。反応管2内に成膜用ガスが導入されると、成膜用ガスが反応管2内で加熱され、半導体ウエハWの表面にアモルファスカーボン膜が形成される(成膜工程)。
【0060】
このように、成膜工程前に、半導体ウエハWからの水を除去するアンモニアパージを行っているので、成膜工程中に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜反応が起こりにくくなり、表面ラフネスが良好になる。特に、アモルファスカーボン膜の膜厚が薄く、半導体ウエハW上で表面荒れが発生しやすい場合であっても、アンモニアパージにより、半導体ウエハWの表面窒化を促進しているので、半導体ウエハW上で表面荒れが発生しにくい。このため、表面ラフネスをより良好にすることができる。
また、バッチ式の縦型CVD装置を用いてアモルファスカーボン膜を形成しているので、カバレッジ性能が良好なアモルファスカーボン膜を形成できる。このため、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜を形成することができる。
【0061】
半導体ウエハWの表面に所定厚、例えば、30nmのアモルファスカーボン膜が形成されると、処理ガス導入管17からの成膜用ガスの導入を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から所定量、例えば、図6(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、反応管2内のガスを排気管5に排出する(パージ工程)。
【0062】
続いて、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図6(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、図6(b)に示すように、反応管2内の圧力を常圧に戻す。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図6(a)に示すように、300℃に設定する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を下降させることにより、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内からアンロードする(アンロード工程)。これにより、アモルファスカーボン膜の形成が終了する。
【0063】
次に、アンモニアパージの効果を確認するため、被処理体としてSiウエハ、SiO2ウエハ、SiNウエハのそれぞれについて、前述の条件でアモルファスカーボン膜を形成した場合(実施例3)、成膜工程での反応管2内の温度及び圧力を800℃、6650Pa(50Torr)としてアモルファスカーボン膜を形成した場合(実施例4)の成膜レートを測定した。その結果を図7に示す。また、その表面及び断面を電子顕微鏡(SEM)で観察し、表面ラフネスについて、前述と同様に、非常に良い「◎」、良い「○」、やや悪い「△」、悪い「×」の4段階で評価した。さらに、カバレッジ性能についても測定した。これらの結果を図8に示す。なお、比較のため、前述の比較例1、2の結果を図7、8に示す。
【0064】
実施例3、4と、比較例1、2とから、全ての被処理体について、アンモニアパージ工程を実施することにより、成膜レート(nm/min)が向上することが確認できた。また、全ての被処理体について、アンモニアパージ工程を実施することにより、表面ラフネスがさらに良好になることが確認できた。カバレッジ性能については、アンモニアパージ工程の実施の有無に拘わらず、全て90%以上と良好であった。このように、アンモニアパージ工程を実施することにより、成膜レートが向上するとともに、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜が形成されることが確認できた。
【0065】
また、表面ラフネスについて、電子顕微鏡(SEM)での観察とは異なる評価方法により評価を行った。具体的には、図9(a)に示す各条件で、15nm厚のアモルファスカーボン膜を形成し、JIS B0601に準拠した原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて表面粗さ(Ra)を測定し、表面ラフネスを評価した。この結果を図9(b)に示す。
【0066】
図9に示すように、高温N2パージ工程を実施するよりもアンモニアパージ工程を実施する方が表面粗さ(Ra)の値が小さくなることが確認できた。このため、アモルファスカーボン膜の膜厚が薄く、半導体ウエハW上で表面荒れが発生しやすい場合には、高温N2パージ工程よりもアンモニアパージ工程を実施することが好ましいことが確認できた。なお、高温N2パージ工程での表面ラフネスの結果は、アンモニアパージ工程の結果に比べて悪いだけであり、この値であっても問題は生じない。
【0067】
また、アンモニアパージ工程での反応管2内の温度を800℃〜950℃にすることにより、表面ラフネスが良好になることが確認でき、さらに、850℃〜950℃にすることにより表面ラフネスが良好になることが確認できた。
【0068】
次に、吸着防止工程として、半導体ウエハWに疎水性材料の層を形成する疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。なお、本実施の形態では、半導体ウエハWにBTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)を供給して、半導体ウエハW上に所定厚のケイ素(Si)の層を形成する場合と、疎水性材料としてアミノ系シラン、例えば、BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)を用いて、半導体ウエハW上に所定厚の疎水性層(ケイ素(Si)の層)を形成する場合と、疎水性材料としてジクロロシラン(DCS)を用いて疎水性層(Siの層)を形成する場合とを例に本発明を説明する。
【0069】
まず、BTBASを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。図10にBTBASを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するためのレシピを示す。
【0070】
まず、反応管2内を、図10(a)に示すように、300℃に設定する。また、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図10(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、半導体ウエハWが収容されているウエハボート11を蓋体6上に載置し、ボートエレベータ128により蓋体6を上昇させ、半導体ウエハWを反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0071】
次に、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図10(c)に示すように、1slmの窒素を供給するとともに、反応管2内を所定の温度、例えば、図10(a)に示すように、550℃に設定する。また、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図10(b)に示すように、13.3Pa(0.1Torr)に減圧する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(安定化工程)。
【0072】
ここで、反応管2内の温度は、950℃以下であることが好ましい。950℃より高いと半導体ウエハW上で表面荒れが発生し、表面ラフネスが悪化するおそれがあるためである。さらに、反応管2内の温度は、後述する成膜工程時の反応管2内の温度以下であることが好ましい。Si層の形成は、比較的低温でも可能であり、成膜工程時の反応管2内の温度以下にすることにより、反応管2内の温度を低温化させることができるためである。例えば、成膜工程時の反応管2内の温度が700℃の場合、反応管2内の温度は、室温〜700℃であることが好ましく、400℃〜700℃であることがさらに好ましい。400℃以上とすることにより、BTBASの供給によってSi層が確実に形成されるためである。
また、反応管2内の圧力は、1.33Pa(0.01Torr)〜1330Pa(10Torr)であることが好ましく、13.3Pa(0.1Torr)〜133Pa(1Torr)であることがより好ましい。
【0073】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18から窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量、例えば、図10(e)に示すように、0.1slmのBTBASを供給して、半導体ウエハW上に所定厚のケイ素(Si)の層を形成する(疎水性層形成工程)。このSi層は、疎水性の層であり、アモルファスカーボン膜形成領域に水が吸着しにくくなる。このため、アモルファスカーボン膜成膜の際に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜反応が起こりにくくなり、表面ラフネスを良好にすることができる。
【0074】
半導体ウエハW上に所定厚のSi層が形成されると、処理ガス導入管17からのBTBASの供給を停止する。次に、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図10(c)に示すように、1slmの窒素を供給する。続いて、反応管2内のガスを排気管5に排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図10(b)に示すように、33250Pa(250Torr)に設定する。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図10(a)に示すように、700℃に設定する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(パージ・安定化工程)。
【0075】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18からの窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量の成膜用ガス、例えば、図10(d)に示すように、エチレン(C2H4)を1slm供給する。反応管2内に成膜用ガスが導入されると、成膜用ガスが反応管2内で加熱され、半導体ウエハWの表面にアモルファスカーボン膜が形成される(成膜工程)。
【0076】
このように、成膜工程前に、Si層を形成する疎水性層形成工程を行っているので、成膜工程中に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜(反応)が起こりにくくなり、表面ラフネスが良好になる。また、バッチ式の縦型CVD装置を用いてアモルファスカーボン膜を形成しているので、カバレッジ性能が良好なアモルファスカーボン膜を形成できる。このため、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜を形成することができる。
【0077】
さらに、本実施の形態では、疎水性層形成工程時の反応管2内の温度を、成膜工程時の反応管2内の温度である700℃以下にしているので、反応管2内の温度を低温化させることができる。
【0078】
半導体ウエハWの表面に所定厚のアモルファスカーボン膜が形成されると、処理ガス導入管17からの成膜用ガスの導入を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から所定量、例えば、図10(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、反応管2内のガスを排気管5に排出する(パージ工程)。
【0079】
続いて、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図10(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、図10(b)に示すように、反応管2内の圧力を常圧に戻す。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図10(a)に示すように、300℃に設定する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を下降させることにより、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内からアンロードする(アンロード工程)。これにより、アモルファスカーボン膜の形成が終了する。
【0080】
次に、Si層形成の効果を確認するため、被処理体としてSiウエハ、SiO2ウエハ、SiNウエハのそれぞれについて、前述の条件でアモルファスカーボン膜を形成し(実施例12)、JIS B0601に準拠した原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面粗さ(Ra)を測定し、表面ラフネスを評価した。また、比較のため、疎水性層形成工程に変えて、950℃、16000Pa(120Torr)でのアンモニアパージ工程を実施し、アモルファスカーボン膜を形成した場合(実施例13)についても同様に表面ラフネスを評価した。この結果を図11に示す。
【0081】
図11に示すように、疎水性層形成工程を実施することによりアンモニアパージ工程と同様に、表面ラフネスが良好になることが確認できた。また、実施例12、13について、カバレッジ性能を確認したところ、全て90%以上と良好であった。このため、疎水性層形成工程を実施することにより、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜が形成されることが確認できた。さらに、疎水性層形成工程を実施することにより反応管2内の温度を低温化できることが確認できた。
【0082】
次に、DCSを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。図12にDCSを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するためのレシピを示す。
【0083】
まず、反応管2内を、図12(a)に示すように、300℃に設定する。また、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図12(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、半導体ウエハWが収容されているウエハボート11を蓋体6上に載置し、ボートエレベータ128により蓋体6を上昇させ、半導体ウエハWを反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0084】
次に、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図12(c)に示すように、1slmの窒素を供給するとともに、反応管2内を所定の温度、例えば、図12(a)に示すように、630℃に設定する。また、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図12(b)に示すように、13.3Pa(0.1Torr)に減圧する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(安定化工程)。
【0085】
反応管2内の温度は、BTBASを用いた場合と同様に、950℃以下であることが好ましい。950℃より高いと半導体ウエハW上で表面荒れが発生し、表面ラフネスが悪化するおそれがあるためである。さらに、反応管2内の温度は、成膜工程時の反応管2内の温度以下であることが好ましい。Si層の形成は、比較的低温でも可能であり、成膜工程時の反応管2内の温度以下にすることにより、反応管2内の温度を低温化させることができるためである。例えば、成膜工程時の反応管2内の温度が800℃の場合、反応管2内の温度は、室温〜800℃であることが好ましく、400℃〜800℃であることがさらに好ましい。
反応管2内の圧力は、1.33Pa(0.01Torr)〜1330Pa(10Torr)であることが好ましく、13.3Pa(0.1Torr)〜133Pa(1Torr)であることがより好ましい。
【0086】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18から窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量、例えば、図10(e)に示すように、0.1slmのDCSを供給して、半導体ウエハW上に所定厚のケイ素(Si)の層を形成する(疎水性層形成工程)。
【0087】
半導体ウエハW上に所定厚のSi層が形成されると、処理ガス導入管17からのDCSの供給を停止する。次に、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図12(c)に示すように、1slmの窒素を供給する。続いて、反応管2内のガスを排気管5に排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図12(b)に示すように、6650Pa(50Torr)に設定する。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図12(a)に示すように、800℃に設定する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(パージ・安定化工程)。
【0088】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18からの窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量の成膜用ガス、例えば、図12(d)に示すように、エチレン(C2H4)を1slm供給する。反応管2内に成膜用ガスが導入されると、成膜用ガスが反応管2内で加熱され、半導体ウエハWの表面にアモルファスカーボン膜が形成される(成膜工程)。
【0089】
半導体ウエハWの表面に所定厚のアモルファスカーボン膜が形成されると、処理ガス導入管17からの成膜用ガスの導入を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から所定量、例えば、図12(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、反応管2内のガスを排気管5に排出する(パージ工程)。
【0090】
続いて、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図12(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、図12(b)に示すように、反応管2内の圧力を常圧に戻す。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図12(a)に示すように、300℃に設定する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を下降させることにより、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内からアンロードする(アンロード工程)。これにより、アモルファスカーボン膜の形成が終了する。
【0091】
次に、DCSを用いたSi層形成の効果を確認するため、被処理体としてSiO2ウエハを用い、前述の条件でアモルファスカーボン膜を形成し、JIS B0601に準拠した原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面粗さ(Ra)を測定し、表面ラフネスを評価した(実施例14)。なお、本例では、反応管2の上部(TOP)、中央部(CENTER)、下部(BOTTOM)の3箇所の位置で形成したアモルファスカーボン膜について表面ラフネスを評価した。また、BTBASを用いてSi層を形成し、同様の条件でアモルファスカーボン膜を形成した場合についても表面ラフネスを評価した(実施例15)。なお、DCSを用いたSi層形成ではDCSを10分間供給してSi層を形成し、BTBASを用いたSi層形成ではDCSを10分間供給してSi層を形成した。この結果を図13に示す。
【0092】
図13に示すように、実施例14、15の疎水性層形成工程を実施することにより、表面ラフネスが良好になることが確認できた。また、実施例14、15について、カバレッジ性能を確認したところ、全て90%以上と良好であった。このため、DCSを用いた疎水性層形成工程を実施しても、BTBASを用いた疎水性層形成工程を実施しても、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜が形成されることが確認できた。さらに、疎水性層形成工程を実施することにより反応管2内の温度を低温化できることが確認できた。また、DCSよりも、塩素を含まないBTBASを用いた疎水性層形成工程を実施する方が表面ラフネスが良好になることが確認できた。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態によれば、半導体ウエハWにアモルファスカーボン膜の形成する前に、高温N2パージ工程、アンモニアパージ工程、または、疎水性層形成工程の吸着防止工程を実施することにより、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜を形成することができる。さらに、高温N2パージ工程、または、アンモニアパージ工程を実施することにより、成膜レートを向上させることができ、疎水性層形成工程を実施することにより反応管2内の温度を低温化することができる。
【0094】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な他の実施の形態について説明する。
【0095】
上記実施の形態では、高温N2パージ工程、アンモニアパージ工程、または、疎水性層形成工程のいずれかの工程を実施した場合を例に本発明を説明したが、例えば、アモルファスカーボン膜を形成する下地層の種類、デバイスへの影響等を考慮し、これらの工程を組み合わせてもよい。
【0096】
上記実施の形態では、疎水性層形成工程において、Si層を形成した場合を例に本発明を説明したが、疎水性層はSi層に限定されるものではなく、デバイスへの影響がない範囲で、各種の疎水性材料からなる層を形成することが可能である。
【0097】
上記実施の形態では、疎水性層形成工程のSi層形成にBTBAS、DCSを用いた場合を例に本発明を説明したが、Si層を形成するための処理ガスは、これらに限定されるものでなく、TDMASのようなアミノシラン、HCDであってもよい。また、反応室2内の温度は、処理ガスにBTBASを用いた場合には室温〜600℃、処理ガスにDCSを用いた場合には400℃〜630℃、処理ガスにHCDを用いた場合には300℃〜550℃、処理ガスにTDMASを用いた場合には室温〜550℃とすることが好ましい。
【0098】
上記実施の形態では、熱処理装置として、単管構造のバッチ式熱処理装置の場合を例に本発明を説明したが、例えば、反応管2が内管と外管とから構成された二重管構造のバッチ式縦型熱処理装置に本発明を適用することも可能である。
【0099】
本発明の実施の形態にかかる制御部100は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROMなど)から当該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する制御部100を構成することができる。
【0100】
そして、これらのプログラムを供給するための手段は任意である。上述のように所定の記録媒体を介して供給できる他、例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システムなどを介して供給してもよい。この場合、例えば、通信ネットワークの掲示板(BBS)に当該プログラムを掲示し、これをネットワークを介して搬送波に重畳して提供してもよい。そして、このように提供されたプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜の形成に有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 熱処理装置
2 反応管
3 頂部
4 排気口
5 排気管
6 蓋体
7 保温筒
8 ヒータ
9 支持体
10 回転テーブル
11 ウエハボート
12 回転支柱
13 回転機構
14 回転軸
15 回転導入部
16 昇温用ヒータ
17 処理ガス導入管
18 パージガス供給管
100 制御部
111 レシピ記憶部
112 ROM
113 RAM
114 I/Oポート
115 CPU
116 バス
121 操作パネル
122 温度センサ
123 圧力計
124 ヒータコントローラ
125 MFC制御部
126 バルブ制御部
127 真空ポンプ
128 ボートエレベータ
W 半導体ウエハ
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファスカーボン膜の形成方法および形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の製造プロセスにおいては、配線部の抵抗や容量の一層の低減を図るために、低誘電率の層間絶縁膜の開発が進められており、低誘電率の層間絶縁膜として、アモルファスカーボン膜を用いることが提案されている。また、集積回路の製造工程では、ハードマスクとして、アモルファスカーボン膜が使用されている。
【0003】
このようなアモルファスカーボン膜は、例えば、特許文献1に、平行平板型のプラズマCVD装置を用いて、チャンバ内に環状炭化水素ガスを供給し、チャンバ内にプラズマを生成して成膜することが提案されているように、枚葉式のプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5981000号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような枚葉式のプラズマCVD装置を用いた薄膜の形成では、一般に、カバレッジ性能が悪いという傾向がある。このため、カバレッジ性能の良い装置、例えば、バッチ式の縦型CVD装置を用いて、アモルファスカーボン膜を形成することが検討されている。
【0006】
しかし、縦型のバッチ式CVD装置を用いてアモルファスカーボン膜を形成すると、形成されたアモルファスカーボン膜表面の平坦度が悪く、表面ラフネスが悪化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜の形成方法および形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかるアモルファスカーボン膜の形成方法は、
複数枚の被処理体が収容された反応室内を所定の温度に加熱し、加熱した反応室内に成膜用ガスを供給して被処理体にアモルファスカーボン膜を形成するアモルファスカーボン膜の形成方法であって、
前記被処理体にアモルファスカーボン膜を形成する前に、前記反応室内にアミノ系シランガスを供給する、ことを特徴とする。
【0009】
前記反応室内に、前記アモルファスカーボン膜を形成する反応室内の温度よりも低い温度で前記アミノ系シランガスを供給することが好ましい。
前記反応室内の温度を室温〜700℃に設定することが好ましい。
【0010】
本発明の第2の観点にかかるアモルファスカーボン膜の形成装置は、
複数枚の被処理体を収容する反応室と、
前記反応室内を所定の温度に加熱する加熱手段と、
前記反応室内に成膜用ガスを供給する成膜用ガス供給手段と、
前記反応室内にアミノ系シランガスを供給するアミノ系シランガス供給手段と、
装置の各部を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記アミノ系シランガス供給手段を制御して前記反応室内にアミノ系シランガスを供給した後、前記加熱手段を制御して反応室内を所定の温度に加熱し、前記成膜用ガス供給手段を制御して所定の温度に加熱された反応室内に成膜用ガスを供給して当該被処理体にアモルファスカーボン膜を形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の熱処理装置を示す図である。
【図2】図1の制御部の構成を示す図である。
【図3】高温N2パージ工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するレシピを示した図である。
【図4】高温N2パージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の成膜レートを示す図である。
【図5】高温N2パージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の表面ラフネス及びカバレッジ性能を示す図である。
【図6】アンモニアパージ工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するレシピを示した図である。
【図7】アンモニアパージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の成膜レートを示す図である。
【図8】アンモニアパージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の表面ラフネス及びカバレッジ性能を示す図である。
【図9】アンモニアパージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の形成条件及び表面粗さ(Ra)を示す図である。
【図10】BTBASを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するレシピを示した図である。
【図11】BTBASを用いて疎水性層形成工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜、及び、アンモニアパージ工程を実施して成膜したアモルファスカーボン膜の表面粗さ(Ra)を示す図である。
【図12】DCSを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するレシピを示した図である。
【図13】DCS、BTBASを用いて疎水性層形成工程を実施し、成膜したアモルファスカーボン膜の表面粗さ(Ra)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のアモルファスカーボン膜の形成方法および形成装置について説明する。本実施の形態では、図1に示すバッチ式の縦型熱処理装置を用いた場合を例に本発明を説明する。
【0014】
図1に示すように、熱処理装置1は、反応室を形成する反応管2を備えている。反応管2は、例えば、長手方向が垂直方向に向けられた略円筒状に形成されている。反応管2は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0015】
反応管2の上端には、上端側に向かって縮径するように略円錐状に形成された頂部3が設けられている。頂部3の中央には反応管2内のガスを排気するための排気口4が設けられ、排気口4には排気管5が気密に接続されている。排気管5には、図示しないバルブ、後述する真空ポンプ127などの圧力調整機構が設けられ、反応管2内を所望の圧力(真空度)に制御する。
【0016】
反応管2の下方には、蓋体6が配置されている。蓋体6は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。また、蓋体6は、後述するボートエレベータ128により上下動可能に構成されている。そして、ボートエレベータ128により蓋体6が上昇すると、反応管2の下方側(炉口部分)が閉鎖され、ボートエレベータ128により蓋体6が下降すると、反応管2の下方側(炉口部分)が開口される。
【0017】
蓋体6の上部には、保温筒7が設けられている。保温筒7は、反応管2の炉口部分からの放熱による反応管2内の温度低下を防止する抵抗発熱体からなる平面状のヒータ8と、このヒータ8を蓋体6の上面から所定の高さに支持する筒状の支持体9とから主に構成されている。
【0018】
また、保温筒7の上方には、回転テーブル10が設けられている。回転テーブル10は、被処理体、例えば、半導体ウエハWを収容するウエハボート11を回転可能に載置する載置台として機能する。具体的には、回転テーブル10の下部には回転支柱12が設けられ、回転支柱12はヒータ8の中央部を貫通して回転テーブル10を回転させる回転機構13に接続されている。回転機構13は図示しないモータと、蓋体6の下面側から上面側に気密状態で貫通導入された回転軸14を備える回転導入部15とから主に構成されている。回転軸14は回転テーブル10の回転支柱12に連結され、モータの回転力を回転支柱12を介して回転テーブル10に伝える。このため、回転機構13のモータにより回転軸14が回転すると、回転軸14の回転力が回転支柱12に伝えられて回転テーブル10が回転する。
【0019】
回転テーブル10上には、ウエハボート11が載置されている。ウエハボート11は、半導体ウエハWが垂直方向に所定の間隔をおいて複数枚収容可能に構成されている。このため、回転テーブル10を回転させるとウエハボート11が回転し、この回転により、ウエハボート11内に収容された半導体ウエハWが回転する。ウエハボート11は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0020】
また、反応管2の周囲には、反応管2を取り囲むように、例えば、抵抗発熱体からなる昇温用ヒータ16が設けられている。この昇温用ヒータ16により反応管2の内部が所定の温度に加熱され、この結果、半導体ウエハWが所定の温度に加熱される。
【0021】
反応管2の下端近傍の側壁には、複数の処理ガス導入管17が挿通(接続)されている。なお、図1では処理ガス導入管17を1つだけ描いている。処理ガス導入管17には、図示しない処理ガス供給源が接続されており、処理ガス供給源から処理ガス供給管17を介して所望量の処理ガスが反応管2内に供給される。
【0022】
処理ガスとしては、アモルファスカーボン膜を成膜する成膜用ガスがある。アモルファスカーボン膜を成膜する成膜用ガスとしては、例えば、エチレン(C2H4)、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、アセチレン(C2H2)、ブチン(C4H6)等が挙げられる。本実施の形態では、後述するように、成膜用ガスとして、C2H4が用いられている。
【0023】
また、後述するように、アモルファスカーボン膜を成膜する被処理体(半導体ウエハW)にシリコン層(Si層)を形成する場合、Si層を形成するためのシリコンソースが処理ガスとして、処理ガス供給管17を介して、反応管2内に供給される。
シリコンソースとしては、アミノ系シラン、DCS(ジクロロシラン)、HCD(ヘキサクロロジシラン)等が用いられる。アミノ系シランとしては、塩素(Cl)を含まないアミノ系シランであることが好ましい。塩素を含まないことにより、インキュベーションタイムが短くすることができるためである。このようなアミノ系シランとしては、例えば、TDMAS(トリジメチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)、BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)、BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、DMAS(ジメチルアミノシラン)、DEAS(ジエチルアミノシラン)、DPAS(ジプロピルアミノシラン)、およびBAS(ブチルアミノシラン)が挙げられる。本実施の形態では、後述するように、シリコンソースとして、BTBAS、DCSが用いられている。
【0024】
反応管2の下端近傍の側面には、パージガス供給管18が挿通されている。パージガス供給管18には、図示しないパージガス供給源が接続されており、パージガス供給源からパージガス供給管18を介して所望量のパージガス、例えば、窒素ガスが反応管2内に供給される。
【0025】
また、後述するように、パージガスとして、アンモニアを反応管2内に供給する場合、図示しないアンモニア供給源がパージガス供給管18または処理ガス導入管17に接続され、アンモニア供給源からパージガス供給管18または処理ガス導入管17を介して、所望量のアンモニアが反応管2内に供給される。本実施の形態では、アンモニア供給源が処理ガス導入管17に接続され、処理ガス導入管17を介して、所望量のアンモニアが反応管2内に供給される。
【0026】
また、熱処理装置1は、装置各部の制御を行う制御部100を備えている。図2に制御部100の構成を示す。図2に示すように、制御部100には、操作パネル121、温度センサ(群)122、圧力計(群)123、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127、ボートエレベータ128等が接続されている。
【0027】
操作パネル121は、表示画面と操作ボタンとを備え、オペレータの操作指示を制御部100に伝え、また、制御部100からの様々な情報を表示画面に表示する。
【0028】
温度センサ(群)122は、反応管2内、排気管5内、処理ガス導入管17内等の各部の温度を測定し、その測定値を制御部100に通知する。
圧力計(群)123は、反応管2内、排気管5内、処理ガス導入管17内等の各部の圧力を測定し、その測定値を制御部100に通知する。
【0029】
ヒータコントローラ124は、ヒータ8、及び、昇温用ヒータ16を個別に制御するためのものであり、制御部100からの指示に応答して、これらに通電してこれらを加熱し、また、これらの消費電力を個別に測定して、制御部100に通知する。
【0030】
MFC制御部125は、処理ガス導入管17、及び、パージガス供給管18に設けられた図示しないマスフローコントローラ(MFC)を制御して、これらに流れるガスの流量を制御部100から指示された量にするとともに、実際に流れたガスの流量を測定して、制御部100に通知する。
【0031】
バルブ制御部126は、各管に配置されたバルブの開度を制御部100から指示された値に制御する。真空ポンプ127は、排気管5に接続され、反応管2内のガスを排気する。
【0032】
ボートエレベータ128は、蓋体6を上昇させることにより、回転テーブル10上に載置されたウエハボート11(半導体ウエハW)を反応管2内にロードし、蓋体6を下降させることにより、回転テーブル10上に載置されたウエハボート11(半導体ウエハW)を反応管2内からアンロードする。
【0033】
制御部100は、レシピ記憶部111と、ROM112と、RAM113と、I/Oポート114と、CPU115と、これらを相互に接続するバス116とから構成されている。
【0034】
レシピ記憶部111には、セットアップ用レシピと複数のプロセス用レシピとが記憶されている。熱処理装置1の製造当初は、セットアップ用レシピのみが格納される。セットアップ用レシピは、各熱処理装置に応じた熱モデル等を生成する際に実行されるものである。プロセス用レシピは、ユーザが実際に行う熱処理(プロセス)毎に用意されるレシピであり、例えば、反応管2への半導体ウエハWのロードから、処理済みのウエハWをアンロードするまでの、各部の温度の変化、反応管2内の圧力変化、処理ガスの供給の開始及び停止のタイミングと供給量などを規定する。
【0035】
ROM112は、EEPROM、フラッシュメモリ、ハードディスクなどから構成され、CPU115の動作プログラム等を記憶する記録媒体である。
RAM113は、CPU115のワークエリアなどとして機能する。
【0036】
I/Oポート114は、操作パネル121、温度センサ122、圧力計123、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127、ボートエレベータ128等に接続され、データや信号の入出力を制御する。
【0037】
CPU(Central Processing Unit)115は、制御部100の中枢を構成し、ROM112に記憶された制御プログラムを実行し、操作パネル121からの指示に従って、レシピ記憶部111に記憶されているレシピ(プロセス用レシピ)に沿って、熱処理装置1の動作を制御する。すなわち、CPU115は、温度センサ(群)122、圧力計(群)123、MFC制御部125等に反応管2内、処理ガス導入管17内、及び、排気管5内の各部の温度、圧力、流量等を測定させ、この測定データに基づいて、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127等に制御信号等を出力し、上記各部がプロセス用レシピに従うように制御する。
バス116は、各部の間で情報を伝達する。
【0038】
次に、以上のように構成された熱処理装置1を用いたアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。本発明のアモルファスカーボン膜の形成方法は、被処理体としての半導体ウエハWにアモルファスカーボン膜を形成する前に、半導体ウエハWのアモルファスカーボン膜形成領域に水が吸着されることを防止する吸着防止工程を実施する。吸着防止工程としては、高温N2パージにより半導体ウエハWからの水を除去する窒素パージ工程(高温N2パージ工程)、アンモニアパージにより半導体ウエハWからの水を除去するアンモニアパージ工程、半導体ウエハWに疎水性材料、例えば、ケイ素(Si)の層を形成する疎水性層形成工程などが挙げられる。以下、これらの工程を含むアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。
【0039】
まず、吸着防止工程として、高温N2パージにより半導体ウエハWからの水を除去する高温N2パージ工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。図3に高温N2パージ工程を備えるアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するためのレシピを示す。
【0040】
なお、本実施の形態では、半導体ウエハWにエチレン(C2H4)を供給して、半導体ウエハW上に所定厚のアモルファスカーボン膜を形成する場合を例に本発明を説明する。また、以下の説明において、熱処理装置1を構成する各部の動作は、制御部100(CPU115)により制御されている。また、各処理における反応管2内の温度、圧力、ガスの流量等は、前述のように、制御部100(CPU115)がヒータコントローラ124(ヒータ8、昇温用ヒータ16)、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127等を制御することにより、図3に示すレシピに従った条件になる。
【0041】
まず、反応管2内を所定の温度、例えば、図3(a)に示すように、300℃に設定する。また、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図3(c)に示すように、1slm(1リットル/min)の窒素を供給し、アモルファスカーボン膜を形成する被処理体としての半導体ウエハWが収容されているウエハボート11を蓋体6上に載置する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を上昇させ、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0042】
次に、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図3(c)に示すように、1slmの窒素を供給するとともに、反応管2内を所定の温度、例えば、図3(a)に示すように、950℃に設定する。また、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図3(b)に示すように、2000Pa(15Torr)に減圧する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(安定化工程)。
【0043】
ここで、反応管2内の温度は、800℃〜950℃であることが好ましく、850℃〜900℃であることがより好ましい。800℃より低いと半導体ウエハWからの水を除去できないおそれがあり、950℃より高いと半導体ウエハW上で表面荒れが発生するおそれがあるためである。
また、反応管2内の圧力は、13.3Pa(0.1Torr)〜6650Pa(50Torr)であることが好ましく、13.3Pa(0.1Torr)〜2660Pa(20Torr)であることがより好ましい。
【0044】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18から所定量、例えば、図3(c)に示すように、5slmの窒素(N2)を供給する窒素パージを行う(高温N2パージ工程)。この高温N2パージにより半導体ウエハWからの水が除去され、アモルファスカーボン膜形成領域に水が発生(吸着)しなくなる。このため、アモルファスカーボン膜成膜の際に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜反応が起こりにくくなり、表面ラフネスを良好にすることができる。
【0045】
次に、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図3(c)に示すように、1slmの窒素を供給する。続いて、反応管2内のガスを排気管5に排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図3(b)に示すように、2660Pa(20Torr)に設定する。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図3(a)に示すように、850℃に設定する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(パージ・安定化工程)。
【0046】
反応管2内の温度は、800℃〜900℃であることが好ましく、800℃〜850℃であることがより好ましい。反応管2内の温度が900℃より高いと、表面ラフネスが悪化するおそれがあるためである。一方、反応管2内の温度が800℃より低いと、反応管2内の圧力を低くすることができず、形成されるアモルファスカーボン膜表面の平坦度が悪化するおそれがあるためである。反応管2内の圧力は、13.3Pa(0.1Torr)〜6650Pa(50Torr)であることが好ましく、13.3Pa(0.1Torr)〜2660Pa(20Torr)であることがより好ましい。
【0047】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18からの窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量の成膜用ガスを反応管2内に導入する。本実施の形態では、例えば、図3(d)に示すように、エチレン(C2H4)を1slm(1リットル/min)供給する。反応管2内に成膜用ガスが導入されると、成膜用ガスが反応管2内で加熱され、半導体ウエハWの表面にアモルファスカーボン膜が形成される(成膜工程)。
【0048】
このように、成膜工程前に、半導体ウエハWからの水を除去する高温N2パージを実施しているので、成膜工程中に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜反応が起こりにくくなり、表面ラフネスが良好になる。また、バッチ式の縦型CVD装置を用いてアモルファスカーボン膜を形成しているので、カバレッジ性能が良好なアモルファスカーボン膜を形成できる。このため、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜を形成することができる。
【0049】
半導体ウエハWの表面に所定厚、例えば、30nmのアモルファスカーボン膜が形成されると、処理ガス導入管17からの成膜用ガスの導入を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から所定量、例えば、図3(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、反応管2内のガスを排気管5に排出する(パージ工程)。なお、反応管2内のガスを確実に排出するために、反応管2内のガスの排出及び窒素ガスの供給を複数回繰り返すことが好ましい。
【0050】
続いて、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図3(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、図3(b)に示すように、反応管2内の圧力を常圧に戻す。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図3(a)に示すように、300℃に設定する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を下降させることにより、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内からアンロードする(アンロード工程)。これにより、アモルファスカーボン膜の形成が終了する。
【0051】
次に、高温N2パージの効果を確認するため、被処理体としてSiウエハ、SiO2ウエハ、SiNウエハのそれぞれについて、前述の条件でアモルファスカーボン膜を形成した場合(実施例1)、成膜工程での反応管2内の温度及び圧力を800℃、6650Pa(50Torr)としてアモルファスカーボン膜を形成した場合(実施例2)、実施例1、2の条件で高温N2パージ工程を実施せずにアモルファスカーボン膜を形成した場合(比較例1、2)の成膜レートを測定した。その結果を図4に示す。また、その表面及び断面を電子顕微鏡(SEM)で観察し、表面ラフネスについて、非常に良い「◎」、良い「○」、やや悪い「△」、悪い「×」の4段階で評価した。さらに、カバレッジ性能についても測定した。これらの結果を図5に示す。
【0052】
実施例1、2と、比較例1、2とから、全ての被処理体について、高温N2パージ工程を実施することにより、成膜レート(nm/min)が向上することが確認できた。また、全ての被処理体について、高温N2パージ工程を実施することにより、表面ラフネスが良好になることが確認できた。なお、カバレッジ性能は、高温N2パージ工程の実施の有無に拘わらず、全て90%以上と良好であった。このように、高温N2パージ工程を実施することにより、成膜レートが向上するとともに、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜が形成されることが確認できた。
【0053】
次に、吸着防止工程として、アンモニアパージにより半導体ウエハWからの水を除去するアンモニアパージ工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。図6にアンモニアパージ工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するためのレシピを示す。
【0054】
まず、反応管2内を、図6(a)に示すように、300℃に設定する。また、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図6(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、半導体ウエハWが収容されているウエハボート11を蓋体6上に載置し、ボートエレベータ128により蓋体6を上昇させ、半導体ウエハWを反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0055】
次に、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図6(c)に示すように、1slmの窒素を供給するとともに、反応管2内を所定の温度、例えば、図6(a)に示すように、950℃に設定する。また、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図6(b)に示すように、16000Pa(120Torr)に減圧する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(安定化工程)。
【0056】
ここで、反応管2内の温度は、800℃〜950℃であることが好ましい。800℃より低いと表面ラフネスを良好にできないおそれがあり、950℃より高いと半導体ウエハW上で表面荒れが発生するおそれがあるためである。さらに、反応管2内の温度は、850℃〜950℃であることがより好ましい。係る範囲内で表面ラフネスが特に良好になるためである。
また、反応管2内の圧力は、133Pa(1Torr)〜53200Pa(400Torr)であることが好ましく、133Pa(1Torr)〜26600Pa(200Torr)であることがより好ましい。
【0057】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18から窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量、例えば、図6(e)に示すように、2slmのアンモニア(NH3)を供給するアンモニアパージを行う(アンモニアパージ工程)。このアンモニアパージにより半導体ウエハWからの水が除去され、アモルファスカーボン膜形成領域に水が発生(吸着)しなくなる。このため、アモルファスカーボン膜成膜の際に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜反応が起こりにくくなる。さらに、アンモニアパージにより、半導体ウエハWの表面窒化が促進されるので、半導体ウエハW上で表面荒れが発生しにくくなる。
【0058】
アンモニアパージが終了すると、処理ガス導入管17からのアンモニアの供給を停止する。次に、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図6(c)に示すように、1slmの窒素を供給する。続いて、反応管2内のガスを排気管5に排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図6(b)に示すように、2660Pa(20Torr)に設定する。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図6(a)に示すように、850℃に設定する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(パージ・安定化工程)。
【0059】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18からの窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量の成膜用ガス、例えば、図6(d)に示すように、エチレン(C2H4)を1slm供給する。反応管2内に成膜用ガスが導入されると、成膜用ガスが反応管2内で加熱され、半導体ウエハWの表面にアモルファスカーボン膜が形成される(成膜工程)。
【0060】
このように、成膜工程前に、半導体ウエハWからの水を除去するアンモニアパージを行っているので、成膜工程中に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜反応が起こりにくくなり、表面ラフネスが良好になる。特に、アモルファスカーボン膜の膜厚が薄く、半導体ウエハW上で表面荒れが発生しやすい場合であっても、アンモニアパージにより、半導体ウエハWの表面窒化を促進しているので、半導体ウエハW上で表面荒れが発生しにくい。このため、表面ラフネスをより良好にすることができる。
また、バッチ式の縦型CVD装置を用いてアモルファスカーボン膜を形成しているので、カバレッジ性能が良好なアモルファスカーボン膜を形成できる。このため、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜を形成することができる。
【0061】
半導体ウエハWの表面に所定厚、例えば、30nmのアモルファスカーボン膜が形成されると、処理ガス導入管17からの成膜用ガスの導入を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から所定量、例えば、図6(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、反応管2内のガスを排気管5に排出する(パージ工程)。
【0062】
続いて、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図6(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、図6(b)に示すように、反応管2内の圧力を常圧に戻す。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図6(a)に示すように、300℃に設定する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を下降させることにより、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内からアンロードする(アンロード工程)。これにより、アモルファスカーボン膜の形成が終了する。
【0063】
次に、アンモニアパージの効果を確認するため、被処理体としてSiウエハ、SiO2ウエハ、SiNウエハのそれぞれについて、前述の条件でアモルファスカーボン膜を形成した場合(実施例3)、成膜工程での反応管2内の温度及び圧力を800℃、6650Pa(50Torr)としてアモルファスカーボン膜を形成した場合(実施例4)の成膜レートを測定した。その結果を図7に示す。また、その表面及び断面を電子顕微鏡(SEM)で観察し、表面ラフネスについて、前述と同様に、非常に良い「◎」、良い「○」、やや悪い「△」、悪い「×」の4段階で評価した。さらに、カバレッジ性能についても測定した。これらの結果を図8に示す。なお、比較のため、前述の比較例1、2の結果を図7、8に示す。
【0064】
実施例3、4と、比較例1、2とから、全ての被処理体について、アンモニアパージ工程を実施することにより、成膜レート(nm/min)が向上することが確認できた。また、全ての被処理体について、アンモニアパージ工程を実施することにより、表面ラフネスがさらに良好になることが確認できた。カバレッジ性能については、アンモニアパージ工程の実施の有無に拘わらず、全て90%以上と良好であった。このように、アンモニアパージ工程を実施することにより、成膜レートが向上するとともに、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜が形成されることが確認できた。
【0065】
また、表面ラフネスについて、電子顕微鏡(SEM)での観察とは異なる評価方法により評価を行った。具体的には、図9(a)に示す各条件で、15nm厚のアモルファスカーボン膜を形成し、JIS B0601に準拠した原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて表面粗さ(Ra)を測定し、表面ラフネスを評価した。この結果を図9(b)に示す。
【0066】
図9に示すように、高温N2パージ工程を実施するよりもアンモニアパージ工程を実施する方が表面粗さ(Ra)の値が小さくなることが確認できた。このため、アモルファスカーボン膜の膜厚が薄く、半導体ウエハW上で表面荒れが発生しやすい場合には、高温N2パージ工程よりもアンモニアパージ工程を実施することが好ましいことが確認できた。なお、高温N2パージ工程での表面ラフネスの結果は、アンモニアパージ工程の結果に比べて悪いだけであり、この値であっても問題は生じない。
【0067】
また、アンモニアパージ工程での反応管2内の温度を800℃〜950℃にすることにより、表面ラフネスが良好になることが確認でき、さらに、850℃〜950℃にすることにより表面ラフネスが良好になることが確認できた。
【0068】
次に、吸着防止工程として、半導体ウエハWに疎水性材料の層を形成する疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。なお、本実施の形態では、半導体ウエハWにBTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)を供給して、半導体ウエハW上に所定厚のケイ素(Si)の層を形成する場合と、疎水性材料としてアミノ系シラン、例えば、BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)を用いて、半導体ウエハW上に所定厚の疎水性層(ケイ素(Si)の層)を形成する場合と、疎水性材料としてジクロロシラン(DCS)を用いて疎水性層(Siの層)を形成する場合とを例に本発明を説明する。
【0069】
まず、BTBASを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。図10にBTBASを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するためのレシピを示す。
【0070】
まず、反応管2内を、図10(a)に示すように、300℃に設定する。また、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図10(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、半導体ウエハWが収容されているウエハボート11を蓋体6上に載置し、ボートエレベータ128により蓋体6を上昇させ、半導体ウエハWを反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0071】
次に、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図10(c)に示すように、1slmの窒素を供給するとともに、反応管2内を所定の温度、例えば、図10(a)に示すように、550℃に設定する。また、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図10(b)に示すように、13.3Pa(0.1Torr)に減圧する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(安定化工程)。
【0072】
ここで、反応管2内の温度は、950℃以下であることが好ましい。950℃より高いと半導体ウエハW上で表面荒れが発生し、表面ラフネスが悪化するおそれがあるためである。さらに、反応管2内の温度は、後述する成膜工程時の反応管2内の温度以下であることが好ましい。Si層の形成は、比較的低温でも可能であり、成膜工程時の反応管2内の温度以下にすることにより、反応管2内の温度を低温化させることができるためである。例えば、成膜工程時の反応管2内の温度が700℃の場合、反応管2内の温度は、室温〜700℃であることが好ましく、400℃〜700℃であることがさらに好ましい。400℃以上とすることにより、BTBASの供給によってSi層が確実に形成されるためである。
また、反応管2内の圧力は、1.33Pa(0.01Torr)〜1330Pa(10Torr)であることが好ましく、13.3Pa(0.1Torr)〜133Pa(1Torr)であることがより好ましい。
【0073】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18から窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量、例えば、図10(e)に示すように、0.1slmのBTBASを供給して、半導体ウエハW上に所定厚のケイ素(Si)の層を形成する(疎水性層形成工程)。このSi層は、疎水性の層であり、アモルファスカーボン膜形成領域に水が吸着しにくくなる。このため、アモルファスカーボン膜成膜の際に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜反応が起こりにくくなり、表面ラフネスを良好にすることができる。
【0074】
半導体ウエハW上に所定厚のSi層が形成されると、処理ガス導入管17からのBTBASの供給を停止する。次に、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図10(c)に示すように、1slmの窒素を供給する。続いて、反応管2内のガスを排気管5に排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図10(b)に示すように、33250Pa(250Torr)に設定する。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図10(a)に示すように、700℃に設定する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(パージ・安定化工程)。
【0075】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18からの窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量の成膜用ガス、例えば、図10(d)に示すように、エチレン(C2H4)を1slm供給する。反応管2内に成膜用ガスが導入されると、成膜用ガスが反応管2内で加熱され、半導体ウエハWの表面にアモルファスカーボン膜が形成される(成膜工程)。
【0076】
このように、成膜工程前に、Si層を形成する疎水性層形成工程を行っているので、成膜工程中に、半導体ウエハWとアモルファスカーボン膜との界面でエッチングのような異常な成膜(反応)が起こりにくくなり、表面ラフネスが良好になる。また、バッチ式の縦型CVD装置を用いてアモルファスカーボン膜を形成しているので、カバレッジ性能が良好なアモルファスカーボン膜を形成できる。このため、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜を形成することができる。
【0077】
さらに、本実施の形態では、疎水性層形成工程時の反応管2内の温度を、成膜工程時の反応管2内の温度である700℃以下にしているので、反応管2内の温度を低温化させることができる。
【0078】
半導体ウエハWの表面に所定厚のアモルファスカーボン膜が形成されると、処理ガス導入管17からの成膜用ガスの導入を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から所定量、例えば、図10(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、反応管2内のガスを排気管5に排出する(パージ工程)。
【0079】
続いて、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図10(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、図10(b)に示すように、反応管2内の圧力を常圧に戻す。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図10(a)に示すように、300℃に設定する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を下降させることにより、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内からアンロードする(アンロード工程)。これにより、アモルファスカーボン膜の形成が終了する。
【0080】
次に、Si層形成の効果を確認するため、被処理体としてSiウエハ、SiO2ウエハ、SiNウエハのそれぞれについて、前述の条件でアモルファスカーボン膜を形成し(実施例12)、JIS B0601に準拠した原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面粗さ(Ra)を測定し、表面ラフネスを評価した。また、比較のため、疎水性層形成工程に変えて、950℃、16000Pa(120Torr)でのアンモニアパージ工程を実施し、アモルファスカーボン膜を形成した場合(実施例13)についても同様に表面ラフネスを評価した。この結果を図11に示す。
【0081】
図11に示すように、疎水性層形成工程を実施することによりアンモニアパージ工程と同様に、表面ラフネスが良好になることが確認できた。また、実施例12、13について、カバレッジ性能を確認したところ、全て90%以上と良好であった。このため、疎水性層形成工程を実施することにより、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜が形成されることが確認できた。さらに、疎水性層形成工程を実施することにより反応管2内の温度を低温化できることが確認できた。
【0082】
次に、DCSを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法について説明する。図12にDCSを用いて疎水性層形成工程を実施するアモルファスカーボン膜の形成方法を説明するためのレシピを示す。
【0083】
まず、反応管2内を、図12(a)に示すように、300℃に設定する。また、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図12(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、半導体ウエハWが収容されているウエハボート11を蓋体6上に載置し、ボートエレベータ128により蓋体6を上昇させ、半導体ウエハWを反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0084】
次に、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図12(c)に示すように、1slmの窒素を供給するとともに、反応管2内を所定の温度、例えば、図12(a)に示すように、630℃に設定する。また、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図12(b)に示すように、13.3Pa(0.1Torr)に減圧する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(安定化工程)。
【0085】
反応管2内の温度は、BTBASを用いた場合と同様に、950℃以下であることが好ましい。950℃より高いと半導体ウエハW上で表面荒れが発生し、表面ラフネスが悪化するおそれがあるためである。さらに、反応管2内の温度は、成膜工程時の反応管2内の温度以下であることが好ましい。Si層の形成は、比較的低温でも可能であり、成膜工程時の反応管2内の温度以下にすることにより、反応管2内の温度を低温化させることができるためである。例えば、成膜工程時の反応管2内の温度が800℃の場合、反応管2内の温度は、室温〜800℃であることが好ましく、400℃〜800℃であることがさらに好ましい。
反応管2内の圧力は、1.33Pa(0.01Torr)〜1330Pa(10Torr)であることが好ましく、13.3Pa(0.1Torr)〜133Pa(1Torr)であることがより好ましい。
【0086】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18から窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量、例えば、図10(e)に示すように、0.1slmのDCSを供給して、半導体ウエハW上に所定厚のケイ素(Si)の層を形成する(疎水性層形成工程)。
【0087】
半導体ウエハW上に所定厚のSi層が形成されると、処理ガス導入管17からのDCSの供給を停止する。次に、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図12(c)に示すように、1slmの窒素を供給する。続いて、反応管2内のガスを排気管5に排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図12(b)に示すように、6650Pa(50Torr)に設定する。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図12(a)に示すように、800℃に設定する。そして、反応管2内をこの温度及び圧力で安定させる(パージ・安定化工程)。
【0088】
反応管2内が所定の圧力および温度で安定すると、パージガス供給管18からの窒素の供給を停止する。続いて、処理ガス導入管17から所定量の成膜用ガス、例えば、図12(d)に示すように、エチレン(C2H4)を1slm供給する。反応管2内に成膜用ガスが導入されると、成膜用ガスが反応管2内で加熱され、半導体ウエハWの表面にアモルファスカーボン膜が形成される(成膜工程)。
【0089】
半導体ウエハWの表面に所定厚のアモルファスカーボン膜が形成されると、処理ガス導入管17からの成膜用ガスの導入を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、パージガス供給管18から所定量、例えば、図12(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、反応管2内のガスを排気管5に排出する(パージ工程)。
【0090】
続いて、パージガス供給管18から反応管2内に所定量、例えば、図12(c)に示すように、1slmの窒素を供給して、図12(b)に示すように、反応管2内の圧力を常圧に戻す。また、反応管2内を所定の温度、例えば、図12(a)に示すように、300℃に設定する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を下降させることにより、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内からアンロードする(アンロード工程)。これにより、アモルファスカーボン膜の形成が終了する。
【0091】
次に、DCSを用いたSi層形成の効果を確認するため、被処理体としてSiO2ウエハを用い、前述の条件でアモルファスカーボン膜を形成し、JIS B0601に準拠した原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面粗さ(Ra)を測定し、表面ラフネスを評価した(実施例14)。なお、本例では、反応管2の上部(TOP)、中央部(CENTER)、下部(BOTTOM)の3箇所の位置で形成したアモルファスカーボン膜について表面ラフネスを評価した。また、BTBASを用いてSi層を形成し、同様の条件でアモルファスカーボン膜を形成した場合についても表面ラフネスを評価した(実施例15)。なお、DCSを用いたSi層形成ではDCSを10分間供給してSi層を形成し、BTBASを用いたSi層形成ではDCSを10分間供給してSi層を形成した。この結果を図13に示す。
【0092】
図13に示すように、実施例14、15の疎水性層形成工程を実施することにより、表面ラフネスが良好になることが確認できた。また、実施例14、15について、カバレッジ性能を確認したところ、全て90%以上と良好であった。このため、DCSを用いた疎水性層形成工程を実施しても、BTBASを用いた疎水性層形成工程を実施しても、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜が形成されることが確認できた。さらに、疎水性層形成工程を実施することにより反応管2内の温度を低温化できることが確認できた。また、DCSよりも、塩素を含まないBTBASを用いた疎水性層形成工程を実施する方が表面ラフネスが良好になることが確認できた。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態によれば、半導体ウエハWにアモルファスカーボン膜の形成する前に、高温N2パージ工程、アンモニアパージ工程、または、疎水性層形成工程の吸着防止工程を実施することにより、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜を形成することができる。さらに、高温N2パージ工程、または、アンモニアパージ工程を実施することにより、成膜レートを向上させることができ、疎水性層形成工程を実施することにより反応管2内の温度を低温化することができる。
【0094】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な他の実施の形態について説明する。
【0095】
上記実施の形態では、高温N2パージ工程、アンモニアパージ工程、または、疎水性層形成工程のいずれかの工程を実施した場合を例に本発明を説明したが、例えば、アモルファスカーボン膜を形成する下地層の種類、デバイスへの影響等を考慮し、これらの工程を組み合わせてもよい。
【0096】
上記実施の形態では、疎水性層形成工程において、Si層を形成した場合を例に本発明を説明したが、疎水性層はSi層に限定されるものではなく、デバイスへの影響がない範囲で、各種の疎水性材料からなる層を形成することが可能である。
【0097】
上記実施の形態では、疎水性層形成工程のSi層形成にBTBAS、DCSを用いた場合を例に本発明を説明したが、Si層を形成するための処理ガスは、これらに限定されるものでなく、TDMASのようなアミノシラン、HCDであってもよい。また、反応室2内の温度は、処理ガスにBTBASを用いた場合には室温〜600℃、処理ガスにDCSを用いた場合には400℃〜630℃、処理ガスにHCDを用いた場合には300℃〜550℃、処理ガスにTDMASを用いた場合には室温〜550℃とすることが好ましい。
【0098】
上記実施の形態では、熱処理装置として、単管構造のバッチ式熱処理装置の場合を例に本発明を説明したが、例えば、反応管2が内管と外管とから構成された二重管構造のバッチ式縦型熱処理装置に本発明を適用することも可能である。
【0099】
本発明の実施の形態にかかる制御部100は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROMなど)から当該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する制御部100を構成することができる。
【0100】
そして、これらのプログラムを供給するための手段は任意である。上述のように所定の記録媒体を介して供給できる他、例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システムなどを介して供給してもよい。この場合、例えば、通信ネットワークの掲示板(BBS)に当該プログラムを掲示し、これをネットワークを介して搬送波に重畳して提供してもよい。そして、このように提供されたプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、カバレッジ性能、及び、表面ラフネスの良好なアモルファスカーボン膜の形成に有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 熱処理装置
2 反応管
3 頂部
4 排気口
5 排気管
6 蓋体
7 保温筒
8 ヒータ
9 支持体
10 回転テーブル
11 ウエハボート
12 回転支柱
13 回転機構
14 回転軸
15 回転導入部
16 昇温用ヒータ
17 処理ガス導入管
18 パージガス供給管
100 制御部
111 レシピ記憶部
112 ROM
113 RAM
114 I/Oポート
115 CPU
116 バス
121 操作パネル
122 温度センサ
123 圧力計
124 ヒータコントローラ
125 MFC制御部
126 バルブ制御部
127 真空ポンプ
128 ボートエレベータ
W 半導体ウエハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の被処理体が収容された反応室内を所定の温度に加熱し、加熱した反応室内に成膜用ガスを供給して被処理体にアモルファスカーボン膜を形成するアモルファスカーボン膜の形成方法であって、
前記被処理体にアモルファスカーボン膜を形成する前に、前記反応室内にアミノ系シランガスを供給する、ことを特徴とするアモルファスカーボン膜の形成方法。
【請求項2】
前記反応室内に、前記アモルファスカーボン膜を形成する反応室内の温度よりも低い温度で前記アミノ系シランガスを供給する、ことを特徴とする請求項1に記載のアモルファスカーボン膜の形成方法。
【請求項3】
前記反応室内の温度を室温〜700℃に設定する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のアモルファスカーボン膜の形成方法。
【請求項4】
複数枚の被処理体を収容する反応室と、
前記反応室内を所定の温度に加熱する加熱手段と、
前記反応室内に成膜用ガスを供給する成膜用ガス供給手段と、
前記反応室内にアミノ系シランガスを供給するアミノ系シランガス供給手段と、
装置の各部を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記アミノ系シランガス供給手段を制御して前記反応室内にアミノ系シランガスを供給した後、前記加熱手段を制御して反応室内を所定の温度に加熱し、前記成膜用ガス供給手段を制御して所定の温度に加熱された反応室内に成膜用ガスを供給して当該被処理体にアモルファスカーボン膜を形成する、ことを特徴とするアモルファスカーボン膜の形成装置。
【請求項1】
複数枚の被処理体が収容された反応室内を所定の温度に加熱し、加熱した反応室内に成膜用ガスを供給して被処理体にアモルファスカーボン膜を形成するアモルファスカーボン膜の形成方法であって、
前記被処理体にアモルファスカーボン膜を形成する前に、前記反応室内にアミノ系シランガスを供給する、ことを特徴とするアモルファスカーボン膜の形成方法。
【請求項2】
前記反応室内に、前記アモルファスカーボン膜を形成する反応室内の温度よりも低い温度で前記アミノ系シランガスを供給する、ことを特徴とする請求項1に記載のアモルファスカーボン膜の形成方法。
【請求項3】
前記反応室内の温度を室温〜700℃に設定する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のアモルファスカーボン膜の形成方法。
【請求項4】
複数枚の被処理体を収容する反応室と、
前記反応室内を所定の温度に加熱する加熱手段と、
前記反応室内に成膜用ガスを供給する成膜用ガス供給手段と、
前記反応室内にアミノ系シランガスを供給するアミノ系シランガス供給手段と、
装置の各部を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記アミノ系シランガス供給手段を制御して前記反応室内にアミノ系シランガスを供給した後、前記加熱手段を制御して反応室内を所定の温度に加熱し、前記成膜用ガス供給手段を制御して所定の温度に加熱された反応室内に成膜用ガスを供給して当該被処理体にアモルファスカーボン膜を形成する、ことを特徴とするアモルファスカーボン膜の形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−80109(P2012−80109A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251880(P2011−251880)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【分割の表示】特願2010−94417(P2010−94417)の分割
【原出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【分割の表示】特願2010−94417(P2010−94417)の分割
【原出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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