説明

アンテナ装置、監視装置、及び車輌

【課題】反射板を部分的に駆動させるだけの簡易な構成で広範囲にわたってビーム走査を実現することのできるF/B比の良好な小型で平面構造のアンテナ装置を提供すること。
【解決手段】所定の平面104内に存在する、位相差を持たせて給電される電波の第1放射源101c、101d及び第2放射源101a、101bと、所定の平面104に対向して配置された平面状の反射部105b、105aと、反射部105a、105bの一部105bを移動させて、第1放射源101c、101dと反射部105bとの間隔を変化させる移動制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のビーム方向を切り替えられるアンテナ装置、そのアンテナ装置を利用する監視装置及び車輌に関する。例えば、車載レーダや近距離無線通信に用いられる複数のビーム方向を切り替えられるアンテナ装置、そのアンテナ装置を利用する監視装置及び車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌の周囲を監視する車載用レーダシステムにおいて、車輌の全方位の障害物を検知するためには、複数のセンサを車輌の周囲に設置する必要があり、システムの構成が複雑になるという問題がある。一方、近距離無線通信においては、高速無線伝送を実現するためには、マルチパスフェージングやシャドーイングによる伝送品質の劣化対策が必要になってくる。このような問題を改善するために、これまでビーム方向を制御できるアンテナの検討が数多くなされている。
【0003】
これまで、この種のアンテナとして、一次放射器、反射板と誘電体レンズからなるビーム方向制御アンテナが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図19は、特許文献1で提案されているビーム方向制御アンテナの構成を示すブロック図である。
【0005】
このビーム方向制御アンテナは、送受信機81から一次放射器82を利用して放射された電波を、駆動可能な反射板83Aにより反射させて誘電体レンズ84を介して放射させるものである。モータ85を用いて反射板83Aを機械的に駆動させることで、ビーム方向を連続的に制御することができる。
【0006】
また、複数のビーム方向を制御する他のアンテナとして、2つのスロットアンテナ素子と反射板からなるマルチビームアンテナが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図20は、特許文献1で提案されているマルチビームアンテナの構成を示すものであり、図20(a)は平面図を、図20(b)は側面図を、図20(c)は裏から見た平面図をそれぞれ示している。
【0008】
このマルチビームアンテナ92は、それぞれ0.5波長の長さの位相差給電される2つのスロットアンテナ素子93A、93Bと、スロットアンテナ素子面から所望の距離h20(0.42波長)を隔てて配置された反射板94の間に、それぞれ0.27波長の長さの線状無給電素子95A〜95Dを配置している。
【0009】
切替素子96A及び96Bに逆バイアスを印加した場合には、線状無給電素子95A〜95Dは電気的に接続されないため、これらの長さは動作周波数の半波長よりも十分に短くなり、アンテナ特性に影響を及ぼすことはない。
【0010】
一方、切替素子96A及び96Bに順バイアスを印加すると、線状無給電素子95Aと95B、線状無給電素子95Cと95Dは、それぞれ接続された状態となるため、約0.54波長の反射素子として動作する。これは、反射板の位置を擬似的にスロット素子に近接させた状態と同じになる。
【0011】
このように線状無給電素子95A〜95Dの長さを電気的に変化させることで、擬似的に反射板までの間隔を切り替えることができ、ビーム方向を段階的に切り替えることができる。
【特許文献1】特開平10−145129号公報
【特許文献2】特開2006−86578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されているビーム方向制御アンテナでは、電波を送受信する構成部分以外に、反射板83Aや誘電体レンズ84を必要とし、さらにこれらを所定の間隔で配置する必要があるため、アンテナ装置が大型になるという問題がある。また、広角にビームを制御する場合にはメインローブ以外のローブのレベルが高くなるという問題がある。
【0013】
図19に示す一次放射器82とは、円錐ホーンアンテナやマイクロストリップ基板上に形成された平面アンテナなどの小型のアンテナであり、一次放射器82と送受信機81で電波を送受信する構成部分を構成している。特許文献1に記載のこのビーム方向制御アンテナでは、上述したように、これらの構成部分以外に反射板83Aや誘電体レンズ84が必要となる。
【0014】
また、特許文献2に記載されているマルチビームアンテナは、アンテナ面(基板91面)に対して垂直となる面においてビーム方向を2段階に切り替えることはできるが、連続的に走査することができないという問題がある。
【0015】
本発明は、上述した従来の課題を解決するもので、小型で、連続的にビーム方向を走査できるアンテナ装置、そのアンテナ装置を利用する監視装置及び車輌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するために、第1の本発明は、
所定の平面内に存在する、位相差を持たせて給電される第1放射源及び第2放射源と、
前記所定の平面に対向して配置された平面状の反射部と、
前記反射部の全部もしくは一部、または、前記第1放射源及び前記第2放射源を移動させて、前記第1放射源及び前記第2放射源と、前記反射部との間隔の全部または一部を変化させる移動制御部と、を備えたアンテナ装置である。
【0017】
また、第2の本発明は、
前記反射部は、1枚の反射板で構成されており、
前記移動制御部は、前記所定の平面に垂直な方向に、前記反射板を移動させる、第1の本発明のアンテナ装置である。
【0018】
また、第3の本発明は、
前記反射部は、1枚の反射板で構成されており、
前記移動制御部は、前記反射板の面に沿って設けられた回転軸を回転させることにより、前記反射板を移動させる、第1の本発明のアンテナ装置である。
【0019】
また、第4の本発明は、
前記反射部は、前記第1放射源に対向する第1反射部と、前記第2放射源に対向する第2反射部とを有し、
前記第1反射部は、第1反射板で構成され、
前記第2反射部は、第2反射板で構成され、
前記移動制御部は、前記第1反射板の面に沿って設けられた第1回転軸を回転させることにより、前記第1反射板を移動させる、第1の本発明のアンテナ装置である。
【0020】
また、第5の本発明は、
前記移動制御部は、前記第2反射板の面に沿って設けられた第2回転軸を回転させることにより、前記第2反射板を移動させる、第4の本発明のアンテナ装置である。
【0021】
また、第6の本発明は、
前記第1放射源及び前記第2放射源のそれぞれに給電し、前記第1放射源及び前記第2放射源に給電する位相差を切り替える給電部を備えた、第1の本発明のアンテナ装置である。
【0022】
また、第7の本発明は、
前記第1放射源及び前記第2放射源は、誘電体基板上の導体で形成された1つのアンテナ素子上の異なる部分であり、
前記アンテナ素子は、所定の対称軸を基準に左右対称形状でループ状に配置されたループ素子と、前記対称軸上で前記ループ素子上に設けられた一対の迂回素子とを有している、第1の本発明のアンテナ装置である。
【0023】
また、第8の本発明は、
前記アンテナ素子は、前記誘電体基板の表面に形成された導体層の一部を削剥することにより形成されたスロットにより、前記ループ素子及び前記一対の迂回素子が形成されている、第7の本発明のアンテナ装置である。
【0024】
また、第9の本発明は、
前記アンテナ素子は、複数の構成部からなっており、
それぞれの前記構成部は、前記所定の対称軸を基準に左右対称形状でループ状に配置されたループ部位と、前記対称軸上で前記ループ部位上に前記ループ部位の外側に向けて設けられた一対の迂回部位とを有しており、
前記各構成部は、それぞれの前記迂回部位同士が連結されて前記対称軸上に構成されている、第7または第8の本発明のアンテナ装置である。
【0025】
また、第10の本発明は、
電波を送出して、その電波が反射した電波を受信することにより物体や人体の対象物を検出する、第1の本発明のアンテナ装置を備えた監視装置であって、
前記アンテナ装置の移動制御部によって、第1放射源及び第2放射源と、反射部との間隔の全部または一部を変化させて、前記対象物を検出する方向を連続的に切り替える監視装置である。
【0026】
また、第11の本発明は、
第10の本発明の監視装置を搭載した車輌である。
【0027】
また、第12の本発明は、
前記監視装置の前記アンテナ装置は、第7の本発明のアンテナ装置であり、アンテナ素子の所定の対称軸の向きが鉛直方向となる向きに取り付けられている、第11の本発明の車輌である。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、小型で、連続的にビーム方向を走査できるアンテナ装置、そのアンテナ装置を利用する監視装置及び車輌を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一の構成または機能を有する構成要素及び相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明の都合上、各図に示すような座標軸を定義している。
【0030】
また、以下の各実施の形態においては、動作周波数を5GHzとして説明する。
【0031】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を図1〜図8を用いて説明する。
【0032】
図1(a)は、本実施の形態1のアンテナ装置の構成を示す上視図、すなわち、+Z側から見た図であり、図1(b)は、本実施の形態1のアンテナ装置の構成を示す側面図、すなわち、−Y側から見た図である。図2は、本実施の形態1のアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【0033】
図1(a)に示すように、線状素子101a〜101dは、素子長L1の長さを有する導体であり、正方形形状に配置される。線状迂回素子102a及び102bは、長さL2で折り返されたU字型の導体であり、それぞれ線状素子101aと線状素子101c、線状素子101bと線状素子101dに接続される。線状迂回素子102a及び102bは、他方の線状迂回素子及び線状素子との結合を避けるため正方形形状の外側に突出するように配置される。給電部103は、線状素子101aと線状素子101bの間に設けられ、線状素子101cと線状素子101dは接続される。
【0034】
このように構成することで、線状迂回素子102a及び102bが配置される対角を結ぶ軸に対して左右対称形状の線状ループアンテナ104が構成される。なお、ここでは正方形形状として構成したが、ひし形形状や円形形状として構成してもよい。また、線状ループアンテナを誘電体基板上の銅箔により形成してもよい。
【0035】
なお、正方形形状に配置される線状素子101a〜101dの組み合わせが、本発明のループ素子の一例にあたる。また、線状迂回素子102a及び102bが、本発明の一対の迂回素子の一例にあたる。また、線状迂回素子102a及び102bが配置される対角を結ぶ軸が、本発明の所定の対称軸の一例にあたる。
【0036】
図1(b)及び図2に示すように、反射板105a及び105bは、線状ループアンテナ104が配置された面から距離hだけ−Z側に離れた位置に配置された、寸法Lr1×Lr2の導体板である。回転軸106は、円柱状の導体で形成され、反射板105bと接続される。そして、モータ107は、回転軸106に接続される。
【0037】
なお、線状ループアンテナ104が配置されている面が、本発明の、第1放射源及び第2放射源が存在する所定の平面の一例にあたる。また、反射板105a及び105bが、それぞれ本発明の、第2反射部及び第1反射部の一例にあたる。また、モータ107が、本発明の移動制御部の一例にあたる。
【0038】
このように構成することで、モータ107の回転によって反射板105bのみが回転軸106を中心に回転動作することになる(このときの回転角をα1とする)。このとき、反射板105aは、モータ107により回転しないように固定されている。
【0039】
なお、反射板105aを固定して反射板105bのみを回転させる動作が、本発明の、反射部の一部を移動させる動作の一例にあたる。また、反射板105bのみを回転させることにより、線状ループアンテナ104と反射板105aとの間隔は変化させずに、線状ループアンテナ104と反射板105bとの間隔のみを変化させる動作が、本発明の、第1放射源及び第2放射源と反射部との間隔の一部を変化させる動作の一例にあたる。
【0040】
次に、上記のように構成された本実施の形態1のアンテナ装置の動作について説明する。このときの構成パラメータは、L1を0.26波長(15.6mm)、L2を0.16波長(9.5mm)、Lr1を1波長(60mm)、Lr2を2波長(120mm)、hを0.42波長(25mm)とする。
【0041】
線状ループアンテナ104は、線状ループアンテナ104の2つの頂点、すなわち、線状素子101a及び線状素子101bの接続部(給電部103)と、線状素子101c及び線状素子101dの接続部とにおいて電流振幅がピーク値をとり、それらのピーク点間において電流位相差が生じて励振される。
【0042】
ここで、線状素子101a及び101bを一組のアンテナ素子として見なした場合、素子中央で電流振幅のピーク点が存在するため、Y方向偏波の半波長ダイポールに近い動作になると考えられる。同様に、線状素子101c及び101dもY方向偏波の半波長ダイポールに近い動作になると考えられる。これにより、線状ループアンテナ104は、X方向に2素子配列した半波長ダイポールアレーに位相差を持たせて給電した場合とほぼ同様の動作と見なすことができる。
【0043】
このように、線状ループアンテナ104は、1つの給電点(給電部103)で電流位相差を有する2つの電流ピークを形成することができ、2つのダイポールアンテナを位相差給電するのに比べて給電回路を簡素化することができる。
【0044】
なお、線状迂回素子102a及び102bの折返し部でも電流振幅がピーク点をとることになるが、折り返されているため電流位相が反転し、線状迂回素子102a及び102bからはほとんど放射されず、アンテナ特性への影響は小さいと考えられる。
【0045】
なお、線状ループアンテナ104における、線状素子101cと線状素子101dとの組み合わせ、及び線状素子101aと線状素子101bとの組み合わせが、本発明の、1つのアンテナ素子上の異なる部分の一例にあたる。そして、線状素子101cと線状素子101dとの組み合わせが、本発明の第1放射源の一例にあたり、線状素子101aと線状素子101bとの組み合わせが、本発明の第2放射源の一例にあたる。
【0046】
また、線状ループアンテナ104から1/4波長以上隔てて配置されている反射板105a及び105bの効果を写像の原理によりモデル化し、イメージ波源からの放射と線状ループアンテナ104の頂点からの放射を合成することにより、線状ループアンテナ104は+Z方向から+X側へ傾斜(チルト)した方向に主ビームを形成する放射指向性を有することになる。このとき、反射板105bがモータ107により回転動作を行うので、反射板の位置が変化することになる。このため、イメージ波源の位置も変化することになり、主ビームが形成される方向が変化することなる。
【0047】
図3は、本実施の形態1のアンテナ装置の指向性を示す図であって、反射板105bの回転角α1が0度のときの指向性を示している。図3(a)は、垂直(XZ)面の指向性を、図3(b)は仰角θが50度における円錐面の指向性を示している。なお、本明細書において仰角とは、図1(b)の座標軸に示すように、アンテナ素子平面(XY平面)に垂直なZ軸となす角度θを指す。
【0048】
図3において、指向性201及び202は、水平偏波(Eφ)成分の指向性を示しており、仰角θが50度の+X方向へチルトした主ビームが得られていることが確認できる。このとき、主ビームの指向性利得は10.5dBi、F/B比(主ビームとバックローブの比)は11dBである。
【0049】
また、図4(a)及び(b)は、反射板105bの回転角α1が+18.4度のときの指向性を示している。図4(a)は、垂直(XZ)面の指向性を、図4(b)は、仰角θが30度における円錐面の指向性を示している。
【0050】
図4において、指向性301及び302は、水平偏波(Eφ)成分の指向性を示しており、仰角θが30度の+X方向へチルトした主ビームが得られていることが確認できる。このとき、主ビームの指向性利得は10.2dBi、F/B比(主ビームとバックローブの比)は9dBである。
【0051】
また、図5(a)及び(b)は、反射板105bの回転角α1が−14度のときの指向性を示している。図5(a)は、垂直(XZ)面の指向性を、図5(b)は、仰角θが65度における円錐面の指向性を示している。
【0052】
図5において、指向性401及び402は、水平偏波(Eφ)成分の指向性を示しており、仰角θが65度の+X方向へチルトした主ビームが得られていることが確認できる。このとき、主ビームの指向性利得は10.7dBi、F/B比(主ビームとバックローブの比)は12dBである。
【0053】
このように、反射板105bを約32度回転させることで、35度の広範囲にわたって主ビーム方向を走査することができる。
【0054】
反射板105bは、線状ループアンテナ104と反射板105bが平行になるときの距離が1/4波長以上の距離となるように配置することが望ましい。線状ループアンテナ104と反射板105bの距離が1/4波長以下の場合には、主ビームの仰角θが非常に小さくなり、反射板間隔を変化させても主ビーム方向の変化幅は狭くなる。つまり、線状ループアンテナ104と反射板105bの間隔が1/4波長以上となる範囲で反射板105bを移動させることにより、主ビーム方向を広範囲にわたって走査させることができる。
【0055】
また、反射板間隔が狭くなると、反射板とアンテナ素子が結合し特性が劣化してしまうことがあるので、その点からも、線状ループアンテナ104と反射板105bが平行になるときの距離が1/4波長以上の距離となるように配置しておくのが望ましい。
【0056】
以上のように、本実施の形態1によれば、正方形形状に配置された線状素子と正方形の対向する一組の頂点にU字型の線状迂回素子を設けた線状ループアンテナにおいて、所定の間隔を隔てて配置された反射板を回転動作させることで、主ビーム方向を広範囲にわたって走査することのできるF/B比の良好な小型で平面構成のアンテナ装置を実現することができる。
【0057】
なお、本実施の形態1では、アンテナ素子として線状ループアンテナ104を用いたが、上記にも述べたとおり、線状ループアンテナは2素子の半端長ダイポールアンテナを位相差給電したものと同等と考えることができることから、2素子以上のアンテナを位相差給電するアンテナ構成であっても同様な効果が得られる。
【0058】
図6は、線状ループアンテナ104の代わりに2素子の半端長ダイポールアンテナを用いた場合のアンテナ装置の斜視図を示している。
【0059】
2素子の半端長ダイポールアンテナ110を図6のようにX方向に並ぶように配置し、各アンテナ素子に位相差を持たせて給電することにより、+Z方向から+X側へ傾斜(チルト)した方向に主ビームを形成させることができる。そして、図2に示した場合と同様に、反射板105bを回転させることにより、主ビームの方向を走査させることができる。
【0060】
なお、図6に示すアンテナ装置においては、2素子の半端長ダイポールアンテナ110が、それぞれ、本発明の第1放射源及び第2放射源の一例にあたる。また、2素子の半端長ダイポールアンテナ110で形成される平面が、本発明の、第1放射源及び第2放射源が存在する所定の平面の一例にあたる。
【0061】
また、本実施の形態1では、2枚の反射板105a及び105bを設けて、放射方向側の反射板105bのみを回転動作させる構成としたが、反射板全体を回転動作させる構成としても同様な効果が得られる。
【0062】
図7(a)及び図7(b)は、反射板全体を回転動作させる場合のアンテナ装置の構成例の斜視図を示している。
【0063】
図7(a)に示す反射板120は、図2の2枚の反射板105aと105bを結合させた形状の1枚の反射板であり、その中央部分に回転軸121が設けられている。モータ107によって回転軸121を回転させることにより、反射板120が図7(a)に示すように回転する。
【0064】
この場合、線状ループアンテナ104と反射板120との間隔は、放射方向側(+X側)の間隔が小さくなると反対側(−X側)の間隔が大きくなり、放射方向側の間隔が大きくなると反対側の間隔が小さくなるように変化する。
【0065】
図7(b)に示す反射板122も、図2の2枚の反射板105aと105bを結合させた形状の1枚の反射板である。ただし、回転軸123が、反射板122の一方の辺に沿って接続されている点が図7(a)の場合と異なる。モータ107によって回転軸123を回転させることにより、反射板122が図7(b)に示すように回転する。
【0066】
この場合、線状ループアンテナ104と反射板120との間隔は、線状ループアンテナ104の全体にわたって同時に変化するが、放射方向側(+X側)の間隔の方が反対側(−X側)の間隔よりも大きく変化する。
【0067】
図7(a)や図7(b)の構成としたアンテナ装置の場合にも、図1及び図2に示した構成のアンテナ装置の場合と同様の効果が得られる。
【0068】
なお、反射板120及び反射板122が、いずれも本発明の、1枚の反射板で構成された反射部の一例である。そして、回転軸121及び回転軸123が、いずれも本発明の、1枚の反射板の面に沿って設けられた回転軸の一例にあたる。
【0069】
また、図2及び図7では、反射板を回転させることにより線状ループアンテナ104と反射板との間隔を変化させて主ビームの方向を走査させたが、それ以外の方法でも、反射板と線状ループアンテナ104との間隔を変化させれば、同様の効果が得られる。
【0070】
図8は、反射板を平行移動させる構成のアンテナ装置の構成例の斜視図を示している。
【0071】
反射板124は、図2の2枚の反射板105aと105bを結合させた形状の1枚の反射板であり、線状ループアンテナ104平面に平行に配置されている。そして、モータ125と反射板124には、モータ125の回転動作を反射板124の平行移動動作に変換するための歯車機構126が設けられている。
【0072】
モータ125が回転すると、歯車機構126により、反射板124は、上下方向(Z軸方向)に平行移動し、線状ループアンテナ104との間隔が変化する。
【0073】
このような構成で、線状ループアンテナ104と反射板との間隔を変化させても、図2や図7のような構成のアンテナ装置と同様の効果が得られる。
【0074】
なお、アンテナ素子と反射板との間隔が1/4波長以下になると反射板の移動量に対する主ビーム方向の変化幅が狭くなるので、図8の場合には、反射板124の上下移動幅の中心位置における線状ループアンテナ104との間隔が1/4波長以上となるように配置するのが望ましい。
【0075】
なお、図8に示す構成のアンテナ装置が、本発明の、所定の平面に垂直な方向に反射板を移動させるアンテナ装置の一例にあたる。
【0076】
なお、図7(a)、(b)及び図8に示した1枚の反射板120、122、124を移動させる動作が、いずれも本発明の、反射部の全部を移動させる動作の一例にあたる。また、図7(b)及び図8の構成で1枚の反射板122または124を移動させて線状ループアンテナ104と反射板122または124との間隔を変化させる動作が、いずれも本発明の、第1放射源及び第2放射源と反射部との間隔の全部を変化させる動作の一例にあたる。
【0077】
また、本実施の形態1では、線状ループアンテナ104を固定しておき、反射板を移動させることにより、線状ループアンテナ104と反射板との間隔を変化させてビーム方向を走査させたが、反射板を固定しておき、線状ループアンテナ104の方を移動させることにより、線状ループアンテナ104と反射板との間隔を変化させても、同様にビーム方向を走査させることができる。もちろん、線状ループアンテナ104と反射板の両方を移動させて、線状ループアンテナ104と反射板との間隔を変化させてもよい。線状ループアンテナ104と反射板との間隔を変化させさえすれば、同様の効果が得られる。
【0078】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置を図9〜図11を用いて説明する。
【0079】
図9(a)は、本実施の形態2のアンテナ装置の構成を示す上視図、すなわち、+Z側から見た図であり、図9(b)は、本実施の形態2のアンテナ装置の構成を示す側面図、すなわち、−Y側から見た図である。図10は、本実施の形態2のアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【0080】
本実施の形態2の線状ループアンテナ502は、図1に示す実施の形態1の線状ループアンテナ104の、線状素子101cと線状素子101dの間に、線状素子への給電を行う給電部501を追加した構成である。
【0081】
このような構成の線状ループアンテナ502において、給電部103から給電される場合は、給電部501は短絡され、線状素子101cと線状素子101dが接続するように動作する。また、給電部501から給電される場合は、給電部103が短絡され、線状素子101aと線状素子101bが接続するように動作する。すなわち、一方の給電部から給電される場合は他方の給電部は短絡され、同時に給電されることはない。このように動作させることにより、1つのアンテナ素子で主ビームを2方向に切り替えることが可能となる。
【0082】
なお、給電部103及び給電部501の組み合わせが、本発明の、第1放射源及び第2放射源に給電する位相差を切り替える給電部の一例にあたる。
【0083】
反射板503は、線状ループアンテナ502が配置された面から距離hが0.42波長(25mm)だけ−Z側に離れた位置に配置された導体板であり、その寸法Lr1×Lr2は、1波長×2波長(60mm×120mm)である。回転軸504は、円柱状の導体で形成され、反射板503に接続される。モータ505は、回転軸504に接続され、反射板503は接続された回転軸504を中心にモータ505の回転によって回転動作を行う(このときの回転角をα2とする)。
【0084】
また、反射板503及び反射板105bは、それぞれのモータ505及びモータ107の回転により独立して回転動作を行う。
【0085】
なお、回転軸504が、本発明の第2回転軸の一例にあたる。また、モータ505が、モータ107とともに、本発明の移動制御部の一例にあたる。
【0086】
図11は、本実施の形態2のアンテナ装置の指向性を示す図である。図11(a)は、垂直(XZ)面の指向性を、図11(b)は、仰角θが65度における円錐面の指向性を示している。
【0087】
図11(a)及び(b)において、実線で示す指向性601a及び602aは、給電部103から線状ループアンテナ502に給電し、かつ反射板503の回転角α2を−14度、反射板105bの回転角α1を0度としたときの水平偏波(Eφ)成分の指向性を示している。このとき、利得が10.7dBi、仰角θが65度の+X方向へチルトした主ビームが得られていることが確認できる。
【0088】
また、破線で示す指向性601b及び602bは、給電部501から線状ループアンテナ502に給電し、かつ反射板503の回転角α2を0度、反射板105bの回転角α1を−14度としたときの水平偏波(Eφ)成分の指向性を示している。このとき、仰角θが65度の−X方向へチルトした主ビームが得られていることが確認できる。
【0089】
なお、反射板105b及び反射板503は、線状ループアンテナ502と平行になるときの距離が1/4波長以上の距離となるように配置することが望ましい。
【0090】
以上のように、本実施の形態2のアンテナ装置を用いることにより、実施の形態1に示す線状ループアンテナに給電部を2つ設け、切替励振するとともに、反射板を2つに分割し、独立して回転動作させることで、2方向に主ビームを形成し、かつそれぞれの方向において広範囲にわたってビーム方向を走査することのできる小型で平面構成のアンテナ装置を実現することができる。
【0091】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置を図12及び図13を用いて説明する。
【0092】
図12(a)は、本実施の形態3のアンテナ装置の構成を示す上視図、すなわち、+Z側から見た図であり、図12(b)は、本実施の形態3のアンテナ装置の構成を示す側面図、すなわち、−Y側から見た図である。
【0093】
図12において、基板1001は、比誘電率εrが例えば2.6で、厚さが0.027波長(1.6mm)、寸法L6×L7が0.5波長×0.6波長(30mm×36mm)の誘電体である。導体層1002は、基板1001の+Z面側に接着された銅箔である。
【0094】
スロット素子1003a〜1003dは、導体層1002を削剥して形成された長さL8が0.3波長(17.7mm)の空隙であり、図12(a)のように正方形形状に配置される。接続導体1004a〜1004dは、スロット素子1003a〜1003dのほぼ中央にそれぞれのスロット素子1003a〜1003dを分断するように形成され、スロット素子で形成される正方形形状の内側の導体層と外側の導体層を接続している。このように、接続導体1004a〜1004dによりスロット素子1003a〜1003dを分断することで、スロット素子のインピーダンスを安定させ、かつインピーダンス整合が容易に取れるようになる。
【0095】
スロット迂回素子1005a及び1005bは、導体層1002を削剥して形成された空隙であり、折返し部までの長さL9が0.13波長(7.5mm)である。スロット迂回素子1005a及び1005bは、スロット素子1003aとスロット素子1003c、スロット素子1003bとスロット素子1003dにそれぞれ正方形形状の外側に突出するように接続される。なお、スロット素子1003aとスロット素子1003b、スロット素子1003cとスロット素子1003dは、それぞれ接続されている。このように構成することで、スロットループアンテナ1006が構成される。
【0096】
なお、正方形形状に配置されるスロット素子1003a〜1003dの組み合わせが、本発明のループ素子の一例にあたる。また、スロット迂回素子1005a及び1005bが、本発明の一対の迂回素子の一例にあたる。
【0097】
マイクロストリップライン1007は、基板1001の−Z面側にスロット素子1003aとスロット素子1003bの接続部を通過するようにX方向に沿って銅箔パターンにより形成され、例えば、特性インピーダンスが50Ωとなるように幅Wが0.077波長(4.6mm)に設定される。
【0098】
このようにマイクロストリップライン1007を配置することで、マイクロストリップライン1007とスロットループアンテナ1006は電磁界的に結合され、マイクロストリップライン1007と導体層1002の間で給電する給電部1008からの信号は、マイクロストリップライン1007を介してスロットループアンテナ1006へ供給される。このとき、スロットループアンテナ1006とマイクロストリップライン1007の結合部からマイクロストリップライン1007の開放端までの長さL10を適切な長さ(ここでは、0.025波長(1.5mm))に設定することで、インピーダンス整合が可能となる。
【0099】
アンテナ素子が線状アンテナ素子の場合は平衡給電が必要であるのに対して、このようにアンテナ素子をスロット素子で構成することで、一般に無線回路で用いられるマイクロストリップラインからの給電が可能となり、生産性の向上を図ることができる。
【0100】
スロットループアンテナ1006は、実施の形態1で示した線状ループアンテナ104をスロット素子に置き換えたものと考えることができるため、その動作は電界と磁界を置き換えて説明することができ、実施の形態1に示す線状素子と同様に、+Z方向から+X側へ傾斜(チルト)した方向に主ビームを形成する放射指向性を有することになる。また、実施の形態1に示す線状ループアンテナ104の主偏波成分は水平(Eφ)成分であるのに対して、スロットループアンテナ1006の主偏波成分は垂直(Eθ)成分となる。
【0101】
図13は、本実施の形態3のアンテナ装置の垂直(XZ)面の指向性を示す図である。図13において、指向性1101は、反射板105bの回転角α4が+18.4度のときの垂直偏波(Eθ)成分の指向性を示しており、利得が10.3dBi、チルト角θが25度である。また、指向性1102及び1103は、反射板105bの回転角α4が0度及び−14度のときの垂直偏波(Eθ)成分の指向性をそれぞれ示している。このときの利得はそれぞれ10.8dBi、10.7dBiであり、チルト角θはそれぞれ40度、50度である。
【0102】
このように、スロット構成においても反射板105bを約32度回転させることで、25度の範囲にわたって主ビーム方向を走査することができる。
【0103】
以上のように、本実施の形態3によれば、誘電体基板1001の表面に正方形形状に形成されたスロット素子1003a〜1003dと、その正方形の対向する一組の頂点にU字型のスロット迂回素子1005a、1005bとを設けたスロットループアンテナ1006において、所定の間隔を隔てて配置された反射板105bを回転動作させることで、主ビーム方向を広範囲にわたって走査することのできるF/B比の良好な小型で平面構成のアンテナ装置を実現することができる。また、誘電体基板1001の裏面に形成されたマイクロストリップライン1007により、容易に給電が可能となり、無線回路と接続しやすく生産性が向上する。
【0104】
なお、スロット素子1003cとスロット素子1003dとの組み合わせが、本発明の第1放射源の一例にあたり、スロット素子1003aとスロット素子1003bとの組み合わせが、本発明の第2放射源の一例にあたる。また、これらのスロット素子が形成されている導体層1002が、本発明の、第1放射源及び第2放射源が存在する所定の平面の一例にあたる。
【0105】
なお、本実施の形態3では、接続導体をスロット素子内に銅箔パターンで形成するとして説明したが、接続導体をマイクロストリップラインと同一の誘電体基板1001の裏面側に形成させ、スルーホールと接続導体を介して、スロット素子で形成される正方形形状の内側の導体層と外側の導体層を接続させても同様な効果が得られる。
【0106】
また、本実施の形態3では、スロットループアンテナ1006を1つのマイクロストリップライン1007から電磁界結合給電する構成としたが、スロットループアンテナ1006の2つの頂点に2つのマイクロストリップラインがそれぞれ結合するように誘電体基板1001の裏面に形成し、切替励振できる構成するとともに、実施の形態2で示した図10のような反射板構造とすることで、2方向に主ビームを形成させて、かつそれぞれの方向において広範囲にわたってビーム方向を走査することができる。このとき、給電されない方のマイクロストリップラインは、スロットループアンテナの結合部から1/4波長の奇数倍の位置で短絡、あるいは1/2波長の整数倍の位置で開放となるように設計される。
【0107】
なお、本実施の形態3では、アンテナ素子として正方形形状のスロットループアンテナ1006を用いたが、スロットループアンテナは半波長の直線状の2つの平行なスロット素子に位相差給電したものと同等と考えることができることから、2つの平行なスロット素子に位相差給電するアンテナ構成であっても同様な効果が得られる。
【0108】
図14は、スロットループアンテナ1006の代わりに2つの半端長の長さのスロット素子を用いた場合のアンテナ装置の斜視図を示している。
【0109】
スロットアンテナ板1010は、誘電体基板上に接着されている銅箔層の一部が削剥されて、2つの半波長の長さのスロット素子が平行に形成されている。
【0110】
このスロットアンテナ板1010を、図14に示すように、2つのスロット素子がX方向に並ぶ向きで反射板105a及び105bに対向するように配置し、各スロット素子に位相差を持たせて給電することにより、+Z方向から+X側へ傾斜(チルト)した方向に主ビームを形成させることができる。そして、図2に示した場合と同様に、反射板105bを回転させることにより、主ビームの方向を走査させることができる。
【0111】
なお、図14に示すアンテナ装置においては、スロットアンテナ板1010に形成されている2つのスロット素子が、それぞれ、本発明の第1放射源及び第2放射源の一例にあたる。また、スロットアンテナ板1010が、本発明の、第1放射源及び第2放射源が存在する所定の平面の一例にあたる。
【0112】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置を図15〜図17を用いて説明する。
【0113】
図15(a)は、本実施の形態4のアンテナ装置の構成を示す上視図、すなわち、+Z側から見た図であり、図15(b)は、本実施の形態4のアンテナ装置の構成を示す側面図、すなわち、−Y側から見た図である。図16は、本実施の形態4のアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【0114】
図15において、線状素子801a〜801d、802a〜802d、803a〜803dは、素子長L3が0.18波長(10.5mm)の導体であり、図15に示すようにそれぞれ正方形形状に配置される。線状連結素子804a〜804dは、長さL4が0.35波長(21.2mm)の導体であり、線状素子801bと線状素子802a、線状素子801dと線状素子802c、線状素子802bと線状素子803a、線状素子802dと線状素子803cをそれぞれ連結している。
【0115】
線状迂回素子805a及び805bは、長さL5が0.17波長(10.2mm)で折り返されたU字型の導体であり、それぞれ線状素子801aと線状素子801c、線状素子803bと線状素子803dに正方形形状の外側に突出するように接続される。給電部806は、線状素子802aと線状素子802bの間に設けられ、線状素子に給電を行う。
【0116】
このように構成することで、線状ループアンテナを多段に接続した多段接続線状ループアンテナ807が構成される。
【0117】
なお、線状素子801a〜801d、802a〜802d、803a〜803dのそれぞれで形成される正方形形状の部分が、本発明のループ部位の一例にあたる。また、各正方形形状の対角に接続される線状連結素子804a〜804dまたは線状迂回素子805a、805bが、各ループ部位に対応する本発明の一対の迂回部位の一例にあたる。そして、1つのループ部位とそれに対応する一対の迂回部位の組み合わせが、本発明の構成部の一例にあたる。また、線状迂回素子805aと805bを結ぶ軸が、本発明の所定の対称軸の一例にあたる。
【0118】
反射板808a及び808bは、多段接続線状ループアンテナ807が配置された面から距離hが0.42波長(25mm)だけ−Z側に離れた位置に配置された導体板であり、その寸法Lr3×Lr4は、1.25波長×3波長(75mm×180mm)である。そして、回転軸809は、円柱状の導体で形成され、反射板808bと接続される。
【0119】
次に、上記のように構成された本実施の形態4のアンテナ装置の動作について説明する。
【0120】
多段接続線状ループアンテナ807は、給電部806から給電することで、線状素子801aと線状素子801b、線状素子802aと線状素子802b、線状素子803aと線状素子803bのそれぞれの接続部において電流振幅がピーク値をとるとともに、同位相(電流位相φ1)となる。また、線状素子801cと801d、線状素子802cと線状素子802d、線状素子803cと線状素子803dのそれぞれの接続部においても電流振幅がピーク値をとり、同位相(電流位相φ2)となる。
【0121】
このとき、電流位相φ1と電流位相φ2は、線状迂回素子805a及び805bが挿入されていることにより、差が生じる。これにより、多段接続線状ループアンテナ807は、実施の形態1で述べた線状ループアンテナ104の動作と同様に、+Z方向から+X側へチルトした方向に主ビームを形成する放射指向性を有し、反射板808bを回転することにより主ビーム方向が変化することになる。さらに、多段接続構成としたことによって、利得の向上を図ることができる。
【0122】
図17は、本実施の形態4のアンテナ装置の垂直(XZ)面の指向性を示す図である。図17において、指向性901は、反射板808bの回転角α3が+14.9度のときの水平偏波(Eφ)成分の指向性を示しており、利得が13.5dBi、チルト角θが30度である。また、指向性902及び903は、反射板808bの回転角α3が0度及び−11.3度のときの水平偏波(Eφ)成分の指向性をそれぞれ示している。このときの利得はそれぞれ13.6dBi、13.5dBiであり、チルト角θはそれぞれ45度、60度である。
【0123】
このように、線状ループアンテナを多段にした構成においても反射板808bを約26度回転させることで、30度の範囲にわたって主ビーム方向を走査することができる。また、線状ループアンテナを多段に接続することにより、実施の形態1で述べた構成に比べて、利得を約3dB向上させることができる。
【0124】
以上のように、本実施の形態4によれば、線状連結素子により連結された正方形形状に配置された複数の線状素子とU字型の線状迂回素子を設けた多段接続線状ループアンテナにおいて、所定の間隔を隔てて配置された反射板を回転動作させることで、主ビーム方向を広範囲にわたって走査することのできるF/B比が良好で高利得な小型で平面構成のアンテナ装置を実現することができる。
【0125】
なお、本実施の形態4に係るアンテナ装置の、線状素子801c、801d、802c、802d、803c、803dと線状連結素子804b、804dの組み合わせが、本発明の第1放射源の一例にあたる。また、線状素子801a、801b、802a、802b、803a、803bと線状連結素子804a、804cの組み合わせが、本発明の第2放射源の一例にあたる。そして、これらの線状連結素子及び線状連結素子によって形成される平面が、本発明の、第1放射源及び第2放射源が存在する所定の平面の一例にあたる。
【0126】
なお、本実施の形態4では、中央の素子から給電する構成として説明したが、中央以外の素子から給電する構成としても同様な効果を得ることができる。
【0127】
また、本実施の形態4では、線状ループアンテナを3素子連結した構成について説明したが、連結素子数が2素子以上であれば同様な効果を得ることができる。
【0128】
また、本実施の形態4では、1つの給電部のみを配置した構成としたが、実施の形態2で述べたように、給電部を対称軸を挟んで対向する頂点に2つ設け、切替励振するとともに、反射板を2つに分割し、それぞれ独立した回転動作を行う構造とすることにより、2方向に高利得な主ビームを形成させることができ、かつそれぞれの方向において広範囲にわたってビーム方向を走査させることができる。
【0129】
また、本実施の形態4のアンテナ装置は、線状素子により多段接続線状ループアンテナ807を形成させる構成としたが、複数のスロット素子を接続して、同様の多段接続形状のスロットループアンテナとしても、同様の効果が得られる。
【0130】
すなわち、実施の形態3で示した図12の誘電体基板1001上の銅箔を、図15(a)の多段接続線状ループアンテナ807と同様の形状となるように削剥して、多段接続形状のスロット素子を形成させればよい。
【0131】
このような、スロットループアンテナをスロット迂回素子部で2つ以上多段に接続した構成とし、少なくとも1つのスロットループアンテナにスロット素子の内側の導体層と外側の導体層を接続する接続導体を配置することで、高利得な小型で平面構成のアンテナ装置を実現することができる。
【0132】
(実施の形態5)
次に、本発明のアンテナ装置を適用した、本発明の実施の形態5の車載近距離レーダについて説明する。
【0133】
図18は、図9に示した実施の形態2の線状ループアンテナ502の、本実施の形態5の車輌近距離レーダへの適用例を示す図である。図18(a)は、線状ループアンテナ502がバンパーに搭載された車輌の概略斜視図であり、図18(b)は、車輌のバンパーに搭載された線状ループアンテナ502の指向性のイメージを示す車輌の概略平面図である。また、図18(c)は、車輌のサイドミラーに搭載された線状ループアンテナ502の指向性のイメージを示す車輌の概略平面図である。
【0134】
なお、本実施の形態5の車輌近距離レーダが、本発明の監視装置の一例にあたる。
【0135】
図18(a)に示すように、本実施の形態5の車輌近距離レーダが備える線状ループアンテナ502は、線状迂回素子102a及び102bがそれぞれ鉛直方向に向くように、路面と垂直に車輌701のバンパー内に設置される。すなわち、線状ループアンテナ502の所定の対称軸の向きが鉛直方向となる向きに、線状ループアンテナ502が取り付けられる。
【0136】
図18(b)において、指向性702a及び702bは、給電部103から給電した場合の指向性を示している。指向性703a及び703bは、給電部501から給電した場合の指向性を示している。このように、車輌前面の水平面において主ビーム方向を走査させることが可能となり、広範囲に障害物を検知することができる。
【0137】
また、図18(c)に示すように、車輌のサイドミラーに搭載した場合においても同様に、車輌の横方向の水平面においてビーム方向を走査させることができるため、横方向の障害物を広範囲にわたって検知することが可能となる。
【0138】
以上のように、線状ループアンテナ502を車輌のバンパー及びドアミラーに実装することで、水平方向において主ビーム方向を走査させることができるため、複数のセンサを車輌の周囲に設置する必要がなく、レーダシステム構成を簡略化することが可能となる。
【0139】
また、車載近距離レーダは、駐車・発車時に死角補助や後退発車支援として利用されるなど低速走行の車輌に利用が限られるため、ビーム方向を高速に走査する必要が無く、反射板を駆動して主ビーム方向を走査する実施の形態2のアンテナ装置でも十分に適用することができる。
【0140】
なお、ここでは線状ループアンテナ502の設置位置を車輌のバンパー及びドアミラーに限って説明したが、車輌の周囲及び内部に設置した場合でも同様な効果を得ることができる。
【0141】
また、本実施の形態5では、実施の形態2の線状ループアンテナ502を備える構成で説明したが、その他の実施の形態で説明したアンテナ装置を備える構成としても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0142】
以上に説明したように、本発明により、反射板を部分的に駆動させる簡易な構成で主ビーム方向を広範囲にわたって走査することのできるF/B比の良好な小型で平面構成のアンテナ装置を実現することができる。また、位相差給電される2つの放射源から所定の間隔を隔てて配置される反射板を放射方向において傾斜させることにより、ビーム方向を連続的に制御することのできる小型な平面構造で生産性に優れたアンテナ装置を実現することができる。
【0143】
なお、本発明の第1放射源及び第2放射源とは、電波を送受信する部分や素子のことであり、以上にも説明したように、図1の線状素子101cと線状素子101dとの組み合わせや、線状素子101aと線状素子101bとの組み合わせや、図6に示す2本の半波長ダイポールアンテナ110のそれぞれの半波長ダイポールアンテナなどのことを言う。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明に係るアンテナ装置は、小型で連続的にビーム方向を走査できる効果を有し、車載レーダや近距離無線通信に用いられる、複数のビーム方向を切り替えられるアンテナ装置、そのアンテナ装置を利用する監視装置及び車輌等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】(a)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す上視図、(b)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す側面図
【図2】本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図
【図3】(a)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の、回転角α1が0度のときの垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の、回転角α1が0度のときの円錐面の指向性を示す図
【図4】(a)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の、回転角α1が+18.4度のときの垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の、回転角α1が+18.4度のときの円錐面の指向性を示す図
【図5】(a)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の、回転角α1が−14度のときの垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の、回転角α1が−14度のときの円錐面の指向性を示す図
【図6】本発明の実施の形態1に係る、2素子の半端長ダイポールアンテナを用いた場合のアンテナ装置の斜視図
【図7】(a)本発明の実施の形態1に係る、反射板全体を回転動作させる場合のアンテナ装置の構成例の斜視図、(b)本発明の実施の形態1に係る、反射板全体を回転動作させる場合のアンテナ装置の他の構成例の斜視図
【図8】本発明の実施の形態1に係る、反射板を平行移動させる構成のアンテナ装置の構成例の斜視図
【図9】(a)本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の構成を示す上視図、(b)本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の構成を示す側面図
【図10】本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図
【図11】(a)本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の垂直(XZ)面の指向性を示す図、(b)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の、仰角θが65度における円錐面の指向性を示す図
【図12】(a)本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の構成を示す上視図、(b)本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の構成を示す側面図
【図13】本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の垂直(XZ)面の指向性を示す図
【図14】本発明の実施の形態3に係る、2つの半端長のスロット素子を用いた場合のアンテナ装置の斜視図
【図15】(a)本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の構成を示す上視図、(b)本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の構成を示す側面図
【図16】本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図
【図17】本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の垂直(XZ)面の指向性を示す図
【図18】(a)本発明のアンテナ装置を利用した、本発明の実施の形態5に係る車載近距離レーダが搭載された車輌の概略斜視図、(b)本発明のアンテナ装置を利用した、本発明の実施の形態5に係る車載近距離レーダの、線状ループアンテナがバンパーに搭載された場合の指向性のイメージを示す車輌の概略平面図、(c)本発明のアンテナ装置を利用した、本発明の実施の形態5に係る車載近距離レーダの、線状ループアンテナがサイドミラーに搭載された場合の指向性のイメージを示す車輌の概略平面図
【図19】従来のビーム方向制御アンテナの構成を示すブロック図
【図20】(a)従来のマルチビームアンテナの構成を示す平面図、(b)従来のマルチビームアンテナの構成を示す側面図、(c)従来のマルチビームアンテナの構成を示す裏から見た平面図
【符号の説明】
【0146】
101a〜101d、801a〜801d、802a〜802d、803a〜803d 線状素子
102a、102b、805a、805b 線状迂回素子
103、501、806、1008 給電部
104、502 線状ループアンテナ
105a、105b、120、122、124、503、808a、808b 反射板
106、121、123、504、809 回転軸
107、505、125 モータ
110 半波長ダイポールアンテナ
126 歯車機構
201、202、301、302、401、402、601a、601b、602a、602b、702a、702b、703a、703b、901、902、903、1101、1102、1103 指向性
701 車輌
804a〜804d 線状連結素子
807 多段接続線状ループアンテナ
1001 基板
1002 導体層
1003a〜1003d スロット素子
1004a〜1004d 接続導体
1005a、1005b スロット迂回素子
1006 スロットループアンテナ
1007 マイクロストリップライン
1010 スロットアンテナ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の平面内に存在する、位相差を持たせて給電される第1放射源及び第2放射源と、
前記所定の平面に対向して配置された平面状の反射部と、
前記反射部の全部もしくは一部、または、前記第1放射源及び前記第2放射源を移動させて、前記第1放射源及び前記第2放射源と、前記反射部との間隔の全部または一部を変化させる移動制御部と、を備えたアンテナ装置。
【請求項2】
前記反射部は、1枚の反射板で構成されており、
前記移動制御部は、前記所定の平面に垂直な方向に、前記反射板を移動させる、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記反射部は、1枚の反射板で構成されており、
前記移動制御部は、前記反射板の面に沿って設けられた回転軸を回転させることにより、前記反射板を移動させる、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記反射部は、前記第1放射源に対向する第1反射部と、前記第2放射源に対向する第2反射部とを有し、
前記第1反射部は、第1反射板で構成され、
前記第2反射部は、第2反射板で構成され、
前記移動制御部は、前記第1反射板の面に沿って設けられた第1回転軸を回転させることにより、前記第1反射板を移動させる、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記移動制御部は、前記第2反射板の面に沿って設けられた第2回転軸を回転させることにより、前記第2反射板を移動させる、請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1放射源及び前記第2放射源のそれぞれに給電し、前記第1放射源及び前記第2放射源に給電する位相差を切り替える給電部を備えた、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1放射源及び前記第2放射源は、誘電体基板上の導体で形成された1つのアンテナ素子上の異なる部分であり、
前記アンテナ素子は、所定の対称軸を基準に左右対称形状でループ状に配置されたループ素子と、前記対称軸上で前記ループ素子上に設けられた一対の迂回素子とを有している、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記アンテナ素子は、前記誘電体基板の表面に形成された導体層の一部を削剥することにより形成されたスロットにより、前記ループ素子及び前記一対の迂回素子が形成されている、請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記アンテナ素子は、複数の構成部からなっており、
それぞれの前記構成部は、前記所定の対称軸を基準に左右対称形状でループ状に配置されたループ部位と、前記対称軸上で前記ループ部位上に前記ループ部位の外側に向けて設けられた一対の迂回部位とを有しており、
前記各構成部は、それぞれの前記迂回部位同士が連結されて前記対称軸上に構成されている、請求項7または8に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
電波を送出して、その電波が反射した電波を受信することにより物体や人体の対象物を検出する、請求項1に記載のアンテナ装置を備えた監視装置であって、
前記アンテナ装置の移動制御部によって、第1放射源及び第2放射源と、反射部との間隔の全部または一部を変化させて、前記対象物を検出する方向を連続的に切り替える監視装置。
【請求項11】
請求項10に記載の監視装置を搭載した車輌。
【請求項12】
前記監視装置の前記アンテナ装置は、請求項7に記載のアンテナ装置であり、アンテナ素子の所定の対称軸の向きが鉛直方向となる向きに取り付けられている、請求項11に記載の車輌。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図13】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−318444(P2007−318444A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145840(P2006−145840)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】