説明

エッチング方法、トレンチ素子分離構造の形成方法、半導体基板および半導体装置

【課題】主としてSiで構成される領域と、主としてSiOで構成される領域との境界部に、落ち込みが生じることを防止しつつ、これらの領域同士の間に段差を容易かつ正確に形成し得るエッチング方法、このエッチング法を適用したトレンチ素子分離構造の形成方法、このトレンチ素子分離構造の形成方法によりトレンチ素子分離構造が形成された半導体基板、かかる半導体基板を備え、信頼性の高い半導体装置を提供すること。
【解決手段】本発明のエッチング方法では、主としてSiで構成される第1の領域と、主としてSiOで構成される第2の領域とを有する基材を、フッ化水素とオゾンとを含むエッチング剤を用いてエッチングするものである。このエッチング方法では、前記エッチング剤によるエッチングレートが、SiOよりSiが高いことを利用して、前記第1の領域と前記第2の領域との境界部に段差を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング方法、トレンチ素子分離構造の形成方法、半導体基板および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置においては、素子の高密度化、高集積化の要求が高まっており、このような要求に応えるため、半導体素子自体の微細化とともに半導体素子同士を分離する素子分離領域の微細化も重要になっている。
従来、素子分離領域の形成方法としては、素子形成領域に対応したマスクを介して熱酸化処理を行い、マスクで覆われていない領域に、素子分離領域となる酸化膜を形成するLOCOS(local oxidation of silicon)法が汎用されている。
【0003】
しかし、LOCOS法では、微細なパターンで酸化膜を形成しようとすると、厚さ方向の酸化が十分に進行せず、素子分離が不完全となる。また、素子分離に十分な厚さで酸化膜を形成しようとすると、横方向にも酸化が進行するため、素子分離領域が所定領域よりも広がってしまう。このため、LOCOS法では素子分離領域の微細化に限界がある。
そこで、LOCOS法に代わる素子分離技術として、STI(Shallow Trench Isolation)法が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
STI法は、Si基板(シリコン基板)にトレンチを形成し、このトレンチ内にSiO膜を埋め込むことにより素子分離構造(トレンチ素子分離構造)を形成するものである。
この場合、SiO膜は、その表面が、Si基板の表面よりも高い位置にとなるように突出して形成される。
【0005】
従来、このSTI法によるトレンチ素子分離構造は、次のようにして形成されている。
まず、図9(a)に示すように、Si基板100の表面に熱酸化処理を行うことにより、パッド酸化膜200を形成する。
次に、図9(b)に示すように、このパッド酸化膜200上に、CVD法によりSiN膜300を形成する。SiN膜300は、後工程において、CMP(chemical mechanical Polishing)法により、SiO膜を研磨する際のストッパーとなるものである。
【0006】
次に、図9(c)に示すように、このSiN膜300上に、フォトリソグラフィー法により、素子形成領域に対応したパターンでレジスト層400を形成する。
次に、図9(d)に示すように、このレジスト層400をマスクに用いて、SiN膜300およびパッド酸化膜200にドライエッチングを行い、各膜200、300を素子形成領域に対応する形状にパターニングする。
その後、パターニングされたSiN膜300をマスクに用いて、Si基板100をエッチングして、トレンチ500を形成する。
【0007】
次に、図10(e)に示すように、各膜200、300およびトレンチ500が形成されたSi基板100上に、トレンチ500内を埋めるようにして、SiO膜600をプラズマCVD等により形成する。
次に、図10(f)に示すように、CMP法により、SiN膜300をストッパーとして、SiO膜600を研磨して平坦化する。これにより、トレンチ500上のSiO膜600表面の高さが、SiN膜300表面の高さとほぼ一致するようになる。
【0008】
次に、図10(g)に示すように、熱リン酸を用いたウェットエッチングにより、SiN膜300を除去する。
次に、図10(h)に示すように、フッ酸を用いたウェットエッチングにより、パッド酸化膜200を除去する。
以上のような工程を経て、トレンチ500内のSiO膜600は、その表面がシリコン基板100表面よりも高い位置となり、トレンチ素子分離構造(素子分離領域)が形成される。このトレンチ素子分離構造により、Si基板100の表面に複数の素子形成領域が区画形成される。
【0009】
ところで、前述した方法では、CMP法によるSiO膜600の平坦化に際して、SiO表面を平坦にするために、SiN膜300表面が完全に露出し、SiO膜600を幾分過剰に研磨する。
ところが、SiO膜600を過剰に研磨すると、SiN膜300の表面が露出し、SiO膜600とSiN膜300とが同時に研磨されるようになった段階で、これらのエッチングレートの差により、素子分離パターンが狭い部分と広い部分との間で研磨が均一に進行しない、いわゆるディッシングが発生する。
【0010】
このディッシングでは、比較的広い素子分離領域において、SiO膜600が過剰に研磨されるので、このような広い素子分離領域で区画された素子同士の分離が不完全となったり、また、ディッシング段差のために、後工程において、ポリシリコン等をパターニングしてゲート電極をSiO膜600上に形成する際に、フォトリソグラフィー法でのフォーカスズレが生じ、パターニング形成不良が発生し、その結果、半導体装置の特性が損なわれるという問題が生じる。
【0011】
また、前述した方法では、パッド酸化膜200を、フッ酸を用いたウェットエッチングにより除去する。ここで、フッ酸によるウェットエッチングでは、エッチングが等方的に進行する。
このため、図10(h)に示すように、SiO膜600の縁部もエッチングされ、その結果、SiO膜600のSi基板100との境界部に、SiO膜600の落ち込みが生じ、Si基板100のSiO膜600との境界部には、Si基板100に角部501が形成される。
【0012】
かかるSi基板100の素子形成領域内に、例えばトランジスタを構成した場合には、ゲート電極が角部501を覆うかたちとなり、この角部501における電界集中により、リーク電流が発生するという問題がある。
これに対しては、熱酸化処理を行うことにより、角部501を丸みを帯びた形状とする丸め酸化等の対策も講じられている。しかし、かかる工程を設けることにより、製造工程数が増加し、製造効率の低下を招く。
さらに、述した方法では、SiN膜300をCMP法のストッパーとして使用するため、このSiN膜300の成膜や除去といった工程が必要となり、このことも製造工程数を増加させる原因になっている。
【0013】
【特許文献1】特開2001−237308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、主としてSiで構成される領域と、主としてSiOで構成される領域との境界部に、落ち込みが生じることを防止しつつ、これらの領域同士の間に段差を容易かつ正確に形成し得るエッチング方法、このエッチング法を適用したトレンチ素子分離構造の形成方法、このトレンチ素子分離構造の形成方法によりトレンチ素子分離構造が形成された半導体基板、かかる半導体基板を備えた信頼性の高い半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のエッチング方法は、主としてSiで構成される第1の領域と、主としてSiOで構成される第2の領域とを有する基材を、フッ化水素とオゾンとを含むエッチング剤を用いてエッチングするエッチング方法であって、
前記エッチング剤によるエッチングレートが、SiOよりSiが高いことを利用して、前記第1の領域の表面の位置が前記第2の領域の表面の位置より低くなるように、前記第1の領域と前記第2の領域との間に段差を形成することを特徴とする。
【0016】
これにより、主としてSiで構成される領域と、主としてSiOで構成される領域との境界部に、落ち込みが生じることを防止しつつ、これらの領域同士の間に段差を容易かつ正確に形成できる。
また、形成すべき段差の高さ(2つの領域の表面同士の距離)を正確に調整できるので、この段差に影響を受ける工程(例えば、後工程におけるフォトリソグラフィー等)の安定性確保が可能となる。
【0017】
本発明のエッチング方法では、前記エッチング剤は、フッ化水素とオゾンとを含むエッチング液であることが好ましい。
これにより、エッチング剤の取り扱いが容易となる。また、主としてSiで構成される領域の表面(Si表面)が荒れるのを好適に防止することもできる。
本発明のエッチング方法では、前記エッチング液による前記第1の領域のエッチングレートをRとし、前記エッチング液による前記第2の領域のエッチングレートをRとしたとき、R/Rは、1.2〜200なる関係を満足することが好ましい。
これにより、エッチングレートが低下するのを防止しつつ、段差の制御が容易となる。
【0018】
本発明のエッチング方法では、前記エッチング液におけるフッ化水素の濃度は、0.05〜5重量%であることが好ましい。
これにより、エッチングレート比率(R/R)を調整することができる。
本発明のエッチング方法では、前記エッチング液におけるオゾンの濃度は、1〜50ppmであることが好ましい。
これにより、エッチングレート比率(R/R)を調整することができる。
本発明のエッチング方法では、前記エッチングにおける前記エッチング液の温度は、0〜100℃であることが好ましい。
これにより、エッチングレートが低下するのを防止しつつ、確実かつ高い寸法精度で段差を形成することができる。
【0019】
本発明のトレンチ素子分離構造の形成方法は、主としてSiで構成される基板の表面に、トレンチ素子分離構造を形成するトレンチ素子分離構造の形成方法であって、
前記基板の表面にトレンチを形成する第1の工程と、
前記トレンチ内を埋めるように、前記基板の表面にSiOを主成分とする絶縁材料を供給する第2の工程と、
前記絶縁材料の一部を除去して、前記基板の表面側を平坦化する第3の工程と、
前記絶縁材料をほぼ一定の厚さで除去して、前記基板の表面を露出させる第4の工程と、
前記基板の表面に、本発明のエッチング法によりエッチングを施して、前記基板と前記絶縁材料との間に段差を形成して、前記トレンチ素子分離構造を得る第5の工程とを有することを特徴とする。
これにより、トレンチ素子分離構造を容易かつ正確に形成できる。
【0020】
本発明のトレンチ素子分離構造の形成方法では、前記第5の工程において、前記エッチング剤中のフッ化水素の濃度、前記エッチング剤中のオゾンの濃度、前記エッチング剤の温度、および、前記エッチング剤による処理時間のうちの少なくとも1つの条件を設定することにより、前記基板と前記絶縁材料との間に形成される段差の高さを調整することが好ましい。
これにより、各素子形成領域に形成される半導体素子同士を確実に絶縁することができる。
【0021】
本発明のトレンチ素子分離構造の形成方法では、前記第3の工程における前記絶縁材料の除去は、CMP法により行われることが好ましい。
CMP法によれば、SiOを主成分とする絶縁材料を効率よく除去することができる。
本発明のトレンチ素子分離構造の形成方法では、前記第4の工程における前記絶縁材料の除去は、フッ化水素を含むエッチング剤を用いて行われることが好ましい。
これにより、SiOを主成分とする絶縁材料を効率よく除去することができる。
【0022】
本発明のトレンチ素子分離構造の形成方法では、前記第4の工程における前記絶縁材料の除去は、フッ化水素とオゾンとを含むエッチング剤を用いて行われることが好ましい。
本発明のトレンチ素子分離構造の形成方法では、前記第4の工程と前記第5の工程とは、同一のエッチング剤を用いて行われることが好ましい。
これにより、製造工程を簡略化することができ、より短時間でトレンチ素子分離構造を形成することができる。
【0023】
本発明のトレンチ素子分離構造の形成方法では、前記第1の工程に先立って、前記基板の表面を酸化する工程および/または前記基板の表面にSiOを主成分とする酸化膜を形成する工程を有することが好ましい。
これにより、Si表面を保護しつつ、トレンチを形成することができる。
本発明のトレンチ素子分離構造の形成方法では、前記基板は、面方位が(100)のものであることが好ましい。
これにより、基板表面(Si表面)が荒れるのをより確実に防止することができるとともに、基板のエッチングが厚さ方向により進行し易くなり、トレンチ素子分離構造をより容易かつ確実に形成することができる。
【0024】
本発明の半導体基板は、主としてSiで構成される半導体基板であって、
その表面に、本発明のトレンチ素子分離構造の形成方法によりトレンチ素子分離構造を形成し、該トレンチ素子分離構造により複数の素子形成領域が区画形成されていることを特徴とする。
これにより、各素子形成領域に形成される半導体素子同士を確実に絶縁することができる半導体基板が得られる。
本発明の半導体装置は、本発明の半導体基板と、
該半導体基板の素子形成領域内に形成された半導体素子とを有することを特徴とする。
これにより、信頼性の高い半導体装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明のエッチング方法、トレンチ素子分離構造の形成方法、半導体基板および半導体装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<半導体装置の構成>
まず、本発明の半導体装置について説明する。
図1は、本発明の半導体装置の実施形態を示す概略斜視図である。
なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0026】
図1に示す半導体装置1は、半導体基板(本発明の半導体基板)2と、半導体素子5とを有している。
半導体基板2は、主としてSiで構成される基板20の表面23に、トレンチ素子分離構造(素子分離領域)21が形成されている。そして、基板20の表面23には、トレンチ素子分離構造21により複数の素子形成領域22が区画分離形成されている。
トレンチ素子分離構造21は、基板20の表面23に形成されたトレンチ3内を埋め、かつ、基板20の表面23より突出する絶縁部4で構成されている。
この絶縁部4は、SiOを主成分とする絶縁材料で構成されている。これにより、絶縁部4を介して隣接する半導体素子5同士が導通するのを阻止することができる。
【0027】
本実施形態では、素子形成領域22内に、半導体素子5としてMOSトランジスタ(MOSFET)が形成され(設けられ)ている。
具体的には、素子形成領域22内において、基板20の表面23付近の所定箇所(図示の構成では、ソース54およびドレイン55に対応する領域)には、不純物イオンがイオン注入(導入)されることにより、一対の不純物拡散層が離間して形成されている。各不純物拡散層は、それぞれ、MOSトランジスタにおいてソース54およびドレイン55として機能するものである。
【0028】
ソース54およびドレイン55には、図示しないが、それぞれ、ソース電極およびドレイン電極が接続される。
また、ソース54とドレイン55との間(チャネル領域)に対応する位置に、ゲート絶縁膜52およびゲート電極53が積層されて形成され、さらに、これらの側面には、側面絶縁膜56が形成されている。
このようなMOSトランジスタでは、ゲート電極53に印加する電圧の大きさを変化させることにより、ソース54とドレイン55との間に流れる電流の量が制御される。
【0029】
すなわち、ゲート電極53に電圧が印加されていないOFF状態では、ソース54とドレイン55との間に電圧を印加しても、この間に実質的に電流が流れない。一方、ゲート電極53にスレッショルド電圧以上の電圧が印加されているON状態では、基板20のゲート絶縁膜52に面した部分に電荷が誘起され、チャネル領域(キャリアの流路)が形成される。この状態でソース54とドレイン55との間に電圧を印加すると、チャネル領域を通って電流が流れる。
以上のような半導体装置1では、MOSトランジスタの他、半導体基板2の他の素子形成領域22内には、例えば、ダイオード素子、電荷を蓄積する容量素子抵抗素子等の各種素子が形成されていてもよい。
【0030】
このような半導体装置1は、例えば、パーソナルコンピュータ(ラップトップ型、モバイル型)、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンタ)、テレビ、ビデオカメラ、ディジタルスチルカメラ、ビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、携帯電話機、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ等の各種電子機器に適用する(組み込む)ことができる。
【0031】
<半導体装置の製造方法>
次に、図1に示す半導体装置1の製造方法について説明する。
図1に示す半導体装置1は、本発明のエッチング方法により半導体基板2を製造し、かかる半導体基板2の素子形成領域22内に半導体素子5を形成することにより得られる。以下、詳細に説明する。
【0032】
<<第1製造方法>>
まず、半導体装置1の第1製造方法について説明する。
図2および図3は、それぞれ、図1に示す半導体装置の第1製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
なお、以下の説明では、図2および図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0033】
[1A]パッド酸化膜形成工程
まず、主としてSiで構成される基板20を用意し、この基板20の表面23に、図2(a)に示すように、SiOを主成分とするパッド酸化膜(犠牲膜)6を形成する。このパッド酸化膜6は、例えば、基板20の表面23を保護する目的等により設けられるものである。
【0034】
形成するパッド酸化膜6の厚さ(平均)Tは、特に限定されないが、5〜30nm程度であるのが好ましい。
このパッド酸化膜6は、基板20の表面を酸化する方法、基板20の表面にSiOを主成分とする膜材料を堆積させる方法により形成することができる。なお、これらの方法は、組み合わせて行うようにしてもよい。
【0035】
基板20の表面23を酸化する方法としては、例えば、酸化性雰囲気下、750〜1100℃×5〜50分程度で基板20の表面に熱処理(熱酸化)する方法がある。
一方、基板20の表面にSiOを主成分とする膜材料を堆積させる方法としては、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)等を用いることができる。
なお、このパッド酸化膜6は、必要に応じて設けられるものであり、省略することもできる。
【0036】
[2A]トレンチ形成工程(第1の工程)
次に、このパッド酸化膜6上に、レジスト材料を塗布(供給)し、マスクを介して露光・現像することにより、図2(b)に示すように、素子形成領域22に対応する開口部を有する形状のレジスト層7を形成する。
このレジスト層7をマスクに用いて、パッド酸化膜6および基板20を、エッチングした後、レジスト層7を除去する。これにより、図2(c)に示すように、トレンチ(凹部)3が形成される。
また、レジスト層7をマスクに用いてパッド酸化膜6をエッチングした後、レジスト層を除去し、その後パッド酸化膜6をマスクに用いて基板20をエッチングして、トレンチ3を形成してもよい。
【0037】
エッチング方法としては、例えば、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチングのようなドライエッチング、ウェットエッチング等が挙げられるが、これらの中でも、特に、反応性イオンエッチング等の異方性の高いドライエッチングが好ましい。
トレンチ3の基板20の表面23からの深さDは、半導体装置の種類等によっても若干異なり、特に限定されないが、本実施形態の場合、50〜1000nm程度であるのが好ましく、200〜600nm程度であるのがより好ましい。
なお、目的とする深さDは、後工程における段差41を形成する際の基板20(Si)のエッチング量に応じて、設定するようにすればよい。
【0038】
[3A]絶縁材料供給工程(第2の工程)
次に、図3(d)に示すように、トレンチ3内を埋めるように、基板20上に、SiOを主成分とする絶縁材料40を供給する。
この絶縁材料40は、少なくとも、トレンチ3内を満たし、かつ、絶縁材料40の表面の高さが基板20の表面23よりも高くなるように、さらに、次工程の平坦化工程で絶縁材料40の表面を平坦に加工できる程度に供給される。
【0039】
例えば、絶縁材料40は、トレンチ3内を除く部分における厚さ(平均)Tが、好ましくは100nm以上、より好ましくは200〜1000nm程度、さらに好ましくは350〜600nm程度となるように供給される。
この絶縁材料40の供給方法としては、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)等を用いることができる。
【0040】
[4A]平坦化工程(第3の工程)
次に、図3(e)に示すように、絶縁材料40の一部を除去して、絶縁材料40の表面を平坦化する。
この絶縁材料40の除去は、前記工程[2A]で挙げたエッチング方法の他、CMP(chemical mechanical Polishing)法等により行うことができるが、これらの中でも、特に、CMP法により行うのが好ましい。
CMP法によれば、絶縁材料40を効率よく除去することができる。また、絶縁材料40の表面を精密に平坦化することができる。
【0041】
[5A]基板露出工程(第4の工程)
次に、図3(f)に示すように、絶縁材料40およびパッド酸化膜6をほぼ一定の厚さで除去して、基板20の表面23を露出させる。
この絶縁材料40およびパッド酸化膜6の除去は、例えばフッ化水素を含むエッチング液(エッチング剤)を用いて行われる。かかるエッチング液は、SiOの溶解性が高いため、絶縁材料40およびパッド酸化膜6を効率よく除去することができる。
【0042】
このエッチング液におけるフッ化水素の濃度は、エッチング液の他の条件によっても若干異なるが、0.05〜5重量%程度であるのが好ましく、0.1〜2重量%程度であるのがより好ましい。フッ化水素の濃度が低過ぎると、絶縁材料40およびパッド酸化膜6の除去速度が極端に低下するおそれがあり、一方、フッ化水素の濃度が高過ぎると、露出した基板20の表面23を荒らしてまったり、エッチングレートが早いために正確なエッチング量の制御ができずに、絶縁材料40の表面が基板20の表面23より極端に低くなったりするおそれがある。
【0043】
このエッチング液に用いる溶媒は、フッ化水素を溶解することができ、比較的沸点の低い液体であれば、いかなるものも使用可能である。かかる液体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、RO水のような各種水、メタノール、エタノールのような低級アルコール、アセトン、酢酸エチル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、溶媒には、水を含むものを用いるのが好ましい。これにより、SiOに対するエッチングレートをより高めることができる。
【0044】
また、絶縁材料40およびパッド酸化膜6を除去する際のエッチング液の温度は、エッチング液におけるフッ化水素の濃度を前記範囲とする場合、20〜50℃程度であるのが好ましく、特に、この温度範囲において、エッチング液の温度がほぼ一定に保持した(温度変化が少ない)状態で行うのが好ましい。これにより、絶縁材料40およびパッド酸化膜6をより効率よく除去することができる。
以上のようなエッチング条件で、基板20の表面23が露出するまで、絶縁材料40およびパッド酸化膜6にエッチング液を接触させる。
【0045】
なお、本実施形態では、エッチング剤として、フッ化水素を含むエッチング液を用いる場合について説明したが、エッチング剤には、気体状のフッ化水素(フッ化水素ガス)を含むガスを用いることができる。なお、この場合においても、SiOに対するエッチン
グレートをより高める観点から、エッチング剤として用いられるガス中には、水蒸気を混合するのが好ましい。
【0046】
[6A]段差形成工程(第5の工程)
次に、基板20の表面23に、本発明のエッチング方法によりエッチングを施す。
本発明のエッチング方法は、例えばフッ化水素とオゾンとを含むエッチング液(エッチング剤)を用いて、かかるエッチング液によるエッチングレートが、SiOよりSiが高いことを利用するものである。
【0047】
このエッチングレートの差により、基板(主としてSiで構成される第1の領域)20が、絶縁材料(主としてSiOで構成される第2の領域)40より速くエッチングされる。
これにより、図3(g)に示すように、絶縁部4(トレンチ素子分離構造21)と、この絶縁部4により区画され、表面の位置が絶縁部4の表面の位置より低い素子形成領域22とが形成され、これらの領域4(21)、22同士の間に段差41が形成される。
【0048】
このフッ化水素とオゾンとを含むエッチング液によるエッチングは、基板20であるSiと絶縁部4であるSiOの選択比が大きく、絶縁部4のエッチングが進行し難い。このため、絶縁部4の基板20との境界部に落ち込みが生じること、すなわち、基板20の絶縁部4との境界部に角部が形成されるのを防止することができる。
これにより、従来行われていたような丸め酸化等の工程を省略することができ、半導体装置1の製造工程を簡略化することができる。
また、かかるエッチング液は、基板20(素子形成領域22)の表面23を粗し難い性質も有している。
【0049】
図4には、未処理の基板20の表面粗さRa、0.25wt%のフッ化水素と10ppmのオゾンとを含むエッチング液(25℃)で10分間処理した後の基板20の表面粗さRa、および、アンモニア水と過酸化水素水と純水との混合液:APM(50℃)で10分間処理した後の基板20の表面粗さRaを、それぞれ示す。
図4に示すように、APM(アンモニア水と過酸化水素水と純水との混合液)による処理後には、基板20の表面粗さRaが増大するのに対し、フッ化水素とオゾンとを含むエッチング液による処理後には、基板20の表面粗さRaが低下する傾向を示す。
【0050】
このため、フッ化水素とオゾンとを含むエッチング液を用いることにより、素子形成領域22の表面は、表面モフォロジーが極めて高いものとなる。
また、かかるエッチング液を用いる場合、基板20には、各種面方位のものの中でも、特に、面方位が(100)であるものを用いるのが好適である。これにより、基板20のエッチングが厚さ方向により進行し易くなり、段差41をより容易かつ確実に形成することができる。
【0051】
エッチング液による基板20と絶縁材料40とのエッチングレートは、例えば、次のように設定するのが好ましい。
すなわち、エッチング液による基板20のエッチングレートをRとし、エッチング液による絶縁材料40のエッチングレートをRとしたとき、R/Rは、1.2〜200程度なる関係を満足するのが好ましく、3〜30程度なる関係を満足するのがより好ましい。R/Rが小さ過ぎると、基板20と絶縁材料40との間に段差41を形成するのに長時間を要し、製造効率が低下するおそれがあり、一方、R/Rが大き過ぎると、基板20のエッチングが早く進行しすぎ、その結果、段差41の高さ(素子形成領域22表面と絶縁部4の表面との距離)を制御するのが困難になるおそれがある。
【0052】
このようなエッチングレートの比率(R/R)は、エッチング液におけるフッ化水素の濃度およびオゾンの濃度等に大きく依存する。
エッチング液におけるオゾンの濃度は、主に基板20(Si)のエッチングレートに影響する。すなわち、図5(a)に示すように、エッチング液中のオゾンの濃度を一定とした場合、フッ化水素の濃度を変化させても、Siのエッチングレートは変化せず、図5(b)に示すように、エッチング液中のフッ化水素の濃度を一定とし、オゾンの濃度を変化させた場合には、オゾンの濃度に依存して、Siのエッチングレートが変化する。
【0053】
一方、フッ化水素の濃度は、主に絶縁材料40(SiO)のエッチングレートに影響する。すなわち、図6(a)に示すように、エッチング液中のフッ化水素の濃度を一定とした場合、オゾンの濃度を変化させても、SiOのエッチングレートは変化せず、図6(b)に示すように、エッチング液中のオゾンの濃度を一定とし、フッ化水素の濃度を変化させた場合には、フッ酸の濃度に依存して、SiOのエッチングレートが変化する。
【0054】
したがって、これらの濃度を適宜設定することにより、R/Rの値を前記範囲に調整することができる。
具体的には、エッチング液におけるフッ化水素の濃度は、0.05〜5重量%(wt%)程度であるのが好ましく、0.15〜2重量%程度であるのがより好ましい。また、エッチング液におけるオゾンの濃度は、1〜50ppm程度であるのが好ましく、3〜30ppm程度であるのがより好ましい。
【0055】
このエッチング液に用いる溶媒は、フッ化水素およびオゾンを溶解することができ、比較的沸点の低い液体であれば、いかなるものも使用可能である。かかる液体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、RO水のような各種水、メタノール、エタノールのような低級アルコール、アセトン、酢酸エチル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、溶媒には、水を含むものを用いるのが好ましい。これにより、SiおよびSiOに対するエッチングレートをより高めることができる。
【0056】
また、このエッチングにおけるエッチング液の温度は、20〜50℃程度であるのが好ましく、特に、この温度範囲において、エッチング液の温度がほぼ一定に保持した(温度変化が少ない)状態で行うのが好ましい。これにより、基板20と絶縁材料40との間に段差41を形成するのに要する時間が長くなるのを防止しつつ、確実かつ高い寸法精度で段差41を形成することができる。
【0057】
以上のようなエッチング条件で、段差41の高さHが、所望の高さ(後工程の半導体素子の製造工程(プロセス)で求められる高さ)となるまで、基板20の表面23にエッチング液を接触させる。
なお、段差41の高さHは、エッチング液中のフッ化水素の濃度、エッチング液中のオゾンの濃度、エッチング液の温度、および、エッチング液による処理時間(接触時間)のうちの少なくとも1つの条件を設定することにより調整することができる。
【0058】
この段差41の高さHは、半導体装置の種類等によっても若干異なり、特に限定されないが、5〜150nm程度であるのが好ましく、20〜100nm程度であるのがより好ましい。段差41の高さHが低過ぎると、絶縁部4(素子分離領域21)による素子分離が不完全となるおそれがあり、一方、高さHが高過ぎると、その上部に後工程で、例えば、ポリシリコンをパターニングしてゲート電極53を形成する際等に、フォトリソグラフィー法でのフォーカスズレが生じ、パターニング形成不良が発生するおそれがある。
【0059】
なお、本実施形態では、エッチング剤として、フッ化水素とオゾンとを含むエッチング液を用いる場合について説明したが、エッチング剤には、気体状のフッ化水素(フッ化水素ガス)およびオゾンを含むガスを用いることができる。なお、この場合においても、SiおよびSiOに対するエッチングレートをより高める観点から、エッチング剤として用いられるガス中には、水蒸気を混合するのが好ましい。
以上のような工程を経て、本発明の半導体基板2が得られる。
【0060】
[7A]半導体素子形成工程
次に、半導体基板2の素子形成領域22内に、MOSトランジスタ(半導体素子5)を形成する。
まず、フォトリソグラフィー法により形成したレジストマスクを用いて、所定の種類の不純物イオンを、イオン注入(導入)により素子形成領域22のほぼ全面に注入する。これにより、基板20の表面23付近にウェルが形成される。
その後、基板20の表面23側の全面を覆うように、例えば熱酸化法により、熱酸化膜を形成する。
【0061】
次に、この熱酸化膜上に、例えばポリシリコン膜を、例えばCVD法等により形成する。
次に、例えばフォトリソグラフィー法およびドライエッチングを用いて、ポリシリコン膜をゲート電極53の形状にパターニングする。これにより、ゲート電極53が形成される。
【0062】
次に、基板20の表面23側の全面を覆うように、例えばCVD法により、酸化シリコン膜を形成した後、例えばドライエッチングにより、エッチバックする。これにより、ゲート電極53の側面に側面絶縁膜56を形成する。
次に、側面絶縁膜56が形成されたゲート電極53と、絶縁部4(トレンチ素子分離構造21)とをマスクに用いて、所定の種類の不純物イオンを、イオン注入(導入)により、素子形成領域22(ウェル)の所定の箇所に注入する。これにより、基板20の表面23付近に、ソース54およびドレイン55(不純物拡散層)が形成される。
次に、ソース54およびドレイン55に接続する図示しない配線(ソース電極およびドレイン電極を含む配線)を形成する。
【0063】
以上のような工程を経て、半導体基板2の素子形成領域22内にMOSトランジスタが形成され、本発明の半導体装置1が得られる。
前述したように、半導体基板2は、素子形成領域22のトレンチ素子分離構造21(絶縁部4)の境界部に角部が形成されるのが防止されている。このため、この境界部においてゲート電極53に電界集中が生じるのを防止して、リーク電流が発生するのを防止または抑制することができる。これにより、性能に優れるMOSトランジスタ(半導体装置1)を得ることができる。
【0064】
以上説明したように、本発明によれば、エッチング剤によるエッチングレートが、SiOよりSiが高いことを利用して、主としてSiで構成される第1の領域と、主としてSiOで構成される第2の領域との間に段差を得て、トレンチ素子分離構造と素子形成領域とを形成する。このため、従来のように、トレンチ素子分離構造と素子形成領域とを形成する領域に、予め段差を形成するためのSiN膜等を設けることを要しない。
【0065】
したがって、SiN膜の成膜および除去が不要となるため、半導体装置1の製造工程を簡略化することができる。
また、SiN膜を設けないので、従来のように、SiO膜のCMP法による除去に際して、SiN膜とSiO膜との面積比に依存するエッチングレートの差により、SiO膜にディッシングが発生することがない。これにより、素子分離領域21を精密な形状で形成することができ、半導体素子5同士の分離を確実に行うことができ、例えば、後工程のフォトリソグラフィー法等の段差に影響を受ける工程(プロセス)の安定性確保が可能となる。
【0066】
<<第2製造方法>>
次に、半導体装置1の第2製造方法について説明する。
以下、半導体装置1の第2製造方法について、前記第1製造方法を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2製造方法では、基板露出工程において用いるエッチング剤が異なり、それ以外は、前記第1製造方法と同様である。
【0067】
[1B]パッド酸化膜形成工程
前記工程[1A]と同様の工程を行う。
[2B]トレンチ形成工程(第1の工程)
前記工程[2A]と同様の工程を行う。
[3B]絶縁材料供給工程(第2の工程)
前記工程[3A]と同様の工程を行う。
【0068】
[4B]平坦化工程(第3の工程)
前記工程[4A]と同様の工程を行う。
[5B]基板露出工程(第4の工程)
本実施形態では、絶縁材料40およびパッド酸化膜6を、例えばフッ化水素とオゾンとを含むエッチング液(エッチング剤)を用いて除去する。
【0069】
このエッチング液は、次工程[6B]におけるエッチング液と、フッ化水素の濃度やオゾンの濃度が異なるものであってもよいが、同一のもの(すなわち、同一のエッチング液)を用いるのが好ましい。
これにより、本工程[5B]と次工程[6B]とを連続して行うことができ、半導体基板2(半導体装置1)の製造工程のさらなる簡略化を図ることができる。
また、このエッチングにおけるエッチング液の温度は、前記工程[6A]と同様とするのが好ましい。
【0070】
なお、本実施形態では、エッチング剤として、フッ化水素とオゾンとを含むエッチング液を用いる場合について説明したが、エッチング剤には、気体状のフッ化水素(フッ化水素ガス)およびオゾンを含むガスを用いることができる。なお、この場合においても、SiOに対するエッチングレートをより高める観点から、エッチング剤として用いられるガス中には、水蒸気を混合するのが好ましい。
【0071】
[6B]段差形成工程(第5の工程)
前記工程[6A]と同様の工程を行う。
[7B]半導体素子形成工程
前記工程[7A]と同様の工程を行う。
このような第2製造方法においても、前記第1製造方法と同様の作用・効果が得られる。
【0072】
以上、本発明の本発明のエッチング方法、トレンチ素子分離構造の形成方法、半導体基板および半導体装置について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明のエッチング方法では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。
また、本発明のエッチング方法は、トレンチ素子分離構造を形成する場合への適用に限定されるものではなく、主としてSiで構成される領域と、主としてSiOで構成される領域とを有する基材において、主としてSiで構成される領域の選択エッチングが必要な場合への適用に適する。
【実施例】
【0073】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例)
まず、p型単結晶(100)Si基板(以下、「Si基板」と言う)を用意した。
<1> 次に、このSi基板を、O/N雰囲気下、900℃×20分で熱酸化処理を行った。これにより、Si基板の表面に、平均厚さ10nmのSiO膜(パッド酸化膜)を形成した。
【0074】
<2> 次に、フォトリソグラフィー法により、素子形成領域に対応する開口部を有する形状のレジスト層を形成した。このレジスト層をマスクに用いて、SiO膜およびSi基板を、反応性イオンエッチングにより除去した。これにより、Si基板表面からの深さが400nmのトレンチを形成した。
<3> 次に、レジスト層を除去した後、プラズマCVDにより、トレンチ内を埋めるように、Si基板上にSiO(絶縁材料)を供給した。このSiOのトレンチ3内を除く部分における平均厚さを550nmとした。
【0075】
<4> 次に、SiOの一部をCMP法により除去して、Si基板の表面側を平坦化した。
<5> 次に、フッ化水素水溶液とオゾン水溶液との混合水溶液(エッチング液)を用いて、SiO(絶縁材料およびパッド酸化膜)をほぼ一定の厚さで除去(エッチング)した。これにより、Si基板の表面を露出させた。
なお、エッチングの条件は、エッチング液におけるフッ化水素の濃度を0.5重量%、オゾンの濃度を10ppm、エッチング液の温度を23℃とした。
【0076】
<6> 次に、フッ化水素水溶液とオゾン水溶液との混合水溶液(エッチング液)を用いて、Si基板の表面に対してエッチングを施した。これにより、SiOとSi基板との間に、高さ10nmの段差を形成し、トレンチ素子分離構造を有する半導体基板を得た。
なお、エッチングの条件は、エッチング液におけるフッ化水素の濃度を0.5重量%、オゾンの濃度を10ppm、エッチング液の温度を23℃とした。
また、このエッチング液によるSiのエッチングレートRと、SiOのエッチングレートRとの比率(R/R)は、20であった。
<7> 次に、ゲート絶縁膜、ゲート電極、上面絶縁層および側面絶縁層の形成、B(ホウ素)イオンのイオン注入によるソースおよびドレインの形成、ソースおよびドレインに接続する配線の形成を行った。これにより、図1に示すMOSトランジスタを有する半導体装置を製造した。
【0077】
(比較例)
まず、p型単結晶(100)Si基板(以下、「Si基板」と言う)を用意した。
<1’> 次に、前記工程<1>と同様の工程を行った。
次いで、780℃×50分でLP−CVD法を行った。これにより、SiO膜上に、平均厚さ130nmのSiN膜を形成した。
【0078】
<2’> 次に、前記工程<2>と同様の工程を行った。
これにより、Si基板表面からの深さが400nmのトレンチを形成した。
<3’> 次に、前記工程<3>と同様の工程を行った。
<4’> 次に、SiN膜をストッパーとして、前記工程<4>と同様の工程を行った。
【0079】
<5’> 次に、160℃の熱リン酸水溶液を用いて、SiN膜を除去した。
<6’> 次に、フッ化水素水溶液(エッチング液)を用いて、SiO(絶縁材料およびパッド酸化膜)をほぼ一定の厚さで除去(エッチング)した。これにより、SiOとSi基板との境界部に、高さ50nmの段差を形成し、トレンチ素子分離構造を有する半導体基板を得た。
なお、エッチングの条件は、エッチング液におけるフッ化水素の濃度を0.5重量%、エッチング液の温度を23℃とした。
<7’> 次に、前記工程<7>と同様の工程を行った。これにより、図1に示す構成と同様のMOSトランジスタを有する半導体装置を製造した。
【0080】
[評価]
実施例および比較例で製造した半導体装置について、それぞれ、ゲート電極に印加する電圧値の変化させ、このときのソース電極とドレイン電極との間に流れる電流値の変化(トランジスタ特性)を測定した。
この結果を、図7および図8に示す。
なお、図7および図8中、横軸は、ゲート電極へ印加する電圧値(ゲート電圧:V)を示し、縦軸は、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流値(A)の対数値を示す。
【0081】
図7に示すように、実施例で製造された半導体装置では、ゲート電圧の変化に対する電流値の変化がなだらかな曲線を示した。
これに対して、図8に示すように、比較例で製造された半導体装置では、ゲート電圧の変化に対する電流値の変化に2相性が認められた。これは、リーク電流の発生を示唆さする結果である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の半導体装置の実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す半導体装置の第1製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図3】図1に示す半導体装置の第1製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】未処理および処理済みの基板の表面粗さRaを示す図である。
【図5】Siのエチングレートの変化と、エッチング液中のフッ化水素の濃度およびオゾンの濃度との関係を示すグラフである。
【図6】SiOのエチングレートの変化と、エッチング液中のフッ化水素の濃度およびオゾンの濃度との関係を示すグラフである。
【図7】実施例で製造された半導体装置のトランジスタ特性を示すグラフである。
【図8】比較例で製造された半導体装置のトランジスタ特性を示すグラフである。
【図9】従来の半導体装置の製造工程を説明するための図(縦断面図)である。
【図10】従来の半導体装置の製造工程を説明するための図(縦断面図)である。
【符号の説明】
【0083】
1……半導体装置 2……半導体基板 20……基板 21……素子分離領域 22……素子形成領域 23……表面 3……トレンチ 4……絶縁部 40……絶縁材料 41……段差 5……半導体素子 52……ゲート絶縁膜 53……ゲート電極 54……ソース 55……ドレイン 56……側面絶縁膜 6……パッド酸化膜 7……レジスト層 100……Si基板 200……パッド酸化膜 300……SiN膜 400……フォトレジスト 500……トレンチ 501……角部 600……SiO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主としてSiで構成される第1の領域と、主としてSiOで構成される第2の領域とを有する基材を、フッ化水素とオゾンとを含むエッチング剤を用いてエッチングするエッチング方法であって、
前記エッチング剤によるエッチングレートが、SiOよりSiが高いことを利用して、前記第1の領域の表面の位置が前記第2の領域の表面の位置より低くなるように、前記第1の領域と前記第2の領域との間に段差を形成することを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
前記エッチング剤は、フッ化水素とオゾンとを含むエッチング液である請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記エッチング液による前記第1の領域のエッチングレートをRとし、前記エッチング液による前記第2の領域のエッチングレートをRとしたとき、R/Rは、1.2〜200なる関係を満足する請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記エッチング液におけるフッ化水素の濃度は、0.05〜5重量%である請求項2または3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記エッチング液におけるオゾンの濃度は、1〜50ppmである請求項2ないし4のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記エッチングにおける前記エッチング液の温度は、0〜100℃である請求項2ないし5のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項7】
主としてSiで構成される基板の表面に、トレンチ素子分離構造を形成するトレンチ素子分離構造の形成方法であって、
前記基板の表面にトレンチを形成する第1の工程と、
前記トレンチ内を埋めるように、前記基板の表面にSiOを主成分とする絶縁材料を供給する第2の工程と、
前記絶縁材料の一部を除去して、前記基板の表面側を平坦化する第3の工程と、
前記絶縁材料をほぼ一定の厚さで除去して、前記基板の表面を露出させる第4の工程と、
前記基板の表面に、請求項1ないし6のいずれかに記載のエッチング法によりエッチングを施して、前記基板と前記絶縁材料との間に段差を形成して、前記トレンチ素子分離構造を得る第5の工程とを有することを特徴とするトレンチ素子分離構造の形成方法。
【請求項8】
前記第5の工程において、前記エッチング剤中のフッ化水素の濃度、前記エッチング剤中のオゾンの濃度、前記エッチング剤の温度、および、前記エッチング剤による処理時間のうちの少なくとも1つの条件を設定することにより、前記基板と前記絶縁材料との間に形成される段差の高さを調整する請求項7に記載のトレンチ素子分離構造の形成方法。
【請求項9】
前記第3の工程における前記絶縁材料の除去は、CMP法により行われる請求項7または8に記載のトレンチ素子分離構造の形成方法。
【請求項10】
前記第4の工程における前記絶縁材料の除去は、フッ化水素を含むエッチング剤を用いて行われる請求項7ないし9のいずれかに記載のトレンチ素子分離構造の形成方法。
【請求項11】
前記第4の工程における前記絶縁材料の除去は、フッ化水素とオゾンとを含むエッチング剤を用いて行われる請求項7ないし10のいずれかに記載のトレンチ素子分離構造の形成方法。
【請求項12】
前記第4の工程と前記第5の工程とは、同一のエッチング剤を用いて行われる請求項10に記載のトレンチ素子分離構造の形成方法。
【請求項13】
前記第1の工程に先立って、前記基板の表面を酸化する工程および/または前記基板の表面にSiOを主成分とする酸化膜を形成する工程を有する請求項7ないし12のいずれかに記載のトレンチ素子分離構造の形成方法。
【請求項14】
前記基板は、面方位が(100)のものである請求項7ないし13のいずれかに記載のトレンチ素子分離構造の形成方法。
【請求項15】
主としてSiで構成される半導体基板であって、
その表面に、請求項7ないし14のいずれかに記載のトレンチ素子分離構造の形成方法によりトレンチ素子分離構造を形成し、該トレンチ素子分離構造により複数の素子形成領域が区画形成されていることを特徴とする半導体基板。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体基板と、
該半導体基板の素子形成領域内に形成された半導体素子とを有することを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−54380(P2006−54380A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236181(P2004−236181)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構 極低電力情報端末用LSIの研究開発に係る委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】