説明

エッチング装置

【課題】生産のリードタイムが短く、小フットプリント化を実現できるエッチング装置を提供する。
【解決手段】基板Kを搬送する搬送装置2と、基板K上にエッチング液を供給して金属膜をエッチングする第1エッチング部10と、金属膜エッチング後の基板Kを洗浄する第1洗浄部15と、洗浄後の基板Kを乾燥させる第1乾燥部20と、フッ素系反応成分及び酸化性反応成分を含む処理ガスを用い、略大気圧下で、基板K上のシリコン含有膜をエッチングする第2エッチング部30と、シリコン含有膜エッチング後の基板Kを洗浄する第2洗浄部35と、洗浄後の基板Kを乾燥させる第2乾燥部40とを順次搬送方向に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜及びその下層にシリコン含有膜を備えた基板の前記金属膜及びシリコン含有膜をエッチングする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上層に例えばアルミニウム(Al),チタン(Ti),銅(Cu)やモリブデン(Mo)といった金属膜が形成され、その下層にアモルファスシリコン層や窒化シリコン層といったシリコン含有膜が形成された基板において、まず、前記金属膜をエッチングし、次いでシリコン含有膜をエッチングして、所望の構造物を形成するといったことが従来行われている。
【0003】
この場合に、前記金属膜をエッチングする際には、エッチング液を用いた所謂ウェットエッチング装置が用いられ、シリコン含有膜をエッチングする際には、反応性ガスをプラズマ化してエッチングする所謂プラズマドライエッチング装置が用いられてきた。
【0004】
そして、本願出願人は、上記ウェットエッチング装置として、例えば、特開2003−347269号公報に開示された装置を提案している。同公報に記載されるように、この装置は、エッチング液を基板上に供給して該当部位をエッチングするエッチング部、エッチングされた基板上に洗浄水を供給して水洗する水洗部、水洗後の基板を乾燥させる乾燥部、並びにこれらエッチング部、水洗部及び乾燥部に順次基板を搬送する搬送装置などから構成される。
【0005】
また、上記プラズマドライエッチング装置としては、従来、例えば、特表2002−506572号公報に開示された装置が知られている。この装置は、エッチングチャンバ内に反応性ガスを導入しプラズマ化して反応種を生成し、その下方に搬入,載置された基板を、生成した反応種によってエッチングするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−347269号公報
【特許文献2】特表2002−506572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来、上述したウェットエッチング装置とプラズマドライエッチング装置とは、相互に離れた場所に設置されることが多く、ウェットエッチング後の基板を適宜移送装置を用いてプラズマドライエッチング装置に移送しなければならなかった。
【0008】
その理由の一つとしては、プラズマドライエッチングでは、基板上に水分が残っているとこれがエッチングに悪影響を及ぼすため、基板を完全に乾燥させる必要があり、そのため、従来は、ウェットエッチング装置とプラズマドライエッチング装置とを直接連結せず、これらを分離した状態で設置するとともに、ウェットエッチング後の基板を別途乾燥装置に仕掛けて乾燥させるか、若しくは所定時間放置して完全に乾燥させ、その後、プラズマドライエッチング装置に仕掛けるようにしていた。
【0009】
このため、一つの基板のエッチングを完了するまでの時間が長く、生産効率の面からそのリードタイムの削減が課題となっていた。
【0010】
また、ウェットエッチング装置及びプラズマドライエッチング装置の設置領域、並びに移送装置やストックヤードなど、生産のために広い領域が必要であり、生産コストを削減する意味から、装置のフットプリントをより小さくすることが求められている。
【0011】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、生産のリードタイムが短く、しかも小フットプリント化を実現することができるエッチング装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明は、
少なくとも金属膜及びその下層にシリコン含有膜を備えた基板の前記金属膜及びシリコン含有膜をエッチングする装置であって、
前記基板を所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される基板上にエッチング液を供給して前記金属膜をエッチングする第1エッチング部と、
前記第1エッチング部より前記搬送方向下流側に設けられ、金属膜エッチング後の基板を、洗浄液を用いて洗浄する第1洗浄部と、
前記第1洗浄部より前記搬送方向下流側に設けられ、洗浄後の基板を乾燥させる第1乾燥部と、
前記第1乾燥部より前記搬送方向下流側に設けられ、少なくともフッ素系反応成分及び酸化性反応成分を含む処理ガスを用い、略大気圧下で、前記基板のシリコン含有膜をエッチングする第2エッチング部と、
前記第2エッチング部より前記搬送方向下流側に設けられ、シリコン含有膜エッチング後の基板を、洗浄液を用いて洗浄する第2洗浄部と、
前記第2洗浄部より前記搬送方向下流側に設けられ、洗浄後の基板を乾燥させる第2乾燥部とから構成したエッチング装置に係る。
【0013】
近時、フッ素系反応成分及び酸化性反応成分を含む処理ガスを用い、略大気圧下で、基板上のシリコン含有膜をエッチングするエッチング法(エッチング液ではなくガスを用いること、及び、エッチングを略大気圧の下で行うことから、便宜上、以下、「大気圧ドライエッチング法」という)及びその装置が開発され、注目を集めている。
【0014】
この大気圧ドライエッチング法は、Siを酸化してSiOを生成した後、フッ化水素(HF)とSiOを反応させてSiFを生成させることにより、Siをエッチングするというものであり、エッチング時に水分が生成される反応系である。
【0015】
したがって、かかる大気圧ドライエッチング法では、エッチング前の基板を完全には乾燥させる必要がなく、ウェットエッチング装置と大気圧ドライエッチング装置とを連結したエッチングシステムを形成することができる。このような背景から、本発明では、ウェットエッチング装置に引き続き大気圧ドライエッチング装置を連結配置した上記構成を採用した。
【0016】
斯くして、本発明では、少なくとも金属膜及びその下層にシリコン含有膜を備えた基板が、まず、第1エッチング部に搬送されて、前記金属膜が適宜エッチングされ、ついで、金属膜エッチング後の基板は、順次第1洗浄部,第1乾燥部に経由して、エッチング液が洗い流された後乾燥される。
【0017】
引き続いて基板は、第2エッチング部に搬送されて、そのシリコン含有膜がエッチングされ、この後、順次第2洗浄部,第2乾燥部に経由して、エッチング残渣等が洗い流された後乾燥され、装置から搬出される。
【0018】
このように本発明によれば、金属膜とその下層のシリコン含有膜を順次連続してエッチングすることができるので、従来に比べて、一つの基板のエッチングを完了するまでの時間が短く、このため、生産のリードタイムを短縮することができ、生産効率を高めることができる。
【0019】
また、ウェットエッチング装置と大気圧ドライエッチング装置とを直結した構成としたので、移送装置やストックヤードなどが不要であり、装置の小フットプリント化を実現することができ、生産コストを削減することができる。
【0020】
ところで、エッチングによって形成される構造物は微細であり、例えば、レジストとその下層の構造物との間の角部や隙間に侵入したエッチング液は、これを第1洗浄部における洗浄だけでは完全には洗い流せない場合がある。この場合、残ったエッチング液が、続く第2エッチング部においてエッチングに悪影響を及ぼすといったことが懸念される。
【0021】
したがって、ウェットエッチング後のエッチング液を完全に洗い流すことが求められるが、このためには、前記第1乾燥部と第2エッチング部との間に、前記第1乾燥部によって乾燥された基板を、洗浄液を用いて二次洗浄する二次洗浄部と、前記二次洗浄部により洗浄された基板を再び乾燥させる二次乾燥部を、基板の搬送方向に順次配設するのが好ましい。
【0022】
第1乾燥部によって乾燥させた後の基板を二次洗浄部によって洗浄すると、上述したレジストとその下層の構造物との間の角部や隙間に洗浄液が侵入しやすくなり、残ったエッチング液を略完全に洗い流すことができ、上記のような問題を解決することができる。
【0023】
また、前記第2エッチング部の手前に、前記基板を系外に搬出するとともに、逆に、系外から基板を受け入れて前記第2エッチング部に搬入する基板搬入出部を設けても良い。基板によっては、ウェットエッチングのみ行えば良いものがあり、逆に、大気圧ドライエッチングのみ行えば良いものがある。この場合、ウェットエッチング後の基板を、前記基板搬入出部から搬出することで、基板に対しウェットエッチングのみを施すことができ、また、基板搬入出部により系外から基板を導入して第2エッチング部に搬入し、以降の処理を行うことで、基板に対し大気圧ドライエッチングのみを施すことができる。このように、前記基板搬入出部を設けることで、ウェットエッチング及び大気圧ドライエッチング、ウェットエッチングのみ、並びに大気圧ドライエッチングのみの3つの形態のエッチングを一つの装置で行うことができる。
【0024】
尚、本発明における前記基板には、ガラス基板やシリコン基板など各種の基板が含まれる。また、前記金属膜には、チタン(Ti)膜,モリブデン(Mo)膜,アルミニウム(Al)膜,銅(Cu)膜など各種金属膜が含まれ、シリコン含有膜には、アモルファスシリコン,多結晶シリコン或いは単結晶シリコンの膜の他、酸化シリコン(SiO)膜、炭化シリコン(SiC)膜、酸化炭化シリコン(SiOC)膜、窒化シリコン(SiN)膜などが含まれる。
【0025】
また、エッチング液としては、例えば、燐酸、硝酸及び酢酸を含む混酸液を挙げることができる。
【0026】
また、フッ素系反応成分としては、HFやCOFなどを挙げることができ、酸化性反応成分としては、OやOラジカルなどを挙げることができ、前記フッ素系反応成分は、フッ素系原料ガス(例えば、CF、CHF、C、C、C、SF、NF、XeFなど)をプラズマ化することによって生成しても良く、前記酸化性反応成分も酸素系原料ガス(例えば、O、NO、NO、NOなど)をプラズマ化することによって生成しても良い。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、一つの基板のエッチングを完了するまでの時間が短く、このため、生産のリードタイムを短縮することができ、生産効率を高めることができる。また、ウェットエッチング装置と大気圧ドライエッチング装置とを直結した構成としたので、移送装置やストックヤードなどが不要であり、装置の小フットプリント化を実現することができ、生産コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るエッチング装置を示した平面図である。
【図2】図1における矢示A−A方向から見た第1エッチング部の断面図である。
【図3】図1における矢示A−A方向から見た第1洗浄部の断面図である。
【図4】図1における矢示A−A方向から見た第1乾燥部の断面図である。
【図5】図1における矢示B−B方向から見た第2エッチング部の断面図である。
【図6】本実施形態に係るエッチング装置でエッチング可能な基板を示した断面図である。
【図7】本実施形態におけるエッチング作用を説明するための説明図である。
【図8】本実施形態におけるエッチング作用を説明するための説明図である。
【図9】洗浄工程における問題点を説明するための説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係るエッチング装置を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の具体的な実施の形態につき、図面に基づいて説明する。
【0030】
図1に示すように、本例のエッチング装置1は、順次一列に配設された1階搬入部5,第1エッチング部10,第1洗浄部15及び第1乾燥部20と、これら1階搬入部5,第1エッチング部10,第1洗浄部15及び第1乾燥部20と対向するように同じく順次一列に配設されたエレベータ60,第2エッチング部30,第2洗浄部35,第2乾燥部40及び1階搬出部45と、前記第1乾燥部20とエレベータ60とを連結する方向変換搬送部25とを備えるとともに、前記第2エッチング部30,第2洗浄部35,第2乾燥部40及び1階搬出部45の上層階(2階)として設けた2階搬送部55及び2階搬入出部50を備え、前記各部を平面視コの字状に配設した構成を備える。尚、図1では、理解し易いように、2階部分の2階搬送部55及び2階搬入出部50を1階部分と同じ平面に図示している。
【0031】
前記各部は、その共通する構成として、それぞれ板金等の板材によって形成された部屋を備えており、その各内部には基板を搬送するための複数の搬送ローラ2が同一平面上に配設されている(図2乃至図5参照)。特に図示しないが、搬送ローラ2は適宜駆動装置によって駆動されて、その上に載置された基板Kを搬送するようになっており、これら搬送ローラ2及び駆動装置を含めて一つの搬送装置が構成される。
【0032】
また、各部の相互を仕切る隔壁には、それぞれ開口部3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h,3i,3j,3kが形成されており、前記搬送ローラ2によって搬送される基板Kは、この開口部3a,3b・・・を通って順次各部に搬入され、また搬出される。尚、開口部3a,3b,3f及び3gにはそれぞれシャッタが設けられており、基板Kが通過するときのみ、このシャッタが開くようになっている。
【0033】
また、前記1階搬入部5,1階搬出部45及び2階搬入出部50は、それぞれ図1における左側の壁面に開口部が設けられており、1階搬入部5及び2階搬入出部50には、この開口部からその内部の搬送ローラ2上に基板Kが搬入され、1階搬出部45及び2階搬入出部50では、搬送ローラ2上の基板Kが当該開口部から搬出される。
【0034】
図2に示すように、前記第1エッチング部10は、その部屋内において前記搬送ローラ2の上方に、前記基板Kの搬送方向(矢示方向)に向けて順次配設されたスリットノズル11、スプレーノズル12群及びスリットノズル13を備えている。
【0035】
スリットノズル11は長尺の筐体から構成され、その下面にスリット状の開口部が形成されており、その長手方向が前記搬送方向と直交するように配設され、また、当該スリット口の長さは基板Kの幅よりも長く、基板Kの全幅をカバーしている。スリットノズル11には、図示しないエッチング液供給源からエッチング液(例えば、燐酸,硝酸及び酢酸を含む混酸液)が供給され、供給されたエッチング液を前記スリット口から膜状に吐出して、その下方の基板K上に当該エッチング液を塗布する。
【0036】
前記スプレーノズル12群は、少なくとも基板Kの全幅をカバーするように2次元配置されている。各スプレーノズル12は、前記エッチング液供給源からエッチング液が供給され、供給されたエッチング液をシャワー状にして、その下方の基板K上に供給する。
【0037】
前記スリットノズル13は、前記スリットノズル11と同様に長尺の筐体から構成され、その下面にスリット状の開口部が形成されており、その長手方向が前記搬送方向と直交するように配設され、また、当該スリット口の長さは基板Kの幅よりも長く、基板Kの全幅をカバーしている。このスリットノズル13は、図示しない圧縮空気供給源から圧縮空気が供給され、供給された圧縮空気を前記スリット口からエアーカーテン状に吐出して、基板K上のエッチング液を吹き落とす。
【0038】
前記第1洗浄部15は、図3に示すように、その部屋内において前記搬送ローラ2の上方に、スプレーノズル16群を備えている。
【0039】
スプレーノズル16群は、少なくとも基板Kの全幅をカバーするように2次元配置されており、各スプレーノズル16には、図示しない先浄水供給源から洗浄水が供給され、供給された洗浄水をシャワー状にして、その下方の基板K上に供給する。
【0040】
尚、前記第2洗浄部35もこの第1洗浄部と同様の構成を備えている。
【0041】
前記第1乾燥部20は、図4に示すように、その部屋内において前記搬送ローラ2の上方に、前記基板Kの搬送方向(矢示方向)に向け、所定間隔で配設された2本のスリットノズル21,22と、スリットノズル21と対向するように前記搬送ローラの下方に配設されたスリットノズル23を備えている。
【0042】
これらスリットノズル21,22,23は、前記スリットノズル13と同様に長尺の筐体から構成され、スリットノズル21,22はその下面に、スリットノズル23はその上面にそれぞれスリット状の開口部が形成されており、その長手方向が前記搬送方向と直交するように配設され、また、当該スリット口の長さは基板Kの幅よりも長く、基板Kの全幅をカバーしている。これらスリットノズル21,22,23にも、図示しない圧縮空気供給源から圧縮空気が供給され、供給された圧縮空気を前記各スリット口からエアーカーテン状に吐出して、スリットノズル21,22は基板K上に残った水分を吹き飛ばし、スリットノズル23は基板下面に残った水分を吹き飛ばしながら、当該基板Kを乾燥させる。
【0043】
尚、前記第2乾燥部40もこの第1乾燥部20と同様の構成を備えている。
【0044】
前記方向変換搬送部25は、上述したように、前記第1乾燥部20とエレベータ60とを連結するもので、図1に示すように、前記第1乾燥部20から搬出された基板Kを、その搬送方向を右回りに90°変換して搬送し、その後更に右回りに90°変換して前記エレベータ60に搬入する。
【0045】
また、前記エレベータ60は、上層の2階とその下の1階とを連結して基板Kを昇降させるもので、前記2階搬送部55によって搬送された基板Kを受け入れ1階に降下させて、前記第2エッチング部30に搬入し、逆に、方向変換搬送部25から搬出された基板Kを上昇させて階上の2階搬送部55に搬入する役割を果たす。
【0046】
前記第2エッチング部30は、図5に示すように、その部屋内において前記搬送ローラ2の上方に、基板Kの搬送方向(矢示方向)に沿って所定間隔をあけて配設された第1プラズマ生成器31及び第2プラズマ生成器32を備えている。
【0047】
前記第1プラズマ生成器31及び第2プラズマ生成器32は、前記搬送方向と直交する方向に沿って配設された平行平板型の電極をそれぞれ備え、この電極に高周波電力を印加することで、平板間に供給された処理ガスをプラズマ化し、これによって生成した反応成分を、その下方を搬送される基板K上に供給する。
【0048】
前記第1プラズマ生成器31及び第2プラズマ生成器32には、それぞれ図示しない適宜供給源から酸素系原料ガス(例えば、Oガス)とフッ素系原料ガス(例えば、CFガス)の混合ガスが供給され、これがプラズマ化されて、酸化性反応成分としてのOやOラジカルと、フッ素系反応成分としてのHFが生成され、これらが基板K上に供給される。
【0049】
斯くして、以上の構成を備えた本例のエッチング装置によれば、次のようにして、基板Kがエッチングされる。
【0050】
まず、前工程完了後の基板Kが、図示しない適宜移送装置によって前記1階搬入部5に投入される。尚、図6にエッチング対象の基板Kを示している。この基板Kは、ガラス基板の上にアモルファスシリコン膜が成膜され、その上にアルミニウム膜が成膜され、更にその上に、マスクとしてのレジスト膜が形成されている。但し、言うまでもなく、これは説明のために一例を示したものであって、本発明に適用可能な基板がこれに限定されるものでは無い。
【0051】
1階搬入部5に投入された基板Kは、搬送ローラ2によって第1エッチング部10に搬入され、前記スリットノズル11から吐出されるエッチング液がその上面に塗布され、ついで、スプレーノズル12から吐出されるエッチング液が基板K上に供給される。
【0052】
そして、このようにしてエッチング液が供給されると、当該基板K上では、その搬送過程で当該エッチング液がレジストの開口部を通し下層のアルミニウム膜と接触してこれを等方的にエッチングし、図7に示すような構造を形成する。尚、基板Kの搬送速度は当該エッチングレートを考慮して、アルミニウム膜が完全にエッチングされる速度に設定される。
【0053】
このようにしてアルミニウム膜のエッチングを終えた基板Kは、第1洗浄部15に搬入されるが、その前に、スリットノズル13から吐出される圧縮空気によって、基板K上のエッチング液が吹き飛ばされ、エッチング液が第1洗浄部15側に持ち出されるのが防止される。
【0054】
ついで、基板Kは、第1洗浄部15において、そのスプレーノズル16から噴出される洗浄水によって、その上面のエッチング液が洗い流される。尚、エッチングによって形成される構造物は微細であるため、例えば、図9に示すように、レジスト裏面とその下層のアルミニウム膜とで形成される角部に侵入したエッチング液は、これを容易には洗い流すことができず、第1乾燥部20における乾燥処理後も同部にエッチング液が残留してしまうことがある。この場合、残ったエッチング液が、続く第2エッチング部30におけるエッチング時に悪影響を及ぼすといったことが懸念される。したがって、スプレーノズル16による洗浄の液圧は、0.4〜1.0MPaの比較的高い圧力であるのが好ましい。高圧の洗浄液により、通常では届き難い場所にも洗浄液が届き易くなるため、上記のような角部のエッチング液も洗い流すことができる。
【0055】
次に、基板Kは、第1乾燥部20において、スリットノズル21,22及び23から吐出される圧縮空気によって、その上下面が乾燥され、乾燥後の基板Kは方向変換部25及びエレベータ60を通って、第2エッチング部30に搬入される。
【0056】
第2エッチング部30では、第1プラズマ生成器31及び第2プラズマ生成器32によって生成された酸化性反応成分としてのOやOラジカルと、フッ素系反応成分としてのHFが基板K上に供給される。
【0057】
酸化性反応成分は基板K上のアモルファスシリコン膜が酸化する作用をなし、アモルファスシリコン膜はこの酸化性反応成分により酸化されて酸化シリコン(SiO)膜となる。一方、フッ素系反応成分は酸化シリコン(SiO)膜と反応してSiFとHOを生成する作用をなし、これにより前記酸化シリコン膜がエッチングされる。このように、基板K上のアモルファスシリコン膜は2段階の反応によってエッチングされる。
【0058】
これら一連の反応を示すと、以下のようになる。
3Si+2O → 3SiO
SiO+4HF → SiF+2H
【0059】
第2エッチング部30でのアモルファスシリコン膜のエッチングを終えると、ついで、基板Kは順次第2洗浄部35及び第2乾燥部40に搬入されて、その上面が洗浄されるとともに、その上下面が乾燥され、1階搬出部45に搬出され、この後、基板Kは前記移送装置(図示せず)によって適宜場所に移送される。
【0060】
以上のように、本例のエッチング装置1によれば、金属膜とその下層のシリコン含有膜を順次連続してエッチングすることができるので、従来に比べて、一つの基板のエッチングを完了するまでの時間が短く、このため、生産のリードタイムを短縮することができ、生産効率を高めることができる。
【0061】
また、ウェットエッチングに係る構成部分と大気圧ドライエッチングに係る構成部分とを直結したので、移送装置やストックヤードなどが不要であり、装置の小フットプリント化を実現することができ、生産コストを削減することができる。
【0062】
尚、本実施形態に係るエッチング装置1において、第2エッチング部30、第2洗浄部35及び第2乾燥部40における処理が必要ない場合には、前記方向変換搬送部25から搬出された基板Kを、エレベータ60によって階上に搬送し、2階搬送部55を経て2階搬入出部50から搬出することで、基板Kにウェットエッチングのみを施すことができる。
【0063】
逆に、基板Kに大気圧ドライエッチングのみを行うには、2階搬入出部50に前工程完了後の基板Kを投入して、2階搬送部55及びエレベータ60を経由させて、当該基板Kを前記第2エッチング部30、第2洗浄部35及び第2乾燥部40に順次経由させて処理を行うことにより、基板Kに対して大気圧ドライエッチングのみを施すことができる。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何ら上例のものに限定されるものではない。
【0065】
例えば、本発明に適用可能な基板には、ガラス基板やシリコン基板など各種の基板が含まれ、また、これに成膜される金属膜には、上例のAl膜の他、Ti膜,Mo膜,Cu膜など各種金属膜が含まれ、シリコン含有膜には、アモルファスシリコン膜の他、多結晶シリコン或いは単結晶シリコンの膜、SiO膜、SiC膜、SiOC膜やSiN膜などが含まれる。
【0066】
また、エッチング液もエッチング対象の金属膜に応じて設定され、上例の燐酸、硝酸及び酢酸を含む混酸液には限られない。
【0067】
また、前記第1プラズマ生成器31及び第2プラズマ生成器32に供給される酸素系原料ガスは、上例のOガスに限られず、この他に、NOガス,NOガスやNOガスなどを用いることができ、フッ素系原料ガスについても、上例のCFガスに限られず、この他に、CHFガス,Cガス,Cガス,Cガス,SFガス,NFガス,XeFガスなどを用いることができる。
【0068】
また、第2エッチング部30において、第1プラズマ生成器31及び第2プラズマ生成器32に混合ガスを供給してこれをプラズマ化して、酸化性反応成分及びフッ素系反応成分を生成し、生成した酸化性反応成分及びフッ素系反応成分を用いてシリコン含有膜をエッチングするようにしたが、これに代えて、Oなどの酸化性反応成分の単体若しくは混合体と、HFやCOFなどフッ素系反応成分の単体若しくは混合体とを直接シリコン含有膜に作用させて当該シリコン含有膜をエッチングするようにしても良い。
【0069】
また、上述したようにエッチングによって形成される構造物は微細であるため、上記のよう高圧の洗浄によっても、角部に侵入したエッチング液を完全には洗浄しきれない場合があり得る。そこで、より完全な洗浄を実現するために、図10に示すように、第2エッチング部30の手前に、二次洗浄部110とこれに続く二次乾燥部115とを設け、前記第1洗浄部15及び第1乾燥部20によって洗浄,乾燥された基板Kを、これら二次洗浄部110及び二次乾燥部115により、再度、洗浄,乾燥するようにしても良い。
【0070】
第1乾燥部20によって乾燥させた後の基板Kを二次洗浄部110によって洗浄すると、上述したレジスト裏面とその下層のアルミニウム膜とで形成される角部に洗浄液が侵入しやすくなり、残ったエッチング液を略完全に洗い流すことができる。
【0071】
尚、二次洗浄部110は、前記第1洗浄部15及び第2洗浄部35と同じ構成を備え、二次乾燥部115も前記第1乾燥部20及び第2乾燥部40と同じ構成を備える。
【0072】
また、図10中の符号105は、二次洗浄部110及び二次乾燥部115を挿入することによって崩れた往路側のライン長と復路側のライン長と揃えるために、往路側に挿入した延長搬送部である。また、符号3m,3n及び3oは、それぞれ開口部である。
【0073】
また、上例では、第1洗浄部15及び第1乾燥部20を、第1エッチング部10と方向変換搬送部25との間に設けたが、これに限るものではなく、第1エッチング部10と方向変換搬送部25とを連結し、方向変換搬送部25内に第1洗浄部15及び第1乾燥部20を設けても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 エッチング装置
2 搬送ローラ
10 第1エッチング部
15 第1洗浄部
20 第1乾燥部
30 第2エッチング部
35 第2洗浄部
40 第2乾燥部
110 二次洗浄部
115 二次乾燥部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも金属膜及びその下層にシリコン含有膜を備えた基板の前記金属膜及びシリコン含有膜をエッチングする装置であって、
前記基板を所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される基板上にエッチング液を供給して前記金属膜をエッチングする第1エッチング部と、
前記第1エッチング部より前記搬送方向下流側に設けられ、金属膜エッチング後の基板を、洗浄液を用いて洗浄する第1洗浄部と、
前記第1洗浄部より前記搬送方向下流側に設けられ、洗浄後の基板を乾燥させる第1乾燥部と、
前記第1乾燥部より前記搬送方向下流側に設けられ、少なくともフッ素系反応成分及び酸化性反応成分を含む処理ガスを用い、略大気圧下で、前記基板のシリコン含有膜をエッチングする第2エッチング部と、
前記第2エッチング部より前記搬送方向下流側に設けられ、シリコン含有膜エッチング後の基板を、洗浄液を用いて洗浄する第2洗浄部と、
前記第2洗浄部より前記搬送方向下流側に設けられ、洗浄後の基板を乾燥させる第2乾燥部とから構成したことを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
前記第1乾燥部と第2エッチング部との間に、
前記第1乾燥部により乾燥された基板を、洗浄液を用いて二次洗浄する二次洗浄部と、
前記二次洗浄部により洗浄された基板を乾燥させる二次乾燥部とを、前記搬送方向に順次設けたことを特徴とする請求項1記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記基板を系外に搬出する一方、系外から基板を受け入れて前記第2エッチング部に搬入する基板搬入出部を、前記第2エッチング部の手前に設けたことを特徴とする請求項1又は2エッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−210978(P2011−210978A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77730(P2010−77730)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】