説明

エンジン装置

【課題】排気ガスの温度を上昇させてフィルタに堆積している粒子状物質を強制的に酸化できる技術を提供する。
【解決手段】エンジン1と排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集して酸化させるフィルタ22とを具備するエンジン装置100において、エンジン1に負荷をかける負荷投入装置3と、負荷投入装置3への動力を伝達又は遮断可能とする動力断接手段4と、フィルタ22における粒子状物質の堆積量及びエンジン1のエンジン出力を把握するとともにエンジン出力を制御可能とする電子制御コントローラ5を備え、電子制御コントローラ5は、エンジン1の運転状態が所定の低出力運転領域にあると判断し、且つ、フィルタ22における粒子状物質の堆積量が許容値を超えたと判断した場合に、負荷投入装置3への動力を伝達するように動力断接手段4に制御信号を送信するとともにエンジン1のエンジン出力を増大させる、とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するとともに酸化させるフィルタが公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。また、吸入空気量を調量する吸気絞りや一回又は複数回の燃料噴射を可能とするコモンレールシステム等を備え、これらを制御することで排気ガスの温度を上昇させてフィルタに堆積している粒子状物質を強制的に酸化させる再生制御技術も公知となっている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
しかし、吸気絞りやコモンレールシステム等の再生制御装置が備えられたエンジンにおいては、それぞれの再生制御装置の制御量と他の再生制御装置の制御量とが相互に影響を及ぼすために、エンジンの制御構成が複雑にならざるを得なかった。そこで、このような再生制御装置を用いることなく、フィルタに堆積している粒子状物質を強制的に酸化できる技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−208749号公報
【特許文献2】特開2008−180133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる問題を解決すべくなされたものであり、エンジンの制御構成を簡易なものとしながら排気ガスの温度を上昇させて、フィルタに堆積している粒子状物質を強制的に酸化できる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、エンジンと、
前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するとともに酸化させるフィルタと、を具備するエンジン装置において、
前記エンジンに負荷をかける負荷投入装置と、
前記負荷投入装置への動力を伝達又は遮断可能とする動力断接手段と、
前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量及び前記エンジンのエンジン出力を把握するとともに該エンジンのエンジン出力を制御可能とする電子制御コントローラと、を備え、
前記電子制御コントローラは、前記エンジンのエンジン出力から該エンジンの運転状態が所定の低出力運転領域にあると判断し、且つ、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量が所定の許容値を超えたと判断した場合に、前記負荷投入装置への動力を伝達するように前記動力断接手段に制御信号を送信するとともに前記エンジンのエンジン出力を増大させる、としたものである。
【0008】
請求項2においては、エンジンと、
前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するとともに酸化させるフィルタと、を具備するエンジン装置において、
前記エンジンに負荷をかける負荷投入装置と、
前記負荷投入装置への動力を伝達又は遮断可能とする動力断接手段と、
前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量及び前記エンジンのエンジン出力を把握するとともに該エンジンのエンジン出力を制御可能とする電子制御コントローラと、を備え、
前記電子制御コントローラは、前記エンジンのエンジン出力に基づいて算出された負荷率から該エンジンの運転状態が所定の低出力運転領域にあると判断し、且つ、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量が所定の許容値を超えたと判断した場合に、前記負荷投入装置への動力を伝達するように前記動力断接手段に制御信号を送信するとともに前記エンジンのエンジン出力を増大させる、としたものである。
【0009】
請求項3においては、エンジンと、
前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するとともに酸化させるフィルタと、を具備するエンジン装置において、
前記エンジンに負荷をかける負荷投入装置と、
前記負荷投入装置への動力を伝達又は遮断可能とする動力断接手段と、
前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量及び前記エンジンのエンジン出力を把握するとともに該エンジンのエンジン出力を制御可能とする電子制御コントローラと、を備え、
前記電子制御コントローラは、前記エンジンの負荷率毎に前記フィルタに導入される排気ガスの温度を定めた排気ガス温度マップを具備し、
前記エンジンのエンジン出力に基づいて算出された負荷率に対応する排気ガスの温度を前記排気ガス温度マップから呼び出して、
呼び出された排気ガスの温度が所定の閾値よりも低いと判断し、且つ、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量が所定の許容値を超えたと判断した場合に、前記負荷投入装置への動力を伝達するように前記動力断接手段に制御信号を送信するとともに前記エンジンのエンジン出力を増大させる、としたものである。
【0010】
請求項4においては、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエンジン装置において、前記エンジンの吸入空気の圧力を検出する吸気圧センサと、
前記エンジンの排気ガスの圧力を検出する排気圧センサと、を備え、
前記電子制御コントローラは、吸入空気の圧力ならびに排気ガスの圧力毎に前記エンジンのエンジン出力を定めたエンジン出力マップを具備し、
前記吸気圧センサによって検出された吸入空気の圧力ならびに前記排気圧センサによって検出された排気ガスの圧力に対応するエンジン出力を前記エンジン出力マップから呼び出す、としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンの運転状態が所定の低出力運転領域にあり、フィルタにおける粒子状物質の堆積量が所定の許容値を越えたときには、負荷投入装置が駆動してエンジンにかかる負荷を増加させるとともに、エンジンのエンジン出力が増大されることによって排気ガスの温度が上昇する。これにより、エンジンの制御構成を簡易なものとしながらフィルタに堆積している粒子状物質を強制的に酸化させることが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、エンジンの運転状態が所定の低出力運転領域にあり、フィルタにおける粒子状物質の堆積量が所定の許容値を越えたときには、負荷投入装置が駆動してエンジンにかかる負荷を増加させるとともに、エンジンのエンジン出力が増大されることによって排気ガスの温度が上昇する。これにより、エンジンの制御構成を簡易なものとしながらフィルタに堆積している粒子状物質を強制的に酸化させることが可能となる。また、負荷投入装置が駆動している際にもエンジンに必要とされるエンジン出力を正確に把握することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、エンジンの運転状態が所定の低出力運転領域にあり、フィルタにおける粒子状物質の堆積量が所定の許容値を越えたときには、負荷投入装置が駆動してエンジンにかかる負荷を増加させるとともに、エンジンのエンジン出力が増大されることによって排気ガスの温度が上昇する。これにより、エンジンの制御構成を簡易なものとしながらフィルタに堆積している粒子状物質を強制的に酸化させることが可能となる。また、排気ガス温度センサを用いなくともフィルタに導入される排気ガスの温度を精度良く把握することができてエンジン装置を簡素な構成とすることが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、吸入空気の圧力ならびに排気ガスの圧力によって変化するエンジンのエンジン出力を精度良く把握することができる。これにより、エンジン出力、エンジン出力から算出される負荷率及びエンジン出力に対応する排気ガスの温度からエンジンの運転状態が低出力運転領域又は高出力運転領域のいずれにあるかの判断を正確に行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係るエンジン装置の全体構成を示す図。
【図2】負荷投入装置ならびに動力断接手段の構成を示す図。
【図3】吸気圧ならびに排気圧毎にエンジン出力を定めたエンジン出力マップを示す図。
【図4】エンジン回転数とトルクとの関係を示す図。
【図5】エンジン出力と排気ガスの温度との関係を示す図。
【図6】本発明の第一実施形態に係るエンジン装置の再生制御のフローを示す図。
【図7】エンジン回転数と負荷率との関係を示す図。
【図8】本発明の第二実施形態に係るエンジン装置の再生制御のフローを示す図。
【図9】本発明の第二実施形態に係るエンジン装置によって発電装置を駆動させる状態を示す図。
【図10】負荷率毎に排気ガスの温度を定めた排気ガス温度マップを示す図。
【図11】本発明の第三実施形態に係るエンジン装置の再生制御のフローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係るエンジン装置100は、主にエンジン1と、排気浄化装置2と、負荷投入装置3と、動力断接手段4と、電子制御コントローラ5と、バッテリー6と、から構成される。
【0018】
まず、図1を用いてエンジン1の構成について詳細に説明する。なお、図中に示す白抜きの矢印は、エンジン1のエンジン主体部11に供給される吸入空気の流れを示し、図中に示す黒塗りの矢印は、エンジン主体部11から排出される排気ガスの流れを示している。
【0019】
エンジン1は、主にエンジン主体部11や燃料噴射ポンプ12、吸気通路13、排気通路14等から構成される。エンジン1は、圧縮された空気に燃料を供給することによって燃焼させて、この燃焼による膨張エネルギーから回転動力を得る。
【0020】
エンジン主体部11は、主にシリンダブロック111やシリンダヘッド112等の本体部と、ピストン113やクランク軸114等の運動部と、から構成される。エンジン主体部11には、燃焼室がシリンダブロック111に内設されたピストン113と、該ピストン113に対向するように配置されたシリンダヘッド112と、で構成されている。そして、ピストン113は、コネクティングロッドによってクランク軸114と連動連結されており、該ピストン113の摺動によってクランク軸114を回転駆動させる。なお、クランク軸114の回転は、シリンダブロック111に取り付けられたエンジン回転センサ115によって検出されて、その検出信号が電子制御コントローラ5へ送信される。
【0021】
燃料噴射ポンプ12は、回転駆動するクランク軸114によってギヤ等を介して駆動される。燃料噴射ポンプ12は、該燃料噴射ポンプ12に内設されたプランジャバレルと、このプランジャバレルに摺動可能に嵌挿されたプランジャと、によって燃料噴射ノズル15へ燃料を圧送する。
【0022】
なお、燃料噴射ノズル15は、噴射口が設けられた先端部が燃焼室の内部に突出するようにシリンダヘッド112に取り付けられて、燃料噴射ポンプ12からの燃料を燃焼室に適宜に供給可能としている。
【0023】
吸気通路13は、外部から吸入された空気をエンジン主体部11まで案内する通路である。吸気通路13には、その中途部にエアクリーナ131や吸気圧センサ132が設けられており、該吸気通路13の一端部と吸気マニホールド133とが接続されている。なお、吸気通路13には、吸入された空気量を計測するための吸気流量センサや空気の温度を計測するための吸気温度センサ等も設けられることとなるが、本図では簡単のために省略している。
【0024】
エアクリーナ131は、吸入された空気の濾過を行なうものである。エアクリーナ131は、濾紙又はスポンジ等を通過させることによって吸入空気の濾過を行ない、埃等の異物が燃焼室に混入することを防止している。
【0025】
吸気圧センサ132は、外部から吸入された空気の圧力、即ち、吸気圧を検出するものである。吸気圧センサ132は、ピエゾ抵抗効果を利用することによって吸気圧を検出し、その検出信号を電子制御コントローラ5へ送信する。
【0026】
吸気マニホールド133は、エアクリーナ131によって濾過された吸入空気を各燃焼室に分配するものである。なお、本実施形態に係るエンジン1は、直列に4つの燃焼室を備える直列4気筒ディーゼルエンジンであるために、吸気マニホールド133は4つの通路に分岐するように形成されて、シリンダヘッド112に固設されている。
【0027】
排気通路14は、エンジン主体部11から排出された排気ガスを排気浄化装置2まで案内する通路である。排気通路14の一端部は、排気マニホールド141と接続されており、その他端部は、排気浄化装置2と接続されている。なお、排気通路14の中途部には、排気圧センサ142が設けられている。
【0028】
排気マニホールド141は、エンジン主体部11の各燃焼室から排出された排気ガスを集合させるものである。排気マニホールド141は、4つの燃焼室から排出された排気ガスを一つの通路に合流させる形状となっている。
【0029】
排気圧センサ142は、エンジン主体部11から排出された排気ガスの圧力、即ち、排気圧を検出するものである。排気圧センサ142は、ピエゾ抵抗効果を利用することによって排気圧を検出し、その検出信号を電子制御コントローラ5へ送信する。
【0030】
次に、図1を用いて排気浄化装置2の構成について詳細に説明する。
【0031】
排気浄化装置2は、排気ガスに含まれる粒子状物質を除去するものであり、主に酸化触媒担体(Diesel Oxidation Catalyst:以降「DOC」という。)21やフィルタ(Diesel Particulate Filter:以降「DPF」という。)22、差圧センサ23、排気ガス温度センサ24等で構成される。DOC21及びDPF22は、排気通路14に連続するケースに内設されてDOC21がこのケースの上流側に、DPF22がその下流側に位置するように配置される。
【0032】
DOC21は、排気ガスに含まれるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)及び粒子状物質の一部を構成するSOF(有機可溶成分)を酸化して除去するものである。また、DOC21は、排気ガスに含まれるNO(一酸化窒素)を酸化することによってNO(二酸化窒素)に変化させることも可能としている。
【0033】
DPF22は、主に煤等からなる粒子状物質を捕集することで排気を濾過するとともに捕集した粒子状物質の酸化を行なうものである。本実施形態においてDPF22は、炭化ケイ素を基材としたウォールフロー型とされて、排気ガスに含まれる粒子状物質は、DPF22に形成された微細な穴を通過する際に捕集される。そして、このようにして捕集された粒子状物質は、排気ガスが酸化反応を進行させることができる温度であることを条件として、排気ガスに含まれる酸素ならびにDOC21で生成されたNOによって酸化される。
【0034】
差圧センサ23は、DOC21の上流側に配置される上流側センサ23aとDPF22の下流側に配置される下流側センサ23bを具備し、それぞれの測定値からDOC21よりも上流側とDPF22よりも下流側の圧力差を検出するものである。また、差圧センサ23は、電子制御コントローラ5に時々刻々と検出結果を送信する。これにより、電子制御コントローラ5は、前記圧力差の経時変化を把握できてDPF22における粒子状物質の堆積量を推定することを可能としている。
【0035】
排気ガス温度センサ24は、その検出部が前記ケースのDOC21とDPF22との間に位置するように配置されて、DPF22に導入される排気ガスの温度を検出するものである。また、排気ガス温度センサ24は、電子制御コントローラ5に時々刻々と検出結果を送信する。これにより、電子制御コントローラ5は、DPF22に堆積している粒子状物質の酸化速度を推定することを可能としている。
【0036】
次に、図1、図2を用いて負荷投入装置3の構成について詳細に説明する。
【0037】
負荷投入装置3は、主にステータ31、ロータ32、レクティファイアー33、レギュレータ34等から構成される。負荷投入装置3は、エンジン1の動力によって駆動されて発電を行なう誘導発電機である。
【0038】
ステータ31は、主に円環形状の電磁鋼板を重ね合わせることで円筒形状に形成されたステータコア311と、該ステータコア311の凹部に介装されたステータコイル312と、から構成される。詳細には、ステータコア311の内周面に形成された凹部にU相、V相、W相の3つの独立したステータコイル312が介装されており、ロータ32の回転に伴う磁束の変化によって該ステータコイル312に誘導起電力を発生させる。
【0039】
ロータ32は、主にステータ31の内部に回転自在に軸支された回転軸321と、該回転軸321の外周に外嵌された円筒形状のロータコイル322と、該ロータコイル322の外周を覆うようにして回転軸321に固設されたポールコア323と、から構成される。詳細には、回転軸321とポールコア323との間にロータコイル322が介装されており、バッテリー6からロータコイル322に電流を流すことによってポールコア323を励磁する。つまり、ロータコイル322とポールコア323は、電磁石を構成しているのである。
【0040】
レクティファイアー33は、ステータコイル312の誘導起電力によって得られた三相交流電力を直流化させる三相全波整流器である。レクティファイアー33には、半導体であるダイオード素子が内蔵されており、この半導体によって周期的に変化する三相交流電力が直流電力に変換される。
【0041】
レギュレータ34は、負荷投入装置3から出力される直流電力の電圧を所定の値に安定化させるものである。レギュレータ34は、レクティファイアー33によって直流化された電圧を常に検出し、この電圧に応じた電流をロータコイル322に流すことによってステータコイル312の誘導起電力を調整している。
【0042】
そして、負荷投入装置3から出力された直流電力はバッテリー6に充電されて、エンジン1の始動時にスタータモータ等を起動するために使用される。また、DPF22に堆積している粒子状物質を強制的に酸化させるために排気浄化装置2に電気ヒータを備える構造とし、該電気ヒータに電力を供給するとしても良い。
【0043】
次に、図1、図2を用いて動力断接手段4の構成について詳細に説明する。
【0044】
動力断接手段4は、主に入力プーリ41や電磁アクチュエータ42等から構成される。動力断接手段4は、エンジン1の動力を負荷投入装置3へ伝達又は遮断可能とする電磁クラッチである。
【0045】
入力プーリ41は、クランク軸114に設けられた出力プーリ116と、これに巻きかけられたベルト117と、によって回転される回転体である。詳細には、出力プーリ116は、その回転軸がクランク軸114の回転軸と同軸となるように配置され、入力プーリ41は、その回転軸が出力プーリ116の回転軸に平行となるように配置される。そして、ベルト117は、入力プーリ41と出力プーリ116に巻きかけられる。
【0046】
電磁アクチュエータ42は、入力プーリ41と一体となって回転するアーマチュア部421と、負荷投入装置3の回転軸321と一体となって回転するフィールド部422と、から構成される。詳細には、入力プーリ41にはアーマチュア部421が内設されて、該アーマチュア部421の凹部には回転軸321に固設されたフィールド部422が回転自在に嵌装されている。
【0047】
そして、フィールド部422は、該フィールド部422に内設されたコイルに電流が流されることによって励磁され、アーマチュア部421と掛合される。つまり、フィールド部422が励磁されることでアーマチュア部421と一体となって回転可能となり、エンジン1から負荷投入装置3への動力を伝達するのである。
【0048】
一方、フィールド部422に内設されたコイルの電流が停止されるとアーマチュア部421とフィールド部422の掛合が解除される。つまり、フィールド部422の励磁が停止されることでアーマチュア部421とフィールド部422は切り離されて、エンジン1から負荷投入装置3への動力を遮断するのである。
【0049】
また、動力断接手段4は、負荷投入装置3を介して電子制御コントローラ5と電気的に接続されており、該電子制御コントローラ5からの制御信号を受けて電磁アクチュエータ42を制御する。これにより、電子制御コントローラ5は、エンジン1の動力を負荷投入装置3へ伝達するか否かを制御することを可能としている。
【0050】
なお、本実施形態において動力断接手段4は、入力プーリ41と電磁アクチュエータ42を備えた電磁クラッチとしているが、ベルト117の張力を強めることによって動力を伝達し、ベルト117の張力を弱めることによって動力を遮断する、いわゆるテンションクラッチとしても良い。
【0051】
次に、電子制御コントローラ5について詳細に説明する。
【0052】
電子制御コントローラ5は、主に中央処理装置や記憶装置等から構成される。電子制御コントローラ5は、エンジン1に設けられたエンジン回転センサ115等や排気浄化装置2に設けられた差圧センサ23等と電気的に接続されて、これらからの電気信号に基づいて制御信号を作成するとともに動力断接手段4等に作成された制御信号を送信するものである。
【0053】
電子制御コントローラ5には、オペレータの要求に応じてエンジン1の運転状態を制御するとともにDPF22に堆積している粒子状物質を酸化させる再生制御を行なうべく、燃料噴射マップや各種の制御プログラムが記憶されている。更に、電子制御コントローラ5には、DPF22における粒子状物質の堆積量の許容値や吸気圧及び排気圧毎にエンジン出力を定めたエンジン出力マップ51Mが複数、記憶されている。
【0054】
エンジン出力マップ51Mは、図3に示すように、吸気圧ならびに排気圧毎にエンジン1のエンジン出力を定めた三次元マップである。つまり、エンジン出力マップ51Mは、吸気圧ならびに排気圧をパラメータとし、これらの影響を受けて変化するエンジン出力を予め試験によって見出したものである。
【0055】
ここで、電子制御コントローラ5がエンジン1のエンジン出力を把握するまでの一連のフローについて説明する。
【0056】
電子制御コントローラ5は、まず、エンジン主体部11の各燃焼室に供給された燃料噴射量とエンジン回転センサ115によって検出されたクランク軸114の回転数、即ち、エンジン回転数に基づいて基準エンジン出力を算出する。
【0057】
具体的には、電子制御コントローラ5は、前述した燃料噴射マップを参照することによって燃料噴射ノズル15から各燃焼室に供給された燃料噴射量を把握し、この燃料噴射量とエンジン回転数から基準エンジン出力を算出する。
【0058】
そして、算出された基準エンジン出力に対応するエンジン出力マップ51Mを参照し、該エンジン出力マップ51Mから吸気圧センサ132によって検出された吸気圧ならびに排気圧センサ142によって検出された排気圧に応じたエンジン出力を呼び出す。こうすることで、吸気圧ならびに排気圧によって変化するエンジン1のエンジン出力を精度良く把握することが可能となるのである。
【0059】
なお、本実施形態に係るエンジン1のエンジン出力マップ51Mは、吸気圧ならびに排気圧毎にエンジン出力を定めた三次元マップとしているが、吸気圧毎にエンジン出力を定めた二次元マップとしても良い。また、排気圧毎にエンジン出力を定めた二次元マップとしても良い。こうすることで、吸気圧センサ132又は排気圧センサ142のいずれかを備える必要がなくなり、エンジン装置100を簡素な構成とすることが可能となる。
【0060】
以上が本実施形態に係るエンジン装置100の全体構成であり、次に、DPF22に堆積している粒子状物質を強制的に酸化させる再生制御について説明する。図4は、エンジン1のエンジン回転数とトルクとの関係を示す図であり、図5は、エンジン1のエンジン出力とDPF22に導入される排気ガスの温度との関係を示す図である。また、図6は、本実施形態に係るエンジン装置100の再生制御のフローを示す図である。
【0061】
図4に示すように、エンジン1のエンジン回転数は、ローアイドル回転数Nminからハイアイドル回転数Nmaxまで任意に変更可能とされる。そして、エンジン1は、エンジン回転数毎に設定された最大トルクを結ぶトルクカーブTcurveに囲まれた範囲内で運転可能とされる。なお、エンジン1のエンジン出力は、図中に示したP点で最大となる。
【0062】
また、本実施形態に係るエンジン1においては、図中に示した再生限界出力Ptr以上のエンジン出力となる運転領域(図示右上方側)を高出力運転領域、再生限界出力Ptr未満のエンジン出力となる運転領域(図示左下方側)を低出力運転領域と定義している。なお、再生限界出力Ptrは、後述する再生限界温度Ttrを決定すべくエンジン1の運転状態をパラメータとして試験によって定められた値であり、具値的な数値について限定するものではない。
【0063】
本実施形態に係るエンジン1においては、エンジン出力が高出力運転領域にある場合、電子制御コントローラ5は、DPF22に堆積している粒子状物質を強制的に酸化させる再生制御を行なわないものとされる。これは、エンジン1のエンジン出力が高出力運転領域にある場合では、DPF22に導入される排気ガスの温度が高いために、所定の再生制御をなさずとも粒子状物質を連続して酸化することができるからである。
【0064】
一方、エンジン1のエンジン出力が低出力運転領域にあってDPF22における粒子状物質の堆積量が許容値を超えた場合では、電子制御コントローラ5は、DPF22に堆積している粒子状物質を強制的に酸化させる再生制御を行なうものとされる。これは、エンジン1のエンジン出力が低出力運転領域にある場合では、DPF22に導入される排気ガスの温度が低いために、再生制御を行なわなければ粒子状物質を酸化することができないからである。
【0065】
ここで、エンジン1のエンジン出力が高出力運転領域にあるA点から再生限界出力Ptr上にあるB点を通り、低出力運転領域にあるC点まで変化した場合を想定して本実施形態に係る制御態様を説明する。なお、図5中に示すA点、B点及びC点は、図4中のA点、B点及びC点にそれぞれ対応している。
【0066】
図5に示すように、エンジン1のエンジン出力とDPF22に導入される排気ガスの温度とは略比例する関係にあることがわかる。そして、図中に示す破線は、再生限界出力Ptrに対応する排気ガスの温度(以降「再生限界温度」という。)Ttrを示している。再生限界温度Ttrは、DPF22において粒子状物質の酸化反応が進行する限界温度を示したものであり、排気ガスの温度が再生限界温度Ttrより高いときには再生制御は不要とされ、排気ガスの温度が再生限界温度Ttrより低いときには再生制御が必要とされる。なお、再生限界出力Ptr及び再生限界温度Ttrは、電子制御コントローラ5に記憶されている。
【0067】
エンジン1の運転状態がA点にある場合では、高いエンジン出力を得るために各燃焼室に供給される燃料噴射量は比較的に多くなる。これにより、DPF22に導入される排気ガスの温度は高くなって再生限界温度Ttrを越える。従って、DPF22に堆積している粒子状物質は、再生制御をなさずとも連続して酸化されるのである。
【0068】
この状態からエンジン1の運転状態がB点に向かうと各燃焼室に供給される燃料噴射量は徐々に減量され、DPF22に導入される排気ガスの温度は低下していくこととなる。そして、エンジン装置100の運転状態がB点を通過してC点に向かうときには、DPF22に導入される排気ガスの温度は再生限界温度Ttrよりも低くなる。従って、DPF22に堆積している粒子状物質は、再生制御を行なわなければ連続して酸化されないのである。
【0069】
このため、電子制御コントローラ5は、エンジン1の運転状態がB点を通過してからDPF22における粒子状物質の堆積量が許容値を超えたと判断したときには、DPF22に堆積している粒子状物質を強制的に酸化させるために再生制御を行なうものとされる。
【0070】
以下に、本実施形態におけるエンジン装置100の再生制御のフローについて図6を用いて詳細に説明する。
【0071】
まず、ステップS101において、電子制御コントローラ5は、吸気圧センサ132からの検出信号によって吸気圧を把握し、同時に排気圧センサ142からの検出信号によって排気圧を把握する。
【0072】
ステップS102において、電子制御コントローラ5は、前述したように燃料噴射量とエンジン回転数に基づいて基準エンジン出力を算出し、この基準エンジン出力に対応するエンジン出力マップ51MからステップS101で把握した吸気圧ならびに排気圧に応じたエンジン出力を呼び出す。
【0073】
ステップS103において、電子制御コントローラ5は、ステップS102で呼び出したエンジン出力に基づいてエンジン1の運転状態が低出力運転領域又は高出力運転領域のいずれにあるかを判断する。
【0074】
具体的には、エンジン1のエンジン出力が再生限界出力Ptr未満であれば低出力運転領域にあると判断し、エンジン1のエンジン出力が再生限界出力Ptr以上であれば高出力運転領域にあると判断する。そして、電子制御コントローラ5は、エンジン1の運転状態が低出力運転領域にあると判断した場合はステップS104へ移行し、エンジン1の運転状態が高出力運転領域にあると判断した場合はステップS107へ移行する。
【0075】
ステップS104において、電子制御コントローラ5は、差圧センサ23からの検出信号によってDPF22における粒子状物質の堆積量を推定し、この推定された粒子状物質の堆積量が許容値を超えているか否かを判断する。そして、粒子状物質の堆積量が許容値を超えていると判断した場合はステップS105へ移行し、粒子状物質の堆積量が許容値を超えていないと判断した場合はステップS107へ移行する。
【0076】
ステップS105において、電子制御コントローラ5は、エンジン1から負荷投入装置3への動力を伝達するように動力断接手段4に対して制御信号を送信する。これにより、エンジン1にかかる負荷は、負荷投入装置3の発電抵抗によって増加することとなり、いわゆる電気回生制動が実現される。
【0077】
そして、ステップS106において、電子制御コントローラ5は、電気回生制動が実現されている際には各燃焼室に供給される燃料噴射量の増量を行ない、電気回生制動に応じたエンジン出力の増大を図る。こうすることで、DPF22に導入される排気ガスの温度を再生限界温度Ttrより高くすることが可能となる。また、電気回生制動と同時にこれと同等のエンジン出力の増大を行なうことによってエンジン回転数の変動を防ぐことが可能となるのである。
【0078】
なお、ステップS107へ移行した場合、電子制御コントローラ5は、エンジン1から負荷投入装置3への動力を遮断するように動力断接手段4に対して制御信号を送信する。
【0079】
このような再生制御を行なうことにより、エンジン1の運転状態が低出力運転領域にあってDPF22に堆積している粒子状物質が許容値を越えたときには、負荷投入装置3を駆動させるとともにエンジン出力を増大させることで排気ガスの温度を上昇させることが可能となる。これにより、DPF22に堆積している粒子状物質を強制的に酸化させることが可能となるのである。
【0080】
また、電子制御コントローラ5は、エンジン1のエンジン出力を各センサ132・142によって検出された吸気圧ならびに排気圧に基づいてエンジン出力マップ51Mから呼び出すため、エンジン出力を精度良く把握することができる。従って、このエンジン出力からエンジン1の運転状態が低出力運転領域又は高出力運転領域のいずれにあるかの判断を正確に行なうことが可能となる。
【0081】
次に、本発明の第二実施形態に係るエンジン装置200について説明する。図7は、エンジン1のエンジン回転数と負荷率との関係を示す図であり、図8は、本実施形態に係るエンジン装置200の再生制御のフローを示す図である。なお、第一実施形態の構成と同一のものについては同じ符号を付し、異なる部分を中心に説明する。また、負荷率は下記の算出式にて表される。
負荷率=(エンジン出力/最大エンジン出力)×100
【0082】
図7に示すように、本実施形態に係るエンジン1においては、図中に示した再生限界負荷率Rtr以上の負荷率となる運転領域(図示右上方側)を高出力運転領域、再生限界負荷率Rtr未満の負荷率となる運転領域(図示左下方側)を低出力運転領域と定義している。再生限界負荷率Rtrは、前述した再生限界温度Ttrを決定すべくエンジン1の運転状態をパラメータとして試験によって定められた値であり、具体的な数値について限定するものではない。また、再生限界負荷率Rtrは、電子制御コントローラ5に記憶されている。なお、エンジン1の負荷率は、図中に示したR点で最大となり、このときのエンジン1の負荷率は100パーセントを示すこととなる。
【0083】
電子制御コントローラ5は、エンジン1の負荷率が低出力運転領域にあってDPF22における粒子状物質の堆積量が許容値を超えたと判断したときには、DPF22に堆積している粒子状物質を強制的に酸化させるために再生制御を行なうものとされる。
【0084】
以下に、本実施形態におけるエンジン装置200の再生制御のフローについて図8を用いて詳細に説明する。
【0085】
まず、ステップS201において、電子制御コントローラ5は、吸気圧センサ132からの検出信号によって吸気圧を把握し、同時に排気圧センサ142からの検出信号によって排気圧を把握する。
【0086】
ステップS202において、電子制御コントローラ5は、前述したように燃料噴射量とエンジン回転数に基づいて基準エンジン出力を算出し、この基準エンジン出力に対応するエンジン出力マップ51MからステップS201で把握した吸気圧ならびに排気圧に応じたエンジン出力を呼び出す。
【0087】
ステップS203において、電子制御コントローラ5は、前記の算出式にステップS202で呼び出したエンジン出力を代入することによって負荷率を算出する。
【0088】
ステップS204において、電子制御コントローラ5は、ステップS203で算出した負荷率に基づいてエンジン1の運転状態が低出力運転領域又は高出力運転領域のいずれにあるかを判断する。
【0089】
具体的には、エンジン1のエンジン出力から算出された負荷率が再生限界負荷率Rtr未満であれば低出力運転領域にあると判断し、エンジン1のエンジン出力が再生限界負荷率Rtr以上であれば高出力運転領域にあると判断する。そして、電子制御コントローラ5は、エンジン1の運転状態が低出力運転領域にあると判断した場合はステップS205へ移行し、エンジン1の運転状態が低出力運転領域にない、即ち、高出力運転領域にあると判断した場合はステップS208へ移行する。
【0090】
ステップS205において、電子制御コントローラ5は、差圧センサ23からの検出信号によってDPF22における粒子状物質の堆積量を推定し、この推定された粒子状物質の堆積量が許容値を超えているか否かを判断する。そして、粒子状物質の堆積量が許容値を超えていると判断した場合はステップS206へ移行し、粒子状物質の堆積量が許容値を超えていないと判断した場合はステップS208へ移行する。
【0091】
ステップS206において、電子制御コントローラ5は、エンジン1から負荷投入装置3への動力を伝達するように動力断接手段4に対して制御信号を送信する。これにより、エンジン1にかかる負荷は、負荷投入装置3の発電抵抗によって増加することとなり、いわゆる電気回生制動が実現される。
【0092】
そして、ステップS207において、電子制御コントローラ5は、電気回生制動が実現されている際には各燃焼室に供給される燃料噴射量の増量を行ない、電気回生制動に応じたエンジン出力の増大を図る。こうすることで、DPF22に導入される排気ガスの温度を再生限界温度Ttrより高くすることが可能となる。また、電気回生制動と同時にこれと同等のエンジン出力の増大を行なうことによってエンジン回転数の変動を防ぐことが可能となるのである。
【0093】
なお、ステップS208へ移行した場合、電子制御コントローラ5は、エンジン1から負荷投入装置3への動力を遮断するように動力断接手段4に対して制御信号を送信する。
【0094】
このような再生制御を行なうことにより、エンジン1の運転状態が低出力運転領域にあってDPF22に堆積している粒子状物質が許容値を越えたときには、負荷投入装置3を駆動させるとともにエンジン出力を増大させることで排気ガスの温度を上昇させることが可能となる。これにより、DPF22に堆積している粒子状物質を強制的に酸化させることが可能となるのである。
【0095】
また、電子制御コントローラ5は、エンジン1のエンジン出力を各センサ132・142によって検出された吸気圧ならびに排気圧に基づいてエンジン出力マップ51Mから呼び出すため、エンジン出力から算出される負荷率を精度良く把握することができる。従って、この負荷率からエンジン1の運転状態が低出力運転領域又は高出力運転領域のいずれにあるかの判断を正確に行なうことが可能となる。
【0096】
更に、エンジン1のエンジン出力から負荷率を算出し、算出された負荷率を用いて再生制御を行なうか否かの判断をする本実施形態の制御構成においては、エンジン1の動力によって駆動される被駆動装置の必要としているエンジン出力を正確に把握することが可能となる。
【0097】
例えば、図9に示すように、発電量が規定発電量の百分率で表される発電装置250(被駆動装置)を本実施形態に係るエンジン装置200によって駆動する場合を想定すると、エンジン1は、発電装置250の発電量に応じてエンジン出力を調整する必要があるために、該エンジン出力を最大エンジン出力の百分率で表して制御を行なう、即ち、負荷率を用いて制御を行なう必要がある。
【0098】
そして、エンジン1から負荷投入装置3への動力を遮断している状態では、発電装置250を駆動するために必要とされる負荷率(以降「出力負荷率」という。)とエンジン1の負荷率は等しくなる。
【0099】
ところが、エンジン1から負荷投入装置3への動力を伝達している状態では、出力負荷率に加えて負荷投入装置3を駆動するために必要とされる負荷率(以降「再生負荷率」という。)がエンジン1にかかる。つまり、エンジン1の負荷率は、出力負荷率に再生負荷率を加えた値となる。
【0100】
しかし、エンジン1の負荷率を一定の割合で占めることとなる再生負荷率を予め試験等によって見出し、記憶しておくことによって出力負荷率を以下のように算出することが可能となるのである。
出力負荷率=エンジン1の負荷率−再生負荷率
【0101】
このように、エンジン1から負荷投入装置3への動力を伝達又は遮断するいずれの場合においても出力負荷率(本実施形態においては発電装置250を駆動するために必要とされる負荷率)を常に把握することができて、発電装置250(被駆動装置)が必要としているエンジン出力を正確に把握することが可能となるのである。
【0102】
次に、本発明の第三実施形態に係るエンジン装置300について説明する。図10は、エンジン1の負荷率毎にDPF22に導入される排気ガスの温度を定めた排気ガス温度マップ52Mを示す図であり、図11は、本実施形態に係るエンジン装置300の再生制御のフローを示す図である。但し、第一実施形態の構成と同一の構成については同じの符号を付し、異なる部分を中心に説明する。なお、本実施形態においては排気ガス温度センサ24を備えていない。また、負荷率は下記の算出式にて表される。
負荷率=(エンジン出力/最大エンジン出力)×100
【0103】
本実施形態において、電子制御コントローラ5には、DPF22における粒子状物質の堆積量の許容値や吸気圧ならびに排気圧毎にエンジン出力を定めたエンジン出力マップ51Mの他、エンジン1の負荷率毎にDPF22に導入される排気ガスの温度を定めた排気ガス温度マップ52Mが記憶されている。
【0104】
排気ガス温度マップ52Mは、図10に示すように、エンジン1の負荷率をパラメータとしてDPF22に導入される排気ガスの温度を予め試験によって見出したものである。
【0105】
以下に、本実施形態におけるエンジン装置300の再生制御のフローについて図11を用いて詳細に説明する。
【0106】
まず、ステップS301において、電子制御コントローラ5は、吸気圧センサ132からの検出信号によって吸気圧を把握し、同時に排気圧センサ142からの検出信号によって排気圧を把握する。
【0107】
ステップS302において、電子制御コントローラ5は、前述したように燃料噴射量とエンジン回転数に基づいて基準エンジン出力を算出し、この基準エンジン出力に対応するエンジン出力マップ51MからステップS301で把握した吸気圧ならびに排気圧に応じたエンジン出力を呼び出す。
【0108】
ステップS303において、電子制御コントローラ5は、前記の算出式にステップS302で呼び出したエンジン出力を代入することによって負荷率を算出する。
【0109】
ステップS304において、電子制御コントローラ5は、排気ガス温度マップ52MからステップS303で算出した負荷率に対応する排気ガスの温度を呼び出す。
【0110】
ステップS305において、電子制御コントローラ5は、ステップS304で呼び出した排気ガスの温度が再生限界温度Ttrより低いか否かを判断する。そして、電子制御コントローラ5は、ステップS304で呼び出した排気ガスの温度が再生限界温度Ttrよりも低いと判断した場合はステップS306へ移行し、ステップS303で呼び出した排気ガスの温度が再生限界温度Ttrより低くない、即ち、再生限界温度Ttr以上であると判断した場合はステップS309へ移行する。
【0111】
ステップS306において、電子制御コントローラ5は、差圧センサ23からの検出信号によってDPF22における粒子状物質の堆積量を推定し、この推定された粒子状物質の堆積量が許容値を超えているか否かを判断する。そして、粒子状物質の堆積量が許容値を超えていると判断した場合はステップS307へ移行し、粒子状物質の堆積量が許容値を超えていないと判断した場合はステップS309へ移行する。
【0112】
ステップS307において、電子制御コントローラ5は、エンジン1から負荷投入装置3への動力を伝達するように動力断接手段4に対して制御信号を送信する。これにより、エンジン1にかかる負荷は、負荷投入装置3の発電抵抗によって増加することとなり、いわゆる電気回生制動が実現される。
【0113】
そして、ステップS308において、電子制御コントローラ5は、電気回生制動が実現されている際には各燃焼室に供給される燃料噴射量の増量を行ない、電気回生制動に応じたエンジン出力の増大を図る。こうすることで、DPF22に導入される排気ガスの温度を再生限界温度Ttrより高くすることが可能となる。また、電気回生制動と同時にこれと同等のエンジン出力の増大を行なうことによってエンジン回転数の変動を防ぐことが可能となるのである。
【0114】
なお、ステップS309へ移行した場合、電子制御コントローラ5は、エンジン1から負荷投入装置3への動力を遮断するように動力断接手段4に対して制御信号を送信するとされる。
【0115】
このような再生制御を行なうことにより、排気ガスの温度が再生限界温度Ttrより低い場合であってDPF22に堆積している粒子状物質が許容値を越えたときには、負荷投入装置3を駆動させるとともにエンジン出力を増大させることで排気ガスの温度を上昇させることが可能となる。これにより、DPF22に堆積している粒子状物質を強制的に酸化させることが可能となるのである。
【0116】
また、電子制御コントローラ5は、DPF22に導入される排気ガスの温度をエンジン1の負荷率に基づいて排気ガス温度マップ52Mから呼び出すため、排気ガス温度センサ24を不要としつつ、排気ガスの温度を正確に把握することができる。これにより、エンジン装置300を簡素な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0117】
1 エンジン
2 排気浄化装置
3 負荷投入装置
4 動力断接手段
5 電子制御コントローラ
6 バッテリー
11 エンジン主体部
12 燃料噴射ポンプ
13 吸気通路
14 排気通路
15 燃料噴射ノズル
21 酸化触媒担体(DOC)
22 フィルタ(DPF)
23 差圧センサ
24 排気ガス温度センサ
31 ステータ
32 ロータ
33 レクティファイアー
34 レギュレータ
41 プーリ
42 電磁アクチュエータ
51M エンジン出力マップ
52M 排気ガス温度マップ
100 エンジン装置
200 エンジン装置
300 エンジン装置
Ptr 再生限界出力
Rtr 再生限界負荷率
Ttr 再生限界温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するとともに酸化させるフィルタと、を具備するエンジン装置において、
前記エンジンに負荷をかける負荷投入装置と、
前記負荷投入装置への動力を伝達又は遮断可能とする動力断接手段と、
前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量及び前記エンジンのエンジン出力を把握するとともに該エンジンのエンジン出力を制御可能とする電子制御コントローラと、を備え、
前記電子制御コントローラは、前記エンジンのエンジン出力から該エンジンの運転状態が所定の低出力運転領域にあると判断し、且つ、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量が所定の許容値を超えたと判断した場合に、前記負荷投入装置への動力を伝達するように前記動力断接手段に制御信号を送信するとともに前記エンジンのエンジン出力を増大させる、ことを特徴とするエンジン装置。
【請求項2】
エンジンと、
前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するとともに酸化させるフィルタと、を具備するエンジン装置において、
前記エンジンに負荷をかける負荷投入装置と、
前記負荷投入装置への動力を伝達又は遮断可能とする動力断接手段と、
前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量及び前記エンジンのエンジン出力を把握するとともに該エンジンのエンジン出力を制御可能とする電子制御コントローラと、を備え、
前記電子制御コントローラは、前記エンジンのエンジン出力に基づいて算出された負荷率から該エンジンの運転状態が所定の低出力運転領域にあると判断し、且つ、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量が所定の許容値を超えたと判断した場合に、前記負荷投入装置への動力を伝達するように前記動力断接手段に制御信号を送信するとともに前記エンジンのエンジン出力を増大させる、ことを特徴とするエンジン装置。
【請求項3】
エンジンと、
前記エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するとともに酸化させるフィルタと、を具備するエンジン装置において、
前記エンジンに負荷をかける負荷投入装置と、
前記負荷投入装置への動力を伝達又は遮断可能とする動力断接手段と、
前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量及び前記エンジンのエンジン出力を把握するとともに該エンジンのエンジン出力を制御可能とする電子制御コントローラと、を備え、
前記電子制御コントローラは、前記エンジンの負荷率毎に前記フィルタに導入される排気ガスの温度を定めた排気ガス温度マップを具備し、
前記エンジンのエンジン出力に基づいて算出された負荷率に対応する排気ガスの温度を前記排気ガス温度マップから呼び出して、
呼び出された排気ガスの温度が所定の閾値よりも低いと判断し、且つ、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量が所定の許容値を超えたと判断した場合に、前記負荷投入装置への動力を伝達するように前記動力断接手段に制御信号を送信するとともに前記エンジンのエンジン出力を増大させる、ことを特徴とするエンジン装置。
【請求項4】
前記エンジンの吸入空気の圧力を検出する吸気圧センサと、
前記エンジンの排気ガスの圧力を検出する排気圧センサと、を備え、
前記電子制御コントローラは、吸入空気の圧力ならびに排気ガスの圧力毎に前記エンジンのエンジン出力を定めたエンジン出力マップを具備し、
前記吸気圧センサによって検出された吸入空気の圧力ならびに前記排気圧センサによって検出された排気ガスの圧力に対応するエンジン出力を前記エンジン出力マップから呼び出す、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエンジン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−127574(P2011−127574A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289324(P2009−289324)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】