エンジン
【課題】吸排気バルブを有したエンジンにおいて、これら吸排気バルブのバルブ休止機構におけるリターンスプリングとこのスプリングと接触する壁面との擦れによる摩耗を防止する。
【解決手段】クランクシャフト駆動に対応して回転されるバルブ駆動カム59,61に連動してバルブ43、44の移動方向に沿って駆動され、且つ油圧供給機構による油圧と該油圧に抗する方向のリターンスプリング68による付勢力によりスライド移動するスライドピン67をスライド可能に保持するスライドピンホルダ65を有し、スライドピン67がバルブ移動方向とは直行方向にスライド移動することにより、バルブ43、44の休止選択をするバルブ休止機構63を備える。そして、スライドピンホルダ65の内壁面55fには、リターンスプリング68の先端部68aに対向する位置に先端部68aの少なくともバルブ43、44の移動方向Bの動きを規制する位置規制手段65fが設けられている。
【解決手段】クランクシャフト駆動に対応して回転されるバルブ駆動カム59,61に連動してバルブ43、44の移動方向に沿って駆動され、且つ油圧供給機構による油圧と該油圧に抗する方向のリターンスプリング68による付勢力によりスライド移動するスライドピン67をスライド可能に保持するスライドピンホルダ65を有し、スライドピン67がバルブ移動方向とは直行方向にスライド移動することにより、バルブ43、44の休止選択をするバルブ休止機構63を備える。そして、スライドピンホルダ65の内壁面55fには、リターンスプリング68の先端部68aに対向する位置に先端部68aの少なくともバルブ43、44の移動方向Bの動きを規制する位置規制手段65fが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシリンダ室と吸気もしくは排気通路との連通部を開閉する吸排気バルブを開閉作動させるバルブ作動機構を備えたエンジンに関し、さらに詳しくは、これら吸排気バルブの作動を休止させることが可能なバルブ休止機構を備えたエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの吸排気用のバルブ作動機構としては、これまで種々のものが知られており、例えば、バルブ駆動カムや該バルブ駆動カムにより揺動されるロッカーアームにより開閉作動させる構成のものが良く知られている。さらに、バルブ駆動カムの回転状態において一部もしくは全部の吸排気バルブの作動を休止させるバルブ休止機構を設けることも知られている。また、近年においては、特許文献1に開示されているようなバルブ休止機構が、バルブ駆動カムとバルブとの間に設けられたものが知られている。
【0003】
ここで、特許文献1に開示されたバルブ休止機構について説明する。
図12に示すバルブ休止機構150は、エンジンにおいて、吸気もしくは排気通路が形成されるエンジンシリンダヘッド110にバルブ(図12ではバルブステム部132を備える排気バルブ130)の開閉方向(矢印B方向)に延びてガイド孔114の中に保持部材151が摺動自在に設けられている。図12に示す構造においては、例えば、ロッカーアーム172に螺合された押圧部材174と排気バルブ130との間に設けられている。
【0004】
バルブ休止機構150は、その保持部材151が、付勢部材134bによりロッカーアーム172の押圧部材174に当接するように付勢されている。そして、保持部材151内にその摺動方向(矢印B方向)と直角な方向に移動自在に設けられてバルブ休止選択の主要部品として機能するスライドピン155を有する。このスライドピン155を直角な方向の一方側(図12においては右側)に付勢するリターンスプリング157を備えている。一方、このバルブ休止機構150においては、エンジンシリンダヘッド110内の油圧供給路116から休止作動油圧が供給される作動油室155cが保持部材151内に設けられている。
【0005】
そして、作動油室155cに供給された休止作動油圧を受けてスライドピン155がリターンスプリング157に抗して図12において左側に押圧され適宜移動することでバルブ130の休止位置にでき、一方、作動油室155cに作用する休止作動油圧が低下したときにリターンスプリング157による付勢力によってスライドピン155が図12において右側に適宜移動することで、バルブ130の作動位置にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−208795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されたバルブ休止機構150において、スライドピン155を付勢するリターンスプリング157は、その機能上からその多くの部分がスライドピン155のポケット155dから露出した状態で、かつ先端部157aがスライドピンホルダの内壁面151cに当接して収納される。
リターンスプリング157が上述のように収納されているので、エンジン回転が速くなりバルブ130が高速で上下動すると、この上下動に連れてバルブ休止機構150は上下動し、これに伴ってリターンスプリング157も上下に振動する。特に、エンジンの高速回転域では、上述のリターンスプリング157は、伸びた状態であるためにポケット155dに入ってない部分が多くなり振動し易い状態となる。
このリターンスプリング157の上下振動によって、該リターンスプリング157とこれを保持する周辺の壁面とが擦れ合ってリターンスプリング並びにその周囲の内壁面が摩耗する。特に、ポケット155dに入ってない部分が大きく揺さぶられてリターンスプリングのポケット入口と接触する部分の摩耗が進んでしまうという課題がある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、吸排気バルブを有したエンジンにおいて、これら吸排気のバルブ休止機構におけるリターンスプリングと該スプリングと接触する壁面との擦れによる摩耗を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、クランクシャフト駆動に対応して回転されるバルブ駆動カムに連動してバルブの移動方向に沿って駆動され、且つ油圧供給機構による油圧と該油圧に抗する方向のリターンスプリングによる付勢力によりスライド移動するスライドピンをスライド可能に保持するスライドピンホルダを有し、前記スライドピンがバルブ移動方向とは直行方向にスライド移動することにより、前記バルブの休止選択をするバルブ休止機構を備えるエンジンにおいて、前記スライドピンホルダの内壁面には、前記リターンスプリングの先端部に対向する位置に該先端部の少なくとも前記バルブの移動方向Bの動きを規制する位置規制手段が設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記位置規制手段は、前記リターンスプリングの先端部を受容する凹み部にて構成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記位置規制手段は、前記リターンスプリングの先端部が嵌り込む凸部にて構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加えて、前記位置規制手段は、複数の前記凸部が間隔を置いて環状に並んで構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加えて、前記位置規制手段は、前記リターンスプリングの先端部の内周に嵌り込む凸部にて構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明にかかるエンジンによれば、リターンスプリングの先端部に対向する位置に、前記先端部の少なくとも前記バルブの移動方向の動きを規制する位置規制手段が設けられたことにより、先端部の揺れを防ぐことができ、リターンスプリングの振動が抑制されて、該リターンスプリングが接触している壁面との擦れが回避できて摩耗が抑制される。
【0015】
請求項2に記載の発明にかかるエンジンによれば、前記位置規制手段が、前記リターンスプリングの先端部を受容する凹み部として構成されるので、該先端部がその外側全域にて全方位に効果的に保持される。スライドピンホルダの一部分が薄肉化し軽量化に寄与できる。
【0016】
請求項3に記載の発明にかかるエンジンによれば、位置規制手段は、リターンスプリングの先端部が嵌り込む凸部にて構成されているので、突出高さを大きくするなどその形成自由度が増し、リターンスプリングの先端部の保持を確実にすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明にかかるエンジンによれば、請求項3に記載の構成に加えて、位置規制手段は、複数の前記凸部が間隔を置いて環状に並んだで構成されるので、スライドピンホルダの必要以上の厚肉化を回避することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明にかかるエンジンは、請求項3に記載の構成に加えて、位置規制手段は、リターンスプリングの先端部の内周に嵌り込む凸部にて構成されるので、その径は小さく且つ突出高さを大きくし易くなり、リターンスプリングの保持機能が高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態における自動二輪車の左側面図である。
【図2】図1に示す自動二輪車のパワーユニットの左側面図である。
【図3】図2に示すパワーユニットにおけるBFの要部断面図である。
【図4】図2に示すパワーユニットにおけるBRの要部断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態における要部拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるバルブ休止機構の分解斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態における位置規制手段の斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態における位置規制手段の斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態における位置規制手段の斜視図である。
【図10】本発明の第4実施形態における位置規制手段の斜視図である。
【図11】本発明の第5実施形態における位置規制手段の斜視図である。
【図12】従来のバルブ休止機構を示すためのエンジンの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明にかかる第1実施形態について、図1〜図7を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、鞍乗り型車両である自動二輪車に適応したものについて以下説明する。
先ず、本実施形態を適用した自動二輪車の全体構成について簡単に説明する。自動二輪車1は、図1に示すように、その車体フレームFが、前輪WFを軸支するフロントフォーク25を操向可能に支承するヘッドパイプ26と、このヘッドパイプ26から後下がりに延びる左右一対のメインフレーム27と、両メインフレーム27の後部に連設されて下方に延びる左右一対のピボットプレート28とを有しており、ピボットプレート28に前端が揺動可能に支承されるスイングアーム29の後部に後輪WRが軸支される。しかもピボットプレート28の下部およびスイングアーム29の前部間にはリンク30が設けられ、ピボットプレート28の上部およびリンク30間にはクッションユニット31が設けられる。
【0021】
メインフレーム27およびピボットプレート28にはパワーユニットPが懸架されており、このパワーユニットPから出力される回転動力は前後に延びるドライブシャフト32を介して後輪WRに伝達される。
パワーユニットPが備えるエンジンE(図2参照)におけるエンジン本体33もしくは車体フレームFには、サイドスタンド34が取付けられており、本実施形態では、車体フレームFにおける左側のピボットプレート28の下部にサイドスタンド34が取付けられる。したがって、サイドスタンド34を立てて駐車したときに自動二輪車は左側に傾斜した状態となる。なお、図1においては、車両の前方,後方,上方,下方をそれぞれFr,Rr,U,Dにて示す。
【0022】
図2において、エンジンEのエンジン本体33は、自動二輪車1への搭載状態で前方(Fr)に位置する前部バンクBFと、該前部バンクBFよりも後方に位置する後部バンクBRとを有してV型の水冷式に構成されるものである。そして、この両バンクBF,BRに共通なクランクケース35に、自動二輪車の左右方向に沿うクランクシャフト36が回転自在に支承される。
【0023】
クランクケース35は、上部ケース半体35aおよび下部ケース半体35bが結合されて成るものであり、V字形をなすようにして前部および後部シリンダブロックBF,BRが上部ケース半体35aに一体に形成され、クランクシャフト36の軸線は上部ケース半体35aおよび下部ケース半体35bの結合面37上に配置される。
【0024】
前部バンクBFは、その構成を大別すると、前部シリンダブロック38Fと、該前部シリンダブロック38Fに結合される前部シリンダヘッド39Fと、前部シリンダヘッド39Fに結合される前部ヘッドカバー40Fとで構成される。後部バンクBRについても、その構成を大別すると、後部シリンダブロック38Rと、該後部シリンダブロック38Rに結合される後部シリンダヘッド39Rと、後部シリンダヘッド39Rに結合される後部ヘッドカバー40Rとで構成される。そして、クランクケース35の下部にはオイルパン41が結合される構成となっている。
【0025】
前部シリンダブロック38Fには、クランクシャフト36の軸線方向に並ぶ2つのシリンダボア42(図3参照)が形成されており、前部シリンダブロック38Fは、エンジン本体33の車体フレームFへの懸架状態でシリンダボア42の軸線を前上がりに傾斜させるようにしてクランクケース35に結合される。また後部シリンダブロック39Rには、クランクシャフト36の軸線方向に並ぶ2つのシリンダボア42(図4参照)が形成されており、後部シリンダブロック39Rは、エンジン本体33の車体フレームFへの懸架状態で、各シリンダボア42の軸線を後上がりに傾斜させるようにしてクランクケース35に結合される。而して前部バンクBFの両シリンダボア42にそれぞれ摺動可能に嵌合されるピストン42aと、後部バンクBRの両シリンダボア42にそれぞれ摺動可能に嵌合されるピストン42aとが、クランクシャフト36に共通に連接される。
【0026】
図3において、前部シリンダヘッド39Fには、各シリンダボア42毎に一対ずつの吸気弁43(図3において紙面垂直方向に並んで配置されている)が一対ずつの弁ばね46で閉弁方向に付勢されて開閉作動可能に配設されるとともに、一対ずつの排気弁44(図3において紙面垂直方向に並んで配置されている)が弁ばね47で閉弁方向に付勢されて開閉作動可能に配設されている。これらの吸気弁43および排気弁44は、前部バンク側動弁装置48Fによって開閉駆動される。
【0027】
前部バンク側動弁装置48Fは、クランクシャフト36と平行な軸線を有して前部シリンダヘッド39Fに回転自在に支承されるとともに吸気弁43の上方に配置されるカムシャフト49と、このカムシャフト49に設けられた複数(本実施形態では4つ)の吸気側カム50および吸気弁43間に介装されて前部シリンダヘッド39Fに摺動可能に嵌合される吸気側バルブリフタ51と、前記カムシャフト49に設けられた複数(本実施形態では4つ)の排気側カム52に転がり接触するローラ53を一端に有するとともに他端には各排気弁44のステム45aの上端に当接するタペットねじ54が進退位置を調節可能として螺合されるロッカアーム55とを備え、ロッカアーム55は、カムシャフト49と平行な軸線を有して前部シリンダヘッド39Fに固定配置されるロッカシャフト56で揺動可能に支承される。
【0028】
図4において、後部シリンダヘッド39Rには、各シリンダボア42毎に一対ずつの吸気弁43および一対ずつの排気弁44(図4において紙面垂直方向に複数並んで配置されている)が弁ばね280,281で閉弁方向に付勢されて開閉作動可能に配設されている。そして、これらの吸気弁43および排気弁44は、後部バンク側動弁装置48Rによって開閉駆動される。
【0029】
後部バンク側動弁装置48Rは、クランクシャフト36と平行な軸線を有して後部シリンダヘッド39Rに回転自在に支承されるとともに吸気弁43の上方に配置される吸気側カムシャフト57と、クランクシャフト36と平行な軸線を有して後部シリンダヘッド39Rに回転自在に支承されるとともに排気弁44の上方に配置される排気側カムシャフト58と、吸気側カムシャフト57に設けられる複数(本実施形態では4つ)の吸気側カム59および吸気弁43間に介装されて後部シリンダヘッド39Rに摺動可能に嵌合される吸気側バルブリフタ60と、排気側カムシャフト58に設けられる複数(本実施形態では4つ)の排気側カム61および排気弁44間に介設されて後部シリンダヘッド39Rに摺動可能に嵌合される排気側バルブリフタ62と、を備える。
【0030】
この後部バンク側動弁装置48Rには、後部バンクBRの2気筒の吸気弁43の作動態様を開閉作動状態および閉弁休止状態に切換可能とした吸気側のバルブ休止機構63と、2気筒の排気弁44の作動態様を開閉作動状態および閉弁休止状態に切換可能とした排気側のバルブ休止機構64とが付設される。
【0031】
以下、両バルブ休止機構63、64について詳細に説明する。
図5に示すように、吸気側のバルブ休止機構63は、吸気側バルブリフタ60の内側に設けられている。そして、図6の斜視図にも示すように、バルブ休止機構63の構成は、吸気側バルブリフタ60に摺動可能に嵌合されるスライドピンホルダ65と、吸気側バルブリフタ60の内面との間に油圧室66を形成してスライドピンホルダ65に摺動可能に嵌合されるスライドピン67と、油圧室66の容積を縮少する方向にスライドピン67を付勢するばね力を発揮してスライドピン67およびスライドピンホルダ65間に設けられるリターンスプリング68と、スライドピン67の軸線まわりの回転を阻止してスライドピンホルダ65およびスライドピン67間にピン孔63cを挿通して設けられるストッパピン69と、を備える。
【0032】
スライドピンホルダ65は、その外周には環状溝71が設けられている。さらに、該スライドピンホルダ65は、吸気側バルブリフタ60の軸線と直交する軸線を孔72が設けられている。また、スライドピンホルダ65には、弁ばね280で閉弁方向に付勢された吸気弁43におけるステム43aの先端部を挿通せしめる挿通孔73と、該挿通孔73との間に摺動孔72を挟む延長孔74とが、吸気弁43におけるステム43aの先端部を収容可能として同軸に設けられている。また、吸気側バルブリフタ60の閉塞端側で延長孔74の端部を塞ぐ円盤状のシム75がスライドピンホルダ65に嵌合され、このシム75に当接する突部76が吸気側バルブリフタ60の閉塞端内面中央部に一体に設けられる。
なお、油圧室66には図示しない油圧供給装置からの油圧が油圧経路116を介して適宜付与されるように構成されている。
【0033】
また、スライドピン67の軸方向中間部には、スライドピンホルダ65の挿通孔73および延長孔74に同軸に連なり得る収容孔78が設けられている。この収容孔78が、挿通孔73および延長孔74と協働してステム43aの先端部を収容可能とする。また、収容孔78の挿通孔73側の端部は、挿通孔73に対向してスライドピン67の下部外側面に形成される平坦な当接面79に開口される。而して当接面79はスライドピン67の軸線方向に沿って比較的長く形成されるものであり、収容孔78は、当接面79の油圧室66側寄りの部分に開口されている。
【0034】
前掲したように、スライドピンホルダ65の摺動孔72にはスライドピン67が摺動自在に嵌合されているが、このスライドピン67を付勢するリターンスプリング68は、該スライドピン67の他端(ポケット状に凹んでいる部分)と摺動孔72の閉塞端である内壁面65aとの間に形成されるばね室77の中に収納されている。
【0035】
ここで、スライドピンホルダ65の内壁面65aには、図7に拡大して示すように、リターンスプリング68の先端部68aが内側に入り込むような大きさに形成された凹み部65fが設けられている。そして、この凹み部65fは、リターンスプリング68の先端部68aの動きを規制する位置規制手段として機能している。すなわち、凹み部65fは、円形の底部65gとその底部65gから垂直に立ち上った内周面65hを有する構成であり、底部65gがリターンスプリング68の押圧を受止め、内周面65hがリターンスプリング68の先端部68aの外周を囲むように位置するので、先端部68aは、へこみ部65f内に、上下のみならずスプリング径方向の360度あらゆる方向においてしっかりと保持される。
【0036】
バルブ休止機構63の周辺構造についてさらに説明すると、図5に示すように、後部シリンダヘッド39Rには吸気側バルブリフタ60を摺動自在に支承すべく該吸気側バルブリフタ60を嵌合せしめる支持孔80が設けられており、この支持孔80の内面には、吸気側バルブリフタ60の支持孔80内での摺動にかかわらずスライドピンホルダ65の環状溝71に連通する環状凹部81が吸気側バルブリフタ60を囲繞するようにして設けられている。また、吸気側バルブリフタ60および後部シリンダヘッド39R間には、吸気側バルブリフタ60を吸気側カム59に当接させる方向に付勢するばね82が設けられている。
【0037】
以下、吸気側のバルブ休止機構63の動作について説明する。
このように構成されたバルブ休止機構63においては、スライドピン67は、油圧経路116を介して供給された油圧室66の油圧により該スライドピン67の一端側(図5において右側)に作用する油圧力と、リターンスプリング68によりスライドピン67の他端側(図5において左側)に作用するばね力とが均衡するようにしてスライドピン軸方向に摺動する。そして、油圧室66の油圧が低圧であるときには、収容孔78を挿通孔73および延長孔74の軸線からずらせてステム43aの先端を当接面79に当接させるように図5の右側に移動し、油圧室66の油圧が高圧になった作動状態では、挿通孔73に挿通されているステム43aの先端部を収容孔78および延長孔74に収容せしめるように図5の左側に移動する。
【0038】
而してスライドピン67がその収容孔78を挿通孔73および延長孔74に同軸に連ならせる位置に移動したときには、吸気側カム59から作用する押圧力によって吸気側バルブリフタ60が摺動するのに応じてスライドピンホルダ65およびスライドピン67も吸気側バルブリフタ60とともに吸気弁43側に移動する。しかし、このときステム43aの先端部が収容孔78および延長孔74に収容されるだけで吸気側バルブリフタ60およびスライドピンホルダ65から吸気弁43に開弁方向の押圧力が作用することはなく、吸気弁43は休止したままとなる。
また、スライドピン67がその当接面79にステム43aの先端部を当接させる位置に移動したときには、吸気側カム59から作用する押圧力によって吸気側バルブリフタ60が摺動するのに応じたスライドピンホルダ65およびスライドピン67の吸気弁43側への移動に伴い吸気弁43に開弁方向の押圧力が作用する。このように、吸気側カム59の回転ならびにスライドピン67の動作によって吸気弁43が開閉作動する。
【0039】
一方、排気側のバルブ休止機構64は、吸気側のバルブ休止機構63と同様に構成されて、図4に示すように、排気側バルブリフタ62に関連して設けられるものである。したがって、高圧の油圧が作用したときに排気バルブ44を閉弁休止させる状態と、作用する油圧が低下したときに排気バルブ44を開閉作動せしめる状態と、を切換可能に構成されている。
すなわち、後部バンク側動弁装置48Rは、吸気側のバルブ休止機構63および排気側のバルブ休止機構64の作動制御によって、後部バンクBRにおける2つの気筒の吸気バルブ43および排気バルブ44を開閉作動せしめる状態と、後部バンクBRにおける2つの気筒の吸気バルブ43および排気バルブ44を閉弁休止して気筒休止とする状態とを切換えることが可能である。
【0040】
上記したように、本実施形態のバルブ休止機構63(64)においては、スライドピンホルダ65内に収容されたリターンスプリング68は、その先端部68aが位置規制手段である凹み部65fによってしっかりと保持されているので、バルブ休止機構63(64)が高速で上下動(バルブ43(44)の移動方向Bの上下動)しても、それ自体の振動は抑制され、特に先端部68aの振れは回避される。したがって、リターンスプリング68が振れないように保持されることで、リターンスプリング68は該スプリングが接触している壁面との擦れが回避されて摩耗が防止される。
また、本実施形態におけるスライドピンホルダ65は、前述の凹み部65fの分だけ軽量化される。
【0041】
本発明にかかる第2実施形態〜第5実施形態について、図8〜図11を参照して説明する。
なお、以下に示す各実施形態においては、図8〜図11に示すリターンスプリングの位置規制手段の構造のみが前記第1実施形態と相違する構成であるので、第1実施形態と同じ構成要素については図示を省略するとともに同符号を付して説明を省略する。
【0042】
(第2実施形態)
本発明にかかる第2実施形態を図8に示す。図8は、リターンスプリング68を保持する位置規制手段の拡大斜視図を示している。
図8に示すように、スライドピンホルダ65の内壁面65aには環状凹み部85が設けられている。この環状凹み部85は、リターンスプリング68の先端部68aを、その内側と外側の両方から位置規制するように構成されている。すなわち、環状凹み部85は、底部85gと端部68aの内側に位置する内側内周面85kと外側に位置する外側内周面85hとを有する構成となっており、先端部68aが両内周面85h,85kによって内側及び外側から保持される。
本実施形態における環状凹み部85は、底部85gがリターンスプリング68の押圧を受止め、両内周面85h,85kがリターンスプリング68の先端部68aをその内外周の両方側から位置規制できるので、リターンスプリング68の先端部68aはスプリング径方向の360度全方向においてしっかりと保持される。
したがって、本第2実施形態においても、リターンスプリング68の先端部68aが環状凹み部85によってしっかりと保持され振動が抑制されるので、リターンスプリング68は該スプリングが接触している壁面との擦れが回避されて摩耗が防止される。また、本実施形態においてもスライドピンホルダ65は、前述の環状凹み部85の分だけ軽量化が図れる。
【0043】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図9に示す。図9は、リターンスプリング68を保持する位置規制手段の拡大斜視図を示している。
図9に示すように、スライドピンホルダ65の内壁面65aには、リターンスプリング68の先端部68aが、その内側に嵌り込むような大きさの凸部である環状凸部95が設けられている。この環状凸部95は、その内壁面95hがリターンスプリング68の先端部68aを囲むように位置規制し、内側の底部95gが先端部68aに当接する。
本実施形態における環状凸部95は、内壁面95hが比較的高い高さでリターンスプリング68の先端部68aの外周を囲むように位置できる。したがって、リターンスプリング68の先端部68aはスプリング径方向の360度全方向においてしっかりと保持される。また、本実施形態においては、環状凸部95の突出高さがスライドピンホルダ65の内壁面65aの肉厚に関係なく設定できるので、位置規制機能を高くするべく大きく設定することができる。
上記したように、本実施形態においても、リターンスプリング68の先端部68aが環状凸部95によってしっかりと保持され、リターンスプリング68の振動は抑制され、これによる摩耗が確実に回避できる。
【0044】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態を図10に示す。図10は、リターンスプリング68を保持する位置規制手段の拡大斜視図を示している。
図10に示すように、スライドピンホルダ65の内壁面65aには、リターンスプリング68の先端部68aが、その内側に嵌り込むような複数(本実施形態では4個)の凸部である外側円弧凸部105によって実質的な環状凸部として機能するように形成されている。この外側円弧凸部105は、その内壁面105hがリターンスプリング68の先端部68aを囲むように位置規制する。また、本実地形態においては、外側円弧凸部105はその先端内側面がテーパ面105jを備えており、リターンスプリング68の外径と外側円弧凸部105によって形成される環状凸部の内径との差が小さく形成された場合でも、組み立て時において、リターンスプリング68の先端部68aを誘い込むような構成となっているので、組込みやすい。
本実施形態における外側円弧凸部105は、前記第3実施形態の効果に加えて、凸部が環状に繋がっていない分だけ軽量化が可能である。
【0045】
(第5実施形態)
本発明の第4実施形態を図11に示す。図11は、リターンスプリング68を保持する位置規制手段の拡大斜視図を示している。
図11に示すように、スライドピンホルダ65の内壁面65aには、リターンスプリング68の先端部68aが、その外側に丁度嵌り込むような複数(本実施形態では上下に2個)の凸部である内側円弧凸部115によって実質的な環状凸部が形成されている。
この内側円弧凸部115は、その外壁面115hがリターンスプリング68の先端部68aの内側に入り込むようにして該先端部68aを位置規制している。内側円弧凸部115は、その先端外側面がテーパ面115jを備えており、組み立て時において、リターンスプリング68の先端部68aを誘い込むような構成となっている。
本実施形態においては、内側円弧凸部115がリターンスプリング68の内側に入り込む構成であるので、その突出高さがスライドピン67のスライド移動量を制限することなく大きく設定できる。したがって、内側円弧凸部115によれば、リターンスプリング68の保持機能を上記実施形態よりも高めることができる。
本実施形態における内側円弧凸部115は、前記第4実施形態と同様に凸部が環状に繋がっていない分だけ軽量化できる。
【0046】
以上、本発明の第1〜第5実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態の構成に何ら限定されるものではなく、種々変更できるものである。例えば、上記各実施形態における位置規制手段(65f,85,95,105,115)においては、凹み構造或いは突出構造の何れかであったが、凹凸を組み合わせるような構成でもよい。
また、前記第3,第4、第5実施形態においては、位置規制手段はリターンスプリングに対して内側位置規制や外側位置規制の何れかの構成であるが、これらを適宜組み合わせた構成とすることもできる。また、第4、第5実施形態においては凸部が4個の場合と2個の場合について説明したが、凸部はリターンスプリングの先端部の位置規制機能を有する構成であれば、形成個数は特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0047】
43 吸気弁(吸気バルブ)
44 排気弁(排気バルブ)
59 吸気側カム
61 排気側カム
63,64 バルブ休止機構
65 スライドピンホルダ
65a スライドピンホルダの内壁面
65f 凹み部(位置規制手段)
67 スライドピン
68 リターンスプリング
68a リターンスプリングの先端部
85 環状凹み部(位置規制手段)
95 環状凸部(位置規制手段)
105 外側円弧凸部(位置規制手段)
115 内側円弧凸部(位置規制手段)
E エンジン
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシリンダ室と吸気もしくは排気通路との連通部を開閉する吸排気バルブを開閉作動させるバルブ作動機構を備えたエンジンに関し、さらに詳しくは、これら吸排気バルブの作動を休止させることが可能なバルブ休止機構を備えたエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの吸排気用のバルブ作動機構としては、これまで種々のものが知られており、例えば、バルブ駆動カムや該バルブ駆動カムにより揺動されるロッカーアームにより開閉作動させる構成のものが良く知られている。さらに、バルブ駆動カムの回転状態において一部もしくは全部の吸排気バルブの作動を休止させるバルブ休止機構を設けることも知られている。また、近年においては、特許文献1に開示されているようなバルブ休止機構が、バルブ駆動カムとバルブとの間に設けられたものが知られている。
【0003】
ここで、特許文献1に開示されたバルブ休止機構について説明する。
図12に示すバルブ休止機構150は、エンジンにおいて、吸気もしくは排気通路が形成されるエンジンシリンダヘッド110にバルブ(図12ではバルブステム部132を備える排気バルブ130)の開閉方向(矢印B方向)に延びてガイド孔114の中に保持部材151が摺動自在に設けられている。図12に示す構造においては、例えば、ロッカーアーム172に螺合された押圧部材174と排気バルブ130との間に設けられている。
【0004】
バルブ休止機構150は、その保持部材151が、付勢部材134bによりロッカーアーム172の押圧部材174に当接するように付勢されている。そして、保持部材151内にその摺動方向(矢印B方向)と直角な方向に移動自在に設けられてバルブ休止選択の主要部品として機能するスライドピン155を有する。このスライドピン155を直角な方向の一方側(図12においては右側)に付勢するリターンスプリング157を備えている。一方、このバルブ休止機構150においては、エンジンシリンダヘッド110内の油圧供給路116から休止作動油圧が供給される作動油室155cが保持部材151内に設けられている。
【0005】
そして、作動油室155cに供給された休止作動油圧を受けてスライドピン155がリターンスプリング157に抗して図12において左側に押圧され適宜移動することでバルブ130の休止位置にでき、一方、作動油室155cに作用する休止作動油圧が低下したときにリターンスプリング157による付勢力によってスライドピン155が図12において右側に適宜移動することで、バルブ130の作動位置にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−208795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されたバルブ休止機構150において、スライドピン155を付勢するリターンスプリング157は、その機能上からその多くの部分がスライドピン155のポケット155dから露出した状態で、かつ先端部157aがスライドピンホルダの内壁面151cに当接して収納される。
リターンスプリング157が上述のように収納されているので、エンジン回転が速くなりバルブ130が高速で上下動すると、この上下動に連れてバルブ休止機構150は上下動し、これに伴ってリターンスプリング157も上下に振動する。特に、エンジンの高速回転域では、上述のリターンスプリング157は、伸びた状態であるためにポケット155dに入ってない部分が多くなり振動し易い状態となる。
このリターンスプリング157の上下振動によって、該リターンスプリング157とこれを保持する周辺の壁面とが擦れ合ってリターンスプリング並びにその周囲の内壁面が摩耗する。特に、ポケット155dに入ってない部分が大きく揺さぶられてリターンスプリングのポケット入口と接触する部分の摩耗が進んでしまうという課題がある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、吸排気バルブを有したエンジンにおいて、これら吸排気のバルブ休止機構におけるリターンスプリングと該スプリングと接触する壁面との擦れによる摩耗を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、クランクシャフト駆動に対応して回転されるバルブ駆動カムに連動してバルブの移動方向に沿って駆動され、且つ油圧供給機構による油圧と該油圧に抗する方向のリターンスプリングによる付勢力によりスライド移動するスライドピンをスライド可能に保持するスライドピンホルダを有し、前記スライドピンがバルブ移動方向とは直行方向にスライド移動することにより、前記バルブの休止選択をするバルブ休止機構を備えるエンジンにおいて、前記スライドピンホルダの内壁面には、前記リターンスプリングの先端部に対向する位置に該先端部の少なくとも前記バルブの移動方向Bの動きを規制する位置規制手段が設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記位置規制手段は、前記リターンスプリングの先端部を受容する凹み部にて構成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記位置規制手段は、前記リターンスプリングの先端部が嵌り込む凸部にて構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加えて、前記位置規制手段は、複数の前記凸部が間隔を置いて環状に並んで構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加えて、前記位置規制手段は、前記リターンスプリングの先端部の内周に嵌り込む凸部にて構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明にかかるエンジンによれば、リターンスプリングの先端部に対向する位置に、前記先端部の少なくとも前記バルブの移動方向の動きを規制する位置規制手段が設けられたことにより、先端部の揺れを防ぐことができ、リターンスプリングの振動が抑制されて、該リターンスプリングが接触している壁面との擦れが回避できて摩耗が抑制される。
【0015】
請求項2に記載の発明にかかるエンジンによれば、前記位置規制手段が、前記リターンスプリングの先端部を受容する凹み部として構成されるので、該先端部がその外側全域にて全方位に効果的に保持される。スライドピンホルダの一部分が薄肉化し軽量化に寄与できる。
【0016】
請求項3に記載の発明にかかるエンジンによれば、位置規制手段は、リターンスプリングの先端部が嵌り込む凸部にて構成されているので、突出高さを大きくするなどその形成自由度が増し、リターンスプリングの先端部の保持を確実にすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明にかかるエンジンによれば、請求項3に記載の構成に加えて、位置規制手段は、複数の前記凸部が間隔を置いて環状に並んだで構成されるので、スライドピンホルダの必要以上の厚肉化を回避することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明にかかるエンジンは、請求項3に記載の構成に加えて、位置規制手段は、リターンスプリングの先端部の内周に嵌り込む凸部にて構成されるので、その径は小さく且つ突出高さを大きくし易くなり、リターンスプリングの保持機能が高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態における自動二輪車の左側面図である。
【図2】図1に示す自動二輪車のパワーユニットの左側面図である。
【図3】図2に示すパワーユニットにおけるBFの要部断面図である。
【図4】図2に示すパワーユニットにおけるBRの要部断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態における要部拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるバルブ休止機構の分解斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態における位置規制手段の斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態における位置規制手段の斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態における位置規制手段の斜視図である。
【図10】本発明の第4実施形態における位置規制手段の斜視図である。
【図11】本発明の第5実施形態における位置規制手段の斜視図である。
【図12】従来のバルブ休止機構を示すためのエンジンの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明にかかる第1実施形態について、図1〜図7を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、鞍乗り型車両である自動二輪車に適応したものについて以下説明する。
先ず、本実施形態を適用した自動二輪車の全体構成について簡単に説明する。自動二輪車1は、図1に示すように、その車体フレームFが、前輪WFを軸支するフロントフォーク25を操向可能に支承するヘッドパイプ26と、このヘッドパイプ26から後下がりに延びる左右一対のメインフレーム27と、両メインフレーム27の後部に連設されて下方に延びる左右一対のピボットプレート28とを有しており、ピボットプレート28に前端が揺動可能に支承されるスイングアーム29の後部に後輪WRが軸支される。しかもピボットプレート28の下部およびスイングアーム29の前部間にはリンク30が設けられ、ピボットプレート28の上部およびリンク30間にはクッションユニット31が設けられる。
【0021】
メインフレーム27およびピボットプレート28にはパワーユニットPが懸架されており、このパワーユニットPから出力される回転動力は前後に延びるドライブシャフト32を介して後輪WRに伝達される。
パワーユニットPが備えるエンジンE(図2参照)におけるエンジン本体33もしくは車体フレームFには、サイドスタンド34が取付けられており、本実施形態では、車体フレームFにおける左側のピボットプレート28の下部にサイドスタンド34が取付けられる。したがって、サイドスタンド34を立てて駐車したときに自動二輪車は左側に傾斜した状態となる。なお、図1においては、車両の前方,後方,上方,下方をそれぞれFr,Rr,U,Dにて示す。
【0022】
図2において、エンジンEのエンジン本体33は、自動二輪車1への搭載状態で前方(Fr)に位置する前部バンクBFと、該前部バンクBFよりも後方に位置する後部バンクBRとを有してV型の水冷式に構成されるものである。そして、この両バンクBF,BRに共通なクランクケース35に、自動二輪車の左右方向に沿うクランクシャフト36が回転自在に支承される。
【0023】
クランクケース35は、上部ケース半体35aおよび下部ケース半体35bが結合されて成るものであり、V字形をなすようにして前部および後部シリンダブロックBF,BRが上部ケース半体35aに一体に形成され、クランクシャフト36の軸線は上部ケース半体35aおよび下部ケース半体35bの結合面37上に配置される。
【0024】
前部バンクBFは、その構成を大別すると、前部シリンダブロック38Fと、該前部シリンダブロック38Fに結合される前部シリンダヘッド39Fと、前部シリンダヘッド39Fに結合される前部ヘッドカバー40Fとで構成される。後部バンクBRについても、その構成を大別すると、後部シリンダブロック38Rと、該後部シリンダブロック38Rに結合される後部シリンダヘッド39Rと、後部シリンダヘッド39Rに結合される後部ヘッドカバー40Rとで構成される。そして、クランクケース35の下部にはオイルパン41が結合される構成となっている。
【0025】
前部シリンダブロック38Fには、クランクシャフト36の軸線方向に並ぶ2つのシリンダボア42(図3参照)が形成されており、前部シリンダブロック38Fは、エンジン本体33の車体フレームFへの懸架状態でシリンダボア42の軸線を前上がりに傾斜させるようにしてクランクケース35に結合される。また後部シリンダブロック39Rには、クランクシャフト36の軸線方向に並ぶ2つのシリンダボア42(図4参照)が形成されており、後部シリンダブロック39Rは、エンジン本体33の車体フレームFへの懸架状態で、各シリンダボア42の軸線を後上がりに傾斜させるようにしてクランクケース35に結合される。而して前部バンクBFの両シリンダボア42にそれぞれ摺動可能に嵌合されるピストン42aと、後部バンクBRの両シリンダボア42にそれぞれ摺動可能に嵌合されるピストン42aとが、クランクシャフト36に共通に連接される。
【0026】
図3において、前部シリンダヘッド39Fには、各シリンダボア42毎に一対ずつの吸気弁43(図3において紙面垂直方向に並んで配置されている)が一対ずつの弁ばね46で閉弁方向に付勢されて開閉作動可能に配設されるとともに、一対ずつの排気弁44(図3において紙面垂直方向に並んで配置されている)が弁ばね47で閉弁方向に付勢されて開閉作動可能に配設されている。これらの吸気弁43および排気弁44は、前部バンク側動弁装置48Fによって開閉駆動される。
【0027】
前部バンク側動弁装置48Fは、クランクシャフト36と平行な軸線を有して前部シリンダヘッド39Fに回転自在に支承されるとともに吸気弁43の上方に配置されるカムシャフト49と、このカムシャフト49に設けられた複数(本実施形態では4つ)の吸気側カム50および吸気弁43間に介装されて前部シリンダヘッド39Fに摺動可能に嵌合される吸気側バルブリフタ51と、前記カムシャフト49に設けられた複数(本実施形態では4つ)の排気側カム52に転がり接触するローラ53を一端に有するとともに他端には各排気弁44のステム45aの上端に当接するタペットねじ54が進退位置を調節可能として螺合されるロッカアーム55とを備え、ロッカアーム55は、カムシャフト49と平行な軸線を有して前部シリンダヘッド39Fに固定配置されるロッカシャフト56で揺動可能に支承される。
【0028】
図4において、後部シリンダヘッド39Rには、各シリンダボア42毎に一対ずつの吸気弁43および一対ずつの排気弁44(図4において紙面垂直方向に複数並んで配置されている)が弁ばね280,281で閉弁方向に付勢されて開閉作動可能に配設されている。そして、これらの吸気弁43および排気弁44は、後部バンク側動弁装置48Rによって開閉駆動される。
【0029】
後部バンク側動弁装置48Rは、クランクシャフト36と平行な軸線を有して後部シリンダヘッド39Rに回転自在に支承されるとともに吸気弁43の上方に配置される吸気側カムシャフト57と、クランクシャフト36と平行な軸線を有して後部シリンダヘッド39Rに回転自在に支承されるとともに排気弁44の上方に配置される排気側カムシャフト58と、吸気側カムシャフト57に設けられる複数(本実施形態では4つ)の吸気側カム59および吸気弁43間に介装されて後部シリンダヘッド39Rに摺動可能に嵌合される吸気側バルブリフタ60と、排気側カムシャフト58に設けられる複数(本実施形態では4つ)の排気側カム61および排気弁44間に介設されて後部シリンダヘッド39Rに摺動可能に嵌合される排気側バルブリフタ62と、を備える。
【0030】
この後部バンク側動弁装置48Rには、後部バンクBRの2気筒の吸気弁43の作動態様を開閉作動状態および閉弁休止状態に切換可能とした吸気側のバルブ休止機構63と、2気筒の排気弁44の作動態様を開閉作動状態および閉弁休止状態に切換可能とした排気側のバルブ休止機構64とが付設される。
【0031】
以下、両バルブ休止機構63、64について詳細に説明する。
図5に示すように、吸気側のバルブ休止機構63は、吸気側バルブリフタ60の内側に設けられている。そして、図6の斜視図にも示すように、バルブ休止機構63の構成は、吸気側バルブリフタ60に摺動可能に嵌合されるスライドピンホルダ65と、吸気側バルブリフタ60の内面との間に油圧室66を形成してスライドピンホルダ65に摺動可能に嵌合されるスライドピン67と、油圧室66の容積を縮少する方向にスライドピン67を付勢するばね力を発揮してスライドピン67およびスライドピンホルダ65間に設けられるリターンスプリング68と、スライドピン67の軸線まわりの回転を阻止してスライドピンホルダ65およびスライドピン67間にピン孔63cを挿通して設けられるストッパピン69と、を備える。
【0032】
スライドピンホルダ65は、その外周には環状溝71が設けられている。さらに、該スライドピンホルダ65は、吸気側バルブリフタ60の軸線と直交する軸線を孔72が設けられている。また、スライドピンホルダ65には、弁ばね280で閉弁方向に付勢された吸気弁43におけるステム43aの先端部を挿通せしめる挿通孔73と、該挿通孔73との間に摺動孔72を挟む延長孔74とが、吸気弁43におけるステム43aの先端部を収容可能として同軸に設けられている。また、吸気側バルブリフタ60の閉塞端側で延長孔74の端部を塞ぐ円盤状のシム75がスライドピンホルダ65に嵌合され、このシム75に当接する突部76が吸気側バルブリフタ60の閉塞端内面中央部に一体に設けられる。
なお、油圧室66には図示しない油圧供給装置からの油圧が油圧経路116を介して適宜付与されるように構成されている。
【0033】
また、スライドピン67の軸方向中間部には、スライドピンホルダ65の挿通孔73および延長孔74に同軸に連なり得る収容孔78が設けられている。この収容孔78が、挿通孔73および延長孔74と協働してステム43aの先端部を収容可能とする。また、収容孔78の挿通孔73側の端部は、挿通孔73に対向してスライドピン67の下部外側面に形成される平坦な当接面79に開口される。而して当接面79はスライドピン67の軸線方向に沿って比較的長く形成されるものであり、収容孔78は、当接面79の油圧室66側寄りの部分に開口されている。
【0034】
前掲したように、スライドピンホルダ65の摺動孔72にはスライドピン67が摺動自在に嵌合されているが、このスライドピン67を付勢するリターンスプリング68は、該スライドピン67の他端(ポケット状に凹んでいる部分)と摺動孔72の閉塞端である内壁面65aとの間に形成されるばね室77の中に収納されている。
【0035】
ここで、スライドピンホルダ65の内壁面65aには、図7に拡大して示すように、リターンスプリング68の先端部68aが内側に入り込むような大きさに形成された凹み部65fが設けられている。そして、この凹み部65fは、リターンスプリング68の先端部68aの動きを規制する位置規制手段として機能している。すなわち、凹み部65fは、円形の底部65gとその底部65gから垂直に立ち上った内周面65hを有する構成であり、底部65gがリターンスプリング68の押圧を受止め、内周面65hがリターンスプリング68の先端部68aの外周を囲むように位置するので、先端部68aは、へこみ部65f内に、上下のみならずスプリング径方向の360度あらゆる方向においてしっかりと保持される。
【0036】
バルブ休止機構63の周辺構造についてさらに説明すると、図5に示すように、後部シリンダヘッド39Rには吸気側バルブリフタ60を摺動自在に支承すべく該吸気側バルブリフタ60を嵌合せしめる支持孔80が設けられており、この支持孔80の内面には、吸気側バルブリフタ60の支持孔80内での摺動にかかわらずスライドピンホルダ65の環状溝71に連通する環状凹部81が吸気側バルブリフタ60を囲繞するようにして設けられている。また、吸気側バルブリフタ60および後部シリンダヘッド39R間には、吸気側バルブリフタ60を吸気側カム59に当接させる方向に付勢するばね82が設けられている。
【0037】
以下、吸気側のバルブ休止機構63の動作について説明する。
このように構成されたバルブ休止機構63においては、スライドピン67は、油圧経路116を介して供給された油圧室66の油圧により該スライドピン67の一端側(図5において右側)に作用する油圧力と、リターンスプリング68によりスライドピン67の他端側(図5において左側)に作用するばね力とが均衡するようにしてスライドピン軸方向に摺動する。そして、油圧室66の油圧が低圧であるときには、収容孔78を挿通孔73および延長孔74の軸線からずらせてステム43aの先端を当接面79に当接させるように図5の右側に移動し、油圧室66の油圧が高圧になった作動状態では、挿通孔73に挿通されているステム43aの先端部を収容孔78および延長孔74に収容せしめるように図5の左側に移動する。
【0038】
而してスライドピン67がその収容孔78を挿通孔73および延長孔74に同軸に連ならせる位置に移動したときには、吸気側カム59から作用する押圧力によって吸気側バルブリフタ60が摺動するのに応じてスライドピンホルダ65およびスライドピン67も吸気側バルブリフタ60とともに吸気弁43側に移動する。しかし、このときステム43aの先端部が収容孔78および延長孔74に収容されるだけで吸気側バルブリフタ60およびスライドピンホルダ65から吸気弁43に開弁方向の押圧力が作用することはなく、吸気弁43は休止したままとなる。
また、スライドピン67がその当接面79にステム43aの先端部を当接させる位置に移動したときには、吸気側カム59から作用する押圧力によって吸気側バルブリフタ60が摺動するのに応じたスライドピンホルダ65およびスライドピン67の吸気弁43側への移動に伴い吸気弁43に開弁方向の押圧力が作用する。このように、吸気側カム59の回転ならびにスライドピン67の動作によって吸気弁43が開閉作動する。
【0039】
一方、排気側のバルブ休止機構64は、吸気側のバルブ休止機構63と同様に構成されて、図4に示すように、排気側バルブリフタ62に関連して設けられるものである。したがって、高圧の油圧が作用したときに排気バルブ44を閉弁休止させる状態と、作用する油圧が低下したときに排気バルブ44を開閉作動せしめる状態と、を切換可能に構成されている。
すなわち、後部バンク側動弁装置48Rは、吸気側のバルブ休止機構63および排気側のバルブ休止機構64の作動制御によって、後部バンクBRにおける2つの気筒の吸気バルブ43および排気バルブ44を開閉作動せしめる状態と、後部バンクBRにおける2つの気筒の吸気バルブ43および排気バルブ44を閉弁休止して気筒休止とする状態とを切換えることが可能である。
【0040】
上記したように、本実施形態のバルブ休止機構63(64)においては、スライドピンホルダ65内に収容されたリターンスプリング68は、その先端部68aが位置規制手段である凹み部65fによってしっかりと保持されているので、バルブ休止機構63(64)が高速で上下動(バルブ43(44)の移動方向Bの上下動)しても、それ自体の振動は抑制され、特に先端部68aの振れは回避される。したがって、リターンスプリング68が振れないように保持されることで、リターンスプリング68は該スプリングが接触している壁面との擦れが回避されて摩耗が防止される。
また、本実施形態におけるスライドピンホルダ65は、前述の凹み部65fの分だけ軽量化される。
【0041】
本発明にかかる第2実施形態〜第5実施形態について、図8〜図11を参照して説明する。
なお、以下に示す各実施形態においては、図8〜図11に示すリターンスプリングの位置規制手段の構造のみが前記第1実施形態と相違する構成であるので、第1実施形態と同じ構成要素については図示を省略するとともに同符号を付して説明を省略する。
【0042】
(第2実施形態)
本発明にかかる第2実施形態を図8に示す。図8は、リターンスプリング68を保持する位置規制手段の拡大斜視図を示している。
図8に示すように、スライドピンホルダ65の内壁面65aには環状凹み部85が設けられている。この環状凹み部85は、リターンスプリング68の先端部68aを、その内側と外側の両方から位置規制するように構成されている。すなわち、環状凹み部85は、底部85gと端部68aの内側に位置する内側内周面85kと外側に位置する外側内周面85hとを有する構成となっており、先端部68aが両内周面85h,85kによって内側及び外側から保持される。
本実施形態における環状凹み部85は、底部85gがリターンスプリング68の押圧を受止め、両内周面85h,85kがリターンスプリング68の先端部68aをその内外周の両方側から位置規制できるので、リターンスプリング68の先端部68aはスプリング径方向の360度全方向においてしっかりと保持される。
したがって、本第2実施形態においても、リターンスプリング68の先端部68aが環状凹み部85によってしっかりと保持され振動が抑制されるので、リターンスプリング68は該スプリングが接触している壁面との擦れが回避されて摩耗が防止される。また、本実施形態においてもスライドピンホルダ65は、前述の環状凹み部85の分だけ軽量化が図れる。
【0043】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図9に示す。図9は、リターンスプリング68を保持する位置規制手段の拡大斜視図を示している。
図9に示すように、スライドピンホルダ65の内壁面65aには、リターンスプリング68の先端部68aが、その内側に嵌り込むような大きさの凸部である環状凸部95が設けられている。この環状凸部95は、その内壁面95hがリターンスプリング68の先端部68aを囲むように位置規制し、内側の底部95gが先端部68aに当接する。
本実施形態における環状凸部95は、内壁面95hが比較的高い高さでリターンスプリング68の先端部68aの外周を囲むように位置できる。したがって、リターンスプリング68の先端部68aはスプリング径方向の360度全方向においてしっかりと保持される。また、本実施形態においては、環状凸部95の突出高さがスライドピンホルダ65の内壁面65aの肉厚に関係なく設定できるので、位置規制機能を高くするべく大きく設定することができる。
上記したように、本実施形態においても、リターンスプリング68の先端部68aが環状凸部95によってしっかりと保持され、リターンスプリング68の振動は抑制され、これによる摩耗が確実に回避できる。
【0044】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態を図10に示す。図10は、リターンスプリング68を保持する位置規制手段の拡大斜視図を示している。
図10に示すように、スライドピンホルダ65の内壁面65aには、リターンスプリング68の先端部68aが、その内側に嵌り込むような複数(本実施形態では4個)の凸部である外側円弧凸部105によって実質的な環状凸部として機能するように形成されている。この外側円弧凸部105は、その内壁面105hがリターンスプリング68の先端部68aを囲むように位置規制する。また、本実地形態においては、外側円弧凸部105はその先端内側面がテーパ面105jを備えており、リターンスプリング68の外径と外側円弧凸部105によって形成される環状凸部の内径との差が小さく形成された場合でも、組み立て時において、リターンスプリング68の先端部68aを誘い込むような構成となっているので、組込みやすい。
本実施形態における外側円弧凸部105は、前記第3実施形態の効果に加えて、凸部が環状に繋がっていない分だけ軽量化が可能である。
【0045】
(第5実施形態)
本発明の第4実施形態を図11に示す。図11は、リターンスプリング68を保持する位置規制手段の拡大斜視図を示している。
図11に示すように、スライドピンホルダ65の内壁面65aには、リターンスプリング68の先端部68aが、その外側に丁度嵌り込むような複数(本実施形態では上下に2個)の凸部である内側円弧凸部115によって実質的な環状凸部が形成されている。
この内側円弧凸部115は、その外壁面115hがリターンスプリング68の先端部68aの内側に入り込むようにして該先端部68aを位置規制している。内側円弧凸部115は、その先端外側面がテーパ面115jを備えており、組み立て時において、リターンスプリング68の先端部68aを誘い込むような構成となっている。
本実施形態においては、内側円弧凸部115がリターンスプリング68の内側に入り込む構成であるので、その突出高さがスライドピン67のスライド移動量を制限することなく大きく設定できる。したがって、内側円弧凸部115によれば、リターンスプリング68の保持機能を上記実施形態よりも高めることができる。
本実施形態における内側円弧凸部115は、前記第4実施形態と同様に凸部が環状に繋がっていない分だけ軽量化できる。
【0046】
以上、本発明の第1〜第5実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態の構成に何ら限定されるものではなく、種々変更できるものである。例えば、上記各実施形態における位置規制手段(65f,85,95,105,115)においては、凹み構造或いは突出構造の何れかであったが、凹凸を組み合わせるような構成でもよい。
また、前記第3,第4、第5実施形態においては、位置規制手段はリターンスプリングに対して内側位置規制や外側位置規制の何れかの構成であるが、これらを適宜組み合わせた構成とすることもできる。また、第4、第5実施形態においては凸部が4個の場合と2個の場合について説明したが、凸部はリターンスプリングの先端部の位置規制機能を有する構成であれば、形成個数は特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0047】
43 吸気弁(吸気バルブ)
44 排気弁(排気バルブ)
59 吸気側カム
61 排気側カム
63,64 バルブ休止機構
65 スライドピンホルダ
65a スライドピンホルダの内壁面
65f 凹み部(位置規制手段)
67 スライドピン
68 リターンスプリング
68a リターンスプリングの先端部
85 環状凹み部(位置規制手段)
95 環状凸部(位置規制手段)
105 外側円弧凸部(位置規制手段)
115 内側円弧凸部(位置規制手段)
E エンジン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフト駆動に対応して回転されるバルブ駆動カム(59,61)に連動してバルブ(43,44)の移動方向に沿って駆動され、且つ油圧供給機構による油圧と該油圧に抗する方向のリターンスプリング(68)による付勢力によりスライド移動するスライドピン(67)をスライド可能に保持するスライドピンホルダ(65)を有し、前記スライドピン(67)がバルブ移動方向とは直行方向にスライド移動することにより、前記バルブ(43,44)の休止選択をするバルブ休止機構(63,64)を備えるエンジン(E)において、
前記スライドピンホルダ(65)の内壁面(65a)には、前記リターンスプリング(68)の先端部(68a)に対向する位置に該先端部(68a)の少なくとも前記バルブ(43,44)の移動方向(B)の動きを規制する位置規制手段(65f,85,95,105,115)が設けられたことを特徴とするエンジン(E)。
【請求項2】
前記位置規制手段は、前記リターンスプリング(68)の先端部(68a)を受容する凹み部(65f,85)にて構成されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジン(E)。
【請求項3】
前記位置規制手段は、前記リターンスプリング(68)の先端部(68a)が嵌り込む凸部(95,105,115)にて構成されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジン(E)。
【請求項4】
前記位置規制手段は、複数の前記凸部(95,105,115)が間隔を置いて環状に並んで構成されたことを特徴とする請求項3に記載のエンジン(E)。
【請求項5】
前記位置規制手段は、前記リターンスプリング(68)の先端部(68a)の内周に嵌り込む凸部(115)にて構成されたことを特徴とする請求項3に記載のエンジン(E)。
【請求項1】
クランクシャフト駆動に対応して回転されるバルブ駆動カム(59,61)に連動してバルブ(43,44)の移動方向に沿って駆動され、且つ油圧供給機構による油圧と該油圧に抗する方向のリターンスプリング(68)による付勢力によりスライド移動するスライドピン(67)をスライド可能に保持するスライドピンホルダ(65)を有し、前記スライドピン(67)がバルブ移動方向とは直行方向にスライド移動することにより、前記バルブ(43,44)の休止選択をするバルブ休止機構(63,64)を備えるエンジン(E)において、
前記スライドピンホルダ(65)の内壁面(65a)には、前記リターンスプリング(68)の先端部(68a)に対向する位置に該先端部(68a)の少なくとも前記バルブ(43,44)の移動方向(B)の動きを規制する位置規制手段(65f,85,95,105,115)が設けられたことを特徴とするエンジン(E)。
【請求項2】
前記位置規制手段は、前記リターンスプリング(68)の先端部(68a)を受容する凹み部(65f,85)にて構成されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジン(E)。
【請求項3】
前記位置規制手段は、前記リターンスプリング(68)の先端部(68a)が嵌り込む凸部(95,105,115)にて構成されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジン(E)。
【請求項4】
前記位置規制手段は、複数の前記凸部(95,105,115)が間隔を置いて環状に並んで構成されたことを特徴とする請求項3に記載のエンジン(E)。
【請求項5】
前記位置規制手段は、前記リターンスプリング(68)の先端部(68a)の内周に嵌り込む凸部(115)にて構成されたことを特徴とする請求項3に記載のエンジン(E)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−185092(P2011−185092A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47774(P2010−47774)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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