説明

カーブ進入制御装置

【課題】実際に走行する分岐先道路に適した制動警報を行うことにより、ドライバへの違和感を軽減する。
【解決手段】高速道路の分岐路を進む際のカーブ進入制御装置であって、この装置は、自車前方の本線道路の分岐である分岐情報及び自車位置情報と、走行中の道路を撮像する撮像手段により検出した走行車線情報に基づいて、前方分岐における走行予定車線を推定する走行予定車線推定手段(S30)と、走行予定車線推定手段により推定された走行予定車線に基づいて、制動警報を作動させるか否かを判断する制動警報判断手段(S110)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定車速以上の車速でカーブを走行することを抑制するためのカーブ進入制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車前方にある制御対象のカーブが、本線から逸脱するインターチェンジのような「流出路」を表すノードである場合、この制御対象のカーブに対する警報制御及び減速制御を禁止するカーブ進入制御装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−52300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたカーブ進入制御装置では、制御対象のカーブが、本線から逸脱する「流出路」に存在していた場合にのみ、警報制御及び減速制御を禁止するという構成になっている。このため、このカーブ進入制御装置は、制御対象のカーブが、ジャンクションのように本線が分岐する道路の場合に、警報制御及び減速制御を禁止できない。よって、カーブ進入制御装置が、実際に走行する分岐先道路とは違う他の分岐先道路に対して警報制御及び減速制御を行った場合、ドライバに違和感を与えてしまう。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、実際に走行する本線の分岐先道路に適した制動警報を行うことにより、ドライバへの違和感を軽減するカーブ進入制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、高速道路の分岐路を進む際のカーブ進入制御装置であって、この装置が、自車前方の本線道路の分岐である分岐情報及び自車位置情報と、走行中の道路を撮像する撮像手段により検出した走行車線情報に基づいて、道なりに走行した場合の前方分岐における走行予定車線を推定し、推定された走行予定車線に基づいて、制動警報を作動させるか否かを判断することである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカーブ進入制御装置によれば、実際に走行する本線の分岐先道路に適した制御を行うことにより、ドライバへの違和感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係わるカーブ進入制御装置を備える車両の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の制駆動制御コントローラ50により実行される制御プログラムの一例を示すフローチャートである。
【図3】図2のステップS60におけるカーブ区間の検出の概念を示すグラフである。
【図4】図2のステップS30における処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図5】図4のステップS305の分岐進行路推定の概要の一例を示し、図5(a)は、分岐を示す模式図であり、図5(b)は、分岐進行路推定の際に参照するテーブル示す。
【図6】前方分岐の案内看板の画像の例を示す模式図である。
【図7】右側の分岐へ進行することが推測される画像の例を示す模式図である。
【図8】左側の分岐へ進行することが推測される画像の例を示す模式図である。
【図9】図9(a)は、路面に付された分岐先方向を示す文字情報の一例を示す模式図であり、図9(b)は、案内看板G1、G2内の文字情報の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付している。
【0010】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係わるカーブ進入制御装置を備える車両の概略構成を説明する。この車両は、後輪駆動車(AT車、コンベデフ装着車)であり、車両が備える制動装置は、前後輪とも左右の制動力(制動液圧)を独立に制御できる。
【0011】
左前輪10、右前輪20、右後輪30及び左後輪40には、各々、ブレーキディスク11、21、31、41と、液圧の供給によりブレーキディスクを摩擦挟持して各輪毎にブレーキ力(制動力)を与えるホールシリンダ12、22、32、42とが設置されている。ブレーキディスク11、21、31、41、及びホールシリンダ12、22、32、42は、それぞれブレーキユニットを構成している。
【0012】
圧力制御ユニット5が、各ブレーキユニットのホイールシリンダ12、22、32、42に対して所定の液圧を供給することにより、各車輪10、20、30、40は個々に制動される。
【0013】
圧力制御ユニット5は、前後左右の各液圧供給系(各チャンネル)個々にアクチュエータを含んで構成される。アクチュエータとしては、各ホイールシリンダ12、22、32、42に供給される液圧を任意の制動液圧に制御可能なように比例ソレノイド弁を使用している。
【0014】
圧力制御ユニット5は、制駆動力制御コントローラ50からの入力信号に応じて、マスターシリンダー3からの油圧を調節する。これにより、圧力制御ユニット5は、各ホイールシリンダ12、22、32、42へ供給する制動液圧を制御する。
【0015】
ドライバによりブレーキペダル1が操作されると、押し圧はブースター2により増幅され、増幅された押し圧はマスターシリンダー3により油圧に変換されて圧力制御ユニットに伝達される。
【0016】
また、制駆動力制御コントローラ50は、エンジン6の燃料噴射量を制御するエンジン制御と、スロットル制御装置7を介してスロットル開度を制御するスロットル制御と、変速機8を制御する変速機制御とを行う。これにより、制駆動力制御コントローラ50は、駆動トルク制御コントローラ60を介して、駆動輪(左右後輪30、40)の駆動力トルクを制御することができる。
【0017】
さらに、制駆動制御コントローラ50は、ナビゲーション70から取得した車両前方の道路情報や自車の状態から、アクセルペダル反力目標値を決定し、アクセルペダル反力コントローラ100にアクセルペダル反力目標値を指令する。そして、アクセルペダル反力目標値の指令を受けたアクセルペダル反力コントローラ100は、アクセルペダル反力アクチュエータ101を操作して、アクセルペダルに反力を発生させる。
【0018】
制駆動制御コントローラ50には、車両の前後方向の加速度Xg及び左右方向の加速度Ygを検出する加速度センサ53、車両に発生するヨーレイトφを検出するヨーレイトセンサ54、及び各車輪10、20、30、40に設置され車輪速Vwiを検知する車輪速センサ(図示せず)から出力信号がそれぞれ入力される。
【0019】
更に、制駆動制御コントローラ50には、ブレーキペダル1の操作量を検知するため、マスターシリンダー3の液圧Pmを検知するマスターシリンダー液圧センサ55からの出力信号が入力され、アクセルペダルの操作量を検出するため、アクセル開度Accを検知するアクセル開度センサ56からの出力信号が入力され、ステアリング9の操舵角δを検出する操舵角センサ52からの出力信号が入力され、そして、駆動トルク制御コントローラ60から車輪軸上における駆動トルクTwを示す出力信号が入力される。
【0020】
車両は、先行車検知用の外界認識センサとして、ミリ波レーダー58及びミリ波レーダーコントローラ90を搭載している。ミリ波レーダー58で検知した先行車までの車間距離Lxを示す信号が、ミリ波レーダーコントローラ90を介して、制駆動制御コントローラ50に転送される。
【0021】
車両は、撮像手段の一例として、走行中の道路を撮像する単眼カメラ57を搭載し、単眼カメラ57の撮像情報はカメラコントローラ91を介して、制駆動制御コントローラ50へ入力される。
【0022】
ドライバに警告を提示する警告用のモニタ80が、ドライバの前方に設置されている。このモニタ80には、音声やブザー音を発生するためのスピーカーが内蔵されている。制動警報や減速制御が作動するような前方カーブが検知された場合に、ドライバに対して、モニタ80への所定の表示や、音声やブザー音等の音による警告を行う。
【0023】
図2を参照して、図1の制駆動制御コントローラ50により実行される処理手順の一例を説明する。この処理は制駆動制御コントローラ50が備えるオペレーティングシステムで一定の時間毎の定時割り込み遂行される。
【0024】
まず、ステップS10では、図1に示した各センサ及びコントローラからの各種データを読み込む。各センサからは、前後方向の加速度Xg、左右方向の加速度Yg、ヨーレイトφ、各車輪速Vwi(i=1〜4)、アクセル開度Acc、マスターシリンダー液圧Pm、操舵角δ、及び、方向指示スイッチの信号を読み込む。また、駆動トルク制御コントローラ60からは、駆動トルクTwを読込み、ナビゲーション70からは、自車両の位置(X。、Y。)、自車両前方のノード情報(Xn、Yn、Ln)、走行中道路の道路種別RoadType/リンク種別LinkType、分岐までの距離Lb、車線数情報LaneC、及び、分岐レーン情報LaneBranchを読み込む。ここで、Xn、Ynは位置情報、Lnは自車両位置からの距離を表す。本実施例では、前方カーブ検出手段としてナビゲーションを用いている。そして、カメラコントローラ91からは、左右の車線の線種(Line_type_L/Line_type_R)を読み込む。
【0025】
ステップS20に進み、警報制御及び減速制御が禁止されている状態であるか否かを判断する。後述するステップS30で設定する制御禁止フラグProhibit_flg参照し、制御禁止フラグProhibit_flgがONの場合(S20でYES)には、警報制御及び減速制御が禁止された状態であると判断し、図2における以後の処理をすべてスキップして図2の処理を終了する。制御禁止フラグProhibit_flgがOFFの場合(S20NO)には、ステップS30に進む。ステップS30では、走行予定車線推定手段としての制駆動制御コントローラ50が、道なりに走行した場合の前方分岐に
おける走行予定車線を推定する。
【0026】
ステップS30における処理の詳細な手順を、図4のフローチャートを参照して説明する。図2のステップS30は、図4のステップS300〜S310から構成される。先ず、ステップS300において、自車前方の本線道路の分岐である分岐情報及び自車位置情報を示すデータと、単眼カメラ57により検出した走行車線情報を示すデータなど、分岐進行路推定に必要な各種データを読み込む。具体的には、分岐情報及び自車位置情報として、ナビゲーション70より、走行中道路の道路種別RoadType、分岐までの距離Lb、車線数情報LaneC、分岐レーン情報LaneBranchを読込む。また、走行車線情報として、カメラコントローラ91から、左右の車線の線種(Line_type_L/Line_type_R)を読み込む。
【0027】
続くステップS301では、まず道路種別RoadTypeを用いて、自車両が高速道路を走行中であるか否かを判定する。高速道路以外を走行中の場合(S301でNO)、ステップS309へ進み、走行予定車線の推定を未だ行っていないことを示すため、進行路判断フラグbranch_detection_flgをOFF(判断未)に設定する。また同時に、制御禁止フラグProhibit_flgをOFF(許可)に設定にして、図2のステップS30の処理を終了する。高速道路を走行中の場合(S301でYES)、ステップS302へ進む。
【0028】
ステップS302では分岐までの距離Lbを参照し、進路上に分岐が在るか否かを判定する。また、この分岐が、JCTのように分岐先道路が互いに同格であって、一方の分岐先道路が本線からの流出路に当らない、いわゆる本線道路の分岐に該当するか否かを判断してもよい。更に、分岐までの距離Lbが所定値以下であるか否かを判断してもよい。進路上に本線道路の分岐が在り、且つ、この分岐までの距離Lbが所定値(有効値)以下である場合(S302でYES)、ステップS303に進み、それ以外の場合(S302でYES)は、ステップS309へ進む。
【0029】
分岐までの距離Lbについて、有効値を分岐前後のどの範囲に設定するかを調整することで、分岐進行路推定処理の精度を高めることが可能となる。例えば、ナビゲーション70(距離検出手段)が出力する分岐までの距離Lbが、500m以内になった場合に進路上に分岐が在ると判断するより、100m以内になった場合に分岐が在ると判断する方が、分岐進行路推定を行う範囲が限定される。よって、分岐進行路の誤判定が少なくなる。また、自車両が分岐を通過した直後に、分岐までの距離Lbが有効値以上になる、即ち無効値になることで、警報制御及び減速制御の禁止状態が解除されることがないので、ナビゲーション70の判断した分岐進行路と自車両の分岐進行路が異なることで発生する誤作動を防止することができる。
【0030】
ステップS303では、分岐までの距離Lbを参照して、距離Lbの値が正の数であるか否かに応じて自車両が分岐を通過済であるか否かを判断する。距離Lbの値が正の数の場合(S303でNO)、分岐を未だ通過していないと判断し、ステップS304へ処理を進める。一方、距離Lbの値が0以下の場合(S303でYES)、分岐を通過済であると判断し、図2のステップS30の処理を終了する。ステップS303の処理の目的は、ステップS302の処理で記載したように、制御禁止フラグProhibit_flgがON(禁止)に設定されている場合に、分岐を通過した後の一定区間は禁止状態を継続して誤作動を防止することである。
【0031】
続いてステップS304では、進行路判断フラグbranch_detection_flgを参照し、走行予定車線の推定が完了しているか否かを判断する。進行路判断フラグbranch_detection_flgがONの場合は(S304でYES)、自
車前方の分岐における走行予定車線の推定が完了しているため、図2のステップS30の処理を終了する。進行路判断フラグbranch_detection_flgがOFFの場合は(S304でNO)、自車前方の分岐における走行予定車線の推定が完了していないため、ステップS305へ進み、分岐進行路推定を行う。
【0032】
ステップS305において、図1の制駆動制御コントローラ50(走行予定車線推定手段)は、上記した分岐情報及び自車位置情報と、単眼カメラ57により検出した走行車線情報に基づいて、道なりに走行した場合の前方分岐における走行予定車線を推定する。
【0033】
図5(a)及び図5(b)を参照して、図4のステップS305の分岐進行路推定の概要の一例を説明する。入力情報としては、車線数情報LaneC、分岐レーン情報LaneBranch、左右の車線の線種(Line_type_L/Line_type_R)を使用する。車線数情報LaneCは分岐付近の車線数を表し、図5(a)の分岐の例では、車線数は3となる。分岐レーン情報LaneBranchは、分岐における左右に分岐するそれぞれのレーンを表し、図5の図中では左に1レーン、右に2レーンとなる。これら2つの分岐付近の道路情報(分岐情報)及び自車位置情報と、カメラコントローラ91から入力される左右の線種(Line_type_L/Line_type_R)とに基づいて、このまま現在走行中のレーンをそのまま進んだ場合に前方分岐において進行する走行予定車線を推定する。
【0034】
図5(a)の例では、右分岐方向に2レーン、左分岐方向に1レーンである。例えば、自車両の右側に位置する車線の線種(Line_type_R)が実線DL2であり、自車両の左側に位置する車線の線種(Line_type_L)が破線BLである場合、図5(b)を参照して、3レーンのうち一番右のレーンを走行中であると判断できる。このため、このままのレーンを走行した際は右側の分岐へ進行することが推定できる。同じく、例えば右側の線種(Line_type_R)が分岐線を表す太短破線(ゼブラ線)WBL、左側の線種(Line_type_L)が実線DL1の場合、3レーンのうち一番左のレーンを走行中であると判断できる。このため、このままのレーンを走行した際は左側の分岐へ進行することが推定できる。左右両側の線種が破線の場合は、車線数3、分岐レーンが右2レーン、左1レーンでは存在しないパターンであり、不定、すなわち走行予定車線を推定できないと判断する。このように、車線数情報LaneC、分岐レーン情報LaneBranchがわかれば、左側及び右側の線種がどのようなパターンのときに左右どちらの分岐に進むかを推定することができる。実際に単眼カメラ57からの左側及び右側の線種情報(Line_type_L/Line_type_R)を用いて分岐進行路推定を行う。
【0035】
なお、分岐進行路推定を行う際は、他の情報として、分岐までの距離Lbを用いれば進行路推定する範囲を限定することが可能となり、推定精度を向上させることも可能となる。また、ウインカー情報や車速情報を線種情報と合わせて用いることで推定精度を向上させ、一度判定した推定方向をキャンセルするための情報として用いることもできる。例えば、進行路判断フラグがOFFである時に、右側又は左側のウインカーが操作された場合、自車両が右側又は左側へ車線を変更することが推定されるので、推定する現在走行中のレーンを右側又は左側へ移動させてもよい。或いは、進行路判断フラグがONである時に、右側又は左側のウインカーが操作された場合、進行路判断フラグをOFFして、分岐進行路推定をやり直してもよい。
【0036】
ステップS305で進行路推定を行った後、ステップS306に進み、分岐進行路推定に成功したか否かを判断する。分岐進行路推定に成功した場合は(S306でYES)、ステップS307に進み、進行路判断フラグbranch_detection_flgをON(判断済)に、制御禁止フラグProhibit_flgをOFF(許可)にそれ
ぞれ設定する。続いてステップS310では、分岐進行路推定の結果をナビゲーション70に通知し、ナビゲーション70における自車位置を示すロケータを推定される分岐進行路の方向へ強制的に移動させる。これにより、次回のナビゲーション70から読み込まれる自車両前方のノード情報(Xn、Yn、Ln)は、推定した分岐方向の情報とすることができる。ロケータを移動させなくても、次回以降のナビゲーション70からの自車両前方のノード情報(Xn、Yn、Ln)が推定した分岐方向側を出力するようにしてもよい。ステップS310を行ったあとはステップS30の処理を終了したのち、図2のステップS40〜S150の処理は行わずに、図2のフローを終了する。
【0037】
一方、分岐進行路推定に失敗した場合は(S306でNO)、ステップS308に進み、制御禁止フラグProhibit_flgをON(禁止)に設定し、その後ステップS30を終了し、図2のステップS40へ進む。
【0038】
再び、図2のフローチャートに戻り、説明を続ける。ステップS40では、車速Vを算出する。本発明の実施の形態では、通常走行時は、前輪10、20の車輪速Vw1、Vw2より、(1)式に従って、前輪車輪速の平均で車速Vを算出する。また、ABS制御などが作動している場合は、ABS制御内で推定された推定車体速を用いる。
【0039】
V=(Vw1+Vw2)/2 …(1)
【0040】
続くステップS50では、ナビゲーション70から送信されるノード点座標を基に、各補間点の旋回半径を算出する。本発明の実施の形態では、ステップS10で読み込まれた各ノード点の座標(Xn、Yn、Ln)より、自車位置を基準として、自車前方の所定距離dl、例えば25mごとに補間点を設定し、各補間点の旋回半径を算出する。補間点は各ノード点間を線形補間した直線状に設定し、フィルター処理を行ったものとする。本発明の実施の形態では、ノード点を基にした補間点を利用して旋回半径を算出する方法を示すが、この他にも、ノード点自体を利用して自車前方の旋回半径を求める方法を用いてもよい。
【0041】
補間点を利用して旋回半径を算出する方法は、いくつかの方法が考えられるが、ここでは、(2)式に従って、連続する3点の座標から旋回半径Rnを算出する(詳細な算出方法は特開2007−232639号公報参照)。
【0042】
Rn=f(Xn−1、Yn−1、Xn、Yn、Xn+1、Yn+1)…(2)
【0043】
ここで、(2)式の右辺fは、3点の座標から前方道路の旋回半径Rnを算出する関数を示し、また、この時、前方道路の旋回半径Rnは符号付きで算出され、左旋回の場合負、右旋回の場合正となる。
【0044】
本発明の実施の形態では、3点の座標から前方道路の旋回半径Rnを算出する方法を示したが、他にも前後する補間点あるいはノード点を結ぶ直線のなす角度を用いて、旋回半径を算出する方法などが考えられる。また、ステップS50では、自車位置の旋回半径Rも同様に算出するものとする。
【0045】
続くステップS60では、前方道路におけるカーブ区間の検出を行う。上述のS50で求めた各補間点の旋回半径Rnを基に、所定の旋回半径以下、例えば300m以下になった補間点をカーブ入口の補間点と定義し、続いて前記した所定の旋回半径以上になった補間点をカーブ出口の補間点と定義する。カーブ入口からカーブ出口までを1つのカーブ区間とし、検出されたカーブ区間には、自車に近い順にカーブ番号を付する。図3は、カーブ区間の検出の概念を示すグラフである。横軸は各補間点を示し、縦軸は旋回半径Rnを
示す。「カーブ判定閾値」は、前記した所定の旋回半径に相当する。図3のグラフから、ステップS60において、2つのカーブ区間を検出することができる。
【0046】
続くステップS70では、路面の摩擦係数μの推定値を算出する。本発明の実施の形態では、(7)式に示すように、各車輪10、20、30、40に作用する制駆動力と各車輪10、20、30、40に発生するスリップ率との関係にしたがって、路面の摩擦係数μの推定値を算出する。
【0047】
μ=g(各輪の制駆動力、各輪のスリップ率) …(3)
【0048】
ここで、(3)式の右辺gは、各車輪10、20、30、40に作用する制駆動力と各車輪10、20、30、40に発生するスリップ率から、路面の摩擦係数μの推定値を算出する関数を示す。ここでは、各車輪の状態から路面の摩擦係数μを推定する方法の1つを用いたが、摩擦係数μの推定方法は、これに限定されない。例えば、道路周辺にその路面の摩擦係数μを提供する外部発信装置などが設置されている場合は、カーブ手前で外部発信装置から路面の摩擦係数μの情報を入手してもよい。また、より単純にドライバが選択切り替えスイッチにより、選択する方法などを用いても良い。この場合は、例えば、高g=0.8g相当、中g=0.6g相当、低g=0.4g相当などの大まかな設定とすることで、ドライバが選択しやすくするなどの工夫を行うことが望ましい。
【0049】
続くステップS80では、許容横加速度Yglimtを設定する。本発明の実施の形態では、ステップS70で算出された路面の摩擦係数μから、例えば、(4)式に従って路面の摩擦係数μに応じて許容横加速度Yglimtを設定する。
【0050】
Yglimt=Ks × μ …(4)
【0051】
ここで、Ksは許容横加速度算出係数であり、例えば0.8など固定とする。また、車速に応じて高速になると小さくなる特性としても良い。
【0052】
続くステップS90では、警報制御及び減速制御の対象となる目標補間点の算出を行う。本発明の実施の形態では、自車前方の補間点の中から、これらの制御の対象となる目標補間点を旋回半径Rnに応じて算出する。ここで、本発明の実施の形態に係わるカーブ進入制御装置は、ドライバの目測ミスなどにより、実際のカーブの旋回半径Rnから設定される車速Vr以上の車速Vで、当該カーブを走行することを抑制することを目的としている。そこで、ステップS90では、(5)式にしたがって、各カーブ区間についてTTCを求め、TTCが最も小さいカーブ区間を特定し、当該カーブ区間において最も旋回半径がRnが小さい補間点(最小回転半径地点)を目標補間点とする。
【0053】
【数1】

…(5)
【0054】
(5)式において、Lnは自車両からn番目のカーブ区間の入口までの距離を示し、Rnはn番目のカーブ区間における最小旋回半径を示す。
【0055】
続くステップS100では、目標減速度を算出する。本発明の実施の形態では、まず、上記で求めた車速V、目標車速Vr、現在位置から対象カーブ区間の入口までの距離Lt、及び対象カーブ区間の最小旋回半径Rtより、(6)式に従って目標減速度Xgsを算出する。ここで、目標減速度Xgsの値は、減速側を正とする。
【0056】
Xgs=(V−Vr)/2Lt
=(V−Yglimt×|Rn|)/2Lt …(6)
【0057】
続くステップS110では、警報作動開始の判断を行う。本発明の実施の形態では、ステップS100で算出した目標減速度Xgsに応じて、(7)式及び(8)式に従い、警報作動の開始判断を行う。
【0058】
1)警報制御の非作動時(flg_warn=OFF)
Xgs≧Xgwarn …(7)
2)警報制御の作動時(flg_warn=ON)
Xgs≧Xgswarn−Khwarn …(8)
【0059】
ここで、flg_warnは警報の作動状態を示すフラグであり、ONの状態であれば、警報制御が作動している状態であることを示し、OFFの状態であれば、警報制御が作動していない状態であることを示す。(7)式或いは(8)式が成立している時、警報作動状態フラグはONに設定され、(7)式及び(8)式が共に成立していない時、警報作動状態フラグはOFFに設定される。また、Khwarnは警報作動状態フラグのON/OFFのハンチングを防ぐためのヒステリシスであり、例えば0.03gなどの固定値とする。また、Xgswarnは警報開始判断設定値であり、本発明の実施の形態では、(9)式のように制御開始判断設定値補正値Xgs_startと連動するものとする。ここで、Xgswarnは、警報開始判断設定値である。
【0060】
Xgswarn=Xgs_start …(9)
【0061】
続くステップS120では、制御作動開始判断を行う。本発明の実施の形態では、ステップS100で算出した目標減速度Xgsに応じて、(10)式及び(11)式に従い、減速制御の開始判断を行う。
【0062】
1)減速制御の非作動時(flg_gensoku=OFF)
Xgs≧Xgs_start …(10)
2)減速制御の作動時(flg_gensoku=ON)
Xgs≧Xgs_start−Kh …(11)
【0063】
ここで、flg_gensokuは減速制御の作動状態を示すフラグであり、ONの状態であれば、減速制御が作動している状態であることを示し、OFFの状態であれば、減速制御が作動していない状態であることを示す。(10)式或いは(11)式が成立している時、減速制御状態フラグはONに設定され、(10)式及び(11)式が共に成立していない時、減速制御状態フラグはOFFに設定される。また、(11)式のKhは減速制御状態フラグのON/OFFのハンチングを防ぐためのヒステリシスであり、例えば0.05gなどの固定値とする。
【0064】
また、ステップS110、S120における警報制御及び減速制御の作動開始判断は、常に警報制御から始まり減速制御が後に続くようになっている。
【0065】
続くステップS130では、各ブレーキユニットのホイールシリンダ12、22、32、42に供給する目標液圧を算出する。本発明の実施の形態では、減速制御を開始する旨の判断がなされた場合に、まず、ステップS100で算出された目標減速度Xgsから、(12)式に従って、制御目標液圧Pcを算出する。ここで、Kbはブレーキ諸元などより定まる定数である。
【0066】
Pc=Kb×Xgs …(12)
【0067】
その後、制御目標液圧Pc、及びドライバによる減速操作であるマスターシリンダー液圧Pmを考慮して、(13)式及び(14)式に従って、ホイールシリンダ12、22、32、42に供給する目標制動液圧Psiを算出する。目標制動液圧Psiには、前輪用目標制動液圧Psfrと、後輪用目標制動液圧Psrrとからなる。
【0068】
Psfr=max(Pm、Pc) …(13)
【0069】
Psrr=h(Psfr) …(14)
【0070】
ここで、(13)式のPsfrは前輪用目標制動液圧であり、減速制御による目標液圧をドライバの制動による液圧のセレクトハイとなる。また、(14)式のPsrrは後輪用目標制動液圧である。また、(14)式の右辺の関数hは、最適な前後制動力配分となるように、前輪用目標制動液圧Psfrから後輪用目標制動液圧Psrrを算出する関数である。
【0071】
続くステップS140では、駆動輪(後輪30、40)の駆動力を算出する。本発明の実施の形態では、減速制御が開始され、かつ操舵角が大きくなり、減速制御による減速量が大きい状態(減速量の制限値が大きくなる場合)では、ドライバによりアクセル操作がなされていてもエンジン6の出力を絞って加速できなくする。その他の場合は、ドライバのアクセル操作に従ってエンジン6の出力を制御する。つまり、減速制御の作動中は、(15)式に従って、アクセル開度Acc及び減速制御における減速量に応じて目標駆動トルクTrqdsを算出する。一方、減速制御の非作動中は、(16)式に従って、アクセル開度Accに応じて目標駆動トルクTrqdsを算出する。
【0072】
1)減速制御状態フラグflg_gensoku=ONの場合
Trqds=f(Acc)−g(Pc) …(15)
2)減速制御状態フラグflg_gensoku=OFFの場合
Trqds=f(Acc) …(16)
【0073】
ここで、f(Acc)は、アクセル開度Accに応じて目標駆動トルクTrqdsを算出するための関数である。また、g(Pc)は、制御目標液圧Pcにより発生が予想させる制動トルク示す。(15)式に従えば、減速制御の作動中は、減速制御により発生する制動トルク分を差し引き、駆動トルクを発生させる。
【0074】
続くステップS150では、目標制動液圧Psi及び目標駆動トルクTrqdsに応じて、図1の圧力制御ユニット5及び駆動トルク制御コントローラ60に対して、駆動信号を出力する。また、ドライバに対する警報は、アクセルペダルに反力を発生させることにより行う。
【0075】
具体的には、警報作動状態フラグ(flg_warn)がONの状態である場合、制駆動制御コントローラ50は、ナビゲーション70から取得した車両前方の道路情報や自車の状態から、アクセルペダル反力目標値を決定し、アクセルペダル反力コントローラ100にアクセルペダル反力目標値を指令する。そして、アクセルペダル反力目標値の指令を受けたアクセルペダル反力コントローラ100は、アクセルペダル反力アクチュエータ101を操作して、アクセルペダルに対して戻る方向の反力を発生させる。
【0076】
アクセルペダルに戻される方向に力が加わるので、アクセルペダルに載せたドライバの
足から、ドライバは、減速に対する警報を直接、体感することができる。この他、警報用モニタ80を介して、所定の表示及び音声或いはブザーにより警報を行ってもよい。
【0077】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0078】
制駆動制御コントローラ50(走行予定車線推定手段)は、ナビゲーション70から取得した分岐情報及び自車位置情報と、単眼カメラ57により検出した走行車線情報に基づいて、道なりに走行した場合の前方分岐における走行予定車線を推定する。そして、制駆動制御コントローラ50(制動警報判断手段)は、推定された走行予定車線に基づいて、制動警報を作動させるか否かを判断する。これにより、実際に走行する分岐先道路に適した制動警報を行うことができるので、ドライバへの違和感を軽減することができる。
【0079】
JCTのように分岐先道路が同格で「流出路」でない場合においても、分岐後の進行路を推定できた場合は、推定進路後のカーブに対して警報制御及び減速制御を許可し、それ以外は警報制御及び減速制御を禁止できるようになる。このため、ドライバに違和感ない走行を可能にすることができる。
【0080】
本発明の実施の形態によれば、対象カーブが「流出路」に存在しても、このまま道なりに走行したときに、対象カーブが存在する「流出路」へ進むことが推定できた場合は、対象カーブに対する警報制御及び減速制御を許可する。これにより、特許文献1における技術的な課題、即ち、対象カーブが本線から逸脱する「流出路」に存在していた場合にのみ、警報制御及び減速制御を常に禁止することで発生する、ドライバの警報制御に対する不信感が軽減することができる。
【0081】
また、ナビゲーション70からの自車位置情報に基づいて、自車から本線道路の分岐までの距離を検出し、当該距離が所定値以下である場合にのみ、走行予定車線を推定する。これにより、前方分岐における走行予定車線の推定を、分岐前の一定区間内に限定することができるので、進路推定の誤判断を減らすことができる。
【0082】
更に、制駆動制御コントローラ50(走行予定車線推定手段)は、単眼カメラ57により撮像された画像に含まれる走行中の道路情報の一例としての単眼カメラ57により検出した走行車線情報に基づいて、走行予定車線を推定する。これにより、走行予定車線の推定精度を上げることができる。
【0083】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は、1つの実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0084】
制駆動制御コントローラ50(走行予定車線推定手段)は、走行中の道路情報の一例としての、走行中の道路の路面を撮像する単眼カメラ57により検出した走行車線情報に基づいて、走行予定車線を推定したが、走行中の道路情報は、走行車線情報(マーカー、車線の線種)に限らない。例えば、走行中の道路情報は、前方分岐の案内看板情報であってもよい。この場合、単眼カメラ57は、車両の進行方向のやや上向きの画像を撮像する。
【0085】
例えば、図6に示すような単眼カメラ57で撮像した画像内に、前方分岐の案内看板があった場合、枠の大きな2つの案内看板G1、G2を抽出する。図7及び図8に示すように、2つの案内看板G1、G2のうち、画像内で鉛直方向に伸びる中心線CLに近い方へ、分岐先進路を推定してもよい。図7の画像例では、右側に位置する案内看板G2が中心線CLに近いため、右側の分岐先道路を推定することができる。図8の画像例では、左側
に位置する案内看板G1が中心線CLに近いため、左側の分岐先道路を推定することができる。
【0086】
また、中心線CLが左右の案内看板G1、G2のいずれにも重ならない場合や、中心線CLが左右の案内看板G1、G2に対して数ドット以内に近づいていない場合に、走行予定車線の推定に失敗したと判断する、など、分岐先道路の推定精度を向上さえる施策をとってもよい。
【0087】
更に、分岐進行路の推定を行うタイミングは、案内看板G1、G2の手前の所定の範囲に限定してもよい。所定値以上のヨーレイトが発生している場合は、誤判定を抑制するために、分岐進行路の推定を行わなくてもよい。
【0088】
また更に、走行中の道路情報として、走行車線情報と、道路分岐情報としての前方分岐の案内看板情報とを同時に用いてもよい。例えば、図9(a)及び図9(b)に示すように、路面に付された分岐先方向を示す文字情報と、案内看板G1、G2の文字情報とを比較することにより、分岐進行路の推定精度を向上させることもできる。
【符号の説明】
【0089】
50 制駆動制御コントローラ50(走行予定車線推定手段、制動警報判断手段)
57 単眼カメラ(撮像手段、分岐情報取得手段)
70 ナビゲーション(自車位置情報取得手段、分岐情報取得手段、距離検出手段)
91 カメラコントローラ(走行車線情報取得手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速道路の分岐路を進む際のカーブ進入制御装置であって、
自車前方の本線道路の分岐である分岐情報を取得する分岐情報取得手段と、
自車位置情報を取得する自車位置情報取得手段と、
走行中の道路を撮像する撮像手段により検出した走行車線情報を取得する走行車線情報取得手段と、
前記分岐情報と前記自車位置情報と前記走行車線情報に基づいて、前方分岐における走行予定車線を推定する走行予定車線推定手段と、
前記走行予定車線推定手段により推定された走行予定車線に基づいて、制動警報を作動させるか否かを判断する制動警報判断手段と、
を備えることを特徴とするカーブ進入制御装置。
【請求項2】
自車から前記本線道路の分岐までの距離を検出する距離検出手段を更に備え、
前記走行予定車線推定手段は、前記距離検出手段により検出された距離が所定値以下である場合にのみ、前記走行予定車線を推定することを特徴とする請求項1に記載のカーブ進入制御装置。
【請求項3】
前記走行予定車線推定手段は、前記撮像手段に撮像された画像に含まれる走行中の道路分岐情報に基づいて、前記走行予定車線を推定することを特徴とする請求項1又は2に記載のカーブ進入制御装置。
【請求項4】
前記制動警報は、アクセルペダルに戻す方向へ反力を与えることによって作動させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のカーブ進入制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−232841(P2011−232841A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100511(P2010−100511)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】