ガラス基板の製造方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計
【課題】製造コストの低減及び製造効率の向上を図った上で、導通性に優れたガラス基板の製造方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供する。
【解決手段】コンテナ73内に軸方向に沿って、貫通電極となる線材72を張架する線材張架工程と、コンテナ73内に溶融ガラス71を充填する充填工程と、溶融ガラス71を硬化させ、線材72が一体化されたガラス体を形成する硬化工程と、ガラス体を軸方向に直交するように切断する切断工程とを有していることを特徴とする。
【解決手段】コンテナ73内に軸方向に沿って、貫通電極となる線材72を張架する線材張架工程と、コンテナ73内に溶融ガラス71を充填する充填工程と、溶融ガラス71を硬化させ、線材72が一体化されたガラス体を形成する硬化工程と、ガラス体を軸方向に直交するように切断する切断工程とを有していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の製造方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子は、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
このような圧電振動子では、ベース基板に形成された貫通孔に貫通電極を形成し、この貫通電極によってキャビティ内の圧電振動片と、キャビティ外の外部電極とを電気的に接続している(例えば、特許文献1参照)。具体的に、特許文献1では、まずベース基板に貫通孔を形成し、ベース基板を熱軟化させた状態で貫通孔内に金属ピンを打ち込む方法が記載されている。しかしながら、この方法では、金属ピンと貫通孔との間隙を完全に塞ぐのが困難であり、キャビティ内の気密性を確保できないという問題がある。また、ベース基板上の全ての貫通孔に位置決めして金属ピンを打ち込むのは煩雑である。
【0004】
そこで、近時では、貫通孔と金属ピンとの間隙にガラスフリットを充填し、このガラスフリットを焼成することで、ベース基板と金属ピンとを一体化させる技術が開発されている。この場合、図20(a)に示すように、まず平板状の土台部201と、土台部201の表面から法線方向に沿って立設される芯材部202とを有する鋲体型の金属ピン203を、ベース基板204の貫通孔205内に挿入する。続いて、貫通孔205と芯材部202との間隙にガラスフリット206を充填する。そして、充填したガラスフリット206を焼成してベース基板204(貫通孔205)と芯材部202とガラスフリット206とを一体化させた後、ベース基板を破線部Hまで研磨して土台部201を除去する。以上により、図20(b)に示すような貫通電極210を形成できる。よって、貫通孔205を塞ぐとともに、圧電振動片と外部電極との安定した導電性を確保することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、貫通電極210を形成するためには、上述したように貫通孔205の形成工程や、金属ピン203の挿入工程、ガラスフリット206の充填・焼成工程、土台部201の研磨工程等、様々な工程を各基板毎に行う必要がある。この場合、貫通孔205の形成工程では、ベース基板204に貫通孔205を直接形成することが難しく、例えばプレス加工等によりベース基板204に凹部を形成した後、凹部の閉じ面(底面)側が貫通するまで研磨する必要がある。さらに、土台部201の研磨工程において、土台部201が完全に除去されるまで大幅に研磨する必要がある。
このように、従来の製造方法では、各基板毎に上述した加工を行う必要があるため、製造コストの増加に繋がる。また、土台部201や凹部閉じ面の研磨、ガラスフリット206の焼成等は、比較的時間を要する作業であり、これらの作業を基板毎に行うことで、製造効率の低下に繋がる。
【0007】
また、ガラスフリット206を焼成することで、ガラスフリット206が体積減少し、表面に凹みが発生したり、ひどい場合には貫通孔205が開いてしまったりする虞がある。さらに、ガラスフリット206はベース基板204に比べて化学的に弱く、例えば基板洗浄時に用いる洗浄液によってガラスフリット206が溶け出してしまう虞がある。これによっても、上述したようにガラスフリット206の表面に凹み等が発生する虞がある。この場合、キャビティ内の気密が損なわれる可能性があるだけでなく、凹みを覆う外部電極等に段切れが発生し、圧電振動片と外部電極との導通性が損なわれる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、製造コストの低減及び製造効率の向上を図った上で、導通性に優れたガラス基板の製造方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るガラス基板の製造方法は、ガラス基板を厚さ方向に貫通する貫通電極を有するガラス基板の製造方法であって、筒状の容器内に前記容器の軸方向に沿って、前記貫通電極となる線材を張架する線材張架工程と、前記容器内に溶融ガラスを充填する充填工程と、前記溶融ガラスを硬化させ、前記線材が一体化されたガラス体を形成する硬化工程と、前記ガラス体を前記軸方向に直交するように切断する切断工程とを有していることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、線材と溶融ガラスとが一体化されてなるガラス体を切断することで、貫通電極を有する複数枚のガラス基板を一括して形成できる。そのため、従来のように基板単体毎に貫通電極の加工を行なう必要がなく、製造コストの低減及び製造効率の向上を図ることができる。
また、ガラス体に一体化された線材を切断することで、各ガラス基板の端面に面一な貫通電極を形成できる。これにより、貫通電極を覆うように形成される電極膜との導通性を確保できる。
さらに、従来のように基板と貫通電極とを一体化させるためにガラスフリットを用いる必要がないので、ガラスフリットによる悪影響がない。すなわち、ガラスフリットの焼成による体積減少や、洗浄による溶解等がないので、ガラス基板表面の凹み等の発生を抑制できる。その結果、貫通電極を覆うように形成される電極膜に段切れが発生するのを抑制し、導通性を確保できるとともに、基板毎の製造バラツキも抑制できる。
よって、導通性に優れた貫通電極を有するガラス基板を低コストで簡単に製造できる。
【0011】
また、前記線材張架工程では、張力付与機構によって前記線材の張力を付与することを特徴としている。
この構成によれば、張力付与機構によって線材に張力を付与することで、容器内に所望の張力で線材を張架できる。これにより、溶融ガラスの充填時に線材が撓むのを防止できる。すなわち、線材が撓んだ状態でガラス体と一体化されるのを抑制して、ガラス体の所望の位置に線材を配置できる。
【0012】
また、前記容器は、カーボンを主成分とする材料により構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、カーボンはガラス材料との熱膨張係数が近い材料であるため、溶融ガラスが収縮により体積減少したとしても、溶融ガラスと容器との間に生じる歪を抑制できる。すなわち、容器内に隙間ができるのを抑制して、ガラス体を所望の形状に形成できる。また、カーボンはガラス材料との濡れ性に優れているため、容器とガラス体との離型性を向上できる。
【0013】
また、前記線材は、Fe−Ni合金からなることを特徴としている。
この構成によれば、Fe−Ni合金はガラス材料との熱膨張係数が近い材料であるため、両者の界面に大きな応力が発生しにくい。
【0014】
また、本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された第1ガラス基板及び第2ガラス基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、上記本発明のガラス基板の製造方法を使用して前記第1ガラス基板を形成する第1ガラス基板製造工程と、前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板との接合体を、前記パッケージの形成領域毎に個片化し、複数のパッケージを形成する個片化工程としている。
この構成によれば、上記本発明のガラス基板の製造方法を使用して形成された第1ガラス基板を用いることで、パッケージを低コストかつ簡単に製造できる。
また、基板と貫通電極とを一体化させるためにガラスフリットを用いる必要がないので、ガラスフリットの焼成による体積減少や、洗浄による溶解等を考慮する必要がなく、第1ガラス基板表面の凹み等の発生を抑制できる。その結果、キャビティ内の気密性及び導通性に優れたパッケージを提供できる。
【0015】
また、本発明のパッケージは、上記本発明のパッケージの製造方法を用いて製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法を用いて製造されているため、気密性及び導通性に優れたパッケージを低コストで提供できる。
【0016】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法で製造されているため、キャビティ内の気密性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性に優れたパッケージを提供できる。
【0017】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、振動特性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性に優れた圧電振動子を備えているので、特性及び信頼性に優れた製品を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るガラス基板の製造方法によれば、導通性に優れた貫通電極を有するガラス基板を低コストで簡単に製造できる。
本発明に係るパッケージ及びパッケージの製造方法によれば、気密性及び導通性に優れたパッケージを低コストで提供できる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、キャビティ内の気密性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性に優れたパッケージを提供できる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に特性及び信頼性に優れた製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。
【図2】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態を示す圧電振動片の平面図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】コンテナの側面図ある。
【図8】コンテナの断面図である。
【図9】コンテナの分解斜視図である。
【図10】コンテナを用いてベース基板用ウエハを作成する際のフローチャートである。
【図11】線材の保持方法を示すコンテナの要部断面図である。
【図12】ベース基板用ウエハ作成工程を説明するための工程図であり、コンテナの断面図である。
【図13】ベース基板用ウエハ作成工程を説明するための工程図であり、コンテナの断面図である。
【図14】ベース基板用ウエハ作成工程を説明するための工程図であり、コンテナの断面図である。
【図15】ガラス体を切断する状態を示す斜視図である。
【図16】ベース基板用ウエハの平面図である。
【図17】本発明に係る発信器の一実施形態を示す構成図である。
【図18】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図19】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図20】従来の貫通電極の製造方法を示すベース基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(ガラス基板)2及びリッド基板3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の裏面2a(図3中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0024】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対のスルーホール21,22が形成されている。スルーホール21,22は、ベース基板2の裏面2aから表面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径した断面テーパ形状をなしている。
【0025】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の裏面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の裏面3b側には、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとが形成されている。
【0026】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0027】
このように構成された圧電振動片5は、図2,図3に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の表面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の表面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0028】
そして、ベース基板2の表面2b側(リッド基板3が接合される接合面側)には、例えばAlからなる陽極接合用の接合材23が形成されている。この接合材23は、膜厚が例えば3000Å〜5000Å程度に形成され、リッド基板3の額縁領域3cに対向するようにベース基板2の外周部分に沿って形成されている。そして、接合材23とリッド基板3の額縁領域3cとが陽極接合されることで、キャビティCが真空封止されている。なお、接合材23はSi膜で形成することも可能である。また接合材23として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材を可能することも可能である。
【0029】
外部電極6,7は、ベース基板2の裏面2a(ベース基板2における接合面とは反対側の面)における長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。
【0030】
貫通電極8,9は、ベース基板2との溶着によって固定された芯材部31がスルーホール20,21を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。芯材部31は、例えば、コバールやFe−Ni合金(42アロイ)等の、熱膨張係数がベース基板2のガラス材料と近い(好ましくは同等か低め)材料により円柱状に形成された導電性の金属芯材で、両端が平坦で且つベース基板2の厚さと同じ厚さである。なお、本実施形態では、上述した材料のうち、Fe−Ni合金が好適に用いられている。これにより、ガラス材料と芯材部31との界面に大きな応力が発生しにくい。
【0031】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0032】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。図6は、ウエハ接合体の分解斜視図である。以下には、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6以下の各図に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S40以下)とを有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0033】
初めに、図5に示すように、圧電振動片作製工程を行って図1〜図4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0034】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
次に、図5,図6に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の裏面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の裏面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、裏面50aを鏡面加工する。以上により、リッド基板用ウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0035】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
次に、上述した工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。
【0036】
まず、貫通電極8,9(芯材部31)が埋め込まれたベース基板用ウエハ40を作成するウエハ作成工程を行う(S31)。ここで、本実施形態では、溶融したガラス材料(以下、溶融ガラス71という(図13参照))と、貫通電極8,9(芯材部31)となる線材72(図7参照)とを型となるコンテナ73内で一体化させることにより、貫通電極8,9を有する複数枚のベース基板用ウエハ40を一括して形成する。
【0037】
(コンテナ)
まず、本実施形態のウエハ作成工程に用いるコンテナ73について説明する。図7は、コンテナの側面図であり、図8は断面図である。また、図9はコンテナの分解斜視図である。なお、図9においては、後述する張力付与機構を省略する。
図7〜図9に示すように、コンテナ73は、熱膨張係数がガラス材料と同等の材料で、ガラス材料との離型性が良好な材料として、例えばカーボン等により構成されたものであり、円筒形状の筒状部75と、筒状部75の両端開口部76,77をそれぞれ閉塞するように設けられた蓋治具(第1蓋治具78及び第2蓋治具79)とを備えている。
【0038】
筒状部75は、断面視半円状に形成されたベース側容器81と蓋側容器82とで周方向で分割構成されたものであり、これらベース側容器81と蓋側容器82との周方向両端面同士を突き合わせた状態で組み付けられている。なお、ベース側容器81と蓋側容器82とは、図示しないクランプ機構によって組付固定される。筒状部75の内部には、後述する溶融ガラス71が充填可能に構成されており、蓋側容器82の軸方向一端側には溶融ガラス71を充填するためのガラス注入口83が、軸方向他端側には筒状部75に存在する空気を逃がす空気抜き孔84が形成されている。
【0039】
第1蓋治具78は、筒状部75の軸方向一端側の開口部76を閉塞するように設けられ、軸方向に沿って重ね合わされた円板状の内板85及び外板86により構成されている。
内板85は、断面視凸状に形成されており、外径が筒状部75の外径と同等に形成された蓋部91と、蓋部91から軸方向他端側に突出し、蓋部91よりも外径が縮小した凸部92とを備えている。蓋部91は、凸部92よりも径方向外側張り出した外フランジ部93を有し、筒状部75の軸方向一端側の端面に当接可能に構成されている。凸部92は、筒状部75の内径以下に形成され、筒状部75内に挿入可能に構成されている。また、内板85には、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔94が形成されている。各貫通孔94は、後述する線材72が挿入されるものであり、凸部92の面方向に亘ってベース基板用ウエハ40に形成される貫通電極8,9と同ピッチで形成されている。
【0040】
外板86は、内板85を間に挟んで筒状部75の軸方向反対側に配置され、外径が内板85の蓋部91と同等に形成されている。外板86には、厚さ方向に沿って貫通する複数の貫通孔95が形成されている。これら貫通孔95は、内板85の貫通孔94と同ピッチに形成され、内板85の貫通孔94から引き出された線材72が外板86の貫通孔95内に挿入されるようになっている。ここで、外板86は、図示しない付勢手段により径方向に沿って付勢されており、外板86の貫通孔95の軸心が内板85の貫通孔94の軸心に対してオフセットした状態で保持される。
【0041】
第2蓋治具79は、上述した第1蓋治具78の内板85と同形状に形成され、外径が筒状部75の外径と同等に形成された蓋部97と、蓋部97から軸方向一端側に突出し、蓋部97よりも外径が縮小した凸部98とを備えている。蓋部97は、凸部98よりも径方向外側張り出した外フランジ部99を有し、筒状部75の軸方向他端側の端面に当接可能に構成されている。また、第2蓋治具79には、上述した貫通孔94,95と同ピッチに形成された複数の貫通孔61が形成されている。
【0042】
また、第2蓋治具79の外側(軸方向他端側)には、張力付与機構62が設けられている。張力付与機構62は、第2蓋治具79から軸方向に沿って離間配置された状態で重ね合わされた2枚の板材(第1板材64及び第2板材65)と、第2蓋治具79と板材64,65との間隔を調整するためのボルト59とを備えている。
第1板材64は、筒状部75の外径と同等に形成された円板状の部材であり、厚さ方向に沿って貫通する複数の貫通孔66が形成されている。これら貫通孔66は、第2蓋治具79の貫通孔61から引き出される線材72を挿入するためのものであり、軸方向から見て第2蓋治具79の貫通孔61と重なるように形成されている。また、第1板材64の外周側には、厚さ方向に貫通する複数の雌ネジ部67が周方向に沿って等間隔に形成されている。
【0043】
第2板材65は、外径が第1板材64と同等に形成された円板状の部材であり、第1板材64の軸方向他端側に重ね合わされている。第2板材65には、厚さ方向に沿って貫通する複数の貫通孔68が形成されている。これら貫通孔68は、第1蓋材63の貫通孔66と同ピッチに形成され、第1板材64の貫通孔66から引き出された線材72が挿入されるようになっている。なお、第2板材65は、図示しない付勢手段によって径方向に沿って付勢されており、第2板材65の貫通孔68の軸心と第1板材64の貫通孔66の軸心とがオフセットした状態で保持されている。
また、第2板材65の外周側には、厚さ方向に沿って貫通する挿入孔69が第1板材64の雌ネジ部67と同ピッチで形成されている。各挿入孔69は、雌ネジ部67よりも内径が大きく形成されている。
【0044】
ボルト59は、第2板材65の各挿入孔69から挿入され、第1板材64の雌ネジ部67に螺合されている。この場合、第2板材65は、ボルト59の頭部59aと第1板材64との間で挟持される。一方で、第1板材64の雌ネジ部67からは、ボルト59のネジ部59bの先端部分が突出しており、ネジ部59の先端面が第2蓋治具79の軸方向他端側の端面に当接している。これにより、第2板材65と第2蓋治具79との間は、ネジ部59bにおける第2板材65からの突出量D(図8参照)の間隔を空けて離間配置されている。すなわち、第2板材65からのネジ部67の突出量Dを調整することで、第2蓋治具79と第2板材65との間隔を調整できるようになっている。
【0045】
図10は、上述したコンテナを用いてベース基板用ウエハを作成する際のフローチャートである。図11は、線材の保持方法を示すコンテナの要部断面図である。また、図12〜図14は、ベース基板用ウエハ作成工程を説明するための工程図であり、コンテナの断面図である。
図10に示すように、所定長さ(コンテナ73の軸長より長く)毎に切断された複数本の線材72を用意する(S200)。線材72は、後に貫通電極8,9となるものであり、コバールやFe−Ni合金(42アロイ)等、熱膨張係数がベース基板2のガラス材料と近い(好ましくは同等か低め)材料により円柱状に形成された導電性の金属材料である。
【0046】
次に、図11に示すように、各蓋治具78,79に線材72をセットする(S201)。まず、線材72の一端側をセットするためには、第1蓋治具78の外板86を付勢手段の付勢力に抗する方向に移動させて、外板86及び内板85の貫通孔94,95の軸心が同軸上に配置されるように保持した状態で、各貫通孔94,95内に線材72を挿入する。この場合、外板86の軸方向一端側の端面から線材72の端部が僅かに突出するように挿入する。各貫通孔94,95内に線材72を挿入した後、外板86を離すと、外板86は付勢手段の付勢力によって径方向に沿って移動する(図11中矢印参照)。これにより、内板85と外板86との貫通孔94,95の軸心がオフセットされ、各貫通孔94,95の内周面間に線材72が挟み込まれる。その結果、線材72の一端側を第1蓋治具78にセットできる。
【0047】
一方、線材72の他端側をセットするためには、第2蓋治具79の凸部98側から貫通孔61内に挿入し、第2蓋治具79の蓋部91から引き出された線材72を張力付与機構62にセットする。具体的には、上述した線材72の一端側のセット方法と同様に、第2板材65を付勢手段の付勢力に抗する方向に移動させて、各板材64,65の貫通孔66,68の軸心が同軸上に配置されるように保持した状態で、各貫通孔66,68内に線材72を挿入する。各貫通孔66,68内に線材72を挿入した後、第2板材65を離すと、第2板材65は付勢手段の付勢力によって径方向に沿って移動する。これにより、第1板材64と第2板材65との貫通孔66,68の軸心がオフセットされ、各貫通孔66,68の内周面間に線材72が挟み込まれる。その結果、線材72の他端側をセットでき、線材72が各蓋治具78,79間に架け渡される。
【0048】
次に、図12に示すように、各蓋治具78,79をベース側容器81にセットする(S202)。まず、ベース側容器81を軸方向が水平方向に一致するように載置し、ベース側容器81の軸方向両端側の内周縁に沿って各蓋治具78,79をそれぞれセットする。具体的には、各蓋治具78,79の凸部92,98と外フランジ部93,99との間にベース側容器81の内周縁が収容されるようにセットする。
【0049】
その後、各蓋治具78,79間に架け渡された線材72にテンションを付与する(S203)。線材72に張力を付与するためには、張力付与機構62の第2板材65の各挿入孔69にボルト59を挿入し、第1板材64の雌ネジ部67に螺合する。この際、雌ネジ部67からボルト59(ネジ部59b)の先端部分が突出するまで螺合し、ネジ部59bの先端面を第2板材65の端面に当接させる。その後、さらにボルト59を螺合することで、各板材64,65が第2板材65から離間する方向に移動し始める(図12中矢印参照)。これにより、張力付与機構62に保持された線材72が軸方向他端側に引っ張られ、線材72にテンションが付与されることになる。この場合、雌ネジ部67からのボルト59の突出量D(図8参照)を調整することで、第1板材64と第2蓋治具79との間の距離を調整できるので、線材72に作用するテンションを容易に調整できる。なお、線材72に付与するテンションとしては、各蓋治具78,79間で撓みがなく、かつ後述する溶融ガラス71の収縮に追従できる程度に調整することが好ましい。このように、張力付与機構62によって線材72の張力を調整することで、所望の張力で線材72を張架できる。これにより、後述する溶融ガラス71の充填時に線材72が撓むのを防止できる。すなわち、線材72が撓んだ状態で溶融ガラス71に一体化されるのを抑制して、所望の位置に線材72を配置できる。
【0050】
次に、図7,図8に示すように、蓋治具78,79及び張力付与機構62がセットされたベース側容器81に蓋側容器82をセットする(S204)。具体的には、各蓋治具78,79を間に挟んでベース側容器81の反対側から、蓋側容器82の軸方向両端側の内周縁が各蓋治具78,79の凸部92,98と外フランジ部93,99との間に収容されるようにセットする。そして、ベース側容器81と蓋側容器82との周方向両端面同士を突き合わせた状態で、両者をクランプ機構により固定する。これにより、円筒形状の筒状部75が形成され、筒状部75及び蓋治具78,79からなるコンテナ73が完成する。
【0051】
そして、図13に示すように、コンテナ73内に溶融ガラス71を充填する(S205)。溶融ガラス71は、ソーダ石灰ガラスを800℃〜900℃程度に加熱して液状に溶融させたものであり、この溶融ガラス71を蓋側容器82のガラス注入口83からコンテナ73内に充填する(図13中矢印G1参照)。なお、コンテナ73内に存在した空気は、蓋側容器82の空気抜き孔84から排出される(図13中矢印G2参照)。これにより、コンテナ73内に溶融ガラス71が隙間なく充填される。
【0052】
その後、コンテナ73内に充填された溶融ガラス71を冷却して硬化させる(S206)。この場合、コンテナ73及び線材72は、熱膨張係数がガラス材料と近い材料により構成されているため、冷却時に溶融ガラス71の収縮に追従するように変形する。そのため、溶融ガラス71が熱収縮により体積減少したとしても、溶融ガラス71とコンテナ73及び線材72との間に生じる歪を抑制できる。すなわち、コンテナ73内に隙間ができたり、線材72が軸方向に対して傾いたりするのを抑制できる。これにより、ガラス体58を所望の形状に形成できる。そして、溶融ガラス71を硬化させることで、ガラス材料と線材72とが一体化された円柱状のガラス体58(図14参照)が形成される。
【0053】
次に、図14に示すように、コンテナ73内からガラス体58を取り出す(S207)。具体的には、筒状部75のクランプ機構を解除し、ベース側容器81と蓋側容器82とを分割する。このとき、コンテナ73はガラス材料との濡れ性に優れたカーボンにより構成されているため、ガラス体58との離型性を向上できる。
【0054】
その後、各蓋治具78,79から線材72を抜き出す。線材72の一端側を抜き出すには、上述した蓋治具78,79へ線材72のセット工程(S202)と同様に、第1蓋治具78の外板86を付勢力に抗する方向に移動させて、外板86及び内板85の貫通孔94,95の軸心が同軸上に配置されるように保持した状態で、各貫通孔94,95内から線材72を抜き出す。
一方、線材72の他端側を抜き出すには、第2板材65を付勢手段の付勢力に抗する方向に移動させて、各板材64,65の貫通孔66,68の軸心が同軸上に配置されるように保持した状態で、各貫通孔66,68内から線材72を抜き出す。その後、第2蓋治具79の貫通孔61から線材72を抜き出す。これにより、コンテナ73からガラス体58が取り出される。
【0055】
図15は、ガラス体を切断する状態を示す斜視図である。
次に、図15に示すように、切断装置52を用いてガラス体58を所定厚み毎に切断する(S208)。なお、本実施形態の切断装置52は、ワイヤソー式の切断装置52であって、ガラス体58がセットされる図示しないステージと、ガラス体58の上方に配置された回転可能な複数のローラ53と、これらローラ53間に巻回されたワイヤ54とを備えている。なお、切断装置52はガラス体58に向けて切削液を供給する図示しない切削液手段を備えている。
【0056】
図16はベース基板用ウエハの平面図である。
ガラス体58を切断するためには、まず切削液供給手段から切削液を供給しつつ、ローラ53を回転させワイヤ54を走行させる。そして、ワイヤ54を走行させながら、ガラス体58を上昇させ、ガラス体58をワイヤ54に押圧することで、ガラス体58が軸方向に直交する面方向に沿って切断される。これにより、図16に示すように、ガラス体58が貫通電極8,9を有する複数枚のベース基板用ウエハ40に一括して分割される。
【0057】
続いて、分割されたベース基板用ウエハ40の両面を所定厚さまで研磨加工して粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みとする(S209)。
以上により、ガラス材料と貫通電極8,9とが面一な状態で一体化されてなるベース基板用ウエハ40を形成することができる(S210)。以上によりウエハ作成工程(S31)が終了する。
【0058】
次に、図6に戻り、ベース基板用ウエハ40の表面40aに接合材23を成膜し、リッド基板用ウエハ50との接合領域(ベース基板用ウエハ40におけるキャビティCの形成領域以外の領域)に接合材23が残存するようにパターニングする(S34)。その後、一対の貫通電極8,9に電気的接続された引き回し電極27,28を形成する引き回し電極形成工程を行う(S35)。このようにして、ベース基板用ウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0059】
次に、ベース基板用ウエハ作成工程(S30)で作成されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、圧電振動片作成工程(S10)で作成された圧電振動片5を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(S40)。そして、上述した各ウエハ40,50の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0060】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合材23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合材23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。そして、本実施形態のように両ウエハ40,50同士を陽極接合することで、接着剤等で両ウエハ40,50を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれ、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、両ウエハ40,50をより強固に接合することができる。
【0061】
その後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S70)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S80)。そして、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断する個片化工程(S90)を行う。
【0062】
そして、電気特性検査工程(S100)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0063】
このように、本実施形態では、貫通電極8,9となる線材72と溶融ガラス71とを一体化してガラス体58を形成し、このガラス体58を切断することで、一度に複数枚のベース基板用ウエハ40を作成する構成とした。
この構成によれば、ガラス体58を切断することで、貫通電極8,9を有する複数のベース基板用ウエハ40を一括して形成できるので、従来のように基板単体毎に貫通電極8,9の加工を行なう必要がなく、製造コストの低減及び製造効率の向上を図ることができる。導通性に優れたベース基板2を低コストで簡単に製造できる。
【0064】
また、ガラス体58に埋め込まれた線材72を切断することで、各ベース基板用ウエハ40の端面に面一な貫通電極8,9を形成できる。これにより、貫通電極8,9を覆うように形成される電極膜(例えば、外部電極6,7等)に段切れが発生するのを抑制し、貫通電極8,9の導通性を確保できる。
【0065】
さらに、基板と貫通電極とを一体化させるためにガラスフリットを用いる必要がないので、ガラスフリットによる悪影響を考慮する必要がない。すなわち、ガラスフリットの焼成による体積減少や、洗浄による溶解等を考慮する必要がないので、ベース基板用ウエハ40の表面の凹み等の発生を抑制できる。
その結果、キャビティC内の気密性を確保できる。また、外部電極6,7等に段切れが発生するのを抑制し、キャビティCの内部と外部との導通性を確保できるとともに、基板毎の製造バラツキも抑制できる。
そして、上述した製造方法により製造された圧電振動子1では、上述した製造方法を用いてベース基板2を形成することで、気密性に優れ、かつ振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を低コストで簡単に提供できる。
【0066】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図17を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図17に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0067】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0068】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な発振器100を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0069】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図18を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0070】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図18に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0071】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0072】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0073】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0074】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0075】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0076】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0077】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な携帯情報機器110を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0078】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図19を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図19に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0079】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0080】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。 続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0081】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0082】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な電波時計130を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度に時刻をカウントすることができる。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0084】
例えば、上述した実施形態では、ベース基板用ウエハ40の表面40aに接合材23を形成したが、これとは逆にリッド基板用ウエハ50の裏面50aに接合材23を形成しても構わない。この場合、成膜後にパターニングすることで、リッド基板用ウエハ50の裏面50aにおけるベース基板用ウエハ40との接合面のみに形成する構成でも構わないが、接合材23を凹部3aの内面を含む裏面50a全体に形成することで、接合材23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。
また、コンテナ73の構成については、適宜設計変更が可能である。
【0085】
また上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1…圧電振動子 2…ベース基板(ガラス基板) 5…圧電振動片(電子部品) 8,9…貫通電極 10…パッケージ(接合片) 40…ベース基板用ウエハ(第1ガラス基板) 50…リッド基板用ウエハ(第2ガラス基板) 58…ガラス体 60…ウエハ接合体(接合体) 71…溶融ガラス 72…線材 73…コンテナ(容器) 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部 C…キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の製造方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子は、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
このような圧電振動子では、ベース基板に形成された貫通孔に貫通電極を形成し、この貫通電極によってキャビティ内の圧電振動片と、キャビティ外の外部電極とを電気的に接続している(例えば、特許文献1参照)。具体的に、特許文献1では、まずベース基板に貫通孔を形成し、ベース基板を熱軟化させた状態で貫通孔内に金属ピンを打ち込む方法が記載されている。しかしながら、この方法では、金属ピンと貫通孔との間隙を完全に塞ぐのが困難であり、キャビティ内の気密性を確保できないという問題がある。また、ベース基板上の全ての貫通孔に位置決めして金属ピンを打ち込むのは煩雑である。
【0004】
そこで、近時では、貫通孔と金属ピンとの間隙にガラスフリットを充填し、このガラスフリットを焼成することで、ベース基板と金属ピンとを一体化させる技術が開発されている。この場合、図20(a)に示すように、まず平板状の土台部201と、土台部201の表面から法線方向に沿って立設される芯材部202とを有する鋲体型の金属ピン203を、ベース基板204の貫通孔205内に挿入する。続いて、貫通孔205と芯材部202との間隙にガラスフリット206を充填する。そして、充填したガラスフリット206を焼成してベース基板204(貫通孔205)と芯材部202とガラスフリット206とを一体化させた後、ベース基板を破線部Hまで研磨して土台部201を除去する。以上により、図20(b)に示すような貫通電極210を形成できる。よって、貫通孔205を塞ぐとともに、圧電振動片と外部電極との安定した導電性を確保することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、貫通電極210を形成するためには、上述したように貫通孔205の形成工程や、金属ピン203の挿入工程、ガラスフリット206の充填・焼成工程、土台部201の研磨工程等、様々な工程を各基板毎に行う必要がある。この場合、貫通孔205の形成工程では、ベース基板204に貫通孔205を直接形成することが難しく、例えばプレス加工等によりベース基板204に凹部を形成した後、凹部の閉じ面(底面)側が貫通するまで研磨する必要がある。さらに、土台部201の研磨工程において、土台部201が完全に除去されるまで大幅に研磨する必要がある。
このように、従来の製造方法では、各基板毎に上述した加工を行う必要があるため、製造コストの増加に繋がる。また、土台部201や凹部閉じ面の研磨、ガラスフリット206の焼成等は、比較的時間を要する作業であり、これらの作業を基板毎に行うことで、製造効率の低下に繋がる。
【0007】
また、ガラスフリット206を焼成することで、ガラスフリット206が体積減少し、表面に凹みが発生したり、ひどい場合には貫通孔205が開いてしまったりする虞がある。さらに、ガラスフリット206はベース基板204に比べて化学的に弱く、例えば基板洗浄時に用いる洗浄液によってガラスフリット206が溶け出してしまう虞がある。これによっても、上述したようにガラスフリット206の表面に凹み等が発生する虞がある。この場合、キャビティ内の気密が損なわれる可能性があるだけでなく、凹みを覆う外部電極等に段切れが発生し、圧電振動片と外部電極との導通性が損なわれる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、製造コストの低減及び製造効率の向上を図った上で、導通性に優れたガラス基板の製造方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るガラス基板の製造方法は、ガラス基板を厚さ方向に貫通する貫通電極を有するガラス基板の製造方法であって、筒状の容器内に前記容器の軸方向に沿って、前記貫通電極となる線材を張架する線材張架工程と、前記容器内に溶融ガラスを充填する充填工程と、前記溶融ガラスを硬化させ、前記線材が一体化されたガラス体を形成する硬化工程と、前記ガラス体を前記軸方向に直交するように切断する切断工程とを有していることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、線材と溶融ガラスとが一体化されてなるガラス体を切断することで、貫通電極を有する複数枚のガラス基板を一括して形成できる。そのため、従来のように基板単体毎に貫通電極の加工を行なう必要がなく、製造コストの低減及び製造効率の向上を図ることができる。
また、ガラス体に一体化された線材を切断することで、各ガラス基板の端面に面一な貫通電極を形成できる。これにより、貫通電極を覆うように形成される電極膜との導通性を確保できる。
さらに、従来のように基板と貫通電極とを一体化させるためにガラスフリットを用いる必要がないので、ガラスフリットによる悪影響がない。すなわち、ガラスフリットの焼成による体積減少や、洗浄による溶解等がないので、ガラス基板表面の凹み等の発生を抑制できる。その結果、貫通電極を覆うように形成される電極膜に段切れが発生するのを抑制し、導通性を確保できるとともに、基板毎の製造バラツキも抑制できる。
よって、導通性に優れた貫通電極を有するガラス基板を低コストで簡単に製造できる。
【0011】
また、前記線材張架工程では、張力付与機構によって前記線材の張力を付与することを特徴としている。
この構成によれば、張力付与機構によって線材に張力を付与することで、容器内に所望の張力で線材を張架できる。これにより、溶融ガラスの充填時に線材が撓むのを防止できる。すなわち、線材が撓んだ状態でガラス体と一体化されるのを抑制して、ガラス体の所望の位置に線材を配置できる。
【0012】
また、前記容器は、カーボンを主成分とする材料により構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、カーボンはガラス材料との熱膨張係数が近い材料であるため、溶融ガラスが収縮により体積減少したとしても、溶融ガラスと容器との間に生じる歪を抑制できる。すなわち、容器内に隙間ができるのを抑制して、ガラス体を所望の形状に形成できる。また、カーボンはガラス材料との濡れ性に優れているため、容器とガラス体との離型性を向上できる。
【0013】
また、前記線材は、Fe−Ni合金からなることを特徴としている。
この構成によれば、Fe−Ni合金はガラス材料との熱膨張係数が近い材料であるため、両者の界面に大きな応力が発生しにくい。
【0014】
また、本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された第1ガラス基板及び第2ガラス基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、上記本発明のガラス基板の製造方法を使用して前記第1ガラス基板を形成する第1ガラス基板製造工程と、前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板との接合体を、前記パッケージの形成領域毎に個片化し、複数のパッケージを形成する個片化工程としている。
この構成によれば、上記本発明のガラス基板の製造方法を使用して形成された第1ガラス基板を用いることで、パッケージを低コストかつ簡単に製造できる。
また、基板と貫通電極とを一体化させるためにガラスフリットを用いる必要がないので、ガラスフリットの焼成による体積減少や、洗浄による溶解等を考慮する必要がなく、第1ガラス基板表面の凹み等の発生を抑制できる。その結果、キャビティ内の気密性及び導通性に優れたパッケージを提供できる。
【0015】
また、本発明のパッケージは、上記本発明のパッケージの製造方法を用いて製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法を用いて製造されているため、気密性及び導通性に優れたパッケージを低コストで提供できる。
【0016】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法で製造されているため、キャビティ内の気密性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性に優れたパッケージを提供できる。
【0017】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、振動特性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性に優れた圧電振動子を備えているので、特性及び信頼性に優れた製品を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るガラス基板の製造方法によれば、導通性に優れた貫通電極を有するガラス基板を低コストで簡単に製造できる。
本発明に係るパッケージ及びパッケージの製造方法によれば、気密性及び導通性に優れたパッケージを低コストで提供できる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、キャビティ内の気密性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性に優れたパッケージを提供できる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に特性及び信頼性に優れた製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。
【図2】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態を示す圧電振動片の平面図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】コンテナの側面図ある。
【図8】コンテナの断面図である。
【図9】コンテナの分解斜視図である。
【図10】コンテナを用いてベース基板用ウエハを作成する際のフローチャートである。
【図11】線材の保持方法を示すコンテナの要部断面図である。
【図12】ベース基板用ウエハ作成工程を説明するための工程図であり、コンテナの断面図である。
【図13】ベース基板用ウエハ作成工程を説明するための工程図であり、コンテナの断面図である。
【図14】ベース基板用ウエハ作成工程を説明するための工程図であり、コンテナの断面図である。
【図15】ガラス体を切断する状態を示す斜視図である。
【図16】ベース基板用ウエハの平面図である。
【図17】本発明に係る発信器の一実施形態を示す構成図である。
【図18】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図19】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図20】従来の貫通電極の製造方法を示すベース基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(ガラス基板)2及びリッド基板3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の裏面2a(図3中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0024】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対のスルーホール21,22が形成されている。スルーホール21,22は、ベース基板2の裏面2aから表面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径した断面テーパ形状をなしている。
【0025】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の裏面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の裏面3b側には、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとが形成されている。
【0026】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0027】
このように構成された圧電振動片5は、図2,図3に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の表面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の表面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0028】
そして、ベース基板2の表面2b側(リッド基板3が接合される接合面側)には、例えばAlからなる陽極接合用の接合材23が形成されている。この接合材23は、膜厚が例えば3000Å〜5000Å程度に形成され、リッド基板3の額縁領域3cに対向するようにベース基板2の外周部分に沿って形成されている。そして、接合材23とリッド基板3の額縁領域3cとが陽極接合されることで、キャビティCが真空封止されている。なお、接合材23はSi膜で形成することも可能である。また接合材23として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材を可能することも可能である。
【0029】
外部電極6,7は、ベース基板2の裏面2a(ベース基板2における接合面とは反対側の面)における長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。
【0030】
貫通電極8,9は、ベース基板2との溶着によって固定された芯材部31がスルーホール20,21を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。芯材部31は、例えば、コバールやFe−Ni合金(42アロイ)等の、熱膨張係数がベース基板2のガラス材料と近い(好ましくは同等か低め)材料により円柱状に形成された導電性の金属芯材で、両端が平坦で且つベース基板2の厚さと同じ厚さである。なお、本実施形態では、上述した材料のうち、Fe−Ni合金が好適に用いられている。これにより、ガラス材料と芯材部31との界面に大きな応力が発生しにくい。
【0031】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0032】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。図6は、ウエハ接合体の分解斜視図である。以下には、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6以下の各図に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S40以下)とを有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0033】
初めに、図5に示すように、圧電振動片作製工程を行って図1〜図4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0034】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
次に、図5,図6に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の裏面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の裏面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、裏面50aを鏡面加工する。以上により、リッド基板用ウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0035】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
次に、上述した工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。
【0036】
まず、貫通電極8,9(芯材部31)が埋め込まれたベース基板用ウエハ40を作成するウエハ作成工程を行う(S31)。ここで、本実施形態では、溶融したガラス材料(以下、溶融ガラス71という(図13参照))と、貫通電極8,9(芯材部31)となる線材72(図7参照)とを型となるコンテナ73内で一体化させることにより、貫通電極8,9を有する複数枚のベース基板用ウエハ40を一括して形成する。
【0037】
(コンテナ)
まず、本実施形態のウエハ作成工程に用いるコンテナ73について説明する。図7は、コンテナの側面図であり、図8は断面図である。また、図9はコンテナの分解斜視図である。なお、図9においては、後述する張力付与機構を省略する。
図7〜図9に示すように、コンテナ73は、熱膨張係数がガラス材料と同等の材料で、ガラス材料との離型性が良好な材料として、例えばカーボン等により構成されたものであり、円筒形状の筒状部75と、筒状部75の両端開口部76,77をそれぞれ閉塞するように設けられた蓋治具(第1蓋治具78及び第2蓋治具79)とを備えている。
【0038】
筒状部75は、断面視半円状に形成されたベース側容器81と蓋側容器82とで周方向で分割構成されたものであり、これらベース側容器81と蓋側容器82との周方向両端面同士を突き合わせた状態で組み付けられている。なお、ベース側容器81と蓋側容器82とは、図示しないクランプ機構によって組付固定される。筒状部75の内部には、後述する溶融ガラス71が充填可能に構成されており、蓋側容器82の軸方向一端側には溶融ガラス71を充填するためのガラス注入口83が、軸方向他端側には筒状部75に存在する空気を逃がす空気抜き孔84が形成されている。
【0039】
第1蓋治具78は、筒状部75の軸方向一端側の開口部76を閉塞するように設けられ、軸方向に沿って重ね合わされた円板状の内板85及び外板86により構成されている。
内板85は、断面視凸状に形成されており、外径が筒状部75の外径と同等に形成された蓋部91と、蓋部91から軸方向他端側に突出し、蓋部91よりも外径が縮小した凸部92とを備えている。蓋部91は、凸部92よりも径方向外側張り出した外フランジ部93を有し、筒状部75の軸方向一端側の端面に当接可能に構成されている。凸部92は、筒状部75の内径以下に形成され、筒状部75内に挿入可能に構成されている。また、内板85には、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔94が形成されている。各貫通孔94は、後述する線材72が挿入されるものであり、凸部92の面方向に亘ってベース基板用ウエハ40に形成される貫通電極8,9と同ピッチで形成されている。
【0040】
外板86は、内板85を間に挟んで筒状部75の軸方向反対側に配置され、外径が内板85の蓋部91と同等に形成されている。外板86には、厚さ方向に沿って貫通する複数の貫通孔95が形成されている。これら貫通孔95は、内板85の貫通孔94と同ピッチに形成され、内板85の貫通孔94から引き出された線材72が外板86の貫通孔95内に挿入されるようになっている。ここで、外板86は、図示しない付勢手段により径方向に沿って付勢されており、外板86の貫通孔95の軸心が内板85の貫通孔94の軸心に対してオフセットした状態で保持される。
【0041】
第2蓋治具79は、上述した第1蓋治具78の内板85と同形状に形成され、外径が筒状部75の外径と同等に形成された蓋部97と、蓋部97から軸方向一端側に突出し、蓋部97よりも外径が縮小した凸部98とを備えている。蓋部97は、凸部98よりも径方向外側張り出した外フランジ部99を有し、筒状部75の軸方向他端側の端面に当接可能に構成されている。また、第2蓋治具79には、上述した貫通孔94,95と同ピッチに形成された複数の貫通孔61が形成されている。
【0042】
また、第2蓋治具79の外側(軸方向他端側)には、張力付与機構62が設けられている。張力付与機構62は、第2蓋治具79から軸方向に沿って離間配置された状態で重ね合わされた2枚の板材(第1板材64及び第2板材65)と、第2蓋治具79と板材64,65との間隔を調整するためのボルト59とを備えている。
第1板材64は、筒状部75の外径と同等に形成された円板状の部材であり、厚さ方向に沿って貫通する複数の貫通孔66が形成されている。これら貫通孔66は、第2蓋治具79の貫通孔61から引き出される線材72を挿入するためのものであり、軸方向から見て第2蓋治具79の貫通孔61と重なるように形成されている。また、第1板材64の外周側には、厚さ方向に貫通する複数の雌ネジ部67が周方向に沿って等間隔に形成されている。
【0043】
第2板材65は、外径が第1板材64と同等に形成された円板状の部材であり、第1板材64の軸方向他端側に重ね合わされている。第2板材65には、厚さ方向に沿って貫通する複数の貫通孔68が形成されている。これら貫通孔68は、第1蓋材63の貫通孔66と同ピッチに形成され、第1板材64の貫通孔66から引き出された線材72が挿入されるようになっている。なお、第2板材65は、図示しない付勢手段によって径方向に沿って付勢されており、第2板材65の貫通孔68の軸心と第1板材64の貫通孔66の軸心とがオフセットした状態で保持されている。
また、第2板材65の外周側には、厚さ方向に沿って貫通する挿入孔69が第1板材64の雌ネジ部67と同ピッチで形成されている。各挿入孔69は、雌ネジ部67よりも内径が大きく形成されている。
【0044】
ボルト59は、第2板材65の各挿入孔69から挿入され、第1板材64の雌ネジ部67に螺合されている。この場合、第2板材65は、ボルト59の頭部59aと第1板材64との間で挟持される。一方で、第1板材64の雌ネジ部67からは、ボルト59のネジ部59bの先端部分が突出しており、ネジ部59の先端面が第2蓋治具79の軸方向他端側の端面に当接している。これにより、第2板材65と第2蓋治具79との間は、ネジ部59bにおける第2板材65からの突出量D(図8参照)の間隔を空けて離間配置されている。すなわち、第2板材65からのネジ部67の突出量Dを調整することで、第2蓋治具79と第2板材65との間隔を調整できるようになっている。
【0045】
図10は、上述したコンテナを用いてベース基板用ウエハを作成する際のフローチャートである。図11は、線材の保持方法を示すコンテナの要部断面図である。また、図12〜図14は、ベース基板用ウエハ作成工程を説明するための工程図であり、コンテナの断面図である。
図10に示すように、所定長さ(コンテナ73の軸長より長く)毎に切断された複数本の線材72を用意する(S200)。線材72は、後に貫通電極8,9となるものであり、コバールやFe−Ni合金(42アロイ)等、熱膨張係数がベース基板2のガラス材料と近い(好ましくは同等か低め)材料により円柱状に形成された導電性の金属材料である。
【0046】
次に、図11に示すように、各蓋治具78,79に線材72をセットする(S201)。まず、線材72の一端側をセットするためには、第1蓋治具78の外板86を付勢手段の付勢力に抗する方向に移動させて、外板86及び内板85の貫通孔94,95の軸心が同軸上に配置されるように保持した状態で、各貫通孔94,95内に線材72を挿入する。この場合、外板86の軸方向一端側の端面から線材72の端部が僅かに突出するように挿入する。各貫通孔94,95内に線材72を挿入した後、外板86を離すと、外板86は付勢手段の付勢力によって径方向に沿って移動する(図11中矢印参照)。これにより、内板85と外板86との貫通孔94,95の軸心がオフセットされ、各貫通孔94,95の内周面間に線材72が挟み込まれる。その結果、線材72の一端側を第1蓋治具78にセットできる。
【0047】
一方、線材72の他端側をセットするためには、第2蓋治具79の凸部98側から貫通孔61内に挿入し、第2蓋治具79の蓋部91から引き出された線材72を張力付与機構62にセットする。具体的には、上述した線材72の一端側のセット方法と同様に、第2板材65を付勢手段の付勢力に抗する方向に移動させて、各板材64,65の貫通孔66,68の軸心が同軸上に配置されるように保持した状態で、各貫通孔66,68内に線材72を挿入する。各貫通孔66,68内に線材72を挿入した後、第2板材65を離すと、第2板材65は付勢手段の付勢力によって径方向に沿って移動する。これにより、第1板材64と第2板材65との貫通孔66,68の軸心がオフセットされ、各貫通孔66,68の内周面間に線材72が挟み込まれる。その結果、線材72の他端側をセットでき、線材72が各蓋治具78,79間に架け渡される。
【0048】
次に、図12に示すように、各蓋治具78,79をベース側容器81にセットする(S202)。まず、ベース側容器81を軸方向が水平方向に一致するように載置し、ベース側容器81の軸方向両端側の内周縁に沿って各蓋治具78,79をそれぞれセットする。具体的には、各蓋治具78,79の凸部92,98と外フランジ部93,99との間にベース側容器81の内周縁が収容されるようにセットする。
【0049】
その後、各蓋治具78,79間に架け渡された線材72にテンションを付与する(S203)。線材72に張力を付与するためには、張力付与機構62の第2板材65の各挿入孔69にボルト59を挿入し、第1板材64の雌ネジ部67に螺合する。この際、雌ネジ部67からボルト59(ネジ部59b)の先端部分が突出するまで螺合し、ネジ部59bの先端面を第2板材65の端面に当接させる。その後、さらにボルト59を螺合することで、各板材64,65が第2板材65から離間する方向に移動し始める(図12中矢印参照)。これにより、張力付与機構62に保持された線材72が軸方向他端側に引っ張られ、線材72にテンションが付与されることになる。この場合、雌ネジ部67からのボルト59の突出量D(図8参照)を調整することで、第1板材64と第2蓋治具79との間の距離を調整できるので、線材72に作用するテンションを容易に調整できる。なお、線材72に付与するテンションとしては、各蓋治具78,79間で撓みがなく、かつ後述する溶融ガラス71の収縮に追従できる程度に調整することが好ましい。このように、張力付与機構62によって線材72の張力を調整することで、所望の張力で線材72を張架できる。これにより、後述する溶融ガラス71の充填時に線材72が撓むのを防止できる。すなわち、線材72が撓んだ状態で溶融ガラス71に一体化されるのを抑制して、所望の位置に線材72を配置できる。
【0050】
次に、図7,図8に示すように、蓋治具78,79及び張力付与機構62がセットされたベース側容器81に蓋側容器82をセットする(S204)。具体的には、各蓋治具78,79を間に挟んでベース側容器81の反対側から、蓋側容器82の軸方向両端側の内周縁が各蓋治具78,79の凸部92,98と外フランジ部93,99との間に収容されるようにセットする。そして、ベース側容器81と蓋側容器82との周方向両端面同士を突き合わせた状態で、両者をクランプ機構により固定する。これにより、円筒形状の筒状部75が形成され、筒状部75及び蓋治具78,79からなるコンテナ73が完成する。
【0051】
そして、図13に示すように、コンテナ73内に溶融ガラス71を充填する(S205)。溶融ガラス71は、ソーダ石灰ガラスを800℃〜900℃程度に加熱して液状に溶融させたものであり、この溶融ガラス71を蓋側容器82のガラス注入口83からコンテナ73内に充填する(図13中矢印G1参照)。なお、コンテナ73内に存在した空気は、蓋側容器82の空気抜き孔84から排出される(図13中矢印G2参照)。これにより、コンテナ73内に溶融ガラス71が隙間なく充填される。
【0052】
その後、コンテナ73内に充填された溶融ガラス71を冷却して硬化させる(S206)。この場合、コンテナ73及び線材72は、熱膨張係数がガラス材料と近い材料により構成されているため、冷却時に溶融ガラス71の収縮に追従するように変形する。そのため、溶融ガラス71が熱収縮により体積減少したとしても、溶融ガラス71とコンテナ73及び線材72との間に生じる歪を抑制できる。すなわち、コンテナ73内に隙間ができたり、線材72が軸方向に対して傾いたりするのを抑制できる。これにより、ガラス体58を所望の形状に形成できる。そして、溶融ガラス71を硬化させることで、ガラス材料と線材72とが一体化された円柱状のガラス体58(図14参照)が形成される。
【0053】
次に、図14に示すように、コンテナ73内からガラス体58を取り出す(S207)。具体的には、筒状部75のクランプ機構を解除し、ベース側容器81と蓋側容器82とを分割する。このとき、コンテナ73はガラス材料との濡れ性に優れたカーボンにより構成されているため、ガラス体58との離型性を向上できる。
【0054】
その後、各蓋治具78,79から線材72を抜き出す。線材72の一端側を抜き出すには、上述した蓋治具78,79へ線材72のセット工程(S202)と同様に、第1蓋治具78の外板86を付勢力に抗する方向に移動させて、外板86及び内板85の貫通孔94,95の軸心が同軸上に配置されるように保持した状態で、各貫通孔94,95内から線材72を抜き出す。
一方、線材72の他端側を抜き出すには、第2板材65を付勢手段の付勢力に抗する方向に移動させて、各板材64,65の貫通孔66,68の軸心が同軸上に配置されるように保持した状態で、各貫通孔66,68内から線材72を抜き出す。その後、第2蓋治具79の貫通孔61から線材72を抜き出す。これにより、コンテナ73からガラス体58が取り出される。
【0055】
図15は、ガラス体を切断する状態を示す斜視図である。
次に、図15に示すように、切断装置52を用いてガラス体58を所定厚み毎に切断する(S208)。なお、本実施形態の切断装置52は、ワイヤソー式の切断装置52であって、ガラス体58がセットされる図示しないステージと、ガラス体58の上方に配置された回転可能な複数のローラ53と、これらローラ53間に巻回されたワイヤ54とを備えている。なお、切断装置52はガラス体58に向けて切削液を供給する図示しない切削液手段を備えている。
【0056】
図16はベース基板用ウエハの平面図である。
ガラス体58を切断するためには、まず切削液供給手段から切削液を供給しつつ、ローラ53を回転させワイヤ54を走行させる。そして、ワイヤ54を走行させながら、ガラス体58を上昇させ、ガラス体58をワイヤ54に押圧することで、ガラス体58が軸方向に直交する面方向に沿って切断される。これにより、図16に示すように、ガラス体58が貫通電極8,9を有する複数枚のベース基板用ウエハ40に一括して分割される。
【0057】
続いて、分割されたベース基板用ウエハ40の両面を所定厚さまで研磨加工して粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みとする(S209)。
以上により、ガラス材料と貫通電極8,9とが面一な状態で一体化されてなるベース基板用ウエハ40を形成することができる(S210)。以上によりウエハ作成工程(S31)が終了する。
【0058】
次に、図6に戻り、ベース基板用ウエハ40の表面40aに接合材23を成膜し、リッド基板用ウエハ50との接合領域(ベース基板用ウエハ40におけるキャビティCの形成領域以外の領域)に接合材23が残存するようにパターニングする(S34)。その後、一対の貫通電極8,9に電気的接続された引き回し電極27,28を形成する引き回し電極形成工程を行う(S35)。このようにして、ベース基板用ウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0059】
次に、ベース基板用ウエハ作成工程(S30)で作成されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、圧電振動片作成工程(S10)で作成された圧電振動片5を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(S40)。そして、上述した各ウエハ40,50の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0060】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合材23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合材23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。そして、本実施形態のように両ウエハ40,50同士を陽極接合することで、接着剤等で両ウエハ40,50を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれ、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、両ウエハ40,50をより強固に接合することができる。
【0061】
その後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S70)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S80)。そして、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断する個片化工程(S90)を行う。
【0062】
そして、電気特性検査工程(S100)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0063】
このように、本実施形態では、貫通電極8,9となる線材72と溶融ガラス71とを一体化してガラス体58を形成し、このガラス体58を切断することで、一度に複数枚のベース基板用ウエハ40を作成する構成とした。
この構成によれば、ガラス体58を切断することで、貫通電極8,9を有する複数のベース基板用ウエハ40を一括して形成できるので、従来のように基板単体毎に貫通電極8,9の加工を行なう必要がなく、製造コストの低減及び製造効率の向上を図ることができる。導通性に優れたベース基板2を低コストで簡単に製造できる。
【0064】
また、ガラス体58に埋め込まれた線材72を切断することで、各ベース基板用ウエハ40の端面に面一な貫通電極8,9を形成できる。これにより、貫通電極8,9を覆うように形成される電極膜(例えば、外部電極6,7等)に段切れが発生するのを抑制し、貫通電極8,9の導通性を確保できる。
【0065】
さらに、基板と貫通電極とを一体化させるためにガラスフリットを用いる必要がないので、ガラスフリットによる悪影響を考慮する必要がない。すなわち、ガラスフリットの焼成による体積減少や、洗浄による溶解等を考慮する必要がないので、ベース基板用ウエハ40の表面の凹み等の発生を抑制できる。
その結果、キャビティC内の気密性を確保できる。また、外部電極6,7等に段切れが発生するのを抑制し、キャビティCの内部と外部との導通性を確保できるとともに、基板毎の製造バラツキも抑制できる。
そして、上述した製造方法により製造された圧電振動子1では、上述した製造方法を用いてベース基板2を形成することで、気密性に優れ、かつ振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を低コストで簡単に提供できる。
【0066】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図17を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図17に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0067】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0068】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な発振器100を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0069】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図18を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0070】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図18に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0071】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0072】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0073】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0074】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0075】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0076】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0077】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な携帯情報機器110を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0078】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図19を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図19に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0079】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0080】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。 続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0081】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0082】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な電波時計130を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度に時刻をカウントすることができる。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0084】
例えば、上述した実施形態では、ベース基板用ウエハ40の表面40aに接合材23を形成したが、これとは逆にリッド基板用ウエハ50の裏面50aに接合材23を形成しても構わない。この場合、成膜後にパターニングすることで、リッド基板用ウエハ50の裏面50aにおけるベース基板用ウエハ40との接合面のみに形成する構成でも構わないが、接合材23を凹部3aの内面を含む裏面50a全体に形成することで、接合材23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。
また、コンテナ73の構成については、適宜設計変更が可能である。
【0085】
また上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1…圧電振動子 2…ベース基板(ガラス基板) 5…圧電振動片(電子部品) 8,9…貫通電極 10…パッケージ(接合片) 40…ベース基板用ウエハ(第1ガラス基板) 50…リッド基板用ウエハ(第2ガラス基板) 58…ガラス体 60…ウエハ接合体(接合体) 71…溶融ガラス 72…線材 73…コンテナ(容器) 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部 C…キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板を厚さ方向に貫通する貫通電極を有するガラス基板の製造方法であって、
筒状の容器内に前記容器の軸方向に沿って、前記貫通電極となる線材を張架する線材張架工程と、
前記容器内に溶融ガラスを充填する充填工程と、
前記溶融ガラスを硬化させ、前記線材が一体化されたガラス体を形成する硬化工程と、
前記ガラス体を前記軸方向に直交するように切断する切断工程とを有していることを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記線材張架工程では、張力付与機構によって前記線材の張力を付与することを特徴とする請求項1記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記容器は、カーボンを主成分とする材料により構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記線材は、Fe−Ni合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項5】
互いに接合された第1ガラス基板及び第2ガラス基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のガラス基板の製造方法を使用して前記第1ガラス基板を形成する第1ガラス基板製造工程と、
前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板との接合体を、前記パッケージの形成領域毎に個片化し、複数のパッケージを形成する個片化工程とを有していることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のパッケージの製造方法を用いて製造されたことを特徴とするパッケージ。
【請求項7】
請求項6記載のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
請求項7記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項7記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項7記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
ガラス基板を厚さ方向に貫通する貫通電極を有するガラス基板の製造方法であって、
筒状の容器内に前記容器の軸方向に沿って、前記貫通電極となる線材を張架する線材張架工程と、
前記容器内に溶融ガラスを充填する充填工程と、
前記溶融ガラスを硬化させ、前記線材が一体化されたガラス体を形成する硬化工程と、
前記ガラス体を前記軸方向に直交するように切断する切断工程とを有していることを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記線材張架工程では、張力付与機構によって前記線材の張力を付与することを特徴とする請求項1記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記容器は、カーボンを主成分とする材料により構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記線材は、Fe−Ni合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項5】
互いに接合された第1ガラス基板及び第2ガラス基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のガラス基板の製造方法を使用して前記第1ガラス基板を形成する第1ガラス基板製造工程と、
前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板との接合体を、前記パッケージの形成領域毎に個片化し、複数のパッケージを形成する個片化工程とを有していることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のパッケージの製造方法を用いて製造されたことを特徴とするパッケージ。
【請求項7】
請求項6記載のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
請求項7記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項7記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項7記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−199674(P2011−199674A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65133(P2010−65133)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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