説明

クリーニングの終点検出方法

【課題】 発光強度の測定位置やクリーニング条件、プラズマの変動などの要因に影響されることなく、確実にクリーニングの終点検出を行なう。
【解決手段】 成膜処理済みのウエハWをチャンバー2から搬出した後、チャンバー2内を減圧し、ガス導入口7からクリーニングガスを導入する。高周波電源30からシャワーヘッド5に高周波電力を印加し、上部電極としてのシャワーヘッド5と下部電極としてのサセプタ3との間に高周波電界を生じさせ、クリーニングガスをプラズマ化する。クリーニング中は、チャンバー2内のプラズマ中のラジカルの発光強度を分光器22によって測定し、クリーニングの進行に伴って減少するスペクトル(D)と、クリーニングの進行に伴って増加するスペクトル(I)との比D/Iを自動的に求め、チャート化することにより、クリーニングのエンドポイントを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングの終点検出方法に関し、詳細には、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)などに用いる処理チャンバー内のクリーニングを行なう際の終点検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ表面に成膜を行なうプラズマCVDプロセスにおいては、半導体ウエハ表面だけでなく、処理チャンバーの内壁面等にも膜成分が付着し、堆積物を形成する。このため、プラズマCVDプロセスに用いる処理チャンバーは、定期的にクリーニングを実施する必要がある。クリーニング方法として、クリーニングガスのプラズマを利用したプラズマクリーニングが採用されている。そして、このプラズマクリーニングでは、処理チャンバー内でプラズマ中に含まれるCOラジカル、Fラジカル、Oラジカル、Hラジカルなどのラジカルの発光強度の時間変化を測定し、これを指標としてクリーニングの終点を判断していた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭63−14421号公報(特許請求の範囲など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の方法では、発光強度を測定するための測定位置やクリーニング条件によっては、十分な発光強度が得られず、以下に述べる理由によりクリーニングの終点の正確な判定が困難になるという課題があった。
【0004】
通例、TMS(トリメチルシラン)のような有機化合物を原料としたプラズマCVDでは、低温ほど堆積速度が増える傾向があり、基板またはステージヒーター(載置台)など高温となる基板周辺部に比べて、比較的低温であるチャンバー内壁やシャワーヘッド(上部電極)への堆積量が圧倒的に多くなる。図6は、平行平板方式のプラズマCVD装置を用い、TMS/Heを流量150/800mL/minとし、上部電極への高周波電力800W、圧力約1040Pa(7.8Torr)、上下電極間距離18mmの条件で、温度を100〜300℃の範囲で変動させた場合の堆積レートを示すグラフである。この図6より、チャンバー内温度とプラズマCVDによる堆積量には明らかな相関があり、低温になるほど堆積物が多くなることがわかる。
【0005】
また、有機化合物原料を用いてLow−k膜などを成膜する際には、チャンバーへの高周波電力の投入を抑え、原料の分解を抑制することにより、膜中に原料特有の結合を取り込むようにしている。基板への成膜にあたっては、熱分解による原料成分の分解/脱離とのバランスで膜質が決定されるが、チャンバー内の低温部ではこの原料成分の分解/脱離が少ないため、大量の堆積物が形成されることになる。例えば、基板温度が約300℃程度である場合、チャンバー壁の温度は80〜90℃、上部電極の温度は基板やプラズマの熱を受けるため上昇するものの、150℃程度に過ぎず、基板温度に比べると明らかに低温である。このため、原料をチャンバー内に供給するシャワーヘッドとして機能する上部電極には、大量の堆積物が形成されることとなり、この部分のクリーニング処理を確実に行なうことがパーティクル防止や成膜再現性能を決定する上で重要になってくる。
【0006】
上記問題への対策として、例えば基板載置位置の周辺にある部材(例えば下部電極)、チャンバー内壁、上部電極など、異なる部位の堆積物を満遍なく除去するためには、クリーニングを複数のステップに分割し、各ステップで対象となる部位に適したクリーニング条件を選択する必要がある。この場合、各ステップ毎に電力、ガス流量、圧力、電極間距離(ギャップ)等の条件を変更したり、さらにクリーニング中に電源の連続出力/パルス出力を切替えたりする操作が必要となる。
ところが、クリーニング条件の変動に伴い、チャンバー内のプラズマ発光も大きく変動してしまうことから、単一元素を対象とした発光強度の経時変化をモニターして終点を把握することは極めて困難になる。つまり、プラズマの全体的な変動により発光測定器(分光器)に入る発光強度が全体的に変化すると、注目する波長の強度も変化するが、これをクリーニングが進んだことによる強度変化と誤認してしまう場合があり、正確な測定ができない。
【0007】
一方、プラズマCVDにおける生産性を維持するためにNFなどのフッ素系ガスを用いたプラズマクリーニングでは、大量の堆積物を短時間に除去するために高パワーの電力投入が必要となり、これに伴う電極自身の腐蝕やパーツダメージによる発塵なども深刻な問題となる。このような腐蝕やパーツダメージを抑制するために、リモートプラズマ方式によりチャンバー外部でプラズマ励起されたラジカルのみをチャンバー内に供給し、クリーニングする方法が一般的に行なわれている。このリモートプラズマ方式のクリーニングの場合、ラジカル発光の検出は極めて困難であり、終点検出のための何らかの対策を講ずる必要があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、発光強度の測定位置やクリーニング条件、プラズマの変動などの要因に影響されることなく、さらにはリモートプラズマ方式のクリーニングの場合にも、確実にクリーニングの終点検出が可能なクリーニングの終点検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点によれば、CVD処理容器をクリーニングするにあたり、処理容器中のラジカル発光強度を測定してクリーニングの終点を検出する終点検出方法であって、
クリーニングの進行に従い減少するラジカルの発光強度Dと、増加するラジカルの発光強度Iとの比D/Iを求め、その時間変化から終点の検出を行なうことを特徴とする、クリーニングの終点検出方法が提供される。
【0010】
上記第1の観点の終点検出方法において、前記CVDは、有機化合物を原料としたプラズマCVDであってもよい。ここで、前記有機化合物は、Siと、水素または窒素を含有し、前記プラズマCVDは構成元素にSiを含有する膜の成膜であってもよい。また、前記有機化合物は、トリメチルシランであってもよい。
【0011】
さらに、前記プラズマCVDは、構成元素にさらに水素または窒素を含む膜の成膜であってもよい。また、クリーニングガスとして、ハロゲン化合物ガスおよび酸素を含むガスを用いることもできる。ここで、前記ハロゲン化合物ガスは、NFとすることができる。また、クリーニングの進行に従い減少するラジカルが、膜の構成元素を含む原子または分子のラジカルであり、増加するラジカルが、フッ素ラジカルまたは酸素ラジカルであってもよい。さらに、前記膜の構成元素を含む原子または分子のラジカルが、水素ラジカルであってもよい。
【0012】
また、前記クリーニングはプラズマ励起によりラジカルを発生させて行なってもよい。この場合、クリーニングは、処理容器内の部位別にプラズマ励起条件を変えて行なうことができる。また、クリーニングは、外部でプラズマ励起されたラジカルを前記処理容器内に導入するリモートプラズマにより行なうこともできる。
【0013】
また、前記クリーニング中に終点検出用のプラズマ励起ステップを挿入し、終点の検出を行なうようにしてもよい。前記終点検出用のプラズマ励起ステップは、平行平板型プラズマ装置を用いプラズマを励起させて行なってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クリーニングの進行に従い減少するラジカルの発光強度Dと、増加するラジカルの発光強度Iとの比D/Iを求めることによって、クリーニングの進行具合が強調されるので、その時間変化から終点を明確に把握できるようになる。
また、発光強度比D/Iを利用することによって、プラズマの変動による全体的な発光強度の変化に影響されず、クリーニングの終点を正確に把握できる。
そして本発明によれば、リモートプラズマ方式のクリーニングにおいてさえも、クリーニング中に終点検出用のプラズマ励起ステップを挿入し、終点の検出を行なうことにより、クリーニングの終点検出を確実に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のクリーニングの終点検出方法は、CVD処理容器をクリーニングするにあたり、処理容器中のラジカル発光強度を測定してクリーニングの終点を検出する終点検出方法であって、
クリーニングの進行に従い減少するラジカルの発光強度Dと、増加するラジカルの発光強度Iとの比D/Iを求め、その時間変化から終点の検出を行なうことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の終点検出方法が適用されるCVDプロセスは、熱CVD法、プラズマCVD法などによる成膜プロセスであり、特にプラズマを利用して成膜を行なうプラズマCVD法に好適に適用できる。なお、熱CVD法に使用する処理容器に対してクリーニングを行なう場合には、終点検出のためにプラズマ生成装置を配備しておく必要がある。
【0017】
CVDプロセスによる成膜対象となる膜としては、特に限定されるものではないが、有機化合物を原料としてプラズマCVDにより形成される膜が好ましい。ここで、有機化合物としては、Siと、水素または窒素を含有する有機化合物が好ましく、例えばトリメチルシラン、ジメチルエトキシシラン、トリエチルシラザン、テトラメチルジシラザンなどを挙げることができる。
【0018】
また、成膜対象となる膜としては、膜の構成元素にSiを含有するSi系膜が好ましく、さらに水素または窒素を含む膜がより好ましい。これらの元素から生成するラジカルは発光強度が強く、クリーニングガスの構成元素(ハロゲン、酸素など)のラジカルと重なり難いため、区別しやすい点で有利である。
構成元素に水素または窒素を含むSi系膜としては、例えば、SiC系膜、SiN系膜等を挙げることができる。ここで、SiC系膜としては、例えばSiCH膜、SiOCH膜等を挙げることができる。SiN系膜としては、例えばSiCN膜、SiON膜、SiN膜等を挙げることができる。
【0019】
また、前記水素または窒素を含む膜以外の膜として、例えばSiO膜を挙げることができる。
【0020】
処理容器のクリーニング方法としては、クリーニングガスのプラズマによってクリーニングを行なうプラズマクリーニングが好ましいが、プラズマを使用せずに、熱やクリーニングガスの化学的作用等によりクリーニングを行なうプラズマレスクリーニングでもよい。
【0021】
クリーニングガスとしては、構成元素にフッ素などのハロゲン元素または酸素を含むガスを用いることが好ましく、例えば、ハロゲン化合物および/または酸素と、キャリヤーとしての不活性ガスとの混合ガスが挙げられ、好適なものとして、NF/O/He、NF/O/Ar、NF/He、NF/Ar、COF/He、COF/Ar、CF/He、CF/Ar、CF/O/He、CF/O/Ar等の混合ガスを例示することができる。
【0022】
本発明方法で、クリーニングの終点検出の指標となるD/Iは、クリーニングの進行に従い減少するラジカルの発光強度Dと、増加するラジカルの発光強度Iとの比として求められる。ここで、「クリーニングの進行に従い減少するラジカル」は、膜の構成元素を含む原子または分子のラジカルであり、「クリーニングの進行に従い増加するラジカル」は、クリーニングガスの構成元素を含む原子または分子のラジカルである。例えば、SiCH膜を成膜するCVDプロセスにおいて、処理容器のクリーニングガスとしてNF/O/Heの混合ガスのプラズマを用いてクリーニングを行なう場合であれば、「クリーニングの進行に従い減少するラジカル」には、膜成分由来の水素ラジカル(H)が該当する。処理容器内の堆積物がプラズマクリーニングによって除去されていく過程で、そこに含まれていた水素はラジカルとなる。水素ラジカルの発光強度がクリーニングの進行に伴って減少するのは、クリーニングの初期にはこのラジカルの生成が多いが、堆積物の除去が進むに従いラジカルの生成率が低下していくためであると考えられる。
【0023】
また、上記の場合、「クリーニングの進行に従い増加するラジカル」には、クリーニングガスの由来のフッ素ラジカル(F)や酸素ラジカル(O)が該当する。これらのラジカルは、クリーニング初期には堆積物との反応に消費されるため発光強度が低いが、堆積物の除去が進むとともに、消費されないラジカルの比率が高くなるため、発光強度が増加するものと考えられる。
【0024】
「クリーニングの進行に従い減少するラジカル」の発光強度Dおよび「クリーニングの進行に従い増加するラジカル」の発光強度Iは、処理容器内でプラズマを生成させ、プラズマ中の前記ラジカルの発光を、例えば分光器を用いて測定することによって検知できる。クリーニング方法がプラズマクリーニングの場合は、クリーニング中の処理容器内のラジカルの発光をそのまま測定すればよい。クリーニング方法がプラズマレスクリーニングの場合は、処理容器内に終点検出を目的とするプラズマを発生させることにより、その発光強度を測定できる。
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい形態について説明する。
図1は、本発明の実施に適したプラズマCVD装置1の概略構成を示す断面図である。このプラズマCVD装置1は、電極板が上下平行に対向した容量結合型平行平板プラズマCVD装置として構成されている。
【0026】
このプラズマCVD装置1は、例えば表面がセラミック溶射処理されたアルミニウムからなる円筒形状に成形された処理容器としてのチャンバー2を有しており、このチャンバー2は保安接地されている。前記チャンバー2内には、例えばシリコンからなり、その上に所定の膜を形成するウエハWを載置するとともに、下部電極として機能するサセプタ3が設けられている。このサセプタ3には、導電体34が埋設されており、この導電体34を通じて高周波の電力の供給を受けるように構成されている。また、サセプタ3は、支持台4により支持されており、図示しない昇降機構によって昇降可能となっている。
【0027】
サセプタ3は、その上部の中央が凸状の円板状に成形され、その上に絶縁材の間に電極が介在されてなる静電チャック(図示せず)が設けられており、この電極に直流電圧が印加されることにより、例えばクーロン力によってウエハWを静電吸着できるように構成されている。
【0028】
前記サセプタ3の上方には、このサセプタ3と平行に対向して上部電極として機能するシャワーヘッド5が設けられている。このシャワーヘッド5は、絶縁材を介してチャンバー2の上部に支持されており、サセプタ3との対向面5aには、多数の吐出孔6,6,・・・を有している。なお、ウエハW表面とシャワーヘッド5とは、所定間隔で離間され、この距離は前記昇降機構により調節可能となっている。
【0029】
前記シャワーヘッド5には、ガス導入口7が設けられており、シャワーヘッド5内部のガス供給室5bを介して前記吐出孔6まで連通している。さらに、ガス導入口7は、ガス供給管8、バルブ9を介して、成膜用ガスおよびクリーニングガスを供給するガス供給系10に接続されている。
【0030】
ガス供給系10は、成膜用ガス供給源11と、クリーニングガス供給源12を有しており、これらのガス源からの配管には、それぞれバルブ13およびマスフローコントローラー14が設けられている。本実施形態では、CVDによる成膜用ガスとして(CHSiH/He、クリーニングガスとしてNF/O/Heなどが用いられる。成膜用ガスおよびクリーニングガスは、ガス導入口7を介してシャワーヘッド5内の空間に至り、吐出孔6から吐出される。
【0031】
前記チャンバー2の側壁(サセプタ3の近傍)には、図示しない排気管が接続されており、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプによりチャンバー2内を所定の減圧雰囲気、例えば1Pa以下の所定の圧力まで真空引きできるように構成されている。なお、チャンバー2の側壁には、ウエハWの搬入出口と、この搬入出口を開閉するゲートバルブとが設けられており(いずれも図示を省略)、これらを介してウエハWが搬送されるようになっている。
【0032】
また、チャンバー2の側壁の下部には、透光性の窓20が設けられている。この窓20に隣接して受光部21が配備され、受光部21はプラズマの発光強度を測定するための分光器22と電気的に接続されている。窓20を設けた位置は、上下の電極(シャワーヘッド5とサセプタ3)から離れているため電極間で生成するプラズマの影響を受けにくく、また排気経路にもなっていないため、窓20への付着物が少なく、安定して測定を行えるという利点がある。
【0033】
上部電極として機能するシャワーヘッド5には、高周波電源30が接続されており、その給電線には整合器31が介在されている。この高周波電源30は、例えば13.56MHzの周波数の高周波電力をシャワーヘッド5に供給し、上部電極であるシャワーヘッド5と下部電極であるサセプタ3との間にプラズマ形成用の高周波電界を形成する。また、シャワーヘッド5には、図示しないローパスフィルター(LPF)が接続されている。
【0034】
下部電極として機能するサセプタ3には、高周波電源32が接続されており、その給電線には、整合器33が介在されている。この高周波電源32は、例えば2.0MHzの周波数の高周波電力を下部電極であるサセプタ3に供給できるものである。また、このサセプタ3には、図示しないハイパスフィルター(HPF)が接続されている。
【0035】
以上の構成のプラズマCVD装置1において、ウエハWの表面に成膜を行なう場合には、まず、ウエハWをサセプタ3上に載置し、図示しない静電チャックにより吸着、静置する。次に、図示しない排気装置により、チャンバー内を所定の真空度まで排気する。支持台4は、図示しない昇降機構によって上昇し、ウエハWを処理位置に置く。この状態で、サセプタ3を所定の温度に制御するとともに、図示しない排気装置によりチャンバー2内の排気を行ない、所定の高真空状態とする。
【0036】
その後、成膜用ガス供給源11から成膜用ガスが所定の流量に制御されてチャンバー2内に供給される。シャワーヘッド5に供給された成膜用ガスは、吐出孔6からウエハWに向けて均一に吐出される。そして、高周波電源30からシャワーヘッド5に、例えば13.56MHz程度の高周波電力を印加し、これにより、上部電極としてのシャワーヘッド5と下部電極としてのサセプタ3との間に高周波電界を生じさせ、成膜用ガスをプラズマ化する。このプラズマは、シャワーヘッド5に印加される高周波電力よりも低周波の電力が印加されるサセプタ3付近に引き込まれる。そして引き込まれたプラズマによってウエハW表面での化学反応が生じ、ウエハWの表面にSiCH等の膜が形成される。
【0037】
次に、プラズマCVD装置1におけるチャンバー2内のクリーニングについて述べる。チャンバー2のクリーニングに際しては、成膜済みのウエハWをチャンバー2から搬出した後、チャンバー2内を減圧し、ガス導入口7からクリーニングガスを導入する。そして、高周波電源30からシャワーヘッド5に例えば13.56MHz程度の高周波電力を印加し、これにより、上部電極としてのシャワーヘッド5と下部電極としてのサセプタ3との間に高周波電界を生じさせ、上記クリーニングガスをプラズマ化する。クリーニングガスのプラズマは、チャンバー2の内壁面等に付着した堆積物と反応し、これらを除去する。
【0038】
クリーニングは、複数のステップに分割し、各ステップで対象とする部位に適したクリーニング条件を選択して実施することが好ましい。例えば、下部電極であるサセプタ3、チャンバー2の内壁、上部電極であるシャワーヘッド5など、堆積物の量が異なる部位について、それぞれ満遍なくクリーニングを行なうため、各ステップ毎に電力、ガス流量、圧力、電極間距離(ギャップ)等の条件を変更したり、さらにクリーニング中に電源出力を連続からパルス、あるいはパルスから連続に切替えたりすることが好ましい。
【0039】
クリーニング中は、チャンバー2内のプラズマ中のラジカルの発光強度を分光器22によって測定する。分光器22では、受光部21で検知したプラズマの発光をスペクトルに分ける。分光器22により測定されるラジカルの発光スペクトルの中から、クリーニングの進行に伴って減少するスペクトル(D)と、クリーニングの進行に伴って増加するスペクトル(I)との比D/Iを自動的に求め、チャート化することにより、クリーニングの終点を検出することができる。D/I比を指標とすることにより、チャートの変化が少なくなり、安定化した時点を以てクリーニングの終点を判定することができる。この終点の判定は、例えば、D/I比を示すチャートの接線の傾きを微分により求めることにより行なってもよい。
【0040】
クリーニング対象部位に応じ条件を変えて複数のクリーニングステップを実施する場合、各ステップ毎にD/I比を求めることによって、クリーニング対象部位のクリーニングの進行程度を正確に把握することができる。D/I比を算出することにより、クリーニングステップごとに異なるクリーニング条件の変動による影響を低減できるためである。
【0041】
プラズマCVD装置1のクリーニングに際しては、上部電極などの腐蝕/パーツダメージを抑制するために、装置外部で別途プラズマを生成させ、励起されたラジカルをチャンバー2内に導入してクリーニングを行なうリモートプラズマ方式のクリーニングも可能である。この場合、ラジカルの発光検出が困難であるため、クリーニングの終点を検出する目的で、クリーニング中に終点検出用のプラズマ励起ステップを挿入し、終点の検出を行なうようにすることができる。ここで、終点検出用のプラズマ励起ステップでは、図1に示す平行平板型プラズマCVD装置1で、クリーニング中に1乃至数回、好ましくは一定時間毎に終点検出用プラズマを立ち上げる。この際のプラズマ条件は、ラジカルの発光を受光部21で検知し分光器22により測定できればよく、例えば、シャワーヘッド5に250W、下部電極としてのサセプタ3に0Wの高周波電力を供給し、NF/Heの流量220/1000mL/min、圧力65Pa、上下部電極間ギャップ26mmの条件に設定することができる。
【0042】
また、熱やクリーニングガスの化学的作用によってクリーニングを行なうプラズマレスクリーニングの場合も、上記リモートプラズマ方式の場合と同様の条件で、クリーニング中に終点検出用のプラズマ励起ステップを挿入し、終点の検出を行なうことができる。
【0043】
試験例1
図1のプラズマCVD装置1を用いて、ウエハWにSiCH膜を成膜した後のチャンバー2について、プラズマクリーニングを実施した。上部電極としてのシャワーヘッド5に600W、下部電極としてのサセプタ3に0Wの高周波電力を供給し、クリーニングガスとしてNF/O/Heを流量220/110/1000mL/minで用い、圧力65Pa、上下部電極間ギャップ26mmの条件でプラズマを生成させ、チャンバークリーニングを行なった。
【0044】
クリーニングの間、分光器22を用い、チャンバー内のプラズマ中に含まれるフッ素ラジカル(F)、酸素ラジカル(O)および水素ラジカル(H)の発光強度を継続して測定した。ここで、Hのスペクトル(波長656nm)は、クリーニングの進行に伴って減少するスペクトル(D)であり、Fのスペクトル(波長704nm)およびOのスペクトル(波長777nm)は、クリーニングの進行に伴って増加するスペクトル(I)である。これらの測定結果を元にD/I比(H/F、およびH/O)を求め、それぞれチャート化した。その結果を図2に示す。
また、比較のため、H、FおよびOの各スペクトルをそのままチャート化した結果を図3に示す。
【0045】
図2と図3との比較から、クリーニングの進行に伴って減少するスペクトル(D)と、クリーニングの進行に伴って増加するスペクトル(I)との比D/Iを求めることにより、発光強度の変化が強調され、かつ二つの波長の変化が反映されるため、より正確にエンドポイントを判断できることが示された。
【0046】
試験例2
クリーニングの条件として、高周波電力の供給を上部電極としてのシャワーヘッド5に400W、下部電極としてのサセプタ3に60Wとし、クリーニングガスとしてNF/O/Heを流量563/187/1000mL/minで用い、圧力65Pa、上下部電極間ギャップ22mmに変えた以外は上記と同様にしてクリーニングを実施し、チャンバー内のプラズマの発光強度を測定し、D/I比(H/F、およびH/O)を求め、それぞれチャート化した。その結果を図4に示す。
【0047】
また、比較のため、H、FおよびOの各スペクトルをそのままチャート化した結果を図5に示す。
【0048】
図4と図5との比較から、H、FおよびOの発光スペクトルをそのままチャート化しただけでは、図5に示すように、エンドポイントの判定が困難であるが、クリーニングの進行に伴って減少するスペクトル(D)と、クリーニングの進行に伴って増加するスペクトル(I)との比D/Iを求めることにより、発光強度の変化が強調され、かつ二つの波長の変化が反映されるため、より正確にエンドポイントを判断できることが示された。
【0049】
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明は上記実施形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、プラズマCVD装置のクリーニングを例に挙げて述べたが、クリーニングの終点検出にプラズマを利用できる装置であれば、CVD成膜やクリーニングにはプラズマを使用しなくてもよい。つまり、クリーニング対象は、プラズマを用いない熱CVD装置の処理容器等であってもよい。
【0050】
また、プラズマCVD装置としては、平行平板型のプラズマCVD装置に限らず、誘導結合方式(Inductive Coupling Plasma;ICP)を採用したプラズマCVD装置であっても、同様に本発明を適用可能である。さらに、リモートプラズマ方式のプラズマCVD装置であっても、クリーニングの終点検出の為に処理容器内でプラズマを発生させ得る機構を備えたものであれば、同様に本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、プラズマCVD装置、熱CVD装置等のCVD装置に用いる処理容器内のクリーニングに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明方法の実施に適したプラズマCVD装置の概略を示す断面図。
【図2】試験例1における本発明方法によるラジカルの発光強度比D/Iのチャートを示す図面。
【図3】試験例1における比較方法によるラジカルの発光強度のチャートを示す図面。
【図4】試験例2における本発明方法によるラジカルの発光強度比D/Iのチャートを示す図面。
【図5】試験例2における比較方法によるラジカルの発光強度のチャートを示す図面。
【図6】プラズマCVDにおける温度と堆積レートとの関係を示すグラフ図面。
【符号の説明】
【0053】
1:プラズマCVD装置
2:チャンバー
3:サセプタ
4:支持台
5:シャワーヘッド
6:吐出孔
7:ガス導入口
8:ガス供給管
9:バルブ
10:ガス供給系
11:成膜用ガス供給源
12:クリーニングガス供給源
13:バルブ
14:マスフローコントローラー
20:窓
21:受光部
22:分光器
30:高周波電源
31:整合器
32:高周波電源
33:整合器
34:導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CVD処理容器をクリーニングするにあたり、処理容器中のラジカル発光強度を測定してクリーニングの終点を検出する終点検出方法であって、
クリーニングの進行に従い減少するラジカルの発光強度Dと、増加するラジカルの発光強度Iとの比D/Iを求め、その時間変化から終点の検出を行なうことを特徴とする、クリーニングの終点検出方法。
【請求項2】
前記CVDは、有機化合物を原料としたプラズマCVDであることを特徴とする、請求項1に記載の終点検出方法。
【請求項3】
前記有機化合物は、Siと、水素または窒素を含有し、前記プラズマCVDは構成元素にSiを含有する膜の成膜であることを特徴とする、請求項2に記載の終点検出方法。
【請求項4】
前記有機化合物は、トリメチルシランであることを特徴とする、請求項3に記載の終点検出方法。
【請求項5】
前記プラズマCVDは、構成元素にさらに水素または窒素を含む膜の成膜であることを特徴とする、請求項3に記載の終点検出方法。
【請求項6】
クリーニングガスとして、ハロゲン化合物ガスおよび酸素を含むガスを用いることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の終点検出方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化合物ガスは、NFであることを特徴とする請求項6に記載の終点検出方法。
【請求項8】
クリーニングの進行に従い減少するラジカルが、膜の構成元素を含む原子または分子のラジカルであり、増加するラジカルが、フッ素ラジカルまたは酸素ラジカルであることを特徴とする、請求項7に記載の終点検出方法。
【請求項9】
前記膜の構成元素を含む原子または分子のラジカルが、水素ラジカルであることを特徴とする、請求項8に記載の終点検出方法。
【請求項10】
前記クリーニングは、プラズマ励起によりラジカルを発生させて行なうことを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の終点検出方法。
【請求項11】
前記クリーニングを、処理容器内の部位別にプラズマ励起条件を変えて行なうことを特徴とする、請求項10に記載の終点検出方法。
【請求項12】
前記クリーニングを、外部でプラズマ励起されたラジカルを前記処理容器内に導入するリモートプラズマにより行なうことを特徴とする、請求項10に記載の終点検出方法。
【請求項13】
前記クリーニング中に終点検出用のプラズマ励起ステップを挿入し、終点の検出を行なうことを特徴とする、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の終点検出方法。
【請求項14】
前記終点検出用のプラズマ励起ステップは、平行平板型プラズマ装置を用いプラズマを励起させて行なうことを特徴とする、請求項13に記載の終点検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−86325(P2006−86325A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269364(P2004−269364)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】