説明

ゲート駆動回路およびそれを用いたインバータ回路

【課題】双方向スイッチは、オン抵抗を下げるためにゲートの閾値電圧が低くする必要がある。閾値電圧を下げた場合、外来ノイズやスイッチング時のノイズ等によりゲート電位が振られ、誤動作が発生し、短絡故障などを起こす可能性があるため、そのような場合でも、冗長な動作が得られるよう基準電位を負電圧として電圧偏差を確保するような回路構成とし、誤動作などによる短絡故障を未然に防止することを目的とする。
【解決手段】第一ゲート端子2、第二ゲート端子3を各オンオフすることで4つの動作モードを有する双方向スイッチ1を直列接続したハーフブリッジ回路に適用するゲート駆動回路であり、第一ゲート端子2あるいは第二ゲート端子3のオン電圧とオフ電圧との偏差を確保する最適電圧生成部を備え、ゲート閾値電圧を下げてオン抵抗を下げ、ノイズが重畳した際であっても、不要なターンオンあるいはターンオフを回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート信号に制御により4つの状態を有する双方向スイッチを直列接続したハーフブリッジ回路を構成した際のゲート駆動回路およびそれを用いたインバータ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の普及がさらに拡大傾向にあるが、同時に電子機器の消費電力増加、引いては地球温暖化などが発生しており、社会的な問題と認識されている。このような社会的背景から、電子機器の低消費電力化の要求も高くなっており、根幹となる電源回路、あるいは電子機器の主たる機能を実現するためのアクチュエータなど待機電力、運転のための電力の何れの電力消費についても技術革新による消費削減が期待されている。
【0003】
従来、この種の低消費電力化のための技術としては、使用する電圧に応じて、適宜半導体デバイスをMOSFETあるいはIGBTの使い分ける、あるいは新しい半導体デバイスとして、双方向性スイッチを利用した電力変換回路が提案されている。そういった背景のもと、双方向性スイッチを利用した電力変換回路におけるゲート駆動回路では、駆動のための電源を小型化するために種々の電源回路が提案されている。
【0004】
以下、そのゲート駆動回路について、特許文献1を一例として説明する。
【0005】
図9に示すように、特許文献1における電力変換装置に適用したゲート駆動回路では、各スイッチング素子T1〜T15のスイッチングに応じて、電流経路が形成され、コンデンサC1〜C12に充電することが示されている。具体的には、コンデンサC1、C3、C5、C7、C9、C11はスイッチング素子T5、T10、T15が各オンした際に電源EdrvからダイオードD1、D3、D5、D7、D9、D11を介して充電することになる。また、コンデンサC2、C4、C6、C8、C10、C12は、スイッチング素子T2、T4、T7、T9、T12、T14が各オンした際に、コンデンサC1、C3、C5、C7、C9、C11からダイオードD2、D4、D6、D8、D10、D12を介して充電することになる。
【0006】
また、特許文献1以外では、各双方向スイッチの各ゲート端子に対して、絶縁電源を形成して駆動電源を供給するものや、ブートストラップ回路を構成し、直流部の電圧を基準としてゲート端子を駆動するゲート端子のみチャージポンプ回路を採用して駆動するものなどが提案されている。
【特許文献1】特開2006−246617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の電力変換回路のゲート駆動回路では、スイッチング素子のゲート駆動による消費と充電とのバランスが崩れ、ゲート電源部の電圧が変動し、その際にスイッチング素子の特性が変化したことによる出力リプルの増大やスイッチング素子の損失増加につながることになるという課題があった。また、ブートストラップ回路のコンデンサから逆方向のスイッチング素子の駆動用コンデンサを充電する際には、ダイオードを経由して直接接続された構成であり、急峻な充電電流が流れ、スイッチング素子のゲート端子を揺さぶり意図しないターンオンを発生させ、短絡故障を発生させる、あるいは外部への雑音障害に影響を及ぼすという課題があった。
【0008】
また、特許文献1以外の絶縁電源を採用した駆動電源や、ブートストラップ回路とチャージポンプ回路を組み合わせた構成では、回路規模が大きく電子部品の点数増加によるプリント配線板の大型化など、装置全体が大型化するという課題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ゲート電源部の電圧変動の抑制と、ブートストラップ回路のコンデンサから逆方向のスイッチング素子の駆動用コンデンサへのラッシュ電流を緩和と、回路構成の簡略化では唯一の制御電源で構成するもので、低コストかつ小型軽量のゲート駆動回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のゲート駆動回路は、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有した双方向スイッチに適用するゲート駆動回路であって、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオン電圧とオフ電圧との偏差を確保する最適電圧生成部を備える構成としたものである。
【0011】
この手段により、第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオン電圧を低下させて、オン抵抗を下げることができ、第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子にノイズが重畳した際であっても、不要なターンオンあるいはターンオフを回避することができることとなる。
【0012】
また、最適電圧生成部は、第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオンする際に、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子に正の電圧を印加する正電圧印加回路と、オフする際に、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備える構成としたものである。
【0013】
この手段により、第一ゲート端子とドレイン端子間、第二ゲート端子とソース端子間のオン電圧とオフ電圧の偏差の確保が可能となり、内外のノイズに対する耐性を向上することができ、また各オン電圧を下げることにより、ドレイン端子とソース端子間のオン抵抗を下げることができるため、低損失に双方向スイッチを駆動することができることとなる。
【0014】
さらに、負電圧印加回路は、正電圧印加回路と電源を共用する構成としたものである。
【0015】
この手段により、負電圧印加回路を個別に構成する必要がなく、より低コストな回路とすることができることとなる。
【0016】
また、負電圧印加回路は、正電圧印加回路からの逆流を防止する逆流防止部を介して接続するような構成としたものである。
【0017】
この手段により、正電圧印加回路、負電圧印加回路の各電圧の安定化を図ることができ、誤動作の防止、ゲート駆動のオン抵抗の変動抑制を可能とすることができることとなる。
【0018】
さらに、負電圧印加回路は、定電圧ダイオードとコンデンサの並列回路を有した安定化回路で電圧を安定化するような構成としたものである。
【0019】
この手段により、汎用的な部品構成でかつ受動部品の組合せのため、より簡単な構成で低コストかつ小型化を図ることができることとなる。
【0020】
また、インバータ回路に第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオン電圧とオフ電圧との偏差を確保する最適電圧生成部を備えたゲート駆動回路を備える構成としたものである。
【0021】
この手段により、インバータに誘導負荷が接続された場合であっても、オン電圧とオフ電圧との偏差が確保できるため、より安定した起動、運転を行なうことができることとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有した双方向スイッチに適用するゲート駆動回路であって、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオン電圧とオフ電圧との偏差を確保する最適電圧生成部を備える構成とすることで、第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオン電圧を低下させて、オン抵抗を下げることができ、第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子にノイズが重畳した際であっても、不要なターンオンあるいはターンオフを回避することができるゲート駆動回路が提供できる。
【0023】
また、最適電圧生成部は、第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオンする際に、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子に正の電圧を印加する正電圧印加回路と、オフする際に、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備える構成とすることで、第一ゲート端子とドレイン端子間、第二ゲート端子とソース端子間のオン電圧とオフ電圧の偏差の確保が可能となり、内外のノイズに対する耐性を向上することができ、また各オン電圧を下げることにより、ドレイン端子とソース端子間のオン抵抗を下げることができるため、低損失に双方向スイッチを駆動することができるゲート駆動回路が提供できる。
【0024】
さらに、負電圧印加回路は、正電圧印加回路と電源を共用する構成とすることで、負電圧印加回路を個別に構成する必要がなく、より低コストな回路とすることができるゲート駆動回路が提供できる。
【0025】
また、負電圧印加回路は、正電圧印加回路からの逆流を防止する逆流防止部を介して接続するような構成とすることで、正電圧印加回路、負電圧印加回路の各電圧の安定化を図ることができ、誤動作の防止、ゲート駆動のオン抵抗の変動抑制を可能とすることができるゲート駆動回路が提供できる。
【0026】
さらに、負電圧印加回路は、定電圧ダイオードとコンデンサの並列回路を有した安定化回路で電圧を安定化するような構成とすることで、汎用的な部品構成でかつ受動部品の組合せのため、より簡単な構成で低コストかつ小型化を図ることができるゲート駆動回路が提供できる。
【0027】
また、インバータ回路に第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオン電圧とオフ電圧との偏差を確保する最適電圧生成部を備えたゲート駆動回路を備える構成とすることで、インバータに誘導負荷が接続された場合であっても、オン電圧とオフ電圧との偏差が確保できるため、より安定した起動、運転を行なうことができるインバータ回路が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の請求項1記載の発明は、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有した双方向スイッチに適用するゲート駆動回路であって、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオン電圧とオフ電圧との偏差を確保する最適電圧生成部を備える構成としたものであり、第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオン電圧を低下させて、オン抵抗を下げることができ、第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子にノイズが重畳した際であっても、不要なターンオンあるいはターンオフを回避することができるという作用を有する。
【0029】
また、最適電圧生成部は、第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオンする際に、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子に正の電圧を印加する正電圧印加回路と、オフする際に、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備える構成としたものであり、第一ゲート端子とドレイン端子間、第二ゲート端子とソース端子間のオン電圧とオフ電圧の偏差の確保が可能となり、内外のノイズに対する耐性を向上することができ、また各オン電圧を下げることにより、ドレイン端子とソース端子間のオン抵抗を下げることができるため、低損失に双方向スイッチを駆動することができるという作用を有する。
【0030】
さらに、負電圧印加回路は、正電圧印加回路と電源を共用する構成としたものであり、負電圧印加回路を個別に構成する必要がなく、より低コストな回路とすることができるという作用を有する。
【0031】
また、負電圧印加回路は、正電圧印加回路からの逆流を防止する逆流防止部を介して接続するような構成としたものであり、正電圧印加回路、負電圧印加回路の各電圧の安定化を図ることができ、誤動作の防止、ゲート駆動のオン抵抗の変動抑制を可能とすることができるという作用を有する。
【0032】
さらに、負電圧印加回路は、定電圧ダイオードとコンデンサの並列回路を有した安定化回路で電圧を安定化するような構成としたものであり、汎用的な部品構成でかつ受動部品の組合せのため、より簡単な構成で低コストかつ小型化を図ることができるという作用を有する。
【0033】
また、インバータ回路に第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオン電圧とオフ電圧との偏差を確保する最適電圧生成部を備えたゲート駆動回路を備える構成としたものであり、インバータに誘導負荷が接続された場合であっても、オン電圧とオフ電圧との偏差が確保できるため、より安定した起動、運転を行なうことができるという作用を有する。
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0035】
(実施の形態1)
まずは、双方向スイッチ1について、図1を参照しながら構成について説明する。図1に示すように、双方向スイッチ1は、第一ゲート端子2と第二ゲート端子3とドレイン端子4とソース端子5により構成されている。双方向スイッチ1は、シリコン(Si)からなる基板6の上に厚さが10nm窒化アルミニウム(AlN)と厚さが10nmの窒化ガリウム(GaN)とが交互に積層されてなる厚さが1μmのバッファ層7が形成され、その上に半導体層積層体8が形成されている。半導体層積層体8は、第1の半導体層とこの第1の半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の半導体層とが基板側から順次積層されている。第1の半導体層は、厚さが2μmのGaN(アンドープの窒化ガリウム)層9であり、第2の半導体層は、厚さが20nmのn型のAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)層10である。GaN層9のAlGaN層10とのヘテロ界面近傍には、自発分極及びピエゾ分極による電荷が生じる。これにより、シートキャリア濃度が1×1013cm―2以上で且つ移動度が1000cm2V/sec以上の2次元電子ガス(2DEG)層であるチャネル領域が生成されている。半導体層積層体8の上には、互いに間隔をおいて第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとが形成されている。第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bは、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)とが積層されており、チャネル領域とオーミック接合を形成している。また、コンタクト抵抗を低減するために、AlGaN層10の一部を除去すると共にGaN層9を40nm程度掘り下げて、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11BがAlGaN層10とGaN層9との界面に接するように形成した例を示している。なお、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bは、AlGaN層10の上に形成してもよい。n型のAlGaN層10の上における第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとの間の領域には、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bが互いに間隔をおいて選択的に形成されている。第1のp型半導体層12Aの上には第1のゲート電極13Aが形成され、第2のp型半導体層12Bの上には第2のゲート電極13Bが形成されている。第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bは、それぞれパラジウム(Pd)と金(Au)とが積層されており、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bとオーミック接触している。AlGaN層10及び第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bを覆うように窒化シリコン(SiN)からなる保護膜14が形成されている。保護膜14を形成することで、いわゆる電流コラプスの原因となる欠陥を保障し、電流コラプスを改善することが可能となる。第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bは、それぞれ厚さが300nmで、マグネシウム(Mg)がドープされたp型のGaNからなる。第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bと、AlGaN層10とによりPN接合がそれぞれ形成される。これにより、第1のオーミック電極11Aと第1のゲート電極13Aとの間の電圧が例えば0Vでは、第1のp型GaN層からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができ、同様に、第2のオーミック電極11Bと第2のゲート電極13Bとの間の電圧が例えば0V以下のときには、第2のp型GaN層からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができ、いわゆるノーマリーオフ動作をする半導体素子を実現している。第1のオーミック電極11Aの電位をV1、第1のゲート電極13Aの電位をV2、第2のゲート電極13Bの電位をV3、第2のオーミック電極11Bの電位をV4とする。この場合において、V2がV1より1.5V以上高ければ、第1のp型半導体層12Aからチャネル領域中に広がる空乏層が縮小するため、チャネル領域に電流を流すことができる。同様にV3がV4より1.5V以上高ければ、第2のp型半導体層12Bからチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができる。つまり、第1のゲート電極13Aのいわゆる閾値電圧及び第2のゲート電極13Bのいわゆる閾値電圧は共に1.5Vである。以下においては、第1のゲート電極13Aの下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第1のゲート電極13Aの閾値電圧を第1の閾値電圧とし、第2のゲート電極13Bの下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第2のゲート電極13Bの閾値電圧を第2の閾値電圧とする。また、第1のp型半導体層12Aと第2のp型半導体層12Bとの間の距離は、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bに印加される最大電圧に耐えられるように構成する。第1のオーミック電極11Aと第1のゲート電極13Aとの間にゲート駆動信号(すなわち、第一ゲート端子2への制御信号)を入力するようになっている。第2のオーミック電極11Bと第2のゲート電極13Bとの間も同様にゲート駆動信号(すなわち、第二ゲート端子3への制御信号)を入力するようになっている。なお、ソース端子5は第1のオーミック電極11Aに接続され、ドレイン端子4は第2のオーミック電極11Bに接続され、第一ゲート端子2は第1のゲート電極13Aに接続され、第二ゲート端子3は第2のゲート電極13Bに接続されている。
【0036】
次に、双方向スイッチ1の動作について説明する。説明のため、第1のオーミック電極11Aの電位を0Vとし、第一ゲート端子2に印加する電圧をVg1、第二ゲート端子3に印加する電圧をVg2、第2のオーミック電極11Bと第1のオーミック電極11Aとの間の電圧をVs2s1、第2のオーミック電極11Bと第1のオーミック電極11Aとの間に流れる電流をIs2s1とする。
【0037】
V4がV1よりも高い場合、例えば、V4が+100Vで、V1が0Vの場合において、第一ゲート端子2と第二ゲート端子3の入力電圧であるVg1及びVg2をそれぞれ第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧以下の電圧、例えば0Vとする。これにより、第1のp型半導体層12Aから広がる空乏層が、チャネル領域中を第2のp型GaN層の方向へ向けて広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができる。従って、V4が正の高電圧であっても、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aへ流れる電流を遮断する遮断状態を実現できる。一方、V4がV1よりも低い場合、例えばV4が−100Vで、V1が0Vの場合においても、第2のp型半導体層12Bから広がる空乏層が、チャネル領域中を第1のp型半導体層12Aの方向へ向けて広がり、チャネルに流れる電流を遮断することができる。このため、第2のオーミック電極11Bに負の高電圧が印加されている場合においても、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bへ流れる電流を遮断することができる。すなわち、双方向スイッチ1の双方向の電流を遮断することが可能となる。
【0038】
以上のような構造及び動作において、耐圧を確保するためのチャネル領域を第1のゲート電極13Aと第2のゲート電極13Bとが共有する。この素子は、1素子分のチャネル領域の面積で双方向スイッチ1が実現可能であり、双方向スイッチ1全体を考えると、2つのダイオードと2つのノーマリーオフ型のAlGaN/GaN−HFETとを用いた場合と比べてチップ面積をより少なくすることができ、双方向スイッチ1の低コスト化及び小型化が可能となる。
【0039】
次に、第一ゲート端子2、第二ゲート端子3の入力電圧であるVg1及びVg2が、それぞれ第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧よりも高い電圧、例えば5Vの場合には、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bに印加される電圧は、共に閾値電圧よりも高くなる。従って、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bからチャネル領域に空乏層が広がらないため、チャネル領域は第1のゲート電極13Aの下側においても、第2のゲート電極13Bの下側においてもピンチオフされない。その結果、第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとの間に双方向に電流が流れる導通状態を実現できる。
【0040】
次に、Vg1を第1の閾値電圧よりも高い電圧とし、Vg2を第2の閾値電圧以下とした場合の動作について説明する。第一ゲート端子2、第二ゲート端子3を備えた双方向スイッチ1を等価回路で表すと図2(a)に示すように第1のトランジスタ15と第2のトランジスタ16とが直列に接続された回路とみなすことができる。この場合、第1のトランジスタ15のソース(S)が第1のオーミック電極11A、第1のトランジスタ15のゲート(G)が第1のゲート電極13Aに対応し、第2のトランジスタ16のソース(S)が第2のオーミック電極11B、第2のトランジスタ16のゲート(G)が第2のゲート電極13Bに対応する。このような回路において、例えば、Vg1を5V、Vg2を0Vとした場合、Vg2が0Vであるということは第2のトランジスタ16のゲートとソースが短絡されている状態と等しいため、双方向スイッチ1は図2(b)に示すような回路とみなすことができる。
【0041】
さらに、図2(b)に示す第2のトランジスタ16のソース(S)をA端子、ドレイン(D)をB端子、ゲート(G)をC端子として説明を行う。図に示すB端子の電位がA端子の電位よりも高い場合には、A端子がソースでB端子がドレインであるトランジスタとみなすことができ、このような場合、C端子(ゲート)とA端子(ソース)との間の電圧は0Vであり、閾値電圧以下のため、B端子(ドレイン)からA端子(ソース)に電流は流れない。一方、A端子の電位がB端子の電位よりも高い場合には、B端子がソースでA端子がドレインのトランジスタとみなすことができる。このような場合、C端子(ゲート)とA端子(ドレイン)との電位が同じであるため、A端子の電位がB端子を基準として閾値電圧以下の場合にはA端子(ドレイン)からB端子(ソース)へ電流を通電しない。A端子の電位がB端子を基準として閾値電圧以上となると、ゲートにB端子(ソース)を基準として閾値電圧以上の電圧が印加され、A端子(ドレイン)からB端子(ソース)へ電流を流すことができる。つまり、トランジスタのゲートとソースとを短絡させた場合、ドレインがカソードでソースがアノードのダイオードとして機能し、その順方向立上り電圧はトランジスタの閾値電圧となる。そのため、図2(a)に示す第2のトランジスタ16の部分は、ダイオードとみなすことができ、図2(c)に示すような等価回路となる。図2(c)に示す等価回路において、双方向スイッチ1のドレイン端子4の電位がソース端子5の電位よりも高い場合、第1のトランジスタ15の第一ゲート端子2に5Vが印加されている場合には、第1のトランジスタ15はオン状態であり、S2からS1へ電流を流すことが可能となる。ただし、ダイオードの順方向立上り電圧によるオン電圧が発生する。また、双方向スイッチ1のS1の電位がS2の電位よりも高い場合、その電圧は第2のトランジスタ16からなるダイオードが担い、双方向スイッチ1のS1からS2へ流れる電流を阻止する。つまり、第一ゲート端子2に閾値電圧以上の電圧を与え、第二ゲート端子3に閾値電圧以下の電圧を与えることにより、いわゆる双方向素子をオンした状態とドレイン側にダイオードのカソード側を直列接続した動作が可能なスイッチが実現できる。
【0042】
図3は、双方向スイッチ1のVs2s1とIs2s1との関係であり、(a)は、Vg1とVg2とを同時に変化させた場合を示し、(b)はVg2を第2の閾値電圧以下の0Vとし、Vg1を変化させた場合を示し、(c)はVg1を第1の閾値電圧以下の0VとしてVg2を変化させた場合を示している。なお、図3において横軸であるS2−S1間電圧(Vs2s1)は、第1のオーミック電極11Aを基準とした電圧であり、縦軸であるS2−S1間電流(Is2s1)は第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aへ流れる電流を正としている。図3(a)に示すように、Vg1及びVg2が0Vの場合及び1Vの場合には、Vs2s1が正の場合にも負の場合にもIs2s1は流れず、双方向スイッチ1は遮断状態となる。また、Vg1とVg2とが共に閾値電圧よりも高くなると、Vs2s1に応じてIs2s1が双方向に流れる導通状態となる。一方、図3(b)に示すように、Vg2を第2の閾値電圧以下の0Vとし、Vg1を第1の閾値電圧以下の0Vとした場合には、Is2s1は双方向に遮断される。しかし、Vg1を第1の閾値電圧以上の2V〜5Vとした場合には、Vs2s1が1.5V未満の場合にはIs2s1が流れないが、Vs2s1が1.5V以上になるとIs2s1が流れる。つまり、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aにのみに電流が流れ、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bには電流が流れない逆阻止状態となる。また、Vg1を0Vとし、Vg2を変化させた場合には図3(c)に示すように、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bにのみに電流が流れ、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aには電流が流れない逆阻止状態となる。
【0043】
以上より、双方向スイッチ1は、そのゲートバイアス条件により、双方向の電流を遮断・通電する機能を有すると共に、ダイオード動作も可能であり、そのダイオードの電流が通電する方向も切り換えることができる。以上、説明したように双方向スイッチ1の第一ゲート端子2と第二ゲート端子3のオンあるいはオフ条件に応じて、図4に示す4つの動作モードで動作することができる。すなわち、前記第一ゲート端子2のみをオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子3のみをオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子2および前記第二ゲート端子3をオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子2および前記第二ゲート端子3をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有するものである。本構造はJFETに類似しているが、キャリア注入を意図的に行うという点で、ゲート電界によりチャネル領域内のキャリア変調を行うJFETとは全く異なった動作原理により動作する。具体的には、ゲート電圧が3VまではJFETとして動作するが、pn接合のビルトインポテンシャルを超える3V以上のゲート電圧が印加された場合には、ゲートに正孔が注入され、前述したメカニズムにより電流が増加し、大電流且つ低オン抵抗の動作が可能となる。
【0044】
また、双方向スイッチ1は、第1のゲート電極13Aがp型の導電性を有する第1のp型半導体層12Aの上に形成され、第2のゲート電極13Bがp型の導電性を有する第2のp型半導体層12Bの上に形成されている。このため、第1の半導体層と第2の半導体層との界面領域に生成されるチャネル領域に対して、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bから順方向のバイアスを印加することにより、チャネル領域内に正孔を注入することができる。窒化物半導体においては正孔の移動度は、電子の移動度よりもはるかに低いため、チャネル領域に注入された正孔は電流を流す担体としてほとんど寄与しない。このため、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bから注入された正孔は同量の電子をチャネル領域内に発生させるので、チャネル領域内に電子を発生させる効果が高くなり、ドナーイオンのような機能を発揮する。つまり、チャネル領域内においてキャリア濃度の変調を行うことが可能となるため、動作電流が大きいノーマリオフ型の窒化物半導体層双方向スイッチを実現することが可能となる。
【0045】
次に双方向スイッチ1を使用した単相インバータ17について、図5を参照しながら説明する。図に示すように、単相インバータ17は、図1および図2に示す双方向スイッチ1を高電位側に接続したハイサイドスイッチ1aおよび1cと低電圧側に接続したローサイドスイッチ1bおよび1dとして直列に接続したハーフブリッジ回路18aおよび18bを備える。また、このハイサイドスイッチ1a、1cとローサイドスイッチ1b、1dの第一ゲート端子2a〜2dを常時オン状態となるように保持回路19a〜19dを備えており、第二ゲート端子3a〜3dをPWM変調する制御手段としてのマイクロプロセッサ20を備えている。また、第二ゲート端子3a〜3dを駆動するための制御電源21を備えている。さらに、ハーフブリッジ回路18a、18bの中間接続点18c、18dには、例えば負荷として単相モータが接続されている。さらに、ハーフブリッジ回路18(図示せず)を一回路設けた三相インバータの場合には三相モータが接続される構成となる。さらに、定電圧ダイオード22a〜22dとコンデンサ23a〜23dの並列回路を有した保持回路19a〜19dについて説明する。保持回路19a、19cへの電力は、第二ゲート端子3a、3cの駆動電力を蓄積する電力蓄積部としてのコンデンサ24a、24bから供給するように配置している。すなわち、コンデンサ24a、24bから抵抗25c、25d、および逆流防止ダイオード26d、26gを介して供給するように配置している。
【0046】
また、保持回路19bあるいは19dへの電力は、制御電源21から抵抗25aあるいは抵抗25b、逆流防止ダイオード26aあるいは逆流防止ダイオード26b、抵抗25cあるいは抵抗25d、逆流防止ダイオード26fあるいは逆流防止ダイオード26h、ローサイドスイッチ1bあるいはローサイドスイッチ1dを介して供給するように配置している。
【0047】
次に、ハイサイドスイッチ1a、1cとローサイドスイッチ1b、1dの保持回路19a〜19dの電力供給と、ハイサイドスイッチ1a、1cの第二ゲート端子3a、3cをオンするためのコンデンサ24a、24bへの充電について図6を参照しながら説明する。図では、ハイサイドスイッチ1cとローサイドスイッチ1bにおいて、第二ゲート端子3bと3cがオンした期間を示している。第二ゲート端子3bがオンすることで、ローサイドスイッチ1bは中間接続点18cからGND側に電流を流すことが可能となる。この際、中間接続点18cの電位はGND電位とほぼ等しくなり、これに伴い、充電電流iaが制御電源21から電力供給を制限する充電制限部としての抵抗25aと逆流防止部としての逆流防止ダイオード26aを経由して、コンデンサ24aへ充電される。
【0048】
そして、ローサイドスイッチ1bの保持回路19bへの電力供給は、ローサイドスイッチ1bの第一ゲート端子2bをオンするためのコンデンサ23bは、同様に中間接続点18cの電位がGND電位とほぼ等しくなったことから、充電電流ibが制御電源21から電力供給を制限する充電制限部としての抵抗25aと逆流防止部としての逆流防止ダイオード26a、さらにコンデンサ23aへの電流を制限する制限部としての抵抗25c、またさらに第三逆流防止部としての逆流防止ダイオード26fを経由してコンデンサ23bに充電される。また、コンデンサ23aの電圧の安定化を図るために、定電圧ダイオード22bが接続されており、コンデンサ23aの電圧が所定値を超える場合、定電圧ダイオード22b側を経由して電流が流れることとなる。
【0049】
また、ハイサイドスイッチ1cの保持回路19cへの電力供給は、ハイサイドスイッチ1cがオンした状態の際、中間接続点18dの電位がVdcとなり、その電位に対してコンデンサ24bの電位を加算されるため、コンデンサ24bから、抵抗25dと、コンデンサ23cからコンデンサ24bへの逆流を防止する第二逆流防止部としての逆流防止ダイオード26gとを経由して充電電流icがコンデンサ23cに充電される。
【0050】
さらに、ローサイドスイッチ1b、1dの第二ゲート端子3b、3dの駆動電力は、制御電源21から常時供給するように構成している。
【0051】
なお、ハイサイドスイッチ1a、1cとローサイドスイッチ1b、1dのうち、第二ゲート端子3aと3dをオンした期間については、前記ハイサイドスイッチ1cとローサイドスイッチ1bに対してハイサイドスイッチ1aとローサイドスイッチ1dの回路構成が対称形のため、詳細な説明は省略する。
【0052】
以上のように、双方向スイッチ1を駆動するゲート駆動回路において、双方向スイッチ1の2つのゲート端子を駆動するためのゲート信号を唯一の信号とすることができ、またオン信号を保持することが可能なため、マイクロプロセッサ20から周期、位相に応じた特別な信号出力を必要とせず、簡単な構成で双方向スイッチ1を駆動することができる。
【0053】
また、定電圧ダイオード22a〜22dとコンデンサ23a〜23dの組合せで保持回路19a〜19dを形成したため、汎用的な部品構成でかつ受動部品の組合せで、かつ外部からの信号が不要であり、容易に双方向スイッチ1を駆動することができる。
【0054】
さらに、ハイサイドスイッチ1a、1cの第二ゲート端子3a、3cの駆動電力を蓄積する電力蓄積部としてのコンデンサ24a、24bからハイサイドスイッチ1a、1cの第一ゲート端子2a、2cの保持回路19a、19cへの電力を供給するように構成しているため、通常高電位側の電圧よりも更に高い電圧が必要となるハイサイドスイッチ1a、1cの保持回路19a、19cの専用電源が不要となり、より安価で、かつ装置全体の小型・軽量化を図ることができる。
【0055】
また、ハイサイドスイッチ1a、1c、ローサイドスイッチ1b、1dの第一ゲート端子2a〜2d、第二ゲート端子3a〜3dの駆動電力は唯一の電源より供給することが可能となり、省スペース化が図れ、装置全体の小型・軽量化を図ることができる。
【0056】
なお、保持回路19a〜19dの電圧を保持するために、定電圧ダイオード22a〜22dを使用したが、シャントレギュレータを使用するなど他の方法であっても良い。
【0057】
また、ゲート駆動用ICとして、上下スイッチ駆動用の専用ICを使用したが、その他の部品、例えばディスクリート部品を組み合わせて生成しても作用効果に差異はない。
【0058】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2について、図7を参照しながら説明する。
【0059】
なお、実施の形態1と同一機能を有するものは、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0060】
図7に示すように、抵抗25cから逆流防止ダイオード26dとの間に抵抗25eを挿入している。単相インバータ17や三相インバータでは、上下の双方向スイッチ1をPWM制御しない場合も多く、特にローサイドスイッチ1b、1d(三相用ではさらにもう一つの双方向スイッチ1)を負荷の位相に合わせて120度オン状態とする等の制御方法が採用される。例えば、この周波数の3分の1の時間の間、ハイサイドスイッチ1a、1cの第二ゲート端子3a、3cはオンできないため、ハイサイドスイッチ1a、1cの第一ゲート端子2a、2cの保持回路19a、19cへの電力供給は途絶することとなる。
【0061】
一方、3分の2の時間の間は、ローサイドスイッチ1b、1dの第二ゲート端子3b、3dがオンしないため、ローサイドスイッチ1b、1dの第一ゲート端子2b、2dの保持回路19b、19dは充電することができない。従って、ローサイドスイッチ1b、1dの第一ゲート端子2b、2dの保持回路19b、19dは、ハイサイドスイッチ1a、1bの第一ゲート端子2a、2cの保持回路19a、19bに比べて充電頻度が低くなる。そのため、コンデンサ23b、23dの電圧が低下しないように、充電制限レベルを下げ、コンデンサ23b、23dの容量をコンデンサ23a、23cの容量に対して大きくする必要がある。すなわち、ハイサイドスイッチ1a、1c側の保持回路19a、19cの制限値をより厳しくするためにローサイドスイッチ1b、1d側と分岐した後に抵抗25eを挿入し、またコンデンサ23b、23dの容量をコンデンサ23a、23cの容量に対して大きくして1周期間に充電する充電量を保持回路19a,19c側と保持回路19b、19d側それぞれに確保する。例えば、第一ゲート端子2a〜2dの保持回路に常時駆動するための電力を供給する、あるいはハイサイドスイッチ1a、1cの第二ゲート端子3a、3cがオフの期間に第一ゲート端子2a、2cをオン状態に保つための抵抗値として10Ω、コンデンサ23b、23dの容量を47μF、コンデンサ23a、23cの容量を22μFなどに設定する)。また、ハイサイドスイッチ1a、1cの第二ゲート端子3a、3cのコンデンサ24a、24bの容量は、ハイサイドスイッチ1a、1cの第一ゲート端子2a、2cおよび第二ゲート端子3a、3cを駆動するために100μFなどに設定する。
【0062】
以上にように、保持回路19a〜19dのコンデンサ23の容量やハイサイドスイッチ1a、1cとローサイドスイッチ1b、1dの変調方法に応じた制限が可能となり、単相インバータ17(あるいは三相インバータ)の用途に応じた供給制限を行なうことができる。
【0063】
また、保持回路19a〜19dへの電力供給周期とハイサイドスイッチ1a、1cの第二ゲート端子3a、3cのコンデンサ24a、24bへの電力供給周期が異なる場合であっても、周期に応じた電力蓄積が可能とすることができる。
【0064】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3について、図8を参照しながら説明する。
【0065】
なお、実施の形態1あるいは2と同一機能を有するものは、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0066】
図8に示すように、第二ゲート端子3aをオフする際に負の電圧を印加する最適電圧生成部27aは、制御電源21から抵抗25aと逆流防止ダイオード26a、さらに抵抗25gを介してコンデンサ23eに充電し、第二ゲート端子3aがオフ状態にある際に、中間接続点18cからコンデンサ23fは充電される。またこの時、コンデンサ23fの充電電圧は定電圧ダイオード22eにより制限される。本回路構成により、コンデンサ23eは、中間接続点18cを基準に考えると正電圧に充電され、コンデンサ23fの負側の端子は中間接続点18cよりも低電位となる。従って、ゲート駆動回路は、第二ゲート端子3aをオンさせる際には、コンデンサ23eの正電圧が印加され、オフさせる際には、基準電位である中間接続点18cよりも低電位である負電圧が印加されることになる。従って、ゲート駆動回路部の電源には、第二ゲート端子3aの基準電位である中間接続点18cを基準に正負両電源とすることができ、オン時の電圧を正電圧、オフ時の電圧を負電圧とすることができ、オン電圧とオフ電圧の偏差を確保していることとなる。第二ゲート端子3b、3c、3dについても同様のため、詳細な説明は省略する。
【0067】
以上のように、第二ゲート端子3a〜3dの駆動電源に負電源を備えることが可能となり、オン時に正電圧を供給する正電圧印加回路と制御電源を共用しつつ、ゲート閾値電圧が低い双方向スイッチ1であっても、オフ時の電圧を相対的に低い電圧とすることが可能となり、外来ノイズなどによる誤動作発生で短絡故障などを引き起こす可能性を低減することができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、正電源、負電源共に同一の制御電源を電力源としたが、互いに独立した電源から供給する構成としても作用効果に差異はない。
【0069】
また、本実施の形態における回路構成は一実施例であり、発明を限定するものではない。
【0070】
さらに、本実施の形態では、単相インバータを一例としたが、三相用のインバータであってもよい。
【0071】
また、電圧を安定化する方法として、定電圧ダイオードを使用する構成としたが、その他のレギュレーション回路であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、ゲート信号に制御により4つの状態を有する双方向スイッチを利用した電力変換回路として高効率かつ低コストなコンバータ装置のゲート駆動回路に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態1の双方向スイッチの構成図
【図2】同双方向スイッチの等価回路図
【図3】同双方向スイッチの電圧・電流の相関図
【図4】同双方向スイッチの動作モードを示す図
【図5】同単相インバータの構成図
【図6】同ゲート駆動回路の動作説明図
【図7】本発明の実施の形態2における単相インバータの構成図
【図8】本発明の実施の形態3における単相インバータの構成図
【図9】従来の特許文献1におけるゲート駆動回路を示す図
【符号の説明】
【0074】
1 双方向スイッチ
1a ハイサイドスイッチ
1b ローサイドスイッチ
1c ハイサイドスイッチ
1d ローサイドスイッチ
2 第一ゲート端子
2a〜2d 第一ゲート端子
3 第二ゲート端子
3a〜3d 第二ゲート端子
4 ドレイン端子
5 ソース端子
6 基板
7 バッファ層
8 半導体層積層体
9 GaN層
10 AlGaN層
11A 第1のオーミック電極
11B 第2のオーミック電極
12A 第1のp型半導体層
12B 第2のp型半導体層
13A 第1のゲート電極
13B 第2のゲート電極
14 保護膜
15 第1のトランジスタ
16 第2のトランジスタ
17 単相インバータ
18a、18b ハーフブリッジ回路
18c、18d 中間接続点
19a〜19d 保持回路
20 マイクロプロセッサ
21 制御電源
22a〜22h 定電圧ダイオード
23a〜23L コンデンサ
24a〜24b コンデンサ
25a〜25h 抵抗
26a、26b、26d、26f〜26h 逆流防止ダイオード
27a〜27d 最適電圧生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有した双方向スイッチに適用するゲート駆動回路であって、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオン電圧とオフ電圧との偏差を確保する最適電圧生成部を備えたゲート駆動回路。
【請求項2】
最適電圧生成部は、第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子のオンする際に、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子に正の電圧を印加する正電圧印加回路と、オフする際に、前記第一ゲート端子あるいは第二ゲート端子に負の電圧を印加する負電圧印加回路を備えたことを特徴とする請求項1記載のゲート駆動回路。
【請求項3】
負電圧印加回路は、正電圧印加回路と電源を共用することを特徴とする請求項2記載のゲート駆動回路。
【請求項4】
負電圧印加回路は、正側の電圧印加回路からの逆流を防止する逆流防止部を介して接続することを特徴とする請求項2乃至3記載のゲート駆動回路。
【請求項5】
負電圧印加回路は、定電圧ダイオードとコンデンサの並列回路を有した安定化回路で電圧を安定化することを特徴とする請求項2〜4何れかに記載のゲート駆動回路。
【請求項6】
請求項1〜5何れかに記載のゲート駆動回路を用いたことを特徴とするインバータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−94006(P2010−94006A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96850(P2009−96850)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】