説明

シリカ系被膜の製造方法、シリカ系被膜および半導体装置

【課題】 誘電率と被膜強度を表わすヤング率とに優れたシリカ系被膜、特に、比誘電率が2.7以下と小さく、さらに被膜強度を表わすヤング率が半導体配線層作製プロセスに耐えうるだけの強度特性を備えたシリカ系被膜の形成方法を提供する。
【解決手段】 (i)シリカ系被膜形成用塗布液を基板上に塗布し、(ii)塗布後の基板を加熱処理し、(iii)加熱後の基板に、ケイ素の不対電子を安定化できる物質を含む雰囲気中で活性エネルギー線を照射して、シリカ系被膜を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリカ系被膜に関するものである。さらに詳しくは、半導体装置の絶縁膜として使用できるシリカ系被膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁膜の寄生容量による信号伝播速度の低下(すなわち配線遅延)が知られていたが、半導体デバイスの配線間隔が1μm以上の世代では配線遅延のデバイス全体への影響は少なかった。しかし、配線間隔が1μm以下ではデバイス速度への影響が大きくなってきており、特に今後100nm以下の配線間隔で回路を形成すると、配線間の寄生容量がデバイスの信号伝播速度に大きく影響を及ぼすようになってくる。
【0003】
配線遅延(T)は、配線抵抗(R)と配線間の容量(C)により影響を受け、下記の式(1)で示される。
【0004】
T∝CR・・・(1)
一方、ε(誘電率)とCの関係は式(2)で表される。
【0005】
C=ε0εrS/d・・・(2)
(Sは電極面積、ε0は真空の誘電率、εrは絶縁膜の誘電率、dは配線間隔)
したがって、配線遅延を小さくするためには、絶縁膜の低誘電率化が有効な手段となる。
【特許文献1】特開平9−315812号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】国際出願公開WO00/18847公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】国際出願公開WO00/12640公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平14−30249号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、絶縁膜の低誘電率化には、絶縁膜中に空孔を取り入れたり、有機材料を用いたりするため、一般的に膜の強度が不足しがちになるという問題が生じてきている。たとえば、半導体装置形成プロセスには、銅配線形成の際のCMP(化学的機械研磨法)プロセスや、パッドから電極を取るワイヤボンディングプロセスといった、機械的ストレスのかかるプロセスがいくつか存在し、そのため、半導体デバイスの製造中に絶縁膜内部における破壊が起こりやすくなってきており、歩留まり・信頼性低下の大きな一因となっている。
【0007】
これらの問題を解決するため鋭意研究を行ったところ、
(a)アルコキシシランおよび/またはハロゲン化シランまたはこれらの加水分解物とシリカ微粒子との反応物であるポリシロキサンを含む低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液(たとえば特許文献1参照。)、
(b)アルコキシシランおよび/またはハロゲン化シランまたはこれらの加水分解物と、500℃以下の温度で分解または揮散する易分解性樹脂とを含む低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液(たとえば特許文献2参照。)、
(c)アルコキシシランおよび/またはハロゲン化シランまたはこれらの加水分解物とシリカ微粒子との反応物であるポリシロキサンと、500℃以下の温度で分解または揮散する易分解性樹脂とを含む低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液(たとえば特許文献3参照。)、
(d)アルコキシシランおよび/またはハロゲン化シランまたはこれらの加水分解物と有機テンプレート剤を含む低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液(たとえば特許文献4参照。)
などを用いれば、比誘電率が3以下と小さく、しかも被塗布面との密着性、被膜強度、耐塩基性などの耐薬品性や耐クラック性および被膜表面の平滑性に優れ、さらには耐酸素プラズマ性やエッチング加工性などのプロセス適合性にも優れた被膜を形成できることが見出された。
【0008】
しかしながら、これらの塗布液について、従来公知の被膜形成法(スピンコート法やその他の塗布法)を用いて種々の半導体基板上に低誘電率シリカ系被膜を形成する試験を繰り返し行ったところ、前記の特性を有する被膜は得られるものの、2.7以下の比誘電率を有する被膜を形成しようとすると被膜強度が低下し、昨今の半導体製造業界から要望のある6.0GPa(ギガパスカル)以上のヤング率を有するものを安定的に得ることは難しいことが見出された。
【0009】
本発明は、上記問題を解決し、誘電率と被膜強度を表わすヤング率とに優れたシリカ系被膜の新規な形成方法、および、比誘電率が2.7以下と小さく、さらに被膜強度を表わすヤング率が半導体配線層作製プロセスに耐えうるだけの強度特性を備えたシリカ系被膜の形成方法を提供することを目的としている。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、
(i)シリカ系被膜形成用塗布液を基板上に塗布し、
(ii)塗布後の当該基板を加熱処理し、
(iii)加熱後の当該基板に、ケイ素の不対電子を安定化できる物質を含む雰囲気中で活性エネルギー線を照射する
ことを含む、シリカ系被膜の製造方法が提供される。本発明態様により、誘電率と被膜強度を表わすヤング率とに優れたシリカ系被膜の新規な形成方法が提供される。条件を選べば、比誘電率が2.7以下と小さく、さらに被膜強度を表わすヤング率が半導体配線層作製プロセスに耐えうるだけの強度特性を備えたシリカ系被膜の形成方法が得られる。
【0011】
前記シリカ系被膜形成用塗布液が、アルコキシシランまたは、ケイ素に直接ハロゲン原子が結合しあるいはケイ素に直接結合する炭化水素基の水素がハロゲン原子で置換されていてもよい置換アルコキシシランの加水分解物を含むこと、前記シリカ系被膜形成用塗布液が、下記一般式(I)で示される化合物および(II)で示される化合物からなる群から選ばれたすくなくとも一つの化合物の加水分解物を含むこと、
XanSi(OR)4-n・・・(I)
Xb{Si(OR)32・・・(II)
(式(I),(II)中、Xaは、ヨウ素原子、臭素原子、炭素数3以上の炭化水素基、アリール基、ビニル基、または、一つ以上の水素原子を臭素原子もしくはヨウ素原子で置換した炭化水素基を表す。Xbは、炭素数3以上の炭化水素基、または、ひとつ以上の水素原子をヨウ素もしくは臭素で置換した炭化水素基を表す。Rは、各式毎におよび各式中で独立に、水素原子、炭素数1〜8の脂肪族基、炭素数1〜8の脂環族基、アリール基、またはビニル基を表す。nは、各式毎に独立に0〜3の整数である。)
前記シリカ系被膜形成用塗布液が、下記一般式(I)で示される化合物、下記一般式(II)で示される化合物および下記一般式(III)で示される化合物からなる群から選ばれたすくなくとも一つの化合物と、テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)とを、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物を含むこと、
XanSi(OR)4-n・・・(I)
Xb{Si(OR)32・・・(II)
XcnSi(OR)4-n・・・(III)
(式(I),(II),(III)中、Xaは、ヨウ素原子、臭素原子、炭素数3以上の炭化水素基、アリール基、ビニル基、または、一つ以上の水素原子を臭素原子もしくはヨウ素原子で置換した炭化水素基を表す。Xbは、炭素数3以上の炭化水素基、または、ひとつ以上の水素原子をヨウ素もしくは臭素で置換した炭化水素基を表す。Xcは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基またはフッ素置換アルキル基を表す。Rは、各式毎におよび各式中で独立に、水素原子、炭素数1〜8の脂肪族基、炭素数1〜8の脂環族基、アリール基、またはビニル基を表す。nは、各式毎に独立に0〜3の整数である。)
とりわけ、前記一般式(I)のXaが、
(a) 4以上の炭素数を有すること
(b) 第3級または第4級炭素を含むこと
(c) ヨウ素原子と臭素原子との少なくともいずれか一方を一つ以上有すること
(d) 環状構造を有すること
のいずれかを満たす炭化水素基であること、特に、前記ケイ素の不対電子を安定化できる物質が炭素数1〜8の炭化水素であること、前記炭化水素の炭素数が1〜3であること、前記炭化水素が不飽和結合を持つこと、前記炭化水素がメタン、エタン、エチレンまたはこれらを含む混合物であること、が好ましい。また、前記活性エネルギー線照射に使用する活性エネルギー線の波長が150〜500nmの範囲にあること、特に、前記活性エネルギー線照射に使用する活性エネルギー線の波長が350〜500nmの範囲にあること、または、200〜300nmの範囲にあること、が好ましい。
【0012】
本発明の他の一態様によれば、上記のシリカ系被膜の製造方法を用いて製造されたシリカ系被膜が提供される。本発明態様により、誘電率とヤング率とに優れたシリカ系被膜を実現できる。このシリカ系被膜は、半導体装置の絶縁膜として使用できる。
【0013】
得られたシリカ系被膜中の空孔の平均直径が1nm以下で、しかも1nm以下空孔の容積が全空孔容積に占める割合が70%以上であること、および、得られたシリカ系被膜の比誘電率が2.7以下であること、が好ましい。
【0014】
本発明のさらに他の一態様によれば、上記のシリカ系被膜を含んでなる半導体装置が提供される。本発明態様により、応答速度の高い半導体装置が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、誘電率と被膜強度を表わすヤング率とに優れたシリカ系被膜の新規な形成方法が提供される。このシリカ系被膜は、半導体装置の絶縁膜として使用できる。条件を選べば、比誘電率が2.7以下と小さく、さらに被膜強度を表わすヤング率が半導体配線層作製プロセスに耐えうるだけの強度特性を備えたシリカ系被膜の形成方法が得られる。これらの方法により、誘電率とヤング率とに優れたシリカ系被膜を実現でき、応答速度の高い半導体装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を図、表、式、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、表、式、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。煩雑さを避けるため、図1〜17中、同一の要素について符号を繰り返し付すことを避けた。
【0017】
本発明に係るシリカ系被膜の製造方法には、
(i)シリカ系被膜形成用塗布液を基板上に塗布し、
(ii)塗布後の当該基板を加熱処理し、
(iii)加熱後の当該基板に、ケイ素の不対電子を安定化できる物質を含む雰囲気中で活性エネルギー線を照射する
ことが含まれる。
【0018】
本発明により、誘電率と被膜強度を表わすヤング率とに優れたシリカ系被膜が得られ、条件を選べば、比誘電率が2.7以下と小さく、さらに被膜強度を表わすヤング率が半導体配線層作製プロセスに耐えうるだけの強度特性を備えたシリカ系被膜の形成方法が得られる。これは、恐らく、シリカ系被膜形成用塗布液を基板上に塗布した後加熱処理と活性エネルギー線処理とを組み合わせることにより、分子レベルの大きさの空孔が生成されるためであると考えられる。また、シリカ系被膜形成用塗布液を使用することで、被膜として優れた疎水性を実現でき本処理方法により、平滑な被膜が得られる場合が多い。
【0019】
本発明に使用できる基板材料については特に制限はなく、一般的なシリコン基板、ガリウム砒素基板、インジウム燐基板等を挙げることができる。なお、被膜形成用塗布液を半導体基板上に塗布する前に、密着強度向上処理等を目的として、シランカップリング剤やオゾン水、UV、X線、電子線等で半導体基板表面を処理してもよい。処理方法は公知のものを用いる。
【0020】
本発明に係るシリカ系被膜形成用塗布液としては、結果としてシリカ系被膜を形成できる材料(シリカ系被膜形成用材料)を含む液状のものであればどのようなものを使用してもよい。「シリカ系被膜」とは、ケイ素と酸素とを骨格とする架橋構造体よりなる被膜を意味する。ケイ素に対する酸素のモル比(O/Si)は1.5以上が好ましい。他の成分としては炭素、水素、フッ素等が共存してもよい。炭素は15重量%以下、水素は4重量%以下、フッ素は27重量%以下が好ましい。シリカ系被膜は、一般的に非晶質である。
【0021】
本発明に係るシリカ系被膜形成用材料は、シロキサン化合物やその誘導体から選択することができ、アルコキシシランまたは、ケイ素に直接ハロゲン原子が結合しあるいはケイ素に直接結合する炭化水素基の水素がハロゲン原子で置換されていてもよい置換アルコキシシランの加水分解物を挙げることができる。より具体的には、一般式(I)で示される化合物、(II)で示される化合物および(III)で示される化合物からなる群から選ばれたすくなくとも一つの化合物の加水分解物を例示することができる。
【0022】
XanSi(OR)4-n・・・(I)
Xb{Si(OR)32・・・(II)
XcnSi(OR)4-n・・・(III)
式(I),(II),(III)中、Xaは、ヨウ素原子、臭素原子、炭素数3以上の炭化水素基、アリール基、ビニル基、または、一つ以上の水素原子を臭素原子もしくはヨウ素原子で置換した炭化水素基を表す。Xbは、炭素数3以上の炭化水素基、または、ひとつ以上の水素原子をヨウ素もしくは臭素で置換した炭化水素基を表す。Xcは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基またはフッ素置換アルキル基を表す。Rは、各式毎におよび各式中で独立に、水素原子、炭素数1〜8の脂肪族基、炭素数1〜8の脂環族基、アリール基、またはビニル基を表す。nは、各式毎に独立に0〜3の整数である。このような材料であれば、誘電率を下げるために十分大きい空孔をもち、かつ高強度なシリカ系皮膜を得られる。
【0023】
なお、Xcがフッ素原子である場合には、Xc−Si結合が活性エネルギー線により分解されず、生成するシリカ系被膜中にフッ素が含まれることになるが、フッ素の存在は低誘電率化に寄与するので好ましい場合がある。従って、一般式(I)で示される化合物、(II)で示される化合物および(III)で示される化合物からなる群から選ばれたすくなくとも一つの化合物中には、(III)で示される化合物が含まれていることが好ましい場合がある。
【0024】
一般式(I)で示される化合物としてはヨードトリエトキシシラン、ブロモトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシランを、(II)で示される化合物としてはビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)2−ヨードプロパンを、(III)で示される化合物としてはトリエトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)を挙げることができる。
【0025】
なお、上記アルコキシシランまたは置換アルコキシシランや一般式(I)で示される化合物、(II)で示される化合物および(III)で示される化合物以外に他の化合物を共存させてもよい場合がある。たとえば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、等のアルコキシシランを共存させると架橋度を上げ機械的強度を改善できる場合がある。
【0026】
本発明に係る加水分解物は、適当な化合物を溶媒中に溶解し、水と好ましくはそこに酸性物質または塩基性物質を加えることで得ることができる。加水分解を促進するため系を加熱してもよいが、一般的には常温で可能である。
【0027】
使用する酸性物質または塩基性物質には特に制限はないが、後の処理で被膜中に残存しないか、残存しても化学的な影響を与えないものが好ましい。具体的には、硝酸、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)類を例示することができる。
【0028】
使用するシリカ系被膜形成用材料、それ以外の化合物、酸性物質、塩基性物質の種類および量については、得られる被膜の特性、たとえば、機械的強度や比誘電率が所望の範囲になるように適宜選択することができる。加水分解についても、どの程度進んだかを実際に調べる必要はなく、機械的強度や比誘電率への影響を見て、反応時間を適宜定めれば充分である。機械的強度は4GPa以上、比誘電率は2.7以下が望ましい。さらに、機械的強度は、プロセス中の破壊による歩留まり低下を低減するため、6GPa以上であることが望ましい。
【0029】
本発明に係るシリカ系被膜形成用塗布液には、上記シリカ系被膜形成用材料等の他に溶媒が含まれる。この溶媒としては、本発明に係るシリカ系被膜形成用材料を溶解でき、本発明の処理により、被膜が形成される程度の沸点を有するものならばどのようなものから選択してもよい。
【0030】
この溶媒の例としては、メチルアルコール,エチルアルコール,プロピルアルコール,イソプロピルアルコール,ブチルアルコール,イソブチルアルコール,tert−ブチルアルコールなどのアルコール系、フェノール、クレゾール、ジエチルフェノール、トリエチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール、ノニルフェノールなどのフェノール系、シクロヘキサノン,メチルイソブチルケトン,メチルエチルケトンなどのケトン系、メチルセロソルブ,エチルセロソルブなどのセロソルブ系,ヘキサン,オクタン,デカンなどの炭化水素系、プロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル,プロピレングリコールモノブチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコール系や水などが挙げられる。溶媒として用いるのは上記のうち一種でも、上記溶媒の何種かを混合してもよい。
【0031】
本発明に係るシリカ系被膜形成用塗布液の好ましい例としては、より具体的には、一般式(I)で示される化合物、一般式(II)で示される化合物および一般式(III)で示される化合物からなる群から選ばれたすくなくとも一つの化合物と、テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)とを、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物を含むものが挙げられる。その場合の一般式(I)で示される化合物、一般式(II)で示される化合物および一般式(III)で示される化合物からなる群から選ばれたすくなくとも一つの化合物としては、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、(2,2−ジメチルプロピル)トリエトキシシランを挙げることができ、溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール,プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを挙げることができる。
【0032】
基板上への塗布の方法については特に制限はない。たとえば、当該塗布液をスピンコート法により基板上に塗布する方法を例示できる。
【0033】
加熱処理の条件についても特に制限はなく、ホットプレート、加熱炉、熱風炉を例示することができる。加熱処理により、溶媒が除去され、硬化により架橋構造を持つ被膜が生成するので、所望の機械的強度を与える程度の架橋構造が得られる条件を選択することができる。なお、加熱処理によっても、低誘電率化に役立つ空孔が生じるが、その粒径が大きい場合が多く、その分機械的性質が劣化し易くなるので、不利になる場合が多い。従って、空孔が生じにくく、所望の機械的強度を与える程度の加熱処理条件を選択することがより好ましい。100℃から250℃で溶媒乾燥をした後に、250℃から400℃の熱処理により硬化させる方法を例示することができる。
【0034】
その後、活性エネルギー線を照射させることで、シリカ系被膜形成用材料が分解され、分子レベルの大きさの空孔が生成される。たとえば、一般式(I),(II),(III)の場合には、Xa−Si,Xb−Si,Xc−Si結合等が分解され、分子レベルの大きさの空孔が生成されるものと考えられる。これにより低誘電率化を計ることができる。活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等を挙げることができる。可視光線、紫外線を活性エネルギー線として照射に使用する場合、波長は150〜500nmの範囲にあることが好ましい。このような活性エネルギー線を用いることで、上記分解が効率的に行われるためである。さらに、ケイ素−酸素等結合が解離する可能性を抑えるため、上記活性エネルギー線の波長は200nm以上であることがより好ましい。ケイ素−酸素結合が解離すると、シラノール基が生成されて吸湿性が増し、絶縁耐圧が低下したり、さらに乖離が進むことで絶縁膜の破壊が発生するという問題が生じる。
【0035】
本発明に係る活性エネルギー線照射はケイ素の不対電子を安定化できる物質を含む雰囲気中で行われる。このためには真空チャンバ等適当な容器中で活性エネルギー線照射を行うことが好ましい。その場合の雰囲気はいわゆる減圧状態であってもよい。
【0036】
ケイ素の不対電子を安定化できる物質の役割は活性エネルギー線照射の際に生じる、ケイ素ラジカルを素早く捕捉して、たとえば大気中の水分と反応してSiOHを生じて誘電率を上昇させる問題を回避することであると考えられている。
【0037】
たとえば、ケイ素の不対電子を安定化できる物質としてメタンを使用した場合には、
活性エネルギー線照射の際に、
Si−R → Si・ + R・
の分解反応によって生じたケイ素ラジカル(不対電子)を、
Si・ + CH4 → SiCH3 + H・
によって安定化し、
Si・ + H2O → SiOH + H・
の反応を防止するのである。
【0038】
ケイ素の不対電子を安定化できる物質は、ケイ素ラジカルを捕捉できるものと考えられる物質の中から適宜選択できる。本発明方法に使用した場合に実際にケイ素の不対電子を安定化しているかどうかを確認する必要はなく、ある物質を採用した結果、誘電率の低下が認められれば、本発明に係るケイ素の不対電子を安定化できる物質と考えてよい。たとえば炭化水素を挙げることができる。
【0039】
たとえば炭化水素を導入すると、たとえば一般式(I),(II),(III)のXa−Si,Xb−Si,Xc−Si結合が活性エネルギー線により分解されて生成したSiの不対電子に炭化水素の水素を置換し、アルキル基等が形成され、このことによりシラノール基等の生成による誘電率上昇を防止することができる。炭化水素の炭素数は1〜8の範囲のものが好ましく、1〜3のものがより好ましい。
【0040】
導入する気体に不飽和結合がある場合には、照射活性エネルギー線の波長が350〜500nmと長波長であっても上記分解反応が起きる上、ケイ素−酸素結合の解離を防止できるため、より好ましい条件となる。
【0041】
なお、200〜300nmの活性エネルギー線を照射することが好ましい場合もある。不飽和結合がない場合にも上記分解反応が効率的に行われるため、たとえば一般式(I),(II),(III)のXa−Si,Xb−Si,Xc−Si結合が活性エネルギー線により分解されて生成する空孔の大きさを減らすことなく、Si等の不対電子を無くすことが可能となり、誘電率をより効果的に低下することができ、かつケイ素−酸素結合の解離を抑制できる場合があるからである。導入する気体がメタン、エタンまたはエチレンの場合にはとくに好ましい条件である。エチレンの場合には、照射活性エネルギー線の波長が350〜500nmの範囲にある場合も好ましい条件であるが、一般的には、200〜300nmの活性エネルギー線を照射することがより好ましい。
【0042】
なお、上記一般式(I)のXaについては、(a)4以上の炭素数を有すること、(b)第3級または第4級炭素を含むこと、(c)ヨウ素原子と臭素原子との少なくともいずれか一方を一つ以上有すること、(d)環状構造を有することが好ましい。炭素数が4以上であれば生成する空孔の大きさが大きくなるために低誘電率化が可能であり、第3級または第4級炭素を含めばSi−C結合エネルギーが小さくなるために活性エネルギー線照射による分解反応が起こりやすく、またヨウ素原子や臭素原子が存在すれば活性エネルギー線照射による分解反応が起こりやすい。炭素数が4以上である例としてはn−オクタデシルトリエトキシシランを、第3級または第4級炭素を含む例としては(2,2−ジメチルプロピル)トリエトキシシランを、ヨウ素原子と臭素原子との少なくともいずれか一方を一つ以上有する例としては3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシランを、環状構造を有する例としてはシクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランを、挙げることができる。なお、環状構造には脂環と芳香環のいずれもが含まれ得る。
【0043】
上記に説明した方法により製造されたシリカ系被膜は、誘電率とヤング率とに優れ、応答速度の高速化が要求される回路基板等に適用できるシリカ系被膜として使用することができ、半導体装置の絶縁膜として好適に使用できる。また、このようなシリカ系被膜を、たとえば絶縁膜として含んでなる半導体装置は、応答速度が高く、信頼性に優れた半導体装置となる。従って、本発明を採用することにより、たとえばIC、LSI等の高集積度の半導体装置において、プロセス時に破壊されず、信頼性を十分保てるだけの強度を持つ低誘電率の絶縁膜材料を得ることができ、高性能で信頼性の高い半導体装置製品を生産することが可能になる。
【0044】
本発明に係る方法で生成するシリカ系被膜中に生じる空孔は、従来のシリカ系被膜中に生じる空孔に比べて微細(たとえば分子レベルの大きさ)にすることができる。その平均直径が1nm以下の範囲にあり、しかも1nm以下空孔の容積が全空孔容積に占める割合が70%以上であることが誘電率の低下と適切なヤング率の保持上好ましい。このようにして生成したシリカ系被膜は、比誘電率を2.7以下とすることも容易であり、好ましい。なお、シリカ系被膜中に生じる空孔のサイズは、小角散乱X線回折法で測定することができる。
【実施例】
【0045】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。
【0046】
[例1]
テトラエトキシシラン20.8g(0.1mol)、イソブチルトリエトキシシラン22.0g(0.1mol)、ジメチルケトン42.8gを200mLの反応容器に仕込み、ついで、この反応容器中に400重量ppmの硝酸水溶液15.1gを10分間で滴下し、滴下終了後2時間の熟成反応を行い加水分解物を得た。得られた反応溶液にジメチルケトンを50mL添加し、シリカ系被膜形成用塗布液を作製した。
【0047】
作製したシリカ系被膜形成用塗布液を低抵抗シリコン基板上にスピンコートし、250℃,3分でプリベークを行った後、FT−IR(フーリエ変換赤外分光分析法)を用いて950cm-1付近のSiOHの吸収強度から算出したところ、架橋率は75%であった。
【0048】
次に、N2ガス雰囲気の電気炉にて400℃,30分の条件で加熱し、さらにキュアした。このプリベークと加熱が本発明に係る加熱処理に該当する。
【0049】
続いて、番号1を除き、真空チャンバ中で紫外線照射を行った。真空チャンバは一旦真空にした後、紫外線照射中は、チャンバ圧力が所定の圧力になるようガス(エチレン、メタンまたは大気)を導入し、照射後ガスを排気した後大気を導入した。
【0050】
得られた膜の特性を表1に示す。比誘電率は水銀プローバ(CVmap92A、Four Dimensions Inc.)で測定した容量から算出し、ヤング率は、先端が三角錐の針を押し込む、押し込み法(Nano Indenter XP、Nano Instruments社)で測定した。紫外線照射時の真空チャンバ圧力、紫外線の波長、紫外線照射時間は表1に示すとおりであった。
【0051】
番号2〜8,10〜13が実施例である。番号1は紫外線照射を行わなかった比較例、番号9は、ケイ素の不対電子を安定化できる物質を含まない雰囲気中で紫外線照射を行った比較例である。実施例はいずれも誘電率と被膜強度を表わすヤング率とに優れ、特に番号2〜8,10,12,13は、比較例に比べ低い誘電率で充分なヤング率が確保されている。
【0052】
なお、得られた被膜は、非晶質であり、ケイ素と酸素と炭素と水素とから形成されていた。また、番号6の空孔を小角散乱X線回折法により測定したところ、平均直径は0.7nmであった。
【0053】
【表1】

[例2]
本例は、誘電率を低減させる目的で、例1とは異なる組成・作成方法で作成したシリカ系被膜形成用塗布液を使用した実施例である。
【0054】
テトラエトキシシラン20.8g(0.1mol)、メチルトリエトキシシラン17.8g(0.1mol)、イソブチルトリエトキシシラン22.0g(0.1mol)、メチルイソブチルケトン39.6gを200mLの反応容器に仕込み、ついで、この反応容器中に、1重量%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液16.2g(0.9mol)を10分間で滴下し、滴下終了後2時間の熟成反応を行い加水分解物を得た。
【0055】
次に、硫酸マグネシウム5gを添加し、過剰の水分を除去した後、ロータリーエバポレータにて熟成反応により生成したエタノールを反応溶液が50mLになるまで除去した。得られた反応溶液にメチルイソブチルケトンを20mL添加し、シリカ系被膜形成用塗布液を作製した。
【0056】
作製したシリカ系被膜形成用塗布液を低抵抗シリコン基板上にスピンコートし250℃,3分でプリベークを行った後、FT−IRを用いて950cm-1付近のSiOHの吸収強度から算出したところ、架橋率は75%であった。
【0057】
次に、N2ガス雰囲気の電気炉にて400℃,30分の条件でキュアを行った。続いて真空チャンバ中で紫外線照射を行った。紫外線照射条件は実施例1の番号6と同様である。
【0058】
照射後、チャンバを一度排気した後大気を導入した。得られた膜の比誘電率を水銀プローバで測定した容量から算出したところ2.0であり、ヤング率は押し込み法で測定したところ7GPaであった。
【0059】
[例3]
本例は、本発明を半導体の配線層の作製に使用した実施例である。図1〜17にその作製法を示す。まず、Siウェハ1上に、素子間分離膜2で分離され、ソース拡散層5aとドレイン拡散層5b、サイドウォール絶縁膜3を有するゲート電極4を形成したトランンジスタ層を形成した(図1)。ついで、その上に層間絶縁膜6(リンガラス)、ストッパ膜7を形成し(図2)、電極取り出し用のコンタクトホール19を形成した(図3)。
【0060】
このコンタクトホ−ルにスパッタ法でTiN8を50nm形成した(図4)後、WF6と水素の混合し還元することで導体プラグ9を埋め込み(図5)、CMPによりビア以外の部分を除去した(図6)。続いて、実施例1の番号6の方法により、Si平板上250nmとなる条件での成膜を行い、シリカ系被膜(配線分離絶縁膜)10を形成した後、TEOS(テトラエチルオルトシリケート)より作製したSiO2よりなる保護膜11を50nm積層した(図7)。
【0061】
この膜に対し、配線パターンを得るためのレジスト層をマスクにして、CF4/CHF3ガスを原料としたFプラズマにより加工し、1層目配線溝20を形成した(図8)。この配線溝20に、Cuの絶縁層への拡散バリアとして働くTiN8’を50nmと電解メッキの際に電極として働くシード層21(Cu製、50nm厚)をスパッタにより形成した(図9)。さらに、電解メッキによりCu17を600nm積層した(図10)後、CMPにより配線パターン部以外のメタルを除去し、配線層22を形成した(図11)。
【0062】
次に、ビア層と配線層とを同時に形成するデュアルダマシン法について説明する。上記の第1層目配線層上にCu拡散防止を目的としたストッパ膜として、シランとアンモニアガスを用いてプラズマCVDによりSiN膜12を50nm、プラズマCVD法により形成したSiOC膜13を250nm積層した。さらに、シランとアンモニアガスを用いてプラズマCVDによりストッパ膜としてSiN膜14を50nm成膜し、その上に、実施例1の番号6の方法によりSi平板上400nmとなる条件で成膜を行い、シリカ系被膜15を形成した後、TEOSより作製したSiO2よりなる保護膜16を50nm積層した(図12)。
【0063】
この膜に対し、ビアパターンを得るためのレジスト層をマスクに、CF4/CHF3ガスを原料としたFプラズマによりガス組成を変えることで、保護膜16/シリカ系被膜15/SiN膜14/SiOC膜13/SiN膜12の順に加工した(図13)。続いて、第2層目配線パターンを得るためのレジスト層をマスクにして、CF4/CHF3ガスを原料としたFプラズマにより、さらに加工した(図14)。
【0064】
このビア23と配線溝24に、Cuの絶縁層への拡散バリアとして働くTiN8”を50nmと、電解メッキの際に電極として働くシード層Cu25を50nmスパッタにより形成した(図15)。さらに、電解メッキによりCu18を1400nm積層した(図16)後、CMPにより配線パターン部以外のメタルを除去し、配線とビアを形成した(図17)。以下、上記工程を繰り返し、3層配線を形成した。
【0065】
試作した多層配線を用いて行った100万個の連続ビアの歩留まりは95%以上であった。また、ワイヤボンディングを行ったところ、ボンディング圧力による破壊は見られなかった。櫛歯パターンを測定して実効比誘電率を計算したところ、3.0であった。
【0066】
[例4]
本例は、一般式(I)で示される化合物、(II)で示される化合物および(III)で示される化合物を含まない実施例である。テトラエトキシシラン20.8g(0.1mol)、メチルトリエトキシシラン17.8g(0.1mol)、ジメチルケトン38.6gを200mLの反応容器に仕込み、400重量ppmの硝酸水溶液15.1gを10分間で滴下し、滴下終了後2時間の熟成反応を行い加水分解物を得た。得られた反応溶液にジメチルケトンを50mL添加し、配線分離層用被膜形成のための塗布液を作製した。
【0067】
作製した塗布液を低抵抗シリコン基板上にスピンコートし、250℃,3分でプリベークを行った後、FT−IRを用いて950cm-1付近のSiOHの吸収強度から算出したところ、架橋率は75%であった。
【0068】
次に、N2ガス雰囲気の電気炉にて400℃,30分の条件でキュアを行った。続いて真空チャンバ中で紫外線照射を行った。紫外線照射条件は例1の番号6と同様である。
【0069】
照射後、チャンバを一度排気した後大気を導入した。得られた膜の比誘電率は水銀プローバで測定した容量から算出したところ3.31であり、ヤング率は押し込み法で測定したところ20GPaであった。
【0070】
[例5]
本例は、活性エネルギー線照射を行わない比較例である。実施例3において、シリカ系被膜10,15を形成する際に例1の番号1の条件を採用して多層配線を形成した。試作した多層配線を用いた100万個の連続ビアの歩留まりは95%以上であった。また、ワイヤボンディングを行ったところ、ボンディング圧力による破壊は見られなかった。櫛歯パターンを測定して実効比誘電率を計算したところ、3.3であった。
【0071】
[例6]
本例は、活性エネルギー線照射条件が本発明の条件を満たさない比較例である。実施例3において、シリカ系被膜10,15を形成する際に例1の番号9の条件を採用して多層配線を形成した。試作した多層配線を用いた100万個の連続ビアの歩留まりは95%以上であった。また、ワイヤボンディングを行ったところ、ボンディング圧力による破壊は見られなかった。櫛歯パターンを測定して実効比誘電率を計算したところ、5.7であった。
【0072】
[例7]
例1のイソブチルトリエトキシシラン22.0g(0.1mol)の代わりにビス(トリエトキシシリル)プロパン18.4g(0.05mol)を用いて塗布液を作製し、実施例1の番号6の条件を採用して膜を作製した。得られた膜の比誘電率は2.42,ヤング率は9GPaであった。
【0073】
[例8]
例1のイソブチルトリエトキシシラン22.0g(0.1mol)の代わりに3−ヨードプロピルトリメトキシシラン33.2g(0.1mol)を用いて塗布液を作製し、実施例1の番号6の条件を採用して膜を作製した。得られた膜の比誘電率は2.20,ヤング率は8GPaであった。
【0074】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0075】
(付記1)
(i)シリカ系被膜形成用塗布液を基板上に塗布し、
(ii)塗布後の当該基板を加熱処理し、
(iii)加熱後の当該基板に、ケイ素の不対電子を安定化できる物質を含む雰囲気中で活性エネルギー線を照射する
ことを含む、シリカ系被膜の製造方法。
【0076】
(付記2)
前記シリカ系被膜形成用塗布液が、アルコキシシランまたは、ケイ素に直接ハロゲン原子が結合しあるいはケイ素に直接結合する炭化水素基の水素がハロゲン原子で置換されていてもよい置換アルコキシシランの加水分解物を含む、付記1に記載のシリカ系被膜の製造方法。
【0077】
(付記3)
前記シリカ系被膜形成用塗布液が、下記一般式(I)で示される化合物および(II)で示される化合物からなる群から選ばれたすくなくとも一つの化合物の加水分解物を含む、付記1または2に記載のシリカ系被膜の製造方法。
【0078】
XanSi(OR)4-n・・・(I)
Xb{Si(OR)32・・・(II)
(式(I),(II)中、Xaは、ヨウ素原子、臭素原子、炭素数3以上の炭化水素基、アリール基、ビニル基、または、一つ以上の水素原子を臭素原子もしくはヨウ素原子で置換した炭化水素基を表す。Xbは、炭素数3以上の炭化水素基、または、ひとつ以上の水素原子をヨウ素もしくは臭素で置換した炭化水素基を表す。Rは、各式毎におよび各式中で独立に、水素原子、炭素数1〜8の脂肪族基、炭素数1〜8の脂環族基、アリール基、またはビニル基を表す。nは、各式毎に独立に0〜3の整数である。
【0079】
(付記4)
前記シリカ系被膜形成用塗布液が、下記一般式(I)で示される化合物、下記一般式(II)で示される化合物および下記一般式(III)で示される化合物からなる群から選ばれたすくなくとも一つの化合物と、テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)とを、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物を含む、付記1または2に記載のシリカ系被膜の製造方法。
【0080】
XanSi(OR)4-n・・・(I)
Xb{Si(OR)32・・・(II)
XcnSi(OR)4-n・・・(III)
(式(I),(II),(III)中、Xaは、ヨウ素原子、臭素原子、炭素数3以上の炭化水素基、アリール基、ビニル基、または、一つ以上の水素原子を臭素原子もしくはヨウ素原子で置換した炭化水素基を表す。Xbは、炭素数3以上の炭化水素基、または、ひとつ以上の水素原子をヨウ素もしくは臭素で置換した炭化水素基を表す。Xcは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基またはフッ素置換アルキル基を表す。Rは、各式毎におよび各式中で独立に、水素原子、炭素数1〜8の脂肪族基、炭素数1〜8の脂環族基、アリール基、またはビニル基を表す。nは、各式毎に独立に0〜3の整数である。)
(付記5)
前記一般式(I)のXaが、
(a) 4以上の炭素数を有すること
(b) 第3級または第4級炭素を含むこと
(c) ヨウ素原子と臭素原子との少なくともいずれか一方を一つ以上有すること
(d) 環状構造を有すること
のいずれかを満たす炭化水素基である、付記3または4に記載のシリカ系被膜の製造方法。
【0081】
(付記6)
前記ケイ素の不対電子を安定化できる物質が炭素数1〜8の炭化水素である、付記1〜5のいずれかに記載のシリカ系被膜の製造方法。
【0082】
(付記7)
前記炭化水素の炭素数が1〜3である、付記6に記載のシリカ系被膜の製造方法。
【0083】
(付記8)
前記炭化水素が不飽和結合を持つ、付記6または7に記載のシリカ系被膜の製造方法。
【0084】
(付記9)
前記炭化水素がメタン、エタン、エチレンまたはこれらを含む混合物である、付記6に記載のシリカ系被膜の製造方法。
【0085】
(付記10)
前記活性エネルギー線照射に使用する活性エネルギー線の波長が150〜500nmの範囲にある、付記1〜9のいずれかに記載のシリカ系被膜の製造方法。
【0086】
(付記11)
前記活性エネルギー線照射に使用する活性エネルギー線の波長が350〜500nmの範囲にある、付記10に記載のシリカ系被膜の製造方法。
【0087】
(付記12)
前記活性エネルギー線照射に使用する活性エネルギー線の波長が200〜300nmの範囲にある、付記10に記載のシリカ系被膜の製造方法。
【0088】
(付記13)
付記1〜12のいずれかに記載のシリカ系被膜の製造方法を用いて製造されたシリカ系被膜。
【0089】
(付記14)
得られたシリカ系被膜中の空孔の平均直径が1nm以下で、しかも1nm以下空孔の容積が全空孔容積に占める割合が70%以上である、付記13に記載のシリカ系被膜。
【0090】
(付記15)
得られたシリカ系被膜の比誘電率が2.7以下である、付記13または14に記載のシリカ系被膜。
【0091】
(付記16)
付記13〜15のいずれかに記載のシリカ系被膜を含んでなる半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図2】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図3】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図4】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図5】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図6】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図7】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図8】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図9】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図10】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図11】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図12】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図13】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図14】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図15】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図16】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【図17】本発明に係るシリカ系被膜を使用した半導体の配線層の作製の様子を示す、模式的横断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 Siウェハ
2 素子間分離膜
3 サイドウォール絶縁膜
4 ゲート電極
5a ソース拡散層
5b ドレイン拡散層
6 層間絶縁膜
7 ストッパ膜
8 TiN
8’ TiN
8” TiN
9 導体プラグ
10 シリカ系被膜(配線分離絶縁膜)
11 保護膜
12 SiN膜
13 SiOC膜
14 SiN膜
15 シリカ系被膜
16 保護膜
17 Cu
18 Cu
19 コンタクトホール
20 配線溝
21 シード層
22 配線層
23 ビア
24 配線溝
25 シード層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)シリカ系被膜形成用塗布液を基板上に塗布し、
(ii)塗布後の当該基板を加熱処理し、
(iii)加熱後の当該基板に、ケイ素の不対電子を安定化できる物質を含む雰囲気中で活性エネルギー線を照射する
ことを含む、シリカ系被膜の製造方法。
【請求項2】
前記シリカ系被膜形成用塗布液が、下記一般式(I)で示される化合物および(II)で示される化合物からなる群から選ばれたすくなくとも一つの化合物の加水分解物を含む、請求項1に記載のシリカ系被膜の製造方法。
XanSi(OR)4-n・・・(I)
Xb{Si(OR)32・・・(II)
(式(I),(II)中、Xaは、ヨウ素原子、臭素原子、炭素数3以上の炭化水素基、アリール基、ビニル基、または、一つ以上の水素原子を臭素原子もしくはヨウ素原子で置換した炭化水素基を表す。Xbは、炭素数3以上の炭化水素基、または、ひとつ以上の水素原子をヨウ素もしくは臭素で置換した炭化水素基を表す。Rは、各式毎におよび各式中で独立に、水素原子、炭素数1〜8の脂肪族基、炭素数1〜8の脂環族基、アリール基、またはビニル基を表す。nは、各式毎に独立に0〜3の整数である。)
【請求項3】
前記シリカ系被膜形成用塗布液が、下記一般式(I)で示される化合物、下記一般式(II)で示される化合物および下記一般式(III)で示される化合物からなる群から選ばれたすくなくとも一つの化合物と、テトラアルキルオルソシリケート(TAOS)とを、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)の存在下で加水分解して得られるケイ素化合物を含む、請求項1に記載のシリカ系被膜の製造方法。
XanSi(OR)4-n・・・(I)
Xb{Si(OR)32・・・(II)
XcnSi(OR)4-n・・・(III)
(式(I),(II),(III)中、Xaは、ヨウ素原子、臭素原子、炭素数3以上の炭化水素基、アリール基、ビニル基、または、一つ以上の水素原子を臭素原子もしくはヨウ素原子で置換した炭化水素基を表す。Xbは、炭素数3以上の炭化水素基、または、ひとつ以上の水素原子をヨウ素もしくは臭素で置換した炭化水素基を表す。Xcは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、またはフッ素置換アルキル基を表す。Rは、各式毎におよび各式中で独立に、水素原子、炭素数1〜8の脂肪族基、炭素数1〜8の脂環族基、アリール基、またはビニル基を表す。nは、各式毎に独立に0〜3の整数である。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のシリカ系被膜の製造方法を用いて製造されたシリカ系被膜。
【請求項5】
請求項4に記載のシリカ系被膜を含んでなる半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−53300(P2007−53300A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238623(P2005−238623)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】