説明

シリコン上にバッファ層構造を形成する方法および当該方法により形成された構造

【解決手段】 微小電子デバイスを形成する方法および対応する構造を記載する。当該方法は、基板にGaSb核生成層を形成する段階と、GaSb核生成層にGa(Al)AsSbバッファ層を形成する段階と、Ga(Al)AsSbバッファ層にIn0.52Al0.48As下側バリア層を形成する段階と、In0.52Al0.48As下側バリア層にInAl1−xAsグレーデッド層を形成する段階とを備えるとしてよい。当該方法によれば、欠陥の少ない、勾配をつけたInGaAsベースの量子井戸構造を有するデバイスを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
元素シリコン(Si)基板上に薄膜状の緩和した格子定数の第III−V族半導体を形成することによって、多岐にわたる電子デバイスおよび光電子デバイスを実現することができる。第III−V族材料による性能上の利点を有する表面層であれば、これらに限定されないが、アンチモン化インジウム(InSb)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、および、インジウムヒ素(InAs)等の超高移動度材料から製造される相補型金属酸化膜半導体(CMOS)トランジスタおよび量子井戸(QW)トランジスタのようなさまざまな高性能電子デバイスを収容し得る。
【図面の簡単な説明】
【0002】
本明細書は最後に請求項を記載して本発明と見なされる内容を具体的に指し示すと共に明確に請求しているが、本発明の利点は、以下に記載する本発明の説明を添付図面を参照しつつ読むことによってより容易に理解することができる。添付図面は以下の通りである。
【図1A】本発明の実施形態に係る構造を示す図である。
【図1B】本発明の実施形態に係る構造を示す図である。
【図1C】本発明の実施形態に係る構造を示す図である。
【図1D】本発明の実施形態に係る構造を示す図である。
【図1E】本発明の実施形態に係る構造を示す図である。
【図1F】本発明の実施形態に係る構造を示す図である。
【図1G】本発明の実施形態に係る構造を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るバンド図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0003】
以下に記載する詳細な説明では、本発明を実施し得る具体的な実施形態を例示的に示す添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できる程度に十分に詳細に説明される。本発明のさまざまな実施形態は、互いに異なるものの、必ずしも全く共通点がないわけではないと理解されたい。例えば、一実施形態に関連付けて本明細書で説明される特定の特徴、構造、または、特性は、本発明の精神または範囲を逸脱することなく、他の実施形態にも含まれ得る。また、開示している各実施形態においてそれぞれの構成要素の位置または配置は、本発明の精神または範囲を逸脱することなく、変更され得るものと理解されたい。このため、以下に記載する詳細な説明は本発明を限定するものと解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、請求項によってのみ定められるものであり、請求項の全均等例に基づき適切に解釈されたい。図面では、複数の図面にわたって同様の参照番号が用いられている場合、同一または同様の機能を指し示すものとする。
【0004】
微小電子構造を形成する方法および対応する構造を記載する。当該方法は、基板にGaSb核生成層を形成する段階と、GaSb核生成層にGa(Al)AsSbグレーデッドバッファ層を形成する段階と、グレーデッドバッファ層に格子整合したInAlAs下側バリアを形成する段階と、下側バリアにInAl1−xAsグレーデッドバッファを形成する段階とを備えるとしてよい。InAl1−xAsグレーデッドバッファ上にはInGaAsデバイス層を成長させるとしてよく、当該InGaAsデバイス層は、メタモルフィック高電子移動度トランスジスタ(HEMT)分野において、バリア層およびデバイス分離層として機能するとしてよい。本発明に係る方法によれば、格子特性、熱特性、および極性を一致させつつ、シリコン基板上に第III−V族材料を成長させることができる。
【0005】
結晶欠陥は、第III−V族半導体エピタキシャル層とシリコン半導体基板との間での格子不整合、極性−非極性不整合、および熱不整合のために発生することがある。このような不整合は、キャリアの移動度が低くなったり、リーク電流が大きくなったりと電気的特性を劣化させる要因になり得る。エピタキシャル層と基板との間の格子不整合が数パーセントを越えると、当該不整合に起因する歪みが大きくなり過ぎて、エピタキシャル膜によって格子不整合による歪みを緩和させると、エピタキシャル層に欠陥が発生してしまう場合がある。
【0006】
貫通転位および双晶等、多くの欠陥は、半導体デバイスの形成箇所である「デバイス層」にも広がる可能性がある。これらの欠陥は、高品質のInGaAs材料をシリコン基板上に集積化する際に深刻な問題となり得る。GaAsがコーティングされたシリコン上に高品質のInGaAs薄膜が形成されている先行技術に係る構造は、約1e10cm−2のオーダにも達し得る多くの欠陥および転位を含むことが分かっている。本発明の実施形態によれば、良好な構造特性および電気特性を維持しつつ、欠陥が少ないデバイス用InGaAsグレーデッド層およびInGaAsベースのQW構造をシリコン上に製造することが可能となる。
【0007】
図1Aから図1Gは、例えば、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)ベースの半導体デバイス等の微小電子構造を形成する方法の実施形態を示す図である。一部の実施形態によると、低電力且つ高速度の第III−V族化合物半導体ベース相補型金属−シリコン(CMOS)デバイスの分野において、シリコン基板上に高電子移動度nチャネルInGaAsデバイス構造を集積化するべく、バッファ構造が形成されるとしてよい。一部の実施形態によると、バッファ構造は、アクティブなInGaAsチャネル層とシリコン基板との間の材料不整合の問題について橋渡しの役割を果たすとしてよい。
【0008】
図1Aは、例えばシリコン基板等の基板100の一部分の断面を示す図である。実施形態によると、構造100は、抵抗率が高く、例えば、これに限定されないが、約1Ωcmから約50kΩcmで、且つ、n型またはp型のシリコン基板である基板100を含むとしてよい。さまざまな実施形態によると、基板100は、抵抗率が高いn型またはp型(100)のずれた配向のシリコン基板100であってよいが、本発明の範囲はこれに限定されない。実施形態によると、基板100は、インゴットから基板100をオフカットすることによって得られる微斜面を持つとしてよい。
【0009】
基板100は、一実施形態によると、テラスを有する面を得るべく、(110)方向に向かって約2度から約8度の角度でオフカットされるとしてよい。他の実施形態によると、オフカットの方向を変えるとしてもよいし、または、オフカットなしの基板100を利用するとしてもよい。このような高抵抗率の基板100によると、デバイス分離が可能となるとしてよい。さらに、基板100をオフカットすることによって、基板100上に層を成長させる際に、例えば、基板100上に第III−V族の層を成長させる際に、逆位相境界において逆位相ドメインが形成されないとしてよい。
【0010】
基板100上には、核生成層102が形成されるとしてよい(図1B)。核生成層102は、非常に薄く、溶融点が低い材料、例えば、ある実施形態によるとGaSbを含むとしてよい。ある実施形態によると、核生成層102は、バンドギャップが小さいGaSb核生成層102を含むとしてよい。ある実施形態によると、GaSb核生成層102は、厚みが約50オングストロームから約300オングストロームの間であるとしてよい。GaSb核生成層102を形成することによって、逆位相ドメインがなくなり、実質的に極性を持つ基板100の形成が容易になるとしてよい。GaSb核生成層102は、溶融点が比較的低いので、欠陥の対消滅/滑りが活発になるとしてよい。低温GaSb核生成層102を利用して欠陥の拡大を食い止めるという効果が奏される。
【0011】
核生成層102は、有機金属気相成長(MOCVD)法、分子線エピタキシー(MBE)法、または、その他の同様の方法によって形成されるとしてよい。ある実施形態によると、核生成層102は、GaSb材料の原子二重層によって最下層のシリコン基板100のテラスを充填して、逆位相ドメインのない実質的に極性の基板を実現するべく用いられるとしてよい。一部の実施形態によると、核生成層102の形成は、約摂氏400度から約摂氏500度の間の温度で実行されるとしてよい。
【0012】
核生成層102を設けることによって、滑り転位が発生し、シリコン基板100と、核生成層102の上方に後に形成されるバッファ層104(図1C)との間の格子不整合が約4%から約8%に制御されるとしてよい。ある実施形態によると、バッファ層104は、バンドギャップが大きいGa(Al)AsSbバッファ層104を含むとしてよい。ある実施形態によると、Ga(Al)AsSbバッファ層104は、厚みが約0.3μmから約5μmであるとしてよい。ある実施形態によると、バッファ層104は、バッファ層104上に後に形成される、格子定数が約5.869オングストロームのIn0.52Al0.48As材料と格子整合するように成長させられるとしてよい。
【0013】
バッファ層104はさらに、バンドギャップが大きいために、基板100上でデバイス分離層として機能するとしてよい。一部の実施形態によると、バッファ層104は、グレーデッドバッファ層104を含むとしてよい。例えば、50/50の割合で混合させたAl/GaをGaSb核生成層102に混合して、後に形成されるInAlAs層と格子整合するように成長させるとしてよい/勾配をつけるとしてよい。ある実施形態によると、AlAsの格子定数は約5.661オングストロームで、GaAsの格子定数は約5.6532オングストロームである。バッファ層104は、例えば、MOCVD法、MBE法、化学気相成長(CVD)法、および、その他の任意の適切な方法で形成されるとしてよい。バッファ層104には、薄いGaSb核生成層102と、バッファ層104上に後に形成される薄いInAlAs下側バリア層との間に必要なのは、Ga(Al)AsSbバッファ層104の1段階のみであるので、比較的薄い層を形成するので十分であるという利点がある。
【0014】
下側バリア層106は、バッファ層104上に形成されるとしてよい(図1D)。下側バリア層106は、ある実施形態によると、InGaAsベースの量子井戸構造に格子整合するIn0.52Al0.48As下側バリア層を含むとしてよい。ある実施形態によると、下側バリア層106は、伝導帯Ecが約60%オフセットしているとしてよい。下側バリア層106は、その上に形成される量子井戸層よりもバンドギャップが大きい材料で形成されるとしてよい。ある実施形態によると、下側バリア層106は、トランジスタスタック内の荷電キャリアに対してバリアとして機能するために十分な厚みを持つとしてよい。一実施形態によると、下側バリア層106は、厚みが約100Åから250Åであるとしてよい。別の実施形態によると、下側バリア層106は、約0.5μmから約1.0μmであるとしてよい。
【0015】
InAl1−xAsグレーデッド層108は、下側バリア層106(図1E)および/またはバッファ層104の上に形成されるとしてよい。ある実施形態によると、InAl1−xAsグレーデッド層108におけるインジウムの濃度は、約52%から約70%であるとしてよい。InAl1−xAsグレーデッド層108におけるアルミニウムの割合は、均衡を保つように歪みを持つInAl1−xAsグレーデッド層が得られるように調整されるとしてよい。
【0016】
InAl1−xAsグレーデッド層108を形成することによって、InAl1−xAsグレーデッド層内で相対的に傾斜した面に沿って転位が滑るとしてよい。一部の実施形態によると、InAl1−xAsグレーデッド層は、約0.5ミクロンから約2.0ミクロンであってよい。一実施形態によると、核生成層102、バッファ層104、下側バリア層106、およびInAl1−xAsグレーデッド層は、転位フィルタリングバッファ構造110を形成するとしてよい。このバッファ構造110は、その上に後に形成されるInGaAs量子井戸(QW)構造に対して圧縮歪みを供するとしてよい。また、これらの層は、貫通転位を最小限に抑えるべく、格子不整合を約4%以内に制御するとしてよい。
【0017】
一例によると、In0.52Al0.48As層を、格子整合しているInP上に成長させて、バリア層として機能するこのIn0.52Al0.48As層の上にInGa1−xAs量子井戸を成長させるとしてよい。量子井戸を形成するInGa1−xAs内のインジウムの組成(x)によって、InGaAs量子井戸内の歪みを制御することができる。例えば、バリア層がIn0.52Al0.48Asで、量子井戸がIn0.7Ga0.3Asである場合に、歪みは約1.0%となるとしてよい。
【0018】
別の実施形態によると、InGa1−xAs量子井戸構造は、(バリア層として機能し得る)InAl1−xAsグレーデッド層上に形成されるとしてよく、InGa1−xAs量子井戸構造およびInAl1−xAsグレーデッド層に含まれるインジウムの組成(x)を制御することによって、歪みを制御することができる。バリア層に勾配をつける場合、InGa1−xAsチャネル内の歪みを制御するべく、InAl1−xAsグレーデッドバリア層およびInGa1−xAsチャネルの両方で、インジウムの組成を制御することができる。
【0019】
バッファ構造110の各層を形成する工程が終わった後、および/または、バッファ構造110を構成する全ての層が形成された後(図1F)、バッファ構造110に対して、インサイチュ熱サイクルアニーリング111を実行するとしてよい。一部の実施形態によると、アニーリングは、転位および欠陥を低減/除去するべく、量子井戸層がバッファ構造110上に形成される前に実行されるとしてもよい。ある実施形態によると、バッファ構造はさらに、下側バリア層106およびInAl1−xAsグレーデッドバリア層のうち一方のみを含むとしてもよい。下側バリア層106およびInAl1−xAsグレーデッドバリア層のいずれか一方が量子井戸構造に対してバリア層として機能し得る。
【0020】
量子井戸層112は、InAl1−xAsグレーデッド層108上に形成されるとしてもよいし(図1G)、量子井戸層112は、下側バリア層106上に形成されるとしてもよい。量子井戸層112は、InAl1−xAsグレーデッド層108および/または下側バリア層106よりも小さいバンドギャップの材料で形成されるとしてもよい。一実施形態によると、量子井戸層112は、InGa1−xAsから形成されるとしてよく、xは約0.53から約0.8の範囲内である。量子井戸層112は、適切なチャネル伝導性を実現するのに十分な厚みを持つとしてよい。一部の実施形態によると、量子井戸層112は、約10ナノメートルから約50ナノメートルであるとしてよい。量子井戸層112によれば、Siベースのデバイスと比較した場合に、NMOSデバイスの場合には高電子移動度および高速度が実現され、PMOSデバイスの場合も高正孔移動度および高速度が実現されるとしてよい。このn型チャネル材料、InGaAsは、InAlAsグレーデッド層に対する伝導帯のオフセットがより大きく(ΔEcは約0.60eV)、I型量子井戸(InGaAs)内に電子を良好に閉じ込めるとしてよい。
【0021】
図1Gにさらに示すように、量子井戸層112の上方にスペーサ層114が形成されるとしてよい。スペーサ層114は、一部の実施形態によると、InAl1−xAsまたはInAlAsから成るスペーサ層114であってよい。スペーサ層114を形成することによって、キャリア閉じ込めが実現されると共に、ドーピング層とチャネル(つまり量子井戸層112のチャネル)内に形成される2次元電子ガス(2DEG)との間の相互作用が低減されるとしてよい。また、スペーサ層114は、量子井戸層112のチャネルに対して圧縮歪みを供するとしてよい。さまざまな実施形態によると、スペーサ層114は、厚みが約20オングストロームから約30オングストロームであるとしてよい。
【0022】
ドーピング層116は、スペーサ層112の上方に形成されるとしてよい。ドーピング層116は、デルタドーピング、変調ドーピング、および/またはこれらの組み合わせによって形成されるとしてよい。例えば、一実施形態によると、ドーピング層116は、厚みが約3オングストロームから約5オングストロームであるシリコン変調デルタドーピング層であってよい。NMOSデバイスの場合、シリコンおよびテルル(Te)不純物を用いてドーピングを行うとしてよい。PMOSデバイスの場合、ベリリウム(Be)または炭素(C)でドーピングが行われるとしてよい。
【0023】
さらに図1Gを参照して説明を続けると、ドーピング層116の上方には上側バリア層118が形成されており、これによってデバイススタックが完成している。一実施形態によると、上側バリア層118は、InAl1−xAsバリア層を含むとしてよい。上側バリア層118は、厚みが約50オングストロームから約500オングストロームであってよく、ゲート制御用のショットキ上側バリア層118であってよい。上側バリア層116の上方には、エッチストップ層118が形成されているとしてよく、エッチストップ層118は、一部の実施形態によると、リン化インジウム(InP)であってよい。
【0024】
さらに図1Gに示すように、さまざまな実施形態によると、接触抵抗を低く抑えつつソースコンタクトおよびドレインコンタクトを実現するためのコンタクト層として機能するコンタクト層120が設けられているとしてよい。コンタクト層120は、InGa1−xAsから形成されるとしてよい。コンタクト層120は、NMOSデバイスの場合にはn+型にドーピングされており、PMOSデバイスの場合にはp+型にドーピングされているとしてよい。ある実施形態によると、コンタクト層120は、厚みが約30オングストロームから約300オングストロームであってよい。
【0025】
図1Gには図示していないが、完全に完成したデバイスはさらに、ソース電極およびドレイン電極を含むとしてよい。また、上側バリア層118上には誘電材料が形成され、その上にはゲート電極が形成されるとしてよい。尚、上側バリア層118内でゲート用凹部エッチングが施されて、誘電層およびゲート電極をその上に形成するゲート用凹部が形成されるとしてよい。このため、ショットキ接合が形成されて、当該ショットキ接合を介してゲート電極が量子井戸層112を制御するとしてよい。
【0026】
したがって、さまざまな実施形態によると、高速且つ低消費電力の高電子移動度トランジスタ(HEMT)を形成するべく高電子移動度材料を用いてデバイスを形成するとしてよい。このようなデバイスは、寸法が約50nm未満であり、スイッチング周波数が約562ギガヘルツ(GHz)であるとしてよい。このようなデバイスは、駆動電流を大きく減少させることなく、約0.5から1.0ボルトで動作することができるとしてよい。また、本発明の実施形態によると、シリコンベースのデバイスに比べて、ゲート長を所与とすると、ゲート遅延が小さくなるとしてよい。
【0027】
尚、このバッファ構造には、上に形成されている量子井戸層に対して圧縮歪みを供する経路が3つあり、つまり、経路A、経路B、および経路Cが考えられる(図2を参照のこと)。経路Aは、約1.5eVのバンドギャップに対応し、バッファ層およびバリア層のインジウム濃度を約52%、つまりIn0.52Al0.48Asとする場合に形成されるとしてよい。このように層を形成すると適切なキャリア閉じ込め特性が得られるが、この種の層と下方に位置する基板との間での格子定数の差異に起因して、格子定数が不整合となり、界面で欠陥が発生する場合がある。一方、点線で示す経路Cは、キャリア閉じ込め特性は比較的低いが、格子定数の不整合が小さくなり、欠陥が形成されない。経路Cについては、インジウム濃度が約0%(つまり、AlAs)から約70%(つまり、In0.70Al0.30As)へと線形に増加しているとしてよい。この場合、InAl1−xAsまたはInGaAlAsSbグレーデッドバッファ内でのInの組成は、その上方に形成されているInGa1−xAsチャネル内のInの組成と略同じであるので、当該チャネルは下側バリアに対して歪みを持たない。QW層内に含まれる欠陥は減少するが、InAl1−xAs(例えば、x=0.7)下側バリアとInGa1−xAs(例えば、x=0.7)チャネルとの間の価電子帯のオフセットが低く、量子井戸内の歪みという利点がないので、キャリア閉じ込め特性は低い。
【0028】
キャリア閉じ込め特性、および、略完全に緩和した(つまり、メタモルフィック)構造を実現する緩和特性を共に良好にするべく、経路Bが実現されるとしてよい。この場合、バリア層は、インジウム濃度「x」を、経路Bに示すように、GaAs核生成層とバッファ層との間の界面における0%から約62%または63%まで変化させて、その後約52%まで戻すように逆のグレーデッドを与えて、形成されるとしてよい。このような構成とすることによって、実質的にメタモルフィックなプロフィールを実現しつつ、適切なキャリア閉じ込め特性を実現することができる。
【0029】
さらに図2を参照しつつ説明すると、この下側バリア層の上方には、バンドギャップが比較的小さいQW層が形成されているとしてよい。具体的には、一実施形態によると、QW層は、インジウムガリウムヒ素から形成され、xを0.7(つまり、In0.7Ga0.3As)に設定するとしてよい。この場合、バンドギャップは約0.6eVである。このQW構造に対する圧縮歪みを大きくするべく、上側バリアは、インジウムアルミニウムヒ素から形成され、xは約52%(つまり、In0.52Al0.48As)に設定するとしてよい。この場合、バンドギャップは約1.5eVである。
【0030】
図3は、本発明の実施形態に係る方法を示すフローチャートである。図3に示すように、段階302では、シリコン基板にGaSb核生成層を形成する。次の段階304では、GaSb核生成層に、Ga(Al)AsSbグレーデッドバッファ層を形成するとしてよい。段階306では、Ga(Al)AsSbグレーデッドバッファ層に、In0.52Al0.48As下側バリア層を形成するとしてよい。段階308では、下側バリア層に、InAl1−xAsグレーデッドバッファ層を形成するとしてよい。段階310では、InAl1−xAsグレーデッドバッファ層に、InGaAsベースの量子井戸構造を形成するとしてよい。図3に示す実施形態ではこのような特定の実施例を示しているが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0031】
上述したように、本発明の実施形態の利点としては、これらに限定されないが、HEMTデバイスの基板とチャネル構造との間に格子定数の橋渡しを行う層を形成すること、InAlAs下側バリア層とInGaAsチャネル構造との間の伝導帯オフセットを大きくすることと、バッファ層(GaAlAsSb層およびInAlAs層)のバンドギャップをより大きくすることによって、デバイス分離を実現すると共にバッファ層からチャネル層への平行伝導をなくすことが挙げられる。本発明の実施形態に係るバッファ構造は、寄生抵抗を小さくする。さらに、当該バッファ構造は、InGaAs量子井戸構造内にキャリアを閉じ込めるべく下側バリアとして機能する。
【0032】
上述の説明では本発明に係る方法で用いられ得る具体的な工程および材料を指定したが、多くの点で変更および置換が可能であることは当業者には明らかである。したがって、このような変更例、変形例、置換例、および、追加例はすべて、本願特許請求の範囲に定められている本発明の思想および範囲内に含まれるものとする。また、微小電子デバイスのある側面については関連技術分野で公知であると考えられる。このため、本明細書に含まれる図面では、微小電子デバイスの例のうち本発明の実施に関連する部分のみを図示している。このため、本発明は本明細書に記載している構造に限定されない。
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図1e】

【図1f】

【図1g】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にGaSb核生成層を形成する段階と、
前記GaSb核生成層にGa(Al)AsSbバッファ層を形成する段階と、
前記Ga(Al)AsSbバッファ層にIn0.52Al0.48As下側バリア層を形成する段階と、
前記In0.52Al0.48As下側バリア層にInAl1−xAsグレーデッド層を形成する段階と
を備える方法。
【請求項2】
前記基板は、[110]方向に約2度から約8度の範囲内でオフカットされた(100)面を持つ高抵抗率のp型シリコン基板を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記GaSb核生成層は、低溶融点材料を含み、厚みが約50オングストロームから約300オングストロームである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記Ga(Al)AsSbバッファ層は、バンドギャップが大きいGa(Al)AsSbバッファ層を含み、厚みが約0.3ミクロンから約2ミクロンである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記Ga(Al)AsSbバッファ層は、前記In0.52Al0.48As下側バリア層と格子整合している請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記In0.52Al0.48As下側バリア層に略格子整合するように前記Ga(Al)AsSbバッファ層に勾配をつけることによって、前記Ga(Al)AsSbバッファ層を形成する段階をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記InAl1−xAsグレーデッド層は、インジウムの割合が約52%から70%である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記InAl1−xAsグレーデッド層にInGa1−xAs量子井戸構造を形成する段階
をさらに備え、
前記InGa1−xAs量子井戸構造および前記InAl1−xAsグレーデッド層に含まれるインジウム組成を制御することによって、歪みを制御する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記InGaAs量子井戸構造は、インジウムガリウムヒ素から形成される歪み層を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記核生成層、前記バッファ層、前記下側バリア層、および前記InAl1−xAsグレーデッド層を形成することによって、バッファ構造を形成し、前記バッファ構造にインサイチュ熱アニーリングを行うことによって転位を除去する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
基板に配設されているGaSb核生成層と、前記GaSb核生成層に配設されているGa(Al)AsSbバッファ層と、前記Ga(Al)AsSbバッファ層に配設されているIn0.52Al0.48As下側バリア層と、前記In0.52Al0.48As下側バリア層に配設されているInAl1−xAsグレーデッド層とを含む転位フィルタリングバッファ構造を形成する段階と、
前記転位フィルタリングバッファ構造に量子井戸構造を形成する段階と
を備える方法。
【請求項12】
前記量子井戸層の上方にスペーサ層を形成する段階と、
前記スペーサ層の上方にデルタドーピング層を形成する段階と、
前記デルタドーピング層の上方に上側バリア層を形成する段階と
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項13】
基板に配設されているGaSb核生成層と、
前記GaSb核生成層に配設されているGa(Al)AsSbバッファ層と、
前記Ga(Al)AsSbバッファ層に配設されているIn0.52Al0.48As下側バリア層と、
前記In0.52Al0.48As下側バリア層に配設されているInAl1−xAsグレーデッド層と
を備える構造。
【請求項14】
前記基板は、[110]方向に約2度から約8度の範囲内でオフカットされた(100)面を持つ高抵抗率のp型シリコン基板を含む
請求項13に記載の構造。
【請求項15】
前記GaSb核生成層は、低溶融点材料を含み、厚みが約50オングストロームから約300オングストロームである
請求項13に記載の構造。
【請求項16】
前記Ga(Al)AsSbバッファ層は、バンドギャップが大きいGa(Al)AsSbバッファ層を含み、厚みが約0.3ミクロンから約2ミクロンである
請求項13に記載の構造。
【請求項17】
前記In0.52Al0.48As下側バリア層に配設されているInAl1−xAsグレーデッド層をさらに備え、
前記InAl1−xAsグレーデッド層は、インジウムの割合が約52%から70%である
請求項13に記載の構造。
【請求項18】
前記InAl1−xAsグレーデッド層に配設されている量子井戸構造
をさらに備える請求項17に記載の構造。
【請求項19】
前記量子井戸構造に配設されているスペーサ層と、
前記スペーサ層に配設されているデルタドーピング層と、
前記デルタドーピング層に配設されている上側バリア層と
をさらに備える請求項18に記載の構造。
【請求項20】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)を備え、前記量子井戸層は、前記HEMTのチャネルを有する
請求項13に記載の構造。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−518443(P2011−518443A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505267(P2011−505267)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/046600
【国際公開番号】WO2009/155157
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】