説明

ジェランシームレス崩壊可能カプセル、及びその製造方法

【課題】ジェランシームレス崩壊可能カプセル、及びその製造方法等を提供すること。
【解決手段】本発明のジェランシームレス崩壊可能カプセルは、コア及びシェルを含有するシームレス崩壊可能カプセルであって、前記シェルがジェランガムを単独で、又は他のゲル化剤、充填剤、及び二価の金属イオン封鎖剤との混合物として含有するゲル化剤を含む。本発明によれば、二価金属イオン、好ましくはカルシウムイオン若しくはマグネシウムイオンをカプセルに接触させることによって、又は有機酸溶液を用いることによって、共押出工程がすぐに終わり、これにより申し分のない崩壊可能カプセルを最終的に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のコア、及び固体か液体の崩壊可能シェルを有する崩壊可能カプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明において、「カプセル」という用語は、物質の球状又は実質的に球状の送達システムを意味し、該物質は、以下において「コア」と称され、シェル中に封入されている。そして、シェルは崩壊されやすく、破壊されるか破裂したときにコアを放出する。「流体」という用語は、固体状態であることとは対照的に流動体であることを意味する。本発明によれば、流体という用語は、微粉固体(例えば粉剤)、さらにはゲル、又は課される外力に応じて製品が一様に形や方向を変えるといった該製品のいかなる物理状態をも含む。本発明によれば、流体は、好ましくは流動性製品若しくはゲル状製品に関する。
【0003】
「崩壊可能カプセル」という用語は、シェルが圧力により破裂して、コアを放出させることができる、上で定義されるカプセルをいう。実施形態によれば、本発明のカプセルは、具体的には液状媒質(例えば水分を含有するゲル、ペースト、又は液状媒質)に組み込まれるように作られてもよく、本実施形態において、カプセルは、媒質中でカプセルが均一に分散している視覚効果をもたらすために、任意の適当な手段によって懸濁、或いは混合されてもよく、カプセルのシェル及び/又はコアは、都合よく着色される。他の実施形態によれば、本発明のカプセルは、固体媒質又は液状媒質(例えば粉体)中に分散されるし、カプセルのシェル及び/又はコアは、都合よく着色される。
【0004】
かかるカプセルは、例えば口腔ケア用途(ねり歯磨き、マウスウォッシュ、ガム類...)、菓子類、乳製品、ベーカリー、香味料のような食品用途、栄養補助食品用途、又は化粧品等の医薬品若しくはパーソナルケア製品において、様々な用途に利用できる。
【0005】
本願において、「カプセル」という用語は、マクロカプセルとミクロカプセルとを含み、直径0.5mmから8mmまで、好ましくは1から5mmまで、さらに好ましくは1.2から3mmまでのカプセルが好ましい、任意の大きさのカプセルを示すために用いられる。
【0006】
継ぎ目のないカプセルの破壊能は、継ぎ目のたやすさ、或いは好ましくない破裂によって影響を受ける場合があるので、シームレスカプセルを得ることは特に興味深い。
【0007】
フジの特許出願である日本国特許第10291928号には、共押出方法を経て得られるカプセルが記載されており、そのカプセルは外側の液相にジェラン及びカルシウム塩を含有する。1978年に初めて発見されたジェランガムは、シュードモナスフィンゴモナス属菌(Sphingomonas elodea)によって生産される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
出願人は、フジの方法を経るジェランカプセルの製造が納得のいくものではなく、そのためカプセルは低品質であって、且つ方法は難しいことを見出した。その理由は、ジェランが実のところ、共押出中にゲル化し、球形の均質な崩壊可能カプセルを得ることは困難だからである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
こういった理由から、本出願人は、フジの方法の改良を試み、従来法の欠点がカルシウム塩の存在に、より一般的に言えば、共押出工程中のジェランにある二価金属塩に起因し得ることを見出した。そこで、出願人は、共押出液相含有ジェランをカルシウム塩の不存在下で製造する方法を実施したところ、驚いたことに得られたカプセルは、所望の球形又は実質的に球形であって、且つ均一な大きさを有することを見出した。しかしながら、このように得られたカプセルは、ほとんど使用できなかった。なぜなら、シェルがあまりにも柔らかく、得られたカプセルが崩壊可能カプセルではなかったからである。出願人は、二価金属イオン、好ましくはカルシウムイオン若しくはマグネシウムイオンをカプセルに接触させることによって、又は有機酸溶液を用いることによって、共押出工程がすぐに終わり、これにより申し分のない崩壊可能カプセルが最終的に得られるという、次の技術的課題に対する解決策を見出した。
【0010】
このように、本発明はシームレスの崩壊可能カプセル及びその製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の方法は、(A)内側の親油性の相を含有するコア及び外側の親水性の相を含有するシェルを有するカプセルを形成するために、外側の親水性の液相及び内側の親油性の液相を共押出する工程と、(B)水溶液中に、好ましくは使用目的に応じてシェルを崩壊しやすくする手段の1つである硬化剤を含有する水溶液中に、カプセルを洗浄及び浸漬する工程と、任意に、(C)得られたカプセルを乾燥する工程、又は任意に、(D)液状媒体中にカプセルを懸濁する工程と、を含む。
【0012】
共押出方法としては、複合液滴形成、シェルの固化、及びカプセル回収といった3つの主なステージが挙げられる。複合液滴は、シェル相内が液体で満たされた相の球体である。液体で満たされた相は、以下において「コア」と記載する。シェル相は、以下「シェル」と記載する。
【0013】
本発明によれば、外側の液相は、ゲル化剤を含み、ジェランガムを、単独で、又は少なくとも1種類の好適なゲル化剤、充填剤及び金属イオン封鎖剤と混合して、液体は好ましくは水溶液であり、より好ましくは脱イオン水又は浸透水である。
【0014】
「ゲル化剤」というのは、本発明の意味において、流動可能な液体又は流動性の液体から固体又はゲルに液相を変換できる剤をいう。
【0015】
「金属イオン封鎖剤」というのは、本発明の意味において、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンのような二価のイオンを錯化、キレート又は封鎖する任意の剤をいう。
【0016】
「実質的に」というのは、数又は値に言及する場合に、その値のプラス又はマイナス10%をいい、球形に言及する場合には、大きい直径が、期待された球形の直径のプラス又はマイナス10%である変形した球形をいう。
【0017】
「ウェットカプセル」というのは、本発明の意味において、シェルが明らかに水分を含有するカプセルをいう。ウェットカプセルという語句は、前記最終製品又はシェルの乾燥質量に基づく計算とは対照的に、最終製品又はシェル中の成分比率の計算のために用いられる。
【0018】
本発明による崩壊可能カプセルは、0.098〜49N(0.01〜5kp)、好ましくは0.98〜24.5N(0.1〜2.5kp)の崩壊強度(エッジ値を含む)を有する。破裂するまで粒子上に垂直に、連続的に負荷をかけることによってカプセルの崩壊強度を測定する。テクスチュロメーター TA.XT プラス(Micro Stable System社製)の圧縮モードで、又は適合能力25kg、分解能0.02kg、精度±0.15%であるLLOYD−CHATLLON デジタルフォースゲージ(DFIS 50モデル)を用いて、本発明におけるカプセルの崩壊強度を測定する。荷重ゲージをスタンドに取り付け、手動式のねじ装置と共に上昇するプレートの真ん中にカプセルを置く。次いで、手動で圧力をかけ、ゲージにより、カプセルが破裂する瞬間の最大荷重(Kg又はLb単位で測定される)を記録する。カプセルが破裂すると、コアが放出される。
【0019】
本発明によれば、ジェランガムは、外側の液相の唯一のゲル化剤、或いは、少なくとも1種類の他のゲル化剤と組み合わせとして用いられ得る親水性コロイドである。他の好ましいゲル化剤は、アルギン酸塩、寒天、カラギーナン、ペクチン類、キサンタンガム、アラビアガム、タラガム、ガディガム、カラヤガム、デキストラン、カードラン、ウェランガム、ラムザンガム、又は改質デンプン類であってよい。好適なジェランガムは、例えば、脱アシル化ジェランガムに限定されない。Kelcogel(登録商標)を好適なジェランガムとして挙げることができる。
【0020】
シェル中に存在するゲル化剤の量は、シェルの全乾燥質量に対して、4〜95質量%、好ましくは5〜75質量%、さらに好ましくは10〜50質量%、より一層好ましくは12〜40質量%である。
【0021】
少なくとも1種類の他のゲル化剤と用いられる場合、ジェランガムと他のゲル化剤との比は、80:20〜20:80、好ましくは75:25〜25:75、さらにより好ましくは60:40〜50:50である。
【0022】
好ましくは、シェルの乾燥質量に対するゲル化剤の質量比は、10%以上、好ましくは12%以上、より好ましくは15%以上である。
【0023】
充填剤は、外側の液相にある乾燥物質の割合を増加する、或いは皮膜特性をもたらすことができる任意の好適な物質である。シェルにおける乾燥物質の質量の増加は、結果としてシェルを固化させ、シェルを物理的により耐久性又は不浸透性にさせる。好ましくは、充填剤は、デキストリン、マルトデキストリン、ポリオール、シクロデキストリン(アルファ、ベータ、又はガンマ)のようなデンプン誘導体、若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)のようなセルロース誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、ポリビニルアルコール、ポリオール類、又はこれらの混合物からなる群より選択される。
【0024】
シェルにおける充填剤の量は、シェルの全乾燥質量に対して、98.5質量%以下、好ましくは25〜95質量%、さらにより好ましくは50〜80質量%である。
【0025】
二価の金属イオン封鎖剤又は錯化剤を用いることで、場合によっては水分を含有する液相成分に存在し、ジェランをゲル化するという効果を有する二価の金属イオンを捕捉させる。このように、二価の金属封鎖剤、好ましくはカルシウムイオン封鎖剤を用いることで、共押出の間、望ましくない、或いは制御できないゲル化を生じることなく、ジェランを共押出できる。
【0026】
金属封鎖剤の量は、シェルの全乾燥質量に対して、2質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.5質量%以下である。
【0027】
好ましくは、外側の相に用いる水分は、脱イオン水、及び/又は、浸透水であり、処理水を使用する可能性はあるが、二価の金属封鎖剤の量を調整する必要がある。
【0028】
封鎖剤は、金属塩であり、好ましくはクエン酸三ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0029】
親水性の外側の液相は、さらに少なくとも1種類の可塑剤を含んでいてもよく、可塑剤は、少なくとも1種類のグリセロール、ソルビトール、マルチトール、トリアセチン、又はポリエチレングリコールタイプの製品、若しくは可塑性を有しているか、保湿性を有している多価アルコールであってよい。有利には、親水性の外側の液相は、少なくとも1種類の着色剤又は色素をさらに含み、第1の実施形態によれば、着色剤又は色素は、粉末形態又は液体溶媒中で安定な懸濁液である。本発明の他の実施形態によれば、液相は香水、芳香剤、香料、又は任意の香り物質を含有してよい。
【0030】
本発明の1つの実施形態によれば、室温から100℃までの温度において、本方法の共押出工程(A)を行うことができる。有利には、室温で行われるとは、大気圧下で18〜30℃、好ましくは20〜25℃である。
【0031】
共押出工程は、2種類の液体の同時押出であって、該2種類の液体は、外側の親水性の液相及び内側の親油性の液相である。欧州特許第513603号明細書(該明細書の記載は、参照として本明細書に組み込まれる)に開示された装置及び方法を用いて該共押出工程を行うことができる。
【0032】
本発明のある実施形態によれば、共押出工程(A)後、シェルを確実にゲル化させるために、例えば、低温浴に接触させることにより、カプセルを低温に維持して、固化工程を行う。低温浴は、好ましくは低温の油又は低温の乳剤であってもよい。低温とは、18℃以下、好ましくは2〜10℃、より好ましくは4〜6℃の任意の温度を意味する。
【0033】
本発明のある実施形態によれば、次いで、余分な油を除去するために、カプセルを遠心分離にかけ、且つ/又は同様に余分な油を除去するために、有機溶媒(例えば、アセトン、酢酸エチル、エタノール、石油エーテル等)で洗浄し、場合によっては、温度と湿度を制御した気流で乾燥する。乾燥空気の相対湿度は、20〜60%、好ましくは30〜50%であり、乾燥空気の温度は、15〜60℃、好ましくは35〜45℃である。
【0034】
他の実施形態によれば、好ましくは、カプセルを二価の塩及び任意に酸を含む硬化剤を含有する、水溶液又は乳剤中に浸漬する。浸漬工程の効果は、カプセルの周囲に残留した油を洗い落とすことと、特に、脱水及び浸透平衡を介してシェルを徐々に強化することである。
【0035】
本発明の1つの実施形態によれば、浸漬後、カプセルを上述の同じ条件で乾燥する。本発明の他の実施形態によれば、浸漬後、カプセルを乾燥しない。
【0036】
硬化剤は、好ましくは、二価の金属イオン又はカルシウムイオン又はマグネシウムイオンのような二価の金属イオンの混合物を含む。
【0037】
硬化剤を含有する、水溶液又は乳剤は、好ましくは二価の金属塩溶液、より好ましくはカルシウム塩又はマグネシウム塩を含有する二価の金属塩溶液、さらに好ましくは塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、又は第二リン酸カルシウムを含有する二価の金属塩溶液である。この溶液は、水中油滴型エマルジョンの水相であってよい。この溶液は、2℃から室温の間の温度であってよい。有利には、硬化剤を含有する水溶液を、酸性のpH条件下に、好ましくはpH5以下に、より好ましくはpH2〜4に維持する。本発明の好ましい実施形態によれば、硬化剤を含有する、水溶液又は乳剤は、3〜4のpH値を有する塩化カルシウム溶液である。
【0038】
硬化剤を含有する水溶液は、例えば食品、医薬品、化粧品に用いる安息香酸エステル、パラベン類、ジオール類、塩化セチルピリジニウム、ジアゾリジニル尿素、又は任意の保存料といった保存料又は殺菌剤を含有してもよい。
【0039】
本発明の1つの実施形態によれば、上述のように、本発明の方法は、外側及び内側の液相を共押出する工程、任意にカプセルを低温条件下に保つことによって、シェルの表面を固化、及び/ゲル化する工程と、上述の本明細書において説明したように、任意に遠心分離する工程と、任意に有機溶媒で共押出したカプセルを洗浄する工程と、結果として得られたカプセルを硬化剤含有水溶液中に浸漬する工程と、任意にカプセルを乾燥する工程とを含む。
【0040】
本発明の1つの実施形態によれば、例えば、カプセルを二価の金属塩、好ましくはカルシウム塩又はマグネシウム塩、より好ましくは塩化カルシウム、硫酸カルシウム又は第二リン酸カルシウムを含有する低温浴中に置くことによって、固化/ゲル化/硬化工程をひとつの工程にまとめることができる。この浴は、水中油滴型エマルジョンであってよい。
【0041】
本発明の方法によって製造されたカプセルは、実質的に、又は完全に球形であって、非常に均一な大きさである。
【0042】
この発明はまた、崩壊可能カプセルに関し、該カプセルは、好ましくは、本発明の方法によって得られる影響を受けやすいシームレスカプセルである。
【0043】
本発明のカプセルは、コアとシェルとを含み、前記シェルは、ジェランガムを単独で、又はジェランガムと他のゲル化剤、充填剤、及び二価の金属イオン封鎖剤との混合物を含むゲル化剤を含有する。
【0044】
好ましくは、シェルのゲル化剤は、ジェランと、ゼラチン及び寒天、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸塩、タラガム、アラビアガム、ガディガム、カロブガム、セルロースガム、デキストラン、カードラン、ウェランガム、ラムザンガム、又は改質デンプンのような親水性コロイドからなる群より選択される少なくとも1種類の他のゲル化剤との組み合わせである。
【0045】
本発明のある好ましい実施形態によれば、充填剤及び金属イオン封鎖剤は、本明細書において上述したとおりである。
【0046】
他の実施形態によれば、シェルは、さらに本明細書において上述したような可塑剤を含む。
【0047】
可塑剤の量は、シェルの全乾燥質量に対して1質量%〜30質量%、好ましくは2質量%〜15質量%、さらにより好ましくは3質量%〜10質量%である。
【0048】
前記カプセルの使用目的によれば、シェルは、香水、芳香剤、又は任意の着香剤のような他の添加剤を含有してよい。
【0049】
前記カプセルの使用目的によれば、シェルは、例えば顔料、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、又はLCWによって流通されているCovasorb色のような如何なるタイプの食品用色素、口腔ケア用色素、化粧品用色素、若しくは医薬品用色素といった着色剤を含んでよい。
【0050】
本発明による崩壊可能カプセルのシェルは、前記カプセルの全質量の8〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜30質量%に相当する。
【0051】
シェルに存在する水分含量は、1〜60質量%、好ましくは5〜40質量%であり、高い割合になってもカプセルは崩壊しやすさを維持している。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明の崩壊可能カプセルは、0.098〜49N(0.01〜5kp)、好ましくは0.098〜24.5N(0.01〜2.5kp)の崩壊強度を有する。
【0053】
都合のよい、カプセルのシェルの厚さは、10〜500μm、好ましくは30〜150μm、より好ましくは50〜60μmである。カプセルの直径/シェルの厚さの比率は、1〜100、好ましくは5〜30である。
【0054】
カプセルのコアは、親油性若しくはエタノールに部分的に可溶である物質若しくは製品、又は油/水/油型のエマルジョンとして調製される分子の混合物から選択的に構成される。
【0055】
本発明の崩壊可能カプセルのコアは、前記カプセルの全質量の50〜92質量%、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは70〜80質量%に相当する。
【0056】
カプセルのコアは、食品、医薬品、又は化粧品業界で通常用いられている1種類又は複数種類の親油性の溶媒から構成されてもよい。好ましい実施形態において、これらの親油性の溶媒は、トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリド、具体的にはカプリル酸及びカプリン酸のトリグリセリド、又は植物油、硬化油、ココナツ油、ヤシ油、オリーブ油、ヒマワリ油、コーン油、アマニ油、綿実油、ラッカセイ油、ブドウ種子油、小麦胚芽油、魚油等のトリグリセリドの混合物、ビート脂、鉱物油、及びシリコーン油であってよい。本発明のカプセルのコアに含まれる親油性の溶媒の量は、カプセルの全質量に対して0.01〜90質量%、好ましくは25〜75質量%である。
【0057】
コアは、香料又は芳香性組成物の調合に通常用いられる1種類又は複数種類の芳香族又は芳香性の分子を含んでいてもよい。芳香族、テルペン族、及び/又はセスキテルペン族炭化水素、より具体的には精油、アルコール、アルデヒド、フェノール、種々の形態のカルボン酸、芳香族アセタール及びエーテル、含窒素ヘテロ環、芳香族及び非芳香族のいずれでもよいケトン、スルフィド、ジスルフィド、並びにメルカプタンを特に挙げられる。コアは化粧品に用いられる1種類又は複数種類の分子又は抽出物を含んでいてもよい。
【0058】
また、コアは、芳香族乳剤に用いられる1種類又は複数種類の充填剤を含んでいてもよい。エステル樹脂型のダンマー樹脂、木材樹脂、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)又は臭素化植物油が挙げられる。これらの充填剤の機能は、液体のコアの比重を調節することである。
【0059】
コア又はシェルは、1種類又は複数種類の甘味料を含んでいてもよく、これらはエタノール溶液又は懸濁液の形態で供給することができる。好適な甘味料の例としては、アスパルテー無、サッカリン、NHDC、スクラロース、アセスルファム、ネオテーム、タウマチン、ステビオシド等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0060】
また、コアは、口腔内に清涼感及び温熱感のいずれかをもたらす、1種類又は複数種類の「知覚」芳香剤を含んでいてよい。好適な清涼剤としては、コハク酸メンチル及びその誘導体、具体的には、本出願人によって市販されているPhyscool(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な温熱剤としては、バニリルエチルエーテルが挙げられるが、これに限定されない。
【0061】
カプセルのコアの溶媒に可溶化できる香料としては、天然又は合成の香料及び/又は芳香剤が挙げられるが、これらに限定されない。好適な芳香剤の例としては、果実、菓子類、花、甘味、木質系の芳香剤が挙げられる。好適な香料の例としては、バニラ、コーヒー、チョコレート、シナモン、ミントがある。コアは、パプリカオレオレジン、ターメリックオレオレジン、カロテン類、クロロフィル、又は任意の他の好適な天然色素製品のような天然の色素だけでなく、フェイクカラーのような親油性の色素を含んでもよい。コアは、ビタミン類、より好ましくはビタミンB、脂肪酸、好ましくはオメガ3の脂肪酸、及び植物の天然抽出物のような親油性の活性物質を含有してもよい。
【0062】
本発明によるカプセルは、食品、口腔ケア製品、栄養補助食品、医薬品、洗浄剤、及び化粧品のような様々な製品中に含有されてもよい。このように、本発明は、本発明による崩壊可能カプセルを含有する食品、本発明による崩壊可能カプセルを含有する口腔ケア製品、好ましくは、本発明による崩壊可能カプセルを含有する歯磨き粉、本発明による崩壊可能カプセルを含有する医薬品、本発明による崩壊可能カプセルを含有する香水に関する。
【0063】
本発明のカプセルは、ゲルの懸濁液であるスラリー中にあってもよく、好ましくは該スラリーがキサンタンガム、ジェランガム、CMC、又はカルボポールのようなゲル化剤、アラボキシメチルセルロース、又は懸濁化剤として一般に用いられる任意のポリマーを用いて調製され、任意に保存料及び安定剤を含む。
【0064】
本発明のカプセルの全質量は、カプセルの直径及びシェルを満たすコアの量に依存する。本発明のある実施形態によると、カプセルの全質量は、0.1〜50mg、好ましくは0.2〜20mg、より好ましくは0.5〜10mgの範囲内である。
【0065】
以下の実施例により、本発明を説明するが、これらは発明の範囲を限定するものと解釈されてはならず、図面を参照して目を通す必要がある。
【実施例】
【0066】
<実施例1>メントールカプセル(3039/A1参照)を、以下の組成物を含む外側の液相と内側の液相とを共押出することによって調製した。
【0067】
【表1】

【0068】
得られたカプセルを、A1a及びA1bとして2つの処理単位に分けた。各々の処理単位から得られたカプセルを、4℃で1時間冷却し、脱イオン水で洗浄後、塩化カルシウム(A1a:0.1%、A1b:1%)の水溶液が入ったpH3.5、20℃の浴中にて15分間浸漬した。
【0069】
次いで、テクスチュロメーター TA.XT プラス(MicroStable System社製)を用いて、A1a及びA1bの両方のカプセルについてのウェットカプセルの崩壊強度(ゲル強度)を測定することで、カルシウム濃度の影響を比較した(その結果を図1に示す)。
【0070】
ウェットカプセル強度は、0.1%の塩化カルシウムを用いるよりも、1%の塩化カルシウムを用いた方が高い。
【0071】
乾燥後、圧縮モードのテクスチュロメーターを用いてカプセルの崩壊強度を測定した。
【0072】
【表2】

【0073】
得られたカプセルは、以下の物理的特性を示した。直径:2mm、シェルの厚さ:0.096mm、全質量:4mg、コアの質量:2.8mg(70%)、シェルの質量:1.2mg(30%)である。
【0074】
次いで、かかるカプセルは透明な歯磨きジェル中に注入されて、壊れたときにメントールを遊離する球形の青いカプセルが良好な視覚効果をもたらす。
【0075】
<実施例2>シナモンカプセル(4053/F1参照)を、以下の組成物を含む外側の液相と内側の液相とを共押出することによって調製した。
【0076】
【表3】

【0077】
得られたカプセルを、4℃で1時間冷却し、脱イオン水で洗浄後、1.25%の塩化カルシウム水溶液が入ったpH3、20℃の浴中にて30分間浸漬した。
【0078】
得られたカプセルは、以下の物理的特性を示した。直径:1.2mm、シェルの厚さ:0.053mm、全質量:0.87mg、コアの質量:0.62mg(71.98%)、シェルの質量:0.24mg(28.02%)である。次いで、カプセルを、ミント香料及び4053/F1のシナモンカプセルを0.2%組み込んだ歯磨き粉ベース中に注入した。ブラッシングの間、シナモン香料は、カプセルの良好な崩壊能を示すように、はっきりと確認された。
【0079】
<実施例3>オレンジカプセル(5053/C1参照)を、以下の組成物を含む外側の液相と内側の液相とを共押出することによって調製した。
【0080】
【表4】

【0081】
次いで、テクスチュロメーター TA.XT プラス(MicroStable System社製)を用いて、ウェットカプセルの崩壊強度(ゲル強度)を測定する。得られたカプセルは、以下の物理的特性を示した。直径:2.5mm、シェルの厚さ:0.32mm、全質量:8.2mgである。次いで、飲料用途に利用するために、カプセルをキサンタンガムの懸濁液中に入れる。カプセルを飲み込んだり、歯の下で壊すことによって、口の中に香料を遊離させる。
【0082】
<実施例4>メントールカプセル(5025/B1参照)を、以下の組成物を含む外側の液相と内側の液相とを共押出することによって調製した。
【0083】
【表5】

【0084】
カルシウム放出剤として酸を用いたウェットカプセルの処理は、カプセルの崩壊強度を増強させる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】ウェットカプセルの崩壊強度に対するカルシウム濃度の影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及びシェルを含有するシームレス崩壊可能カプセルであって、前記シェルがジェランガムを単独で、又は他のゲル化剤、充填剤、及び二価の金属イオン封鎖剤との混合物として含有するゲル化剤を含むシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項2】
前記ゲル化剤は、ジェランと、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、セルロースガム、アルギン酸塩、デキストラン、カードラン、ウェランガム、ラムザンガム、又は改質デンプンからなる群より選択される1種類のゲル化剤との混合物である請求項1に記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項3】
前記シェルに存在する前記ゲル化剤の量は、シェルの全乾燥質量に対して4〜95質量%、好ましくは5〜75質量%、さらにより好ましくは10〜50質量%である請求項1又は2に記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項4】
前記ゲル化剤は、ジェランガム単独である請求項3に記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項5】
少なくとも他のゲル化剤との混合物として用いた場合に、ジェランガムと他のゲル化剤との質量比は、80:20〜20:80、好ましくは75:25〜25:75、さらにより好ましくは60:40〜50:50である請求項1から3のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項6】
前記充填剤は、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリンのようなデンプン誘導体、及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)のようなセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリオール、又はこれらの混合物である請求項1から5のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項7】
シェルに存在する前記充填剤の量は、シェルの全乾燥質量に対して、98.5質量%以下、好ましくは25〜95質量%、さらにより好ましくは50〜80質量%である請求項1から6のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項8】
前記金属イオン封鎖剤は、金属塩、好ましくはクエン酸三ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される金属塩である請求項1から7のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項9】
前記金属イオン封鎖剤の量は、シェルの全乾燥質量に対して、2質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.5質量%以下である請求項1から8のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項10】
前記シェルは、例えばクエン酸塩、グルクロン酸塩、アジピン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、及びグルコノデルタラクトン塩、並びにこれらの混合物を含む群から選択される1種類の酸性塩をさらに含有する請求項1から9のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項11】
0.098〜49N(0.01〜5kp)の崩壊強度を有する請求項1から10のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項12】
可塑剤の量は、シェルの全乾燥質量に対して、0.1〜30質量%、好ましくは2〜15質量%、さらにより好ましくは3〜10質量%である請求項1から11のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項13】
0.098〜49N(0.01〜5kp)の崩壊強度を有する請求項1から12のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセル。
【請求項14】
内側の親油性の相を含有するコア及び外側の親水性の相を含有するシェルで構成されるカプセルを形成するために、外側の親水性の液相及び内側の親油性の液相を共押出する工程と、硬化剤を含有する水溶液中に浸漬する工程と、を含み、外側の液相が、ジェランガムを単独で、又は他のゲル化剤、充填剤、及び二価の金属イオン封鎖剤との混合物として含有する1種類のゲル化剤を含むシームレス崩壊可能カプセルの製造方法。
【請求項15】
内側の親油性の相を含有するコア及び外側の親水性の相を含有するシェルで構成されるカプセルを形成するために、外側の親水性の液相及び内側の親油性の液相を共押出する工程と、任意にカプセルを低温条件に保つことによってシェルの表面を固化し、且つ/又はゲル化する工程と、任意にこのようにして得られたカプセルを有機溶媒によって洗浄する工程と、硬化剤を含有する水溶液中に浸漬する工程と、任意にカプセルを乾燥する工程と、を含む請求項14に記載のシームレス崩壊可能カプセルの製造方法。
【請求項16】
前記硬化剤は、二価イオン、好ましくはカルシウムイオンを含有する請求項14又は15に記載のシームレス崩壊可能カプセルの製造方法。
【請求項17】
前記硬化剤を含有する水溶液は、pHが好ましくは3〜4である塩化カルシウム溶液である請求項14から16のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセルの製造方法。
【請求項18】
前記ゲル化剤は、ジェランと、ゼラチン及び寒天、カラギーナン、ペクチン類、キサンタンガム、セルロースガム、アルギン酸塩、デキストラン、カードラン、ウェランガム、ラムザンガム、又は改質デンプン類及びこれらの混合物のような親水性コロイドからなる群より選択される少なくとも1種類のゲル化剤との組み合わせである請求項14から17のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセルの製造方法。
【請求項19】
前記充填剤は、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリンのようなデンプン誘導体、HPMC、HPC、MCのようなセルロース誘導体、及びこれらの混合物である請求項14から18のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセルの製造方法。
【請求項20】
前記金属イオン封鎖剤は、金属塩、好ましくは炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される金属塩である請求項14から19のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセルの製造方法。
【請求項21】
前記外側の親水性の液相は、可塑剤、好ましくはグリセロール、ソルビトール、マルチトール、トリアセチン若しくはPEGタイプ、又は可塑性を有する他のポリオール、及びこれらの混合物からなる群より選択される可塑剤を含む請求項14から20のいずれかに記載のシームレス崩壊可能カプセルの製造方法。
【請求項22】
請求項1から13のいずれかに記載の崩壊可能カプセルを含むスラリーであって、CMC、キサンタンガム、又はカルボポールのようなゲル化剤を用いて形成されたゲル中に懸濁され、且つ任意に保存料及び安定剤を含むスラリー。
【請求項23】
請求項1から13のいずれかに記載の崩壊可能カプセルを含む食品。
【請求項24】
請求項1から13のいずれかに記載の崩壊可能カプセルを含む口腔ケア用品。
【請求項25】
請求項1から13のいずれかに記載の崩壊可能カプセルを含む医薬品。
【請求項26】
請求項1から13のいずれかに記載の崩壊可能カプセルを含む香料。

【図1】
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【公表番号】特表2008−546756(P2008−546756A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517632(P2008−517632)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002905
【国際公開番号】WO2007/012981
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(507038674)
【Fターム(参考)】