説明

ステンシルマスクの製造方法

【課題】パターン精度ならびに歩留まりの高いステンシルマスクの製造方法を提供すること。
【解決手段】基板上にマスク材料層を形成した構造を準備する工程、前記マスク材料層上に無機レジスト層を形成する工程、前記無機レジスト層上に有機レジスト層を塗布した後、リソグラフィーによりパターニングし、有機レジストパターンを形成する工程、前記有機レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、前記無機レジスト層をエッチングし、無機レジストパターンを形成する工程、前記基板の裏面を加工し、ステンシルマスク基体を形成する工程、前記無機レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、前記マスク材料層をエッチングし、マスク母体を形成する工程、及び前記無機レジストパターンを除去する工程を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の製造プロセスにおいて、電子線やイオンビームなどの荷電粒子線露光に用いられるステンシルマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化が急速に進んでいる。そのような微細パターンを有する半導体素子の製造技術として、様々な露光技術が開発されている。例えば、電子線部分一括露光や電子線ステッパ露光のような電子線を用いる露光法、イオンを用いる露光法、真空紫外域の光を用いる露光法、極紫外域の光を用いる露光法等がある。
【0003】
これらの露光法のうち、電子線を用いる露光法の一つとして、電子線ステッパを用いて縮小露光する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この方法では、20〜100kV程度で加速した高速電子を、電子線マスク及び電子レンズを用いて、通常1/4に縮小露光し、半導体回路等の所望のパターンを形成する。電子線マスクとしては、メンブレンマスクやステンシルマスクが用いられる。
【0004】
メンブレンマスクは、電子線を透過しやすい軽元素からなる薄膜(メンブレン)上に、電子線を散乱しやすい重金属からなる薄膜がパターン化加工されたマスク層(散乱層)から構成される。例えば、メンブレン材料としては窒化シリコン膜、散乱層材料としてはタングステン薄膜が用いられる。
【0005】
一方、ステンシルマスクは、メンブレン薄膜を有しておらず、露光部には貫通孔が設けられている。散乱層としては通常単結晶シリコンが用いられ、その厚みは通常2μm程度である。
【0006】
メンブレンマスクでは、電子線露光部にメンブレン薄膜が介在するために、メンブレン材料として軽元素を用い、かつその膜厚を薄くしても、無散乱電子の割合は小さい。さらに、弾性散乱により角度を変えた電子は、その殆どが制限アパーチャでカットされるため、ビーム電流の損失も大きい。また、制限アパーチャを透過し、露光に寄与する電子も、一部がプラズモン励起等の非弾性散乱によりエネルギーを失っている。その結果、露光電子のエネルギー分散が大きくなり、即ち、色収差により解像度が低下する。この色収差を低減するためには、収束角を小さくすることが有効であるが、反面、クーロン効果が大きくなり、やはりビーム電流が制限される。
【0007】
一方、ステンシルマスクでは、マスク自体に電子線が通過できる貫通孔が設けられ、露光電子が開口部を自由に通過できるため、電子線のエネルギー損失がない。従って、メンブレンマスクと比較し、色収差による解像度低下がない。
【0008】
最近、ステンシルマスクを適用し、電子線を用いて等倍露光を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この方法は、従来の電子線を用いる露光法に比べて、電子線の加速電圧が2kVと低く、即ち、低速電子線を用いるという特徴を有する。このような電子線露光装置では、レンズ系やビーム電流が小さいため、近接効果の影響を受けず、さらにクーロン効果も小さいため、解像度の低下が少ないという利点がある。
【0010】
このような等倍露光用に用いられるステンシルマスクでは、マスクパターンの加工精度が重要となる。特に、マスクの膜厚とマスクパターンの線幅(電子線の透過孔の径)との比であるアスペクト比が問題となる。マスクパターンは、反応性イオンエッチングにより加工されるが、アスペクト比は、通常、10程度である。従って、例えば、線幅100nmのパターンを形成するには、マスクの膜厚は1μm程度が上限となる。
【0011】
通常、ステンシルマスクを構成する薄膜の材質として単結晶シリコンを用いる場合、薄膜を支えてマスクの平面性を維持するために、基板が必要である。この基板としては、加工性や入手容易性の点から、単結晶シリコンが用いられている。そして、エッチングにより薄膜の微細加工を行うため、2枚の単結晶シリコン基板によりシリコン酸化膜を挟んだ構造のSOI(Silicon On Insulator)基板を用い、マスクパターンは、一方の単結晶シリコン基板を研磨して所定の膜厚にし、次いでパターニングすることにより作製されている。この時、SOI基板の中間層であるシリコン酸化膜は、マスクパターンを加工する際のエッチングストッパーとして機能する。
【0012】
次に、上記に示したような従来のステンシルマスクの一般的な製造方法について、図3(a)〜(d)を参照して説明する。
【0013】
まず、図3(a)に示すようなシリコン支持基板31、中間酸化膜32、及びシリコン薄膜33からなるSOI基板34を準備する。
【0014】
次いで、SOI基板34の表面のシリコン薄膜33上に電子線レジストを塗布し、電子線リソグラフィーによりパターンニングし、図3(b)に示すように、マスク母体35を形成する。
【0015】
次に、図3(c)に示すように、シリコン支持基板31をフォトリソグラフィーにより加工し、ステンシルマスク基体36を形成する。このとき、エッチングには、水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液によるウェットエッチング、もしくはフッ素あるいは塩素などのハロゲン系原料ガスを主成分としたエッチングガスによるドライエッチングが用いられる。
【0016】
続いて、SOI基板34の中間酸化膜32を除去し、中間酸化膜残層37を残して、図3(d)に示すように、ステンシルマスクが完成する。
【0017】
このような図3に示す従来の製造方法によると、シリコン薄膜33のエッチングによるマスク母体35の形成の際、中間酸化膜32をエッチングストッパーとして用いて、エッチングを停止させるが、閉塞部にイオン分布ができるため、オーバーエッチングをする際、サイドエッチングが生じやすくなる。その結果、以下に示すような、エッチングストッパーを用いない貫通エッチングを行う方法に比較すると、マスク母体35の加工形状の制御が難しくなり、マスク寸法の加工精度が低下し、収率の低下が避けられない。
【0018】
次に、上記に示したような従来のステンシルマスクの製造方法の別の例について、図4(a)〜(d)を参照して説明する。
【0019】
まず、図4(a)に示すようなシリコン支持基板41、中間酸化膜42、及びシリコン薄膜43からなるSOI基板44を準備する。次いで、図4(b)に示すように、シリコン支持基板41を、フォトリソグラフィーにより加工し、ステンシルマスク基体45を形成する。このとき、基板44のエッチングの際には、中間酸化膜42をエッチングストッパーとして利用する。このエッチングには、水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液によるウエットエッチング、もしくはフッ素あるいは塩素などのハロゲン系原料ガスを主成分としたエッチングガスによるドライエッチングが用いられる。
【0020】
次に、図4(c)に示すように、露出する中間酸化膜42を除去し、中間酸化膜残層46を形成した後、表面のシリコン薄膜43上に電子線レジスト(図示せず)を塗布し、電子線リソグラフィーによりパターンニングし、図4(d)に示すように、マスクパターンを有するマスク母体47を形成し、ステンシルマスクが完成する。
【0021】
このような従来のステンシルマスクの製造方法によると、ステンシルマスクのパターン精度の向上のために、裏面のシリコン支持基板41を先にエッチングし、メンブレンを形成した後、マスク加工を貫通エッチングにより行っているが、メンブレン状態でマスクパターンを形成するため、メンブレン状態でのプロセスが長く、またメンブレン上へのレジストの塗布時の損傷の発生や電子線レジストの応力調整が不可欠となり、収率の低下が避けられない。
【0022】
また、図3ならびに図4に示す従来の製造方法では、一般に有機レジストのみの単層レジストをマスク母体の加工に用いているが、ステンシルマスクのデザインルールは100nm以下が要求されるようになり、更にパターン精度ならびに加工精度を向上させることが不可欠となっている。
【非特許文献1】S. D. Berger et.al., Applied Physics Letters,57, 153 (1990) )
【特許文献1】特許第2951947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、このような事情の下になされ、製造プロセスが簡便でかつ歩留まりがよく、パターン精度の高いステンシルマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、基板上にマスク材料層を形成した構造を準備する工程、前記マスク材料層上に無機レジスト層を形成する工程、前記無機レジスト層上に有機レジスト層を塗布した後、リソグラフィーによりパターニングし、有機レジストパターンを形成する工程、前記有機レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、前記無機レジスト層をエッチングし、無機レジストパターンを形成する工程、前記基板の裏面を加工し、ステンシルマスク基体を形成する工程、前記無機レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、前記マスク材料層をエッチングし、マスク母体を形成する工程、及び前記無機レジストパターンを除去する工程を具備することを特徴とするステンシルマスクの製造方法を提供する。
【0025】
また、本発明の第2の態様は、基板上に形成されたストッパー層の上にマスク材料層を形成した構造を準備する工程、前記マスク材料層上に無機レジスト層を形成する工程、前記無機レジスト層上に有機レジスト層を塗布した後、リソグラフィーによりパターニングし、有機レジストパターンを形成する工程、前記有機レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、前記無機レジスト層をエッチングし、無機レジストパターンを形成する工程、前記基板の裏面を加工し、開口を有するステンシルマスク基体を形成する工程、前記ステンシルマスク基体の開口に露出する前記ストッパー層を除去する工程、前記無機レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、前記マスク材料層をエッチングし、マスク母体を形成する工程、及び前記無機レジストパターンを除去する工程を具備することを特徴とするステンシルマスクの製造方法を提供する。
【0026】
以上のように構成される本発明の第1及び第2の態様に係るステンシルマスクの製造方法では、無機レジストパターンを形成した後に基板裏面の加工を行い、ステンシルマスク基体を形成した後にマスク材料層をエッチングし、マスク母体を形成している。そのため、マスク材料層を貫通エッチングすることが可能となる。マスク材料層の貫通エッチングによると、無機レジストパターンを形成した後に引き続きマスク材料層をエッチングする従来の方法のように、マスク材料層のエッチングの際にサイドエッチングが生じて、マスク母体の加工精度が困難となることはなく、パターン精度を向上させることが可能である。
【0027】
また、基板裏面の加工前に無機レジストパターンを形成しているため、マスク材料層が露出した状態で基板裏面の加工を行う他の従来の方法のように、マスク材料層がメンブレン状態のまま供されるプロセスが長くなることはなく、メンブレン破損等が生ずることがないという利点がある。
【0028】
更に、有機レジストと無機レジストの2層のレジストを用いているため、有機レジスト単層の場合よりも微細パターンを精度よく形成することが可能である。
【0029】
本発明において、マスク材料としては、シリコン、炭素、金属、及びそれらの化合物からなる群から選ばれた1種を用いることが出来る。
【0030】
また、ストッパー層としては、酸化シリコン、金属、炭素、及びそれらの化合物からなる群から選ばれた1種を用いることが出来る。
【0031】
なお、ストッパー層は、基板とマスク材料とのエッチング選択比がとれない場合に用いる必要がある。例えば、シリコン層の間に中間酸化膜を介在させた構造のSOI基板のように、基板とマスク材料がいずれもシリコンからなる基板を用いた場合に、中間酸化膜がストッパー層となる。
【0032】
無機レジストとしては、窒化クロム、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、金属、及び金属化合物からなる群から選ばれた1種を用いることが出来る。マスク材料がシリコンである場合には窒化クロムを、ダイヤモンドである場合には窒化シリコンを、それぞれ無機レジストとして用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、無機レジストパターンを形成した後に基板裏面の加工を行い、マスク材料層を貫通エッチングしているため、パターン精度を向上させることが可能である。また、基板裏面の加工前に無機レジストパターンを形成しているため、マスク材料層がメンブレン状態のまま供されるプロセスが長くなることはなく、メンブレン破損等が生ずることがないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0035】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るステンシルマスクの製造方法を工程順に説明する断面図である。
【0036】
まず、図1(a)に示すように、基板11上にストッパー層12を介してマスク材料層13を形成した構造14を準備する。基板11としてはシリコン基板等を、ストッパー層12としては酸化シリコン層等を、マスク材料層13としては、金属、シリコン、又はそれらの化合物を用いることが出来る。このような構造14としては、例えば、SOI基板を用いることが出来る。
【0037】
この場合、基板11の膜厚は300〜1000μm、ストッパー層12の膜厚は0.2〜1.5μm、マスク材料層13の膜厚は0.5〜2μmであるのが好ましい。
【0038】
次いで、構造14上に、無機レジスト膜15を形成する。無機レジスト膜15は、金属、シリコン、又はそれらの化合物からなるものとすることが出来、その具体例としては、窒化シリコン膜、窒化クロム膜、窒化酸化シリコン膜等を挙げることが出来る。無機レジスト膜15は、例えば、プラズマCVD法又はスパッタ法により形成することが出来る。無機レジスト膜15の膜厚は、0.1〜0.5μmであるのが好ましい。
【0039】
次に、この無機レジスト層15上に、有機レジスト層(図示せず)を形成した後、リソグラフィーによりパターニングし、有機レジストパターンを形成する。有機レジストは特に限定されず、無機レジスト層のエッチングマスクとして使用可能な様々なフォトレジスト又は電子線(EB)レジストを使用することが出来る。
【0040】
その後、この有機レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、無機レジスト層3をエッチングして、図1(b)に示すように、無機レジストパターン16を形成する。無機レジスト層15のエッチングには、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)を用いることが出来る。なお、RIE以外の他のドライエッチング又はウエットエッチングを用いることも可能である。
【0041】
次に、図1(c)に示すように、基板11の裏面を加工して、開口を有するステンシルマスク基体を形成する。この基板11の裏面の加工は、フォトリソグラフィーとRIEを用いて行うことが出来る。例えば、フォトリソグラフィーにより、基板11の除去すべき部分を除く面にエッチングマスクを形成し、これをマスクとして基板11を、例えばRIEによりエッチングすることにより、開口を有するステンシルマスク基体を得ることが出来る。
【0042】
この基板11の裏面の加工の際には、ストッパー層12が存在するため、マスク材料層13が除去されることはない。
【0043】
その後、ステンシルマスク基体17の開口に露出するストッパー層12を除去することにより、図1(c)に示す構造が得られる。なお、参照符号18は、中間酸化膜残層を示す。
【0044】
次いで、無機レジストパターン16をエッチングマスクとして用いて、マスク材料層13をエッチングし、マスク母体19を形成し、最後に無機レジストパターン19を除去することにより、図1(d)に示すステンシルマスクが完成する。
【0045】
以上の製造工程では、図1(b)に示すように、無機レジストパターン16を形成した後、通常は無機レジストパターン16をマスクとしてマスク材料層13をパターニングするところを、そうせずに、先に基板11の裏面の加工とストッパー層12の除去を行っている。そのため、マスク材料層13のパターニングの際には下地が存在せず、マスク材料層13の貫通エッチングを行うことが出来る。その結果、サイドエッチングを生ずることがなく、パターン精度の向上が可能となる。
【0046】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るステンシルマスクの製造方法を工程順に説明する断面図である。
【0047】
まず、図2(a)に示すように、基板21上に、例えばCVD法により、マスク材料層22を形成する。基体1としては、シリコン基板、表面に酸化膜が形成されたシリコン単結晶基板、ガラス基板、石英基板等を用いることが出来る。マスク材料層22としては、例えばシリコン、炭素、金属、及びそれらの化合物を用いることが出来る。
【0048】
なお、本実施形態では、ストッパー層を用いていないので、基体1とマスク材料層22とは、エッチング選択比を大きくとれる材料を選択する必要がある。
【0049】
次いで、第1の実施形態と同様にして、図2(b)に示すように、マスク材料層22上に無機レジスト膜23を形成し、図2(c)に示すように、無機レジスト膜23をパターニングして、無機レジストパターン24を形成する。
【0050】
次に、図2(d)に示すように、基板21の裏面を加工する。この場合、基板21とマスク材料層22とは、エッチング選択比をとれる材料からなるので、ストッパー層がなくても、マスク材料層22がエッチングされることはない。
【0051】
その後、第1の実施形態と同様にして、図2(e)に示すように、無機レジストパターン24をエッチングマスクとして用いてマスク材料層22をエッチングし、マスク母体26を形成し、最後に無機レジストパターン24を除去することにより、図2(d)に示すステンシルマスクが完成する。
【0052】
以上の製造工程では、図2(c)に示すように、無機レジストパターン24を形成した後に、基板21の裏面の加工を行っている。そのため、マスク材料層が露出した状態で基板裏面の加工を行う他の従来の方法のように、マスク材料層がメンブレン状態のまま供されるプロセスが長くなることはなく、メンブレン破損等がなくなるという利点がある。
【0053】
以下、本発明の実施例を示し、本発明の効果をより具体的に説明する。
【0054】
実施例1
図1(a)〜(d)を参照して、本発明の一実施例に係るステンシルマスクの製造方法について、工程順に説明する。
【0055】
まず、図1(a)に示すように、シリコン支持基板11、中間酸化膜12、及びシリコン薄膜13からなるSOI基板14上に、反応性スパッタ法を用いて、無機レジスト(ハードマスク)層として窒化クロム膜15を成膜した。
【0056】
反応性スパッタの条件は次の通りである。
ターゲット材料:クロム
導入ガス:アルゴン(100sccm)、窒素(50sccm)
到達真空度:1x10−4Pa
反応圧力:0.7Pa
パワー:1kW
基板温度:室温
膜厚:50nm。
【0057】
次いで、窒化クロム膜15上に、電子線レジスト(図示せず)を0.5μmの厚さに塗布し、これに加速電圧20kVの電子線描画機を用いて描画し、その後、専用のアルカリ現像液を用いて現像をおこない、有機レジストパターンを形成した。
【0058】
続いて、図1(b)に示すように、有機レジストパターンをマスクとして用いて、反応性イオンエッチング(RIE)装置を用い、エッチングガスとして塩素と酸素の混合ガスを用いて、窒化クロム膜15をエッチングして、窒化クロム膜パターン16を形成し、その上の有機レジストパターンを酸素プラズマによりアッシング除去した。
【0059】
次に、図1(c)に示すように、フォトリソグラフィーとRIEにより基板を加工し、ステンシルマスク基体17を得た。ここで、エッチングガスとして四フッ化炭素を用いた。続いて、SOI基板14の中間酸化膜12を除去し、中間酸化膜残層18を残した。
【0060】
その後、図1(d)に示すように、窒化クロム膜パターン16をエッチングマスク(ハードマスク)として、シリコン膜からなるマスク母体材料層13を、SFと酸素の混合ガスをエッチングガスとして用いたICPによりエッチングし、透過口を有するマスク母体19を形成した。その後、硝酸セリウムアンモニウム溶液を用いて、ウェットエッチングにより窒化クロム膜パターン16を除去し、ステンシルマスクが完成した。
【0061】
本実施例により得たステンシルマスクは、パターン精度が非常に優れたものであった。
【0062】
実施例2
図2(a)〜(e)を参照して、本発明の他の実施例に係るステンシルマスクの製造方法について、工程順に説明する。
【0063】
まず、図2(a)に示すように、厚み525μmの単結晶シリコン基板21上に、マイクロ波プラズマCVD装置を用いて、膜厚1μmのダイヤモンド膜22を成膜した。
【0064】
次いで、図2(b)に示すように、無機レジスト(ハードマスク)として、窒化シリコン膜23を高周波プラズマCVD装置を用いて成膜した。成膜条件は次の通りである。
原料ガス:シラン(5sccm)、アンモニア(20sccm)、水素(250sccm)
反応圧力:1Torr
高周波パワー:180W
基板温度:150℃
膜厚:500nm。
【0065】
次に、ハードマスクとなる窒化シリコン膜13上に、電子線レジスト(図示せず)を0.5μmの厚さに塗布した。電子線レジストとしては、ZEP(商品名、日本ゼオン社製)を用いた。その後、この電子線レジストに電子線描画機を用いて電子線をパターン状に描画露光した後、専用の現像液であるZED−N50(商品名、日本ゼオン社製)を用いて現像をおこない、有機レジストパターンを形成した。
【0066】
次に、図2(c)に示すように、上記有機レジストパターンをマスクとして用いて、反応性イオンエッチング(RIE)装置を用いて、窒化シリコン膜13にパターンを転写し、窒化シリコン膜パターン24を形成した。RIE条件は、下記の通りである。
【0067】
エッチングガス:C(35sccm)
反応圧力:30mTorr
高周波パワー:300W
その後、図2(d)に示すように、フォトリソグラフィーとRIEにより基板21を加工し、ステンシルマスク基体25を得た。ここで、エッチングガスとして四フッ化炭素を用いた。
【0068】
続いて、図2(e)に示すように、RIEにより、上記窒化シリコン膜パターン24をマスクとして、ダイヤモンド膜22をエッチングし、ダイヤモンド膜パターン26を形成した。RIE条件は下記の通りである。
【0069】
エッチングガス:O(100sccm)
反応圧力:30mTorr
高周波パワー:300W
最後に、フッ酸を用いて室温にて窒化シリコン膜パターン24をエッチングにより剥離し、ステンシルマスクを完成した。
【0070】
本実施例により得たステンシルマスクもまた、パターン精度が非常に優れたものであった。
【0071】
以上の実施例では、マスク母体としてシリコン及びダイヤモンド、無機レジストとして窒化クロム及び窒化シリコンを用いた例について説明したが、本発明はこれに限らず、マスク母体として石英、金属等、無機レジストとして窒化酸化シリコン、金属等を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のステンシルマスクの製造方法は、各種半導体装置の製造プロセスに広範に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に係るステンシルマスクの製造方法を工程順に示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るステンシルマスクの製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】従来のステンシルマスクの製造方法を工程順に示す断面図である。
【図4】他の従来のステンシルマスクの製造方法を工程順に示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
11,21,31,41…基板、12,32,42・・・中間酸化膜(ストッパー層)、13,22,33,43・・・マスク材料層、15,23・・・無機レジスト層、16,24・・・無機レジストパターン、17,25,36,45・・・ステンシルマスク基体、18,37,46・・・中間酸化膜残層、19,26,35,47・・・マスク母体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にマスク材料層を形成した構造を準備する工程、
前記マスク材料層上に無機レジスト層を形成する工程、
前記無機レジスト層上に有機レジスト層を塗布した後、リソグラフィーによりパターニングし、有機レジストパターンを形成する工程、
前記有機レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、前記無機レジスト層をエッチングし、無機レジストパターンを形成する工程、
前記基板の裏面を加工し、ステンシルマスク基体を形成する工程、
前記無機レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、前記マスク材料層をエッチングし、マスク母体を形成する工程、及び
前記無機レジストパターンを除去する工程
を具備することを特徴とするステンシルマスクの製造方法。
【請求項2】
基板上に形成されたストッパー層の上にマスク材料層を形成した構造を準備する工程、
前記マスク材料層上に無機レジスト層を形成する工程、
前記無機レジスト層上に有機レジスト層を塗布した後、リソグラフィーによりパターニングし、有機レジストパターンを形成する工程、
前記有機レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、前記無機レジスト層をエッチングし、無機レジストパターンを形成する工程、
前記基板の裏面を加工し、開口を有するステンシルマスク基体を形成する工程、
前記ステンシルマスク基体の開口に露出する前記ストッパー層を除去する工程、
前記無機レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、前記マスク材料層をエッチングし、マスク母体を形成する工程、及び
前記無機レジストパターンを除去する工程
を具備することを特徴とするステンシルマスクの製造方法。
【請求項3】
前記マスク材料は、シリコン、炭素、金属、及びそれらの化合物からなる群から選ばれた1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のステンシルマスクの製造方法。
【請求項4】
前記ストッパー層は、酸化シリコン、金属、炭素、及びそれらの化合物からなる群から選ばれた1種からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のステンシルマスクの製造方法。
【請求項5】
前記無機レジストは、窒化クロム、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、金属、及び金属化合物からなる群から選ばれた1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のステンシルマスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−80361(P2006−80361A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263908(P2004−263908)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】