説明

ダイボンド剤組成物

【課題】柔軟性、耐熱衝撃性に優れる硬化物を与えるダイボンド剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)式(1)の繰り返し単位を含む重合体を100質量部(B)成分(A)のRと反応性の基を有する硬化剤を、該反応性の基の当量のRの当量に対する比が0.8〜1.2となる量(C)重合開始剤を0.1〜10重量部、及び(D)硬化促進剤を0.1〜10重量部含む、ダイボンド剤組成物。


[Rは水素原子またはエポキシ基、(メタ)クリロイル基を含む有機基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性が異なる2種の官能基を有するとシリコーン重合体を含み、柔軟性、耐衝撃性に優れた硬化物を与える、ダイボンド剤組成物及び該組成物を用いて半導体装置を作る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置用のダイボンド剤はチップを基板上に固定する接着剤であり、半導体装置の組み立てに不可欠の部材である。ダイボンド剤は単結晶珪素を主成分とするチップと、プラスチックを主成分とする基板を接合し、更にこれらをプラスチックと無機充填材を主成分とする封止材で保護する為、ダイボンド剤内部或いはダイボンド剤と周辺部材との界面には、これらの構成部材の特性、即ち熱膨張や弾性率の相違による大きな応力が発生する。斯かる応力を吸収するために、シリコーン変性樹脂を用いることが知られている(特許文献1)。
【0003】
ダイボンド剤を基板上に塗布した後に、比較的低温で加熱してBステージ状態、あるいは半固形もしくは硬化状態、とし、この上にチップを搭載してから完全に硬化させる方式が多用されている。このBステージ化の方法には、(1)硬化反応を途中で強制的に停止させる方法、(2)硬化温度領域が異なる反応系を2つ共存させて、低温で硬化する反応系を硬化させる方法(例えば特許文献2)がある。このうち(1)の方法は適応可能である反応系の種類が多く、且つ容易な方法であるが、Bステージ状態の安定性が不十分である。一方、(2)の方法は、2つの反応系が相分離等を起こさないように、その種類が制限されるという問題がある。
【特許文献1】特開2002−249584号公報
【特許文献1】特表2005−513192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記の問題が無く、柔軟性、耐熱衝撃性に優れる硬化物を与えるダイボンド剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、
(A)式(1)の繰り返し単位を含む重合体を100質量部
(B)成分(A)のRと反応性の基を有する硬化剤を、該反応性の基の当量の、Rの当量に対する比が0.8〜1.2となる量
(C)重合開始剤を0.1〜10重量部、及び
(D)硬化促進剤を0.1〜10重量部
含む、ダイボンド剤組成物である。


[Rは、下記式(a−1)で表される基と(a−2)表される基の組合せ又は下記式(b−1)表される基と(b−2)表される基の組合せであり、(a−2)/(a−1)のモル比が1/9〜9であり、(b−2)/(b−1)のモル比が1/9〜9であり、



(Rは水素原子もしくはメチル基である)
は、夫々独立に、炭素数1〜10の飽和炭化水素基、
は、夫々独立に、炭素数1〜10の飽和炭化水素基、
は、炭素数2〜4のアルキレン基、
nは0〜2の整数、mは0〜100の整数である。]
【発明の効果】
【0006】
本発明のダイボンド剤組成物は、反応性が異なる2種の官能基を有するシリコーン重合体を含むことによって、相分離等を起こすことなく、柔軟性、耐熱衝撃性に優れた硬化物を与え、半導体製品の歩留まりを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
成分(A)重合体
この重合体、詳細には交互共重合体、の特徴の第1点目は、式(1)に示すように、剛直部位である芳香族骨格と、柔軟部位であるシリコーン骨格を含有することである。これによって、耐熱衝撃性に優れる。この剛直部位と柔軟部位の種類、分子量、含有量を調整することにより用途に応じた性能を与えることが可能である。


【0008】
この重合物の分子量は、重量平均分子量が1,000〜1,000,000、特に5,000〜500,000であることが好ましい。この重合体の分子量は後述の構成単位の種類、分子量、含有量、重合物の合成条件を調整することにより達成される。ここで重量平均分子量が前記下限値未満である場合は、硬化物の耐熱衝撃性が低下し、加熱或いは紫外線照射による硬化が十分ではなく、後述する方法における工程(iii)において、組成物がダイサーの刃に付着する等の支障をきたす恐れがある。一方、重量平均分子量が前記上限値より大きい場合は、(B)硬化剤、(E)(メタ)アクリル化合物との相溶性が低下し、請求項7又は8に記載される方法で使用する場合に、加熱或いは紫外線照射により過度に固形し、加熱或いは紫外線照射により過度に硬化し、該組成物が基板或いは他のチップに十分に接合しない等の支障をきたす恐れがある。
【0009】
この重合体の特徴の第2点目は、下記式(a−2)で表される基(以下、「で表される基」を省略)または(b−2)の光、熱等によるラジカル重合性の基を有することである。これにより該重合体は、更に高分子量の重合体を形成し、B−ステージ状態を形成することができる。


(Rは水素原子もしくはメチル基である)
【0010】
(a−2)/(a−1)のモル比は、又は(b−2)/(b−1)のモル比は1/9〜9であり、好ましくは、2/8〜8である。前記比が1/9未満である場合は、加熱或いは紫外線照射による硬化が十分ではなく、後述する方法における工程(iii)において、組成物がダイサーの刃に付着する等の支障をきたす恐れがある。一方、前記比が9よりも多い場合は、加熱或いは紫外線照射により過度に硬化し、該組成物が基板或いは他のチップに十分に接合しない等の支障をきたす恐れがある。
【0011】
この重合体の特徴の第3点目は、(a−1)又は(b−1)を有することである。これにより該重合物は、更に高分子量の重合体を形成する。予めアクリル基或いはメタクリル基を重合させた上で、エポキシ基或いはフェノール性水酸基を重合させれば、より強固な架橋構造を形成する。
【0012】
式(1)において、Rは、夫々独立に、炭素数1〜10の飽和炭化水素基、例えばアルキル基であり、nは0〜2の整数である。Rは、夫々独立に、炭素数1〜10の飽和炭化水素基、好ましくはメチル基である。Rは、炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基及びプロピレン基であり、mは0〜100の整数である、好ましくは0〜30の整数である。
【0013】
(A)重合体は、例えば下記のエポキシ基またはフェノール基含有化合物と、



下記式で示される両末端にSiH結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを付加反応に付した後、

(m及びRは上述のとおりである。)
(メタ)アクリル酸を、塩基性触媒、例えばトリフェニルホスフィン、1,8−ジアザジシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等、の存在下で、反応させることによって、作ることができる。付加反応は、例えば特許文献1(特開2002−249584号公報)記載の方法により行なうことができる。
【0014】
成分(B)硬化剤
成分(A)のRが(a−1)と(a−2)の組合せである場合には、エポキシ樹脂の硬化剤を使用することができ、例えばフェノール樹脂、酸無水物、及びアミン類が挙げられる。この中でも、フェノール樹脂が好ましい。該フェノール樹脂としては、ノボラック型、ビスフェノール型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、ナフタレン型、シクロペンタジエン型、フェノールアラルキル型等が挙げられ、これらを単独、あるいは2種類以上を混合して用いても良い。なかでも、下記式に示す、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型が好ましい。






(qは0以上の整数、好ましくは1〜8の整数。)
【0015】
成分(A)のRが(b−1)と(b−2)の組合せである場合には,エポキシ樹脂を使用することができる。例えば、ノボラック型、ビスフェノール型、ビフェニル型、フェノールアラルキル型、ジシクロペンタジエン型、ナフタレン型、アミノ基含有型、後述するシリコーン変性エポキシ樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。なかでも、下記式に示す、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型が好ましい。






(pは0以上の整数、好ましくは1〜8の整数。)
【0016】
上記、フェノール樹脂は2個以上のフェノール性水酸基を、エポキシ樹脂は2個以上のエポキシ基を有するため、2個以上の重合体分子と反応して架橋構造が形成される。
【0017】
成分(B)の別の機能として、組成物を基板、或いは他のチップに対する接合性の向上が挙げられる。成分(B)として、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂を用いた場合、チップの接合温度において、これらの樹脂の粘度が低下して、加熱或いは紫外線照射により得られた半固形物の網目構造から染み出して基板或いは他のチップの表面に濡れ広がることにより樹脂組成物の接合性が向上する。
【0018】
成分(B)の含有量は、(A)成分中のRの当量に対して、成分(B)のRと反応性の基が0.8〜1.2当量になるような量である。ここで成分(B)の含有量が前記下限値未満である場合は、十分に架橋構造が形成されない、或いは上述の樹脂組成物の接合性が十分に出現せず、基板或いは他のチップに十分に接合しない等の支障をきたす恐れがある。一方、成分(B)の含有量が、前記上限値より多い場合は、(A)の含有量が相対的に小さくなる為に、十分な柔軟性や耐熱衝撃性が得られない恐れがある。
【0019】
成分(C)重合開始剤
この重合開始剤は、この半固形化の工程において、(a−2)又は(b−2)のアクリル基或いはメタクリル基、及び、任意に配合される成分(E)のアクリル基或いはメタクリル基の重合を促進する目的で配合される。
【0020】
重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン](商品名:ESACURE KIP−150、LAMBERTI S.p.A社製)、KR−04(商品名、香川ケミカル(株)製)等のフェニルケトン化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)フォスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルフォスフィンオキサイド等のベンゾイルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。これらは1種単独でも2種類以上組み合せても使用することができる。これらの中でも、重合時に揮発成分の発生が少ないことから、フェニルケトン化合物である上記ESACURE KIP−150、KR−04等が好ましい。
【0021】
(C)重合開始剤の含有量は、(A)の100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜2重量部である。ここで重合開始剤の含有量が0.1重量未満である場合は、加熱或いは紫外線照射により十分に固形せず、重合開始剤の含有量が10重量部よりも多い場合は、保存安定性が損なわれ、加熱或いは紫外線照射により過度に硬化し、組成物が基板或いは他のチップに十分に接合しない等の支障をきたす恐れがある。
【0022】
成分(D)硬化促進剤
硬化促進剤は、成分(A)と成分(B)の硬化を促進するために配合される。硬化促進剤としては、例えば、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との硬化促進剤を使うことができ、例えば有機リン、イミダゾール、3級アミン等の塩基性有機化合物が挙げられる。有機リンの例としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−トルイル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p−エトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート誘導体、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート等が挙げられる。イミダゾールの例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられ、3級アミンの例としてはトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられる。好ましくは下記の式(2)に示されるテトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート誘導体、或いは式(3)に示されるイミダゾール誘導体である。

(R及びRは、夫々独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基及びハロゲン原子から選択される1価の基である。)


(R及びRは炭素数1〜10の有機基である。)
【0023】
より好ましくは、下記の式(4)の2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、式(5)の2−フェニル−4、5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、式(6)のテトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート、或いは式(7)のテトラフェニルホスフィン・テトラトルイルボレートが使用される。








【0024】
上記硬化促進剤は、(A)のエポキシ基或いはフェノール性水酸基と、(B)硬化剤の反応に対する活性温度が180℃〜200℃近辺であり、通常の有機リン又はイミダゾール誘導体と比較して高温である為に、組成物の保存安定性に優れる。また、一旦反応が開始すれば通常の有機リン又はイミダゾール誘導体と同様の活性を示す。即ち、組成物を加熱により半固形状にする場合、その温度或いは時間の条件の幅が広く、該B−ステージ状態での保存安定性に優れ、更に組成物の硬度を上げる。
【0025】
この硬化促進剤の含有量は、(A)の100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜2重量部であるここで硬化促進剤の含有量が0.1重量未満である場合は、十分に硬化反応が進行しない恐れがある。一方硬化促進剤の含有量が10重量部より多い場合は、保存安定性が損なわれる恐れがある。
【0026】
成分(E)(メタ)アクリル化合物
本発明の組成物には、(メタ)アクリル化合物を配合することができる。該化合物として、エポキシ樹脂とアクリル酸を反応させたエポキシアクリレート、エポキシ樹脂とメタクリル酸を反応させたエポキシメタクレートが好ましい。原料のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独でも2種類以上組み合せても使用することができる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂とアクリル酸及び/又はメタクリル酸との反応物が好ましい。
【0027】
成分(E)の含有量は、(A)の100重量部に対して5〜500重量部、好ましくは10〜100重量部である。ここで成分(E)の含有量が、前記下限値未満である場合は、加熱或いは紫外線照射により十分に固形せず、後述する方法における工程(iii)において、組成物がダイサーの刃に付着する等の支障をきたす恐れがある。一方、成分(E)の含有量が、前記上限値より多い場合は、加熱或いは紫外線照射により過度に固形し、該組成物が基板或いは他のチップに十分に接合しない等の支障をきたす恐れがある。
【0028】
その他の成分
本発明の樹脂組成物は、上述の各成分に加えて、シリカやアルミナ等の絶縁性粉末、銀粉等の導電性粉末等の無機充填材、アルコキシシラン等の接着助剤、粘度調整の希釈剤、難燃助剤、イオントラップ剤等を目的や用途に応じて任意に配合することができる。
【0029】
組成物の調製方法
本発明の組成物は、上記各成分を、公知の方法、例えば、ミキサー、ロール等を用い、混合して得られる。必要に応じて混合順序、時間、温度、気圧等の条件を制御することができる。
【0030】
上記組成物を用いて半導体装置を製造する場合には、下記に示すように、基板上に塗布し(方法1)、又は、ウエハーに塗布する(方法2)。
方法1
(工程1)本発明のダイボンド剤組成物を基板上に塗布し、
(工程2)塗布されたダイボンド剤組成物を加熱或いは紫外線照射によりB−ステージにし、
(工程3)半固形のダイボンド剤組成物の上に半導体チップを搭載し、
(工程4)半固形のダイボンド剤組成物を硬化させる。
方法2
(工程i)本発明の樹脂組成物をシリコンウエハー上に塗布し、
(工程ii)塗布されたダイボンド剤組成物を加熱或いは紫外線照射によりB−ステージにし、
(工程iii)ウエハー及びダイボンド剤組成物をチップ状の個片に切断し、
(工程iv)該個片を、ダイボンド剤組成物を介して基板或いは他のチップ上に搭載し、
(工程v)ダイボンド剤組成物を硬化させる。
【0031】
ここで工程1又は工程iでは樹脂組成物がディスペンサー、プリンター、スピンコーター等によって基板上又はウエハーに提供され、工程2又は工程iiではバッチ式や連続式のオーブンによる加熱、或いは紫外線照射装置により、ラジカル重合を起こさせて、半固形状にする。方法2の工程iiiでは、通常ウエハーの個片化に用いられるダイサーを用いて、ウエハーとその上に塗布、固形化された樹脂組成物を同時にチップ状に切断する。

工程3又は工程iiiではダイボンダーでチップが搭載され、工程4又は工程ivではバッチ式や連続式のオーブンで樹脂組成物を硬化させる。更に工程4又は工程vでは、(A)のエポキシ基或いはフェノール性水酸基、(E)を含有する場合はこれのエポキシ基或いはフェノール性水酸基が、(C)の存在下で加熱により反応する。
【0032】
実施例
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
使用原料
重合物A(合成例1)
重合物B(合成例2)
重合物D(合成例4)
重合物F(合成例6)
エポキシ樹脂H(ビスフェノール型エポキシ樹脂、当量180、日本化薬製RE310S)、
フェノール樹脂I(フェノールノボラック樹脂、当量110、明和化成製DL−92)、
メタクリル化合物J(ビスフェノールA型エポキシメタクリレート、共栄社化学製エポキシエステル3000M)
重合開始剤K(オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン]、LAMBERTI S.p.A社製ESACURE KIP−150)
硬化促進剤L(テトラフェニルフォスフィン・テトラフェニルボレート、北興化学製TPP−K)
硬化促進剤M(2−フェニル−4、5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成製2PHZ)
シリカN(球状溶融シリカ、平均粒径0.8ミクロン、最大粒径3ミクロン、アドマッテクス製SE2030)
接着助剤O(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業製KBM−403)
比較例で使用の重合体
重合物C(合成例3)
重合物E(合成例5)
重合物G(合成例7)
【0033】
(合成例1)
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、後記式(10)のエポキシ樹脂(ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬製RE810NM)42.0g(0.10mol)とトルエン168.0gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行った。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.2gを滴下し、直ちに後記式(12)のオルガノポリシロキサン36.3g(0.05mol)とトルエン145.2gの混合物を1時間で滴下し、更に100℃/6時間で熟成した。これを室温に冷却し、メタクリル酸8.6g(0.10mol、変換率50%)とトリフェニルホスフィン0.2gを添加し、100℃/12時間で反応させた。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(重量平均分子量1780、シロキサン含有量42重量部)を得た。これを重合物Aとする。
【0034】
(合成例2)
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、式(10)のエポキシ樹脂(ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬製RE810NM)42.0g(0.10mol)とトルエン168.0gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行った。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.2gを滴下し、直ちに式(12)のオルガノポリシロキサン36.3g(0.05mol)とトルエン145.2gの混合物を1時間で滴下し、更に100℃/6時間で熟成した。これを室温に冷却し、メタクリル酸4.3g(0.05mol、変換率25%)とトリフェニルホスフィン0.2gを添加し、100℃/12時間で反応させた。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(重量平均分子量1690、シロキサン含有量44重量部)を得た。これを重合物Bとする。
【0035】
(合成例3)
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、式(10)のエポキシ樹脂(ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬製RE810NM)42.0g(0.10mol)とトルエン168.0gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行う。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.2gを滴下し、直ちに式(12)のオルガノポリシロキサン36.3g(0.05mol)とトルエン145.2gの混合物を1時間で滴下し、更に100℃/6時間で熟成した。これを室温に冷却し、メタクリル酸0.86g(0.01mol、変換率5%)とトリフェニルホスフィン0.2gを添加し、100℃/12時間で反応させた。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(重量平均分子量1610、シロキサン含有量46重量部)を得た。これを重合物Cとする。
【0036】
(合成例4)
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、式(10)のエポキシ樹脂(ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬製RE810NM)42.0g(0.10mol)とトルエン168.0gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行う。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.2gを滴下し、直ちに式(12)のオルガノポリシロキサン36.3g(0.05mol)とトルエン145.2gの混合物を1時間で滴下し、更に100℃/6時間で熟成した。これを室温に冷却し、メタクリル酸12.9g(0.15mol、変換率75%)とトリフェニルホスフィン0.2gを添加し、100℃/12時間で反応させた。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(重量平均分子量1830、シロキサン含有量40重量部)を得た。これを重合物Dとする。
【0037】
(合成例5)
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、式(10)のエポキシ樹脂(ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬製RE810NM)42.0g(0.10mol)とトルエン168.0gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行う。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.2gを滴下し、直ちに式(12)のオルガノポリシロキサン36.3g(0.05mol)とトルエン145.2gの混合物を1時間で滴下し、更に100℃/6時間で熟成した。これを室温に冷却し、メタクリル酸16.3g(0.19mol、変換率95%)とトリフェニルホスフィン0.2gを添加し、100℃/12時間で反応させた。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(重量平均分子量1920、シロキサン含有量38重量部)を得た。これを重合物Eとする。
【0038】
(合成例6)
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、式(11)のフェノール樹脂(ジアリルビスフェノールA、小西化薬製BPA−CA−S)30.8g(0.100mol)とトルエン123.2gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行う。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.2gを滴下し、直ちに式(12)のオルガノポリシロキサン36.3g(0.05mol)とトルエン145.2gの混合物を1時間で滴下し、更に100℃/6時間で熟成した。これを室温に冷却し、メタクリル酸8.6g(0.10mol、変換率50%)とトリフェニルホスフィン0.2gを添加し、100℃/12時間で反応させた。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(重量平均分子量1530、シロキサン含有量48重量部)を得た。これを重合物Fとする。
【0039】
(合成例7)
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、環流管を取り付けたフラスコに、エポキシ樹脂F(ビスフェノール型エポキシ樹脂、当量180、日本化薬製RE310S)36.0g(0.05mol)とメタクリル酸8.6g(0.10mol、変換率50%)とトリフェニルホスフィン0.2gとトルエン144.0gを入れ、100℃/12時間で反応させた。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(重量平均分子量450、シロキサン含有量0重量部)を得た。これを重合物Gとする。
【0040】

【0041】
実施例1〜4、比較例1〜4
各成分を表1または2に示す配合量で、25℃のプラネタリーミキサーで混合し、25℃の3本ロールを通過させ、再度25℃のプラネタリーミキサーで混合して、組成物を得た。これらの組成物について、以下の(a)〜(d)の諸試験を行い、表1及び2の結果を得た。
【0042】
(a)硬化物のヤング率
各組成物を紫外線照射365nm/100mW/30秒、次いで、加熱125℃/1時間+165℃/2時間で硬化させ、JIS6911に準じて−55℃、25℃、125℃でのヤング率を測定した。
【0043】
(b)耐湿、耐半田試験
下記の方法で、図1の試験片20個を作成し、85℃/85%RHの恒温恒湿器に168時間放置して、更に最高温度が260℃であるIRリフローオーブン中を3回通過させた後に、超音波索傷装置で剥離、クラック等の不良の有無を観測し、不良が見られる試験片数/総試験片数(20個)を数えた。
半導体装置試験片の作成
1)組成物の塗布
シリコンウエハー(8インチ径、0.3mm)の片面に印刷機を用いて組成物を塗布して、ウエハー全面に45〜55ミクロンの樹脂組成物層を形成した。これに365nm/100mW/30秒の条件で紫外線を照射し、半固形状の樹脂組成物付きのウエハーを得た。

2)ウエハーの個片化及びチップ搭載
1)で得られたウエハーの組成物層の上面にダイシングフィルムを貼付け、ウエハーを12mm×12mmのチップに個片化した。チップを、ピックアップして、表面にソルダーレジスト(20ミクロン厚)を塗布したBT基板(200ミクロン厚、35mm×35mm)上に、組成物層を介して搭載した。ここでのチップ搭載条件は150℃(チップ)/100℃(基板)/1kg/0.1秒である。これを125℃/1時間+165℃/2時間/窒素通気の条件で硬化させた。

3)樹脂封止
2)で得られたチップ付き基板を、KMC−2520(信越化学工業製エポキシ封止材)で封止した。成型条件は金型温度175℃、注入時間10秒、注入圧70KPa、成型時間90秒、後硬化条件は180℃/2時間であり、成型後の試験片全体は1000ミクロン厚、35mm×35mmである。
【0044】
(c)温度サイクル試験
(b)の耐湿、耐半田試験を行ってクラック等が無かった試験片を、引き続き温度サイクル試験機に投入した。ここでの試験条件は−55℃/30分+(−55℃→125℃)/5分+125℃/30分+(125℃→−55℃)/5分を1サイクルとし、500サイクル或いは1000サイクルを施した後に、超音波索傷装置で剥離、クラック等の不良の有無を観測し、不良が見られる試験片数/総試験片数(20個)を数えた。
(d)合否判定
試験方法(b)と試験方法(c)の両方に関して、試験結果が0/20であるものを合格、それ以外のものを不合格とした。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
実施例においては、何れも重合体がエポキシ樹脂又はフェノール樹脂を介して十分な架橋構造を形成する為に、室温以上では均衡の取れた弾性率を示し、耐湿・耐半田試験、及び温度サイクル試験において良好な結果を得た。
一方、比較例1は、ラジカル重合性基の量が少な過ぎ、紫外線照射後に十分に半固形化せず、ウエハーの個片化が不可能であり、また比較例2においては、ラジカル重合性基の量が多過ぎて、紫外線照射で過度に固形化し、チップ搭載が不可能であったために、いずれも耐湿・耐半田試験、及び温度サイクル試験は実施不可であった。
尚、比較例3で使用の重合体はシリコーン鎖を含まないために、硬化物の弾性率が高く、耐湿・耐半田試験、及び温度サイクル試験において不良が見出された。
比較例4は(B)を含有しないために、十分に架橋構造が形成されず、やはり耐湿・耐半田試験、及び温度サイクル試験は実施不可であった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例で作成した半導体装置試験片の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(1)の繰り返し単位を含む重合体を100質量部
(B)成分(A)のRと反応性の基を有する硬化剤を、該反応性の基の当量のRの当量に対する比が0.8〜1.2となる量
(C)重合開始剤を0.1〜10重量部、及び
(D)硬化促進剤を0.1〜10重量部
含む、ダイボンド剤組成物。


[Rは、下記式(a−1)で表される基と(a−2)表される基の組合せ又は下記式(b−1)表される基と(b−2)表される基の組合せであり、(a−2)/(a−1)のモル比が1/9〜9であり、(b−2)/(b−1)のモル比が1/9〜9であり、


(Rは水素原子もしくはメチル基である)
は、夫々独立に、炭素数1〜10の飽和炭化水素基、
は、夫々独立に、炭素数1〜10の飽和炭化水素基、
は、炭素数2〜4のアルキレン基、
nは0〜2の整数、mは0〜100の整数である。]
【請求項2】
(a−2)/(a−1)のモル比又は(b−2)/(b−1)のモル比が2/8〜8である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
が(a−1)と(a−2)の組合せであり、(B)がフェノール樹脂である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
が(b−1)と(b−2)の組合せであり、(B)がエポキシ樹脂である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
(C)がフェニルケトン化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
(D)が式(2)のテトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート誘導体、或いは式(3)のイミダゾール誘導体である、請求項1〜5の何れか1項に記載の組成物。


(R及びRは、夫々独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基及びハロゲン原子から選択される1価の基である。)



(R及びRは炭素数1〜10の有機基である。)
【請求項7】
(E)(メタ)アクリル化合物を更に含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
下記1〜4の工程を含む半導体装置の製造法。
(工程1)請求項1〜7の何れか1項に記載のダイボンド剤組成物を基板上に塗布し、
(工程2)塗布されたダイボンド剤組成物を加熱或いは紫外線照射によりB−ステージにし、
(工程3)B−ステージのダイボンド剤組成物の上に半導体チップを搭載し、
(工程4)B−ステージのダイボンド剤組成物を硬化させる。
【請求項9】
下記i〜vの工程を含む半導体装置の製造法。
(工程i)請求項1〜7の何れか1項に記載のダイボンド剤組成物をシリコンウエハー上に塗布し、
(工程ii)塗布されたダイボンド剤組成物を加熱或いは紫外線照射によりB−ステージにし、
(工程iii)ウエハー及びダイボンド剤組成物をチップ状の個片に切断し、
(工程iv)該個片を、ダイボンド剤組成物を介して基板或いは他のチップ上に搭載し、
(工程v)ダイボンド剤組成物を硬化させる。

【図1】
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【公開番号】特開2010−50346(P2010−50346A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214388(P2008−214388)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】