説明

チャンバ、特に真空チャンバ内でキャリアを移動させる為の装置

【課題】層状基板を搬送する為に搬送ローラを備えた真空コーティング設備において、少なくとも一方向で、チャンバ内部の対象物を自動的に移動させる装置を提供する。
【解決手段】キャリア11は、板状に形成され、駆動システムによりローラ12上の狭側下縁部で支持されている。間接駆動装置は電磁継手を利用するが、電磁継手は一部が真空チャンバ内、一部が真空チャンバ外に配置されている。垂直方向に作用する力を用いて、電磁継手の2つの構成部品は、互いにずらすことが可能である。さらに、キャリアを水平方向にずらすことも可能である。

【発明の詳細な説明】
【発明の内容】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に従う装置に関する。
【0002】
PECVD理論(PECVD = Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)に従って動作する真空コーティング設備において、コーティングは、当該設備に導入されソースによりイオン化されるガスを介して直接行われる。プラズマは、ソースと、基板又は基板後方に配置される後部電極との間で熱くなる。
【0003】
しばしば、基板は、真空コーティング設備を通るローラ上を移動されるキャリア上に留められる。これらのローラは、真空コーティング設備の外側に望ましく置かれているので、コーティング設備に汚染は生じない。
【0004】
チャンバ内に置かれたシャフト用駆動装置は、既に知られている(米国特許公開公報第2005/026260号)。このシャフトは、チャンバの外側に置かれたモータにより電磁継手を介して駆動される。
【0005】
さらに、幾つかの搬送ローラを備えた真空コーティング設備内の基板用搬送装置が知られている(ドイツ国特許公開公報第103 28 273A1)。この装置において、駆動装置と搬送ローラは、コーティング設備の排出領域に置かれている。
【0006】
ワークピース用搬送システムを備えるプロセスチャンバは、更に知られている(英国特許公開公報第2 171 119A)。この搬送システムは、電磁継手により駆動されるシリンダを含む。ここで電磁継手は、チャンバ内部でリフト装置上に配置された2組の搬送ローラ間の切り替えに役立つ。
【0007】
真空設備内で可動部品を移動させる為の装置が知られているが、この装置は、ボリューム内部で、その要素が部分的に磁性体から構成された連結要素を備え、ボリュームの外側には、磁性体が配置され、摩擦連結を介して専ら内側の磁性体と接触する(ドイツ国公報第102 27 365=欧州公報第1387 473A2)。
【0008】
マイクロ電気構造素子製造のために垂直配向で層状基板(例えば、シリコンディスク)を処理する為の既知の方法において、円形シリコンディスクの3箇所で押し付けられる駆動ローラが規定されている(米国特許第6 251 551B1)。このシリコンディスクは、駆動ローラによって、その軸の周りで回転可能である。しかし、シリコンディスクの直線の更なる搬送は、コンベヤベルトを用いて行われる。
【0009】
板状かつ円形キャリアの回転運動のため、キャリアのへりで係合する数個のローラが備えられることが知られている(日本国特許公開公報第2002−11063A)。しかし、キャリアの直線運動は、レールを介して行われる。
【0010】
螺旋電磁継手を備えた磁気キャリア装置は、米国特許公開公報第2002/0060134A1で開示されている。しかし、この装置は、ローラを持ち上げる機構を備えていない。
【0011】
欧州特許公開公報第1 648 079A2は、壁で分けられた対象物間の運動を伝達する為のシステムを説明する。このシステムは、キャリアを搬送するのに適していない。
【0012】
最後に、層状基板を搬送する為に搬送ローラを備えた真空コーティング設備が知られているが、この設備は、真空コーティング設備の外側に置かれた駆動システムと、駆動装置と少なくとも一つの搬送ローラとの間で少なくとも一つの電磁継手と、を備える(欧州特許出願第EP 1 870 487で以前に公開されず)。
【0013】
本発明は、少なくとも一方向で、チャンバ内部の対象物を自動的に移動させる課題に対処する。
【0014】
この課題は、請求項1の特徴に従って解決される。
【0015】
したがって、本発明は、真空チャンバ内部でキャリアを移動させる為の装置に関する。このキャリアは、板状に形成され、駆動システムにより駆動されるローラ上の狭い側の下縁で配置されている。間接駆動装置は、好ましくは、電磁継手を利用するが、電磁継手は、真空チャンバ内部に一部が置かれ、真空チャンバの外側で電磁継手の構成部品が置かれ、モータにより駆動される。垂直方向に作用する力を用いて、電磁継手の2つの構成部品は、互いにずらすことが可能である。また、キャリアを水平にずらすことも可能である。
【0016】
本発明で達せられる1つの利点は、真空コーティング設備内部のキャリアが、キャリアを支える駆動ローラから分離可能である点である。本発明の更なる利点は、キャリアも横にずらすことができる点である。
【0017】
本発明の実施形態、実施例は、図面で示されているが、以下、詳細に説明する。
【0018】
図1は、プロセスチャンバ1の側面図を示す。このプロセスチャンバの他に、図示されていないチャンバを更に置くことができる。これらのチャンバは、プロセスチャンバ及び/又はバッファチャンバでもよい。
【0019】
プロセスチャンバ1は、脚部2,3上にあり、これらの間に、歯が付けられたホィール4,5,6,7とカウンタシャフト8,9とを備えた伝動装置29が置かれている。
【0020】
図2は、プロセスチャンバ1を通る断面A−Aを示す。プロセスチャンバは、中間壁10により2つに分けられていることが分かる。片方には、キャリア11が置かれており、キャリア11は、図面の平面で、特に、案内ローラ上で移動可能であり、図2には、2つだけ案内ローラ12,24が示されている。図2の代表例においてキャリア11の下端13は、丁度、ローラ12から離脱されており、壁16に向かう方向における駆動装置(図示せず)、フック14,15により移動された。脚部2,3の後方に置かれているのは、リフト用ピストンであり、これらは、図1で明らかでないが、後で検討される。伝動装置29は、持ち上げることを一律にする為に2つのリフト用シリンダを利用するときに必要である。参照符号17で示されているのは、シャフト18を支える搬送ビームであり、シャフト18は、案内ローラ12を通って伸びて電磁継手の片方19に連結されているが、電磁継手の片方19は、プロセスチャンバ1に置かれ、この電磁継手の他の片方20は対向して置かれ、プロセスチャンバ1の外側に備えられている。この他の片方20の駆動は、ベルト21を介して行われる。互いに対向して置かれた電磁継手の片方19と他の片方20は、互いに滑って移動することができる滑らかな面を持っている。
【0021】
中間壁10により分離されたプロセスチャンバ1の左片方において、他のキャリア22が示されているが、これは、図面の平面から出るように運動する。このキャリア22の端部23は、案内ローラ24上にあり、ここを通って案内されているのがシャフト25であり、シャフト25は、プロセスチャンバ1内に置かれた電磁継手の構成部品26を通って案内され、電磁継手の他の構成部品27はプロセスチャンバ1の外側に置かれ、ベルト駆動装置28により駆動される。
【0022】
図3は、図2の一部を拡大したものを示す。ここでは、下部13を備えたキャリア11が、案内ローラ12内にあることが明らかである。下端13がローラ12の外に案内されるために、リフト用ピストン31を上方及び下方に移動可能な空気圧シリンダ30が備えられている。図3に示された位置において、リフト用ピストン31は、上方に移動されるが、これにより、搬送ビーム17,案内ローラ12,これらと共にシャフト18と電磁継手の内側構成部品19も上方に移動される。電磁継手の構成部品19は、現時点では、電磁継手の外側構成部品20と対向している。ベアリング36に支えられ外側磁石20を支えベルト駆動装置21により駆動される駆動シャフト35は、動かないように壁16と連結されている。参照符号37で示されているのは、薄いダイヤフラムであり、大気からプロセスチャンバ1の内側を分離している。このダイヤフラム37は、スリーブ38またはスリーブ38の一部に嵌め込まれている。
【0023】
図3に示された位置において、キャリア11はプロセスチャンバ1内に移動され、フック14がキャリア11の外側に置かれ(フック14は、プロセスチャンバ1の側壁16に向かう方向にキャリアを移動させる為にアパーチャ40内に伸びていない。)。フック14は、接触フレーム41に留められていないが、リードスルー(貫通)部が水平運動を実行する。このリードスルー部は、図3で表示されていない。
【0024】
駆動シャフト35がベルト駆動装置21により回転されるとき、大気圧に置かれた電磁継手の構成部品も回転される。磁界は、スリーブ38またはスリーブ38の一部に支持された非磁性または非磁化可能なダイヤフラム37を貫通し、プロセスチャンバ1に置かれた電磁継手の構成部品19を伴出する。シャフト18と、それと共に案内ローラ12が回転する。この案内ローラ12でキャリア11の下部が支持されるので、キャリア11は図面の平面へと移動する。
【0025】
図4は、図2で示された装置の一部、特に、キャリア11が図面の平面へと移動されずプロセスチャンバ1の壁16に向かう方向に移動される図2の一部を拡大したものを示す。この位置に達するため、フック14(左の方へ水平にドライブ45によって動かされる)はキャリア11の開口40に達する。キャリア11がフック14で吊り下げられるようにリフト用シリンダが下げられる。キャリア11は、次に、フック14、図示されていない支持体、駆動装置45により水平に移動される。電磁継手の2つの構成部品19,20は、本願において、互いに垂直にオフセットされている。参照符号41は、接触フレームを示す。
【0026】
図5は、右側キャリア11だけが明らかである縦断面B−Bからの区分を示す。図5の縦断面は、リフト用シリンダ60と、これに連結されたリフト用ピストン61を通って伸びている。参照符号62により示されているのは、プロセスチャンバ1の底部63を通るリードスルー部である。底部63上にフランジ(つば)が付けられているのは、内部に結合部分が置かれたホルダー64であり、リフト用ピストン61の一部67と共にリフト用シリンダ60のピストンロッド66を示す。リフト用シリンダ60は、空気圧シリンダであって、結合部分65と共に、ピストン61に螺合されている。
【0027】
リフト用ピストン61は、搬送ビーム69に支持体68を介して連結されており、案内ローラ70は転がることができる。キャリア11から離間されて見られるのは、支持体(図示せず)上に留められたプロング71であり、壁16の外側に置かれた駆動装置(図示せず)に連結されている。ベルト駆動装置73は、電磁継手74を駆動し、案内ローラ70を回転させる。
【0028】
搬送ビーム69のそれぞれに対してリフト用ピストンを備えること(一つのリフト用ピストンを搬送ビームの前端、他のリフト用ピストンを搬送ビームの後端に備えること)は可能である。しかし、搬送ビーム69の中央に係合する一つのリフト用ピストンだけを備えることも可能である。参照符号72により示されているのは、接触フレームであるが、キャリア11は、プラズマソースと基板との間に画成された平行間隔を確実にするため、そこから外に押されている。さらに、接触フレームは、プラズマ容積を限定するため、更に、キャリアの後方にある電極の接地の為に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、プロセスチャンバの全体図である。
【図2】図2は、図1のプロセスチャンバを通るA−A線の縦断面図である。
【図3】図3は、第1の位置において、図2の一部を拡大した図である。
【図4】図4は、第2の位置において、図2の一部を拡大した図である。
【図5】図5は、図1のプロセスチャンバを通るB−B線の縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…プロセスチャンバ、2,3…脚部、4,5,6,7…ホィール、8,9…カウンタシャフト、10…中間壁、11…キャリア、12…案内ローラ、13…下端、14,15…フック、16…側壁、17…搬送ビーム、18…シャフト、19…電磁継手の内側構成部品、20…電磁継手の外側構成部品、21…ベルト駆動装置、22…キャリア、23…キャリア端部、24…案内ローラ、25…シャフト、26…電磁継手の構成部品、27…電磁継手の他の構成部品、28…ベルト駆動装置、29…伝動装置、30…空気圧シリンダ、31…リフト用ピストン、35…駆動シャフト、36…ベアリング、37…ダイヤフラム、38…スリーブ、40…アパーチャ、41…接触フレーム、60…リフト用シリンダ、61…リフト用ピストン、62…リードスルー部、63…プロセスチャンバ底部、64…ホルダー、65…結合部分、66…ピストンロッド、67…リフト用ピストンの一部、68…支持体、69…搬送ビーム、70…案内ローラ、71…プロング、72…接触フレーム、73…ベルト駆動装置、74…電磁継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ、特に真空チャンバ(1)内でキャリアを移動させる為の装置において、前記キャリア(11)は板状に形成され、駆動ローラ(12)により直線状に移動可能である、前記装置であって、
前記駆動ローラ(12,24)は、昇降機構(30,31)により、板状キャリア(11)の狭い側に向かって、更に、そこから離れて移動可能であることを特徴とする、前記装置。
【請求項2】
前記駆動ローラ(12,24)は、搬送ビーム(17)上にあり、前記昇降機構(30,31)は、前記搬送ビーム(17)に連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動ローラ(12,24)は、電磁継手(74)に結合されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電磁継手は、前記チャンバ(1)内部に置かれた第1構成部品(19)と、前記チャンバ(1)の外側に置かれた第2構成部品(20)とを含むことを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記キャリア(11)は、少なくとも一つの開口を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記キャリア(11)は、アパーチャ(40)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記アパーチャ(40)を通って伸び、キャリア(11)を支持することができるフックが備えられていることを特徴とする、請求項1または6に記載の装置。
【請求項8】
前記キャリア(11)は、前記フック(14)が係合するピンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記フック(14)は、前記キャリア(11)の表面に対し直角に移動可能であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記フック(14)の運動の為に駆動装置が備えれ、前記駆動装置は、前記チャンバ(1)の外側に置かれていることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記電磁継手の第1構成部品(19)および第2構成部品(20)は、前記キャリア(11)の第1の位置において互いに対称的に対向して置かれ、前記キャリア(11)の第2の位置において、互いに垂直方向にずれていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−254925(P2008−254925A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−43354(P2008−43354)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】