説明

ドライエッチング方法及び金属薄膜のパターニング方法

【課題】難エッチング材料を不活性ガスによりエッチングする際に残渣なく加工する方法を提供する。
【解決手段】難エッチング性の金属薄膜2上に、断面形状がハンマーヘッド型となるようにレジスト4を形成した後に前記金属薄膜をドライエッチングし、その後前記レジストを除去する。前記ハンマーヘッド型の断面形状を有するレジストパターンは、現像液に対する溶解速度が異なる2種類のレジストを積層塗布して露光・現像することによって得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜のドライエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図1(a)に示されるように、基材1上に形成された白金、金、イリジウム等のウェットエッチングが困難な材料(以下、「難エッチング材料」とする。)からなる薄膜2上に、エッチングマスク3として断面台形状のフォトレジストを成膜して、アルゴンや窒素等の不活性ガスを使用してドライエッチングを行うと、同図(b)に示されるように、エッチング材料がエッチングマスク3の側面に再付着する。そして、フォトレジスト剥離後には、同図(c)に示されるように、パターニングされた薄膜の側方上面から垂直乃至は傾斜した態様で突起状の残渣2aとして残り、薄膜の断面形状が所望の形状とならないという問題があった。また、上記残渣は基材1上の薄膜が連続する方向に沿って連続するので、これを剥離するためには、例えば、特許文献1において提案されるように、塩素ガス等による化学反応を利用したドライエッチングが必要となり、装置が大規模となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−514600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、難エッチング材料を不活性ガスによりエッチングする際に、難エッチング材料の残渣なくエッチングする方法及び金属薄膜のパターニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、本発明者は鋭意検討の結果下記の通り解決手段を見いだした。
即ち、本発明のドライエッチング方法は、請求項1に記載の通り、断面形状がハンマーヘッド型となるようにレジストを形成した後、前記金属薄膜をドライエッチングすることを特徴とする。
また、請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のドライエッチング方法において、前記レジストのヘッド部と、柄部とを、現像液への溶解に対する選択比が異なるレジストから構成することを特徴とする。
また、請求項3記載の本発明は、請求項2に記載のドライエッチング方法において、前記ヘッド部をポジ型又はネガ型のフォトレジストから構成し、前記柄部をポリジメチルグルタルイミドを主成分とするレジストから構成することを特徴とする。
また、請求項4記載の本発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載のドライエッチング方法において、前記ヘッド部の幅を5μm〜10μm、高さを1.0μm〜3.0μmとし、前記柄部は、幅を0.2μm〜1.0μm、高さを0.5μm〜1.0μmとすることを特徴とする。
また、請求項5記載の本発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載のドライエッチング方法において、前記金属薄膜は、白金、金、イリジウム及びクロムの何れか又はこれを含む合金からなることを特徴とする。
本発明の金属薄膜のパターニング方法は、請求項6に記載の通り、請求項1乃至5の何れか1項に記載のドライエッチング方法により金属薄膜をエッチングした後に、前記レジストを除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基材上に形成された難エッチング材料からなる金属薄膜を、その残渣なく不活性ガスによりエッチングすることが可能となるため、残渣を除去するための塩素ガス等によるエッチング工程が不要となる。また、残渣を除去するための工程を不要とできるため、エッチング装置の大型化する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来技術の説明図
【図2】本発明の一実施の形態のドライエッチング過程の説明図
【図3】(a)本発明の一実施例のハンマーヘッド型構造のエッチングマスクの顕微鏡写真、(b)同拡大写真
【図4】本発明の実施例において使用するエッチング装置の概略構成図
【図5】本発明の実施例において使用可能なエッチング装置の概略構成図
【図6】比較例1のエッチング対象物及びマスク構造の説明図
【図7】(a)比較例1のPtの顕微鏡写真、(b)実施例1のPtの顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のドライエッチング方法は、図2に示す通り、基材1に形成された金属薄膜2上に断面形状がハンマーヘッド型となるようにレジスト4を形成(同図(a))した後、金属薄膜2をドライエッチング(同図(b))するものである。
【0009】
これにより、同図(b)中に示すように金属薄膜2が剥離して、ヘッド部4b側に付着しても、このヘッド部4bは後に除去されるため、突起状に残渣が残ることがない。
【0010】
上記金属薄膜を構成する材料としては、特に制限するものではないが、ウェットエッチングを行うことが困難な材料の場合により有効であり、更に、ドライエッチング過程において剥離したものが再度付着しやすいPt,Au,Ir,Cr等に対して有効である。また、金属薄膜の膜厚についても特に制限はないが、例えば、0.1μm〜0.5μm程度とすることができる。尚、金属薄膜は、通常、Si基板等の上に成膜されるものであるが、この基板自体については特に制限するものではない。
【0011】
ハンマーヘッド型の構造とは、本明細書では、図2に示すように、柄部4aと、これよりも幅広のヘッド部4bとを備えたものをいうものとする。尚、このハンマーヘッド型の断面形状とは、レジストが連続する方向に垂直な面をいうものとする。
上記断面形状がハンマーヘッド型のレジストを構成する材料としては、通常のレジスト材料で、且つ、ドライエッチングの際に大きく変形することがない程度のものであれば特に制限するものではないが、繊細なパターニング等を行う際には、フォトレジストから構成することが好ましい。フォトレジストを使用する場合には、例えば、OFPR(東京応化社製)、KMPR(化薬マイクロケム社製)、SU-8(化薬マイクロケム社製)等を使用することができる。
尚、ハンマーヘッド型構造をフォトリソ法により形成することができるため、柄部4aとヘッド部4bとを構成するレジストは、現像液に対する溶解の選択比が異なるレジストにより構成することが好ましい。具体的には、ヘッド部4bを、OFPR等のポジ型又はネガ型のフォトレジストから構成し、柄部4aをPMGIのSF6等のポリジメチルグルタルイミドを主成分とするレジストから構成すればよい。
【0012】
前記ハンマーヘッド型構造のレジストを形成する方法としては、特に制限するものではないが、例えば、金属薄膜2上にスピンコート法により2種類のレジスト層を塗布・硬化し、上層側をフォトリソ法等によりヘッド部4b側をパターニングし、現像の際に、ヘッド部4bに不要なレジストを、柄部4aの両側のレジストと併せて、或いは、ヘッド部4bと柄部4aの両側のレジストを別々に除去することにより形成することができる。
尚、断面形状において、ヘッド部4bは、その幅を5μm〜10μm、高さを1.0μm〜3.0μmとし、柄部4aは、その幅を0.2μm〜1.0μm、高さを0.5μm〜1.0μmとすることが好ましい。ヘッド直下のメタル膜に対して、Arプラズマを奇何的に照射させないようにし、且つ、現像や洗浄時にハンマーヘッド型の構造が崩れるおそれがあるからである。
【0013】
上記ハンマーヘッド型構造のレジストが形成された金属薄膜2は、ドライエッチングにより剥離する。その際に使用するエッチング装置のプラズマ発生方法は、平行平板型、容量結合型(CCP)、誘導結合型(ICP)、超高周波型(UHF)、ECR型等の制限はなく、これら全てのプラズマ発生方式を採用することができる。
以下に、図4及び図5を参照して具体的に説明する。
【0014】
CCP方式による場合には、図4に示した構成の装置を使用することができる。
同装置は、Arガス等の不活性ガスをチャンバー内に導入するための不活性ガス導入系(図示せず。)と、プラズマ源となる高周波発振器5により印加される電極6と、これに対向する位置に設けられたアース電極7と、反応生成物を揮発性ガスにして外部に排気するためのポンプ等から構成される真空排気系8とを備えている。
これにより、エッチング対象物9が載置された電極6に高周波電力を印加し、発生した負の自己バイアス電圧により、プラズマから生成されたイオンを加速してエッチング対象物9と衝突させてドライエッチングを行うことができる。尚、図示した装置では、エッチング対象物9を、電極6上において冷却するためのESC10を介して載置されており、図中の符号11はシールド、19はイグナイタである。
【0015】
ICP方式による場合には、図5に示した構成の装置を使用することができる。
同装置は、Arガス等の不活性ガスをチャンバー内に導入するための不活性ガス導入系(図示せず)と、有磁場ICPプラズマ源(ISM電極12、スター電極13、スター電極背面に設けられた磁石14及び高周波発振器15)と、装置室内天井部においてスター電極13が設けられる石英フランジ16と、これに対向する位置に設けられたRFバイアス用の高周波発振器17に接続された電極18と、電極反応生成物を揮発性ガスにして外部に排気するためのポンプ等から構成される真空排気系8とを備えている。これにより、エッチング対象物7を載置した電極5に高周波電力を印加してプラズマから生成されたイオンを加速してエッチング対象物と衝突させてドライエッチングを行う。尚、図4と同じ符号の部材、図4と同じものであるため説明を省略する。
【0016】
尚、ドライエッチング時に使用するガスについても特に制限はないが、エッチング速度が速いという理由からArやN2ガスを使用することが好ましい。
上述したエッチング方法によりエッチングされた基板から、レジストを除去すれば、本発明の金属薄膜はパターニングされることになる。
【実施例】
【0017】
次に、本発明の一実施例について説明する。
(実施例1)
厚さ0.5mmのSi基板上に、膜厚2μmのSiO2、膜厚200nmのTa2O5、膜厚400nmのPtを積層し、この上に、電子線露光用下層レジストとしてPMGI-SF7(ポジ型)を膜厚2000Åとなるように、スピンコート(3000rpm、60秒)により形成して200℃で5分間ベークした。
更に、その上に、電子線露光用上層レジストとして、OFPR-800(ポジ型、粘度200cp、SLOPE Up及びDown共に10(sec):10(rpm))を、スピンコート(3000rpm、60秒)により形成して95℃で120秒間プレベークした。
その後、3分間冷却して、PLAにより露光(レジスト付基板とフォトマスクを軽く押し当てて露光(Soft Contact)を10秒)し、現像液NMD-3により、目視でレジストの干渉縞が消えるまで現像を行った後、120℃で2分間ハードベークして、図3に示すように、Pt薄膜上にハンマーヘッド構造型のレジスト(エッチングマスク)を形成したエッチング対象物とした。尚、同図に示されるエッチングマスクの断面形状におけるヘッド部の幅は5.0μm、高さは3.0μmであり、柄部の幅は1.0μm、高さは0.5μmであった。
【0018】
次に、エッチング対象物にドライエッチングを行うために、図4に示す高密度プラズマエッチング装置((株)アルバック製 NE-550)を使用して、以下に説明する順でエッチング対象物9のドライエッチングを行った。
まず、チャンバー内に、Ar(10sccm)とO2(100sccm)を導入し、電力800W以下で30分〜60分で天板のクリーニングを行った後、エッチング対象物9をSiグリスによりESC10上のSi板に固定した。次に、チャンバー内にAr(10sccm)で導入して2分間待機し、その後、アンテナ電力500V、バイアス電力200Wで放電を開始し、エッチング対象物9上のPt膜を400Å/分でエッチングを行い、チャンバー内を排気してドライエッチングを終了した。
【0019】
(比較例1)
次に、実施例1との比較を行うために下記の比較例1を作成した。
図6(a)に示すように、厚さ0.5mmのSi基板上に、膜厚2μmのSiO2、膜厚200nmのTa2O5、膜厚400nmのPtを積層し、この上に、コンタクトアライナー用下層レジストとしてOFPR(東京応化)を膜厚4μとなるように、スピンコート(3000rpm、60秒)により形成して200℃で5分間ベークした。
その後、3分間冷却して、PLAにより露光(レジスト付基板とフォトマスクを軽く押し当てて露光(Soft Contact)を10秒)し、現像液NMD-3により、目視でレジストの干渉縞が消えるまで現像を行った後、120℃で2分間ハードベークして、図4に示すように、Pt薄膜上にエッチングマスクを形成したエッチング対象物とした。
【0020】
実施例1で使用した装置と同じ装置を使用して以下に説明する順でエッチング対象物のドライエッチングを行った。
チャンバー内に、Ar(10sccm)とO2(100sccm)を導入し、電力800W以下で30分〜60分で天板のクリーニングを行う。次に、エッチング対象物をSiグリスによりESC上のSi板に固定する。チャンバー内にAr(10sccm)で導入して2分間待機し、その後、アンテナ電力500V、バイアス電力200Wで放電を開始し、図6(b)に示すように、エッチング対象物上のPt膜を400Å/分でエッチングを行い、チャンバー内を排気してドライエッチングを終了した。
【0021】
実施例1のエッチング対象物は、その拡大写真を図7(b)に示す通り、レジスト除去後のPtの残渣は生じなかった。これに対して、比較例1のエッチング対象物は、同図(a)に示す通り、Ptの残渣が生じる結果となった。
【符号の説明】
【0022】
1 基材
2 金属薄膜
2a 残渣
3 エッチングマスク
4 ハンマーヘッド型構造のエッチングマスク
4a 同マスク下層
4b 同マスク上層
5 高周波発振器
6 電極
7 アース電極
8 真空排気系
9 エッチング対象物
10 ESC
11 シールド
12 ISM電極
13 スター電極
14 磁石
15 高周波発振器
16 石英フランジ
17 高周波発振器
18 電極
19 イグナイタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄膜上に、断面形状がハンマーヘッド型となるようにレジストを形成した後、前記金属薄膜をドライエッチングすることを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項2】
前記レジストのヘッド部と、柄部とを、現像液への溶解に対する選択比が異なるレジストから構成することを特徴とする請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項3】
前記ヘッド部をポジ型又はネガ型のフォトレジストから構成し、前記柄部をポリジメチルグルタルイミドを主成分とするレジストから構成することを特徴とする請求項2に記載のドライエッチング方法。
【請求項4】
前記ヘッド部の幅を5μm〜10μm、高さを1.0μm〜3.0μmとし、前記柄部は、幅を0.2μm〜1.0μm、高さを0.5μm〜1.0μmとすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項5】
前記金属薄膜は、白金、金、イリジウム及びクロムの何れか又はこれを含む合金からなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のドライエッチング方法により金属薄膜をエッチングした後に、前記レジストを除去することを特徴とする金属薄膜のパターニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−232352(P2010−232352A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77240(P2009−77240)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】