説明

ナビゲーション装置および誘導経路探索方法

【課題】通信時間および通信コストを抑えつつ、サーバが保有する地図データを十分に利用して、より最適な誘導経路を設定することが可能な「ナビゲーション装置および誘導経路探索方法」を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置100の有する第1の地図データに基づいて探索した第1の誘導経路の中から、所定の特定条件を満たす部分経路の開始地点から終了地点までの経路探索をサーバ140に要求し、第1の誘導経路に含まれる部分経路を、第1の地図データとは異なる第2の地図データに基づきサーバ140により探索された第2の部分経路で置き換えた第2の誘導経路を最終的な誘導経路として設定することにより、ナビゲーション装置100で探索した第1の誘導経路のうち、よりリンクコストの小さい経路が探索される可能性がある経路のみ、より新しく情報量の多い第2の地図データに基づいて再探索されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路誘導機能を備えたナビゲーション装置および誘導経路探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の走行案内を行うナビゲーション装置は、単に現在地周辺の地図を表示するのみでなく、目的地を指定することにより、現在地から目的地までの誘導経路を自動設定して案内する機能を備えている。この経路誘導機能では、地図データを用いて現在地から目的地までを結ぶ最もコストが小さな経路を、幅優先探索(BFS)法あるいはダイクストラ法などのシミュレーションを行って自動探索し、その探索した経路を誘導経路として設定する。
【0003】
誘導経路の設定後は、車両の走行中に地図画像上で誘導経路を他の道路と識別可能なように色を変えて太く描画する。また、車両が誘導経路上の案内交差点から所定距離内に近づいたときに、交差点案内図(交差点拡大図とこの交差点での進行方向を示す矢印)を表示したり、進行方向を音声で案内したりするなどの交差点案内を行うことにより、運転者を目的地まで案内するようになっている。
【0004】
近年、上記のナビゲーション装置を発展させたものが実用化されている。そのナビゲーション装置は、携帯電話等の携帯端末を使用して、出発地および目的地を示す設定情報をサーバに送信して誘導経路の探索を要求する。サーバは、ナビゲーション装置から受信した設定情報をもとに、サーバが保有する地図データや道路交通情報に基づいて出発地から目的地までの誘導経路を探索して、その探索した誘導経路を示す経路情報をナビゲーション装置に送信する。
【0005】
ナビゲーション装置は、DVDやハードディスクなどの記憶装置に地図データを保存している。しかし、ナビゲーション装置の保有する地図データは更新頻度が低い。これに比べて、サーバの保有する地図データは更新頻度が高く、ナビゲーション装置の地図データより新しく、情報量が多い。また、サーバは、道路状況に応じた道路交通情報をナビゲーション装置よりも広範囲に収集することができる。そのため、ナビゲーション装置は、サーバから受信した経路情報に基づいて、より最適な誘導経路を設定することができる。
【0006】
しかし、上述のナビゲーション装置では、出発地から目的地までの全体の経路をサーバにて探索しているため、ナビゲーション装置がサーバから受信する情報量が多くなる。よって、ナビゲーション装置においてサーバから経路情報を取得し終わるまでに長い時間が掛かってしまうとともに、通信料金が高額になってしまうという問題があった。
【0007】
なお、出発地から目的地までの全体の経路の一部だけをサーバにて探索する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の技術では、出発地と引継ぎ点との間の部分ルートをナビゲーションクライアントで計算し、引継ぎ点と目的地との間の部分ルートをルートサーバで計算する。これにより、ナビゲーションクライアントの有している地図データだけでは全体の経路を探索できない目的地が設定されたとしても、広範囲にわたる地図データを有しているルートサーバによって探索された部分ルートの経路情報を利用して、全体ルートに関する誘導経路をナビゲーションクライアントで設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2008−510152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、ルートサーバによって部分ルートが探索されるのは、ナビゲーションクライアントの有する地図データに含まれない目的地が設定された場合に限られる。そのため、ナビゲーションクライアントの地図データに含まれる目的地が設定された場合、新しく情報量の多い地図データや広範囲の道路交通情報などを使ったルートサーバの探索機能を十分に利用しきれず、より最適な誘導経路を設定することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、通信時間および通信コストを抑えつつ、サーバが保有する地図データ(好ましくは道路交通情報も)を十分に利用して、より最適な誘導経路を設定することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、ナビゲーション装置の有する第1の地図データに基づいて探索した出発地から目的地までの第1の誘導経路の中から、所定の特定条件を満たす部分経路を抽出して再探索対象経路として特定し、その特定した再探索対象経路の開始地点から終了地点までの経路探索をサーバに要求する。そして、第1の誘導経路に含まれる部分経路を、第1の地図データとは異なる第2の地図データに基づいてサーバにより探索された第2の部分経路で置き換えた第2の誘導経路を最終的な誘導経路として設定するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、第1の地図データに基づきナビゲーション装置で探索した第1の誘導経路のうち、所定の特定条件を満たす経路についてはサーバで第2の地図データに基づき再探索されるため、よりリンクコストの小さい経路が探索される可能性がある。これにより、サーバが保有する第2の地図データを十分に利用して、より最適な経路を設定することができる。しかも、ナビゲーション装置で探索した誘導経路の一部のみがサーバによって探索されてナビゲーション装置に送信されるため、ナビゲーション装置がサーバから受信する情報量は抑制され、通信時間および通信コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態によるナビゲーションシステムの全体構成例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態によるナビゲーションシステムの動作例を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施形態によるナビゲーションシステムの全体構成例を示すブロック図である。
【図4】第2の実施形態による部分経路の提示例を示す図である。
【図5】第2の実施形態によるナビゲーションシステムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態によるナビゲーション装置100を備えたナビゲーションシステム120の全体構成例を示す図である。図1に示すように、ナビゲーションシステム120は、ナビゲーション装置100およびサーバ140を備えて構成されている。このうち、ナビゲーション装置100は、ユーザが運転する車両内部に設置されている。サーバ140は、例えば、ナビゲーション装置100に対して情報を配信する情報配信センタに設置されている。そして、ナビゲーション装置100とサーバ140との間が無線の通信回線にて接続されている。
【0015】
まず、ナビゲーション装置100の構成について説明する。図1において、11はDVD−ROM等の記録媒体であり、地図表示や経路探索等に必要な各種の第1の地図データを記憶している。第1の地図データには、マップマッチングや経路探索等の各種の処理に必要な道路ユニットのデータが含まれている。道路ユニットは、交差点や分岐など、複数の道路が交わる点に対応するノードに関する情報と、道路上のあるノードとこれに隣接する他のノードとの間を接続する、道路に対応する道路リンクに関する情報とを含んでいる。なお、ここでは第1の地図データを記憶する記録媒体としてDVD−ROM11を用いているが、CD−ROM、ハードディスク、半導体メモリ等の他の記録媒体を用いても良い。
【0016】
本実施形態では、道路ユニットのデータには、事故多発地点情報、リンク旅行時間情報、渋滞予測情報、走行評価情報および燃費評価情報が含まれている。事故多発地点情報は、過去の事故情報を統計的に解析して作成された情報であり、事故が多発する地点(道路リンク)を示す。リンク旅行時間情報は、過去の渋滞情報を統計的に解析して各道路リンクについて作成された情報であり、自車両が、ある道路リンクに進入してその道路リンクを通り抜けるまでにかかる予想所要時間(リンク旅行時間)を示す。なお、リンク旅行時間が所定時間以上の道路(例えば、大きな国道に対して進入する細い道路、多くの道路が交差する交差点に接続された道路、踏切の近くに信号機が存在する道路など)を以下、ボトルネック道路という。渋滞予測情報は、過去の渋滞情報を統計的に解析して作成された情報であり、ボトルネック道路ではないが、渋滞が発生しやすいと予測される道路リンクを示す。走行評価情報は、各々の道路リンクについて自車両の走行しにくさの度合いを示す。燃費評価情報は、各々の道路リンクを自車両が走行する際における燃費の良否の度合いを示す。
【0017】
12は車両の現在位置を所定間隔毎に検出する車両位置検出部であり、自立航法センサ、GPS受信機、位置計算用CPU等で構成されている。自立航法センサは、所定走行距離毎に1個のパルスを出力して車両の移動距離を検出する車速センサ(距離センサ)と、車両の回転角度(移動方位)を検出する振動ジャイロ等の角速度センサ(相対方位センサ)とを含む。自立航法センサは、これらの車速センサおよび角速度センサによって車両の相対位置および方位を検出する。
【0018】
位置計算用CPUは、自立航法センサから出力される自車両の相対的な位置および方位のデータに基づいて、絶対的な自車装置(推定車両位置)および車両方位を計算する。また、GPS受信機は、複数のGPS衛星から送られてくる電波をGPSアンテナで受信して、3次元測位処理あるいは2次元測位処理を行って車両の絶対位置および方位を計算する(車両方位は、現時点における自車位置と1サンプリング時間ΔT前の自車位置とに基づいて計算する)。
【0019】
13はDVD−ROM制御部であり、DVD−ROM11からの第1の地図データの読み出しを制御する。14は地図データ記憶部(本発明の第1の地図データ記憶部に相当する)であり、DVD−ROM制御部13の制御によってDVD−ROM11から読み出された第1の地図データを一時的に格納する。すなわち、DVD−ROM制御部13は、車両位置検出部12から車両現在位置の情報を入力し、その車両現在位置を含む所定範囲の第1の地図データの読み出し指示を出力することにより、地図表示や誘導経路の探索に必要な第1の地図データをDVD−ROM11から読み出して地図データ記憶部14に格納する。
【0020】
15はリモコン、タッチパネルまたは操作スイッチ等の操作部であり、ユーザがナビゲーション装置100に対して各種の情報(例えば、経路誘導の目的地や経由地)を設定したり、各種の操作(例えば、メニュー選択操作、地図の拡大/縮小操作、手動地図スクロール、数値入力など)を行ったりするためのものである。
【0021】
16は目的地設定部であり、ディスプレイ17に表示されている目的地設定用の操作画面において、ユーザによる操作部15の操作を介して指定された地点を目的地として設定する。そして、目的地設定部16は、設定した目的地を示す目的地情報を誘導経路探索部20に出力する。
【0022】
18は道路交通情報取得部であり、自車両周辺の道路上に設置された光ビーコンや電波ビーコン、またはFM多重放送を介して、道路交通情報センタで編集された道路交通情報を取得して誘導経路探索部20に出力する。道路交通情報は、渋滞情報、交通障害情報、交通規制情報、所要時間情報などを含む。渋滞情報は、渋滞箇所とその長さ(道路区間)とを示す。交通障害情報は、事故や故障車、工事、路上落下物、路面凍結等の情報を示す。交通規制情報は、通行止めや速度規制、チェーン規制、高速道路等の入口閉鎖等の情報を示す。所要時間情報は、ある道路区間の通過に必要な時間を示す。
【0023】
19は天気情報取得部であり、インターネット(図示せず)を介して現在の全国各地の天気情報(例えば、晴れ、曇り、雨、雪など)を取得して誘導経路探索部20および特定部24に出力する。また、天気情報取得部19は、車両位置検出部12により検出された自車位置情報に基づいて自車位置周辺の天気画像データを生成する。そして、天気情報取得部19は、生成した天気画像データをディスプレイ17に出力することにより、自車位置周辺の天気情報をディスプレイ17に表示させる。
【0024】
誘導経路探索部20は、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データと、道路交通情報取得部18から出力された道路交通情報と、天気情報取得部19から出力された天気情報とに基づいて、車両位置検出部12により検出された自車位置(出発地)から、目的地設定部16により設定された目的地に至る様々な経路上のリンクコストを順次加算し、リンクコストの合計が最も小さい経路を第1の誘導経路として探索する。
【0025】
本実施形態では、誘導経路探索部20が探索を行う際、道路交通情報に基づき混雑または渋滞していると判断された道路リンクや、天気情報に基づき天気が悪い(例えば、雨や雪が降っている)地域に含まれる道路リンクのリンクコストに対して充分に大きな重みを付加することにより、それらの道路リンクが誘導経路の一部としてなるべく選択されにくいようにする。
【0026】
21は誘導経路メモリであり、誘導経路探索部20により第1の誘導経路が探索された場合、その探索された第1の誘導経路のデータ(現在位置から目的地に至るまでの道路リンクの集合)を第1の誘導経路情報として一時的に格納する。また、誘導経路メモリ21は、後述する誘導経路設定部27により第2の部分経路が設定された場合、第1の誘導経路の一部を当該第2の部分経路で置き換えた第2の誘導経路のデータを第2の誘導経路情報として一時的に格納する。
【0027】
22は地図表示制御部であり、車両位置検出部12により検出された自車位置情報と、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データとに基づいて自車位置周辺の地図画像データを生成する。そして、地図表示制御部22は、生成した地図画像データをディスプレイ17に出力することにより、自車位置周辺の地図画像をディスプレイ17に表示させる。
【0028】
23は誘導経路案内部であり、誘導経路探索部20により第1の誘導経路が探索された場合、車両位置検出部12により検出された自車位置情報と、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データと、誘導経路メモリ21に格納された第1の誘導経路情報(または第2の誘導経路情報)とに基づいて誘導経路案内を行う。具体的には、誘導経路案内部23は、ディスプレイ17に対して、地図表示制御部22により生成された地図画像に重ねて第1の誘導経路(または第2の誘導経路)を他の道路とは異なる色で太く表示することにより、第1の誘導経路(または第2の誘導経路)の目的地までの走行案内を行う。また、誘導経路案内部21は、第1の誘導経路(または第2の誘導経路)上に存在する経路案内すべき交差点や分岐点(以下、案内交差点という)に自車両が近づくたびに、当該案内交差点に関する経路案内を行う。
【0029】
24は特定部であり、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データと、誘導経路メモリ21に格納された第1の誘導経路情報と、天気情報取得部19から出力された天気情報とに基づいて、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路の中から、所定の特定条件を満たす部分経路を全て抽出し、抽出した全ての部分経路を再探索対象経路として特定する。また、特定部24は、特定した再探索対象経路を示す再探索対象経路情報を経路探索要求部25および誘導経路設定部27に出力する。ここで、所定の特定条件とは、よりリンクコストの小さい経路がサーバ140で探索される可能性がある部分経路を抽出するための6つの条件からなるものであり、具体的な各特定条件については以下順に説明する。
【0030】
1つ目の特定条件は、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路に含まれ、かつ、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データに含まれる事故多発地点情報により示される事故多発地点およびそこから所定範囲内(例えば、半径数100[m]以内)に存在する道路区間であるという条件である。これを条件としているのは、事故多発地点では事故による渋滞が発生する可能性が高く、実際に事故があれば渋滞が発生する道路区間だからである。また、所定範囲内としているのは、事故多発地点の付近も影響を受けて渋滞の可能性があるからである。ユーザにとっては、その事故多発地点の付近を出来るだけ避けた経路を探索してほしい要望があるのでで、事故多発地点のみならず、その周辺まで含めた道路区間を部分経路として抽出する。
【0031】
2つ目の特定条件は、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路に含まれ、かつ、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データに含まれるリンク旅行時間情報により示されるボトルネック道路およびそこから所定範囲内(例えば、半径数100[m]以内)に存在する道路区間であるという条件である。これを条件としているのは、リンク旅行時間が所定時間以上のボトルネック道路は渋滞が発生する可能性が高い道路区間だからである。また、所定範囲内としているのは、ボトルネック道路の付近も影響を受けて渋滞の可能性があるからである。ユーザにとっては、当該ボトルネック道路の付近を出来るだけ避けた経路を探索してほしい要望があるので、ボトルネック道路のみならず、その周辺まで含めた道路区間を部分経路として抽出する。
【0032】
3つ目の特定条件は、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路に含まれ、かつ、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データに含まれる渋滞予測情報により渋滞が発生しやすいと予測される道路リンクおよびそこから所定範囲内(例えば、半径数100[m]以内)に存在する道路区間であるという条件である。これを条件としているのは、渋滞予測情報により示される道路は渋滞が発生する可能性が高い道路区間だからである。また、所定範囲内としているのは、その道路の付近も影響を受けて渋滞の可能性があるからである。ユーザにとっては、その道路の付近を出来るだけ避けた経路を探索してほしい要望があるので、渋滞が発生しやすいと予測される道路のみならず、その周辺まで含めた道路区間を部分経路として抽出する。
【0033】
4つ目の特定条件は、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路に含まれ、かつ、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データに含まれる走行評価情報により走行しにくいと評価される道路リンクおよびそこから所定範囲内(例えば、半径数100[m]以内)に存在する道路区間であるという条件である。これを条件としているのは、走行しにくいと評価される道路リンクに対応する道路(例えば、トンネル、裏道および山道など)は幅が狭かったり、舗装が不十分であったりすることにより渋滞が発生する可能性が高い道路区間だからである。また、所定範囲内としているのは、その道路の付近も影響を受けて渋滞の可能性があるからである。ユーザにとっては、その道路の付近を出来るだけ避けた経路を探索してほしい要望があるので、走行しにくいと評価される道路のみならず、その周辺まで含めた道路区間を部分経路として抽出する。
【0034】
5つ目の特定条件は、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路に含まれ、かつ、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データに含まれる燃費評価情報により燃費が悪いと評価される道路リンクおよびそこから所定範囲内(例えば、半径数100[m]以内)に存在する道路区間であるという条件である。これを条件としているのは、燃費が悪いと評価される道路リンクに対応する道路は勾配がきつい、法定速度が低い、信号数が多い等の理由により渋滞が発生する可能性が高い道路区間だからである。また、所定範囲内としているのは、その道路の付近も影響を受けて渋滞の可能性があるからである。ユーザにとっては、当該道路の付近を出来るだけ避けた経路を探索してほしい要望があるので、燃費が悪いと評価される道路のみならず、その周辺まで含めた道路区間を部分経路として抽出する。
【0035】
6つ目の特定条件は、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路に含まれ、かつ、天気情報取得部19から出力された天気情報により天気が悪い(例えば、雨や雪が降っている)と示されている地域に含まれる道路区間であるという条件である。これを条件としているのは、天気が悪いと示されている地域に含まれる道路は、車両の走行速度が遅い、車両前方の視界が悪い等の理由により渋滞が発生する可能性が高い道路区間だからである。ユーザにとって、当該道路区間を出来るだけ避けた経路を探索してほしい要望があるので、天気が悪いと示されている地域に含まれる道路区間を部分経路として抽出する。
【0036】
経路探索要求部25は、通信部26を通じてサーバ140との間で通信し、特定部24から出力された再探索対象経路情報により示される再探索対象経路の開始地点から終了地点までの経路探索をサーバ140に要求する旨を示す経路探索要求情報をサーバ140に送信する。この経路探索要求情報には、特定部24から出力された再探索対象経路情報が含まれている。
【0037】
誘導経路設定部27(本発明の受信部および誘導経路設定部に相当する)は、通信部26を通じてサーバ140との間で通信し、サーバ140から送信された第2の部分経路情報を受信する。そして、誘導経路設定部27は、誘導経路メモリ21に格納されている第1の誘導経路のうち、特定部24から出力された再探索対象経路情報により示される再探索対象経路を、サーバ140から受信した第2の部分経路情報により示される第2の部分経路で置き換える。つまり、誘導経路設定部27は、第1の誘導経路の一部を置き換えた第2の誘導経路のデータを第2の誘導経路情報として誘導経路メモリ21に格納することによって、第2の誘導経路を設定する。その後、誘導経路案内部23は、車両位置検出部12により検出された自車位置情報と、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データと、誘導経路設定部27により誘導経路メモリ21に格納された第2の誘導経路情報とに基づいて誘導経路案内を行う。
【0038】
次に、サーバ140の構成について説明する。図1において、30は地図データ記憶部であり、ナビゲーション装置100の地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データとは異なる第2の地図データを記憶する。地図データ記憶部30に記憶されている第2の地図データは更新頻度が高く、ナビゲーション装置100の保有する第1の地図データより新しく、情報量が多いため、例えば、新しく開通した道路などが反映されている。本実施形態では、第2の地図データに含まれる道路ユニットのデータにも、ナビゲーション装置100の保有する第1の地図データと同様に、事故多発地点情報、リンク旅行時間情報、渋滞予測情報、走行評価情報および燃費評価情報が含まれている。
【0039】
31は道路交通情報取得部であり、道路交通情報センタ(図示せず)から所定時間間隔毎に配信される全国各地の道路交通情報を取得して経路探索部33に出力する。つまり、サーバ140は、自車両周辺の道路交通情報を取得するナビゲーション装置100に比べて、広範囲の道路交通情報を取得することができる。道路交通情報は、ナビゲーション装置100が取得するものと同様の渋滞情報、交通障害情報、交通規制情報、所要時間情報などを含む。
【0040】
32は天気情報取得部であり、インターネット(図示せず)を介して現在の全国各地の天気情報(例えば、晴れ、曇り、雨、雪など)を取得して経路探索部33に出力する。
【0041】
経路探索部33は、通信部34を通じてナビゲーション装置100との間で通信を行い、ナビゲーション装置100の経路探索要求部25から送信された経路探索要求情報を受信する。また、経路探索部33は、地図データ記憶部30に記憶されている第2の地図データと、道路交通情報取得部31から出力された道路交通情報と、天気情報取得部32から出力された天気情報とに基づいて、受信した経路探索要求情報に含まれる再探索道路情報により示される再探索対象経路の開始地点から終了地点に至る様々な経路上のリンクコストを順次加算し、リンクコストの合計が最も小さい経路を第2の部分経路として探索する。また、経路探索部33は、通信部34を通じてナビゲーション装置100との間で通信を行い、探索した第2の部分経路を示す第2の部分経路情報をナビゲーション装置100に送信する。
【0042】
本実施形態では、経路探索部33が探索を行う際、道路交通情報に基づき混雑または渋滞していると判断された道路リンクや、天気情報に基づき天気が悪い(例えば、雨や雪が降っている)地域に含まれる道路リンクのリンクコストに対して充分に大きな重みを付加することにより、それらの道路リンクが誘導経路の一部としてなるべく選択されにくいようにする。
【0043】
次に、本実施形態におけるナビゲーションシステム120の動作を説明する。図2は、ナビゲーションシステム120の動作例を示すフローチャートである。図2におけるステップS100の処理は、ナビゲーション装置100の起動後、誘導経路探索部20が自車位置から目的地までの第1の誘導経路を探索し、その結果の第1の誘導経路情報を誘導経路メモリ21に格納することによって開始する。
【0044】
まず、特定部24は、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データと、誘導経路メモリ21に格納された第1の誘導経路情報と、天気情報取得部19から出力された天気情報とに基づいて、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路の中から、所定の特定条件を満たす部分経路を全て抽出し、抽出した全ての部分経路を再探索対象経路として特定する(ステップS100)。そして、特定部24は、特定した再探索対象経路を示す再探索対象経路情報を経路探索要求部25および誘導経路設定部27に出力する。
【0045】
次に、経路探索要求部25は、特定部24から出力された再探索対象経路情報により示される再探索対象経路の開始地点から終了地点までの経路探索をサーバ140に要求する旨を示す経路探索要求情報を、通信部26を通じてサーバ140に送信する(ステップS120)。
【0046】
次に、サーバ140の経路探索部33は、ナビゲーション装置100の経路探索要求部25から送信された経路探索要求情報を、通信部34を通じて受信する(ステップS140)。次に、経路探索部33は、地図データ記憶部30に記憶されている第2の地図データと、道路交通情報取得部31から出力された道路交通情報と、天気情報取得部32から出力された天気情報とに基づいて、経路探索要求情報に含まれる再探索道路情報により示される再探索対象経路の開始地点から終了地点までの経路探索を行う(ステップS160)。そして、経路探索部33は、探索した第2の経路を示す第2の部分経路情報を、通信部34を通じてナビゲーション装置100に送信する(ステップS180)。
【0047】
次に、ナビゲーション装置100の誘導経路設定部27は、サーバ140から送信された第2の部分経路情報を、通信部26を通じて受信する(ステップS200)。そして、誘導経路設定部27は、誘導経路メモリ21に格納されている第1の誘導経路のうち、特定部24から出力された再探索対象経路情報により示される再探索対象経路を、サーバ140から受信した第2の部分経路情報により示される第2の部分経路で置き換えることによって、第2の誘導経路を設定する(ステップS220)。その処理が完了した後、ナビゲーションシステム120は、図2における処理を終了する。
【0048】
以上詳しく説明したように、第1の実施形態では、ナビゲーション装置100の有する第1の地図データと道路交通情報と天気情報とに基づいて探索した出発地から目的地までの第1の誘導経路の中から、特定条件を満たす部分経路を抽出して再探索対象経路として特定し、その特定した再探索対象経路の開始地点から終了地点までの経路探索をサーバ140に要求する。そして、第1の誘導経路に含まれる部分経路を、サーバ140の有する第2の地図データと道路交通情報と天気情報とに基づいてサーバ140により探索された第2の部分経路で置き換えた第2の誘導経路を最終的な誘導経路として設定するようにしている。
【0049】
このように構成した第1の実施形態によれば、ナビゲーション装置100で探索した第1の誘導経路のうち、所定の特定条件を満たす経路についてはサーバ140で再探索される。サーバ140の保有する第2の地図データは更新頻度が高く、ナビゲーション装置100の保有する第1の地図データより新しく、情報量が多い。また、サーバ140は、道路状況に応じた道路交通情報をナビゲーション装置100よりも広範囲に収集することができる。そのため、よりリンクコストの小さい経路がサーバ140で探索される可能性がある。これにより、サーバ140が保有する第2の地図データや道路交通情報を十分に利用して、より最適な経路を設定することができる。しかも、ナビゲーション装置100で探索した第1の誘導経路の一部のみがサーバ140によって探索されてナビゲーション装置100に送信されるため、ナビゲーション装置100がサーバ140から受信する情報量は抑制され、通信時間および通信コストを抑えることができる。
【0050】
上記所定の特定条件は、例えば、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路に含まれ、かつ、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データに含まれる事故多発地点情報により示される事故多発地点およびそこから所定範囲内に存在する道路区間であるという条件である。ナビゲーション装置100の保有する第1の地図データは更新頻度が低く、サーバ140の保有する地図データより古く情報量が少ない。そのため、実際には事故多発地点やその付近を通らない新設道路が開通していても、その新設道路が第1の地図データに含まれていない限り探索することができない。さらに、ナビゲーション装置100は、道路状況に応じた道路交通情報を自車両周辺でしか取得することができないため、自車両から遠く離れた道路区間については渋滞を回避する経路を探索できない。これに対して、本実施形態によれば、事故多発地点のみならず、その周辺まで含めた道路区間(部分経路)について、よりリンクコストの小さい経路がサーバ140で探索される可能性があり、サーバ140が保有する第2の地図データや道路交通情報を十分に利用して、より最適な経路を設定することができる。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。図3は、第2の実施形態によるナビゲーション装置100′を備えたナビゲーションシステム120の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、ナビゲーション装置100′はその構成として、図1の特定部24の代わりに特定部24′を備えている。また、ナビゲーション装置100′はその構成として、提示部28および判定部29を更に備えている。なお、この図3において、図1に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0052】
特定部24′は、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データと、誘導経路メモリ21に格納された第1の誘導経路情報と、天気情報取得部19から出力された天気情報とに基づいて、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路の中から、所定の特定条件を満たす部分経路を全て抽出する。そして、特定部24′は、抽出した部分経路を示す抽出部分経路情報を提示部28に出力する。なお、所定の特定条件は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0053】
また、特定部24′は、判定部29から後述する選択部分経路情報が出力された場合、その選択部分経路情報により示される部分経路を再探索対象経路として特定し、特定した再探索対象経路を示す再探索対象経路情報を経路探索要求部25および誘導経路設定部27に出力する。
【0054】
提示部28は、特定部24′から出力された抽出部分経路情報により示される部分経路をディスプレイ17に表示してユーザに提示する。具体的には、提示部28は、地図表示制御部22により生成された地図画像に重ねて、提示すべき部分経路を他の道路(第1の誘導経路の他の部分を含む)とは異なる色で太く表示する。
【0055】
判定部29は、ユーザによる操作部15の操作を介して、提示部28により提示された部分経路が選択されたか否かについて判定する。もし、部分経路が選択されたと判定した場合、判定部29は、その選択された部分経路を示す選択部分経路情報を特定部24′に出力する。一方、部分経路が選択されていないと判定した場合、判定部29は、選択部分経路情報を特定部24′に出力しない。
【0056】
図4(a)は、第2の実施形態による地図画面上における部分経路の提示例を示す図である。この地図画面は、ユーザによるスクロール操作によって、自車位置から離れた場所の地図を表示させたものである。図4(a)において、200,220は、提示部28により地図画像に重ねて表示された第1の誘導経路230上の部分経路である。240,260は、ディスプレイ17の画面上に表示され、部分経路200,220を再探索対象経路としてそれぞれ選択するためのキーである。
【0057】
図4(b)は、図4(a)に示す画面において、ユーザによる操作部15の操作を介してキー240が選択された場合に表示される確認ダイアログの例を示す図である。図4(b)に示すように、図4(a)に示すディスプレイ17の画面上においてキー240を選択すると、キー240に対応する部分経路200の周辺を拡大した地図画像が表示される。また、その拡大地図上に、部分経路200を最終的に選択するか否かを確認するための確認ダイアログ280が表示される。確認ダイアログ280上には、特定部24′により部分経路として抽出された理由(図4(b)の例では、渋滞が発生しやすいと予測されること)が簡潔に表示されるとともに、部分経路200を最終的に選択することを指示するためのキー300と、部分経路200を最終的に選択しないことを指示するためのキー320とが表示される。
【0058】
図4(b)に示す確認ダイアログ280において、ユーザによる操作部15の操作を介して、キー300(「はい」)が選択された場合、判定部29は、提示部28により提示された部分経路200が選択されたと判定し、選択された部分経路200を示す選択部分経路情報を特定部24′に出力する。一方、ユーザによる操作部15の操作を介して、キー320(「いいえ」)が選択された場合、判定部29は、提示部28により提示された部分経路200が選択されなかったと判定し、選択部分経路情報を特定部24′に出力しない。
【0059】
次に、第2の実施形態におけるナビゲーションシステム120の動作を説明する。図5は、ナビゲーションシステム120の動作例を示すフローチャートである。図5におけるステップS300の処理は、ナビゲーション装置100′の起動後、誘導経路探索部20が自車位置から目的地までの第1の誘導経路を探索し、その結果の第1の誘導経路情報を誘導経路メモリ21に格納することによって開始する。
【0060】
まず、特定部24′は、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データと、誘導経路メモリ21に格納された第1の誘導経路情報と、天気情報取得部19から出力された天気情報とに基づいて、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路の中から、所定の特定条件を満たす部分経路を全て抽出する(ステップS300)。そして、特定部24′は、抽出した全ての部分経路を示す抽出部分経路情報を提示部28に出力する。
【0061】
次に、提示部28は、特定部24′から出力された抽出部分経路情報により示される部分経路をディスプレイ17に表示してユーザに提示する(ステップS320)。次に、判定部29は、ユーザによる操作部15の操作を介して、提示部28により提示された部分経路が選択されたか否かについて判定する(ステップS340)。
【0062】
もし、部分経路が選択されていないと判定部29にて判定した場合(ステップS340にてNO)、ナビゲーションシステム120は図5における処理を終了する。一方、部分経路が選択されたと判定部29にて判定した場合(ステップS340にてYES)、判定部29は、その選択された部分経路を示す選択部分経路情報を特定部24′に出力する。特定部24′は、判定部29から出力された選択部分経路情報により示される部分経路を再探索対象経路として特定し、特定した再探索対象経路を示す再探索対象経路情報を経路探索要求部25および誘導経路設定部27に出力する。
【0063】
次に、経路探索要求部25は、特定部24′から出力された再探索対象経路情報により示される再探索対象経路の開始地点から終了地点までの経路探索をサーバ140に要求する旨を示す経路探索要求情報を、通信部26を通じてサーバ140に送信する(ステップS360)。
【0064】
次に、サーバ140の経路探索部33は、ナビゲーション装置100′の経路探索要求部25から送信された経路探索要求情報を、通信部34を通じて受信する(ステップS380)。次に、経路探索部33は、地図データ記憶部30に記憶されている第2の地図データと、道路交通情報取得部31から出力された道路交通情報と、天気情報取得部32から出力された天気情報とに基づいて、経路探索要求情報に含まれる再探索道路情報により示される再探索対象経路の開始地点から終了地点までの経路探索を行う(ステップS400)。そして、経路探索部33は、探索した第2の経路を示す第2の部分経路情報を、通信部34を通じてナビゲーション装置100′に送信する(ステップS420)。
【0065】
次に、ナビゲーション装置100′の誘導経路設定部27は、サーバ140から送信された第2の部分経路情報を、通信部26を通じて受信する(ステップS440)。そして、誘導経路設定部27は、誘導経路メモリ21に格納されている第1の誘導経路のうち、特定部24′から出力された再探索対象経路情報により示される再探索対象経路を、サーバ140から受信した第2の部分経路情報により示される第2の部分経路で置き換えることによって、第2の誘導経路を設定する(ステップS460)。その処理が完了した後、ナビゲーションシステム120は、図5における処理を終了する。
【0066】
以上詳しく説明したように、第2の実施形態では、特定部24′にて抽出した部分経路をディスプレイ17に表示し、その表示した部分経路がユーザによって選択された場合、当該部分経路を再探索対象経路として特定するようにしている。このように構成した第2の実施形態によれば、ユーザに対して、部分経路を認識させた上で、当該部分経路のサーバ140による探索要否を選択させることができる。したがって、再探索の必要性が低いとユーザが意図する部分経路が不必要にサーバ140で探索されてしまうことをなくすことができる。したがって、サーバ140によって再探索される部分経路が減少するので、第1の実施形態と比べて、ナビゲーション装置100′がサーバ140から受信する情報量はさらに抑制されるため、通信時間および通信コストをより抑えることができる。
【0067】
なお、上記第1および第2の実施形態では、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路の中から、所定の特定条件に合致する部分経路を全て抽出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ナビゲーション装置100(100′)を搭載した車両の現在位置から所定範囲内に存在し、かつ、上記所定の特定条件を満たす道路区間のみを部分経路として抽出するようにしても良い。ここで、車両の現在位置から所定範囲内に存在するとは、例えば、車両の現在位置を含む都道府県の範囲内に存在すること、車両の現在位置を含む地図画面上に存在すること、車両の現在位置から所定距離(例えば、1[km])以内に存在すること等を意味する。これにより、サーバ140で行う再探索対象の部分経路を減らすとともに、ナビゲーション装置100(100′)がサーバ140から受信する情報量を抑制することができ、サーバ140の探索処理の負荷、通信時間および通信コストを抑えることができる。
【0068】
また、上記第1および第2の実施形態において、ナビゲーション装置100(100′)の保有する第1の地図データは、発展途上地域を示す発展途上地域情報を含み、特定部24(24′)は、当該発展途上地域情報に基づいて、発展途上地域に含まれる道路区間を部分経路として抽出するようにしても良い。発展途上地域に含まれる道路区間の付近には、新規に開通した道路が存在することが多く、ユーザにとって、リンクコストが小さいのであれば当該道路を出来るだけ通る経路を探索してほしい要望がある。しかし、ナビゲーション装置100(100′)の保有する第1の地図データは更新頻度が低く、サーバ140の保有する地図データより古く情報量が少ないため、その新規に開通した道路が第1の地図データに含まれていない可能性がある。一方、サーバ140の保有する第2の地図データには含まれている可能性がある。それ故、上記特定条件を満たす道路区間は、よりリンクコストの小さい経路がサーバ140で探索される可能性がある。
【0069】
また、上記第1および第2の実施形態において、ナビゲーション装置100(100′)を搭載した車両の過去の走行履歴を示す走行履歴情報を記憶する走行履歴情報記憶部を更に備え、特定部24(24′)は、走行履歴情報に基づいて、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路上の第1地点から外れて、当該第1の誘導経路上の第2地点に復帰する経路が走行履歴に含まれている場合、第1地点から第2地点までの道路区間を部分経路として抽出するようにしても良い。このようにすれば、ユーザが過去の運転経験から第1の誘導経路上の第1地点から外れて当該第1の誘導経路上の第2地点に復帰した経路、および当初探索された第1地点から第2地点までの経路の他に、よりリンクコストが小さい経路が第2の地図データに基づきサーバ140で探索される可能性がある。
【0070】
また、上記第1および第2の実施形態において、特定部24(24′)は、第1の誘導経路上に存在する有料道路に対応する道路区間を部分経路として抽出するようにしても良い。例えば、通行料金が一時的に無料または割引になっている等の理由により有料道路が大渋滞しているのに対し、一般道路が空いている場合がある。この場合、実際には一般道路の方が、リンクコストが小さく設定されるべきなのに、通行料金が一時的に無料または割引になっている有料道路に関する情報はサーバ140の保有する第2の地図データにしか含まれていないため、その有料道路に関する情報を考慮して渋滞を回避する経路を探索することができない。それ故、上記特定条件を満たす道路区間は、よりリンクコストの小さい経路がサーバ140で探索される可能性がある。
【0071】
また、上記第1および第2の実施形態において、特定部24(24′)は、部分経路を抽出する際に、時間帯や季節を所定の特定条件に入れても良い。例えば、地図データ記憶部14に記憶されている第1の地図データには季節毎、時間帯毎の事故多発地点情報(リンク旅行時間情報、渋滞予測情報、走行評価情報または燃費評価情報)が含ませる。そして、現在の季節(または現在時刻が含まれる時間帯)に対応する事故多発地点情報に基づいて、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路に含まれ、かつ、事故多発地点から所定範囲内に存在する道路区間を部分経路として抽出しても良い。同様に、リンク旅行時間情報、渋滞予測情報、走行評価情報または燃費評価情報に基づいて部分経路を抽出する場合についても時間帯や季節を考慮するようにしても良い。
【0072】
また、上記第1および第2の実施形態において、誘導経路探索部20により探索された第1の誘導経路に含まれる部分経路の中から、6つの特定条件に基づいて部分経路を抽出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、6つより少ない特定条件に基づいて部分経路を抽出するようにしても良い。また、第2の実施形態においては、操作部15の操作を通じてユーザから指示があったときは、当該ユーザが過去に選択した部分経路に対応する特定条件に合致する部分経路だけを抽出するようにしても良い。
【0073】
また、6つの特定条件の中で優先順位を設定し、優先度の高い特定条件に合致するものから順に、所定数に達するまで部分経路を抽出するようにしても良い。この場合、第2の実施形態のようにユーザが部分経路を選択することができるときには、優先度の高い特定条件に合致するものから順に提示する。提示したものが全て選択されなかったとき、または、その特定条件に合致するものがなかったときには、次に優先度の高い特定条件に合致するものを提示する。ここで、優先度はユーザが任意に設定しても良いし、ユーザの選択履歴に基づいて選択回数が多い順に各特定条件の優先度を自動的に設定するようにしても良い。
【0074】
また、上記第1および第2の実施形態において、特定部24(24′)は、抽出した部分経路が複数あり、かつ、その複数の部分経路のうち所定距離(例えば、数100[m])以内の間隔を有する部分経路が存在する場合、その所定距離以内の間隔を有する部分経路について、現在位置から最も近い部分経路の開始地点から最も遠い部分経路の終了地点までを誘導経路上で繋いだ道路区間を部分経路として抽出するようにしても良い。
【0075】
また、上記第1および第2の実施形態において、ナビゲーション装置100(100′)が道路交通情報取得部18を備えることは必ずしも必須ではない。道路交通情報取得部18を備えない場合、ナビゲーション装置100(100′)において第1の誘導経路は道路交通情報を考慮せずに探索される。そのため、よりリンクコストの小さい経路がサーバ140で探索される可能性が高くなる。これにより、サーバ140が保有する第2の地図データや道路交通情報をより十分に利用して、より最適な経路を設定することができる。
【0076】
その他、上記第1および第2の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0077】
14,30 地図データ記憶部
19,32 天気情報取得部
20 誘導経路探索部
24,24′ 特定部
25 経路探索要求部
27 誘導経路設定部
28 提示部
29 判定部
100,100′ ナビゲーション装置
200,220 部分経路
230 第1の誘導経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路探索に必要な第1の地図データを記憶する第1の地図データ記憶部と、
前記第1の地図データに基づいて、出発地から目的地までの第1の誘導経路を探索する誘導経路探索部と、
前記誘導経路探索部により探索された第1の誘導経路の中から、所定の特定条件を満たす部分経路を抽出し、抽出した部分経路を再探索対象経路として特定する特定部と、
前記特定部により特定された再探索対象経路の開始地点から終了地点までの経路探索をサーバに要求する経路探索要求部と、
前記経路探索要求部による要求に応じて前記サーバによって前記第1の地図データとは異なる前記第2の地図データに基づいて探索された第2の部分経路を前記サーバから受信する受信部と、
前記第1の誘導経路に含まれる前記部分経路を前記第2の部分経路で置き換えた第2の誘導経路を最終的な誘導経路として設定する誘導経路設定部とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記特定部により抽出された部分経路を提示する提示部と、
前記提示部により提示された部分経路がユーザによって選択されたか否かについて判定する判定部と、
前記特定部は、前記提示部により提示された部分経路が選択されたと前記判定部にて判定された場合、当該選択された部分経路を前記再探索対象経路として特定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記第1の地図データは、事故が多発する地点の位置を示す事故多発地点情報を含み、
前記特定部は、前記事故多発地点情報に基づいて、前記事故多発地点から所定範囲内に存在する道路区間を前記部分経路として抽出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記第1の地図データは、各々の道路リンクのリンク旅行時間を示すリンク旅行時間情報を含み、
前記特定部は、前記リンク旅行時間情報に基づいて、前記リンク旅行時間が所定時間以上の道路リンクから所定範囲内に存在する道路区間を前記部分経路として抽出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記第1の地図データは、渋滞が発生しやすいと予測される道路リンクを示す渋滞予測情報を含み、
前記特定部は、前記渋滞予測情報により示される道路リンクから所定範囲内に存在する道路区間を前記部分経路として抽出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記第1の地図データは、各々の道路リンクに対応する道路の走行しにくさの度合い示す走行評価情報を含み、
前記特定部は、前記走行評価情報に基づいて、走行しにくいと評価される道路リンクから所定範囲内に存在する道路区間を前記部分経路として抽出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記第1の地図データは、各々の道路リンクに対応する道路を走行する際における燃費の良否の度合いを示す燃費評価情報を含み、
前記特定部は、前記燃費評価情報に基づいて、燃費が悪いと評価される道路リンクから所定範囲内に存在する道路区間を前記部分経路として抽出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
天気を示す天気情報を取得する天気情報取得部を更に備え、
前記特定部は、前記天気情報取得部により取得された天気情報に基づいて、天気が悪いと示されている地域に含まれる道路区間を前記部分経路として抽出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項9】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記第1の地図データは、発展地域を示す発展地域情報を含み、
前記特定部は、前記発展地域情報に基づいて、前記発展地域に含まれる道路区間を前記部分経路として抽出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項10】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置を搭載した車両の過去の走行履歴を示す走行履歴情報を記憶する走行履歴情報記憶部を更に備え、
前記特定部は、前記走行履歴情報に基づいて、前記第1の誘導経路上の第1地点から外れて、当該第1の誘導経路上の第2地点に復帰する経路が前記走行履歴に含まれている場合、前記第1地点から前記第2地点までの道路区間を前記部分経路として抽出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項11】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記特定部は、前記第1の誘導経路上に存在する有料道路に対応する道路区間を前記部分経路として抽出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項12】
請求項3〜11の何れか1項に記載のナビゲーション装置において、
前記特定部は、前記ナビゲーション装置を搭載した車両の現在位置から所定範囲内に存在する道路区間の中から前記部分経路を抽出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項13】
請求項3〜11の何れか1項に記載のナビゲーション装置において、
前記第2の部分経路は、前記サーバによって、前記第2の地図データと当該サーバが取得した道路交通情報とに基づいて探索されたものであることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項14】
経路探索に必要な第1の地図データに基づいて、出発地から目的地までの第1の誘導経路を探索する第1のステップと、
前記第1のステップにより探索された第1の誘導経路の中から、所定の特定条件を満たす部分経路を抽出し、抽出した部分経路を再探索対象経路として特定する第2のステップと、
前記第2のステップにより特定された再探索対象経路の開始地点から終了地点までの経路探索をサーバに要求する第3のステップと、
前記第3のステップによる要求に応じて前記サーバによって前記第1の地図データとは異なる前記第2の地図データに基づいて探索された第2の部分経路を前記サーバから受信する第4のステップと、
前記第1の誘導経路に含まれる前記部分経路を前記第2の部分経路で置き換えた第2の誘導経路を最終的な誘導経路として設定する第5のステップとを有することを特徴とする誘導経路探索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−158393(P2011−158393A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21474(P2010−21474)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】