説明

ハイブリッド車両の駆動装置

【課題】エンジンからの熱によって駆動用モータに不具合を生じさせることのないハイブリッド車両の駆動装置を提供する。
【解決手段】エンジン11と入力クラッチ13との間にはモータジェネレータ12が配置される。モータジェネレータ12は、エンジン11のシリンダブロック30に取り付けられるステータ31と、クランク軸16に固定されるロータ32とを有する。環状に形成されるステータ31の端面33には、所定間隔毎に複数のコイル部36が周方向に配列されている。また、ロータ32を構成する円盤部38の端面39には、周方向に配列されるように所定間隔毎に複数の突極部40が設けられる。このように、永久磁石を持たないスイッチトリラクタンスモータによってモータジェネレータ12を構成することにより、エンジン11からの熱によるモータジェネレータ12の性能低下を回避することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと駆動用モータとを備えるハイブリッド車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンおよび駆動用モータを備えるハイブリッド車両の駆動装置として、エンジンを発電用として駆動し、駆動用モータを走行用として駆動するシリーズ方式の駆動装置が提案されている。また、エンジンを車両走行時の主要な駆動源として駆動し、駆動用モータを発進時や加速時に補助的に駆動するパラレル方式の駆動装置も提案されている。さらに、走行状況に応じてエンジンおよび駆動用モータの一方または双方を駆動するシリーズ・パラレル方式の駆動装置も提案されている。ところで、特にパラレル方式の駆動装置においては、駆動用モータを補助的な動力源として用いることから、エンジンと駆動用モータとを直結することが多い(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、エンジンと駆動用モータとを隣接させた場合には、エンジンからの熱によって駆動用モータに不具合が発生してしまうおそれがある。
【0003】
例えば、駆動用モータのステータは、エンジンとミッションケースとの間に設けられるモータハウジングに焼き嵌めされることが一般的であるが、モータハウジングとステータとの熱膨張係数が異なることから、エンジンからの熱によって駆動用モータが加熱されてしまうと、モータハウジングに嵌められたステータに緩みが生じてしまうおそれがある。そこで、特許文献1に記載されたハイブリッド車両においては、ステータと同じ熱膨張係数のステータ保持リングに対してステータを嵌め込むとともに、ボルト締め等の締結方法によってステータ保持リングをモータハウジングに固定している。これにより、エンジンからの熱を原因とするステータの緩みを防止することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−123826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エンジンからの熱によって駆動用モータに生じる不具合は、ステータの緩みだけに限られるものではない。特許文献1に記載されるように、高効率化や小型軽量化が求められるハイブリッド車両には、駆動用モータとして永久磁石型同期モータを採用することが多い。この永久磁石型同期モータにあっては、ロータに永久磁石が組み込まれていることから、ロータが高温状態まで熱せられてしまうと、永久磁石の磁力が低下して駆動用モータの性能が低下することになる。
【0006】
この永久磁石の減磁現象は不可逆であることから、モータ温度を所定範囲に収めながら駆動用モータを使用するために、駆動用モータが高温状態に達する前にモータ出力を低下させたり、冷却装置を用いて駆動用モータを冷却したりすることが必要であった。しかしながら、モータ出力を制限することはハイブリッド車両の動力性能を低下させる要因となり、また、冷却装置を組み込むことは駆動装置の大型化や高コスト化を招く要因となっていた。
【0007】
また、特許文献1に記載のように、駆動装置に対して駆動用モータを組み付ける際、エンジンとミッションケースとの間にモータハウジングを設けることが多い。しかしながら、駆動用モータを収容するモータハウジングを新たに設置することは、駆動装置の部品点数を増加させて駆動装置の大型化や高コスト化を招く要因となっていた。
【0008】
本発明の目的は、エンジンからの熱によって駆動用モータに不具合を生じさせることのないハイブリッド車両の駆動装置を提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、駆動用モータを備えるハイブリッド車両の駆動装置の小型化および低コスト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、エンジンと駆動用モータとを備えるハイブリッド車両の駆動装置であって、前記駆動用モータは、複数のコイル部が設けられるステータと、複数の突極部が設けられるロータとを備えるスイッチトリラクタンスモータであり、前記ロータは、前記エンジンのクランク軸に取り付けられ、前記クランク軸の回転変動を吸収することを特徴とする。
【0011】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記スイッチトリラクタンスモータは、前記ステータのコイル部と前記ロータの突極部とが軸方向に対向するアキシャルギャップ型のスイッチトリラクタンスモータであることを特徴とする。
【0012】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記ステータは、前記エンジンのハウジングに固定されることを特徴とする。
【0013】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記ステータのコイル部は、前記エンジンと前記ロータの突極部との間に配置されることを特徴とする。
【0014】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記ロータに送風ブレードを設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スイッチトリラクタンスモータを駆動用モータとして構成するようにしたので、駆動用モータから永久磁石を排除することが可能となる。これにより、エンジンからの熱による駆動用モータの性能低下を回避することが可能となる。また、エンジンのクランク軸に対して駆動用モータのロータを取り付けることにより、ロータによってクランク軸の回転変動が吸収されるため、フライホイールやドライブプレートを小型化したり廃止することが可能となり、駆動装置の小型化や低コスト化をすることができる。
【0016】
また、本発明によれば、アキシャルギャップ型の駆動用モータを用いることにより、駆動装置を小型化することができる。さらに、本発明によれば、ステータをエンジンのハウジングに固定することにより、ステータを固定するためのモータハウジングを削減でき、駆動装置の小型化や低コスト化をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態であるハイブリッド車両の駆動装置を示すスケルトン図である。
【図2】(A)は駆動装置の一部を拡大して示す断面図であり、(B)は(A)のα−α線に沿って駆動装置の一部を示す断面図である。
【図3】(A)は本発明の他の実施の形態である駆動装置の一部を拡大して示す断面図であり、(B)は(A)のα−α線に沿って駆動装置の一部を示す断面図である。
【図4】(A)は本発明の他の実施の形態である駆動装置の一部を拡大して示す断面図であり、(B)は(A)のα−α線に沿って駆動装置の一部を示す断面図である。
【図5】(A)は本発明の他の実施の形態である駆動装置の一部を拡大して示す断面図であり、(B)は(A)のα−α線に沿って駆動装置の一部を示す断面図である。
【図6】(A)は本発明の他の実施の形態である駆動装置の一部を拡大して示す断面図であり、(B)は(A)のα−α線に沿って駆動装置の一部を示す断面図である。
【図7】(A)は本発明の他の実施の形態である駆動装置の一部を拡大して示す断面図であり、(B)は(A)のα−α線に沿って駆動装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態であるハイブリッド車両の駆動装置10(以下、駆動装置という)を示すスケルトン図である。図1に示すように、ハイブリッド車両に搭載される駆動装置10には、駆動源としてエンジン11およびモータジェネレータ(駆動用モータ)12が設けられている。また、駆動装置10には、入力クラッチ13、手動変速機14、センタデファレンシャル15等が設けられており、エンジン11やモータジェネレータ12から出力される動力は、入力クラッチ13、手動変速機14、センタデファレンシャル15を介して図示しない前後輪に伝達される。なお、図示する駆動装置10はパラレル方式の駆動装置であり、走行用の主要な動力源としてエンジン11が駆動される一方、発進時や加速時には補助的な動力源としてモータジェネレータ12が駆動されるようになっている。また、車両制動時等においてはモータジェネレータ12を発電駆動させることにより、運動エネルギを電気エネルギに変換して回収することが可能である。
【0019】
図2(A)は駆動装置10の一部を拡大して示す断面図であり、図2(B)は図2(A)のα−α線に沿って駆動装置10の一部を示す断面図である。図2(A)に示すように、エンジン11のクランク軸16には、入力クラッチ13を構成する円盤状のフライホイール17が取り付けられている。フライホイール17の端面にはクラッチカバー18が取り付けられており、クラッチカバー18の内側には環状のプレッシャプレート19およびダイヤフラム型のスプリング20が配置されている。また、フライホイール17とプレッシャプレート19との間には、手動変速機14の入力軸21にスプライン結合されるクラッチディスク22が配置されている。さらに、スプリング20の中央部に突き当てられるようにレリーズベアリング23が設けられており、このレリーズベアリング23は図示しないレリーズフォークによって把持されている。そして、レリーズフォークを操作してレリーズベアリング23をエンジン11側に押し込むことにより、スプリング20を変形させてプレッシャプレート19の押圧状態を解除することができ、入力クラッチ13を解放状態に切り換えることが可能となる。一方、レリーズベアリング23の押し込みを解除することにより、スプリング20によってプレッシャプレート19をクラッチディスク22に押し付けることができ、入力クラッチ13を締結状態に切り換えることが可能となる。
【0020】
図2(A)に示すように、エンジン11と入力クラッチ13との間にはモータジェネレータ12が配置されている。このモータジェネレータ12は、エンジン11のシリンダブロック(ハウジング)30に取り付けられるステータ31と、このステータ31に対向するとともにクランク軸16に固定されるロータ32とを有している。環状に形成されるステータ31の端面33には、所定間隔毎に複数のティース34が設けられている。周方向に配列されるティース34に電磁コイル35を巻き付けることにより、ステータ31には電磁石として機能する複数のコイル部36が形成される。また、図2(A)および(B)に示すように、モータジェネレータ12のロータ32は、フライホイール17と共にクランク軸16の端部に固定されるロータハブ37と、このロータハブ37から径方向外方に延びる円盤部38とを有している。ロータ32に形成される円盤部38の端面39には、周方向に配列されるように所定間隔毎に複数の突極部40が設けられている。このように、ロータ32側に突出するステータ31のコイル部36と、ステータ31側に突出するロータ32の突極部40とは、所定のギャップを隔てて対向するようになっている。
【0021】
このように、ステータ31とロータ32とが共に突極構造を有しているモータジェネレータ12においては、コイル部36に通電を施して磁気吸引力を発生させることにより、コイル部36に対してロータ32の突極部40を吸引させることが可能である。そして、ロータ32の回転角度情報に基づきロータ32の突極部40が接近するステータ31のコイル部36を次々に通電状態に切り換えることにより、磁気吸引力を連続的に発生させてロータ32を回転させることが可能となっている。このように、駆動装置10に組み込まれるモータジェネレータ12は、リラクタンストルクのみを用いてロータ32を回転させるスイッチトリラクタンスモータ(switched reluctance motor)として機能する。なお、インダクタンスが増加するロータ32の回転角度でコイル部36に通電を施すことにより、ロータ32に正転方向のトルクを発生させることができ、モータジェネレータ12を電動機として駆動することができる。一方、インダクタンスが減少するロータ32の回転角度でコイル部36に通電を施すことにより、ロータ32に逆転方向のトルクを発生させることができ、モータジェネレータ12を発電機として駆動することが可能となる。なお、モータジェネレータ12を構成するロータ32やステータ31は、所定形状に打ち抜かれた薄板の電磁鋼鈑を積層することで形成されている。
【0022】
このように、駆動装置10に設けられるモータジェネレータ12をスイッチトリラクタンスモータとして構成することにより、モータジェネレータ12から永久磁石を排除することが可能となる。これにより、モータジェネレータ12の耐熱温度を引き上げることができるため、モータジェネレータ12をエンジン11に隣接させた場合であっても、エンジン11からの熱によってモータジェネレータ12の性能が低下することはない。したがって、モータ温度を所定範囲に収めるために、モータジェネレータ12の出力を制限する必要がないため、ハイブリッド車両の動力性能を向上させることが可能となる。さらに、モータ温度を所定範囲に収めるために、モータジェネレータ12を冷却する必要がないため、駆動装置10の小型化や低コスト化を達成することが可能となる。
【0023】
また、モータジェネレータ12の耐熱温度が引き上げられるため、ロータ32をクランク軸16に対して取り付けることが可能となる。このように、クランク軸16に対してモータジェネレータ12を構成するロータ32を取り付けることにより、ロータ32によってクランク軸16の回転変動を吸収させることができる。すなわち、モータジェネレータ12のロータ32にフライホイール機能を持たせることができるため、入力クラッチ13を構成するフライホイール17の軽量化および小型化を図ることが可能となる。
【0024】
さらに、モータジェネレータ12は、ステータ31のコイル部36とロータ32の突極部40とを軸方向に対向させたアキシャルギャップ型のスイッチトリラクタンスモータとなっている。このように、アキシャルギャップ型のモータジェネレータ12を採用することにより、モータジェネレータ12の薄型化を図ることができ、駆動装置10の小型化を達成することができる。また、コイル部36や突極部40の対向面積を拡大することが容易となるため、磁気吸引力を高めてモータジェネレータ12の出力トルクを増大させることができ、ハイブリッド車両の動力性能を向上させることが可能となる。
【0025】
さらに、モータジェネレータ12を構成するステータ31を、シリンダブロック30に対して取り付けるようにしたので、ステータ31を取り付けるためのモータハウジングを新たに設ける必要がなく、駆動装置10の小型化や低コスト化を達成できる。特に、アキシャルギャップ型のモータジェネレータ12を採用した上で、モータジェネレータ12のステータ31をシリンダブロック30に対して取り付け、ステータ31のコイル部36をエンジン11とロータ32の突極部40との間に配置する。更にステータ31の径方向内方にロータハブ37を配置し、ロータハブ37とステータ31とを軸方向にオーバーラップさせることによって、駆動装置10内のスペースを有効に利用して駆動装置10の小型化を図ることが可能となる。
【0026】
これまで説明したように、図2に示す駆動装置10にあっては、ロータ32とフライホイール17とをそれぞれ別個に設けるようにしているが、これに限られることはなく、ロータとフライホイールとを一体に設けるようにしても良い。ここで、図3(A)は本発明の他の実施の形態である駆動装置50の一部を拡大して示す断面図であり、図3(B)は図3(A)のα−α線に沿って駆動装置50の一部を示す断面図である。また、図4(A)は本発明の他の実施の形態である駆動装置60の一部を拡大して示す断面図であり、図4(B)は図4(A)のα−α線に沿って駆動装置60の一部を示す断面図である。なお、図3および図4において、図2に示す部材と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0027】
図3(A)に示すように、駆動装置50には駆動用モータとしてアキシャルギャップ型のモータジェネレータ51が組み込まれており、このモータジェネレータ51はスイッチトリラクタンスモータとして構成されている。ステンレスや鉄等の磁性体からなるモータジェネレータ51のロータ52は、クランク軸16の端部に固定されるロータハブ53と、このロータハブ53から径方向外方に延びる肉厚の慣性マス54とを有している。図3(A)および(B)に示すように、ステータ31のコイル部36に対向するロータハブ53の端面55には、周方向に配列されるように所定間隔毎に複数の突極部56が形成されている。なお、ロータ52の慣性マス54をステータ31のコイル部36に対向させ、この慣性マス54に対して所定間隔毎に複数の突極部を形成しても良い。
【0028】
また、ロータ52の慣性マス54には入力クラッチ13を構成するクラッチカバー18が取り付けられており、クラッチカバー18の内側にはプレッシャプレート19およびスプリング20が配置されている。さらに、ロータ52の慣性マス54とプレッシャプレート19との間には、入力軸21にスプライン結合されるクラッチディスク22が配置されている。この入力クラッチ13を締結状態に切り換える際には、スプリング20によってプレッシャプレート19がロータ52側に押し付けられ、ロータ52とプレッシャプレート19との間にクラッチディスク22が挟み込まれることになる。このように、図示する駆動装置50にあっては、モータジェネレータ51を構成するロータ52が、クランク軸16の回転変動を吸収するフライホイールとして機能するようになっている。これにより、別部材として設けられていたフライホイールを削減することができ、駆動装置50の更なる小型化や低コスト化を達成することが可能となっている。
【0029】
続いて、図4(A)に示すように、駆動装置60には駆動用モータとしてアキシャルギャップ型のモータジェネレータ61が組み込まれており、このモータジェネレータ61はスイッチトリラクタンスモータとして構成されている。モータジェネレータ61を構成するロータ62は、クランク軸16の端部に固定されるロータハブ63と、このロータハブ63から径方向外方に延びる肉厚の慣性マス64とを有している。図4(A)および(B)に示すように、ステータ31のコイル部36に対向する慣性マス64の端面65には、周方向に配列されるように所定間隔毎に複数の突極部材66が取り付けられている。この突極部材66はステンレスや鉄等の磁性体によって形成されており、ロータ62の突極部として機能するようになっている。なお、ロータ62のロータハブ63をステータ31のコイル部36に対向させ、このロータハブ63に対して所定間隔毎に複数の突極部材66を取り付けても良い。
【0030】
また、ロータ62の慣性マス64には入力クラッチ13を構成するクラッチカバー18が取り付けられており、クラッチカバー18の内側にはプレッシャプレート19およびスプリング20が配置されている。さらに、ロータ62の慣性マス64とプレッシャプレート19との間には、入力軸21にスプライン結合されるクラッチディスク22が配置されている。この入力クラッチ13を締結状態に切り換える際には、スプリング20によってプレッシャプレート19がロータ62側に押し付けられ、ロータ62とプレッシャプレート19との間にクラッチディスク22が挟み込まれることになる。このように、図示する駆動装置60にあっては、モータジェネレータ61を構成するロータ62が、クランク軸16の回転変動を吸収するフライホイールとして機能するようになっている。これにより、別部材として設けられていたフライホイールを削減することができ、駆動装置60の更なる小型化や低コスト化を達成することが可能となっている。
【0031】
また、図3および図4に示す駆動装置50,60にあっては、モータジェネレータ51,61のロータ52,62をフライホイールとして機能させているが、これに限られることはなく、モータジェネレータのロータをトルクコンバータのドライブプレートとして機能させても良い。ここで、図5(A)は本発明の他の実施の形態である駆動装置70の一部を拡大して示す断面図であり、図5(B)は図5(A)のα−α線に沿って駆動装置70の一部を示す断面図である。また、図6(A)は本発明の他の実施の形態である駆動装置80の一部を拡大して示す断面図であり、図6(B)は図6(A)のα−α線に沿って駆動装置80の一部を示す断面図である。なお、図5および図6において、図2に示す部材と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。また、図6において、図5に示す部材と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0032】
まず、図5(A)に示すように、駆動装置70には駆動用モータとしてアキシャルギャップ型のモータジェネレータ71が組み込まれており、このモータジェネレータ71はスイッチトリラクタンスモータとして構成されている。モータジェネレータ71を構成するロータ72は、ステンレスや鉄等の磁性体からなる板材にプレス加工を施すことで形成されている。図5(A)および(B)に示すように、ステータ31のコイル部36に対向するロータ72の端面73には、周方向に配列されるように所定間隔毎に複数の突極部74がプレス加工されている。
【0033】
このようなロータ72には、図示しない自動変速機に動力を伝達するトルクコンバータ75が取り付けられている。ロータ32の外縁部にはフロントカバー76を介してポンプインペラ77が取り付けられ、このポンプインペラ77に対向するようにタービンランナ78が配置されている。そして、タービンランナ78に固定されるタービン軸79には、図示しない自動変速機の入力軸が連結されるようになっている。このように、図示する駆動装置70にあっては、モータジェネレータ71を構成するロータ72が、クランク軸16とトルクコンバータ75とを連結するとともにクランク軸16の回転変動を吸収するドライブプレートとして機能するようになっている。これにより、別部材として設けられていたドライブプレートを削減することができ、駆動装置70の更なる小型化や低コスト化を達成することが可能となっている。
【0034】
続いて、図6(A)に示すように、駆動装置80には駆動用モータとしてアキシャルギャップ型のモータジェネレータ81が組み込まれており、このモータジェネレータ81はスイッチトリラクタンスモータとして構成されている。図6(A)および(B)に示すように、モータジェネレータ81を構成する円盤状のロータ82の端面83には、周方向に配列されるように所定間隔毎に複数の突極部材84が取り付けられている。この突極部材84はステンレスや鉄等の磁性体によって形成されており、ロータ82の突極部として機能するようになっている。
【0035】
このようなロータ82には、図示しない自動変速機に動力を伝達するトルクコンバータ75が取り付けられている。ロータ82の外縁部にはフロントカバー76を介してポンプインペラ77が取り付けられ、このポンプインペラ77に対向するようにタービンランナ78が配置されている。そして、タービンランナ78に固定されるタービン軸79には、図示しない自動変速機の入力軸が連結されるようになっている。このように、図示する駆動装置80にあっては、モータジェネレータ81を構成するロータ82が、クランク軸16とトルクコンバータ75とを連結するとともにクランク軸16の回転変動を吸収するドライブプレートとして機能するようになっている。これにより、別部材として設けられていたドライブプレートを削減することができ、駆動装置80の更なる小型化や低コスト化を達成することが可能となっている。
【0036】
また、図2〜図6に示した駆動装置10,50,60,70,80にあっては、耐熱温度の高いスイッチトリラクタンスモータをモータジェネレータ12,51,61,71,81として用いることから、モータジェネレータ12,51,61,71,81を積極的に冷却する構造を採用していないが、モータジェネレータ12,51,61,71,81を積極的に冷却する構造を採用しても良い。ここで、図7(A)は本発明の他の実施の形態である駆動装置90の一部を拡大して示す断面図であり、図7(B)は図7(A)のα−α線に沿って駆動装置90の一部を示す断面図である。なお、図7において、図2に示す部材と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図7(A)に示すように、駆動装置90には駆動用モータとしてアキシャルギャップ型のモータジェネレータ91が組み込まれており、このモータジェネレータ91はスイッチトリラクタンスモータとして構成されている。ステンレスや鉄等の磁性体からなるモータジェネレータ91のロータ92は、クランク軸16の端部に固定されるロータハブ93と、このロータハブ93から径方向外方に延びる円盤部94とを有している。ロータ92に形成される円盤部94の端面95には、周方向に配列されるように所定間隔毎に複数の突極部96が設けられている。さらに、突極部96の径方向外方に位置するように、ロータ92の円盤部94の端面95には、周方向に配列されるように所定間隔毎に複数の送風ブレード(冷却用フィン)97が設けられている。
【0038】
このように、送風ブレード97を備えたロータ92を回転させることにより、ロータ92を冷却ファンとして機能させることができ、ロータ92からステータ31のコイル部36に向けて冷却風を送ることが可能となる。すなわち、モータジェネレータ12に対して強制空冷機能を持たせることができるため、モータジェネレータ12の出力を増大させてハイブリッド車両の動力性能を向上させることが可能となる。なお、図3〜図6に示したモータジェネレータ12,51,61,71,81のロータ32,52,62,72,82に対して送風ブレードを設けても良いことはいうまでもない。
【0039】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述の実施の形態では、駆動装置10,50,60,70,80,90の小型化を図る観点からアキシャルギャップ型のモータジェネレータ12,51,61,71,81,91を採用しているが、これに限らず、ラジアルギャップ型のモータジェネレータを採用することもできる。
【符号の説明】
【0040】
10、50、60、70、80、90 駆動装置
11 エンジン
12、51、61、71、81、91 モータジェネレータ(駆動用モータ)
16 クランク軸
30 シリンダブロック(ハウジング)
31 ステータ
32、52、62、72、82、92 ロータ
36 コイル部
40、56、74、96 突極部
50 駆動装置
66、84 突極部材(突極部)
97 送風ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと駆動用モータとを備えるハイブリッド車両の駆動装置であって、
前記駆動用モータは、複数のコイル部が設けられるステータと、複数の突極部が設けられるロータとを備えるスイッチトリラクタンスモータであり、
前記ロータは、前記エンジンのクランク軸に取り付けられ、前記クランク軸の回転変動を吸収することを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
前記スイッチトリラクタンスモータは、前記ステータのコイル部と前記ロータの突極部とが軸方向に対向するアキシャルギャップ型のスイッチトリラクタンスモータであることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
前記ステータは、前記エンジンのハウジングに固定されることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
前記ステータのコイル部は、前記エンジンと前記ロータの突極部との間に配置されることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
前記ロータに送風ブレードを設けることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−167956(P2010−167956A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13442(P2009−13442)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】