説明

ハイブリッド車両

【課題】変速機に過大な負荷が作用する場合でも不具合が発生することを防止する。
【解決手段】ハイブリッド車両10の変速機12は、クラッチハウジング21を共用する第1及び第2クラッチCL1,CL2を備え、第1メイン軸(M)24の各軸端には、第1クラッチCL1のクラッチ本体22とモータジェネレータMGの回転軸とが固定され、第1メイン軸(M)24を回転可能に内包する第2メイン軸25aに第2クラッチCL2のクラッチ本体23が固定され、クラッチハウジング21に内燃機関(エンジン)EのクランクシャフトCSが固定されている。マネージメントECU18dは、回転角センサ19bから出力されるモータジェネレータMGの回転角の検出結果に基づくモータジェネレータMGの角速度変化量が所定変化量よりも大きい場合に、モータジェネレータMGの回転軸と変速機12の出力軸13との間の動力伝達を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば2つの入力軸毎にクラッチを介して内燃機関のクランク軸に接続され、2つの入力軸の一方に電動機が接続されたダブルクラッチ伝動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−89594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係るデュアルクラッチ伝動装置において、例えば車両における急制動などによって出力軸の回転状態が急変すると、入力軸に接続された電動機の回転位相にずれが生じたり、各種の機械的な接続部位に破損が生じる虞がある。このような問題に対して、例えば非常時に作用する過大な負荷を吸収可能にダブルクラッチ伝動装置の機械的強度を増大させると、大きさや重量が過大となって、車両などに対する搭載性が損なわれてしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、変速機に過大な負荷が作用する場合でも不具合が発生することを防止することが可能なハイブリッド車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係るハイブリッド車両は、車両駆動源の内燃機関(例えば、実施の形態での内燃機関(エンジン)E(1))および電動機(例えば、実施の形態でのモータジェネレータMG(2))と、少なくとも複数の入力軸(例えば、実施の形態での第1メイン軸(M)24、第2メイン軸25a)および複数に区分された複数の変速段(例えば、実施の形態での奇数段の変速段、遇数段の変速段)を有し、前記複数の区分の何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段(例えば、実施の形態での奇数段の変速段)に前記電動機の回転軸が直結されている変速機(例えば、実施の形態での変速機12)と、前記複数の入力軸と前記内燃機関のクランク軸(例えば、実施の形態でのクランクシャフトCS)とを断接する複数の断接手段(例えば、実施の形態での第1クラッチCL1、第2クラッチCL2)と、前記電動機の回転角を検出する回転角センサ(例えば、実施の形態での回転角センサ19b)とを備えるハイブリッド車両であって、前記回転角センサから出力される前記回転角の検出結果に基づく前記電動機の角速度変化量が所定変化量よりも大きい場合に、前記電動機の前記回転軸と前記変速機の出力軸(例えば、実施の形態での出力軸13)との間の動力伝達を遮断する制御手段(例えば、実施の形態でのマネージメントECU18d)を備える。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係るハイブリッド車両は、各前記複数の変速段毎に対して駆動側と被駆動側とを断接するクラッチ(例えば、実施の形態でのシンクロクラッチS1〜S4)を備え、前記制御手段は、車両走行中に前記変速機の前記出力軸を固定して回転を禁止するパーキングの実行時に前記電動機の前記角速度変化量が前記所定変化量よりも大きい場合に、前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段に対応する前記クラッチを断状態にすることによって、前記電動機の前記回転軸と前記変速機の前記出力軸との間の動力伝達を遮断する。
【0008】
さらに、本発明の第3態様に係るハイブリッド車両は、各前記複数の変速段毎に対して駆動側と被駆動側とを断接するクラッチ(例えば、実施の形態でのシンクロクラッチS1〜S4)を備え、前記制御手段は、車両走行中に運転者の制動操作に応じた要求制動力による制動時に前記電動機の前記角速度変化量が前記所定変化量よりも大きい場合に、前記要求制動力が所定の最大制動力以下であれば、前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段に対応する前記クラッチを断状態にすることによって、前記電動機の前記回転軸と前記変速機の前記出力軸との間の動力伝達を遮断する。
【0009】
さらに、本発明の第4態様に係るハイブリッド車両は、各前記複数の変速段毎に対して駆動側と被駆動側とを断接するクラッチ(例えば、実施の形態でのシンクロクラッチS1〜S4)を備え、前記制御手段は、前記何れか1つの前記区分以外の前記区分に含まれる前記変速段での走行から前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段での走行へと移行する間の所定の変速状態での車両走行中に運転者の制動操作に応じた要求制動力の制動時に前記電動機の前記角速度変化量が前記所定変化量よりも大きい場合に、前記要求制動力が所定の最大制動力以下であれば、前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段に対応する前記クラッチを断状態にすることによって、前記電動機の前記回転軸と前記変速機の前記出力軸との間の動力伝達を遮断する。
【0010】
さらに、本発明の第5態様に係るハイブリッド車両は、各前記複数の変速段毎に対して駆動側と被駆動側とを断接するクラッチ(例えば、実施の形態でのシンクロクラッチS1〜S4)を備え、前記制御手段は、前記電動機の駆動力のみで走行する車両走行中に運転者の制動操作に応じた要求制動力の制動時に前記電動機の前記角速度変化量が前記所定変化量よりも大きい場合に、前記要求制動力が所定の最大制動力以下であれば、前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段に対応する前記クラッチを断状態にすることによって、前記電動機の前記回転軸と前記変速機の前記出力軸との間の動力伝達を遮断する。
【0011】
さらに、本発明の第6態様に係るハイブリッド車両は、前記電動機の前記回転軸と、前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段の軸(例えば、実施の形態での第1メイン軸(M)24)とは、一方に設けられたスプライン軸(例えば、実施の形態でのスプライン軸24a)と他方に設けられたスプライン軸受(例えば、実施の形態でのスプライン軸受24b)とのスプライン嵌合により接続されている。
【0012】
さらに、本発明の第7態様に係るハイブリッド車両では、前記制御手段は、前記動力伝達の遮断に先立って、前記電動機の駆動トルクを低減または前記電動機の動作を力行から回生に切り替えて回生トルクを発生させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1態様のハイブリッド車両によれば、電動機の角速度変化量が所定変化量よりも大きい場合に、電動機の回転軸と変速機の出力軸との間の動力伝達を遮断することができる。これにより、例えば電動機の回転位相にずれが生じたり、例えば電動機の回転軸と変速段との機械的な接続部位に破損が生じるなどの不具合の発生を防止することができる。
【0014】
本発明の第2態様のハイブリッド車両によれば、パーキングの実行時に過大な負荷が作用して電動機の角速度変化量が所定変化量よりも大きくなる場合であっても、電動機の回転軸が直結されている変速段のクラッチを断状態として、電動機の回転軸と変速機の出力軸との間の動力伝達を遮断することができる。これにより、例えば電動機の回転位相にずれが生じたり、例えば電動機の回転軸と変速段との機械的な接続部位に破損が生じるなどの不具合の発生を防止することができる。
【0015】
本発明の第3態様から第5態様の何れか1つのハイブリッド車両によれば、運転者の制動操作に応じた過大な負荷が作用して電動機の角速度変化量が所定変化量よりも大きくなる場合であっても、電動機の回転軸が直結されている変速段のクラッチを断状態として、電動機の回転軸と変速機の出力軸との間の動力伝達を遮断することができる。これにより、例えば電動機の回転位相にずれが生じたり、例えば電動機の回転軸と変速段との機械的な接続部位に破損が生じるなどの不具合の発生を防止することができる。
しかも、この動力伝達の遮断は、要求制動力が所定の最大制動力以下である場合に実行されることから、クラッチを断状態とすることに伴う抵抗の減少が生じても、例えば制動装置などに対して設定されている所定の最大制動力以下の要求制動力を確保することができ、車両の走行挙動に運転者の制動意思を的確に反映させることができる。
【0016】
本発明の第6態様のハイブリッド車両によれば、電動機の回転軸が直結されている変速段のスプライン嵌合を保護するようにして電動機の角速度変化量に対する閾値である所定変化量を設定することにより、電動機の回転軸と変速段の軸との接続部位に破損が生じることを防止することができる。
【0017】
本発明の第7態様のハイブリッド車両によれば、例えば電動機の回転位相にずれが生じたり、例えば電動機の回転軸と変速段との機械的な接続部位に破損が生じるなどの不具合の発生を適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るマネージメントECUの構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係るこのハイブリッド車両の動作、特に、変速機での動力伝達の遮断の処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の減速時のブレーキ装置のブレーキ液圧の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態によるハイブリッド車両10は、例えば図1に示すように、車両駆動源としての内燃機関(エンジン)E(1)と、一対のクラッチである第1クラッチCL1および第2クラッチCL2を具備するデュアルクラッチ式の変速機12と、出力軸(D)13と、ディファレンシャルギヤ14と、出力軸13を介して回転駆動する駆動輪(W)15と、変速機12に連係されて車両駆動源および発電機として機能するモータジェネレータMG(2)と、このモータジェネレータMGに接続されるパワードライブユニット(PDU)16と、モータジェネレータMGと電力を授受するバッテリ17と、CPU(Central Processing Unit)などの電子回路により構成されるモータECU(MOTECU)18aおよびバッテリECU(BATTECU)18bおよびトランスミッションECU(T/MECU)18cおよびマネージメントECU(MGECU)18dとを備えて構成されている。
【0020】
モータジェネレータMGは、例えば3相(U相、V相、W相)のDCブラシレスモータなどであって、モータジェネレータMGの駆動力は変速機12およびディファレンシャルギヤ14を介して左右の駆動輪W,Wに配分されて伝達される。また、ハイブリッド車両10の減速時に駆動輪W側からモータジェネレータMG側に駆動力が伝達されると、モータジェネレータMGは発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0021】
モータジェネレータMGはパワードライブユニット16に接続され、さらに、パワードライブユニット16は、モータジェネレータMGと電力(例えば、モータジェネレータMGの駆動時に供給される供給電力や、モータジェネレータMGの回生時に出力される回生電力)の授受を行うバッテリ17に接続されている。
パワードライブユニット16は、例えばトランジスタのスイッチング素子を複数用いてブリッジ接続してなるブリッジ回路を具備するパルス幅変調(PWM)によるPWMイン
バータを備えて構成されている。
【0022】
パワードライブユニット16は、モータECU18aから出力される制御指令を受けてモータジェネレータMGの駆動および回生を制御する。例えばモータジェネレータMGの駆動時にはバッテリ17から出力される直流電力を3相交流電力に変換してモータジェネレータMGへ供給する。また、例えばモータジェネレータMGの回生時にはモータジェネレータMGから出力される3相交流電力を直流電力に変換してバッテリ17に充電する。
【0023】
モータECU(ECU:Electronic Control Unit)18aは、例えばdq座標上での電流のフィードバック制御(ベクトル制御)などによりモータジェネレータMGの動作を制御する。このため、モータECU18には、例えばパワードライブユニット16からモータジェネレータMGに通電される電流を検出する電流センサ19aから出力される検出結果の信号と、例えばモータジェネレータMGのロータMRの回転角を検出するレゾルバなどの回転角センサ19bから出力される検出結果の信号となどが入力されている。
【0024】
そして、モータECU18は、パワードライブユニット16の電力変換動作を制御する信号として、パワードライブユニット16のPWMインバータのブリッジ回路を構成する各トランジスタのゲートに入力されるパルス(つまり、パルス幅変調により各トランジスタをオン/オフ駆動させるためのパルス)を出力する。モータECU18は、このパルスのデューティ、つまりオン/オフの比率のマップ(データ)を予め記憶している。
【0025】
バッテリECU(ECU:Electronic Control Unit)18bは、バッテリ17の状態を監視しており、電圧と電流と温度との各検出信号に基づき、バッテリ17の残容量SOC(SOC:State of charge)などの各種の状態量を算出する。
トランスミッションECU(ECU:Electronic Control Unit)18cは、変速機12の変速動作、例えば第1および第2クラッチCL1,CL2の断接動作と、例えば各シンクロクラッチS1〜S4の断接動作となどを制御する。
また、後述するマネージメントECU(ECU:Electronic Control Unit)18dは、各ECU18a〜18cを統合的に制御する。
【0026】
変速機12は、第1および第2クラッチCL1,CL2がクラッチハウジング21を共用するデュアルクラッチを備え、クラッチハウジング21内には、第1クラッチCL1のクラッチ本体22および第2クラッチCL2のクラッチ本体23が収容されている。
第1クラッチCL1は通電によりクラッチ本体22をクラッチハウジング21に接続する電気式クラッチである。また、第2クラッチCL2は通電によりクラッチ本体23をクラッチハウジング21に接続する電気式クラッチである。
そして、クラッチハウジング21は内燃機関(エンジン)EのクランクシャフトCSに同軸に一体固定されている。
【0027】
変速機12の第1メイン軸(M)24の各軸端には、第1クラッチCL1のクラッチ本体22とモータジェネレータMGのロータMRの回転軸とが各々一体に固定され、第1クラッチCL1が締結されると内燃機関(エンジン)EとモータジェネレータMGのロータMRとが直結状態となる。なお、モータジェネレータMGの回転軸と、第1メイン軸(M)24とは、例えば、一方に設けられたスプライン軸24aと他方に設けられたスプライン軸受24bとのスプライン嵌合により接続されている。
【0028】
第2クラッチCL2のクラッチ本体23は、クラッチハウジング11内において第1クラッチCL1のクラッチ本体22よりも内燃機関(エンジン)Eの反対側(つまり、モータジェネレータMG側)に配置され、第1メイン軸(M)24を回転可能に内包すると共に第1メイン軸(M)24に対して回転可能な第2メイン軸25aに一体固定されている。
【0029】
モータジェネレータMGの内部には、第1メイン軸(M)24を中心軸として一体固定されたサンギヤ26と、プラネタリギヤ27と、リングギヤ28とを備える遊星歯車機構PGMが設けられている。
遊星歯車機構PGMのプラネタリギヤ27の中心軸29は、キャリア30に回転可能に支持されている。キャリア30は変速部25bに固定され、この変速部25bは、第1メイン軸(M)24をサンギヤ26を介して回転可能に内包すると共に第1メイン軸(M)24に対して回転可能とされている。
なお、変速部25bと第2メイン軸25aとは分離されて互いに独立している。
【0030】
そして、遊星歯車機構PGMのリングギヤ28と、回転不能に固定された固定ギヤFとの間には、リングギヤ28を固定ギヤFに接続して、リングギヤ28を固定可能な噛み合い式のシンクロクラッチS1が設けられている。
これにより、この変速機12では、複数の変速段(例えば、1速〜7速の各変速段など)のうち、奇数段である1速の変速段にモータジェネレータMGの回転軸が直結されている。
なお、各シンクロクラッチS1〜S4は、駆動側のギヤと被駆動側のギヤとの回転数を同期させて断接する同期クラッチである。
【0031】
第1メイン軸(M)24には、同軸かつ一体に固定されたリバースドライブギヤ41と、第1メイン軸(M)24に対して同軸に配置されて回転可能なアイドルギヤである5速ギヤ5Gとが備えられている。
また、変速部25bには、3速ギヤ3Gが同軸かつ一体に固定されている。
そして、第1メイン軸(M)24と、3速ギヤ3Gおよび5速ギヤ5Gとの間には、3速ギヤ3Gまたは5速ギヤ5Gを選択して第1メイン軸(M)24に接続して、第1メイン軸(M)24から3速ギヤ3Gまたは5速ギヤ5Gに駆動力を伝達可能な噛み合い式のシンクロクラッチS2が設けられている。
これにより、この変速機12では、複数の変速段(例えば、1速〜7速の各変速段など)のうち、奇数段である3速および5速の変速段にモータジェネレータMGの回転軸が直結されている。
【0032】
また、第2メイン軸25aには、同軸かつ一体に固定された第1ドライブギヤ42が備えられている。
【0033】
そして、第1メイン軸(M)24および第2メイン軸25aに平行に、リバース軸(R)31と、カウンタ軸(C)32と、サブ・メイン軸(S)33と、アイドル軸(I)34と、第1および第2補機駆動軸(A1,A2)35,36とが設けられている。
【0034】
リバース軸(R)31には、リバース軸(R)31に対して同軸に配置されて回転可能なアイドルギヤであってリバースドライブギヤ41に噛合しているリバースギヤRGと、リバース軸(R)31に同軸かつ一体に固定されてアイドル軸ギヤ49に噛合しているアイドル軸ドライブギヤ43とが備えられている。
そして、リバース軸(R)31と、リバースギヤRGとの間には、リバースギヤRGをリバース軸(R)31に接続して、相互に駆動力を伝達可能な噛み合い式のシンクロクラッチS3が設けられている。
【0035】
カウンタ軸(C)32には、カウンタ軸(C)32に同軸かつ一体に固定されて3速ギヤ3Gおよび2速ギヤ2Gに噛合している第1カウンタギヤ44と、カウンタ軸(C)32に同軸かつ一体に固定されて5速ギヤ5Gおよび4速ギヤ4Gに噛合している第2カウンタギヤ45と、カウンタ軸(C)32に同軸かつ一体に固定されると共に、回転不能に固定されたギヤ(図示略)に噛合可能なパーキングギヤ46と、カウンタ軸(C)32に同軸かつ一体に固定されて出力軸ギヤ51に噛合している第3カウンタギヤ47とが備えられている。
なお、出力軸13には、同軸かつ一体に固定された出力軸ギヤ51と、ディファレンシャルギヤ14とが備えられている。
【0036】
サブ・メイン軸(S)33には、サブ・メイン軸(S)33に対して同軸に配置されて回転可能なアイドルギヤであって第1カウンタギヤ44に噛合している2速ギヤ2Gと、サブ・メイン軸(S)33に対して同軸に配置されて回転可能なアイドルギヤであって第2カウンタギヤ45に噛合している4速ギヤ4Gと、サブ・メイン軸(S)33に同軸かつ一体に固定されたアイドル軸ドライブギヤ48とが備えられている。
そして、サブ・メイン軸(S)33と、2速ギヤ2Gおよび4速ギヤ4Gとの間には、2速ギヤ2Gまたは4速ギヤ4Gを選択してサブ・メイン軸(S)33に接続して、サブ・メイン軸(S)33から2速ギヤ2Gまたは4速ギヤ4Gに駆動力を伝達可能な噛み合い式のシンクロクラッチS4が設けられている。
【0037】
アイドル軸(I)34には、同軸かつ一体に固定されたアイドル軸ギヤ49が備えられており、このアイドル軸ギヤ49は、第2メイン軸25aの第1ドライブギヤ42と、リバース軸(R)31のアイドル軸ドライブギヤ43と、サブ・メイン軸(S)33のアイドル軸ドライブギヤ48とに噛合している
これにより、第2メイン軸25aに伝達される内燃機関(エンジン)Eの駆動力は、順次、第1ドライブギヤ42と、アイドル軸ギヤ49と、アイドル軸ドライブギヤ48とを介して、サブ・メイン軸(S)33に伝達されると共に、順次、第1ドライブギヤ42と、アイドル軸ギヤ49と、アイドル軸ドライブギヤ43とを介して、リバース軸(R)31に伝達される。
【0038】
第1補機駆動軸(A1)35には、第1補機駆動軸(A1)35に同軸かつ一体に固定されてリバースギヤRGに噛合している第1ギヤ52が備えられている。
第2補機駆動軸(A2)36には、空調装置53と、例えば変速機12やモータジェネレータMGなどに潤滑油を供給するオイルポンプ54とが、各クラッチ(図示略)を介して接続されている。
そして、第1補機駆動軸(A1)35と第2補機駆動軸(A2)36とは、各軸35,36に同軸かつ一体に固定された各ギヤ(図示略)間に掛け渡されたベルト55によって駆動力を伝達可能に接続されている。
【0039】
以下に、この変速機12の動作について説明する。
【0040】
先ず、発進時などにおける1速走行状態では、シンクロクラッチS1によって遊星歯車機構PGMのリングギヤ28が固定され、シンクロクラッチS2によって3速ギヤ3Gが第1メイン軸(M)24に接続され、他のシンクロクラッチS3,S4は何れのギヤとも噛合しない断状態となる。そして、例えば発進時においては、先ず、第1および第2クラッチCL1,CL2が断状態でモータジェネレータMGの駆動力が第1メイン軸(M)24に伝達される状態から、次に、第1クラッチCL1のみが締結かつ内燃機関(エンジン)Eが点火されてモータジェネレータMGおよび内燃機関(エンジン)Eの駆動力が第1メイン軸(M)24に伝達される状態へと移行する。
これにより、モータジェネレータMGの駆動力あるいはモータジェネレータMGおよび内燃機関(エンジン)Eの駆動力あるいは内燃機関(エンジン)Eの駆動力が、順次、第1メイン軸(M)24と、サンギヤ26と、プラネタリギヤ27と、3速ギヤ3Gと、第1カウンタギヤ44と、第3カウンタギヤ47と、出力軸ギヤ51とに伝達される。
【0041】
また、3速走行状態または5速走行状態では、シンクロクラッチS1の接続は解除されて、少なくとも第2クラッチCL2が断状態となり、シンクロクラッチS2によって3速ギヤ3Gまたは5速ギヤ5Gが第1メイン軸(M)24に接続され、他のシンクロクラッチS1,S3,S4は何れのギヤとも噛合しない断状態となる。
これにより、モータジェネレータMGの駆動力あるいはモータジェネレータMGおよび内燃機関(エンジン)Eの駆動力が、順次、第1メイン軸(M)24と、3速ギヤ3Gまたは5速ギヤ5Gと、第1カウンタギヤ44または第2カウンタギヤ45と、第3カウンタギヤ47と、出力軸ギヤ51とに伝達される。
【0042】
また、2速走行状態または4速走行状態では、第1クラッチCL1が断状態となり、シンクロクラッチS4によって2速ギヤ2Gまたは4速ギヤ4Gがサブ・メイン軸(S)33に接続され、他のシンクロクラッチS1〜S3は何れのギヤとも噛合しない断状態となる。
これにより、内燃機関(エンジン)Eの駆動力が、順次、第2メイン軸25aと、第1ドライブギヤ42と、アイドル軸ギヤ49と、アイドル軸ドライブギヤ48と、2速ギヤ2Gまたは4速ギヤ4Gと、第1カウンタギヤ44または第2カウンタギヤ45と、第3カウンタギヤ47と、出力軸ギヤ51とに伝達される。
なお、この場合、必要に応じて、シンクロクラッチS1,S2を接状態とするプレシフト状態によって、2速走行状態または4速走行状態であっても、モータジェネレータMGの駆動力を内燃機関(エンジン)Eの駆動力に付加して走行することができる。
【0043】
そして、シフトアップまたはシフトダウンによって、変速段が奇数段(例えば、1速,3速,5速など)と遇数段(例えば、2速,4速など)との間で移行するときには、プレシフト状態が設けられる。
【0044】
シフトアップで遇数段(例えば、2速,4速など)から奇数段(例えば、3速,5速など)へ移行する間に設けられるプレシフト状態では、遇数段の走行状態で断状態のシンクロクラッチS2が接状態に切り替えられる。これにより、カウンタ軸(C)32と第1メイン軸(M)24とが接続されて、第1メイン軸(M)24に接続されている第1クラッチCL1のクラッチ本体22およびモータジェネレータMGのロータMRが空転する。
【0045】
例えば4速走行状態から5速走行状態へのシフトアップでは4速走行状態から5速走行状態へ移行する間にプレシフト状態が設けられる。このプレシフト状態では、断状態のシンクロクラッチS2が5速ギヤ5Gを第1メイン軸(M)24に接続する接状態に切り替えられる。これにより、第1メイン軸(M)24に接続された第1クラッチCL1のクラッチ本体22およびモータジェネレータMGのロータMRが空転する。
【0046】
また、シフトアップで奇数段(例えば、1速,3速など)から遇数段(例えば、2速,4速など)へ移行する間に設けられるプレシフト状態では、奇数段の走行状態で断状態のシンクロクラッチS4が接状態に切り替えられる。これにより、順次、カウンタ軸(C)32と、サブ・メイン軸(S)33と、アイドル軸(I)34と、第2メイン軸25aとが接続されて、第2メイン軸25aに接続されている第2クラッチCL2のクラッチ本体23が空転する。
【0047】
例えば3速走行状態から4速走行状態へのシフトアップでは3速走行状態から4速走行状態へ移行する間にプレシフト状態が設けられる。このプレシフト状態では、断状態のシンクロクラッチS4が4速ギヤ4Gをサブ・メイン軸(S)33に接続する接状態に切り替えられる。これにより、第2メイン軸25aに接続されている第2クラッチCL2のクラッチ本体23が空転する。
【0048】
また、シフトダウンで奇数段(例えば、3速,5速など)から遇数段(例えば、2速,4速など)へ移行する間に設けられるプレシフト状態では、奇数段の走行状態で断状態のシンクロクラッチS4が接状態に切り替えられる。これにより、順次、カウンタ軸(C)32と、サブ・メイン軸(S)33と、アイドル軸(I)34と、第2メイン軸25aとが接続されて、第2メイン軸25aに接続されている第2クラッチCL2のクラッチ本体23が空転する。
【0049】
例えば3速走行状態から2速走行状態へのシフトダウンでは3速走行状態から2速走行状態へ移行する間にプレシフト状態が設けられる。このプレシフト状態では、断状態のシンクロクラッチS4が2速ギヤ2Gをサブ・メイン軸(S)33に接続する接状態に切り替えられる。これにより、第2メイン軸25aに接続されている第2クラッチCL2のクラッチ本体23が空転する。
【0050】
また、シフトダウンで遇数段(例えば、2速,4速など)から奇数段(例えば、1速,3速など)へ移行する間に設けられるプレシフト状態では、遇数段の走行状態で断状態のシンクロクラッチS2(あるいは、シンクロクラッチS2およびS1)が接状態に切り替えられる。これにより、カウンタ軸(C)32と第1メイン軸(M)24とが接続されて、第1メイン軸(M)24に接続されている第1クラッチCL1のクラッチ本体22およびモータジェネレータMGのロータMRが空転する。
【0051】
例えば2速走行状態から1速走行状態へのシフトダウンでは2速走行状態から1速走行状態へ移行する間にプレシフト状態が設けられる。このプレシフト状態では、断状態のシンクロクラッチS2が3速ギヤ3Gを第1メイン軸(M)24に接続する接状態に切り替えられると共に、断状態のシンクロクラッチS1が遊星歯車機構PGMのリングギヤ28を固定する接状態に切り替えられる。これにより、第1メイン軸(M)24に接続された第1クラッチCL1のクラッチ本体22およびモータジェネレータMGのロータMRが空転する。
【0052】
マネージメントECU(ECU:Electronic Control Unit)18dは、例えば図2に示すように、エネルギーマネジメント部61と、デバイス制限算出部62と、目標駆動力算出部63と、過渡応答制御部64と、動力配分部65と、発電制御部66とを備えて構成されている。
【0053】
エネルギーマネジメント部61は、各種のデバイス状態量、例えばバッテリECU18bから出力されるバッテリ17の残容量SOCなどの状態量や、例えば空調装置53やオイルポンプ54などの各種の車載機器の状態量などに基づき、バッテリ17の充放電などの各種のデバイスのエネルギーマネジメント動作に係る各種の動作指示および要求制限値(例えば、電力制限値など)を出力する。
【0054】
デバイス制限算出部62は、エネルギーマネジメント部61から出力される各種の動作指示および要求制限値と、各種のデバイスの保護に係る保護制限値とに基づき、各種のデバイスに対する動作指示を出力する。
【0055】
例えば、デバイス制限算出部62は、回転角センサ19bから出力される検出結果の信号に基づくモータジェネレータMGの角速度変化量が所定変化量よりも大きい場合に、モータジェネレータMGの回転軸と変速機12の出力軸(D)13との間の動力伝達を遮断することを指示する動作指示を出力する。
この動作指示は、例えば、モータジェネレータMGの回転軸が直結されている変速機12の奇数段の変速段(例えば、1速,3速,5速の各変速段など)に対応する各シンクロクラッチS1,S2を断状態にすることを指示する。
なお、デバイス制限算出部62は、この動力伝達の遮断に先立って、力行中のモータジェネレータMGの駆動トルクを低減またはモータジェネレータMGの動作を力行から回生に切り替えて回生トルクを発生することを指示する動作指示を出力してもよい。
【0056】
この動力伝達の遮断を指示する動作指示は、例えば、車両走行中に変速機12のパーキングギヤ46によって出力軸13を機械的に固定して回転を禁止するパーキングの実行時に、モータジェネレータMGの角速度変化量が所定変化量よりも大きい場合に出力される。
【0057】
また、この動力伝達の遮断を指示する動作指示は、例えば、車両走行中に運転者のブレーキ装置Bに対する制動操作(例えば、ブレーキペダルの踏み込みが急激な操作、または、ブレーキペダルの踏み込み量が大きい操作など)に応じた要求制動力による制動時に、モータジェネレータMGの角速度変化量が所定変化量よりも大きく、かつ、要求制動力が所定の最大制動力以下であれば出力される。
【0058】
また、この動力伝達の遮断を指示する動作指示は、例えば、変速機12の遇数段の変速段(例えば、2速,4速の各変速段など)での走行から奇数段の変速段(例えば、1速,3速,5速の各変速段など)での走行へと移行する間の所定の変速状態(つまり、プレシフト状態)での車両走行中に運転者のブレーキ装置Bに対する制動操作(例えば、ブレーキペダルの踏み込みが急激な操作、または、ブレーキペダルの踏み込み量が大きい操作など)に応じた要求制動力による制動時に、モータジェネレータMGの角速度変化量が所定変化量よりも大きく、かつ、要求制動力が所定の最大制動力以下であれば出力される。
なお、この場合には、デバイス制限算出部62は、さらに、変速機12の遇数段の変速段に接続されている内燃機関(エンジン)Eの停止を指示する動作指示を出力してもよい。これにより、内燃機関(エンジン)Eの回転抵抗が増大して制動力が増大する。
【0059】
また、この動力伝達の遮断を指示する動作指示は、例えば、モータジェネレータMGの駆動力のみで走行する車両走行中に運転者のブレーキ装置Bに対する制動操作(例えば、ブレーキペダルの踏み込みなど)に応じた要求制動力による制動時に、モータジェネレータMGの角速度変化量が所定変化量よりも大きく、かつ、要求制動力が所定の最大制動力以下であれば出力される。
【0060】
目標駆動力算出部63は、例えば、運転者の運転操作に応じた各種の運転操作量(例えば、アクセル開度など)と、車両の状態に係る各種の車両状態量(例えば、エンジン回転数や速度など)と、エネルギーマネジメント部61およびデバイス制限算出部62から出力される各制限値とに基づき、車両駆動源の内燃機関(エンジン)EおよびモータジェネレータMGの各目標駆動力を出力する。
【0061】
過渡応答制御部64は、例えば、目標駆動力算出部63から出力される目標駆動力と、エネルギーマネジメント部61およびデバイス制限算出部62から出力される各制限値とに基づき、車両駆動源の内燃機関(エンジン)EおよびモータジェネレータMGの過渡応答に対する動作指示を設定し、過渡応答に対する動作指示を目標駆動力と共に出力する。
【0062】
動力配分部65は、例えば、デバイス制限算出部62から出力される動作指示と、過渡応答制御部64から出力される過渡応答に対する動作指示および目標駆動力とに基づき、内燃機関(エンジン)EおよびモータジェネレータMGの動力配分を設定し、この動力配分に応じて各種のデバイスの動作を指示する制御指令を出力する。
発電制御部66は、例えば、デバイス制限算出部62から出力される動作指示と、過渡応答制御部64から出力される過渡応答に対する動作指示および目標駆動力とに基づき、モータジェネレータMGの駆動力のみで走行するEV走行時およびモータジェネレータMGの発電時における各種のデバイスの動作を指示する制御指令を出力する。
【0063】
本実施の形態によるハイブリッド車両10は上記構成を備えており、次に、このハイブリッド車両10の動作の一例、特に、変速機12での動力伝達の遮断の処理の一例について説明する。
【0064】
先ず、例えば図3に示すステップS01においては、例えばパーキングの実行時などにおいて回転角センサ19bから出力される検出結果の信号に基づくモータジェネレータMGの角速度変化量が所定変化量よりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進む。
【0065】
次に、ステップS02においては、力行中のモータジェネレータMGの駆動トルクを強制的に低減またはモータジェネレータMGの動作を力行から回生に強制的に切り替えて回生トルクを発生する。
次に、ステップS03においては、モータジェネレータMGの回転軸が直結されている変速機12の奇数段の変速段(例えば、1速,3速,5速の各変速段など)に対応する各シンクロクラッチS1,S2を強制的に開放し、断状態にする。
【0066】
次に、ステップS04においては、モータジェネレータMGの角速度変化量が所定範囲内か否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS05に進み、このステップS05においては、上述したステップS02,03による動作の実行を維持し、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、上述したステップS02,03による動作の実行を停止し、これらの動作を実行しない状態へと復帰して、エンドに進む。
【0067】
以下に、例えば図4を参照して、ハイブリッド車両10の減速時の動作、特に、油圧ブースター式などのブレーキ装置Bの動作の一例について説明する。
【0068】
例えば内燃機関(エンジン)EとモータジェネレータMGのロータMRとが直結状態での走行中において、例えば時刻t1でアクセルペダルの踏込み操作が解除されると、この時刻t1以降において内燃機関(エンジン)Eの回転抵抗によるエンジンブレーキの制動力が発生して、減速が開始される。
そして、例えばブレーキペダルの踏込み操作が開始されてブレーキスイッチがOFFからONへと切り替わった時刻t2以降において、このブレーキペダルの踏込み操作の踏力に応じたブレーキ液圧であるREG液圧が増大傾向に変化する。
そして、例えば時刻t3以降のように、REG液圧が所定のブレーキ液圧Pa以上になると、モータジェネレータMGによる回生が開始され、この回生による回生ブレーキの制動力が、エンジンブレーキの制動力に加算されるようにして発生して、さらに減速が行なわれる。
【0069】
この時刻t2以降において、例えば、回生が開始される時刻t3と、減速が安定する時刻t4と、回生ブレーキの制動力の減少が開始される時刻t5となどを経過して、エンジンブレーキおよび回生ブレーキの発生が終了される時刻t6に到達するまでの期間において、制動圧に応じたブレーキ液圧であるM/C液圧は、通常時の制御として、要求制動力に応じたブレーキ液圧Pbに到達するまで上下に変動するように制御される。そして、M/C液圧が要求制動力に応じたブレーキ液圧Pbに到達した時刻t6以降において、例えば時刻t7で速度がゼロとなって車両が停止する。
【0070】
これに対して、例えばブレーキペダルの踏込み操作が急激に行われた急制動時において、M/C液圧はブレーキペダルの踏込み操作の踏力に応じたREG液圧と共に単調に増大して、要求制動力に応じたブレーキ液圧Pbに到達する。
【0071】
そして、このような急制動時であっても、要求制動力がブレーキ装置Bに対して予め設定されている所定の最大制動力以下である場合には、このブレーキ装置Bから出力される制動力のみで車両を減速させることができる。このため、モータジェネレータMGの角速度変化量が所定変化量よりも大きいことで、モータジェネレータMGの回転軸と変速機12の出力軸(D)13との間の動力伝達を遮断するために、変速機12の奇数段の変速段(例えば、1速,3速,5速の各変速段など)に対応する各シンクロクラッチS1,S2が断状態とされて抵抗の減少が生じても、車両の走行挙動に運転者の制動意思を的確に反映させることができる。
【0072】
上述したように、本発明の実施形態によるハイブリッド車両10によれば、モータジェネレータMGの角速度変化量が所定変化量よりも大きい場合に、モータジェネレータMGの回転軸と変速機12の出力軸(D)13との間の動力伝達を遮断することができる。これにより、例えばモータジェネレータMGの回転位相にずれが生じたり、例えばモータジェネレータMGの回転軸と変速機12の変速段との機械的な接続部位に破損が生じるなどの不具合の発生を防止することができる。
【0073】
さらに、変速機12でのパーキングの実行時に過大な負荷が作用してモータジェネレータMGの角速度変化量が所定変化量よりも大きくなる場合であっても、モータジェネレータMGの回転軸が直結されている奇数段の変速段の各シンクロクラッチS1,S2を断状態として、モータジェネレータMGの回転軸と変速機12の出力軸(D)13との間の動力伝達を遮断することができる。これにより、例えばモータジェネレータMGの回転位相にずれが生じたり、例えばモータジェネレータMGの回転軸と奇数段の変速段との機械的な接続部位に破損が生じるなどの不具合の発生を防止することができる。
【0074】
さらに、例えば変速機12の遇数段から奇数段へのプレシフト状態での車両走行中や、例えばモータジェネレータMGの駆動力のみで走行する車両走行中などの各種の走行状態において、運転者の制動操作に応じた過大な負荷が作用してモータジェネレータMGの角速度変化量が所定変化量よりも大きくなる場合であっても、モータジェネレータMGの回転軸が直結されている奇数段の変速段の各シンクロクラッチS1,S2を断状態として、モータジェネレータMGの回転軸と変速機12の出力軸(D)13との間の動力伝達を遮断することができる。これにより、例えばモータジェネレータMGの回転位相にずれが生じたり、例えばモータジェネレータMGの回転軸と奇数段の変速段との機械的な接続部位に破損が生じるなどの不具合の発生を防止することができる
しかも、この動力伝達の遮断は、要求制動力が所定の最大制動力以下である場合に実行されることから、各シンクロクラッチS1,S2を断状態とすることに伴う抵抗の減少が生じても、予めブレーキ制動装置Bに対して設定されている所定の最大制動力以下の要求制動力を確保することができ、車両の走行挙動に運転者の制動意思を的確に反映させることができる。
【0075】
さらに、モータジェネレータMGの回転軸が直結されている奇数段の変速段のスプライン嵌合を保護するようにしてモータジェネレータMGの角速度変化量に対する閾値である所定変化量を設定することにより、モータジェネレータMGの回転軸と奇数段の変速段の軸(第1メイン軸(M)24)との接続部位に破損が生じることを防止することができる。
【0076】
なお、上述した実施の形態においては、第1および第2クラッチCL1,CL2は、オイルポンプによる作動油が供給されることで各クラッチ本体22,23をクラッチハウジング21に接続する油圧式のクラッチであってもよい。
【0077】
なお、上述した実施の形態においては、変速機12は第1および第2クラッチCL1,CL2がクラッチハウジング21を共用するデュアルクラッチを備えるとしたが、これに限定されず、例えば単一のクラッチなどの他の形式のクラッチを備えてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 ハイブリッド車両
12 変速機
13 出力軸
18d マネージメントECU(制御手段)
19b 回転角センサ
24 第1メイン軸(M)(入力軸)
25a 第2メイン軸(入力軸)
CL1 第1クラッチ(断接手段)
CL2 第2クラッチ(断接手段)
E 内燃機関(エンジン)
MG モータジェネレータ(電動機)
S1〜S4 シンクロクラッチ(クラッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動源の内燃機関および電動機と、
少なくとも複数の入力軸および複数に区分された複数の変速段を有し、前記複数の区分の何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段に前記電動機の回転軸が直結されている変速機と、
前記複数の入力軸と前記内燃機関のクランク軸とを断接する複数の断接手段と、
前記電動機の回転角を検出する回転角センサとを備えるハイブリッド車両であって、
前記回転角センサから出力される前記回転角の検出結果に基づく前記電動機の角速度変化量が所定変化量よりも大きい場合に、前記電動機の前記回転軸と前記変速機の出力軸との間の動力伝達を遮断する制御手段を
備えることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
各前記複数の変速段毎に対して駆動側と被駆動側とを断接するクラッチを備え、
前記制御手段は、車両走行中に前記変速機の前記出力軸を固定して回転を禁止するパーキングの実行時に前記電動機の前記角速度変化量が前記所定変化量よりも大きい場合に、前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段に対応する前記クラッチを断状態にすることによって、前記電動機の前記回転軸と前記変速機の前記出力軸との間の動力伝達を遮断することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
各前記複数の変速段毎に対して駆動側と被駆動側とを断接するクラッチを備え、
前記制御手段は、車両走行中に運転者の制動操作に応じた要求制動力による制動時に前記電動機の前記角速度変化量が前記所定変化量よりも大きい場合に、前記要求制動力が所定の最大制動力以下であれば、前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段に対応する前記クラッチを断状態にすることによって、前記電動機の前記回転軸と前記変速機の前記出力軸との間の動力伝達を遮断することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
各前記複数の変速段毎に対して駆動側と被駆動側とを断接するクラッチを備え、
前記制御手段は、前記何れか1つの前記区分以外の前記区分に含まれる前記変速段での走行から前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段での走行へと移行する間の所定の変速状態での車両走行中に運転者の制動操作に応じた要求制動力の制動時に前記電動機の前記角速度変化量が前記所定変化量よりも大きい場合に、前記要求制動力が所定の最大制動力以下であれば、前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段に対応する前記クラッチを断状態にすることによって、前記電動機の前記回転軸と前記変速機の前記出力軸との間の動力伝達を遮断することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
各前記複数の変速段毎に対して駆動側と被駆動側とを断接するクラッチを備え、
前記制御手段は、前記電動機の駆動力のみで走行する車両走行中に運転者の制動操作に応じた要求制動力の制動時に前記電動機の前記角速度変化量が前記所定変化量よりも大きい場合に、前記要求制動力が所定の最大制動力以下であれば、前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段に対応する前記クラッチを断状態にすることによって、前記電動機の前記回転軸と前記変速機の前記出力軸との間の動力伝達を遮断することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記電動機の前記回転軸と、前記何れか1つの前記区分に含まれる前記変速段の軸とは、一方に設けられたスプライン軸と他方に設けられたスプライン軸受とのスプライン嵌合により接続されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項7】
前記制御手段は、前記動力伝達の遮断に先立って、前記電動機の駆動トルクを低減または前記電動機の動作を力行から回生に切り替えて回生トルクを発生させることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−213133(P2011−213133A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80331(P2010−80331)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】