説明

ハイブリッド駆動装置

【課題】電動走行モードを備えるハイブリッド駆動装置において、特別な構成部品を増加させることなく、電動走行時にエンジンが停止した場合であっても、補機を適切に駆動させることを可能とする。
【解決手段】エンジンEに接続される入力部材Mと、第一回転電機MG1と、第二回転電機MG2と、車輪Wに接続される出力部材Oと、3つの回転要素を有する差動歯車装置Pと、入力部材MとエンジンEとを選択的に接続する係合要素12と、差動歯車装置Pの第二回転要素に接続された、補機25を駆動するための動力を取り出し可能な動力取出部22と、エンジンEの停止中に、係合要素12を解放状態として、補機25が必要とする回転速度で差動歯車装置Pの第二回転要素を回転させるように第一回転電機MG1を駆動する制御装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに接続される入力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、車輪に接続される出力部材と、3つの回転要素を備える差動歯車装置と、を備えたハイブリッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の駆動源としてエンジン及びモータやジェネレータ等の回転電機を備えた、いわゆるハイブリッド車両が、燃費、環境保護等の点から注目を集めている。このようなハイブリッド車両に用いるハイブリッド駆動装置の一例として、例えば下記の特許文献1には、エンジンに接続される入力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、車輪に接続される出力部材と、第一回転電機に接続される第一回転要素と、入力部材に接続される第二回転要素と、出力部材及び第二回転電機に接続される第三回転要素と、の3つの回転要素を有する差動歯車装置と、を備えた構成が開示されている。このような構成を有するハイブリッド駆動装置では、エンジンの回転駆動力を差動歯車装置により第一回転電機と出力部材とに分配しながら車両を走行させるスプリット走行や、エンジンを停止させるとともに第二回転電機の回転駆動力を用いて車両を走行させる電動走行を行なうことが可能である。
【0003】
ところで一般に、車両には車内の温度及び湿度を調節するための車載用エアコンディショナーが装備されている場合が多い。そのような車載用エアコンディショナーを備えた車両においては、通常、熱媒循環路中に、熱媒を圧縮するためのコンプレッサが介装されている。このコンプレッサは外部からの回転駆動力により駆動される。そして、特許文献1に記載されたようなハイブリッド駆動装置においては、従来から、車載用エアコンディショナーのコンプレッサ等の補機を入力部材に接続することにより、入力部材に接続されたエンジンの回転駆動力を用いて補機を駆動することが行なわれてきた。
【0004】
【特許文献1】特開平8−295140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したような構成においては、電動走行を行なう場合にはエンジンが停止してしまい、当該エンジンに接続された入力部材の回転も停止してしまう。これにより、入力部材に接続されるコンプレッサ等の補機も停止してしまうため、電動走行中にエンジンを停止させたままで補機を駆動させるためには、補機専用の電動機等の駆動力源を別途設置しなければならなかった。しかし、そのような補機専用の駆動力源を設けた場合には、製造コストが高くなってしまう上に、駆動装置全体の重量がその分だけ増加して燃費が悪くなってしまう。さらに、駆動装置全体が大型化してしまうという問題もある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、電動走行モードを備えるハイブリッド駆動装置において、専用の駆動力源を設けることなく、電動走行時等にエンジンが停止した場合であっても、補機を適切に駆動させることを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための、本発明に係るハイブリッド駆動装置の特徴構成は、エンジンに接続される入力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、車輪に接続される出力部材と、前記第一回転電機に接続される第一回転要素と、前記入力部材に接続される第二回転要素と、前記出力部材及び前記第二回転電機に接続される第三回転要素と、の3つの回転要素を有する差動歯車装置と、前記入力部材と前記エンジンとを選択的に接続する係合要素と、前記第二回転要素に接続された、補機を駆動するための動力を取り出し可能な動力取出部と、前記エンジンの停止中に、前記係合要素を解放状態として、前記補機が必要とする回転速度で前記第二回転要素を回転させるように前記第一回転電機を駆動する制御装置と、を備えた点にある。
【0008】
なお、本願では、「接続」とは、回転の伝達を直接的に行う構造を含むほか、一又は二以上の部材を介して回転の伝達を間接的に行う構造も含む。また、本願では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0009】
上記の特徴構成によれば、第二回転電機の回転駆動力により電動走行を行なう場合等、エンジンが停止する場合には、制御装置が、第一回転電機を駆動することにより補機が必要とする回転速度で第二回転要素及び入力部材を回転させるので、当該入力部材に連結された動力取出部を介して、適切な回転速度で補機を駆動することができる。このとき、係合要素を解放状態とすることにより入力部材とエンジンとを分離することができるので、第一回転電機により入力部材を駆動させるに際して、エンジンの連れ回りを回避してエネルギー効率を向上させることができる。また、この構成では、差動歯車装置を用いたハイブリッド駆動装置において必須の部品である第一回転電機、差動歯車装置、及び入力部材を用いて補機を駆動することができる。したがって、電動走行モードを備えるハイブリッド駆動装置において、専用の駆動力源を設けることなく、電動走行時等にエンジンが停止した場合であっても、補機を適切に駆動させることが可能となる。
【0010】
ここで、前記制御装置は、前記第一回転電機を駆動して前記補機を回転させた際に前記第三回転要素から前記出力部材に伝達されるトルクを打ち消すように前記第二回転電機の出力トルクを補正する構成とすると好適である。
【0011】
車輪には出力部材及び第二回転電機の双方が接続されているので、電動走行を行なう場合、第二回転電機の回転駆動力に加えて出力部材の回転駆動力も車輪に伝達され得る。そのため、補機を駆動する際に差動歯車装置の第三回転要素から出力部材に伝達されるトルクがさらに車輪に伝達され、走行駆動力に変動が生じる場合がある。そこで上記の構成を採用して、第一回転電機を駆動して補機を回転させた際に第三回転要素から出力部材に伝達されるトルクに応じて第二回転電機の出力トルクを補正することにより、車両の走行駆動力の変動を抑制して、走行状態を安定させることができる。
【0012】
また、前記補機として、車載用エアコンディショナーのコンプレッサを備えた構成とすると好適である。
【0013】
車載用エアコンディショナーは、車内温度等の外部要因に応じて、エンジンの駆動力により走行しているか、又はエンジンを停止して回転電機の駆動力により走行しているかを区別することなく、必要時には常時稼働することが求められる。この構成によれば、電動走行時にエンジンが停止した場合であっても、車載用エアコンディショナーを適切に稼働させることができる。
【0014】
また、前記補機として、油を吐出するオイルポンプをさらに備え、前記制御装置は、前記第一回転電機及び前記第二回転電機の一方又は双方の温度、前記出力部材の回転速度、及び前記車載用エアコンディショナーの要求能力、の一つ以上に基づいて、前記エンジンの停止中における前記第二回転要素の回転速度を決定する構成とすると好適である。
【0015】
オイルポンプは、発熱部材の冷却や駆動装置内部における潤滑等のために油を吐出するものであり、エンジンの駆動力により走行しているか、又はエンジンを停止して回転電機の駆動力により走行しているかを区別することなく、常時稼働することが求められる。よって、補機としてさらにオイルポンプを駆動することにより、電動走行時にエンジンが停止した場合であっても、オイルポンプを適切に稼働させて、駆動装置内部における潤滑や発熱部材の冷却等を適切に行なうことができる。このとき、発熱量の大きな部品の一つである回転電機の温度が高くなるほど、より冷却能力を上げるためにオイルポンプを高速で回転させる必要性が生じる。また、車速が高くなるほど、駆動装置内の潤滑性を上げるためにオイルポンプを高速で回転させる必要性が生じる。さらに、車載用エアコンディショナーの設定温度及び設定風量等に応じて決まる要求能力が大きくなるほど、コンプレッサの処理能力を上げるためにコンプレッサを高速で稼働させる必要性が生じる。したがって、上記の構成を採用することにより、動力取出部に接続される第二回転要素の回転速度を適切に決定して、車載用エアコンディショナーを適切に稼働させ、或いは、駆動装置内部における潤滑や発熱部材の冷却等を適切に行なわせることが可能となる。
【0016】
また、前記制御装置は、前記補機を駆動するための前記第二回転要素の回転速度と前記第二回転電機の回転速度とに基づいて、前記第一回転電機の回転速度を制御する構成とすると好適である。
【0017】
この構成によれば、第二回転電機の回転速度に比例して決まる出力部材の回転速度と、制御装置により制御された第一回転電機の回転速度とにより、補機を駆動するための入力部材を、差動歯車装置を介して適切な回転速度で回転させることができる。
【0018】
また、前記係合要素は、油圧作動式の係合要素であり、油圧の非供給時には解放状態に保持されるとともに、油圧の供給時に係合状態が実現される構成とすると好適である。
【0019】
この構成によれば、油圧の非供給時には解放状態に保持されるので、電動走行時に入力部材とエンジンとを容易に分離することができる。よって、エネルギー効率の向上を容易に達成できる。また、係合要素が係合状態となっている場合には、入力部材を介してエンジンの回転駆動力により補機を確実に駆動させることができる。
【0020】
また、前記制御装置は、前記エンジンの停止中に、前記係合要素を解放状態から係合状態へ切り替え、前記第一回転電機の回転駆動力により前記エンジンを始動させる構成とすると好適である。
【0021】
この構成によれば、エンジンの停止及び始動を適切に切り替えることができ、エンジンの駆動力により走行するモードと、エンジンを停止して回転電機の駆動力により走行するモード(電動走行モード)と、を適切に切り替えることができる。
【0022】
また、前記補機として、油を吐出するオイルポンプを備え、前記制御装置は、前記係合要素を滑らせながら係合させることにより、前記エンジンの回転速度を上昇させて前記エンジンを始動させる構成とすると好適である。
【0023】
この構成によれば、オイルポンプで発生させられた油圧により係合要素を係合させることができる。その際、制御装置が係合要素を滑らせながら係合させることにより、エンジンの回転速度を徐々に上昇させることができるので、入力部材の回転速度とエンジンの回転速度(ここでは零である)との差が大きい場合でも、係合要素を係合させる際のショックを抑制しつつエンジンを始動させることができる。
【0024】
或いは、前記補機として、油を吐出するオイルポンプを備えるとともに、油圧を蓄積可能な蓄圧装置を備え、前記制御装置は、前記第一回転電機の回転速度を前記差動歯車装置により車速に応じて決まる回転速度とした後、前記蓄圧装置に蓄積された油圧により前記係合要素を係合させ、その後前記第一回転電機の回転速度を上昇させることにより前記エンジンの回転速度を上昇させて前記エンジンを始動させる構成としても好適である。
【0025】
この構成によれば、オイルポンプで発生させられた油圧を一旦蓄圧装置に蓄積した後に、当該油圧により係合要素を係合させることができる。その際、制御装置が、車速に応じて入力部材の回転速度が零となるように第一回転電機の回転速度を制御した後に係合要素を係合させるので、入力部材の回転速度とエンジンの回転速度とが同速の状態で係合要素が係合することになり、上記したようなショックの発生を抑制することができる。また、その後第一回転電機の回転速度を上昇させることにより、適切にエンジンを始動させることができる。
【0026】
また、前記エンジンの側から、前記差動歯車装置、前記第一回転電機の順に配置され、前記入力部材が、前記差動歯車装置及び前記第一回転電機の径方向内側を貫通して、前記第一回転電機に対して前記差動歯車装置とは反対側まで延出され、前記入力軸の前記第一回転電機に対して前記エンジンとは反対側の部分に、前記動力取出部を備えた構成とすると好適である。
【0027】
この構成によれば、差動歯車装置、第一回転電機、及び動力取出部をコンパクトに配置して、駆動装置全体の大型化を抑制することができる。また、動力取出部を第一回転電機に対してエンジンとは反対側の部分に配置することで、動力取出部を駆動装置の外部に設ける構成を容易に実現することができる。よって、駆動装置を車両に搭載した際に、適切に動力取出部と補機とを接続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明に係るハイブリッド駆動装置1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、ハイブリッド駆動装置1の構成を示すスケルトン図である。図2は、ハイブリッド駆動装置1のシステム構成を示す模式図である。図2において、実線の矢印は各種情報の伝達経路を示し、破線は電力の伝達経路を示している。
【0029】
図1及び図2に示すように、このハイブリッド駆動装置1は、エンジンEに接続される入力軸Iと、第一モータ・ジェネレータMG1と、第二モータ・ジェネレータMG2と、カウンタ減速機構C及び出力用差動歯車装置18を介して車輪W(図2を参照)に接続される出力ギヤOと、遊星歯車装置Pと、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2等の制御を行なう制御ユニット41と、を備えている。ここで、遊星歯車装置Pは、第一モータ・ジェネレータMG1に接続される第一回転要素と、入力軸Iに接続される第二回転要素と、出力ギヤO及び第二モータ・ジェネレータMG2に接続される第三回転要素と、の3つの回転要素を有している。また、入力軸Iはクラッチ12を介してエンジンEに選択的に接続されるとともに、当該入力軸Iには、補機としての車載用エアコンディショナーのコンプレッサ25を駆動するための動力を取り出し可能な駆動プーリ22が連結されている。このハイブリッド駆動装置1は、エンジンEの停止中には、制御ユニット41が、クラッチ12を解放状態として、コンプレッサ25が必要とする回転速度で第二回転要素及び入力軸Iを回転させるように第一モータ・ジェネレータMG1を駆動するように制御される。これにより、エンジンEが停止している時であっても、第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力により入力軸Iを回転させ、コンプレッサ25を駆動することができる。本実施形態においては、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2が、それぞれ本発明における「第一回転電機」及び「第二回転電機」に相当する。また、入力軸I及び出力ギヤOが、それぞれ本発明における「入力部材」及び「出力部材」に相当し、遊星歯車装置Pが本発明における「差動歯車装置」に相当する。また、制御ユニット41が本発明における「制御装置」に相当し、クラッチ12が本発明における「係合要素」に相当する。また、駆動プーリ22が本発明における「動力取出部」の一部を構成する。
【0030】
1.ハイブリッド駆動装置の機械的構成
まず、ハイブリッド駆動装置1の各部の機械的構成について説明する。図1に示すように、入力軸Iは、エンジンEに接続されている。ここで、エンジンEは燃料の燃焼により駆動される内燃機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、入力軸Iは、クラッチ12を介して、エンジンEのクランクシャフト等のエンジン出力軸Eoに接続されている。なお、図示の例では、入力軸Iはダンパ11を介してエンジンEに接続されているが、ダンパ11を介さずに直接エンジンEに接続された構成としても好適である。なお、本実施形態においては、入力軸IはエンジンEのエンジン出力軸Eoと一体的に回転するため、入力軸Iの回転はエンジンEの回転と同じであり、入力軸Iの回転駆動力(トルク、以下同様)はエンジンEの回転駆動力と同じである。したがって、以下では、特に区別する必要がある場合を除き、適宜、入力軸I及びエンジンEの回転を単にエンジンEの回転と呼び、入力軸I及びエンジンEの回転駆動力を単にエンジンEの回転駆動力と呼ぶ。また、入力軸Iは、遊星歯車装置Pのキャリアcaに接続されるととともに、第一モータ・ジェネレータMG1に対してエンジンEとは反対側の部分において、動力取出部の一部を構成する駆動プーリ22と一体回転するように接続されている。
【0031】
第一モータ・ジェネレータMG1は、図示しないケースに固定された第一ステータSt1と、この第一ステータSt1の径方向内側に回転自在に支持された第一ロータRo1と、を有している。第一モータ・ジェネレータMG1は、遊星歯車装置Pに対してエンジンEとは反対側における入力軸Iの径方向外側に、入力軸Iと同軸上に配置されている。すなわち、本例では、エンジンE側から、遊星歯車装置P、第一モータ・ジェネレータMG1の順に同軸上に配置されている。第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1は、遊星歯車装置Pのサンギヤsと一体回転するように接続されている。また、第二モータ・ジェネレータMG2は、図示しないケースに固定された第二ステータSt2と、この第二ステータSt2の径方向内側に回転自在に支持された第二ロータRo2と、を有している。この第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2は、第二モータ・ジェネレータ出力ギヤ13と一体回転するように接続されている。第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、図2に示すように、それぞれ第一インバータ32、第二インバータ33を介して蓄電装置としてのバッテリ31に電気的に接続されている。そして、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、それぞれ電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能を果たすことが可能とされている。
【0032】
第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、それぞれ回転方向と回転駆動力の向きとの関係に応じてジェネレータ及びモータのいずれか一方として機能する。そして、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、ジェネレータとして機能する場合には、発電した電力をバッテリ31に供給して充電し、或いは当該電力をモータとして機能する他方のモータ・ジェネレータMG1、MG2に供給して力行させる。また、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、モータとして機能する場合には、バッテリ31に充電され、或いはジェネレータとして機能する他方のモータ・ジェネレータMG1、MG2により発電された電力の供給を受けて力行する。そして、第一モータ・ジェネレータMG1の動作は、第一モータ・ジェネレータ制御部43からの制御指令に従って第一インバータ32を介して行われ、第二モータ・ジェネレータMG2の動作は、第二モータ・ジェネレータ制御部44からの制御指令に従って第二インバータ33を介して行われる。
【0033】
図1に示すように、本実施形態においては、遊星歯車装置Pは、入力軸Iと同軸上に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構とされている。すなわち、遊星歯車装置Pは、複数のピニオンギヤを支持するキャリアcaと、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs及びリングギヤrと、を回転要素として有している。サンギヤsは、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1の回転軸と一体回転するように接続されている。キャリアcaは、入力軸Iと一体回転するように接続されている。リングギヤrは、出力ギヤOと一体回転するように接続されている。このように、差動歯車装置としての遊星歯車装置Pは3つの回転要素を有しており、本実施形態においては、サンギヤs、キャリアca、及びリングギヤrが、それぞれ本発明における「第一回転要素」、「第二回転要素」、及び「第三回転要素」に相当する。なお、この遊星歯車装置Pでは、3つの回転要素は、回転速度の順にサンギヤs(第一回転要素)、キャリアca(第二回転要素)、及びリングギヤr(第三回転要素)となっている。
【0034】
出力ギヤOは、動力伝達経路上における遊星歯車装置Pの下流側において、入力軸Iと同軸上に配置されている。本実施形態においては、出力ギヤOは、遊星歯車装置Pに対してエンジンE側における入力軸Iの径方向外側に、入力軸Iと同軸上に配置されている。出力ギヤOは、後述するカウンタ減速機構Cの第一ギヤ14と噛み合っており、出力ギヤOに伝達された回転駆動力は、カウンタ減速機構C、出力用差動歯車装置18、及び出力軸19を介して車輪Wに伝達可能とされている。なお、第一ギヤ14には第二モータ・ジェネレータ出力ギヤ13も噛み合っており、これにより、第二モータ・ジェネレータMG2の回転駆動力も、カウンタ減速機構C、出力用差動歯車装置18、及び出力軸19を介して車輪Wに伝達可能とされている。また、本実施形態においては、出力ギヤO、遊星歯車装置P、及び第一モータ・ジェネレータMG1が入力軸Iと同軸上に配置されるとともに、第二モータ・ジェネレータMG2、カウンタ減速機構C、及び出力用差動歯車装置18は、それぞれ入力軸Iと異なる軸上に互いに平行に配置されている。すなわち、このハイブリッド駆動装置1は、入力軸I、出力ギヤO、遊星歯車装置P、及び第一モータ・ジェネレータMG1が配置される第一軸、第二モータ・ジェネレータMG2が配置される第二軸、カウンタ減速機構Cが配置される第三軸、並びに出力用差動歯車装置18が配置される第四軸、を備えた4軸構成とされている。
【0035】
カウンタ減速機構Cは、出力ギヤOに噛み合う第一ギヤ14と、差動入力ギヤ17に噛み合う第二ギヤ16と、第一ギヤ14と第二ギヤ16とを連結するカウンタ軸15と、を備えている。ここで、第二ギヤ16は、第一ギヤ14に対して径が小さく、歯数も少なく設定されている。これにより、第一ギヤ14の回転は、歯数の上で減速されて第二ギヤ16に伝達される。また、第一ギヤ14には、第二モータ・ジェネレータ出力ギヤ13が噛み合っている。すなわち、第一ギヤ14には出力ギヤO及び第二モータ・ジェネレータ出力ギヤ13が共通に噛み合う構成となっている。したがって、出力ギヤOの回転駆動力及び第二モータ・ジェネレータ出力ギヤ13の回転駆動力は、第一ギヤ14に伝達されるとともに、カウンタ軸15、第二ギヤ16及び差動入力ギヤ17を介して出力用差動歯車装置18に伝達される。
【0036】
出力用差動歯車装置18は、差動入力ギヤ17に伝達された回転駆動力を分配し、当該分配された回転駆動力を出力軸19を介して二つの車輪Wに伝達する。上記のとおり、エンジンE、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は、カウンタ減速機構C(第二ギヤ16)に接続されている。したがって、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、エンジンE、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2により発生され、差動入力ギヤ17に伝達された回転駆動力を、出力用差動歯車装置18及び出力軸19を介して左右二つの車輪Wに伝達し、車両7を走行させることができる。
【0037】
上記のとおり、第一モータ・ジェネレータMG1は、遊星歯車装置Pに対してエンジンEとは反対側における入力軸Iの径方向外側に、入力軸Iと同軸上に配置されている。入力軸Iは、遊星歯車装置P及び第一モータ・ジェネレータMG1の径方向内側を貫通して、第一モータ・ジェネレータMG1及び遊星歯車装置Pに対してエンジンEとは反対側まで延出した延出軸部Iaを有している。そして、入力軸Iの第一モータ・ジェネレータMG1に対してエンジンEとは反対側の部分、すなわち延出軸部Iaに、駆動プーリ22が入力軸Iと一体回転するように連結されている。駆動プーリ22の回転駆動力は、動力伝達手段としての伝動ベルト23を介して従動プーリ24に伝達される。また、本実施形態においては、補機として、油を吐出するためのオイルポンプ21をさらに備えている。本例では、オイルポンプ21は、インナロータとアウタロータとを有する内接型のギヤポンプとされている。また、オイルポンプ21は入力軸Iと同軸上に配置されており、インナロータがその軸芯部で入力軸Iに連結され、入力軸Iと一体回転するように設けられている。より具体的には、入力軸Iの外周面に形成されたスプライン溝とインナロータの軸芯部の内周面に形成されたスプライン溝とが係合することにより、インナロータが入力軸Iと一体回転可能とされた構成が例示される。これにより、入力軸Iの回転に伴ってオイルポンプ21は油を吐出し、油圧を発生させる。オイルポンプ21により吐出された油は、クラッチ12の係合及び解放を制御するための油圧を供給するため、遊星歯車装置P、出力ギヤO、及びカウンタ減速機構C等を潤滑するため、或いは第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2を冷却するため、等の目的に供される。なお、オイルポンプ21のインナロータの軸芯部と入力軸Iとの連結部が、本発明における「動力取出部」の一部を構成している。
【0038】
本実施形態においては、オイルポンプ21は、第一モータ・ジェネレータMG1に隣接して配置されている。具体的には、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ステータSt1に巻装されたコイルのコイルエンドの位置が、オイルポンプ21のエンジンE側の端面の位置と略一致するように配置されている。また、駆動プーリ22は、オイルポンプ21に対して第一モータ・ジェネレータMG1とは反対側に、オイルポンプ21に隣接して配置されている。これにより、第一モータ・ジェネレータMG1、オイルポンプ21、及び駆動プーリ22は、エンジンE側からこの順に隣接して配置され、駆動装置全体の軸長を短く抑えた構成とされている。
【0039】
ところで、このハイブリッド駆動装置1は、車内の温度及び湿度を調節するための車載用エアコンディショナーが装備された車両に搭載されることが想定されている。そのような車載用エアコンディショナーを備えた車両においては、熱媒循環路中に熱媒を圧縮するためのコンプレッサ25が介装されている。このコンプレッサ25は、通常、外部からの回転駆動力により駆動されるものとなっている。例えば、その内部にステータと、当該ステータに偏心して配置された、複数のベーンがスライド可能に嵌め込まれたロータを有するロータリーコンプレッサが用いられる。当該ロータリーコンプレッサでは、ステータ内でロータが回転するのに伴い、隣り合う2枚のベーンとロータおよびステータで区画される空間の容積が縮小する際に熱媒が圧縮される。コンプレッサ25のロータの回転軸は、従動プーリ24と一体回転するように接続されている。そして、駆動プーリ22と従動プーリ24との間には伝動ベルト23が巻回され、これにより入力軸Iの回転が駆動プーリ22、伝動ベルト23及び従動プーリ24を介してコンプレッサ25のロータに伝達され、コンプレッサ25を駆動することが可能となっている。
【0040】
2.ハイブリッド駆動装置の基本的動作
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1の基本的な動作について説明する。本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、電動走行モードとスプリット走行モードとを切替可能に備えている。図3及び図4は、各モードにおける遊星歯車装置Pの動作状態を表す速度線図である。これらの速度線図において、縦軸は、各回転要素の回転速度に対応している。すなわち、縦軸に対応して記載している「0」は回転速度が零であることを示しており、上側が正回転(回転速度が正)、下側が負回転(回転速度が負)である。また、各回転要素に対応する縦線の間隔は、遊星歯車装置Pのギヤ比λ(サンギヤとリングギヤとの歯数比=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)に対応している。そして、並列配置された複数本の縦線のそれぞれが、遊星歯車装置Pの各回転要素に対応している。すなわち、各縦線の上側に記載されている「s」、「ca」、「r」はそれぞれ遊星歯車装置Pのサンギヤs、キャリアca、リングギヤrに対応している。
【0041】
一方、各縦線の下側に記載されている「E」、「MG1」、「MG2」、「O」は、それぞれ遊星歯車装置Pの各回転要素に接続されているエンジンE、第一モータ・ジェネレータMG1、第二モータ・ジェネレータMG2、出力ギヤOに対応している。また、キャリアcaを示す縦線の下側に記載されている「A」は、当該キャリアcaに接続された動力取出部を介して駆動させられる補機(コンプレッサ25及びオイルポンプ21)に対応している。また、各回転要素の回転速度を示す点に隣接して配置された矢印は、各モードでの走行時に各回転要素に作用するトルクの方向を示しており、上向き矢印が正トルク(正方向のトルク)を表し、下向き矢印が負トルク(負方向のトルク)を表している。そして、「TE」はエンジンEからキャリアcaに伝達されるエンジントルクTE、「T1」は第一モータ・ジェネレータMG1からサンギヤsに伝達されるMG1トルクT1、「T2」は第二モータ・ジェネレータMG2からリングギヤrに伝達されるMG2トルクT2、「TO」は出力ギヤO(車輪W)側からリングギヤrに伝達される走行抵抗TOを示している。また、「TA」は、動力取出部(補機)側からキャリアcaに伝達される、補機を駆動する際の負荷トルクTAを示している。以下、各モードについて、ハイブリッド駆動装置1の動作状態を説明する。
【0042】
2−1.スプリット走行モード
まず、スプリット走行モードでのハイブリッド駆動装置1の動作状態について説明する。このスプリット走行モードでは、制御ユニット41によりクラッチ駆動信号がONとされ、クラッチ12が係合状態となるように制御される。これにより、エンジンEの回転駆動力がエンジン出力軸Eo及び入力軸Iを介して遊星歯車装置Pに入力される。そして、スプリット走行モードでは、エンジンEの回転駆動力が第一モータ・ジェネレータMG1と出力ギヤOとに分配して伝達される。すなわち、このスプリット走行モードでは、遊星歯車装置Pは、エンジンEの回転駆動力を第一モータ・ジェネレータMG1と出力ギヤOとに分配する機能を果たす。図3は、スプリット走行モードにおける遊星歯車装置Pの動作状態を表す速度線図である。この図に示すように、遊星歯車装置Pは、回転速度の順で中間となるキャリアcaがエンジンEと一体的に回転する。そして、このキャリアcaの回転が、その回転が回転速度の順で一方端となるサンギヤs、及び回転速度の順で他方端となるリングギヤrに分配される。サンギヤsに分配された回転は第一モータ・ジェネレータMG1に伝達される。リングギヤrに分配された回転駆動力は、出力ギヤO、カウンタ減速機構C、出力用差動歯車装置18、出力軸19を介して車輪Wに伝達される。
【0043】
このスプリット走行モードにおける車両の通常走行時には、図3に示すように、エンジンEは、効率が高く排気ガスの少ない状態に(一般に最適燃費特性に沿うように)維持されるよう制御されつつ、制御ユニット41からの制御指令に応じた正方向のエンジントルクTEを出力し、このエンジントルクTEが入力軸Iを介してキャリアcaに伝達される。一方、第一モータ・ジェネレータMG1は、負方向のMG1トルクT1を出力することにより、エンジントルクTEの反力をサンギヤsに伝達する。すなわち、第一モータ・ジェネレータMG1は、エンジントルクTEの反力を支持する反力受けとして機能し、それによりエンジントルクTEが出力ギヤO側のリングギヤrに分配される。この際、エンジンEの回転速度に対して、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を制御することにより、リングギヤrの回転速度、すなわち出力ギヤOの回転速度が決定される。したがって、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を制御することにより、エンジンEの回転駆動力を無段階に変速して出力ギヤOに伝達する電気的無段変速が実現される。なお、このスプリット走行モードでは、クラッチ12が係合状態となることにより入力軸IがエンジンEに接続され、入力軸Iの端部に連結された駆動プーリ22がエンジンEの回転駆動力により駆動される。
【0044】
スプリット走行モードにおける車両の通常走行時には、第一モータ・ジェネレータMG1は、正回転しつつ負方向のトルクを発生して発電を行う。そして、第二モータ・ジェネレータMG2は、第一モータ・ジェネレータMG1が発電して得た電力を消費して力行し、正方向のMG2トルクT2を出力して出力ギヤOに伝達されるエンジントルクTEを補助する。また、車両の減速時には、第二モータ・ジェネレータMG2は正回転しつつ負方向のトルクを発生して回生制動を行い、発電する。したがって、このスプリット走行モードでは、基本的には、バッテリ31の電力は消費されない。
【0045】
2−2.電動走行モード
次に、電動走行モードでのハイブリッド駆動装置1の動作状態について説明する。この電動走行モードでは、制御ユニット41によりクラッチ駆動信号がOFFとされ、クラッチ12が解放状態となるように制御される。これにより、エンジンEと入力軸Iとが分離される。そして、電動走行モードでは、車両の駆動力源として第二モータ・ジェネレータMG2の回転駆動力のみが車輪Wに伝達される。すなわち、電動走行モードは、基本的にはバッテリ31の電力を消費して第二モータ・ジェネレータMG2の回転駆動力のみにより車両を走行させるモードである。この電動走行モードでは、第二モータ・ジェネレータMG2は、車速及びアクセル開度等に基づいて決まる車両要求トルクTC(図2を参照)に応じて、適切な回転速度及びMG2トルクT2を出力するように制御される。すなわち、第二モータ・ジェネレータMG2は、車両を加速又は巡航させる方向の駆動力が要求されている場合には、出力ギヤOに負方向に作用する走行抵抗に相当する走行トルクTOに抗して車両を加速させるべく、正方向に回転しながら力行して正方向のMG2トルクT2を出力する。一方、第二モータ・ジェネレータMG2は、車両を減速させる方向の駆動力が要求されている場合には、出力ギヤOに正方向に作用する車両の慣性力に相当する走行トルクTOに抗して車両を減速させるべく、正方向に回転しながら回生(発電)して負方向のMG2トルクT2を出力する。なお、車両を後進させる際にもこの電動走行モードが用いられ、この場合、第二モータ・ジェネレータMG2の回転方向及びMG2トルクT2の向きを上記とは反対方向とする。
【0046】
上記のとおり、電動走行モードでは、クラッチ12が解放状態となり、これによりエンジンEと遊星歯車装置Pのキャリアcaとの間が非接続状態となる。そのため、図4においては、キャリアcaを示す縦線の下側にはエンジンEに対応する「E」が記載されておらず、補機を駆動するための動力取出部に対応する「A」のみが記載されている。そして、このキャリアcaは、車速に比例して決まるリングギヤrの回転速度と、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度に等しくなるサンギヤsの回転速度と、に基づいて決まる回転速度で回転することになる。したがって、車速に応じて第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を制御することにより、遊星歯車装置Pを介して入力軸Iの回転速度を制御することができる。
【0047】
本実施形態においては、電動走行モード時であってエンジンEの停止中には、制御ユニット41の第一モータ・ジェネレータ制御部43(図2を参照)が、車速に応じて第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を制御することにより、動力取出部に接続される補機(コンプレッサ25及びオイルポンプ21)が必要とする回転速度で、キャリアca及び入力軸Iが回転させられる。言い換えれば、制御ユニット41の第一モータ・ジェネレータ制御部43は、補機が必要とする回転速度でキャリアca及び入力軸Iを回転させるように、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を制御して第一モータ・ジェネレータMG1を駆動させる。図4における破線の線図は、第一モータ・ジェネレータMG1が駆動していない状態のものを示している。この状態では、第一モータ・ジェネレータMG1は、入力軸Iの回転速度が略零となるように車速に応じて定まる回転速度で回転しつつ、回転駆動力を出力していない。この状態から、実線の線図に示す状態となるように、正方向のMG1トルクをフィードバック制御しながら上昇させていくことにより、補機が必要とする回転速度でキャリアca及び入力軸Iを回転させる。これにより、エンジンEが停止している時であっても、第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力により入力軸Iを回転させ、補機としてのコンプレッサ25及びオイルポンプ21を駆動することができる。補機が必要とする回転速度の決定方法については後述する。
【0048】
2−3.走行モードの切り替え
上記のとおり、電動走行モードでは、制御ユニット41によりクラッチ駆動信号がOFFとされてクラッチ12が解放状態となるとともに、エンジンEは停止されている。この電動走行モードでの走行時(エンジンEの停止中)において、クラッチ12を解放状態から係合状態へ切り替え、第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力によりエンジンEを始動させることにより、電動走行モードからスプリット走行モードへの切り替えがなされる。ここで、本実施形態においては、クラッチ12として油圧作動式の多板式クラッチが用いられている。また本例では、このクラッチ12はいわゆるノーマリーオープン型のクラッチとされており、油圧の非供給時、すなわち油圧が供給されていない状態では解放状態に保持されるとともに、油圧の供給時、すなわち油圧が十分に供給されている状態では係合状態が実現される。クラッチ12を解放状態から係合状態へと切り替えるに際しては、第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力により入力軸Iを介して駆動されるオイルポンプ21が油を吐出し、供給された油圧によりクラッチ12が作動される。これにより、入力軸Iとエンジン出力軸Eoとが一体回転するようになり、第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力によりエンジンEが回転させられる。なお、クラッチ12を係合させる際の詳細な制御方法については後述する。その後、エンジンEの回転速度が所定の回転速度Weとなった時点で燃料噴射を開始するとともに点火してエンジンEを始動させることにより、電動走行モードからスプリット走行モードへ切り替えられる。
【0049】
一方、スプリット走行モードでは、制御ユニット41によりクラッチ駆動信号がONとされてクラッチ12が係合状態となるとともに、エンジンE、エンジン出力軸Eo及び入力軸Iは一体回転している。このスプリット走行モードでの走行時において、クラッチ12を係合状態から解放状態へ切り替え、車両の走行に必要となる車両要求トルクTCを第二モータ・ジェネレータMG2に出力させることにより、スプリット走行モードから電動走行モードへの切り替えがなされる。ここで、上記のとおり、本例ではクラッチ12としてノーマリーオープン型のクラッチが用いられている。よって、クラッチ12を係合状態から解放状態へ切り替えるに際しては、図示しない油圧制御装置を介して油圧の供給を停止するように制御する必要がない。つまり、燃料噴射を停止してエンジンEを停止させると、入力軸Iに接続されたオイルポンプ21の回転速度が徐々に低下し、それにしたがって供給される油圧レベルも徐々に低下するので、エンジンEを停止させるだけで自動的にクラッチ12が解放状態となる。なお、通常通り、油圧制御装置を介して油圧の供給を制御することにより、クラッチ12を係合状態から解放状態へ切り替える構成としても良い。このようにして、スプリット走行モードから電動走行モードへ切り替えられる。
【0050】
3.システム構成
次に、ハイブリッド駆動装置1の電気的なシステム構成について説明する。図2に示すように、このハイブリッド駆動装置1では、第一モータ・ジェネレータMG1を駆動制御するための第一インバータ32が、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ステータSt1のコイルに電気的に接続されている。また、第二モータ・ジェネレータMG2を駆動制御するための第二インバータ33が、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ステータSt2のコイルに電気的に接続されている。第一インバータ32と第二インバータ33とは、互いに電気的に接続されるとともに、蓄電装置としてのバッテリ31に電気的に接続されている。そして、第一インバータ32は、バッテリ31から供給される直流電力、又は第二モータ・ジェネレータMG2で発電されて第二インバータ33で直流に変換されて供給される直流電力を、交流電力に変換して第一モータ・ジェネレータMG1に供給する。また、第一インバータ32は、第一モータ・ジェネレータMG1で発電された電力を交流から直流に変換してバッテリ31又は第二インバータ33に供給する。同様に、第二インバータ33は、バッテリ31から供給される直流電力、又は第一モータ・ジェネレータMG1で発電されて第一インバータ32で直流に変換されて供給される直流電力を、交流電力に変換して第二モータ・ジェネレータMG2に供給する。また、第二インバータ33は、第二モータ・ジェネレータMG2で発電された電力を交流から直流に変換してバッテリ31又は第一インバータ32に供給する。
【0051】
第一インバータ32は、制御ユニット41の第一モータ・ジェネレータ制御部42からの制御信号に従い、第一モータ・ジェネレータMG1に供給する電流値、交流波形の周波数や位相等を制御する。第二インバータ33は、制御ユニット41の第二モータ・ジェネレータ制御部43からの制御信号に従い、第二モータ・ジェネレータMG2に供給する電流値、交流波形の周波数や位相等を制御する。これにより、第一インバータ32及び第二インバータ33は、制御ユニット41からの制御信号に応じた出力トルク及び回転数となるように、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2を駆動制御する。
【0052】
バッテリ31は、第一インバータ32及び第二インバータ33に電気的に接続されている。バッテリ31は、例えば、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等で構成される。そして、バッテリ31は、直流電力を第一インバータ32及び第二インバータ33に供給するとともに、第一モータ・ジェネレータMG1又は第二モータ・ジェネレータMG2により発電され、第一インバータ32又は第二インバータ33を介して供給される直流電力により充電される。なお、バッテリ31は蓄電装置の一例であり、キャパシタなどの他の蓄電装置を用い、或いは複数種類の蓄電装置を併用することも可能である。
【0053】
また、ハイブリッド駆動装置1は、第一モータ・ジェネレータ回転速度センサ(以下「MG1回転速度センサ」という)Se1、第二モータ・ジェネレータ回転速度センサ(以下「MG2回転速度センサ」という)Se2、エンジン回転速度センサSe3、車速センサSe4、第一モータ・ジェネレータ温度センサ(以下「MG1温度センサ」という)Se5、第二モータ・ジェネレータ温度センサ(以下「MG2温度センサ」という)Se6、及び入力軸回転速度センサSe7を備えている。MG1回転速度センサSe1は、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1の回転速度N1を検出するセンサである。MG2回転速度センサSe2は、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2の回転速度N2を検出するセンサである。エンジン回転速度センサSe3は、エンジン出力軸Eoの回転速度NEを検出するセンサである。車速センサSe4は、車輪Wの回転速度すなわち車速を検出するセンサである。MG1温度センサSe5は、第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1及び第一ステータSt1の温度を検出するセンサである。MG2温度センサSe6は、第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2及び第二ステータSt2の温度を検出するセンサである。入力軸回転速度センサSe7は、オイルポンプ21や駆動プーリ22に接続され、これらと一体的に回転する入力軸Iの回転速度を検出するセンサである。これらの各センサSe1〜Se7による検出結果は、制御ユニット41へ出力される。
【0054】
4.制御ユニットの構成
制御ユニット41は、ハイブリッド駆動装置1の各部の動作制御を行う。本実施形態においては、制御ユニット41は、エンジン制御部42、第一モータ・ジェネレータ制御部43、第二モータ・ジェネレータ制御部44、補機回転速度決定部45、トルク補正部46、エアコン要求能力取得部47、及びエンジン始動制御部48を備えている。この制御ユニット41は、一又は二以上の演算処理装置、及びソフトウェア(プログラム)やデータ等を格納するためのRAMやROM等の記憶媒体等を備えて構成されている。そして、制御ユニット41の各機能部は、前記演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方により実装されて構成されている。また、上記のとおり、制御ユニット41には、各センサSe1〜Se7による検出結果の情報が入力される構成となっている。
【0055】
本実施形態においては、制御ユニット41には、車両側から車両要求トルクTC及び車両情報ICが入力される構成となっている。ここで、車両要求トルクTCは、運転者の操作に応じて適切に車両を走行させるために車輪Wに伝達することが要求されるトルクである。したがって、この車両要求トルクTCは、車両のアクセルペダル及びブレーキペダルの操作量と車速センサSe4により検出される車速とに応じて、予め定められたマップ等に従って決定される。本実施形態においては、この車両要求トルクTCは、ハイブリッド駆動装置1の出力部材としての出力ギヤOに伝達されるべきトルクとして決定される。車両情報ICは、車両の状態を示す各種情報であり、例えば、自動変速機のセレクトレバーにより選択されているレンジ(「P」、「D」、「R」等の各レンジ)、駐車ブレーキの作動状態、常用ブレーキの作動状態等を示す情報が含まれる。
【0056】
エンジン制御部42は、エンジン動作点を決定し、当該エンジン動作点でエンジンEを動作させるように制御する処理を行う。ここで、エンジン動作点は、エンジンEの制御目標点を表す制御指令値であって、回転速度及びトルクにより定まる。より詳細には、エンジン動作点は、車両要求出力(車両要求トルクTC及びエンジン回転速度に基づいて定まる)と最適燃費とを考慮して決定されるエンジンEの制御目標点を表す指令値であって、エンジン回転速度指令値とエンジントルク指令値により定まる。そして、エンジン制御部42は、エンジン動作点に示されるトルク及び回転速度で動作するようにエンジンEを制御する。
【0057】
第一モータ・ジェネレータ制御部43は、第一モータ・ジェネレータ動作点を決定し、当該第一モータ・ジェネレータ動作点で第一モータ・ジェネレータMG1を動作させるように制御する。ここで、第一モータ・ジェネレータ動作点は、第一モータ・ジェネレータMG1の制御目標点を表す制御指令値であって、回転速度及びトルクにより定まる。より詳細には、MG1動作点は、スプリット走行モード時においては、上記のように決定されたエンジン動作点と、動力分配用の遊星歯車装置Pより車輪W側に接続された回転部材(ここでは、リングギヤr)の回転速度と、に基づいて決定される第一モータ・ジェネレータMG1の制御目標点を表す指令値であって、MG1回転速度指令値とMG1トルク指令値とにより定まる。また、電動走行時においては、補機回転速度決定部45により決定される補機が必要とする回転速度と、動力分配用の遊星歯車装置Pより車輪W側に接続された回転部材(ここでは、リングギヤr)の回転速度と、に基づいて決定される第一モータ・ジェネレータMG1の制御目標点を表す指令値であって、MG1回転速度指令値とMG1トルク指令値とにより定まる。なお、リングギヤrの回転速度は、車速センサSe4により検出される出力軸19の回転速度、又はMG2回転速度センサSe2により検出される第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度に基づいて求められる。そして、第一モータ・ジェネレータ制御部43は、決定したMG1動作点に示されるトルク及び回転速度で第一モータ・ジェネレータMG1を動作させるように第一インバータ32を制御する。
【0058】
補機回転速度決定部45は、電動走行時や停車時等、エンジンEが停止している時、補機が必要とする回転速度を、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の温度、出力ギヤOの回転速度、及び車載用エアコンディショナーの要求能力、に基づいて決定する。図5〜図7は、本実施形態においてハイブリッド駆動装置1の内部、或いはハイブリッド駆動装置1を搭載した車両に備えられた、補機としての車載用エアコンディショナーのコンプレッサ25及びオイルポンプ21が必要とする回転速度の決定方法、すなわち、入力軸Iの回転速度指令値NIの決定方法を説明するための図である。
【0059】
図5は、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の温度と入力軸Iの第一回転速度指令値Ntとの関係を示すマップである。このマップから理解できるように、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の温度に基づく第一回転速度指令値Ntは、T0以上の温度領域では第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の温度が高くなるほど大きくなるように設定される。これは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2が高温となった場合には、これらを冷却するべく、その発熱量に応じてオイルポンプ21による油の吐出量を増大させるため、第一回転速度指令値Ntを大きくする必要があるからである。ただし、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の温度が所定温度T0以下の温度領域では、第一回転速度指令値Ntは「0(零)」とされる。これは、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の温度が所定温度T0以下の場合には、これらを冷却する必要がないからである。本例では、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の温度うち、いずれか高い方に基づいて第一回転速度指令値Ntが決定される。補機回転速度決定部45は、MG1温度センサSe5及びMG2温度センサSe6による検出結果の情報を受け取り、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の温度と、上記マップとに基づき、第一回転速度指令値Ntを取得する。
【0060】
図6は、車速と入力軸Iの回転速度指令値との関係を示すマップである。このマップから理解できるように、車速に基づく第二回転速度指令値Nvは、車速がV1以上の速度領域では車速が速くなるほど大きくなるように設定される。これは、車速が高速となった場合には、ハイブリッド駆動装置1の内部における各軸の軸受及びギヤ等の機械要素の潤滑要求が高くなるとともにこれらを冷却する必要も高くなるので、車速に応じてオイルポンプ21による油の吐出量を増大させるため、第二回転速度指令値Nvを大きくする必要があるからである。ただし、車速がV0以上V1以下の速度領域では第二回転速度指令値Nvは一定値に保たれる。これは、車速がV0以上V1以下の場合には、一定量の油の吐出が確保されれば、潤滑要求及び冷却要求を満たすことができるからである。また、車速がV0以下の速度領域では第二回転速度指令値Nvは「0(零)」とされる。これは、車速がV0以下の場合には、潤滑及び冷却の必要がないからである。補機回転速度決定部45は、車速センサSe4による検出結果の情報を受け取り、車速と上記マップとに基づき、第二回転速度指令値Nvを取得する。
【0061】
図7は、車載用エアコンディショナーの要求能力と入力軸Iの回転速度指令値との関係を示すマップである。ここで、車載用エアコンディショナーの要求能力は、設定温度と車内温度との差、及び設定風量に基づいて定まる。図7のマップにおいては、横軸に設定風量(本例では、OFF、Lo、Hi)をとるとともに、設定温度と車内温度との差の程度に応じた複数の階段状の折れ線(上側にあるものほど温度差が大きい)が示されている。このマップから理解できるように、車載用エアコンディショナーの要求能力に基づく第三回転速度指令値Naは、車載用エアコンディショナーの設定温度と車内温度との差が大きいほど、また、設定風量が大きいほど大きくなるように設定される。補機回転速度決定部45は、エアコン要求能力取得部47により、車載用エアコンディショナーの図示しない制御パネルから得られる設定温度と設定風量とに関する情報、及び車内に設置された図示しない温度センサから得られる車内温度に関する情報を受け取り、設定温度と車内温度との差、及び設定風量と上記マップとに基づき、第三回転速度指令値Naを取得する。なお、図5に示したこれらのマップは一例であり、図示したマップ以外のマップに基づいて各回転速度指令値Nt、Nv、Naを取得しても良い。これらのマップは、制御装置41と一体的に、或いは制御装置41とは別に設けられた図示しないメモリに記憶されている。なお、このようなマップを用いずに、予め求められて記憶された関係式に基づいて各回転速度指令値Nt、Nv、Naを取得する構成としても良い。
【0062】
補機回転速度決定部45は、以上のようにして取得した3つの回転速度指令値Nt、Nv、Naのうちの最大値を、補機が必要とする回転速度に対応する回転速度指令値NIとして決定する。補機回転速度決定部45により決定された回転速度指令値NIは第一モータ・ジェネレータ制御部43へ出力され、この回転速度指令値NIと車速に比例して自動的に定まる遊星歯車装置Pのリングギヤrの回転速度とに基づいて、MG1回転速度指令値が決定される。そして、第一モータ・ジェネレータ制御部43は、決定したMG1回転速度指令値にしたがって第一モータ・ジェネレータMG1を動作させるように第一インバータ32を制御する。ここで、後述するように第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度は常に車速に比例して自動的に定まるので、遊星歯車装置Pのリングギヤrの回転速度は、第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度に比例して自動的に定まることになる。よって、この構成では、制御ユニット41は、補機を駆動するためのキャリアca及び入力軸Iの回転速度と第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度(或いは車速)とに基づいて、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を制御することになる。
【0063】
以上のように、電動走行時等、エンジンEが停止している場合に、3つの回転速度指令値Nt、Nv、Naのうちの最大値を回転速度指令値NIとして決定し、当該回転速度指令値NIと第二モータ・ジェネレータMG2の回転速度(或いは車速)とに基づいて第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を制御することにより、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2を適切に冷却することができるとともに、ハイブリッド駆動装置1の内部における各軸の軸受及びギヤ等の機械要素を適切に潤滑することができ、さらに、車載用エアコンディショナーを適切に稼働させて、車内を快適に維持することができる。
【0064】
第二モータ・ジェネレータ制御部44は、第二モータ・ジェネレータ動作点を決定し、当該第二モータ・ジェネレータ動作点で第二モータ・ジェネレータMG2を動作させるように制御する。ここで、第二モータ・ジェネレータ動作点は、第二モータ・ジェネレータMG2の制御目標点を表す制御指令値であって、回転速度及びトルクにより定まる。より詳細には、第二モータ・ジェネレータ動作点は、車両要求トルクTCとエンジン動作点と第一モータ・ジェネレータ動作点とに基づいて決定される第二モータ・ジェネレータMG2の制御目標点を表す制御指令値であって、MG2回転速度指令値とMG2トルク指令値とにより定まる。そして、第二モータ・ジェネレータ制御部44は、決定したMG2動作点に示されるトルク及び回転速度で第二モータ・ジェネレータMG2を動作させるように第二インバータ33を制御する。なお、MG2回転速度指令値は車速に常に比例して自動的に決定されるため、第二モータ・ジェネレータMG2は、基本的にMG2動作点のMG2トルク指令値に従ってトルク制御される。
【0065】
トルク補正部46は、第一モータ・ジェネレータMG1を駆動して、コンプレッサ25やオイルポンプ21等の補機を回転させた際に遊星歯車装置Pのリングギヤrから出力ギヤOに伝達されるトルクを打ち消すように第二モータ・ジェネレータMG2の出力トルク(MG2トルク)T2を補正する。上記のとおり、電動走行モード時には、第一モータ・ジェネレータ制御部43が、動力取出部に接続される補機(コンプレッサ25及びオイルポンプ21)が必要とする回転速度でキャリアca及び入力軸Iが回転するように、車速に応じて第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を制御する。このとき、第一モータ・ジェネレータ制御部43は、入力軸回転速度センサSe7により検出される入力軸Iの回転速度が、補機回転速度決定部45により決定された回転速度指令値NIに等しくなるようにフィードバック制御を行なう。そして、MG1トルクT1が所定の大きさとなった時に入力軸Iの回転速度が回転速度指令値NIに等しくなる。その際、MG1トルクT1の大きさは、補機としてのコンプレッサ25やオイルポンプ21を駆動する際の負荷トルクTAに応じて決まる。
【0066】
ここで、補機を駆動する際の負荷トルクTA及びMG1トルクT1は、遊星歯車装置Pのリングギヤr、出力ギヤO、カウンタ減速機構C、及び出力用差動歯車装置18を介して車輪Wに伝達される。そのため、この車輪Wに伝達される負荷トルクTA及びMG1トルクT1に起因して、車両を駆動させるための駆動力に変動が生じる場合がある。また、伝達されるトルクの大きさの分だけMG2トルクT2が相殺されて小さくなってしまい、車両要求トルクTCを満たす駆動力を確保することができなくなってしまう場合がある。そこで、トルク補正部46は、遊星歯車装置Pのリングギヤrから出力ギヤOに伝達され、ひいては車輪Wに伝達されるトルクを相殺して打ち消すようにMG2トルクT2を補正する。より具体的には、出力ギヤOに伝達されるトルクを、負荷トルクTAの大きさ及びそれに対応して決まるMG1トルクT1の大きさと、遊星歯車装置Pのギヤ比λとに基づいて演算して取得し、取得されたトルク値をMG2トルクT2に加算して補正する。このように、遊星歯車装置Pのリングギヤrから出力ギヤOに伝達されるトルクに基づいて、第二モータ・ジェネレータMG2の出力トルク(MG2トルクT2)を補正することにより、車両の駆動力変動が生じることを抑制して走行状態を安定させることができるとともに、車両要求トルクTCを満たす駆動力を適切に確保することができる。
【0067】
エンジン始動制御部48は、電動走行モードからスプリット走行モードへの切り替えに際して、クラッチ12を解放状態から係合状態へ切り替え、第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力によりエンジンEを始動させる制御を行なう。クラッチ12を解放状態から係合状態へと切り替えるに際しては、第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力により入力軸Iを介して駆動されるオイルポンプ21が油を吐出し、供給された油圧によりクラッチ12が作動される。ただし、上記のとおり電動走行モード中はエンジンE及びこれと一体回転するエンジン出力軸Eoは停止しており、一方、入力軸Iは補機としてのコンプレッサ25及びオイルポンプ21を駆動するべく、第一モータ・ジェネレータMG1の回転駆動力により遊星歯車装置Pを介して所定の回転数で回転されている。すなわち、互いに係合することになる2つの回転部材(入力軸I及びエンジン出力軸Eo)の回転速度の差は比較的大きい状態となっている。そのため、油圧を供給することによりクラッチ12を急激に係合させると、係合ショックが発生してしまう。
【0068】
そこで、本実施形態においては、後述するエンジン始動制御部48が、クラッチ12を滑らせながら係合させることにより、エンジンEの回転速度を上昇させてエンジンEを始動させる。つまり、エンジン始動制御部48は、クラッチ12が係合することにより入力軸I(第一モータ・ジェネレータMG1)側からエンジン出力軸Eo(エンジンE)側へ伝達される回転駆動力の大きさが徐々に上昇するように、供給される油圧の大きさを徐々に上昇させる制御信号を図示しない油圧制御装置に対して出力して、クラッチ12を滑らせながら係合させる。これにより、エンジンEの回転速度を徐々に上昇させることができるので、上記の係合ショックの発生が抑制される。その後、エンジンEの回転速度が所定の回転数Weとなった時点で燃料噴射を開始するとともに点火し、エンジンEを始動させる。
【0069】
5.補機駆動制御処理の手順
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1が備える制御ユニットにおいて実行される補機駆動制御処理の手順について、図面を参照して説明する。図8は、補機駆動制御処理の手順を示すフローチャートである。このハイブリッド駆動装置1における補機駆動制御処理は、制御ユニット41の各機能部42〜48を構成するハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実行される。上記の各機能部がプログラムにより構成される場合には、制御ユニット41が有する演算処理装置が、上記の各機能部を構成するプログラムを実行するコンピュータとして動作する。
【0070】
制御ユニット41は、まずエンジンEが停止しているか否かを判定する(ステップ#01)。エンジンEが停止している場合としては、例えば電動走行モードで走行している場合や、車両が停止している場合等が挙げられる。なお、エンジンEが停止しているか否かは、エンジン回転速度センサSe3で検出されるエンジンEの回転速度が所定の回転速度以下であるか否かにより判定される。エンジンEが回転していると判定された場合には(ステップ#01:No)、補機駆動制御処理は終了する。一方、エンジンEが停止していると判定された場合には(ステップ#01:Yes)、制御ユニット41は、MG1温度センサSe5により検出される第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1及び第一ステータSt1の温度、並びにMG2温度センサSe6により検出される第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2及び第二ステータSt2の温度を取得する(ステップ#02)。また、制御ユニット41は、車速センサSe4により検出される車輪Wの回転速度、すなわち車速を取得する(ステップ#03)。また、制御ユニット41は、エアコン要求能力取得部47により車載用エアコンディショナーの要求能力を取得する(ステップ#04)。本例では、設定温度と設定風量とに関する情報が取得される。
【0071】
次に、補機回転速度決定部45は、ステップ#02で取得された第一モータ・ジェネレータMG1の第一ロータRo1及び第一ステータSt1の温度、並びに第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2及び第二ステータSt2の温度に基づき、第一回転速度指令値Ntを取得する(ステップ#05)。また、補機回転速度決定部45は、ステップ#03で取得された車速に基づき、第二回転速度指令値Nvを取得する(ステップ#06)。また、補機回転速度決定部45は、ステップ#04で取得された車載用エアコンディショナーの設定温度と設定風量とに関する情報に基づき、第三回転速度指令値Naを取得する(ステップ#07)。なお、上記のステップ#02〜#07の処理は、少なくともステップ#05よりも前にステップ#02が実行され、ステップ#06よりも前にステップ#03が実行され、さらにステップ#07よりも前にステップ#04が実行される限りは、任意の順序で実行されて良い。次に、補機回転速度決定部45は、ステップ#05〜#07で取得された回転速度指令値Nt、Nv、Naに基づき、これらのうちの最大値を、補機が必要とする回転速度に対応する回転速度指令値NIとして決定する(ステップ#08)。
【0072】
次に、制御ユニット41は、MG2回転速度センサSe2により検出される第二モータ・ジェネレータMG2の第二ロータRo2の回転速度を取得する(ステップ#09)。この第二ロータRo2の回転速度に比例して、出力ギヤOに接続される遊星歯車装置Pのリングギヤrの回転速度が決まる。次に、第一モータ・ジェネレータ制御部43は、補機回転速度決定部45により決定された回転速度指令値NIと、遊星歯車装置Pのリングギヤrの回転速度とに基づいて、MG1回転速度指令値を決定する(ステップ#10)。最後に、第一モータ・ジェネレータ制御部43は、決定したMG1回転速度指令値にしたがって第一モータ・ジェネレータMG1を動作させるように第一インバータ32を制御する(ステップ#11)。以上で、補機駆動制御処理を終了する。
【0073】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態においては、電動走行モードからスプリット走行モードへの切り替えに際して、エンジン始動制御部48が、クラッチ12を滑らせながら係合させることにより、エンジンEの回転速度を上昇させてエンジンEを始動させる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を制御して第一モータ・ジェネレータMG1とエンジンEとを同期させた後(ここでは、回転速度をともに零とする)、エンジンEを始動させることも、本発明の好適な実施形態の一つである。以下では、エンジン始動制御部48によるエンジン始動制御の別実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。なお、この場合には、ハイブリッド駆動装置1は、オイルポンプ21により発生させられた油圧を蓄積することが可能な蓄圧装置として、図示しないアキュムレータ等を備える。
【0074】
図9は、遊星歯車装置Pの動作状態を表す速度線図である。この図において、細実線は電動走行時等のエンジンEの停止中における補機駆動中の動作状態を表し、太破線は電動走行モードからスプリット走行モードへの切替中における遷移状態を表し、太実線はエンジンEが始動する時点における動作状態を表している。また、図10は、電動走行モードからスプリット走行モードへ切り替える際のエンジン始動制御の一例を示すタイミングチャートである。この図には、上段から順に、「入力軸回転速度」、アキュムレータに蓄積される「油圧」、クラッチ12に対する「クラッチ駆動信号」のON又はOFF状態、「エンジン回転速度」、及びエンジンEに対する「燃料噴射信号」のをON又はOFF状態、を表すタイミングチャートを示している。
【0075】
電動走行モードからスプリット走行モードへの切り替えに際しては、まずエンジン始動制御部48は、第一モータ・ジェネレータ制御部43を介して、入力軸Iの回転速度が零となるように第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を制御する。図10に示す時刻t1において、エンジン始動制御部48は、入力軸Iの回転速度指令値NIを零として、図9の速度線図のうち太破線で示す状態となるように第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を低下させる。第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度が低下するにしたがい、入力軸Iの実回転速度も低下する。そして、時刻t2において第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度が零となった後に、クラッチ駆動信号をOFF状態からON状態に切り替える。このとき、入力軸Iの回転速度が零となることによりオイルポンプ21は油を吐出しない状態となるが、アキュムレータに油圧が蓄積されているので、当該アキュムレータに蓄積された油圧によりクラッチ12を係合させることができる。
【0076】
アキュムレータに蓄積された油圧により、係合状態となるのに十分な油圧がクラッチ12に供給されると、時刻t3において、エンジン始動制御部48は、第一モータ・ジェネレータ制御部43を介して、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度を上昇させる。クラッチ12は係合状態となっているので、第一モータ・ジェネレータMG1の回転速度の上昇に伴って、遊星歯車装置Pを介してエンジンEの回転速度も徐々に上昇する。そして、時刻t4において、図9及び図10に示すようにエンジンEの回転速度が所定の回転数Weに達した時に、燃料噴射信号をOFF状態からON状態に切り替えるとともに点火してエンジンEを始動させる。このようなエンジン始動制御によっても、上述したような係合ショックが生じることを抑制することができる。また、上記の実施形態のようにクラッチ12の係合時にスリップ制御を行なう場合と比較して、摩擦板の発熱や摩耗を抑制して、クラッチ12の耐久性を向上させることができるという利点がある。
【0077】
(2)上記の実施形態においては、入力軸Iの回転速度指令値NIが、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の温度に基づく第一回転速度指令値Nt、車速に基づく第二回転速度指令値Nv、及び車載用エアコンディショナーの要求能力に基づく第三回転速度指令値Naのうちの最大値として決定される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばこれらのうちのいずれか一つの回転速度指令値を入力軸Iの回転速度指令値NIとすることや、これらのうちのいずれか二つの回転速度指令値の大きい方を入力軸Iの回転速度指令値NIとすること、或いは、これら以外の条件によって取得される回転速度指令値の候補値をも考慮して入力軸Iの回転速度指令値NIを決定すること等も、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0078】
(3)上記の実施形態においては、動力取出部を介して駆動される補機が、車載用エアコンディショナーのコンプレッサ25及びオイルポンプ21である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、コンプレッサ25やオイルポンプ21以外にも、例えばパワーステアリング用のオイルポンプやエンジンや駆動装置(インバータ等)の冷却水のウォーターポンプ等を補機として、これらをエンジンEの停止中に第一モータ・ジェネレータMG1により駆動することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0079】
(4)上記の実施形態においては、エンジンEの側から、遊星歯車装置P、第一モータ・ジェネレータMG1の順に配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば第一モータ・ジェネレータMG1が遊星歯車装置Pに対してエンジンE側に配置される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0080】
(5)上記の実施形態においては、入力軸Iが遊星歯車装置Pのサンギヤs及び第一モータ・ジェネレータMG1第一ロータRo1の径方向内側を貫通して、第一モータ・ジェネレータMG1に対して遊星歯車装置Pとは反対側まで延出され、入力軸IのエンジンEとは反対側の端部に駆動プーリ25及びオイルポンプ21を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば駆動プーリ25やオイルポンプ21が、入力軸Iの軸方向で出力ギヤOとクラッチ12の間に配置される構成とすること等も、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0081】
(6)上記の実施形態においては、遊星歯車装置Pの3つの回転要素に関して、サンギヤsに第一モータ・ジェネレータMG1が接続され、キャリアcaに入力軸I及び動力取出部が接続され、リングギヤrに出力ギヤO及び第二モータ・ジェネレータMG2が接続されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、遊星歯車装置Pの3つの回転要素に対するこれらの接続関係は、適宜変更することが可能である。
【0082】
(7)上記の実施形態においては、単一のシングルピニオン型の遊星歯車機構により遊星歯車装置Pが構成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば単一のダブルピニオン型の遊星歯車機構により遊星歯車装置Pが構成され、或いは、複数のシングルピニオン型又はダブルピニオン型の遊星歯車機構を組み合わせて遊星歯車装置Pが構成されることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0083】
(8)上記の実施形態においては、差動歯車装置として、サンギヤs、キャリアca、及びリングギヤrを備える遊星歯車装置Pを用いる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば互いに噛合する複数の傘歯車を用いた差動歯車装置等を用いることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、エンジンに接続される入力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、車輪に接続される出力部材と、3つの回転要素を備える差動歯車装置と、を備えたハイブリッド駆動装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】ハイブリッド駆動装置の構成を示すスケルトン図
【図2】ハイブリッド駆動装置のシステム構成を示す模式図
【図3】スプリット走行モードにおける遊星歯車装置の動作状態を表す速度線図
【図4】電動走行モードにおける遊星歯車装置の動作状態を表す速度線図
【図5】第一回転速度指令値の決定方法を説明するための図
【図6】第二回転速度指令値の決定方法を説明するための図
【図7】第三回転速度指令値の決定方法を説明するための図
【図8】補機駆動制御の手順を表すフローチャート
【図9】エンジン始動制御の別実施形態における遊星歯車装置の動作状態を表す速度線図
【図10】エンジン始動制御の別実施形態におけるタイミングチャート
【符号の説明】
【0086】
1 ハイブリッド駆動装置
12 クラッチ(係合要素)
21 オイルポンプ(補機)
22 駆動プーリ(動力取出部)
25 コンプレッサ(補機)
41 制御ユニット(制御装置)
48 エンジン始動制御部
E エンジン
I 入力軸(入力部材)
O 出力ギヤ(出力部材)
MG1 第一モータ・ジェネレータ(第一回転電機)
MG2 第二モータ・ジェネレータ(第二回転電機)
P 遊星歯車装置(差動歯車装置)
s サンギヤ(第一回転要素)
ca キャリア(第二回転要素)
r リングギヤ(第三回転要素)
W 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに接続される入力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、車輪に接続される出力部材と、
前記第一回転電機に接続される第一回転要素と、前記入力部材に接続される第二回転要素と、前記出力部材及び前記第二回転電機に接続される第三回転要素と、の3つの回転要素を有する差動歯車装置と、
前記入力部材と前記エンジンとを選択的に接続する係合要素と、
前記第二回転要素に接続された、補機を駆動するための動力を取り出し可能な動力取出部と、
前記エンジンの停止中に、前記係合要素を解放状態として、前記補機が必要とする回転速度で前記第二回転要素を回転させるように前記第一回転電機を駆動する制御装置と、
を備えたハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第一回転電機を駆動して前記補機を回転させた際に前記第三回転要素から前記出力部材に伝達されるトルクを打ち消すように前記第二回転電機の出力トルクを補正する請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記補機として、車載用エアコンディショナーのコンプレッサを備えた請求項1又は2に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記補機として、油を吐出するオイルポンプをさらに備え、
前記制御装置は、前記第一回転電機及び前記第二回転電機の一方又は双方の温度、前記出力部材の回転速度、及び前記車載用エアコンディショナーの要求能力、の一つ以上に基づいて、前記エンジンの停止中における前記第二回転要素の回転速度を決定する請求項3に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記補機を駆動するための前記第二回転要素の回転速度と前記第二回転電機の回転速度とに基づいて、前記第一回転電機の回転速度を制御する請求項4に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項6】
前記係合要素は、油圧作動式の係合要素であり、油圧の非供給時には解放状態に保持されるとともに、油圧の供給時に係合状態が実現される請求項1から5のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記エンジンの停止中に、前記係合要素を解放状態から係合状態へ切り替え、前記第一回転電機の回転駆動力により前記エンジンを始動させる請求項6に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項8】
前記補機として、油を吐出するオイルポンプを備え、
前記制御装置は、前記係合要素を滑らせながら係合させることにより、前記エンジンの回転速度を上昇させて前記エンジンを始動させる請求項7に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項9】
前記補機として、油を吐出するオイルポンプを備えるとともに、油圧を蓄積可能な蓄圧装置を備え、
前記制御装置は、前記入力部材の回転速度が零となるように前記第一回転電機の回転速度を制御した後、前記蓄圧装置に蓄積された油圧により前記係合要素を係合させ、その後前記第一回転電機の回転速度を上昇させることにより前記エンジンの回転速度を上昇させて前記エンジンを始動させる請求項7に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項10】
前記エンジンの側から、前記差動歯車装置、前記第一回転電機の順に配置され、
前記入力部材が、前記差動歯車装置及び前記第一回転電機の径方向内側を貫通して、前記第一回転電機に対して前記差動歯車装置とは反対側まで延出され、
前記入力軸の前記第一回転電機に対して前記エンジンとは反対側の部分に、前記動力取出部を備えた請求項1から9のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−76678(P2010−76678A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249212(P2008−249212)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】