説明

パターン形成方法、デバイスおよび電子機器

【課題】幅が細く、かつ厚さが均一な断面形状を有するパターン形成方法、デバイスおよび電子機器を提供する。
【解決手段】本発明のパターン形成方法は、基板を所定の温度に加熱する第1の工程と、基板を所定の温度に保持しつつ、パターン形成材料を分散または溶解させた液体材料を基板上に滴下し、乾燥させる第2の工程と、液体材料を所定の温度の基板に滴下させたときの蒸発速度よりも蒸発速度を遅くさせる第3の工程と、液体材料が乾燥してなる乾燥体上に、液体材料を滴下する第4の工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成材料を分散または溶解させた液体材料を用いたパターン形成方法、デバイスおよび電子機器に関し、特に、幅が細く、かつ厚さが均一なパターン形成方法、デバイスおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線基板の配線パターン製造法としては、フォトリソグラフィー法、転写法、マスク印刷法、およびめっき等の技術が用いられる。近時、導電性微粒子を分散させた導電微粒子ペーストをインクジェット法により直接印刷する手法が注目されている。
しかしながら、インクジェット法によって吐出できるインクは低粘度で広がりやすく、細線パターンを描画することは困難であった。また、インクの乾燥後の形状は、液の縁部と中央部での蒸発速度の不均一によるコーヒーステイン現象が起こり、縁部に粒子が堆積し、中央部との膜厚不均一が生じるという問題点がある。そこで、膜厚不均一を抑制するための製膜方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1は、膜形成成分を含有した液状体からなる液滴を基板上に吐出して膜パターンを形成する吐出工程を有する製膜方法であって、この基板上に吐出された液状体の膜形成成分が膜パターンの縁部に移動するように膜パターンを乾燥させる乾燥工程と、膜形成成分の移動により突出した縁部の間に液滴を吐出する第2吐出工程とを有するものである。このように、特許文献1においては、液状体からなる液滴を吐出して配線パターンを形成した後、コーヒーステイン現象を促進する乾燥工程を設け、乾燥させた液滴に意図的に高低差を造り、凹状として、その内側に再び液を吐出することで、配線パターンの平坦化を実現できるとしている。
【0004】
【特許文献1】特許第4042460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の製膜方法においては、液滴が乾燥してなる凹状の内側に、更に液滴を吐出するものの、このときの基板などの温度が高い場合には、内側に吐出された液滴が乾燥したとき、再度凹状になってしまう。このため、形成される配線パターンの断面形状については、厚さが不均一になるという問題点がある。配線パターンの厚さが不均一であると、電流密度の不均一による断線の可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、幅が細く、かつ厚さが均一な断面形状を有するパターン形成方法、デバイスおよび電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、基板を所定の温度に加熱する第1の工程と、前記基板を所定の温度に保持しつつ、パターン形成材料を分散または溶解させた液体材料を前記基板上に滴下し、乾燥させる第2の工程と、前記液体材料を前記所定の温度の基板に滴下させたときの蒸発速度よりも蒸発速度を遅くさせる第3の工程と、前記液体材料が乾燥してなる乾燥体上に、前記液体材料を滴下する第4の工程とを有することを特徴とするパターン形成方法を提供するものである。
【0008】
本発明において、前記蒸発速度を遅くさせる第3の工程は、前記基板の温度を前記第2の工程よりも低い温度に下げる工程を備えることが好ましい。
また、本発明において、前前記蒸発速度を遅くさせる第3の工程は、前記乾燥体の湿度を上昇させる工程を備えることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明において、前記第2の工程における液体材料の滴下量は、前記第4の工程における液体材料の滴下量と異なることが好ましい。
さらにまた、本発明において、前記第2の工程における液体材料の滴下密度は、前記第4の工程における液体材料の滴下密度と異なることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、前記液体材料は、インクジェット方式、またはディスペンサ方式の吐出手段により滴下されることが好ましい。
また、本発明において、前記パターン形成材料は、金属、前記金属の酸化物または合金の微粒子であることが好ましい。
また、本発明において、前記金属は、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウムまたはスズであることが好ましい。
【0011】
また、本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様のパターン形成方法を用いて形成された部分を有することを特徴とするデバイスを提供するものである。
前記部分は、例えば、配線パターンである。
【0012】
また、本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様のデバイスを有することを特徴とする電子機器を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパターン形成方法によれば、幅が細く、かつ厚さが均一な断面形状を有するパターンを形成することができる。このように、配線パターンを細くすることにより、高密度な配線が可能になり、さらには、配線パターンの厚さが均一であるため、電流密度が均一になり、断線の可能性も抑制される。
本発明のデバイスによれば、デバイスの小型化や薄膜化を可能にし、かつ断線や短絡等の不良が生じにくい。
本発明の電子機器によれば、電子機器の小型化や薄膜化を可能にし、かつ断線や短絡等の不良が生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のパターン形成方法、デバイスおよび電子機器を詳細に説明する。
本発明は、基板を加熱し、この加熱された状態の基板上に、パターン形成材料を分散または溶解させた液体材料を滴下して、乾燥させる。そして、液体材料を基板に滴下させたとき、蒸発速度が加熱された基板に液体材料を滴下させたときよりも遅くさせる。そして、液体材料が乾燥してなる乾燥体上に、さらに、液体材料を滴下することにより、パターンを形成するものである。
【0015】
本発明は、以下に示す知見に基づいてなされたものであり、まず、この知見について説明する。
ここで、図1は、縦軸に線幅をとり、横軸に基板温度をとって、基板上の乾燥体の線幅の基板温度の依存性を示すグラフである。
本発明者は、まず、液体材料を基板上に滴下したときの液体材料の濡れ広がり性について調べた。この結果、図1に示すように、基板温度が高い程、溶媒の蒸発が促進され線幅が細くなることが分かった。基板温度が高いほど、広がり抑制の効果がある。
図1に示すプロットのうち、基板温度25℃、基板温度60℃の基板に液体材料を滴下し、乾燥させて乾燥体とした後の断面形状を測定した。その結果を図2(a)、(b)に示す。
【0016】
図2(a)は、横軸に幅方向の距離をとり、縦軸に高さをとって、基板温度60℃で液体材料を滴下したときの乾燥体の断面プロファイルであり、(b)は、横軸に幅方向の距離をとり、縦軸に高さをとって、基板温度25℃で液体材料を滴下したときの乾燥体の断面プロファイルである。
図2(a)、(b)に示すように、基板温度が高い程、溶媒の対流が促進され、乾燥体における断面の高低差は大きくなり、幅方向の端部が高くなり、断面形状が略凹状になった。
このような温度域のままで、例えば、図2(a)に示す断面形状を有する乾燥体に、再度、液体材料を滴下した。すなわち、基板温度が60℃のままで、乾燥体に、再度液体材料を滴下し、乾燥させた。
この場合、図3(a)に示すように、乾燥体の凹部に更に凹部が形成され、断面形状が矩形にはらならない。
次に、基板温度25℃で液体材料を滴下したときの乾燥体(図2(b))に、基板温度25℃のままで、再度、液体材料を滴下し、乾燥させた。この場合、図3(b)に示すように、凹部に更に凹部が形成されることなく、断面形状が矩形状に近づくことが分かった。
このように、基板温度一定のままで、再度、液体材料を滴下した場合、基板温度が高く、線幅の細いものほど、再度滴下した後の断面形状が矩形から離れてしまうことを本発明者は見出した。
【0017】
さらに、鋭意検討した結果、再度、液体材料を滴下した場合、蒸発量により、再度滴下した後の断面形状が矩形から離れてしまうことを本発明者は見出した。
そこで、再度滴下する液体材料の蒸発量を調整するために、基板温度以外に、液体材料を滴下する周囲の湿度を調節することにより、再度滴下した後の断面形状を矩形状に近づけることができることが分かった。
本発明においては、初めに液体材料を滴下する温度よりも低い温度で、次に、液体材料を滴下することにより、次に滴下する液体材料が乾燥したときに生じる高低差を軽減し、より矩形に近い断面を有するパターンを形成することができる。
さらには、本発明においては、初めに液体材料を滴下する温度よりも、高い湿度の環境で、次に、液体材料を滴下することにより、次に滴下する液体材料が乾燥しにくくなり、乾燥により生じる高低差を軽減し、より矩形に近い断面を有するパターンを形成することができる。
【0018】
なお、上記本発明の知見を得るためにした実験(図1〜図3(a)、(b)参照)は、いずれも、液体材料の滴下には、インクジェットヘッドを用いた。このインクジェットヘッドには、FUJIFILM DIMATIX製 DMP2831用ヘッド DMC−11610(製品型番)を用いた。また、液体材料には、ハリマ化成製NPS−J(製品名)を用い、基板には、石英ガラスを用いた。
形成条件は、吐出周波数を1.7kHzとし、打滴ピッチを60μmとし、吐出速度を10m/秒とし、ヘッドと基板との距離を0.5mmとした。
また、図1に示す板上の乾燥体の線幅、図2(a)、(b)および図3(a)、(b)に示す断面プロファイルは、キーエンス製 超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9510を用いて測定した。
【0019】
次に、本実施形態のパターン形成方法について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法に用いられるパターン形成装置の一例を示す模式図である。
図4に示すパターン形成装置10は、1対のガイド12a、12bと、ステージ14と、駆動部16と、ヒータ18と、冷却ユニット20と、温度調節部22と、吐出部(吐出手段)24と、制御部26とを有する。
制御部26は、吐出部24、駆動部16および温度調節部22に接続されており、これらを制御するものである。
【0020】
パターン形成装置10においては、長尺のガイド12a、12bが所定の間隔を設けて配置されている。このガイド12a、12bには、ガイド12a、12bの長手方向(以下、X方向という)に移動可能にステージ14が設けられている。
ガイド12a、12bの間にはヒータ18が設けられており、このヒータ18とX方向において所定の間隔をあけて、冷却ユニット20が設けられている。
ガイド12a、12bの上方には、吐出部20が、ヒータ18と冷却ユニット20との間の間隔に整合するように配置されている。このガイド12a、12bには、例えば、直動ガイドが用いられる。
【0021】
ステージ14は、X方向に移動可能なようにガイド12a、12bに設けられるものであり、ステージ14の表面14aには、パターンが形成される基板30が載置される。
このステージ14には、X方向に移動可能な移動機構(図示せず)が設けられている。この移動機構には、駆動部16が設けられており、この駆動部16を介してステージ14はX方向に移動させられる。制御部26により、駆動部16を介してステージ14が移動される。
駆動部16は、直動ガイド上のものを動かすことができるものであれば、その構成は、特に限定されるものではない。
本実施形態においては、吐出部24から、後述するように基板30の表面30aに所定のパターン状にインクが吐出される。このため、駆動部16は、パターンを形成することができる移動分解能を有する。
【0022】
ヒータ18は、例えば、カーボンヒータまたはシリコンヒータで構成されるものである。このヒータ18は、温度調節部22に接続されており、この温度調節部22により、ヒータ18の温度が調節される。
ヒータ18上にステージ14が配置されて、ステージ14とともに基板30が、所定の温度に加熱され、その温度に保持される。
【0023】
冷却ユニット20は、例えば、ペルチェ素子により構成されるものか、または冷却ファンにより構成されるものである。
この冷却ユニット20は、温度調節部22に接続されており、この温度調節部22により、冷却ユニット20の温度が調節される。また、冷却ユニット20が冷却ファンを有する場合、冷却ファンの回転数などが調節される。
冷却ユニット20上にステージ14が配置されて、ステージ14とともに基板30が、所定の温度に冷却され、その温度に保持される。
本実施形態においては、制御部26により、ヒータ18および冷却ユニット20の温度が温度調節部22を介して調節される。これにより、基板30の温度が所定の温度にされる。
【0024】
吐出部24は、パターン形成材料を分散または溶解させた液体材料を、基板30の表面30aに、所定のパターン状に滴下するものであり、滴下位置を調節するための位置決め機構(図示せず)が設けられている。
【0025】
この吐出部24は、パターン形成材料を分散または溶解させた液体材料を滴下することができれば、その構成は、特に限定されるものではない。この吐出部24には、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。インクジェットヘッドを用いた場合、吐出する液体材料の量、液体材料の吐出周波数、液体材料の着弾位置が正確に制御可能である。
インクジェットヘッドとしては、例えば、圧電方式、サーマル方式、静電アクチュエータ方式、および静電吸引方式等の種々の方式のインクジェットヘッドを用いることができる。
また、吐出部24は、ディスペンサでもよい。このディスペンサは、インクジェットよりも吐出量が多く、より大きなパターンを形成することができる。
【0026】
また、液体材料のパターン形成材料は、金属もしくはその金属の酸化物または合金の微粒子であることが好ましい。その金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウムまたはスズなどである。また、金属もしくはその金属の酸化物または合金の微粒子の粒子径は、10nm以下であることが好ましい。
【0027】
液体材料のパターン形成材料を、上記金属またはその金属の酸化物及び合金の微粒子とすることにより、加熱焼成処理を施すと導電性が得られる。
【0028】
本発明においては、液体材料のパターン形成材料は、導電性高分子材料等の他の導電性を有する材料を用いてもよい。
パターン形成材料を分散または溶解させた液体材料は、例えば、ハリマ化成製NSP−J(商品名)を用いることができる。
パターン形成材料を分散または溶解させる分散媒または溶媒には、例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、更にプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を挙げることができる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用のし易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、更に好ましい分散媒または溶媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。これらの分散媒または溶媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用することができる。
【0029】
次に、パターン形成装置10を用いて、パターン形成方法について説明する。
本実施形態において、基板30には、ガラス基板、セラミック基板、プラスチック基板など種々の材質で形成された板状部材を用いることができる。
また、基板30は可撓性を有するフィルム材、すなわち、湾曲可能なフィルム材でも良い。この場合、基板30には、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリシクロオレフィンフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニールフィルム、メタクリル−スチレン樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、シリコーン樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルムなどの各種プラスチックフィルムを用いることができる。
【0030】
本実施形態においては、液体材料として、例えば、金属の微粒子を溶媒中に分散させた金属微粒子分散インク40(以下、単にインク40という)を用いて、このインク40を吐出部24から基板30に対して吐出して、例えば、配線パターンを形成する。
【0031】
図5(a)〜(e)は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法を工程順に示す模式図である。なお、図5(a)〜(e)においては、基板30を示し、パターン形成装置10の構成についての図示は省略する。
【0032】
まず、図4に示すように、基板30が載置されたステージ14をヒータ18の上方に移動させる。
次に、ヒータ18を所定の温度に加熱し、ステージ14とともに基板30を所定の温度にする。
【0033】
次に、基板14を所定の加熱した温度に保持した状態で、制御部26を介してステージ14を駆動部16により方向Dに、吐出部24に対して相対的に移動させ、吐出部24と基板30との方向Dにおける相対的な位置を変えながら、吐出部24から、図5(a)に示すように、インク40を基板30の表面30aに所定のパターン状に吐出する。
このとき、基板30は、例えば、60℃にされており、図5(b)に示すように、吐出されたインク40は蒸発していき、このインク40が完全に広がる前に乾燥する。
そして、コーヒーステイン現象により、図5(c)に示すように、凹型の断面形状を有する乾燥体42が形成される。この乾燥体42は、膜厚の高低差が常温の基板にインクを吐出し乾燥して得られる乾燥体に比べて大きい。
【0034】
次に、ステージ14を、方向Dに移動させて、冷却ユニット20の上方に移動させる(図4参照)。
そして、冷却ユニット20を、2回目にインク40aを吐出する際の基板30の設定温度になるように、制御部26により温度調節部22を介して、その冷却ユニット20の温度を調節する。
【0035】
次に、基板14を所定の冷却した温度に保持した状態で、ステージ14を駆動部16により方向R、すなわち、吐出部24側に移動させる。
そして、吐出部24と基板30との方向Rにおける相対的な位置を変えながら、基板30にインク40により形成されたパターンと同じ位置に、すなわち、図5(c)に示す乾燥体42の凹部42aにインク40aを吐出する。これにより、図5(d)に示すように、凹部42aがインク40aにより埋められる。
このとき、基板30の温度は、室温程度であるため、蒸発量が小さく、コーヒーステイン現象が生じにくく、インク40aの乾燥後も凹部42aの内側に凹形状を作ることがない。これにより、図5(e)に示すように、乾燥体42の凹部42a内を埋めるような乾燥体44が形成される。このため、細く、かつ厚さが均一な、矩形に近い断面形状の配線部46(図5(e)参照)を有する配線パターンを形成することができる。
【0036】
本実施形態においては、基板30を加熱した状態で、方向Dに搬送しつつ、インク40を所定のパターン状に吐出して乾燥させる。その後、ステージ14を冷却ユニット20側に移動させる。このため、基板30の搬送方向が逆になる。これにより、吐出部24における1回目のインク40の吐出パターンと、2回目のインク40aの吐出パターンとが反転する。このことから、制御部26においては、1回目のインク40の吐出パターンの後、1回目のインク40の吐出パターンを反転させて、2回目のインク40aの吐出パターンを生成し、2回目のインク40aを吐出させる。
【0037】
次に、パターン形成後、一定時間加熱焼成し、粒子同士を融着させ、パターンに導電性を付与することで、細く、かつ厚さが均一な矩形断面を持つ配線パターンが形成される。
本実施形態においては、このように、配線パターンを細くすることにより、高密度な配線が可能になり、さらには、配線パターンの厚さが均一であるため、電流密度が均一になり、断線の可能性も抑制される。
なお、パターン形成装置10においては、ヒータ18の上方に、加熱焼成処理を施すための熱処理ヒータを設ける構成としてもよい。この場合、熱処理ヒータには、急速加熱処理に利用される赤外線ランプ等が用いられる。
また、加熱焼成処理を施すための加熱焼成炉を設けてもよい。この場合、ステージ12から加熱焼成炉に搬送できるように、搬送手段を設けることが好ましい。
【0038】
本実施形態のパターン形成装置10においては、2回目のインク40aを吐出する前に、基板30の温度を下げて、インク40aの蒸発速度を遅くさせるようにしたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、基板30の温度を冷却ユニット20により温度を下げることに変えて、基板30の周囲の湿度を高くし、乾燥体42の湿度を上昇させてもよい。この場合、基板30の周囲の湿度を高くするために、インク40aの分散媒成分を蒸発させた蒸気を加湿装置から噴出させればよい。
【0039】
本実施形態においては、2回目のインク40aの吐出量(滴下量)は、乾燥体42の凹部42aを埋め、乾燥後に、配線部46の上面が平らになる量に調整する必要がある。このため、1回目のインク40の吐出量(滴下量)に対して、2回目のインク40aの吐出量を変える等して調整することが好ましい。また、吐出量以外にも、1回目のインク40の吐出密度(滴下密度)に対して、2回目のインク40aの吐出密度(滴下密度)を変える等して調整することが好ましい。より好ましくは、1回目のインク40の吐出量(滴下量)および吐出密度(滴下密度)に対して、2回目のインク40aの吐出量(滴下量)および吐出密度(滴下密度)を変える等して調整することが好ましい。
これらは、形成するパターン、使用するインクにより変わるものであり、事前に実験をして、1回目のインク40の吐出量(滴下量)および/または吐出密度(滴下密度)に対する、2回目のインク40aの吐出量および/またはおよび吐出密度(滴下密度)を決定しておく。なお、吐出密度(滴下密度)は、吐出周波数により調整することができる。
【0040】
なお、本実施形態のパターン形成装置10においては、吐出部24を挟んでヒータ18と冷却ユニット20とを配置した構成としたが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、図6に示すようなパターン形成装置10aを用いてもよい。このパターン形成装置10aには、図1に示すパターン形成装置10に比して、2つの吐出部24、24aを有し、吐出部24がヒータ18と冷却ユニット20との間に設けられ、吐出部24aが、ヒータ18および冷却ユニット20間とは反対側の冷却ユニット20の端に設けられている点が異なり、それ以外の構成は、図1に示すパターン形成装置10と同様に構成であるため、その詳細な説明は省略する。なお、吐出部24aは、吐出部24と同様の構成を有する。
【0041】
パターン形成装置10aにおいては、基板30を方向Dの一方向に移動させつつ、ヒータ20で加熱された基板30に、吐出部24でインク40を吐出し、次に、冷却ユニット20で基板30を所定の温度にしつつ、吐出部24aでインク40aを吐出して、配線パターンを形成するものである。
パターン形成装置10aにおいても、パターン形成装置10aと同様に、図5(a)〜(e)に示す工程により、図5(e)に示すように、細く、かつ厚さが均一な断面形状の配線部46を有する配線パターンを形成することができる。このように、配線パターンを細くすることにより、高密度な配線が可能になり、さらには、配線パターンの厚さが均一であるため、電流密度が均一になり、断線の可能性も抑制される。
【0042】
なお、パターン形成装置10aでは、基板30を方向Dの一方向にしか移動させないため、吐出部24における1回目のインク40の吐出パターンと、吐出部24aにおける2回目のインク40aの吐出パターンとは同じである。このため、制御部26においては、パターン形成装置10とは異なり、1回目のインク40の吐出パターンの後、1回目のインク40の吐出パターンを反転させて、2回目のインク40aの吐出パターンを生成する必要がない。
【0043】
このパターン形成装置10aにおいても、2回目のインク40aを吐出する前に、基板30の温度を下げて、インク40aの蒸発速度を遅くさせるようにしたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、基板30の温度を冷却ユニット20により温度を下げることに変えて、基板30の周囲の湿度を高くし、乾燥体42の湿度を上昇させてもよい。この場合、基板30の周囲の湿度を高くするために、インク40aの分散媒成分を蒸発させた蒸気を加湿装置から噴出させればよい。
【0044】
このパターン形成装置10aにおいても、2回目のインク40aの吐出量(滴下量)は、乾燥体42の凹部42aを埋め、配線部46の上面が平らになる量に調整する必要がある。このため、1回目のインク40の吐出量(滴下量)に対して、2回目のインク40aの吐出量を変える等して調整することが好ましい。また、吐出量以外にも、1回目のインク40の吐出密度(滴下密度)に対して、2回目のインク40aの吐出密度(滴下密度)を変える等して調整することが好ましい。より好ましくは、1回目のインク40の吐出量(滴下量)および吐出密度(滴下密度)に対して、2回目のインク40aの吐出量(滴下量)および吐出密度(滴下密度)を変える等して調整することが好ましい。
これらは、形成するパターン、使用するインクにより変わるものであり、事前に実験をして、1回目のインク40の吐出量(滴下量)および/または吐出密度(滴下密度)に対する、2回目のインク40aの吐出量および/またはおよび吐出密度(滴下密度)を決定しておく。なお、吐出密度(滴下密度)は、吐出周波数により調整することができる。
【0045】
このパターン形成装置10aでは、吐出部24について決定された1回目のインク40の吐出量(滴下量)および/または吐出密度(滴下密度)とし、吐出部24aについて決定された2回目のインク40aの吐出量および/またはおよび吐出密度(滴下密度)としておくことができる。
【0046】
また、本実施形態のパターン形成方法によって、例えば、デバイスの配線パターンが形成される。
【0047】
本実施形態において、デバイスとは、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、およびプラズマ表示装置等の画像表示装置、プリント配線基板、アンテナ回路などであるが、本発明において、デバイスは、これらに限定されるものではない。
また、このデバイスを備えた電子機器としては、例えば、テレビ、パソコン、携帯電話、RFIDなどであるが、本発明において、電子機器は、これらに限定されるものではない。
【0048】
以上、本発明のパターン形成方法、デバイスおよび電子機器について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】縦軸に線幅をとり、横軸に基板温度をとって、基板上の乾燥体の線幅の基板温度の依存性を示すグラフである。
【図2】(a)は、軸に幅方向の距離をとり、縦軸に高さをとって、基板温度60℃で液体材料を滴下したときの乾燥体の断面プロファイルであり、(b)は、横軸に幅方向の距離をとり、縦軸に高さをとって、基板温度25℃で液体材料を滴下したときの乾燥体の断面プロファイルである。
【図3】(a)は、横軸に幅方向の距離をとり、縦軸に高さをとって、図2(a)に示す乾燥体に、基板温度60℃で液体材料を再度滴下して乾燥させた後の断面プロファイルであり、(b)は、横軸に幅方向の距離をとり、縦軸に高さをとって、図2(b)に示す乾燥体に、基板温度25℃で液体材料を再度滴下して乾燥させた後の断面プロファイルである。
【図4】本発明の実施形態に係るパターン形成方法に用いられるパターン形成装置の一例を示す模式図である。
【図5】(a)〜(e)は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法を工程順に示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係るパターン形成方法に用いられるパターン形成装置の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0050】
10 パターン形成装置
12a、12b ガイド
14 ステージ
16 駆動部
18 ヒータ
20 冷却ユニット
22 温度調節部
24 吐出部(吐出手段)
26 制御部
30 基板
40 金属微粒子分散インク(インク)
42、44 乾燥体
42a 凹部
46 配線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を所定の温度に加熱する第1の工程と、
前記基板を所定の温度に保持しつつ、パターン形成材料を分散または溶解させた液体材料を前記基板上に滴下し、乾燥させる第2の工程と、
前記液体材料を前記所定の温度の基板に滴下させたときの蒸発速度よりも蒸発速度を遅くさせる第3の工程と、
前記液体材料が乾燥してなる乾燥体上に、前記液体材料を滴下する第4の工程とを有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記蒸発速度を遅くさせる第3の工程は、前記基板の温度を前記第2の工程よりも低い温度に下げる工程を備える請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記蒸発速度を遅くさせる第3の工程は、前記乾燥体の湿度を上昇させる工程を備える請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記第2の工程における液体材料の滴下量は、前記第4の工程における液体材料の滴下量と異なる請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記第2の工程における液体材料の滴下密度は、前記第4の工程における液体材料の滴下密度と異なる請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記液体材料は、インクジェット方式、またはディスペンサ方式の吐出手段により滴下される請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記パターン形成材料は、金属、前記金属の酸化物または合金の微粒子である請求項1〜6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記金属は、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウムまたはスズである請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のパターン形成方法を用いて形成された部分を有することを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のデバイスを備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−82562(P2010−82562A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255299(P2008−255299)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】