説明

パターン形成方法及びパターン形成装置

【課題】、基材の表面を冷却したまま溶媒を除去しない場合に比べ、パターンが精度良く形成されるパターン形成装置を提供する。
【解決手段】基材20を冷却する基材冷却手段22と、前記基材冷却手段によって冷却された前記基材の表面に、パターン形成材料、及び溶媒を含む組成物18を付与して該組成物のパターンを描画するパターン描画手段24と、前記基材の表面に描画された前記組成物のパターンから該基材を冷却したまま前記溶媒を除去する溶媒除去手段26と、を有するパターン形成装置10。溶媒除去後、加熱を行って分散剤を除去する加熱手段28を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法及びパターン形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に導電性パターンを形成する方法として、例えば、基板の片面全体に導電膜等、目的に応じた機能性膜を形成した後、フォトリソグラフィ法によってパターニングする方法が一般的である。また、近年では、機能性粒子を含むインクをインクジェット方式でパターニングする方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、アルカリ金属化合物を含む表面処理液を、吐出方式にてベースフィルム上の配線パターンに応じて選択的に吐出する基板の表面処理方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、有機溶媒中に金属微粒子が含有されている金属ペーストを用いたパターニング配線を直描方式により形成する工程と、該配線に対して、有機溶媒を気化させる凍結乾燥方法を行なう工程と、焼結乾燥処理配線を原子状水素により金属表面酸化膜の還元をする工程と、から成る金属パターン配線形成方法が開示されている。
【0005】
非特許文献1には、COレーザによる局部的な加熱を基板に施し、その上でインクジェットにて滴下することで、液滴の流動制御を行う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−287217号公報
【特許文献2】特開2008−244202号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】明渡 純ほか 「さまざまな基板への低抵抗配線を可能とする工業用インクジェット技術」、[online]、2009年6月29日発表、独立行政法人 産業技術総合研究所 プレスリリース、インターネット〈URL:http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090629/pr20090629.html#c#c〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、基材の表面を冷却したまま溶媒を除去しない場合に比べ、パターンが精度良く形成されるパターン形成装置及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1の発明は、基材を冷却する基材冷却手段と、前記基材冷却手段によって冷却された前記基材の表面に、パターンを形成する材料であるパターン形成材料、及び溶媒を含む組成物を付与して該組成物のパターンを描画するパターン描画手段と、前記基材の表面に描画された前記組成物のパターンから該基材を冷却したまま前記溶媒を除去する溶媒除去手段と、を有するパターン形成装置。
請求項2の発明は、前記パターン描画手段が、インクジェット方式、又は、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、若しくはスクリーン印刷から選択される印刷方式の何れか1種により前記組成物を付与して該組成物のパターンを描画する手段を含む請求項1に記載のパターン形成装置。
請求項3の発明は、前記基材冷却手段が、前記基材の表面を前記溶媒の融点以下に冷却する手段である請求項1又は請求項2に記載のパターン形成装置。
請求項4の発明は、前記基材冷却手段が、前記基材を支持するとともに冷却機能を備えた冷却台である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
請求項5の発明は、前記パターン描画手段が、前記組成物を連続して付与するインクジェット方式の手段である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
請求項6の発明は、前記基材の表面に描画された前記組成物のパターンから前記溶媒を除去した後、該パターンを加熱する加熱手段をさらに有する請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
請求項7の発明は、基材を冷却する基材冷却工程と、前記冷却された基材の表面に、パターンを形成する材料であるパターン形成材料、及び溶媒を含む組成物を付与して該組成物のパターンを描画するパターン描画工程と、前記基材の表面に描画された前記組成物のパターンから該基材を冷却したまま前記溶媒を除去する溶媒除去工程と、を含むパターン形成方法。
請求項8の発明は、前記パターン描画工程において、前記パターン描画工程において、インクジェット方式、又は、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、若しくはスクリーン印刷から選択される印刷方式の何れか1種により前記組成物を付与して該組成物のパターンを描画する請求項7に記載のパターン形成方法。
請求項9の発明は、前記基材冷却工程において、前記基材の表面を前記溶媒の融点以下に冷却する請求項7又は請求項8に記載のパターン形成方法。
請求項10の発明は、前記基材冷却工程において、冷却機能を備えた冷却台によって前記基材を支持するとともに冷却する請求項7〜請求項9のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
請求項11の発明は、前記パターン描画工程において、前記冷却された前記基材の表面に、インクジェット方式で前記組成物を連続して付与して前記組成物のパターンを描画する請求項8〜請求項10のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
請求項12の発明は、前記溶媒除去工程の後、前記組成物のパターンを加熱する加熱工程をさら含む請求項7〜請求項11のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0010】
請求項1、2の発明によれば、基材の表面を冷却したまま溶媒を除去しない場合に比べ、パターンが精度良く形成されるパターン形成装置が提供される。
請求項3の発明によれば、基材冷却手段が、基材の表面をインクに含まれる溶媒の融点以下まで冷却しない場合に比べ、パターンがより精度良く形成されるパターン形成装置が提供される。
請求項4の発明によれば、基材冷却手段が、基材に冷気を当てて冷却する場合に比べ、パターンの形状が乱れ難いパターン形成装置が提供される。
請求項5の発明によれば、パターン描画手段が、組成物を間欠的に付与する場合に比べ、パターン形成材料同士が確実に接触してパターンが形成されるパターン形成装置が提供される。
請求項6の発明によれば、加熱手段を有さない場合に比べ、パターンが不純物を含む場合に不純物の量が低減されるパターン形成装置が提供される。
請求項7、8の発明によれば、基材の表面を冷却したまま溶媒を除去しない場合に比べ、パターンが精度良く形成されるパターン形成方法が提供される。
請求項9の発明によれば、基材の表面をインクに含まれる溶媒の融点以下まで冷却しない場合に比べ、パターンがより精度良く形成されるパターン形成方法が提供される。
請求項10の発明によれば、基材に冷気を当てて冷却する場合に比べ、パターンの形状が乱れ難いパターン形成方法が提供される。
請求項11の発明によれば、組成物を間欠的に付与する場合に比べ、パターン形成材料同士が確実に接触するパターンが形成されるパターン形成方法が提供される。
請求項12の発明によれば、加熱工程を有さない場合に比べ、パターンが不純物を含む場合に不純物の量が低減されるパターン形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るパターン形成装置の構成例を示す概略図である。
【図2】比較例1で室温のガラス面に滴下したAgナノメタルインクを示す図である。
【図3】実施例1で冷却したガラス面に滴下したAgナノメタルインクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
工業的に微細なパターンを作製する方法としては、例えば、インクジェット方式や、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、及びスクリーン印刷等の各種印刷方式が挙げられる。インクジェット技術によって微細パターンを作製する場合、ノズルから付与するインク液滴のサイズを微小化したり、基板の表面処理をする場合や微細なマスクパターンを形成する工程が必要であった。しかし、このような工程を行なっても30〜50μm程度の線幅が限界である。その他、前述の各種印刷技術によって微細パターンを作製する場合も同様である。
【0013】
本発明者は微細なパターンを形成する技術について鋭意検討を行ったところ、冷却した基材の表面に組成物によってパターンを描画し、描画したパターンから基材を冷却したまま溶媒を除去することで、基材の表面処理(撥液性処理や粗面化処理)や微細なマスクパターンを作製することなく、微細なパターンが精度良く形成されることを見出した。
【0014】
<パターン形成方法>
本実施形態に係るパターン形成方法は、基材を冷却する基材冷却工程と、前記冷却された基材の表面に、パターンを形成する材料であるパターン形成材料、及び溶媒を含む組成物を付与して該組成物のパターンを描画するパターン描画工程と、前記基材の表面に描画された前記組成物のパターンから該基材を冷却したまま前記溶媒を除去する溶媒除去工程と、を含む。また、本実施形態に係るパターン形成方法は、溶媒除去工程の後、必要に応じて加熱を行うことで基材の表面に描画されているパターンから分散剤を除去する加熱工程を含む。
【0015】
−基材冷却工程−
まず、パターンを形成するための基材を用意する。基材としては、ガラス、セラミックス、樹脂、金属などの基材が挙げられる。本実施形態では、基材の表面改質(表面の撥液処理や粗面化などの表面処理)をする必要は無く、使用する組成物の種類、加熱工程の必要の有無などを考慮し、目的に応じて基材を選択すればよい。
【0016】
例えば、板状の基材(基板)を用い、基材を支持するとともに冷却機能を備えた冷却台に載せて裏面側(組成物のパターンを形成する面の反対側の面)から冷却する。これにより、基材の表面(組成物を付与してパターンを形成する面)側も冷却される。
【0017】
基材の表面は、室温の場合に比べ、表面に付与された組成物が基材の表面で濡れ広がることが抑制される温度に冷却するが、組成物の濡れ広がりを効果的に抑制する観点から、組成物に含まれる溶媒の融点以下に冷却することが特に望ましい。
【0018】
−パターン描画工程−
冷却された基材の表面に、パターン形成材料、及び溶媒を含む組成物を付与して該組成物のパターンを描画する。
ここで組成物について説明する。本実施形態で用いる組成物は、少なくとも、パターン形成材料、及び溶媒を含んで構成される。
【0019】
組成物に含まれるパターン形成材料は、基材の表面に形成すべきパターンに要求される機能を有する材料で構成されたものを採用する。例えば、基材上に導電性パターンを形成する場合は、パターン形成材料としてAg、Au、Cuなどの金属粒子を含む組成物が用いられる。また、形成すべきパターンに要求される機能に応じて、SiOやAlなどの絶縁性セラミック材料、ポリイミド、ポリアミック酸などの絶縁性樹脂材料、ペンタセンなどの半導体材料などを含む組成物を用いてもよい。
【0020】
パターン形成材料が溶媒に不溶な粒子である場合、該粒子としては、通常はいわゆるナノサイズの粒子(ナノ粒子)が用いられる。具体的には、体積平均粒子径が50nm以下であり、20nm以下のナノ粒子が望ましく、小さければ小さいほど好ましい。このようなナノ粒子を含む組成物は、例えばインクジェット方式によってパターンを描画する際には、インクジェットヘッド(ノズル)の詰まりが防がれるとともに、微細パターンが高精細に描画される。
【0021】
また、ナノ粒子であれば、比表面積が極めて大きいため、基材の表面に付与された粒子は凝集し易い。また、比表面積が大きいことで表面張力の影響が大きくなり、ナノ粒子は塊(バルク)に比べて融点が低くなる。ナノ粒子の融点は表面エネルギー相当分だけ低下するため、金属でも径を小さくすると融点は急激に低下する。そのため、加熱工程において比較的低温でも金属粒子同士が融合して連続した導電性パターンを形成し易い。
【0022】
組成物に含まれるパターン形成材料の含有量(固形分濃度)は、基材の表面に形成すべきパターンの用途等にもよるが、パターン形成材料によって形成されるパターンの機能を十分発揮させるため、0.1質量%以上99質量%以下であることが望ましい。
【0023】
溶媒はパターン形成材料を溶解又は分散させるためのものであり、有機溶媒又は水が用いられる。有機溶媒としては、冷却された基材の表面に付与された組成物の流動を抑制し、また、組成物のパターンを形成した後、パターンを構成する組成物から溶媒を気化させて除去し易い観点などから、融点が比較的高いものが望ましい。また大気中の水蒸気による基板表面に結露が発生するため、0℃以上で融点をもつ溶媒で実施することが望ましい。例えば、テトラデカン(融点:5.9℃)、シクロドデセン(融点:9℃)が望ましい。0℃以下の溶媒を使用する場合は、湿度を10%以下の環境で実施することが望ましい。例えば、トルエン、テルピネオール、デカリン、クロロベンゼンなどが望ましい。
【0024】
パターン形成材料が前記金属粒子等のように溶媒に不溶な粒子である場合、分散剤を使用してもよい。分散剤は金属粒子等が室温で凝集しないように組成物中に含まれるものであり、金属粒子等の表面が分散剤で保護されることにより溶媒中で独立して分散させた状態が保たれる。金属粒子の分散剤としては、例えば、金粒子の分散剤(保護膜)として、ドデカンチオール、1−オクタンチオール、トリフェニルホスフィン、リビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、銀粒子の分散剤(保護膜)として、ドデシルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミンなどが挙げられ、銅粒子の分散剤(保護膜)として、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
また、パターン形成材料としてセラミック材料や樹脂材料が使用される場合にも、各種公知の分散剤が使用される。
【0025】
冷却された基材の表面に、パターン形成材料、及び溶媒を含む組成物を付与して該組成物のパターンを描画する。パターンの描画には前述の各方式が挙げられるが、インクジェット方式による場合には、望ましくは、組成物を連続的に付与することによって、冷却された基材の表面に組成物のパターンを描画する。基材の表面が組成物に含まれる溶媒の融点以下に冷却されていれば、インクが基材に付与された後、直ちに凝固する。これにより組成物の濡れ広がりが抑制され、形成されたパターンとほぼ同等の線幅を維持したまま微細なパターンが描画される。
冷却された基材の表面に組成物を付与したときに組成物の濡れ広がりが抑制されるメカニズムは定かでないが、組成物に含まれる溶媒が凝固するか、組成物滴中のパターン形成材料が凝集して固まって濡れ広がりが抑制されると推測される。
【0026】
なお、インクジェット方式でパターンを形成する場合は、基材の表面を組成物に含まれる溶媒の融点以下に冷却して組成物を間欠的に付与すると、付与された組成物の液滴は球状のまま基材の表面に付着することになる。この場合でも隣接する球状の組成物同士が接触していれば、連続したパターンが形成される。
【0027】
−溶媒除去工程−
次に、基材の表面に描画した組成物のパターンから基材を冷却したまま溶媒を除去する。例えば、基材が置かれた室内で真空乾燥を行えば、冷却された基材の表面で凝固している組成物中の溶媒が気化(昇華)し、パターン形成材料が残る。組成物に分散剤が含まれる場合には分散剤に包まれたパターン形成材料が残る。このように冷却された基材の表面に組成物によるパターンを描画した後、基材を冷却したまま組成物を凝固させた状態を保って真空乾燥させることで、組成物が濡れ広がらずに微細なパターンが維持される。
【0028】
−加熱工程−
溶媒除去工程の後、必要に応じて、基材の表面に形成されているパターンを加熱してもよい。例えば、分散剤を含む組成物の場合は加熱により分散剤が除去され、パターン形成材料としてポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含有する場合は加熱によりポリアミック酸がイミド化される。パターン中に含まれる分散剤やイミド化していないポリアミック酸はパターンにとっては不純物となってしまうが、加熱工程を有することで不純物の量が低減される。加熱温度と雰囲気は、組成物の種類に応じて選択すればよい。
金属粒子と炭化水素系の分散剤を含む組成物を用いて導電性パターンを形成する場合は、溶媒除去工程の後、酸素を含む雰囲気中で加熱を行う。例えば、溶媒除去工程後の基材を室温のステンレスパットに載せて、予め定めた温度に設定された送風炉内で数分〜数時間保持する。これにより分散剤は溶媒残渣とともに蒸散する。なお、分散剤の一部は熱分解してカーボンが残留する場合があり、特にパターンの膜厚が厚い場合や、加熱プロセスが遅い場合はカーボンが残留し易いが、残留カーボンは酸素と反応して二酸化炭素として排出される。
【0029】
パターン中に含まれる分散剤を加熱によって除去することで、分散剤で被覆されていた金属粒子同士が接触し、加熱効果によって融合又は融着する。これにより基材の表面に連続した導電性パターンが形成される。
【0030】
なお、加熱(酸化)後、必要に応じて還元を行う。例えば、銅粒子を含む組成物は、金粒子を含む組成物や銀粒子を含む組成物に比べ、低価格であり、マイグレーション耐性及び耐ガス腐食性において信頼性が高い。その反面、銅粒子は酸化の影響が大きいため、銅を含む組成物を用いて導電性パターンを形成する場合には酸化を防ぐ対策又は還元する対策が必要である。
【0031】
例えば、大気中で400℃の予備加熱で有機成分(残留溶媒、分散剤)を飛ばし、その後、300℃以上の水素還元雰囲気で酸化した銅を還元させる。水素の還元力を高めるため、例えばホットワイヤ法(真空チャンバ内に熱線を入れ、ガスを活性化させる方法)を用いて還元を行ってもよい。水素を含有する化合物の気体を加熱された触媒体(例えばタングステン)に接触させて接触分解反応により原子状水素が生じ、原子状水素により金属表面の酸化膜を還元することで銅配線パターンが得られる。
【0032】
<パターン形成装置>
次に、本実施形態に係るパターン形成装置について説明する。
本実施形態に係るパターン形成装置は、基材を冷却する基材冷却手段と、前記基材冷却手段によって冷却された前記基材の表面に、パターン形成材料、及び溶媒を含む組成物を付与して該組成物のパターンを描画するパターン描画手段と、前記基材の表面に描画された前記組成物のパターンから該基材を冷却したまま前記溶媒を除去する溶媒除去手段と、を有する。また、本実施形態に係るパターン形成装置は、基材の表面に描画された組成物のパターンから溶媒を除去した後、該パターンを加熱する加熱手段をさらに有してもよい。
【0033】
図1は本実施形態に係るパターン形成装置の一例として、インクジェット方式を使用した構成例を概略的に示している。本実施形態に係るパターン形成装置10は、基材冷却手段(冷却台)22と、パターン描画手段(インクジェットヘッド)24と、溶媒除去手段(排気口)26と、加熱手段(加熱ヒータ)28を有している。なお、本実施形態に係るパターン形成装置10は、シャッター30,32で仕切られた3つの室12,14,16を備えており、室12に基材冷却手段22とパターン描画手段24、室14に溶媒除去手段26、室16に加熱手段28がそれぞれ配置されている。また、基材冷却手段22は、各室12,14,16を仕切るシャッター30,32の開閉により各室12,14,16に自在に移動するように構成されている。
【0034】
−基材冷却手段−
基材冷却手段22は、組成物18によってパターンを描画すべき基材20を冷却する。なお冷却時には湿度が調整されていることが望ましい。
基材冷却手段22は、少なくともパターンが描画される基材20の表面を冷却する手段であればよい。例えば、基材20の表面に冷気を当てる手段、基材20を支持するとともに冷却機能を備えた冷却台22などが挙げられる。基材20の表面に向けて冷気を当てて冷却する場合、冷気の流れが強すぎると、パターン描画手段24から付与された組成物にも影響し、基材表面のパターンが乱れる可能性があるが、冷却台22によって基材20の裏面側を支持するとともに冷却すれば組成物18は気流によって乱されず、パターン描画が高精度で行われる。また、冷却台22によって基材20を冷却すれば、基材20を効率的に冷却するとともに冷却温度の制御が容易である。
【0035】
−パターン描画手段−
パターン描画手段24は、基材冷却手段22によって冷却された基材20の表面に、パターン形成材料、及び溶媒を含む組成物18を付与して該組成物のパターンを描画する。パターン描画手段24は、微細なパターンを高精度に描画する観点から、インクジェット方式や、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、及びスクリーン印刷等の各種印刷方式によって組成物を付与する手段が望ましい。なお、インクジェット方式は、大きく分けて連続噴射型とオンデマンド型があり、本実施形態ではいずれの型も採用されるが、例えば、基材20の表面に連続した導電性パターンを形成する場合には、組成物を途切れずに連続して付与する連続噴射型が望ましい。
【0036】
なお、パターン描画手段24が、インクジェット方式のように組成物18を間欠的に吐出する手段である場合、基材20の表面が組成物に含まれる溶媒の融点以下に冷却されていると、吐出された組成物は基材20の表面に付着して球状のまま凝固し易い。この場合でも隣接する組成物同士が接触していれば、連続した導電性パターンが形成される。
【0037】
−溶媒除去手段−
溶媒除去手段26は、パターン描画手段24によって基材20の表面に描画された組成物のパターンから基材20を冷却したまま溶媒を除去する。かかる溶媒除去手段26としては、真空乾燥によって溶媒を気化させる手段が望ましい。
【0038】
例えば、冷却台22に載せた基材20の表面に組成物18によりパターン描画を行った後、シャッター30を開き、冷却台22によって冷却したまま基材20を室14に移動させる。再度シャッター30を閉じた後、真空ポンプ(不図示)に通じる排気口26を通じて室14内を真空状態にして乾燥させる。パターンに含まれる溶媒を真空乾燥によって気化させれば、基材20の表面で凝固している組成物が溶けて濡れ広がることが抑制された状態で乾燥し、パターンの線幅及び厚み(アスペクト比)が維持される。
なお、溶媒除去手段としては、シリカゲル、塩化カルシウムなどの乾燥剤を収容するとともに、冷却機能を有する乾燥器を用いてもよい。
【0039】
−加熱手段−
加熱手段28は、必要に応じて、溶媒が除去された組成物のパターンを加熱する。例えば、パターン形成材料として金属粒子を含む組成物を用いて基材20の表面に導電性のパターンを形成する場合には、前述の通り組成物には分散剤も含まれているため、基材20の表面に描画したパターンから溶媒を除去した後、パターンに含まれる分散剤を除去する。本実施形態に係るパターン形成装置10が加熱手段28を備えていれば、分散剤を除去するための雰囲気(例えば酸素含有雰囲気)中で加熱することで分散剤が選択的に除去される。かかる加熱手段28としては、基材20の表面に形成されたパターンを加熱して分散剤を除去する手段であればよい。例えば、安全性や温度制御性などの観点から加熱ヒータが挙げられる。
【0040】
基材20上のパターンから溶媒を除去した後、シャッター32を開き、冷却台22に載せた基材20を室16に移動させる。なお、基材20の表面に形成したパターンから溶媒を除去した後は、基材20を室温に戻してもパターンの形状はほとんど変化しないため、冷却台22の冷却機能を停止して移動させる。あるいは、基材20を加熱用の台に移して室16内に配置してもよい。再度シャッター32を閉じた後、ガス導入口(不図示)から酸素を含む雰囲気ガスを導入するとともに、加熱手段28によって予め定めた温度で加熱を行う。これにより、パターンに含まれる分散剤が除去される。
【0041】
なお、加熱手段は、本実施形態に係るパターン形成装置とは別に設けてもよい。例えば、基材20を加熱プレートに載せて加熱を行ってもよい。
上記のように、本実施形態に係るパターン形成装置10を用いて、基材冷却工程、パターン描画工程、及び溶媒除去工程(、必要に応じて加熱工程)を順次行うことで、一定のアスペクト比をもつ微細な配線パターンが形成される。
【実施例】
【0042】
以下、実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
<比較例1>
Agナノメタルインク(アルバックマテリアル株式会社製、「L−Ag1TeH」、平均粒子サイズ:3〜7nm、溶媒:テトラデカン)を用い、室温でガラス面上に滴下したところ、図2に示すようにガラス面上でインクが濡れ広がった。
【0044】
<実施例1>
Agナノメタルインク(アルバックマテリアル株式会社製、「L−Ag1TeH」、平均粒子サイズ:3〜7nm、溶媒:テトラデカン)を用い、約−5℃に冷却したガラス面上に滴下したところ、図3に示すようにガラス面上でインクは濡れ広がらないことが確認された。
次いで、ガラス基板をデシケーター内で−5℃で10時間乾燥した後、ガラス基板をホットプレートにて加熱した。
加熱後、ガラス基板上に形成されたインクパターンが導電性を有することが確認された。
【0045】
以上、本実施形態及び実施例について説明したが、本実施形態は上記説明に限定されない。例えば、ポリイミド粒子などの絶縁性粒子を含む組成物を用いて絶縁性のパターンを形成する場合は、溶媒除去工程後、必ずしも加熱工程を行う必要はない。
【符号の説明】
【0046】
10 パターン形成装置
12 基材冷却工程及びパターン描画工程用の室
14 溶媒除去工程用の室
16 加熱工程用の室
18 組成物
20 基材
22 冷却台(基材冷却手段の一例)
24 インクジェットヘッド(パターン描画手段の一例)
26 排気口(溶媒除去手段の一例)
28 加熱ヒータ(加熱手段の一例)
30,32 シャッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を冷却する基材冷却手段と、
前記基材冷却手段によって冷却された前記基材の表面に、パターンを形成する材料であるパターン形成材料、及び溶媒を含む組成物を付与して該組成物のパターンを描画するパターン描画手段と、
前記基材の表面に描画された前記組成物のパターンから該基材を冷却したまま前記溶媒を除去する溶媒除去手段と、
を有するパターン形成装置。
【請求項2】
前記パターン描画手段が、インクジェット方式、又は、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、若しくはスクリーン印刷から選択される印刷方式の何れか1種により前記組成物を付与して該組成物のパターンを描画する手段を含む請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項3】
前記基材冷却手段が、前記基材の表面を前記溶媒の融点以下に冷却する手段である請求項1又は請求項2に記載のパターン形成装置。
【請求項4】
前記基材冷却手段が、前記基材を支持するとともに冷却機能を備えた冷却台である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項5】
前記パターン描画手段が、前記組成物を連続して付与するインクジェット方式の手段である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項6】
前記基材の表面に描画された前記組成物のパターンから前記溶媒を除去した後、該パターンを加熱する加熱手段をさらに有する請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項7】
基材を冷却する基材冷却工程と、
前記冷却された基材の表面に、パターンを形成する材料であるパターン形成材料、及び溶媒を含む組成物を付与して該組成物のパターンを描画するパターン描画工程と、
前記基材の表面に描画された前記組成物のパターンから該基材を冷却したまま前記溶媒を除去する溶媒除去工程と、
を含むパターン形成方法。
【請求項8】
前記パターン描画工程において、インクジェット方式、又は、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、若しくはスクリーン印刷から選択される印刷方式の何れか1種により前記組成物を付与して該組成物のパターンを描画する請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記基材冷却工程において、前記基材の表面を前記溶媒の融点以下に冷却する請求項7又は請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記基材冷却工程において、冷却機能を備えた冷却台によって前記基材を支持するとともに冷却する請求項7〜請求項9のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記パターン描画工程において、前記冷却された前記基材の表面に、インクジェット方式で前記組成物を連続して付与して前記組成物のパターンを描画する請求項8〜請求項10のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記溶媒除去工程の後、前記組成物のパターンを加熱する加熱工程をさら含む請求項7〜請求項11のいずれか一項に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−9709(P2012−9709A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145513(P2010−145513)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】