説明

パターン形成方法及び液滴吐出装置

【課題】液滴に照射するレーザ光の位置精度を維持して、その照射角度を変更可能にしたパターン形成方法及び液滴吐出装置を提供することである。
【解決手段】キャリッジ27の基板2側に、目標照射位置PTを回動中心とする回動ステージ35を設け、その回動ステージ35に、レーザヘッド37を配設した。そして、回動ステージ35を「基準位置」から「照射位置」に配置移動するときに、レーザヘッド37の各照射口37aが、それぞれ対応する目標照射位置PTを回動中心にして回動して、レーザ光Bの「照射角度θ」を回動ステージ35の「回動角度θr」だけ小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置には、画像を表示するための基板が備えられている。この種の基板には、品質管理や製造管理を目的として、その製造元や製品番号等の製造情報をコード化した識別コード(例えば、2次元コード)が形成されている。こうした識別コードは、配列された多数のパターン形成領域(データセル)の一部に、パターンとしてのコードパターン(例えば、有色の薄膜や凹部等のドット)を備え、そのコードパターンの有無によって製造情報を再現可能にする。
【0003】
識別コードの形成方法には、金属箔にレーザ光を照射してコードパターンをスパッタ成膜するレーザスパッタ法や、研磨材を含んだ水を基板等に噴射してコードパターンを刻印するウォータージェット法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
上記レーザスパッタ法は、所望するサイズのコードパターンを得るために、金属箔と基板の間隙を、数μm〜数十μmに調整しなければならない。つまり、基板と金属箔の表面に対して非常に高い平坦性が要求され、しかも、これらの間隙をμmオーダの精度で調整しなければならない。その結果、識別コードを形成できる対象基板が制限されて、その汎用性を損なう問題を招いていた。また、ウォータージェット法は、基板の刻印時に、水や塵埃、研磨剤等を飛散させるため、同基板を汚染する問題があった。
【0005】
近年、こうした生産上の問題を解消する識別コードの形成方法として、インクジェット法が注目されている。インクジェット法は、金属微粒子を含む液滴を液滴吐出ヘッドのノズルから吐出して、その液滴を乾燥させることによってコードパターンを形成する。そのため、識別コードを形成する基板材料の対象範囲を拡大させることができ、同基板の汚染等を回避して識別コードを形成させることができる。
【特許文献1】特開平11−77340号公報
【特許文献2】特開2003−127537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記インクジェット法では、吐出する液滴の組成(例えば、微粒子や分散媒等)やサイズを、パターン(ドット)の種別や基板の表面状態に応じて変更させる場合が殆どである。そのため、液滴の乾燥工程において、吐出する液滴の組成やサイズに応じた乾燥を施すことができれば、液滴からなるパターンの形成を容易にさせることができ、ひいてはインクジェット法の利用範囲を拡張させることができる。
【0007】
こうした液滴の乾燥方法には、着弾した液滴の領域に照射角度の変更可能なレーザ光を照射する方法が考えられる。すなわち、液滴の材料やサイズに応じてレーザ光の光断面やエネルギー密度を変調し、同レーザ光を液滴に照射する方法が考えられる。
【0008】
しかしながら、レーザ光の照射角度を変更すると、すなわち、レーザ光を出射するレーザヘッドの配置位置を変更すると、レーザヘッドの配置変更に伴って、レーザ光の照射する位置が変位する。その結果、液滴の材料やサイズに応じて照射角度を変更するたびに、レーザ光の照射する位置の位置補正に時間を要して、パターンの生産性を損なう虞があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、液滴に照射するレーザ光の位置精度を維持して、その照射角度を変更可能にしたパターン形成方法及び液滴吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパターン形成方法は、対象物の被吐出面に向けてパターン形成材料の液滴を吐出し、照射口から目標照射位置に向けてレーザ光を照射し、前記対象物と前記照射口とを相対移動して前記被吐出面に着弾した前記液滴に前記レーザ光を照射してパターンを形成するパターン形成方法であって、前記目標照射位置を回動中心にして前記照射口を回動することにより前記レーザ光の照射角度を設定する。
【0011】
本発明のパターン形成方法によれば、回動する照射口の回動中心を目標照射位置することができ、照射口からのレーザ光の照射する位置を目標照射位置に維持させることができる。従って、レーザ光の照射条件を変更する際に、レーザ光の照射する位置やその位置精度を維持させることができる。
【0012】
本発明のパターン形成方法は、対象物の被吐出面に向けてパターン形成材料の液滴を吐出し、照射口からのレーザ光を目標照射位置に照射し、前記対象物と前記照射口とを相対移動して前記被吐出面に着弾した前記液滴に前記レーザ光を照射してパターンを形成するパターン形成方法であって、前記照射口からのレーザ光を前記被吐出面と平行な第1反射面に向けて出射し、前記第1反射面の受ける前記レーザ光を前記第1反射面から前記被吐出面と相対向する第2反射面に向けて反射し、前記第2反射面の受ける前記レーザ光を前記第2反射面から前記目標照射位置に向けて反射し、前記第1反射面に対する前記レーザ光の照射角度を設定するとき、前記目標照射位置を含む前記被吐出面の法線上の位置を回動中心にして前記照射口を回動し、前記第1反射面での前記レーザ光の反射回数をnとし、前記第1反射面と前記第2反射面との間の距離をHrとし、前記目標照射位置と前記回動中心との間の距離をHpcとするとき、Hpc=n×2×Hrを満たす。
【0013】
本発明のパターン形成方法によれば、照射口の回動中心が、目標照射位置を含む被吐出面の法線上の位置であって、かつ、目標照射位置との間の距離がHpc=n×2×Hrを満たす位置である。そのため、レーザ光の照射角度を変更するとき、レーザ光の照射位置を目標照射位置に維持させることができる。従って、レーザ光の照射角度を変更するとき、レーザ光の照射位置やその位置精度を維持させることができる。
【0014】
本発明の液滴吐出装置は、対象物の被吐出面に向けてパターン形成材料の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、照射口から目標照射位置に向けてレーザ光を照射するレーザ照射手段と、前記対象物と前記照射口とを相対移動して前記被吐出面に着弾した前記液滴に前記レーザ光を通過させる相対移動手段と、を備えた液滴吐出装置であって、前記レーザ照射手段は、前記目標照射位置を回動中心にして前記照射口を回動し、前記レーザ光の照射角度を設定する。
【0015】
本発明の液滴吐出装置によれば、回動機構の回動によって、照射口の回動中心を目標照射位置にすることができ、照射口からのレーザ光の照射する位置を目標照射位置に維持させることができる。従って、レーザ光の照射角度を変更するとき、レーザ光の照射位置やその位置精度を維持させることができる。
【0016】
本発明の液滴吐出装置は、対象物の被吐出面に向けてパターン形成材料の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、照射口からのレーザ光を目標照射位置に照射するレーザ照射手段と、前記対象物と前記照射口とを相対移動して前記被吐出面に着弾した前記液滴に前記レー
ザ光を通過させる相対移動手段と、を備えた液滴吐出装置であって、前記レーザ照射手段は、前記被吐出面と平行な第1反射面を有し、前記照射口からの前記レーザ光を受けて前記液滴吐出ヘッドに向けて反射する第1の反射部材と、前記被吐出面と相対向する第2反射面を有し、前記第1反射面からの前記レーザ光を受けて前記目標照射位置に向けて反射する第2の反射部材と、前記照射口を回動することにより前記第1反射面に対する前記レーザ光の照射角度を設定し、前記照射口の回動中心が、前記目標照射位置を含む前記被吐出面の法線上の位置であって、かつ、前記第1反射面での前記レーザ光の反射回数をnとし、前記第1反射面と前記第2反射面との間の距離をHrとし、前記目標照射位置と前記回動中心との間の距離をHpcとするとき、Hpc=n×2×Hrを満たす回動機構と、を備えた。
【0017】
本発明の液滴吐出装置によれば、回動機構によって回動する照射口が、目標照射位置を含む被吐出面の法線上の位置であって、かつ、目標照射位置との間の距離がHpc=n×2×Hrを満たす位置である。そのため、レーザ光の照射角度を変更するとき、レーザ光の照射位置を目標照射位置に維持させることができる。従って、レーザ光の照射角度を変更するとき、レーザ光の照射位置やその位置精度を維持させることができる。
【0018】
この液滴吐出装置において、前記第2の反射部材は、前記液滴を吐出するノズルの形成されたノズルプレートであってもよい。
この液滴吐出装置によれば、ノズルプレートからのレーザ光を目標照射位置、すなわち液滴の領域に照射することができる。従って、着弾した液滴の近傍から同液滴に対してレーザ光を照射することができ、レーザ光の照射する位置の位置精度を維持して、よりエネルギー密度の高いレーザ光を照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図6に従って説明する。まず、本発明のパターン形成方法を利用して形成した識別コードを有する液晶表示装置1について説明する。
【0020】
図1において、対象物としての基板2の一側面(被吐出面としての表面2a)には、その略中央位置に液晶分子を封入した四角形状の表示部3が形成され、その表示部3の外側には、走査線駆動回路4及びデータ線駆動回路5が形成されている。液晶表示装置1は、これら走査線駆動回路4の供給する走査信号と、データ線駆動回路5の供給するデータ信号に基づいて、前記表示部3内の液晶分子の配向状態を制御する。そして、液晶表示装置1は、図示しない照明装置からの平面光を液晶分子の配向状態によって変調して、表示部3の領域に所望の画像を表示する。
【0021】
表面2aの左側下隅には、一辺が約1mmの正方形からなるコード形成領域Sが区画形成されて、そのコード形成領域S内には、16行×16列のデータセルCが仮想分割されている。そのコード形成領域Sの選択されたデータセルCの領域には、それぞれパターンとしてのドットDが形成されて、これら複数のドットDによって、液晶表示装置1の識別コード10が構成されている。
【0022】
本実施形態では、ドットDの形成されたデータセルCの中心位置を「目標吐出位置P」とし、各データセルCの一辺の長さを「セル幅W」とする。
各ドットDは、その外径がデータセルCの一辺の長さ(前記セル幅W)で形成された半球状のパターンである。このドットDは、パターン形成材料としての金属微粒子(例えば、ニッケル微粒子やマンガン微粒子)を分散媒に分散させた液状体F(図4参照)の液滴FbをデータセルCに吐出し、データセルCに着弾した液滴Fbを乾燥及び焼成させるこ
とによって形成されている。着弾した液滴Fbの乾燥・焼成は、レーザ光B(図5参照)を照射することによって行われる。尚、本実施形態では、液滴Fbを乾燥・焼成することによってドットDを形成するが、これに限らず、例えば、レーザ光Bの乾燥のみによって形成してもよい。
【0023】
識別コード10は、各データセルC内のドットDの有無によって、液晶表示装置1の製品番号やロット番号等を再現可能にする。本実施形態では、上記基板2の長手方向をX矢印方向とし、X矢印方向と直交する方向をY矢印方向とする。
【0024】
次に、前記識別コード10を形成するための液滴吐出装置20について説明する。
図2において、液滴吐出装置20の基台21は、その長手方向がX矢印方向に沿う直方体形状に形成されて、その上面には、X矢印方向に延びる一対の案内溝22が形成されている。基台21の上側には、相対移動手段を構成する基板ステージ23が取り付けられている。基板ステージ23は、基台21に設けられたX軸モータMX(図6参照)に駆動連結され、案内溝22に沿って所定の速度(搬送速度Vx)でX矢印方向及び反X矢印方向に直動する。基板ステージ23の上面には、図示しない吸引式のチャック機構が設けられている。基板ステージ23は、表面2a(コード形成領域S)を上側にして載置された基板2を位置決め固定する。
【0025】
基台21のY矢印方向両側には、X矢印方向から見て門型に形成された案内部材24が架設されて、その案内部材24の上側には、収容タンク25が配設されている。収容タンク25は、液状体Fを収容して、同液状体Fを吐出ヘッド30に導出する。案内部材24の下側には、Y矢印方向に延びる上下一対の案内レール26がY矢印方向全幅にわたり形成されている。上下一対の案内レール26には、キャリッジ27が取り付けられている。キャリッジ27は、案内部材24に設けられたY軸モータMY(図6参照)に駆動連結され、案内レール26に沿ってY矢印方向及び反Y矢印方向に直動する。
【0026】
キャリッジ27の下側には、Y矢印方向に延びる直方体形状の支持部材28が配設されて、その支持部材28の下側には、液滴吐出ヘッド30(以下単に、吐出ヘッド30という。)取着されている。図3は、吐出ヘッド30を基板2側から見た斜視図であって、図4及び図5は、吐出ヘッド30を反Y矢印方向から見た側面図である。
【0027】
図3において、吐出ヘッド30の基板2側(図3の上側)には、ノズルプレート31が備えられて、そのノズルプレート31の基板2側には、前記基板2の表面2aと平行なノズル形成面31aが形成されている。ノズル形成面31aには、16個のノズルNが基板2の法線方向(Z矢印方向)に沿って貫通形成されている。各ノズルNは、それぞれY矢印方向に沿って等間隔(前記セル幅Wのピッチ幅)で配列されている。
【0028】
本実施形態では、図4に示すように、各ノズルNの反Z矢印方向側に相対する表面2a上の位置を、それぞれ着弾位置PFという。
図4において、各ノズルNのZ矢印方向側(上側)には、収容タンク25に連通するキャビティ32が形成されて、収容タンク25の導出する液状体Fを、それぞれ対応するノズルN内に供給する。各キャビティ32の上側には、上下方向に振動可能な振動板33が貼り付けられて、キャビティ32内の容積を拡大・縮小する。振動板33の上側には、各ノズルNに対応する16個の圧電素子PZが配設されている。各圧電素子PZは、それぞれ圧電素子PZを駆動制御するための信号(圧電素子駆動電圧COM1:図6参照)を受けるとき、上下方向に収縮・伸張して対応する振動板33を上下方向に振動させる。
【0029】
各圧電素子PZは、それぞれ基板ステージ23が搬送速度VxでX矢印方向に搬送され、データセルCの目標吐出位置Pが着弾位置PFに位置するタイミングで、圧電素子駆動
電圧COM1を受ける。圧電素子駆動電圧COM1を受ける各圧電素子PZは、それぞれ対応するキャビティ32内の容積を拡大・縮小し、対応するノズルN内の液状体Fの界面を振動させて所定容量の液状体FをノズルNから液滴Fbとして吐出させる。ノズルNから吐出された液滴Fbは、反Z矢印方向に沿って飛行し、対応する着弾位置PF(目標吐出位置P)に着弾する。
【0030】
目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbは、基板ステージ23の搬送移動によってX矢印方向に移動し、その搬送時間の経過に伴って、対応するデータセルC内に濡れ広がり、その外径を前記セル幅Wにまで拡大させる。
【0031】
本実施形態では、搬送移動される液滴Fbの中心位置(目標吐出位置P)であって、その液滴Fbの外径がセル幅Wになる位置(図4に示す2点鎖線)を、「目標照射位置PT」という。また、液滴Fbの吐出動作の開始時から、その吐出した液滴Fbが前記目標照射位置PTに到達するまでの時間を、「照射待機時間」という。
【0032】
図4において、キャリッジ27の下側であって、支持部材28(吐出ヘッド30)のX矢印方向側には、回動機構を構成するガイド部材34が配設されている。ガイド部材34は、キャリッジ27のY矢印方向略全幅にわたって断面L字状に形成されて、そのキャリッジ27側の側面には、ガイド面34aが形成されている。ガイド面34aは、Y矢印方向から見て、前記目標照射位置PTを曲率中心とする円弧状に形成された凹曲面であって、ガイド部材34のY矢印方向全幅にわたって形成されている。
【0033】
ガイド部材34のガイド面34aには、回動機構を構成する回動ステージ35が配設されている。回動ステージ35は、Y矢印方向に延びる蒲鉾状に形成され、そのガイド部材34側に、前記ガイド面34aに沿う凸曲面(摺動面35a)が形成されている。回動ステージ35は、ガイド部材34に内設された図示しないウォームギヤ等を介して回動モータMR(図6参照)に駆動連結されて、その摺動面35aを前記ガイド面34aに沿って摺動(回動)させる。すなわち、回動ステージ35は、その摺動面35aとガイド面34aが面一になるように、前記曲率中心(目標照射位置PT)を回動中心にして回動する。
【0034】
回動ステージ35は、回動モータMRが回動ステージ35を回動させるための信号(回動モータ駆動信号SMR:図6参照)を受けるとき、回動モータMRの正転駆動又は逆転駆動によって、前記目標照射位置PTを回動中心にして、図4における右回り又は左回りに回動する。
【0035】
本実施形態では、図4の実線で示すように、回動ステージ35の配置位置であって、その摺動面35aがガイド面34aと相対する位置を、「基準位置」という。また、図4の破線で示すように、回動ステージ35の配置位置であって、前記「基準位置」から所定の角度(回動角度θr)だけ右回りに回動した位置を、「照射位置」という。
【0036】
図3において、回動ステージ35には、Y矢印方向に延びる断面コの字状の位置決め部材36が配設されて、その位置決め部材36には、Y矢印方向に延びる直方体形状に形成されたレーザヘッド37が取着されている。レーザヘッド37の基板2側の側面には、各ノズルNに対応する16個の照射口37aが、Y矢印方向に沿って等間隔(前記セル幅Wの形成ピッチ)に配列形成されている。
【0037】
図4において、レーザヘッド37の内部には、16個の半導体レーザLDが、それぞれ各ノズルN(照射口37a)に対応する位置に配設されている。各半導体レーザLDは、それぞれ前記液状体Fの吸収波長に対応した波長領域のレーザ光Bを出射する。位置決め部材36に位置決めされるレーザヘッド37は、各半導体レーザLDからのレーザ光Bを
前記摺動面35a(ガイド面34a)の径方向内側に向かって出射し、対応する照射口37aから照射させる。
【0038】
本実施形態では、各照射口37aからのレーザ光Bの光軸A1と基板2の法線方向(Z矢印方向)とのなす角度を、「照射角度θ」とし、回動ステージ35が「基準位置」に位置するときの「照射角度θ」を、「基準照射角度θi」とする。
【0039】
各照射口37aは、回動モータMRが正転駆動して、回動ステージ35が「基準位置」から「照射位置」に配置移動するとき、それぞれ目標照射位置PTを回動中心にして右回りに回動する。「照射位置」に位置する各照射口37aは、レーザ光Bの「照射角度θ」を「基準照射角度θi」から「回動角度θr」だけ小さくする。各照射口37aは、「照射角度θ」を「基準照射角度θi」から「回動角度θr」だけ小さくする間、レーザ光Bの照射する位置を回動中心である「目標照射位置PT」に維持する。
【0040】
これによって、液滴吐出装置20は、レーザ光Bの「照射角度θ」を変更する際に、各照射口37aからのレーザ光Bの照射する位置の位置精度を維持させることができる。
各半導体レーザLDは、それぞれ基板ステージ23が搬送速度VxでX矢印方向に搬送され、データセルC(液滴Fb)が目標照射位置PTに侵入するタイミングで、レーザ光Bを出射するための駆動信号(レーザ駆動電圧COM2:図6参照)を受ける。レーザ駆動電圧COM2を受ける半導体レーザLDは、図5に示すように、対応する照射口37aからのレーザ光Bを対応する目標照射位置PTの領域に向けて照射し、目標照射位置PTを通過するセル幅Wの液滴Fbを瞬時に乾燥して固化する。固化した液滴Fbは、連続するレーザ光Bの照射によってその金属微粒子が焼成されて、基板2の表面2aに固着したドットDを形成する。
【0041】
この際、液滴Fbを照射するレーザ光Bは、回動ステージ35の回動分だけ、すなわち「回動角度θr」分だけ、その「照射角度θ」を小さくして、液滴Fbに照射するレーザ光Bのエネルギー密度を増加させる。しかも、レーザ光Bは、「照射角度θ」を小さくする間、その照射する位置を目標照射位置PTに維持する。
【0042】
従って、液滴吐出装置20は、回動ステージ35の回動によって、液滴Fbに照射するレーザ光Bのエネルギー不足、すなわち、液滴Fbの乾燥不足を解消させることができ、かつ、レーザ光Bの照射位置を維持させることができる。
【0043】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置20の電気的構成を図6に従って説明する。
図6において、制御装置41は、CPU、RAM、ROM等を備え、ROM等に格納された各種データと各種制御プログラムに従って、基板ステージ23を移動させて、吐出ヘッド30、レーザヘッド37及び回動ステージ35を駆動させる。
【0044】
制御装置41には、起動スイッチ、停止スイッチ等の操作スイッチを有した入力装置42が接続されている。制御装置41には、識別コード10の画像が既定形式の描画データIaとして入力装置42から入力されるとともに、回動ステージ35の「回動角度θr」が既定形式の回動角度データIθとして入力装置42から入力される。制御装置41は、入力装置42からの描画データIaを受けて、ビットマップデータBMD、圧電素子駆動電圧COM1及びレーザ駆動電圧COM2を生成し、入力装置42からの回動角度データIθを受けて、回動モータ駆動信号SMRを生成する。
【0045】
尚、ビットマップデータBMDは、各ビットの値(0あるいは1)に応じて、圧電素子PZのオンあるいはオフを規定するものであり、二次元描画平面(コード形成領域S)上における各データセルCに、液滴Fbを吐出するか否かを規定するデータである。
【0046】
制御装置41には、X軸モータ駆動回路43が接続されて、X軸モータ駆動回路43に対応する駆動制御信号を出力する。X軸モータ駆動回路43は、制御装置41からの駆動制御信号に応答してX軸モータMXを正転又は逆転させる。制御装置41には、Y軸モータ駆動回路44が接続されて、Y軸モータ駆動回路44に対応する駆動制御信号を出力する。Y軸モータ駆動回路44は、制御装置41からの駆動制御信号に応答してY軸モータMYを正転又は逆転させる。
【0047】
制御装置41には、基板2の端縁を検出可能な基板検出装置45が接続されて、基板検出装置45からの検出信号に基づいて、着弾位置PFを通過する基板2の位置を算出する。
【0048】
制御装置41には、X軸モータ回転検出器46が接続されて、X軸モータ回転検出器46からの検出信号が入力される。制御装置41は、X軸モータ回転検出器46からの検出信号に基づいて、基板ステージ23(基板2)の移動方向及び移動量を演算する。制御装置41は、各データセルCの中心位置が着弾位置PFに位置するタイミングで、吐出ヘッド駆動回路48に吐出タイミング信号LP1を出力する。
【0049】
制御装置41には、Y軸モータ回転検出器47が接続されて、Y軸モータ回転検出器47からの検出信号が入力される。制御装置41は、Y軸モータ回転検出器47からの検出信号に基づいて、液滴吐出ヘッド30(レーザヘッド37)のY矢印方向の移動方向及び移動量を演算する。制御装置41は、各ノズルNに対応する着弾位置PFを、それぞれ目標吐出位置Pの搬送経路上に配置する。
【0050】
制御装置41には、吐出ヘッド駆動回路48が接続されて、吐出タイミング信号LP1を出力する。制御装置41は、圧電素子駆動電圧COM1を所定のクロック信号に同期させて、吐出ヘッド駆動回路48に出力する。制御装置41は、ビットマップデータBMDに基づいて所定の基準クロック信号に同期した吐出制御信号SIを生成し、その吐出制御信号SIを吐出ヘッド駆動回路48にシリアル転送する。吐出ヘッド駆動回路48は、制御装置41からの吐出制御信号SIを、それぞれ各圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換する。
【0051】
吐出ヘッド駆動回路48は、制御装置41からの吐出タイミング信号LP1を受けるとき、吐出制御信号SIに基づいて選択された圧電素子PZに、それぞれ圧電素子駆動電圧COM1を供給する。また、吐出ヘッド駆動回路48は、シリアル/パラレル変換した吐出制御信号SIをレーザ駆動回路49に出力する。
【0052】
制御装置41には、レーザ駆動回路49が接続されて、レーザ駆動電圧COM2を所定のクロック信号に同期させて出力する。レーザ駆動回路49は、吐出ヘッド駆動回路48からの吐出制御信号SIを受けるとき、所定の時間(前記照射待機時間)だけ待機して、吐出制御信号SIに基づいて選択された各半導体レーザLDに、それぞれレーザ駆動電圧COM2を供給する。すなわち、制御装置41は、着弾した液滴Fbが目標照射位置PTに搬送移動されるたびに、レーザ駆動回路49を介して、その液滴Fbの領域に向かってレーザ光Bを照射する。
【0053】
制御装置41には、回動モータ駆動回路50が接続されて、回動モータ駆動回路50に回動モータ駆動信号SMRを出力する。回動モータ駆動回路50は、制御装置41からの回動モータ駆動信号SMRに応答して、回動モータMRを正転駆動又は逆転駆動させる。回動モータ駆動回路50は、制御装置41からの回動モータ駆動信号SMRを受けるとき、回動モータMRを正転駆動あるいは逆転駆動して、回動ステージ35(照射口37a)
を回動角度θrだけ回動させる。
【0054】
次に、液滴吐出装置20を使って識別コード10を形成する方法について説明する。
まず、図2に示すように、基板ステージ23に、表面2aが上側になるように基板2を配置固定する。このとき、基板2は、案内部材24(キャリッジ27)よりも反X矢印方向側に配置されて、回動ステージ35は、前記「基準位置」に配置されている。
【0055】
この状態から、入力装置42を操作して描画データIaと回動角度データIθを制御装置41に入力する。すると、制御装置41は、描画データIaに基づくビットマップデータBMDを生成して格納し、圧電素子駆動電圧COM1及びレーザ駆動電圧COM2を生成する。圧電素子駆動電圧COM1及びレーザ駆動電圧COM2を生成すると、制御装置41は、Y軸モータMYを駆動制御し、基板2をX矢印方向に搬送するときに、各目標吐出位置Pが対応する着弾位置PFを通過するように、キャリッジ27(各ノズルN)をセットする。
【0056】
また、制御装置41は、回動角度データIθに基づく回動モータ駆動信号SMRを生成して、その回動モータ駆動信号SMRを回動モータ駆動回路50に出力する。回動モータ駆動信号SMRを出力すると、制御装置41は、回動モータ駆動回路50を介して、回動モータMRを正転駆動し、回動ステージ35を「基準位置」から「照射位置」に回動する。これによって、各照射口37aからのレーザ光Bの照射する位置の位置精度を維持した状態で、レーザ光Bの「照射角度θ」を変更することができる。
【0057】
回動ステージ35を「照射位置」に回動すると、制御装置41は、X軸モータMXを駆動制御して、基板2のX矢印方向への搬送を開始し、基板検出装置45及びX軸モータ回転検出器46からの検出信号に基づいて、最もX矢印方向側に位置するデータセルCの目標吐出位置PがノズルNの直下まで搬送されたか否か判断する。
【0058】
この間、制御装置41は、吐出ヘッド駆動回路48に吐出制御信号SIを出力するとともに、吐出ヘッド駆動回路48及びレーザ駆動回路49に、それぞれ圧電素子駆動電圧COM1及びレーザ駆動電圧COM2を出力する。
【0059】
そして、最もX矢印方向側に位置するデータセルCの目標吐出位置Pが着弾位置PFに搬送されると、制御装置41は、吐出ヘッド駆動回路48に吐出タイミング信号LP1を出力する。
【0060】
吐出タイミング信号LP1を吐出ヘッド駆動回路48に出力すると、制御装置41は、吐出ヘッド駆動回路48を介して、吐出制御信号SIに基づいて選択された圧電素子PZに、それぞれ圧電素子駆動電圧COM1を供給し、選択されたノズルNから、一斉に液滴Fbを吐出させる。吐出された液滴Fbは目標吐出位置Pに着弾して、基板ステージ23の搬送移動によってX矢印方向に移動する。X矢印方向に移動する液滴Fbは、その搬送時間の経過にともなって対応するデータセルC内に濡れ広がる。吐出動作の開始から照射待機時間だけ経過すると、目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbは、目標照射位置PTに到達して、その外径をセル幅Wにする。
【0061】
また、吐出タイミング信号LP1を吐出ヘッド駆動回路48に出力すると、制御装置41は、レーザ駆動回路49を介して、半導体レーザLDを照射待機時間だけ待機させる。制御装置41は、照射待機時間だけ半導体レーザLDを待機させると、吐出ヘッド駆動回路48からの吐出制御信号SIに基づいて選択された半導体レーザLDに、それぞれレーザ駆動電圧COM2を供給する。そして、制御装置41は、選択された半導体レーザLDから、一斉にレーザ光Bを出射させる。
【0062】
半導体レーザLDから出射されたレーザ光Bは、回動ステージ35の回動によって、「回動角度θr」分だけ、その「照射角度θ」を小さくし、液滴Fbに対するエネルギー密度を増加させる。しかも、半導体レーザLDから出射されたレーザ光Bは、その照射位置を目標照射位置PTに維持する。そして、制御装置41、液滴Fbに照射するレーザ光Bのエネルギー不足、すなわち、液滴Fbの乾燥不足を回避させて、外径がセル幅WからなるドットDを基板2の表面2aに形成する。これによって、液滴吐出装置20は、最もX矢印方向側に位置するデータセルCに、セル幅Wに整合したドットDを形成する。
【0063】
以後、同様に、制御装置41は、基板2をX矢印方向に搬送して、各目標吐出位置Pが着弾位置PFに到達するたびに、選択したノズルNから液滴Fbを吐出し、着弾した液滴Fbがセル幅Wになるタイミングで、液滴Fbの領域にレーザ光Bを照射する。これによって、コード形成領域S内に、全てのドットDを形成する。
【0064】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、キャリッジ27の基板2側に、目標照射位置PTを回動中心とする回動ステージ35を設け、その回動ステージ35に、レーザヘッド37を配設した。そして、回動ステージ35を「基準位置」から「照射位置」に配置移動するときに、レーザヘッド37の各照射口37aが、それぞれ対応する目標照射位置PTを回動中心にして回動して、レーザ光Bの「照射角度θ」を回動ステージ35の「回動角度θr」だけ小さくした。
【0065】
従って、レーザ光Bの「照射角度θ」を変更するときに、レーザ光Bの照射する位置を、対応する目標照射位置PTに維持させることができる。その結果、レーザ光Bの照射する位置とその位置精度を維持させて、液滴Fbに対する「照射角度θ」のみを変更させることができる。
【0066】
(2)しかも、「照射角度θ」を変更させるとき、照射口37aと対応する目標照射位置PTとの間の距離(光路長)を維持させることができる。そのため、表面2aに形成する光断面のサイズや形状を、「照射角度θ」のみによって規定させることができる。この結果、所望する光断面(エネルギー密度)のレーザ光Bを、液滴Fbの領域に、より確実に照射させることができる。
【0067】
その結果、レーザ光Bの照射位置やその位置精度を維持させて、レーザ光Bの照射条件を、液滴Fbの構成材料や表面2aの表面状態に応じて変更させることができる。ひいては、インクジェット法によるパターン形成の利用範囲を拡張させることができる。
【0068】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図7及び図8に従って説明する。尚、第2実施形態は、第1実施形態の吐出ヘッド30近傍に第1の反射部材としての反射ミラーMを設け、ガイド面34aの曲率中心の位置を変更したものである。そのため、以下では、反射ミラーMとガイド面34aの変更点について詳細に説明する。
【0069】
図7において、吐出ヘッド30の基板2側には、第2の反射部材としてのノズルプレート31が備えられて、そのノズルプレート31の基板2側の側面には、第2反射面としてのノズル形成面31aが形成されている。ノズル形成面31aは、基板2の表面2aと平行に形成された鏡面であって、基板2側からのレーザ光Bを同基板2側に正反射する。
【0070】
ノズル形成面31aのX矢印方向であって、その基板2の表面2a側には、支持部材28に吊下された反射ミラーMが配設されている。反射ミラーMは、その吐出ヘッド30側
の側面に、前記ノズル形成面31aと平行に形成された第1反射面(反射面Ma)を有し、キャリッジ27側からのレーザ光Bを前記ノズル形成面31a側に正反射する。
【0071】
本実施形態では、これらノズル形成面31aと反射面Maとの間の距離を、「反射距離Hr」という。また、本実施形態では、目標照射位置PTの反Z矢印方向側であって、同目標照射位置PTからの距離が前記「反射距離Hr」の2倍(「反射補正距離Hpc」)になる位置を、「回動中心位置P0」という。
【0072】
図7において、キャリッジ27の下側であって吐出ヘッド30のX矢印方向側には、回動機構を構成するガイド部材34が配設されている。ガイド部材34は、キャリッジ27のY矢印方向略全幅にわたって断面略L字状に形成されて、そのキャリッジ27側の側面には、ガイド面34aが形成されている。ガイド面34aは、Y矢印方向から見て、前記「回動中心位置P0」を曲率中心とする円弧状に形成された凹曲面であって、ガイド部材34のY矢印方向全幅にわたって形成されている。
【0073】
ガイド部材34のガイド面34aには、回動機構を構成する回動ステージ35が配設されて、その回動ステージ35のガイド部材34側の側面には、前記ガイド面34aに沿う摺動面35aが形成されている。回動ステージ35は、回動モータMRが回動ステージ35を回動させるための信号(回動モータ駆動信号SMR:図6参照)を受けるとき、回動モータMRの正転駆動又は逆転駆動によって、前記「回動中心位置P0」を回動中心にして、図7における右回り又は左回りに回動する。
【0074】
本実施形態では、図7の実線で示すように、回動ステージ35の配置位置であって、その摺動面35aがガイド面34aと相対する位置を、「基準位置」という。また、図7の破線で示すように、回動ステージ35の配置位置であって、前記「基準位置」から所定の角度(回動角度θr)だけ右回りに回動した位置を、「照射位置」という。
【0075】
図7において、回動ステージ35には、第1実施形態と同じく位置決め部材36を介してレーザヘッド37が取着されている。レーザヘッド37は、内蔵する各半導体レーザLDからのレーザ光Bを前記摺動面35a(ガイド面34a)の径方向内側に位置する「回動中心位置P0」に向かって対応する照射口37aから出射する。
【0076】
本実施形態では、反射面Maに対するレーザ光Bの光軸A1と基板2の法線方向(Z矢印方向)とのなす角度を、「照射角度θ」とし、回動ステージ35が「基準位置」に位置するときの「照射角度θ」を、「基準照射角度θi」という。
【0077】
レーザヘッド37は、回動ステージ35が「基準位置」に位置するとき、照射口37aからのレーザ光Bを「回動中心位置P0」に向けて出射する。照射口37aから出射されたレーザ光Bは、反射面Maによる正反射と、ノズル形成面31aによる正反射と、をそれぞれ1回ずつ経て、その「照射角度θ」を「基準照射角度θi」に維持した状態で表面2a上を照射する。すなわち、「回動中心位置P0」に向けて出射された照射口37aからのレーザ光Bは、反射面Maにより上方に向けて1回反射される分だけ、「回動中心位置P0」の上方を照射する。この結果、「回動中心位置P0」に向けて出射されたレーザ光Bの照射位置は、反射面Maがレーザ光Bを反射する回数をnとすると、「回動中心位置P0」からZ矢印方向に「反射距離Hr」の2倍(n×2)の距離(「反射補正距離Hpc」)だけ変位した位置になる。
【0078】
各照射口37aは、回動モータMRが正転駆動して、回動ステージ35が「基準位置」から「照射位置」に配置移動するとき、図8に示すように、「回動中心位置P0」を回動中心にして右回りに回動し、レーザ光Bの「照射角度θ」を「基準照射角度θi」から「
回動角度θr」だけ小さくする。
【0079】
この際、照射口37aからのレーザ光Bは、反射面Maとノズル形成面31aとの間の空間で多重反射し、その後、「回動中心位置P0」を回動中心にして「回動角度θr」だけ回動した光軸A1に沿って表面2a上を照射する。すなわち、「回動中心位置P0」に向けて出射されたレーザ光Bは、その「照射角度θ」を「基準照射角度θi」から「回動角度θr」だけ小さくし、かつ、その「照射位置」を目標照射位置PTに維持する。
【0080】
従って、液滴吐出装置20は、回動ステージ35を「回動角度θr」だけ回動するとき、目標照射位置PTに照射するレーザ光Bの「照射角度θ」を「回動角度θr」だけ変更することができ、かつ、各照射口37aからのレーザ光Bの照射する位置を目標照射位置PTに維持させることができる。
【0081】
次に、上記のように構成した第2実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、照射口37aと目標照射位置PTとの間に、レーザ光Bを正反射可能な反射面Ma及びノズル形成面31aに配設した。また、目標照射位置PTの反Z矢印方向であって、同目標照射位置PTからの距離が反射補正距離Hpcだけ離間した位置に、回動ステージ35の回動中心位置P0を設けた。そして、回動中心位置P0を回動中心にして、回動ステージ35、すなわち、レーザヘッド37の照射口37aを回動した。
【0082】
従って、レーザ光Bの「照射角度θ」を変更するときに、レーザ光Bの照射する位置を、対応する目標照射位置PTに維持させることができる。その結果、レーザ光Bの照射する位置とその位置精度を維持させて、液滴Fbに対する「照射角度θ」のみを変更させることができる。
【0083】
(2)しかも、「照射角度θ」を変更するときに、照射口37aと対応する目標照射位置PTとの間の距離(光路長)を維持させることができる。そのため、表面2aに形成する光断面のサイズや形状を、「照射角度θ」のみによって規定させることができる。この結果、所望する光断面(エネルギー密度)のレーザ光Bを、液滴Fbの領域に、より確実に照射させることができる。
【0084】
(3)また、レーザ光Bは、反射面Maとノズル形成面31aとの間の反射を介する分だけ、その「照射角度θ」を0°に近づけることができる。従って、「照射角度θ」の変更範囲を拡大させることができて、液滴Fbの乾燥条件の範囲を拡張させることができる。
【0085】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、回動ステージ35を右回りに回動して「照射角度θ」を小さくするとともに、液滴Fbに照射するレーザ光Bの光断面を小さくしてレーザ光Bのエネルギー密度を増加させる構成にした。これに限らず、例えば「照射角度θ」を小さくし、かつ、レーザ光Bの出力強度を低くし、液滴Fbに照射するレーザ光Bのエネルギー密度を同じくして光断面のみを小さくさせる構成であってもよい。
【0086】
さらには、回動ステージ35を左回りに回動して、「照射角度θ」を大きくする構成にしてもよい。これによれば、液滴Fbに対するレーザ光Bの光断面を拡大して、そのエネルギー密度を減少させることができる。その結果、液滴Fbを乾燥するための条件範囲を拡大させることができ、液滴Fbの材料構成の範囲を拡大させることができる。ひいては、液滴吐出装置20の利用範囲を拡大させることができる。
【0087】
・上記実施形態では、着弾位置PFと目標照射位置PTを異なる位置に具体化したが、これに限らず、これら着弾位置PFと目標照射位置PTを、同じ位置に具体化してもよい。
【0088】
・上記第2実施形態では、反射面Maとノズル形成面31aによって、それぞれ一回だけレーザ光Bを反射させる構成にした。これに限らず、反射面Maとノズル形成面31aとの間で、レーザ光Bを多重反射させる構成にしてもよい。尚、この際、「反射補正距離Hpc」は、「反射距離Hr」に、レーザ光Bの反射面Maでの反射回数の2倍を乗じた距離にするのが好ましい。
【0089】
・上記実施形態では、液滴Fbの領域に照射するレーザ光Bによって、液滴Fbを乾燥・焼成する構成にした。これに限らず、例えば照射するレーザ光Bのエネルギーによって、液滴Fbを所望の方向に流動させる構成にしてもよく、あるいは液滴Fbの外縁のみに照射して液滴Fbをピニングさせる構成にしてもよい。すなわち、液滴Fbの領域に照射するレーザ光Bによってパターンを形成する構成であればよい。
【0090】
・上記実施形態では、液滴Fbによって半円球状のドットDを形成する構成にしたが、これに限らず、例えば、楕円形状のドットや線状のパターンを形成する構成であってもよい。
【0091】
・上記実施形態では、パターンを識別コード10のドットDに具体化した。これに限らず、例えば液晶表示装置1や、平面状の電子放出素子を備えて同素子から放出された電子による蛍光物質の発光を利用した電界効果型装置(FEDやSED等)に設けられる各種薄膜、金属配線、カラーフィルタ等に具体化してもよい。すなわち、パターンは、着弾した液滴Fbによって形成するものであればよい。
【0092】
・上記実施形態では、被吐出面を基板2の表面2aに具体化したが、これに限らず、例えばシリコン基板やフレキシブル基板、あるいは金属基板等の一側面であってもよく、着弾した液滴Fbによってパターンを形成する対象物の一側面であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本実施形態における液晶表示装置を示す平面図。
【図2】同じく、液滴吐出装置を示す概略斜視図。
【図3】第1実施形態の液滴吐出ヘッドを示す概略斜視図。
【図4】同じく、液滴吐出ヘッドを説明する説明図。
【図5】同じく、液滴吐出ヘッドを説明する説明図。
【図6】同じく、液滴吐出装置の電気的構成を示す電気ブロック回路図。
【図7】第2実施形態の液滴吐出ヘッドを説明する説明図。
【図8】同じく、液滴吐出ヘッドを説明する説明図。
【符号の説明】
【0094】
2…基板、2a…被吐出面としての表面、20…液滴吐出装置、30…液滴吐出ヘッド、31…第2の反射部材としてのノズルプレート、31a…第2反射面としてのノズル形成面、34…回動機構を構成するガイド部材、35…回動機構を構成する回動ステージ、37…レーザ照射手段を構成するレーザヘッド、37a…照射口、B…レーザ光、D…パターンとしてのドット、Fb…液滴、N…ノズル、PT…目標照射位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の被吐出面に向けてパターン形成材料の液滴を吐出し、
照射口から目標照射位置に向けてレーザ光を照射し、
前記対象物と前記照射口とを相対移動して前記被吐出面に着弾した前記液滴に前記レーザ光を照射してパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記目標照射位置を回動中心にして前記照射口を回動することにより前記レーザ光の照射角度を設定することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
対象物の被吐出面に向けてパターン形成材料の液滴を吐出し、
照射口からのレーザ光を目標照射位置に照射し、
前記対象物と前記照射口とを相対移動して前記被吐出面に着弾した前記液滴に前記レーザ光を照射してパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記照射口からのレーザ光を前記被吐出面と平行な第1反射面に向けて出射し、
前記第1反射面の受ける前記レーザ光を前記第1反射面から前記被吐出面と相対向する第2反射面に向けて反射し、
前記第2反射面の受ける前記レーザ光を前記第2反射面から前記目標照射位置に向けて反射し、
前記第1反射面に対する前記レーザ光の照射角度を設定するとき、前記目標照射位置を含む前記被吐出面の法線上の位置を回動中心にして前記照射口を回動し、前記第1反射面での前記レーザ光の反射回数をnとし、前記第1反射面と前記第2反射面との間の距離をHrとし、前記目標照射位置と前記回動中心との間の距離をHpcとするとき、Hpc=n×2×Hrを満たすことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
対象物の被吐出面に向けてパターン形成材料の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
照射口から目標照射位置に向けてレーザ光を照射するレーザ照射手段と、
前記対象物と前記照射口とを相対移動して前記被吐出面に着弾した前記液滴に前記レーザ光を通過させる相対移動手段と、
を備えた液滴吐出装置であって、
前記レーザ照射手段は、
前記目標照射位置を回動中心にして前記照射口を回動し、前記レーザ光の照射角度を設定する回動機構を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
対象物の被吐出面に向けてパターン形成材料の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
照射口からのレーザ光を目標照射位置に照射するレーザ照射手段と、
前記対象物と前記照射口とを相対移動して前記被吐出面に着弾した前記液滴に前記レーザ光を通過させる相対移動手段と、
を備えた液滴吐出装置であって、
前記レーザ照射手段は、
前記被吐出面と平行な第1反射面を有し、前記照射口からの前記レーザ光を受けて前記液滴吐出ヘッドに向けて反射する第1の反射部材と、
前記被吐出面と相対向する第2反射面を有し、前記第1反射面からの前記レーザ光を受けて前記目標照射位置に向けて反射する第2の反射部材と、
前記照射口を回動することにより前記第1反射面に対する前記レーザ光の照射角度を設定し、前記照射口の回動中心が、前記目標照射位置を含む前記被吐出面の法線上の位置であって、かつ、前記第1反射面での前記レーザ光の反射回数をnとし、前記第1反射面と前記第2反射面との間の距離をHrとし、前記目標照射位置と前記回動中心との間の距離をHpcとするとき、Hpc=n×2×Hrを満たす回動機構と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出装置であって、
前記第2の反射部材は、前記液滴を吐出するノズルの形成されたノズルプレートであることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−144400(P2007−144400A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276855(P2006−276855)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】