説明

パターン描画方法、配線パターン描画方法及び薄膜トランジスタ基板の製造方法

【課題】液滴吐出ヘッドと基材とを相対的に移動させることによって、同一の基材上に互いに方向と幅の異なる複数の線が混在するパターンを、同一方向の線毎に、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することによって描画するに際し、より高速な描画を行うこと。
【解決手段】基材上に方向と幅の異なる複数の線が混在するパターンを、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することによって、同一方向に沿う線毎に描画する方法であって、複数の線のうち、幅の最も狭い線とは方向が異なり且つ幅が広い線を、該幅の最も狭い線を描画する際に吐出する液滴のドット径よりも大きなドット径の液滴を吐出することによって描画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパターン描画方法、配線パターン描画方法及び薄膜トランジスタ基板の製造方法に関し、詳しくは、基材上に方向と幅の異なる複数の線からなるパターンを高速に描画することのできるパターン描画方法、配線パターン描画方法及び薄膜トランジスタ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタなど、液滴吐出ヘッドに等ピッチで配列されたノズル列から、インクを吐出することによりドットを形成する描画装置では、1つのインクジェットヘッドを基材に対して主走査方向及び副走査方向に相対的に移動しながらインクを吐出することによって所定の描画を行っている(例えば特許文献1)。
【0003】
このような描画装置を用いてTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)の配線パターンを形成する場合、基材に対して液滴吐出ヘッドを相対的に走査移動させながら機能液滴(導電性インク)を吐出することにより、セル毎に機能する周期的なパターンを形成することが考えられる。セルは各々半導体や複数の配線等を有する機能パターンを有するものであり、同一パターンのセルを基材上にマトリクス状に繰り返し形成することで、所定の配線パターンを有する薄膜トランジスタ基板が作製される。1つのセル中には、互いに異なる方向に沿って延びる配線が混在している。
【0004】
このような薄膜トランジスタ基板では、各配線を高精度に描画することが重要である。このため、本出願人は、方向の異なる直線を描画する際に、同一方向の直線毎に、それぞれ基材に対する液滴吐出ヘッドの相対的な移動方向を一方向(例えばノズル列と直交する方向)に移動させるようにすることで、高精細な直線を描画することを提案している(先願明細書)。直線の描画を液滴吐出ヘッドのノズル列と直交方向(主走査方向)に沿って行う場合とノズル列方向(副走査方向)に沿って行う場合とを混在させると、ノズルの加工精度のばらつきやステージ精度のばらつき、複数のヘッドを備える場合には各ヘッド間の取り付け位置のばらつき等によって、直線の方向毎の精度にばらつきが生じてしまい、高精細な直線を描画することが困難となるためである。
【0005】
従って、方向の異なる複数の配線を高精度に描画するためには、同一方向の配線毎に、基材に対する液滴吐出ヘッドの相対的な移動方向を一方向にして描画を行うことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−275636号公報
【先願明細書】
【0007】
特願2008−314644号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薄膜トランジスタ基板を製造する場合には、高密度パターンへのニーズがあり、これに応えるためにセルサイズをより小さくすることが求められている。
【0009】
セルサイズを小さくするには、機能液滴によって描画される配線の幅を狭く(細く)することが有効である。しかし、その一方で、電源と接続される配線等のように電気抵抗の増大化を抑える必要がある配線は、幅をなるべく広くしたい要請もある。このため、同一の基材上には、幅の異なる配線が混在することとなる。
【0010】
このような薄膜トランジスタ基板の配線パターンを描画する場合の液滴吐出ヘッドには、吐出した機能液滴が基材上に着弾した時に、描画すべき複数の配線のうちの最も幅の狭い配線に対応したドット径となるノズルが備えられる。最も幅の狭い配線は1つのノズル単独で機能液滴を連続して吐出することによって描画され、それよりも幅の広い配線は、その幅に応じて、同一の液滴吐出ヘッドの隣接する2以上のノズルから機能液滴を吐出して並列に着弾させた連続するドットによって描画される。あるいは、1本の幅広の配線を描画するために、基材と液滴吐出ヘッドとの相対的な移動を複数回繰り返す場合もある。
【0011】
ところで、液滴吐出ヘッドを用いて各種のパターン描画を行う製造技術分野においては、高効率化のために描画のより一層の高速化が求められるようになってきており、薄膜トランジスタ基板の配線パターンの描画においても、この高速化が要望されている。
【0012】
しかしながら、上記のように最も幅狭の配線を描画するために液滴吐出ヘッドから吐出される機能液滴のドット径を幅狭の配線に合わせて小さくすると、所定距離のラインを描画し終えるまでにかかる時間が長くなってしまう。しかも、液滴吐出ヘッドの吐出周波数には限界があるため、高精度の描画のためには液滴吐出ヘッドの基材に対する相対的な移動時間(移動速度)を遅くする必要がある。このため、描画時間の増大化につながる問題があり、描画の高速化にも限界があった。
【0013】
このような問題は、薄膜トランジスタ基板の製造の場合に限らず、液滴吐出ヘッドによって同一の基材上に互いに方向と幅の異なる複数の線が混在するパターンを、同一方向の線毎に、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することにより描画する場合に同様に見られる問題である。
【0014】
特許文献1には、液滴吐出ヘッドの走査方向に対する角度を変更することによって、ノズルピッチを変更させ、各ノズルから吐出される液滴の着弾密度を調整することが記載されるが、同一の基材上に互いに方向と幅の異なる複数の線が混在するパターンを、同一方向の線毎に、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することにより描画する場合の描画時間の増大化の問題を解決することの記載はない。
【0015】
そこで、本発明の課題は、液滴吐出ヘッドと基材とを相対的に移動させることによって、同一の基材上に互いに方向と幅の異なる複数の線が混在するパターンを、同一方向の線毎に、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することによって描画するに際し、より高速な描画を行うことのできるパターン描画方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の課題は、液滴吐出ヘッドと基材とを相対的に移動させることによって、同一の基材上に互いに方向と幅の異なる複数の配線が混在するパターンを、同一方向の配線毎に、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することによって描画するに際し、より高速な描画を行うことのできる配線パターン描画方法を提供することにある。
【0017】
また、本発明の更に他の課題は、液滴吐出ヘッドと基材とを相対的に移動させることによって、同一の基材上に互いに方向と幅の異なる複数の配線が混在するパターンを、同一方向の配線毎に、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することによって描画するに際し、より高速な描画を行うことのできる薄膜トランジスタ基板の製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0020】
請求項1記載の発明は、基材上に方向と幅の異なる複数の線が混在するパターンを、それぞれ前記基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することによって、同一方向に沿う線毎に描画する方法であって、
前記複数の線のうち、幅の最も狭い線とは方向が異なり且つ幅が広い線を、該幅の最も狭い線を描画する際に吐出する液滴のドット径よりも大きなドット径の液滴を吐出することによって描画することを特徴とするパターン描画方法である。
【0021】
請求項2記載の発明は、基材上に、1又は2以上の直線からなる第1の配線と、少なくとも該第1の配線における最も幅が狭い配線よりも幅が広い1又は2以上の直線からなる第2の配線とによって構成され、前記第1の配線と前記第2の配線とが互いに異なる第1の方向及び第2の方向に沿って混在するように配置される配線パターンを、それぞれ前記基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら機能液滴を吐出することによって、第1の方向又は第2の方向に沿う配線毎に描画する方法であって、
前記第1の配線を、前記基材上の第1の方向に沿って描画する工程と、
前記第2の配線を、前記基材上の第2の方向に沿い、且つ、前記第1の配線を描画する際に使用される機能液滴のドット径よりも大きなドット径の機能液滴を吐出することによって描画する工程とを有することを特徴とする配線パターン描画方法である。
【0022】
請求項3記載の発明は、前記第1の配線を描画する際に使用される液滴のドット径は、該第1の配線における最も幅の狭い配線幅に対応し、前記第2の配線を描画する際に使用される液滴のドット径は、該第2の配線における最も幅の狭い配線幅に対応することを特徴とする請求項2記載の配線パターン描画方法である。
【0023】
請求項4記載の発明は、前記第1の配線を描画する工程は、前記第1の配線を、第1の液滴吐出ヘッドを前記基材に対して第1の方向に相対的に移動させながら描画し、
前記第2の配線を描画する工程は、前記第2の配線を、前記第1の液滴吐出ヘッドのノズルから吐出される機能液滴のドット径よりも大きなドット径の機能液滴を吐出する第2の液滴吐出ヘッドを前記基材に対して第2の方向に相対的に移動させながら描画することを特徴とする請求項2又は3記載の配線パターン描画方法である。
【0024】
請求項5記載の発明は、前記基材は長辺と短辺とからなる長方形状であり、
前記第1の配線を描画する工程では、前記第1の配線を、前記基材の短辺に沿う方向に描画し、
前記第2の配線を描画する工程では、前記第2の配線を、前記基材の長辺に沿う方向に描画することを特徴とする請求項2、3又は4記載の配線パターン描画方法である。
【0025】
請求項6記載の発明は、基材上に、1又は2以上の直線からなる第1の配線と、少なくとも該第1の配線における最も幅が狭い配線よりも幅が広い1又は2以上の直線からなる第2の配線とによって構成され、前記第1の配線と前記第2の配線とが互いに異なる第1の方向及び第2の方向に沿って混在するように配置される配線パターンを、それぞれ前記基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら機能液滴を吐出することによって、第1の方向又は第2の方向に沿う配線毎に描画する薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、
前記第1の配線を、前記基材上の第1の方向に沿って描画する工程と、
前記第2の配線を、前記基材上の第2の方向に沿い、且つ、前記第1の配線を描画する際に使用される機能液滴のドット径よりも大きなドット径の機能液滴を吐出することによって描画する工程とを有することを特徴とする薄膜トランジスタ基板の製造方法である。
【0026】
請求項7記載の発明は、前記第1の配線を描画する際に使用される液滴のドット径は、該第1の配線における最も幅の狭い配線幅に対応し、前記第2の配線を描画する際に使用される液滴のドット径は、該第2の配線における最も幅の狭い配線幅に対応することを特徴とする請求項6記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法である。
【0027】
請求項8記載の発明は、前記第1の配線を描画する工程は、前記第1の配線を、第1の液滴吐出ヘッドを前記基材に対して第1の方向に相対的に移動させながら描画し、
前記第2の配線を描画する工程は、前記第2の配線を、前記第1の液滴吐出ヘッドのノズルから吐出される機能液滴のドット径よりも大きなドット径の機能液滴を吐出する第2の液滴吐出ヘッドを前記基材に対して第2の方向に相対的に移動させながら描画することを特徴とする請求項6又は7記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法である。
【0028】
請求項9記載の発明は、前記基材は長辺と短辺とからなる長方形状であり、
前記第1の配線を描画する工程では、前記第1の配線を、前記基材の短辺に沿う方向に描画し、
前記第2の配線を描画する工程では、前記第2の配線を、前記基材の長辺に沿う方向に描画することを特徴とする請求項6、7又は8記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、液滴吐出ヘッドと基材とを相対的に移動させることによって、同一の基材上に互いに方向と幅の異なる複数の線が混在するパターンを、同一方向の線毎に、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することによって描画するに際し、より高速な描画を行うことのできるパターン描画方法を提供することができる。
【0030】
また、本発明によれば、液滴吐出ヘッドと基材とを相対的に移動させることによって、同一の基材上に互いに方向と幅の異なる複数の配線が混在するパターンを、同一方向の配線毎に、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することによって描画するに際し、より高速な描画を行うことのできる配線パターン描画方法を提供することができる。
【0031】
更に、本発明によれば、液滴吐出ヘッドと基材とを相対的に移動させることによって、同一の基材上に互いに方向と幅の異なる複数の配線が混在するパターンを、同一方向の配線毎に、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することによって描画するに際し、より高速な描画を行うことのできる薄膜トランジスタ基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】セルの配線回路パターンを示す平面図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】図1の配線回路パターンの等価回路図
【図4】描画装置の概略構成を示すブロック図
【図5】ヘッド部の詳細を示す図
【図6】基材上に第1の直線群を描画する方法を説明する図
【図7】(a)(b)は基材の平面図
【図8】基材上に第2の直線群を描画する方法を説明する図
【図9】描画装置のヘッド部の他の実施形態を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、基材上に方向と幅の異なる複数の線が混在するパターンを、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することによって、同一方向に沿う線毎に描画するものである。線は好ましくは直線である。
【0034】
ここで、同一方向に沿う線毎に描画するとは、方向の異なる複数の線のうち、ある一方向に沿う1又は2以上の線と、それとは異なる他の一方向に沿う1又は2以上の線とを別々に描画するということである。
【0035】
そして、これら複数の線のうち、幅の最も狭い線とは方向が異なり且つ幅が広い線を、該幅の最も狭い線を描画する際に吐出する液滴のドット径よりも大きなドット径の液滴を吐出することによって描画することを特徴とする。これにより、方向と幅の異なる複数の線が同一の基材上に混在するパターンでも、幅が広い線を大きなドット径の液滴によって描画できるので、より高速な描画を行うことができるようになる。
【0036】
また、本発明において好ましいのは、上記の線が、機能液である導電性インクを用いて描画される配線からなる場合である。この場合、本発明は、基材上に、1又は2以上の直線からなる第1の配線と、少なくとも該第1の配線における最も幅が狭い配線よりも幅が広い1又は2以上の直線からなる第2の配線とによって構成され、第1の配線と第2の配線とが互いに異なる第1の方向及び第2の方向に沿って混在するように配置される配線パターンを、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら機能液滴を吐出することによって、第1の方向又は第2の方向に沿う配線毎に描画するものが好ましい。
【0037】
更に、本発明は、基材上に、1又は2以上の直線からなる第1の配線と、少なくとも該第1の配線における最も幅が狭い配線よりも幅が広い1又は2以上の直線からなる第2の配線とによって構成され、第1の配線と第2の配線とが互いに異なる第1の方向及び第2の方向に沿って混在するように配置される配線パターンを、それぞれ基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら機能液滴を吐出することによって、第1の方向又は第2の方向に沿う配線毎に描画する薄膜トランジスタ基板を製造する場合に好ましい。
【0038】
第1の配線及び第2の配線は、それぞれ1本であっても2本以上の場合でもよい。特に2本以上の場合は、以下において第1の配線群又は第2の配線群と表現する場合がある。
【0039】
第1の配線及び第2の配線の各々のうちでは、各配線の幅は全て同一幅でも異なる幅であってもよいが、本発明において重要なことは、第2の配線のうちで最も幅の狭い配線(第2の配線が1本である場合又は複数の配線が全て同一幅である場合は、その1本又は全ての配線の幅)は、少なくとも第1の配線のうちで最も幅が狭い配線よりも幅が広いことである。
【0040】
ここでいう幅が広いとは、第1の配線のうちで最も幅が狭い配線を描画するための1つのノズルのみから連続して吐出される液滴によって、基材と液滴吐出ヘッドの相対的な1回の走査移動だけで描画されるライン幅よりも広いことを意味する。
【0041】
同一の基材上で、第1の配線と第2の配線とは、その長さ方向が互いに異なる第1の方向又は第2の方向に沿って延びている。異なる方向とは第1の方向に沿う配線と第2の方向に沿う配線のそれぞれの長さ方向が平行ではないということである。
【0042】
本発明においては、配線を描画する際の基材と液滴吐出ヘッドとの相対的な移動方向ではなく、基材上に互いに異なる長さ方向の配線を描画しようとする際のその長さ方向を、それぞれ第1の方向、第2の方向と定義する。例えば基材上に描画される配線の長さ方向が基材の縦方向と横方向とに沿って互いに直交する場合、一方が第1の方向、他方が第2の方向となる。第1の方向と第2の方向は基材上において異なる方向であればよく、必ずしも直交するものに限定されない。
【0043】
第1の方向と第2の方向は、従って、例えば、描画装置上において、液滴吐出ヘッドと基材とを相対的に移動させて一方向に沿って第1の配線を描画した後、液滴吐出ヘッド又は基材を水平面で90°回転させて、液滴吐出ヘッドと基材とを上記第1の配線を描画したときと同一方向に相対的に移動させて第2の配線を描画した場合、第1の配線の描画時と第2の配線の描画時は同一の移動方向であるが、基材上で見た場合、第1の配線と第2の配線とは基材の表面上で互いに直交する方向となる。この場合の第1の配線を描画したときの基材上における方向が第1の方向となり、第2の配線を描画したときの基材上における方向が第2の方向となる。
【0044】
本発明の配線パターン描画方法及び薄膜トランジスタ基板の製造方法において、第1の配線は、基材上の第1の方向に沿って描画し、第2の配線は、同じ基材上の第2の方向に沿い、且つ、第1の配線を描画する際の液滴のドット径よりも大きなドット径の液滴を吐出することによって描画する。すなわち、第1の配線を描画する工程と第2の配線を描画する工程とは、液滴吐出ヘッドと基材との相対的な移動が独立した別々の工程で行われる。このように、第2の配線を、第1の配線の描画時よりも大きなドット径の液滴を吐出することによって第1の配線の描画とは別工程で描画するので、第1の配線とは方向が異なる第2の配線の描画は、ドット径の小さい液滴による第1の配線の描画の影響を受けることはなく、ドット径の大きな液滴によって高速に描画を行うことができる。その結果、同一の基材上に方向と幅の異なる複数の配線が混在する配線パターンでも、より高速な描画を行うことができるようになる。
【0045】
ドット径とは、液滴吐出ヘッドのノズルから吐出された液滴が基材上に着弾することによって形成されるドットの直径である。ノズルから吐出された液滴は基材上に着弾する際に横方向に広がるため、一般にノズル径や吐出直後の液滴径よりも大径となる。
【0046】
液滴吐出ヘッドにおいて、ドット径の大小は、同一ノズル径であっても駆動信号波形や駆動電圧を制御することによって調整することができるが、第1の配線を描画するノズル径よりも第2の配線を描画するノズル径を大きく形成することによってドット径を大小に異ならせることが好ましい。これによれば、駆動信号波形や駆動電圧を異ならせる必要がないため、駆動回路が複雑化することがなく、また、基材上に安定したドットを形成することができる。
【0047】
第1の配線を描画する際の液滴のドット径は、第1の配線のうちで最も幅の狭い配線幅に対応する。一方、第2の配線を描画する際の液滴のドット径は、第1の配線を描画するドット径よりも大きいドット径であればよいが、第2の配線のうちで最も幅の狭い配線幅に対応させることが好ましい。第1の配線及び第2の配線が各々2本以上の配線群により構成される場合でも、各々の配線を高精度に描画することができながら、全ての配線を共通のドット径の小さな液滴を吐出することによって描画する場合に比べれば、より高速化を図ることができる。
【0048】
なお、対応する(させる)とは、基材上に連続して着弾した後の複数の重なり合うドットによって、そのまま配線の幅が規定されることを意味する。配線はドット同士が重なり合うことで形成されるので、その幅は、一般的には単独のドットの径よりも若干太くなる場合が多い。
【0049】
本発明において、第1の配線を描画するためのノズルと第2の配線を描画するためのノズルは同一の液滴吐出ヘッドに設けられることもできるが、別々の液滴吐出ヘッドとすることが好ましい。すなわち、第1の配線を描画する液滴吐出ヘッドと第2の配線を描画する液滴吐出ヘッドとは、それぞれ独立した第1の液滴吐出ヘッド及び第2の液滴吐出ヘッドとすることである。このとき、第1の配線は、基材に対して第1の液滴吐出ヘッドを第1の方向に沿って一方向に相対的に移動させ、その移動過程で所定のタイミングで液滴を吐出しながら描画を行う。また、第2の配線は、基材に対して第2の液滴吐出ヘッドを第2の方向に沿って一方向に相対的に移動させ、その移動過程で所定のタイミングで液滴を吐出しながら描画を行う。この場合、第2の液滴吐出ヘッドは、第1の液滴吐出ヘッドのノズルから吐出される液滴のドット径よりも大きなドット径の液滴を吐出する。これにより、各々の液滴吐出ヘッドを、描画すべき配線パターンの配列構成に特化した(例えば1対1に対応した)ノズルの配列構造とすることができ、より高精度の描画を行うことができるようになる。
【0050】
このような第1の液滴吐出ヘッド及び第2の液滴吐出ヘッドは、一般に、各々の相対的な走査移動方向である第1の方向及び第2の方向と直交する方向に長いライン型の液滴吐出ヘッド(以下、ラインヘッドという場合がある。)によって構成される。
【0051】
本発明において、基材の形状は特に問わないが、外形形状が平面視で長辺と短辺とからなる長方形状の基材である場合、相対的に幅狭の第1の配線を基材の短辺に沿う方向に描画し、相対的に幅広の第2の配線を基材の長辺に沿う方向に描画することが好ましい。第1の配線と第2の配線とのうち、第1の配線の方がドット径が小さい分、同じ長さの配線を描画しても、ドット径の大きな液滴を使用する第2の配線の描画に比べて多くのドットを吐出しなくてはならず、この第1の配線の描画が律速となるため、第1の配線を基材の縦横の長さ方向のうちの短手方向である短辺に沿う方向に描画することで、基材に対する全体の描画時間をより短くすることができ、それだけ高速度の描画が可能となる。
【0052】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を用いて説明する。
【0053】
ここでは、薄膜トランジスタ基板を製造する場合を例に挙げて、その配線パターンを描画する方法について説明する。
【0054】
最初に、薄膜トランジスタ基板のセル構成の一例について、図1〜図3を用いて説明する。図1はセルの配線回路パターンを示す平面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1の配線回路パターンの等価回路図である。通常、薄膜トランジスタ基板は、セルが基材上にマトリクス状に多数配列される繰り返しパターンを有するが、各セルは同一の配線回路パターンを有するため、ここでは多数のセルのうちの1つのセル1のみを図示する。
【0055】
このセル1は、ゲートバスライン2、ソースバスライン3、2つの半導体4A、4Bを有する配置を例示している。セル1は基材W上にゲート電極5を有し、絶縁層6を介して半導体4A、4Bからなるチャネルで連結されたソース電極7A、7B及びドレイン電極8A、8Bを有し、基材W上にそれらがゲートバスライン2及びソースバスライン3を介して連結されている。9はソース電極7Bに接続される電源である。電源9とその上に形成されているソースバスライン3は、絶縁層6により絶縁されている。ドレイン電極8Bの一端(図1中の○部分)には、表示素子10が接続される。
【0056】
図2において、11は半導体4A、4Bの上に形成されるオーバーコート、12はこのオーバーコート11の更に上に形成される保護膜である。
【0057】
本実施形態では、セル1中のソースバスライン3、ソース電極7A、7B及びドレイン電極8A、8B(図1中では黒塗りで示した直線)を、それぞれ液滴吐出ヘッドを備えた描画装置を用いて描画する。
【0058】
ここで、これらソースバスライン3、ソース電極7A、7B及びドレイン電極8A、8Bの配線構成について更に詳細に説明すると、ソースバスライン3は、図1中のD2方向(第2の方向)に沿う直線からなる配線である。また、ソース電極7A、7Bのうちの一方のソース電極7Aは、ソースバスライン3と半導体4Aとに亘り、図1中のD1方向(第1の方向)に沿う直線からなる配線であり、他方のソース電極7Bは、電極9と接続される図1中のD2方向に沿う直線からなる電源接続端部分71Bと、この電源接続端部分71Bの一端から屈曲して図1中のD1方向に沿う直線からなる半導体接続端部分72Bとを有する配線である。更に、ドレイン電極8A、8Bのうちの一方のドレイン電極8Aは、半導体4Aとゲート電極2とに亘り、図1中のD1方向に沿う直線からなる配線であり、他方のドレイン電極8Bは、表示素子10(図3参照)と接続される図1中のD2方向に沿う直線からなる表示素子接続端部分81Bと、この表示素子接続端部分81Bの一端から屈曲して図1中のD1方向に沿う直線からなる2つの半導体接続端部分82B、83Bとを有する配線である。
【0059】
本実施形態では、ソース電極7A、ソース電極7Bの半導体接続端部分72B、ドレイン電極8A、ドレイン電極8Bの半導体接続端部分82B、83Bの各配線が第1の配線群L1であり、ソースバスライン3、ソース電極7Bの電源接続端部分71B、ドレイン電極8Bの表示素子接続端部分81Bの各配線が第2の配線群L2であり、これらは基材W上において互いに直交する方向に分けて配置されている。
【0060】
なお、D1方向とD2方向とは基材Wの表面(水平面)上で直交する方向である。
【0061】
次に、描画装置の一例について図4を用いて説明する。図4は描画装置の概略構成を示すブロック図である。
【0062】
描画装置100は、基台101上に設置された移動手段としてのY軸テーブル102及びX軸テーブル103を備えている。Y軸テーブル102上には、Y軸方向に沿って移動可能にメインキャリッジ104が取り付けられており、このメインキャリッジ104にはヘッド部105が設けられている。詳細は後述するが、ヘッド部105には、サブキャリッジ106を介して、同一種類の液滴を吐出するラインヘッドユニットを構成する複数(本実施形態では4つ)のラインヘッドからなる液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bが、いずれも長さ方向がY軸方向に沿うように配置されて搭載されている。基材Wは、X軸テーブル103にX軸方向に沿って移動可能に搭載されている。
【0063】
なお、X軸方向とY軸方向は、水平面上で互いに直交する方向である。
【0064】
また、描画装置100は、機能液(導電性インク)を貯留するタンク114から複数の液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bの各々に機能液を供給する機能液供給手段としての機能液供給装置113を備えると共に、X軸テーブル103及びY軸テーブル102並びに複数の液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108B等の駆動を制御する制御手段としての制御装置115を備えている。
【0065】
Y軸テーブル102は、Y軸モータ109と、このY軸モータ109によって駆動されるY軸スライダ110とを含んで構成されるY軸方向の駆動系を備え、これにメインキャリッジ104を移動可能に搭載して構成されている。また、X軸テーブル103は、X軸モータ111と、このX軸モータ111によって駆動されるX軸スライダ112とを含んで構成されるX軸方向の駆動系を備えている。更に、X軸テーブル103には、上面に基材Wを位置決め状態で搭載するセットテーブル116がθ軸移動機構を介して設けられている。
【0066】
θ軸移動機構は、セットテーブル116をX軸方向及びY軸方向に共に直交する法線方向を中心としてθ回転させるθ回転モータ117を含んで構成されている。
【0067】
制御装置115は、Y軸モータ109を駆動させるY軸モータドライバ118、X軸モータ111を駆動させるX軸モータドライバ119、θ回転モータ117を駆動させるθ回転モータドライバ120、各液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bを所定の画像データ(吐出パターンデータ)に基づいて各々独立して駆動させるヘッド駆動回路部121と制御可能に接続されている。
【0068】
かかる描画装置100、X軸テーブル103の駆動による基材WのX軸方向への移動に同期して各液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bを駆動(機能液滴の選択的吐出)するように構成されている。つまり、本実施形態では、各液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108BをY軸方向の移動により所定位置に位置決めして停止させた状態で、基材WのX軸方向への1回の走査移動によって、基材Wの描画領域に所定の直線パターンを描画し、θ回転モータ117によってセットテーブル116を所定角度(ここでは90°)回転させて基材Wを回転させた後、同様に基材WのX軸方向への次の1回の走査移動によって、基材Wの描画領域に、先の直線パターンと直交する所定の直線パターンを描画することができる。
【0069】
なお、本発明では、描画時の液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bと基材Wとの移動は相対的であればよく、本実施形態の移動構成の他に、停止状態の基材Wに対して液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108B側がX軸方向に移動する構成としてもよく、また、液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bと基材WとがX軸方向に沿って互いに反対方向に移動する構成としてもよい。
【0070】
図5はヘッド部105の詳細を示す図である。
【0071】
ヘッド部105には、ラインヘッドからなる4つの液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bが、その長さ方向がY軸方向に沿うように平行に配列されている。本実施形態では、そのうちの液滴吐出ヘッド107A、107Bが第1の配線群描画用のヘッドであり、液滴吐出ヘッド108A、108Bが第2の配線群描画用のヘッドである。
【0072】
液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bには、それぞれ基材W上に描画すべき配線回路パターンの各配線群に対応するノズル群122、124を有している。なお、ノズル群122、124は、液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bの基材Wと対する面(下面)に形成されるが、ここでは説明の便宜上、ノズル群122、124を透視した状態を示している。以下の液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bも同様に図示するものとする。
【0073】
各ノズル群122、124を構成するノズル123、125の間隔は、基材Wが液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bの下まで相対的に移動してきたときに、各ノズル123、125と各セル1の第1の配線群L1と第2の配線群L2とが相対向し得るよう、描画すべき配線の間隔を考慮して予め定められている。つまり、このヘッド部105がX軸方向に沿って移動したとき、そのときの各ノズル123、125の移動経路は、基材W上のそれぞれ対応する配線の位置と一致するようになっている。
【0074】
1つのセル1内の第1及び第2の配線群L1、L2は、1つの液滴吐出ヘッド107A、107B、108A又は108B内の同一のノズル群122、124に属するノズル123、125によって描画されるので、これらを別々のヘッドに設けられたノズルによって描画する場合に比べ、ノズル位置精度を容易に確保することができ、1つのセル1内の配線パターンを高い位置精度で形成することができる。
【0075】
ここで、第1の配線群L1を描画する液滴吐出ヘッド107A、107Bの各ノズル123が、それによって描画すべき第1の配線群L1の各配線の幅に対応する比較的小さなノズル径であるのに対し、第2の配線群L2を描画する液滴吐出ヘッド108A、108Bの各ノズル125の方が、それによって描画すべき第2の配線群L2の各配線の幅に対応するようにノズル径が大きく形成されており、これにより、ノズル123から吐出される機能液滴が基材W上に着弾することによって形成されるドット径よりも、ノズル125から吐出される機能液滴が基材W上に着弾することによって形成されるドット径の方が大きくなる。
【0076】
液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bの各々は、その複数のノズル123がY軸方向に延びるよう位置設定され、X軸方向へ平行移動する間に、ノズル123が機能液を選択的に吐出することにより、基材W上の所定位置に機能液滴を付着させる。
【0077】
液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bの各ノズル群122のピッチは、本実施形態のように、同一パターンのセル1が描画装置100のY軸方向に沿って等ピッチaで複数配列される繰り返しパターンである場合、次のようにして決定できる。
【0078】
すなわち、描画装置100にセットされた基材W上のY軸方向のセルのピッチをa、同一の配線群L1又はL2を描画する液滴吐出ヘッドの数をnとしたとき、同一の配線群L1又はL2を描画する液滴吐出ヘッド107Aと107B、108Aと108Bは、ノズル群122の位置が互いに相補的になるように、最も近い位置にある液滴吐出ヘッド同士が互いにY軸方向に前記ピッチaだけずらして配置され、液滴吐出ヘッド107Aと107B、108Aと108Bにおけるそれぞれのノズル群122のピッチは、a×nを満足することが好ましい。これによれば、液滴吐出ヘッド107Aと107B、108Aと108Bの全ノズル123と、各セル1内の配線とを相対向させることができ、ヘッド部105を基材Wが1回通過するだけで、対応する位置のセル1内に第1の配線群L1及び第2の配線群L2を描画することができ、生産性に優れる。
【0079】
次に、図1及び図6を参照して基材W上に第1の配線群L1(図6中の黒塗りで示す直線)を描画する方法を説明する。なお、図6ではヘッド部105上の液滴吐出ヘッド108A、108Bを省略している。
【0080】
まず、基材Wを描画装置100のセットテーブル116に搭載して位置決めする。ここで基材Wは、図7(a)に示すように長辺と短辺とからなる長方形状を呈しており、そのうちの短辺がX軸方向に沿うように位置決めされている。基材Wが、図7(b)に示すように、描画後に2枚取りされる1枚の大判の基材Wからなる場合でも、その1枚の大判の基材の短辺がX軸方向に沿うように位置決めされる。
【0081】
なお、この状態で、図1に示す方向D1は図6中のX軸方向である。
【0082】
この後、セットテーブル116をX軸テーブル103に沿って移動させることで、基材Wをヘッド部105に対して相対的にX軸方向に沿って移動させ、その過程で、液滴吐出ヘッド107A、107Bの各ノズル123から所定のタイミングで機能液を連続的に吐出しながら基材W上に連続したドットを形成することで、各セル1内の所定の位置にそれぞれ第1の配線群L1をパターン形成する。液滴吐出ヘッド107A、107Bに形成されている各ノズル群122のノズル123は、各セル1(ここでは基材Wの長辺方向に沿って4つ配列される場合を想定している。)内の第1の配線群L1の位置に対応しているため、基材WをX軸方向に沿って1回だけ移動させるだけで、各セル1内の第1の配線群L1の全てを同時に形成することができる。
【0083】
次に、図1及び図8を参照して基材W上に第1の配線群L2(図8中の黒塗りで示す直線)を描画する方法を説明する。なお、図8ではヘッド部105上の液滴吐出ヘッド107A、107Bを省略している。
【0084】
以上のようにして基材W上の全てのセル1内に第1の配線群L1を描画し終えたら、次いで、θ軸移動機構によってセットテーブル116を90°回転させ、基材Wの向きをθ軸を中心にして90°回転移動させる。これによって基材Wの長辺が描画装置100のX軸方向に沿うように位置合わせされる。
【0085】
なお、この状態で、図1に示す方向D2は図6中のX軸方向となる。
【0086】
この後、セットテーブル116をX軸テーブル103に沿って移動させることで、基材Wをヘッド部105に対して相対的にX軸方向に沿って移動させ、その過程で、液滴吐出ヘッド108A、108Bの各ノズル125から所定のタイミングで機能液を連続的に吐出しながら基材W上に連続したドットを形成することで、各セル1内の所定の位置にそれぞれ第2の配線群L2をパターン形成する。液滴吐出ヘッド108A、108Bに形成されている各ノズル群124のノズル125は、各セル1(ここでは基材Wの短辺方向に沿って4つ配列される場合を想定している。)内の第2の配線群L2の位置に対応しているため、基材WをX軸方向に沿って1回だけ移動させるだけで、各セル1内の第2の配線群L2の全てを同時に形成することができる。
【0087】
このようにして描画される第1の配線群L1と第2の配線群L2とは、第1の配線群L1の方が、ノズル径の小さい液滴吐出ヘッド107A、107Bによって描画されるために配線の幅が狭く、基材W上に高密度に形成されると共に、幅広の第2の直線群L2がドット径の大きな機能液滴によって形成されるため、この第2の配線群L2も第1の配線群L1を描画する際のノズルと同一のノズルによって描画する場合に比べて、描画時間の高速化が図られる。
【0088】
第1の配線群L1は、液滴吐出ヘッド107A、107Bのノズル123の径が小さいためにドット径が小さくなるが、この第1の直線L1を基材Wの短辺に沿って描画し、これと比較してドット径が大きい液滴吐出ヘッド108A、108Bによって幅広に描画される第2の配線群L2を基材Wの長辺に沿って描画するようにしたので、描画時間がかかる第1の配線群L1の描画距離を短くでき、その分だけ描画時間の増大化を抑制することができる。このため、より一層高速な描画が可能となる。
【0089】
以上の説明では、第1の配線群L1の次に第2の配線群L2を描画するようにしたが、本発明は同一方向の線毎に各々別工程で描画を行えばよく、描画順序は特に問わない。従って、これら配線群L1、L2の描画順序は、各々別工程の描画であれば、その逆の順序で描画を行ってもよい。
【0090】
また、描画装置100を用いた描画方法では、1つのヘッド部105に全ての液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bを設けたため、互いに異なる方向となる第1の配線群L1と第2の配線群L2とを描画するために、第1の配線群L1の描画と第2の配線群L2の描画との間に、基材Wをθ軸を中心に所定角度回転移動させるようにした。この方法では、互いに異なる方向となる第1の配線群L1と第2の配線群L2との各描画を行うための描画装置上の移動方向が同一となるため、同一の移動機構によって各描画時の相対的な移動を行うことができるので、移動機構のばらつきに伴う描画精度のばらつきが生じない利点がある。しかし、液滴吐出ヘッド107A、107B、108A、108Bを配線群L1、L2毎に分けて配置することもできる。
【0091】
図9は、液滴吐出ヘッドを描画方向毎に分けて配置した描画装置のヘッド部と基材との配置構成を示している。
【0092】
2つのヘッド部105A、105Bのうち、ヘッド部105Aは、基材WがX軸方向に沿って移動したときに、その長辺と対向するように配置され、ヘッド部105Bは、基材WがY軸方向に沿って移動したときに、その短辺と対向するように配置されている。そして、ヘッド部105Aには、各液滴吐出ヘッド107A、107Bが、その長さ方向がY軸方向に沿うように配置され、ヘッド部105Bには、各液滴吐出ヘッド108A、108Bが、その長さ方向がX軸方向に沿うように配置されている。この場合、基材Wは、セットテーブルのXY軸方向の移動によって、X軸方向及びY軸方向の双方向に直線移動可能に構成され、必ずしもθ軸移動機構を装備する必要はない。
【0093】
これによれば、基材WをX軸方向に移動させることによって、ヘッド部105Aの各液滴吐出ヘッド107A、107Bによって第1の配線群L1を描画することができ、基材WをY軸方向に移動させることによって、ヘッド部105Bの各液滴吐出ヘッド108A、108Bによって第2の配線群L2を描画することができる。
【0094】
以上の説明では、カラーフィルタや液晶に用いるTFTセルを形成する薄膜トランジスタ基板の製造の場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、描画対象物上に微細な線をパターン形成する工業技術全般に用いることができる。例えば各種半導体素子(薄膜ダイオード等)、各種電子回路等の配線パターンの形成等がその利用範囲の一例として挙げられる。
【0095】
また、本発明において、液滴吐出ヘッドから吐出させる材料としては、描画対象物に応じて種々選択可能であり、例えば上述した配線形成材料である導電性インクの他にも、一般的な画像形成用のインク、EL発光材料、誘電材料、半導体材料等が挙げられる。
【符号の説明】
【0096】
1:セル
2:ゲートバスライン
3:ソースバスライン
4A、4B:半導体
5:ゲート電極
6:絶縁層
7A、7B:ソース電極
71B:電源接続端部分
8A、8B:ドレイン電極
81B:表示素子接続端部分
82B、83B:半導体接続端部分
9:電源
10:表示素子
11:オーバーコート
12:保護膜
100:描画装置
101:基台
102:Y軸テーブル
103:X軸テーブル
104:メインキャリッジ
105、105A、105B:ヘッド部
106:サブキャリッジ
107A、107B、108A、108B:液滴吐出ヘッド
109:Y軸モータ
110:Y軸スライダ
111:X軸モータ
112:X軸スライダ
113:機能液供給装置
114:タンク
115:制御装置
116:セットテーブル
117:θ回転モータ
118:Y軸モータドライバ
119:X軸モータドライバ
120:θ回転モータドライバ
121:ヘッド駆動回路部
122、124:ノズル群
123、125:ノズル
L1:第1の直線群(第1の配線群)
L2:第2の直線群(第2の配線群)
W:基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に方向と幅の異なる複数の線が混在するパターンを、それぞれ前記基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら液滴を吐出することによって、同一方向に沿う線毎に描画する方法であって、
前記複数の線のうち、幅の最も狭い線とは方向が異なり且つ幅が広い線を、該幅の最も狭い線を描画する際に吐出する液滴のドット径よりも大きなドット径の液滴を吐出することによって描画することを特徴とするパターン描画方法。
【請求項2】
基材上に、1又は2以上の直線からなる第1の配線と、少なくとも該第1の配線における最も幅が狭い配線よりも幅が広い1又は2以上の直線からなる第2の配線とによって構成され、前記第1の配線と前記第2の配線とが互いに異なる第1の方向及び第2の方向に沿って混在するように配置される配線パターンを、それぞれ前記基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら機能液滴を吐出することによって、第1の方向又は第2の方向に沿う配線毎に描画する方法であって、
前記第1の配線を、前記基材上の第1の方向に沿って描画する工程と、
前記第2の配線を、前記基材上の第2の方向に沿い、且つ、前記第1の配線を描画する際に使用される機能液滴のドット径よりも大きなドット径の機能液滴を吐出することによって描画する工程とを有することを特徴とする配線パターン描画方法。
【請求項3】
前記第1の配線を描画する際に使用される液滴のドット径は、該第1の配線における最も幅の狭い配線幅に対応し、前記第2の配線を描画する際に使用される液滴のドット径は、該第2の配線における最も幅の狭い配線幅に対応することを特徴とする請求項2記載の配線パターン描画方法。
【請求項4】
前記第1の配線を描画する工程は、前記第1の配線を、第1の液滴吐出ヘッドを前記基材に対して第1の方向に相対的に移動させながら描画し、
前記第2の配線を描画する工程は、前記第2の配線を、前記第1の液滴吐出ヘッドのノズルから吐出される機能液滴のドット径よりも大きなドット径の機能液滴を吐出する第2の液滴吐出ヘッドを前記基材に対して第2の方向に相対的に移動させながら描画することを特徴とする請求項2又は3記載の配線パターン描画方法。
【請求項5】
前記基材は長辺と短辺とからなる長方形状であり、
前記第1の配線を描画する工程では、前記第1の配線を、前記基材の短辺に沿う方向に描画し、
前記第2の配線を描画する工程では、前記第2の配線を、前記基材の長辺に沿う方向に描画することを特徴とする請求項2、3又は4記載の配線パターン描画方法。
【請求項6】
基材上に、1又は2以上の直線からなる第1の配線と、少なくとも該第1の配線における最も幅が狭い配線よりも幅が広い1又は2以上の直線からなる第2の配線とによって構成され、前記第1の配線と前記第2の配線とが互いに異なる第1の方向及び第2の方向に沿って混在するように配置される配線パターンを、それぞれ前記基材に対して液滴吐出ヘッドを同一方向に相対的に移動させながら機能液滴を吐出することによって、第1の方向又は第2の方向に沿う配線毎に描画する薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、
前記第1の配線を、前記基材上の第1の方向に沿って描画する工程と、
前記第2の配線を、前記基材上の第2の方向に沿い、且つ、前記第1の配線を描画する際に使用される機能液滴のドット径よりも大きなドット径の機能液滴を吐出することによって描画する工程とを有することを特徴とする薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1の配線を描画する際に使用される液滴のドット径は、該第1の配線における最も幅の狭い配線幅に対応し、前記第2の配線を描画する際に使用される液滴のドット径は、該第2の配線における最も幅の狭い配線幅に対応することを特徴とする請求項6記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1の配線を描画する工程は、前記第1の配線を、第1の液滴吐出ヘッドを前記基材に対して第1の方向に相対的に移動させながら描画し、
前記第2の配線を描画する工程は、前記第2の配線を、前記第1の液滴吐出ヘッドのノズルから吐出される機能液滴のドット径よりも大きなドット径の機能液滴を吐出する第2の液滴吐出ヘッドを前記基材に対して第2の方向に相対的に移動させながら描画することを特徴とする請求項6又は7記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項9】
前記基材は長辺と短辺とからなる長方形状であり、
前記第1の配線を描画する工程では、前記第1の配線を、前記基材の短辺に沿う方向に描画し、
前記第2の配線を描画する工程では、前記第2の配線を、前記基材の長辺に沿う方向に描画することを特徴とする請求項6、7又は8記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−11156(P2011−11156A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158210(P2009−158210)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】