説明

パターン検査方法およびパターン検査装置

【課題】 高精度のマスタ画像を作成して正確にパターン検査を行うパターン検査方法およびパターン検査装置を提供する。
【解決手段】 ステップS51では、被検査物に形成されるパターンの設計データを用いて比較用画像を作成する。ステップS52では、被検査物を撮像して得られる画像を用いて仮マスタ画像を作成する。ステップS53では、仮マスタ画像と比較用画像との相違点を抽出する。ステップS54では、相違点を表示する。ステップS57では、ユーザの操作に応じて、表示した相違点について仮マスタ画像を修正する。ステップS59では、修正された仮マスタ画像をマスタ画像として登録する。そして、登録されたマスタ画像とオブジェクト画像とを比較して、被検査物のパターン形状を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン検査方法およびパターン検査装置に関し、より特定的には、プリント基板および半導体ウエハ等に形成されたパターンやそれらの製造工程で用いられるマスク等に形成されたパターンを検査するパターン検査方法およびパターン検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等が実装されるプリント基板や半導体ウエハ等の表面には、所定の回路を構成するのに必要な導体配線がパターン形成される。そして、パターン検査装置を用いて、形成された配線パターンにおける欠陥の有無が外観検査される。一般的に、被検査物(プリント基板や半導体ウエハ)を照明して形成されたパターンを撮像カメラに取り込んで画像処理によって合否を判定する方式(Automated Optical Inspection;AOI)が用いられる。例えば、パターンが形成された面を上面として、被検査物がパターン検査装置のステージ面に載置される。パターン検査装置は、ステージ面に載置された被検査物上の空間に、CCD(Charged Coupled Device)カメラ等の撮像カメラを有している。パターン検査装置は、ステージ面を主走査方向に水平に移動させ、撮像カメラの下を通過した被検査物を撮像していく。そして、パターン検査装置は、主走査方向の走査が1回完了する毎に撮像カメラを副走査方向へ順次シフトし、最終的に被検査物の検査領域全体を撮像して画像データを得る。その後、パターン検査装置は、得られた画像データに対して、パターンマッチング処理等を行って、パターンの欠陥を検出する。
【0003】
また、プリント基板や半導体ウエハ等の表面に導体配線等のパターンを形成する際、マスクが用いられることがある。マスクは、ガラスやフィルム等で構成されており、基板やウエハに転写するパターンの原版となるものである。このようなマスクに形成されたパターンについても、上述したようなパターン検査装置を用いた方法で外観検査される。
【0004】
パターンマッチング処理を用いたパターン欠陥の検出では、パターンが形成された被検査物を撮像カメラで撮像することによって得られる画像(以下、オブジェクト画像と記載する)と、判定基準となる画像(以下、マスタ画像と記載する)とを比較して、所定の閾値以上の差が認められるときにパターン欠陥とされる。例えば、マスタ画像は、上記被検査物を製造する際に用いられるCAD(Computer Aided Design)データや、良品の上記被検査物を撮像したデータに基づいて作成される。例えば、図7に示すようなマスタ画像とオブジェクト画像とを比較する場合、パターン検査装置にてそれぞれの画像がデジタル画像に変換される。そして、それらデジタル画像の画素毎に比較を行い、マスタ画像に対して所定の閾値以上の差があるオブジェクト画像の画素をパターンの欠陥と判断する。
【0005】
ここで、基板に形成されるパターンは、形成過程においてエッチング処理等行われると、製造不良ではないがそのコーナ部が丸みを帯びてしまう。つまり、このような基板を撮像したオブジェクト画像も、図8の左図に示すようにコーナ部に丸みが生じる。一方、図8の右図で示すように、CADデータに基づいたマスタ画像では、上述したような実製品に生じるコーナ部の丸みが表現されていない。したがって、図8の中央に示すように、このような丸み形状によってマスタ画像とオブジェクト画像との差が生じるため、製造不良ではない部位を誤って欠陥として検出してしまうことがある。このような欠陥誤検出を避けるために、実製品に近くなるようにコーナ部を丸める等の補正がマスタ画像に行われる(例えば、特許文献1参照)。例えば、図9に示すように、CADデータからマスタ画像を作成する際、パターンのコーナ部を丸める「CAD画像角落とし」やパターンの一部を太らせる/細らせる「CAD画像拡散収縮」等の、いわゆる「CAD補正」を行う。これによって、CAD補正後のマスタ画像が実製品に近づくため、上述した欠陥誤検出を防ぐことができる。
【0006】
一方、上述したように、良品の被検査物を撮像したデータに基づいてマスタ画像を作成することがある。これは、良品の被検査物、すなわちパターン欠陥が全くない基板を撮像して得られた画像をマスタ画像として用いることによって、上記オブジェクト画像に対する誤検出となるような差を低減する方法である。具体的な手順は、まず、マスタ画像を作成するための良品の基板を選んで撮像し、仮マスタ画像を作成する。そして、他の基板を撮像したオブジェクト画像と上記仮マスタ画像とを比較して、当該仮マスタ画像に欠陥がある場合、当該仮マスタ画像の修正が行われる。この修正作業を数個の基板を撮像して繰り返し行われた仮マスタ画像を最終的なマスタ画像とする。
【特許文献1】特開平5−240801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、CADデータを補正して作成したマスタ画像とオブジェクト画像とを比較してパターンの欠陥を検出する場合、デザインルールが微細になるにつれて上述した補正だけでは不十分となって欠陥誤検出が増加するため、比較する検査感度を下げなければならない。
【0008】
また、良品の被検査物を撮像したデータに基づいて作成したマスタ画像とオブジェクト画像とを比較してパターンの欠陥を検出する場合、マスタ画像の作成の際に良品の被検査物を選別して複数の被検査物が必要となる。また、被検査物を製造するためのマスクに欠陥がある等、被検査物のパターン全てに同一の欠陥が生じている場合、当該欠陥がマスタ画像にも生じることになり、当該欠陥を検査で検出することができなくなる。
【0009】
それ故に、本発明の目的は、高精度のマスタ画像を作成して正確にパターン検査を行うパターン検査方法およびパターン検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、以下に述べるような特徴を有している。
第1の発明は、被検査物に形成されたパターンを撮像したオブジェクト画像と判定基準となるマスタ画像とを比較して、その被検査物のパターン形状を検査するパターン検査方法である。パターン検査方法は、比較用画像作成ステップ、仮マスタ画像作成ステップ、相違点抽出ステップ、相違点表示ステップ、仮マスタ画像修正ステップ、マスタ画像登録ステップ、およびパターン検査ステップを含む。比較用画像作成ステップは、被検査物に形成されるパターンの設計データを用いて比較用画像を作成する。仮マスタ画像作成ステップは、被検査物に形成されたパターンを撮像して得られる画像を用いて仮マスタ画像を作成する。相違点抽出ステップは、仮マスタ画像と比較用画像との相違点を抽出する。相違点表示ステップは、相違点を表示してユーザに提示する。仮マスタ画像修正ステップは、ユーザの操作に応じて、相違点表示ステップで表示した相違点について仮マスタ画像を修正する。マスタ画像登録ステップは、仮マスタ画像修正ステップで修正された仮マスタ画像をマスタ画像として登録する。パターン検査ステップは、マスタ画像登録ステップで登録されたマスタ画像とオブジェクト画像とを比較して、その被検査物のパターン形状を検査する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、パターン検査方法は、修正要否表示ステップおよび修正要否判断ステップを、さらに含む。修正要否表示ステップは、相違点表示ステップが表示した相違点に対して、それら相違点の修正要否の判断をユーザに促す表示を行う。修正要否判断ステップは、ユーザの操作に応じて、修正要否判断ステップが判断を促した相違点に対する修正要否を判断する。仮マスタ画像修正ステップは、修正要否判断ステップにおいて修正要と判断された相違点について仮マスタ画像を修正するステップを含む。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、相違点表示ステップは、修正要否判断ステップで修正要否が判断されていない相違点を表示してユーザに提示するステップを含む。
【0013】
第4の発明は、被検査物に形成されたパターンを撮像したオブジェクト画像と判定基準となるマスタ画像とを比較して、その被検査物のパターン形状を検査するパターン検査装置である。パターン検査装置は、記憶部、撮像部、制御部、表示部、および操作部を備える。記憶部は、被検査物に形成されるパターンの設計データとマスタ画像とを記憶する。撮像部は、被検査物に形成されたパターンを撮像してオブジェクト画像を作成する。制御部は、マスタ画像とオブジェクト画像とを比較して、被検査物のパターン形状を検査する。表示部は、制御部の制御に応じた情報を表示画面に表示する。操作部は、ユーザの操作に応じた操作信号を制御部へ出力する。制御部は、比較用画像作成手段、仮マスタ画像作成手段、相違点抽出手段、相違点表示手段、仮マスタ画像修正手段、およびマスタ画像登録手段を含む。比較用画像作成手段は、記憶部に記憶された設計データを用いて比較用画像を作成する。仮マスタ画像作成手段は、撮像部が被検査物に形成されたパターンを撮像して得た画像を用いて仮マスタ画像を作成する。相違点抽出手段は、仮マスタ画像と比較用画像との相違点を抽出する。相違点表示手段は、相違点を表示部に表示してユーザに提示する。仮マスタ画像修正手段は、操作部からの操作信号に応じて、表示部に表示した相違点について仮マスタ画像を修正する。マスタ画像登録手段は、仮マスタ画像修正手段で修正された仮マスタ画像を記憶部にマスタ画像として登録する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のパターン検査方法によれば、被検査物を撮像した画像を仮マスタ画像とし、設計データに基づいた比較用画像との相違点に応じて当該仮マスタ画像を修正することによって、高精度なマスタ画像を作成することができる。したがって、高精度なマスタ画像を用いて被検査物のパターン検査を行うことによって、検査感度を上げた正確な検査を行うことができる。また、マスタ画像を作成する際、実製品に近づけるような画像の修正が不要であり、マスタ画像の作成が容易となる。また、マスタ画像の作成の際に良品の被検査物を選別して複数の被検査物を準備する必要もない。さらに、仮マスタ画像と比較する比較用画像には、仮マスタ画像と同様のパターン不良が表れていることはないため、仮マスタ画像に生じているパターン不良が確実に相違点として抽出され、確実な修正を行ったマスタ画像を作成できる。また、ユーザは、パターン不良が生じていない画像と仮マスタ画像との相違部分を視認しながら仮マスタ画像の修正を行うことができるため、修正目標を容易に把握することができる。
【0015】
また、本発明のパターン検査装置によれば、上述したパターン検査方法と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係るパターン検査装置について説明する。なお、図1は、当該パターン検査装置の全体構成を模式的に示す上面図および正面図である。ここでは、説明を具体的にするために、配線パターンが形成されたプリント基板を被検査物として検査する場合を一例として説明する。なお、本発明は、プリント基板に限らず、配線パターンが形成された半導体ウエハ、フィルムマスク、ガラスマスク、フレキシブルな薄板基板、カラーフィルタ等、ステージ面に載置する板状の部材を被検査物としたパターン検査に対して有効である。
【0017】
図1において、パターン検査装置1は、大略的にステージ搬送機構部2、撮像機構部3、および制御部4(図2参照)を備えている。ステージ搬送機構部2は、ステージ部21、旋回部22、Y軸方向駆動機構23、およびベース部24を備えている。撮像機構部3は、撮像カメラ31、支持部材32、X軸方向駆動部材33、カメラ支持部材34、X軸方向駆動機構35、およびZ軸方向駆動機構36を備えている。また、図1においては、制御部4に含まれる表示部44のみ図示されている。なお、表示部44は、後述するメイン制御部41の表示制御によってユーザに情報を表示する表示画面を有している。
【0018】
ステージ部21は、最上面に水平のステージ面を構成している。そして、被検査物であるプリント基板は、ステージ部21のステージ面上に載置される。ステージ部21の下部は、旋回部22によって支持されており、旋回部22の回動動作によって図示θ方向にステージ部21が回動可能に構成されている。撮像機構部3の下方を通るように、ベース部24が上記ステージ面と平行の図示Y軸方向に延設されて固定される。Y軸方向駆動機構23は、ベース部24の上面のY軸方向に設けられたガイドに沿って滑動し、その上面に旋回部22が固設されている。なお、Y軸方向駆動機構23は、後述するY軸駆動モータ231およびY軸NCドライバ232を含んでいる(図2参照)。これによって、Y軸方向駆動機構23がY軸駆動モータ231からの駆動力によってベース部24のガイドに沿った図示Y軸方向(主走査方向)に移動可能になり、旋回部22に支持されたステージ部21の主走査方向への水平移動も可能になる。
【0019】
支持部材32は、ベース部24上を水平移動するステージ部21の上部空間に架設されている。支持部材32上にはX軸方向駆動機構35が設けられており、X軸方向駆動部材33を上記ステージ面と平行で、かつ上記Y軸方向と垂直の図示X軸方向(副走査方向)に移動させる。なお、X軸方向駆動機構35は、後述するX軸駆動モータ351およびX軸NCドライバ352を含んでいる(図2参照)。X軸方向駆動部材33にはZ軸方向駆動機構36が設けられており、カメラ支持部材34を上記X軸およびY軸方向と垂直の図示Z軸方向に移動させる。なお、Z軸方向駆動機構36は、後述するZ軸駆動モータ361およびZ軸NCドライバ362を含んでいる(図2参照)。
【0020】
撮像カメラ31は、例えばCCDカメラにより構成され、その撮像方向が図示Z軸下方向となるようにカメラ支持部材34に支持されている。撮像カメラ31は、入射された光をその色や強度を示す電気信号に変換する。図1に示すパターン検査装置1の例では、2つの撮像カメラ31aおよび31bが設けられており、それらの撮像方向が図示Z軸下方向となるようにカメラ支持部材34に支持されている。例えば、パターン検査装置1におけるパターンマッチング処理用の画像データを得るための撮像カメラ31aと、パターン検査装置1のユーザによる目視検査用の画像データを得るための撮像カメラ31bとによって構成され、それぞれ光源(図示せず)から被検査物に照射された光を受光する。なお、本発明は、複数の撮像カメラ31をカメラ支持部材34に固設してもいいし、1つの撮像カメラ31のみをカメラ支持部材34に固設してもかまわない。
【0021】
このような構成によって、撮像カメラ31は、図示X軸方向(副走査方向)およびZ軸方向(撮像方向)に移動可能になっている。そして、撮像カメラ31のX軸方向の位置を固定した状態でステージ部21が主走査方向(Y軸方向)に移動することにより主走査が行われる。次に、プリント基板の検査領域の一端から他端までの主走査が完了する毎に、撮像カメラ31は副走査方向(X軸方向)に沿って所定距離だけ移動する。この結果、プリント基板の検査領域全体についての画像データが撮像カメラ31から得られることとなる。さらに、撮像カメラ31は、Z軸方向駆動機構36によってZ軸方向(撮像方向)に移動可能となっている。Z軸方向駆動機構36は、ステージ面に載置された被検査物の上面に撮像カメラ31の焦点が合うようにカメラ支持部材34をZ軸方向に適宜移動させる。
【0022】
次に、図2を参照して、パターン検査装置1における制御機能の概略構成について説明する。なお、図2は、パターン検査装置1の制御機能を示すブロック図である。
【0023】
図2において、パターン検査装置1の制御部4は、メイン制御部41、フォーカス制御部42、記憶部43、表示部44、および操作部45を含んでいる。メイン制御部41およびフォーカス制御部42は、例えばCPUボードによって構成され、互いに接続されている。また、メイン制御部41およびフォーカス制御部42には、記憶部43が接続されている。記憶部43は、メイン制御部41およびフォーカス制御部42の処理の際に記憶領域として用いられ、処理に必要なデータ群を格納している。記憶部43は、CADデータ432およびマスタ画像データ433を格納している。CADデータ432は、パターン検査装置1において検査対象とする被検査物に応じて、それぞれ予め格納されている。また、マスタ画像データ433は、後述するマスタ画像データの作成動作によって記憶される。表示部44は、メイン制御部41の表示制御に応じてユーザに情報を提示する。操作部45は、ユーザの操作に応じた操作信号をメイン制御部41に出力し、例えば、キーボードやマウス等の一般的な入力デバイスで構成される。
【0024】
メイン制御部41は、主にマスタ画像データ433の作成、マスタ画像データ433を用いたパターン検査、X軸NCドライバ352の動作制御、およびフォーカス制御部42の動作制御等を行う。また、メイン制御部41は、撮像カメラ31で撮像された画像データImを受け取る。X軸NCドライバ352は、メイン制御部41の制御に応じてX軸駆動モータ351を駆動する。そして、X軸駆動モータ351は、X軸方向駆動部材33をX軸方向(副走査方向;図1参照)に移動させ、撮像カメラ31をX軸方向に移動させる。これらの構成によって、メイン制御部41は、副走査方向に対する撮像カメラ31の動作を制御することができる。
【0025】
フォーカス制御部42は、主にY軸NCドライバ232およびZ軸NCドライバ362の動作を制御する。Y軸NCドライバ232は、フォーカス制御部42の制御に応じてY軸駆動モータ231を駆動する。そして、Y軸駆動モータ231は、Y軸方向(主走査方向;図1参照)にステージ部21を水平移動させる。これらの構成によって、フォーカス制御部42は、主走査方向に対するステージ部21の動作を制御することができる。また、Z軸NCドライバ362は、フォーカス制御部42の制御に応じてZ軸駆動モータ361を駆動する。そして、Z軸駆動モータ361は、Z軸方向(撮像方向;図1参照)にカメラ支持部材34を移動させ、撮像カメラ31をZ軸方向にさせる。これらの構成によって、フォーカス制御部42は、撮像方向(焦点方向)に対する撮像カメラ31の動作を被検査物の上面が焦点となるように制御することができる。そして、メイン制御部41は、例えばパターンマッチング処理を用いてパターン欠陥を検出し、パターンが形成された被検査物を撮像カメラ31で撮像することによって得られる画像(オブジェクト画像)と、判定基準となる画像(マスタ画像)とを比較して、所定の閾値以上の差が認められるときにパターン欠陥と判定する。
【0026】
次に、図3および図4を参照して、メイン制御部41が行うマスタ画像データの作成動作について説明する。なお、図3は、メイン制御部41が行うマスタ画像データの作成動作を示すフローチャートである。図4は、マスタ画像データの作成動作で用いられる仮マスタ画像、比較用CAD画像、およびそれらの相違点の一例を示す図である。
【0027】
図3において、メイン制御部41は、記憶部43に格納されたCADデータ432群から作成するマスタ画像に対応するCADデータ432を抽出する。そして、メイン制御部41は、抽出したCADデータ432を用いて、比較用CAD画像を作成する(ステップS51)。例えば、図4に示すように、比較用CAD画像は、被検査物にパターンを形成する際に用いられる設計画像であり、実製品に生じるコーナ部の丸み等が表現されていない。
【0028】
次に、メイン制御部41は、被検査物を撮像カメラ31で撮像したオブジェクト画像を仮マスタ画像データとして記憶部43に登録して記憶する(ステップS52)。具体的には、ユーザが作成するマスタ画像に対応する被検査物をステージ部21のステージ面上に載置する。そして、メイン制御部41およびフォーカス制御部42がX軸方向駆動機構35、Y軸方向駆動機構23、およびZ軸方向駆動機構36の動作を制御しながら、被検査物の上面に焦点を合わせて撮像カメラ31で検査領域を走査することによって、被検査物の検査領域全体についての画像データ(オブジェクト画像データ)が撮像カメラ31から得られる。つまり、被検査物のパターン検査の際に当該被検査物の検査領域全体を撮像してオブジェクト画像を得る動作と同様である。例えば、図4に示すように、仮マスタ画像は、実製品(被検査物)を撮像して得られるため、実製品と同様のパターンが表現されている。例えば、被検査物のパターン形成過程においてエッチング処理等行われていると、仮マスタ画像で表現されるコーナ部に丸みが生じている。また、被検査物にパターン欠陥が生じていると、その欠陥が仮マスタ画像に表現されている。
【0029】
次に、メイン制御部41は、仮マスタ画像と比較用CAD画像とを例えばパターンマッチング法を用いて比較し、相違点を抽出する(ステップS53)。例えば、メイン制御部41は、仮マスタ画像および比較用CAD画像をデジタル画像に変換して画素毎に比較を行う。そしてメイン制御部41は、仮マスタ画像と比較用CAD画像との間で所定の閾値以上の差がある画素を相違点と判断する。ここで抽出される相違点は、上述したコーナ部における丸みの有無等の実製品とCAD画像との相違による形状と、被検査物に生じているパターンの欠陥等の不良形状とがある。例えば、図4では、仮マスタ画像と比較用CAD画像との相違点a〜gが示されている。そして、相違点b〜gは、コーナ部における丸みの有無による相違である。また、相違点aは、仮マスタ画像を作成する際に用いられた被検査物にパターン欠陥が生じていたことによる相違である。
【0030】
次に、メイン制御部41は、修正要否が未決定の相違点を表示部44に表示してユーザに提示する(ステップS54)。例えば、メイン制御部41は、図4に示すような仮マスタ画像と比較用CAD画像との相違点を表示部44に表示してユーザに提示する、ここで、メイン制御部41は、修正要否が未決定の相違点が複数ある場合は、次のステップで修正要否を問い合わせるいずれか1つの相違点を選択して、他の相違点と区別して表示する。例えば、表示部44に上記いずれか1つの相違点のみを表示してもいいし、いずれか1つの相違点を他の相違点と表示色やマーク形状等で区別して表示してもかまわない。
【0031】
次に、メイン制御部41は、上記いずれか1つの相違点を修正するか否かを問い合わせる旨を表示部44に表示して、ユーザが修正要否を選択するように促す(ステップS55)。例えば、上記ステップS54で修正要否を問い合わせるいずれか1つの相違点が表示されているので、「この相違点について、仮マスタ画像を修正しますか?」という文字列を表示部44に表示して「Yes」あるいは「No」をユーザに選択させてもかまわない。
【0032】
次に、メイン制御部41は、ユーザが操作部45を操作して修正を選択したか否かを判断する(ステップS56)。そして、メイン制御部41は、修正が選択された場合、処理を次のステップS57に進める。一方、メイン制御部41は、未修正が選択された場合、処理を次のステップS58に進める。
【0033】
ここで、ユーザは、コーナ部における丸みの有無等の実製品とCAD画像との相違による相違点(図4に示す相違点b〜g)については、未修正を選択する。上述したように仮マスタ画像は、オブジェクト画像に基づいて作成されているため、実製品に近づけるような画像補正は不要となる。したがって、ユーザは、従来CADデータからマスタ画像を作成する際に行われていた「CAD画像角落とし」や「CAD画像拡散収縮」等の「CAD補正」を行う必要はなく、これらに相当する相違点に対して未修正を選択すればよい。
【0034】
一方、ユーザは、仮マスタ画像を作成する際に用いられた被検査物にパターン欠陥等のパターン不良が生じていたことによる相違点(図4に示す相違点a)については、修正を選択する。上述したように仮マスタ画像と比較される比較用CAD画像は、CADデータ432に基づいて作成されている。つまり、比較用CAD画像には仮マスタ画像と同様のパターン不良が表れていることはなく、仮マスタ画像に生じているパターン不良が確実に相違点として抽出されている。
【0035】
ステップS57において、メイン制御部41は、ユーザによって修正が選択された相違点に対して仮マスタ画像データの修正を可能にする処理モードに移行し、ユーザに仮マスタ画像の修正を促す表示を表示部44に行う。そして、ユーザが仮メイン画像の相違点に対する修正を行って仮マスタ画像データが修正されると、メイン制御部41は、処理を次のステップS58に進める。ここで、仮メイン画像の相違点を修正するツールは、一般的な画像修正ツールを用いればよい。ユーザは、パターン不良が生じていない比較用CAD画像とパターン不良が生じている仮マスタ画像との相違部分を視認しながら仮マスタ画像の修正を行うことができるため、修正目標を容易に把握することができる。
【0036】
ステップS58において、メイン制御部41は、上記ステップS53で抽出した全ての相違点の確認が終了したか否かを判断する。そして、メイン制御部41は、全ての相違点の確認が終了している場合、現在の仮マスタ画像データをマスタ画像データ433として記憶部43に登録して(ステップS59)、当該フローチャートによる処理を終了する。一方、メイン制御部41は、確認が終了していない相違点が残っている場合、上記ステップS54に戻って処理を繰り返す。
【0037】
パターン検査装置1における被検査物の検査においては、撮像カメラ31の焦点位置がステージ面上の被検査物のパターン形成面となるように撮像カメラ31のZ軸方向の位置を制御しながら、X軸方向およびY軸方向に撮像カメラ31を走査して撮像することによって、被検査物の検査領域全体のオブジェクト画像が撮像カメラ31からメイン制御部41へ出力される。そして、パターン検査装置1は、上述したように作成されたマスタ画像データによるマスタ画像とオブジェクト画像とを比較して、オブジェクト画像に表れたパターン欠陥を検出する(図7参照)。この検査動作については、従来の動作と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0038】
このように、パターン検査装置1は、オブジェクト画像を仮マスタ画像とし、比較用CAD画像との相違点に応じて当該仮マスタ画像を修正することによって、高精度なマスタ画像を作成することができる。したがって、パターン検査装置1は、高精度なマスタ画像を用いて被検査物のパターン検査を行うことによって、検査感度を上げた正確な検査を行うことができる。また、パターン検査装置1で使用するマスタ画像を作成する際、実製品に近づけるような画像の修正が不要であり、マスタ画像の作成が容易となる。また、マスタ画像の作成の際に良品の被検査物を選別して複数の被検査物を準備する必要もない。さらに、仮マスタ画像と比較する画像には、仮マスタ画像と同様のパターン不良が表れていることはないため、仮マスタ画像に生じているパターン不良が確実に相違点として抽出され、確実な修正を行ったマスタ画像を作成できる。また、ユーザは、パターン不良が生じていない画像と仮マスタ画像との相違部分を視認しながら仮マスタ画像の修正を行うことができるため、修正目標を容易に把握することができる。
【0039】
なお、上記ステップS54では、修正要否が未決定の相違点が複数ある場合、メイン制御部41は、次のステップで修正要否を問い合わせるいずれか1つの相違点を選択して、他の相違点と区別して表示する動作を説明したが、他の形態で表示してもかまわない。例えば、ステップS54において、メイン制御部41は、修正要否が未決定となっている全ての相違点を表示部44に表示する。この場合、ステップS56およびS57において、ユーザが表示部44に表示された相違点の中から修正対象とする相違点を選択することによって、仮マスタ画像の修正を行えばよい。
【0040】
また、上記ステップS52では、作成するマスタ画像に対応する被検査物をステージ部21のステージ面上に載置して撮像したオブジェクト画像を得ているが、任意の方法(例えば、ユーザによる目視確認)で良品と判定された被検査物を用いるのが好ましい。良品の被検査物を用いることによって、仮マスタ画像に生じるパターン不良が減少するため、ユーザが仮マスタ画像を修正する箇所が減少し、さらにマスタ画像の作成が簡単になる。
【0041】
また、比較用CAD画像は、従来、CADデータからマスタ画像を作成する際に行われているCAD補正(図9参照)を行った画像を用いてもかまわない。比較用CAD画像にCAD補正を行うことによって、比較用CAD画像におけるコーナ部における丸みの有無等の相違による相違点が減少するため、ユーザが修正要否を判断する箇所が少なくなる。
【0042】
また、パターン検査装置1は、1つの基板に同一のパターンのピースが複数形成されたパッケージ基板のパターン検査も可能である。図5および図6を参照して、パッケージ基板におけるマスタ画像の作成方法について説明する。なお、図5は、パッケージ基板のオブジェクト画像から仮マスタ画像を得て比較用CAD画像と比較する動作を説明する図である。図6は、1ピースのマスタ画像からパッケージ基板のマスタ画像を作成する動作を説明する図である。
【0043】
パッケージ基板では、同一のパターンを複数殖版することによって複数ピースのパターンを形成することが多い。この場合、1ピース分のマスタ画像を作成し、当該マスタ画像を全てのパターンにコピーしてパッケージ基板のマスタ画像を作成する方法が考えられる。図5に示すように、上記ステップS52の動作においてパッケージ基板を被検査物として撮像カメラ31で撮像すると、同一のパターンのピースが複数撮像されたオブジェクト画像が得られる。この場合、メイン制御部41は、オブジェクト画像から取り出した1ピース分の画像を仮マスタ画像データとして記憶部43に登録して記憶する。なお、上記ステップS51において、メイン制御部41は、記憶部43に格納されたCADデータ432群から上記1ピース分の画像に対応するCADデータ432を抽出して、1ピース分の比較用CAD画像を作成している。
【0044】
次に、メイン制御部41は、1ピース分の仮マスタ画像と比較用CAD画像とを比較し、相違点を抽出し、相違点毎に修正要否を問い合わせる(ステップS53〜S56)。なお、それぞれの画像には位置合わせするための位置基準が設けられており、画像比較処理の際、当該位置基準に基づいてそれぞれ画像位置を合わせる。次に、メイン制御部41は、上述と同様に修正要の相違点について仮マスタ画像の修正を行って、全相違点の確認が終了すると1ピース分のマスタ画像を得る。そして、図6に示すように、メイン制御部41は、上記動作で得られた同一のパターンのピースが複数撮像されたオブジェクト画像に含まれる各ピースの画像をそれぞれ1ピース分のマスタ画像と置き換えて、パッケージ基板のマスタ画像を作成し、マスタ画像データ433として記憶部43に登録する(ステップS57〜S59)。このように、パターン検査装置1は、1つの基板に同一のパターンのピースが複数形成されたパッケージ基板のパターン検査に用いられるマスタ画像の作成において、1ピース分のマスタ画像をコピーすることによって容易に行うことができる。
【0045】
また、本実施形態ではステージ部21がY軸方向へ移動することによって主走査を行うとしたが、本発明はこれに限らず、撮像カメラ31を主走査方向に移動させることによって主走査を行うようにしてもよい。同様に、撮像カメラ31を副走査方向に移動させる替わりに、ステージ部21を副走査方向に移動させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るパターン検査方法および装置は、高精度のマスタ画像を作成することができ、当該マスタ画像を用いて基板やマスク等の被検査物に形成されたパターンを外観検査する等の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るパターン検査装置の全体構成を模式的に示す上面図および正面図
【図2】図1のパターン検査装置1の制御機能を示すブロック図
【図3】図2のメイン制御部41が行うマスタ画像データの作成動作を示すフローチャート
【図4】マスタ画像データの作成動作で用いられる仮マスタ画像、比較用CAD画像、およびそれらの相違点の一例を示す図
【図5】パッケージ基板のオブジェクト画像から仮マスタ画像を得て比較用CAD画像と比較する動作を説明する図
【図6】1ピースのマスタ画像からパッケージ基板のマスタ画像を作成する動作を説明する図
【図7】マスタ画像とオブジェクト画像とを比較して検出されるオブジェクト画像のパターン欠陥の一例を示す図
【図8】マスタ画像とオブジェクト画像との差の一例を示す図
【図9】CADデータからマスタ画像を作成する際のCAD補正の一例を示す図
【符号の説明】
【0048】
1…パターン検査装置
2…ステージ搬送機構部
21…ステージ部
22…旋回部
23…Y軸方向駆動機構
231…Y軸駆動モータ
232…Y軸NCドライバ
24…ベース部
3…撮像機構部
31…撮像カメラ
32…支持部材
33…X軸方向駆動部材
34…カメラ支持部材
35…X軸方向駆動機構
351…X軸駆動モータ
352…X軸NCドライバ
36…Z軸方向駆動機構
361…Z軸駆動モータ
362…Z軸NCドライバ
4…制御部
41…メイン制御部
42…フォーカス制御部
43…記憶部
432…CADデータ
433…マスタ画像データ
44…表示部
45…操作部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物に形成されたパターンを撮像したオブジェクト画像と判定基準となるマスタ画像とを比較して、当該被検査物のパターン形状を検査するパターン検査方法であって、
前記被検査物に形成されるパターンの設計データを用いて比較用画像を作成する比較用画像作成ステップと、
前記被検査物に形成されたパターンを撮像して得られる画像を用いて仮マスタ画像を作成する仮マスタ画像作成ステップと、
前記仮マスタ画像と前記比較用画像との相違点を抽出する相違点抽出ステップと、
前記相違点を表示してユーザに提示する相違点表示ステップと、
ユーザの操作に応じて、前記相違点表示ステップで表示した相違点について前記仮マスタ画像を修正する仮マスタ画像修正ステップと、
前記仮マスタ画像修正ステップで修正された仮マスタ画像を前記マスタ画像として登録するマスタ画像登録ステップと、
前記マスタ画像登録ステップで登録されたマスタ画像と前記オブジェクト画像とを比較して、当該被検査物のパターン形状を検査するパターン検査ステップとを含む、パターン検査方法。
【請求項2】
前記パターン検査方法は、
前記相違点表示ステップが表示した相違点に対して、当該相違点の修正要否の判断をユーザに促す表示を行う修正要否表示ステップと、
ユーザの操作に応じて、前記修正要否判断ステップが判断を促した相違点に対する修正要否を判断する修正要否判断ステップとを、さらに含み、
前記仮マスタ画像修正ステップは、前記修正要否判断ステップにおいて修正要と判断された相違点について前記仮マスタ画像を修正するステップを含む、請求項1に記載のパターン検査方法。
【請求項3】
前記相違点表示ステップは、前記修正要否判断ステップで修正要否が判断されていない相違点を表示してユーザに提示するステップを含む、請求項2に記載のパターン検査方法。
【請求項4】
被検査物に形成されたパターンを撮像したオブジェクト画像と判定基準となるマスタ画像とを比較して、当該被検査物のパターン形状を検査するパターン検査装置であって、
前記被検査物に形成されるパターンの設計データと前記マスタ画像とを記憶する記憶部と、
前記被検査物に形成されたパターンを撮像して前記オブジェクト画像を作成する撮像部と、
前記マスタ画像と前記オブジェクト画像とを比較して、被検査物のパターン形状を検査する制御部と、
前記制御部の制御に応じた情報を表示画面に表示する表示部と、
ユーザの操作に応じた操作信号を前記制御部へ出力する操作部とを備え、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶された設計データを用いて比較用画像を作成する比較用画像作成手段と、
前記撮像部が被検査物に形成されたパターンを撮像して得た画像を用いて仮マスタ画像を作成する仮マスタ画像作成手段と、
前記仮マスタ画像と前記比較用画像との相違点を抽出する相違点抽出手段と、
前記相違点を前記表示部に表示してユーザに提示する相違点表示手段と、
前記操作部からの操作信号に応じて、前記表示部に表示した相違点について前記仮マスタ画像を修正する仮マスタ画像修正手段と、
前記仮マスタ画像修正手段で修正された仮マスタ画像を前記記憶部に前記マスタ画像として登録するマスタ画像登録手段とを含む、パターン検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−234554(P2006−234554A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49081(P2005−49081)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】