説明

パワーアシスト装置およびその制御方法

【課題】パワーアシスト装置によるワークの搬送効率や、パワーアシスト装置を用いてワークを組み付ける場合の位置決め精度を改善するために、搬送途中におけるワークの姿勢を安定させるとともに、作業者による微妙な位置決めを可能とするパワーアシスト装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】接圧センサ3e・3e・・・により、ウィンドウ10に作用する押圧力Fe1〜Fe4を検知し、検知結果を制御装置5に入力する第一押圧力検知工程と、制御装置5により、検知した押圧力Fe1〜Fe4が、予め設定した第一閾値Fcを越えているか否かを判定する押圧力判定工程と、制御装置5により、デッドマンスイッチ6・6・・・が入状態であるか否かを判定するデッドマンスイッチ判定工程と、制御装置5により、第一押圧力検知工程と押圧力判定工程とデッドマンスイッチ判定工程の各結果からフリージョイント4の回転規制を解除するか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーアシスト装置の技術に関し、より詳しくは、パワーアシスト装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業製品の製造現場等において、作業者による重量物(ワーク)の搬送を補助する装置としてパワーアシスト装置が用いられている。
ワークの組み付け作業は、ワークの搬送と位置決めから成り立つ作業であるが、作業者とパワーアシスト装置でワークを協調搬送することにより、ワークの搬送に必要な力はパワーアシスト装置に負担させることができ、ワークの位置決めについてもパワーアシスト装置にティーチングすることで効率よく位置決めをすることができる。つまり、パワーアシスト装置を用いるねらいは、作業者の労力軽減を図るとともに、作業性の向上を図ることにある。
例えば、搬送対象物たるワークを保持するワーク保持装置の傾き(角度)を検出して、ワーク保持装置を上下方向に駆動するパワーアシスト装置が知られており、特許文献1にその技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−245124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のパワーアシスト装置は、作業者がワーク保持装置から手を離したことを検知すると、パワーアシスト装置の各ジョイント(関節)部をロックして、ワーク保持装置およびワークの姿勢(傾きや搬送方向)を保持する構成としている。また、作業者がワーク保持装置を握ったことを検知すると、パワーアシスト装置の各ジョイント(関節)部のロックを解除して、ワーク保持装置およびワークの姿勢(傾きや搬送方向)を作業者が自由に変更できる構成としている。
【0004】
このような従来のパワーアシスト装置によってワークの位置決めを行う場合、作業者がワーク保持装置を握っている間は、作業者の操作による自由なワークの位置補正が可能であるが、ワークのバランス状態(重心位置の配置)によっては、作業者がワーク保持装置を握って各ジョイント部のロックが解除された途端に、ワークが各ジョイント部を支点として予期せず傾く場合があり、作業者がその変位を支えきれずに、ワークが組み付け対象部材と接触してしまい、ワークや組み付け対象部材を破損してしまうという問題があった。
【0005】
また、作業者がワーク保持装置を握っている間は、作業者の操作によって自由にワークの位置修正が可能であるということは、言い換えれば、作業者の操作如何では搬送途中のワークがふらつく場合があるとも言えるため、作業者の誤った操作によって、ワークを組み付け対象部材やその周辺部に接触させてしまう可能性があった。このため、従来の構成に係るパワーアシスト装置では、例えばワークをある隙間を通過させて搬送しなければならない状況等では、作業者が注意深くワークの姿勢を調整しながら搬送を行わなければならない場合があり、搬送効率が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、係る現状を鑑みて成されたものであり、パワーアシスト装置によるワークの搬送効率や、パワーアシスト装置を用いてワークを組み付ける場合の位置決め精度を改善するために、搬送途中におけるワークの姿勢を安定させるとともに、作業者の操作による微妙な位置決めを可能とするパワーアシスト装置およびその制御方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、ワークを保持するための保持部を備えるワーク保持装置と、該ワーク保持装置を支持するアームと、前記ワーク保持装置を前記アームに対して回転可能に支持するジョイント部と、該ジョイント部の回転を規制可能なブレーキと、該ブレーキによる規制状態を制御する制御装置と、前記ワーク保持装置に保持される前記ワークに作用する押圧力を検知する押圧力検知センサと、前記ワーク保持装置に備えるデッドマンスイッチと、を備えるパワーアシスト装置の制御方法であって、前記押圧力検知センサにより、前記ワーク保持装置に保持される前記ワークに作用する押圧力を検知し、その検知結果を前記制御装置に入力する押圧力検知工程と、前記制御装置により、前記押圧力検知センサにより検知した押圧力が、予め設定した閾値を越えているか否かを判定する押圧力判定工程と、前記制御装置により、前記デッドマンスイッチが入状態であるか否かを判定するデッドマンスイッチ判定工程と、前記制御装置により、前記押圧力検知工程の検知結果と前記押圧力判定工程の判定結果と前記デッドマンスイッチ判定工程の判定結果に応じて、前記ブレーキによる前記ジョイント部の回転の規制を解除するか否かを判定するブレーキ解除判定工程とを備えるものである。
【0009】
請求項2においては、前記ワーク保持装置は、複数の前記保持部を備え、かつ、前記複数の保持部にそれぞれ前記押圧力検知センサを備えるものであって、前記押圧力判定工程では、前記制御装置により、複数の前記保持部の押圧力検知センサにより検知した複数の押圧力のうち、少なくとも一つ以上の押圧力が、予め設定した第一閾値を超えているか否かを判定し、かつ、複数の前記保持部の押圧力検知センサにより検知した複数の押圧力の合計が、予め設定した第二閾値を越えているか否かを判定するものである。
【0010】
請求項3においては、前記第二閾値は、前記第一閾値の2倍の値とするものである。
【0011】
請求項4においては、ワークを保持するための複数の保持部を備えるワーク保持部と、該ワーク保持部を支持するアームと、前記ワーク保持部を前記アームに対して回転可能に支持するジョイント部と、該ジョイント部の回転を規制可能なブレーキと、該ブレーキによる規制状態を制御する制御装置と、前記複数の保持部にそれぞれ備えられ、前記ワークに作用する押圧力を検知する複数の押圧力検知センサと、前記ワーク保持部に備えるデッドマンスイッチと、を備えるパワーアシスト装置であって、前記制御装置は、複数の前記保持部の押圧力検知センサにより検知した複数の押圧力のうち、少なくとも一つ以上の押圧力が、予め設定した第一閾値を超えており、かつ、複数の前記保持部の押圧力検知センサにより検知した複数の押圧力の合計が、予め設定した第二閾値を越えており、かつ、前記デッドマンスイッチが入状態である場合には、前記ブレーキによる前記ジョイント部の回転の規制を解除するものである。
【0012】
請求項5においては、前記第二閾値は、前記第一閾値の2倍の値とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、搬送途中におけるワークの姿勢を安定させることができる。これにより、作業者がワークの搬送をスムーズに行うことができるようになり、搬送作業の効率が改善される。また、搬送途中においてワークと組み付け対象部材が接触することを防止することでき、ワークや組み付け対象部材の破損や汚損を防止することができる。
【0015】
請求項2においては、搬送途中においてワークの姿勢が安定した後に初めて作業者による組み付け位置の微調整を可能とすることにより、搬送途中におけるワークの姿勢を安定させるとともに、位置決め精度を確保することができる。
【0016】
請求項3においては、搬送途中におけるワークの姿勢を確実に安定させることができる。また、ワークの姿勢が確実に安定した状態で、作業者による組み付け位置の微調整をすることができる。
【0017】
請求項4においては、搬送途中におけるワークの姿勢を安定させることができる。これにより、作業者がワークの搬送をスムーズに行うことができるようになり、搬送作業の効率が改善される。また、搬送途中においてワークと組み付け対象部材が接触することを防止することができ、ワークや組み付け対象部材の破損や汚損を防止することができる。また、搬送途中においてワークの姿勢が安定した後に初めて作業者による組み付け位置の微調整を可能とすることにより、搬送途中におけるワークの姿勢を安定させるとともに、位置決め精度を確保することができる。
【0018】
請求項5においては、搬送途中におけるワークの姿勢を確実に安定させることができる。また、ワークの姿勢が確実に安定した状態で、作業者による組み付け位置の微調整をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施例に係るパワーアシスト装置1の全体構成について、図1〜図3を用いて説明する。図1は本発明の一実施例に係るパワーアシスト装置の全体構成を示す模式図、図2は本発明の一実施例に係るワーク保持装置を示す平面および側面模式図、図3は本発明の一実施例に係る制御装置の接続状況を示す模式図である。
尚、説明の便宜上、図1中に示すXYZ座標系にパワーアシスト装置が設けられているものとし、X軸回りの回転をロール回転、Y軸回りの回転をピッチ回転、Z軸回りの回転をヨー回転と規定して以後の説明を行っていくものとする。
図1に示す如く、本実施例に示すパワーアシスト装置1は、多関節型ロボット2、ワーク保持装置3およびフリージョイント4、制御装置5、デッドマンスイッチ6・6・・・、押込指示スイッチ7・7等により構成している。
【0020】
本実施例に示す多関節型ロボット2は、天井面等に吊り下げられるように支持されており、関節部分にモータ2a・2bを備えている。尚、本実施例に示す多関節型ロボット2は、天井面に固定支持される構成としているが、例えば、ホイスト等によって走行可能に支持される構成とすることも可能である。また、本発明を適用するパワーアシスト装置1に用いるロボットは、多関節型ロボット2に限定するものではなく、フリージョイント4を介してワーク保持装置3を支持し得るものであればよく、他の構成のロボット等を用いることも可能である。
【0021】
図1および図2に示す如く、ワーク保持装置3は、略平板状の本体部3aと、搬送対象物(ワーク)たるウィンドウ10の保持部となる吸盤3b・3b・・・と、ハンドル3c・3cと、力センサ3d・3dと、接圧センサ3e・3e・・・等を備えており、本体部3aに固設されるフリージョイント4を介して多関節型ロボット2に連結される構成としている。
【0022】
吸盤3b・3b・・・は、該吸盤3b・3b・・・による吸着作用のON−OFFが切替可能な構成としている。また、吸盤3b・3b・・・には、接圧センサ3e・3e・・・を内蔵しており、吸着保持されたウィンドウ10が外界と接触する際に受ける圧力(反力)を検知することができる構成としている。さらに、作業者の把持部となるハンドル3c・3cの基部には、力センサ3d・3dを備える構成としている。
【0023】
またワーク保持装置3のハンドル3c・3cには、デッドマンスイッチ6・6・・・が設けられている。デッドマンスイッチ6・6・・・は、作業者がハンドル3c・3cを把持する際に自然に操作できる位置に配置されるスイッチであり、作業者のワーク保持装置3の把持状態(即ち、操作状態)を検知するために設けられるものである。尚、本実施例では、デッドマンスイッチ6・6・・・をハンドル3c・3c上に合計4箇所配設する例を示しているが、デッドマンスイッチ6・6・・・の配置場所や配置個数によって、本発明を限定するものではない。
【0024】
さらにワーク保持装置3のハンドル3c・3cには、押込指示スイッチ7・7が設けられている。押込指示スイッチ7・7は、作業者がウィンドウ10の大まかな位置決めが成されたことを確認した後に、作業者によって押圧されるスイッチであり、押込指示スイッチ7・7が押圧されることによって、パワーアシスト装置1の動作を押込動作に移行させるために設けられるものである。尚、本実施例では、押込指示スイッチ7をハンドル3c・3c上に合計2箇所配設する例を示しているが、押込指示スイッチ7の配置場所や配置個数によって、本発明を限定するものではない。
【0025】
フリージョイント4は、ロール・ピッチ・ヨーの各回転方向に対して相互に干渉することなく自由に回転できる構成とした継手部材である。また、フリージョイント4にはブレーキ機構4aを備えており、制御装置5からの指令に基づいてロール・ピッチ・ヨーの回転方向ごとに独立して回転を規制することができる構成としている。
【0026】
このようにパワーアシスト装置1は、多関節型ロボット2にフリージョイント4を介してワーク保持装置3を連結し、これにより多自由度を備える構成としたロボットであり、前記多関節型ロボット2、ワーク保持装置3、フリージョイント4および制御装置5等によりウィンドウ10を搬送するための搬送具を構成している。
尚、本発明を適用するロボットは、多自由度を備えているものに限らず、1自由度のみを有するロボットであっても本発明を適用することが可能である。
【0027】
制御装置5は、多関節型ロボット2、ワーク保持装置3、フリージョイント4等と接続されるものであるが、制御装置5と各部との接続状況を、ここでさらに詳述する。
図3に示す如く、制御装置5は、多関節型ロボット2のモータ2a・2b、ワーク保持装置3の力センサ3d・3dおよび接圧センサ3e・3e・・・、フリージョイント4のブレーキ機構4a、デッドマンスイッチ6・6・・・、押込指示スイッチ7・7等と接続されている。
【0028】
制御装置5を多関節型ロボット2のモータ2a・2bと接続することにより、制御装置5からの指示に基づいて、多関節型ロボット2の姿勢を制御する構成としている。
また制御装置5をワーク保持装置3の力センサ3d・3dと接続することにより、作業者がハンドル3c・3cを把持してワーク保持装置3を所望する方向へ操作するときに、制御装置5によって、そのときの操作方向や操作力等を検知する構成としている。つまり、力センサ3d・3dにより作業者の操作状態に関する検知情報が制御装置5に入力されると、この検知情報に基づいて、作業者の所望する操作方向を判断し、モータ2a・2bの動作を制御して多関節型ロボット2の姿勢を制御する構成としている。
尚、本実施例では、力センサ3d・3dとして6分力ロードセルを用いる構成としている。
【0029】
また制御装置5をワーク保持装置3の接圧センサ3e・3e・・・と接続することにより、接圧センサ3e・3e・・・による検知圧から、ウィンドウ10が組み付け対象位置のボディに対して規定値通りの押圧力で押圧されているか否かを判断したり、また複数の接圧センサ3e・3e・・・による検知圧の偏り具合を検知したりすることによってウィンドウ10がボディに対して均等に押圧されているか否かを、制御装置5によって判断する構成としている。
【0030】
また制御装置5をフリージョイント4のブレーキ機構4aと接続することにより、制御装置5からの指示に基づいて、フリージョイント4の回転を規制したり、また規制を解除したりする構成としている。これにより、ワーク保持装置3の姿勢を規制することが可能となっている。
【0031】
また制御装置5をデッドマンスイッチ6・6・・・と接続することにより、制御装置5によって、作業者によるワーク保持装置3の把持状態を検知する構成としている。つまり、デッドマンスイッチ6・6・・・のON(またはOFF)信号を制御装置5に入力することによって、制御装置5によって、作業者がワーク保持装置3を把持している(即ち、操作状態にある)か否かを判断する構成としている。
【0032】
また制御装置5を押込指示スイッチ7・7と接続することにより、制御装置5によって、ウィンドウ10の大まかな位置決め状態を検知する構成としている。つまり、作業者がウィンドウ10の大まかな位置決めが成されたことを確認した後に押込指示スイッチ7・7を押圧しON状態とすることによって、そのON信号が制御装置5に入力され、制御装置5によって、大まかな位置決め状態を検知するとともに多関節型ロボット2の動作指令を与えて、パワーアシスト装置1の動作を、ウィンドウ10をボディ11に対して押圧する動作(押込動作)に移行する構成としている。
【0033】
また制御装置5には、ワーク保持装置3の位置情報に関するマップが予め記憶されている。位置情報に関するマップには、搬送対象物(ウィンドウ10等)の搬送経路として適当な軌道に関する情報(軌道情報)が含まれており、この軌道情報に基づいて軌道に沿ってワーク保持装置3が変位するように多関節型ロボット2の動作を制御する構成としている。また、ワーク保持装置3の位置情報に対応させて、モータ2a・2bやブレーキ機構4aの作動状況を変化させる構成としている。
【0034】
さらに制御装置5には、自動車の車種情報に関するマップが予め記憶されている。そして、組み付け対象となる自動車の車種に応じて、前述した軌道情報を選択的に切り替えるようにしたり、また、ウィンドウ装着時の適正角度に関する情報等を自動的に変更したりする構成としている。
【0035】
尚、本発明の適用対象となるパワーアシスト装置は、本実施例に係るパワーアシスト装置1のように、複数の接圧センサ3e・3e・・・を備える構成に限らず、例えば、一つの接圧センサを備える構成のパワーアシスト装置にも適用することが可能である。
【0036】
次に、本発明の第一実施例に係るパワーアシスト装置1によるウィンドウ10の一連の組み付け作業工程について、図4〜図14を用いて説明をする。図4は本発明の適用に係るウィンドウとその組み付け対象部(ボディ)の概略を示す説明図、図5はボディのウィンドウ取付面を示す拡大説明図、図6は本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の流れを示す作業フロー図、図7は本発明に係るパワーアシスト装置の各Stepにおけるフリージョイントの規制状態を示す説明図、図8は本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−1)を示す模式図、図9は本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−2)〜(Step−3)を示す模式図、図10は本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−4)〜(Step−5)を示す模式図、図11は本発明の第一実施例に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−5)における制御フロー図、図12は本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−6)〜(Step−8)を示す模式図、図13は本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−9)を示す模式図、図14は本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−10)を示す模式図である。
尚、説明の便宜上、図4中に示すXYZ座標系にパワーアシスト装置が設けられているものとし、X軸回りの回転をロール回転、Y軸回りの回転をピッチ回転、Z軸回りの回転をヨー回転と規定して以後の説明を行っていくものとする。
【0037】
本発明の適用に係るパワーアシスト装置およびその制御方法の説明に際し、パワーアシスト装置を用いて自動車のボディに対してウィンドウの組み付けを行う一連の作業を例示して説明を行う。尚、本実施例では、パワーアシスト装置をウィンドウの組み付け作業に用いているが、本発明の適用に係るパワーアシスト装置の用途をこれに限定するものではない。
【0038】
図4および図5に示す如く、自動車のボディ11に形成されるウィンドウ取付面11aに対して、ウィンドウ10を取り付ける作業では、ウィンドウ10をボディ11とラゲッジハッチ12との間の隙間Wを通過させてウィンドウ取付面11aに搬送する必要がある。また、ウィンドウ10の周縁部には接着剤13が塗布されており、ウィンドウ10の搬送途中に、ボディ11の不要な場所に接着剤13が付着することが無いように搬送する必要がある。
【0039】
つまり、係るパワーアシスト装置1を用いたウィンドウ10の組み付け作業では、搬送途中にウィンドウ10の姿勢が乱れると、ウィンドウ10がボディ11およびラゲッジハッチ12と接触し、ウィンドウ10やボディ11およびラゲッジハッチ12の破損を招く恐れや、ボディ11およびラゲッジハッチ12の不要な場所に接着剤13が付着してしまう恐れがある。
【0040】
本発明に係るパワーアシスト装置では、搬送途中にワークの姿勢が乱れることを防止するようにしており、これにより、ワークを組み付け対象物の隙間を通過させて搬送するような場合であっても、ワーク等の破損や汚損を防止するとともに、効率よくワークを搬送することができる構成としている。尚、本発明に係るパワーアシスト装置は、ワークを組み付け対象物の隙間を通過させて搬送するような場合に特に有効であるが、そのような場合に限らず、ワークと組み付け対象物が接触する可能性が低いような場合であっても本発明を適用することが可能であり、そのような場合にも効率よくワークを搬送することができる等の効果を奏するものである。
以下に、本発明の適用に係るパワーアシスト装置1によるウィンドウ10の取付作業について、具体的に説明をする。
【0041】
(搬送工程)
図6および図8に示す如く、まずワーク保持装置3によってウィンドウ10をロール方向にボディ11の傾斜角度に合わせて傾けた状態に保持する。この状態で、作業者がパワーアシスト装置1を操作し、パワーアシスト装置1によるアシストを受けながら、ウィンドウ10を予めティーチングされた搬送経路に従ってボディ11の傾斜に沿って搬送していく(Step−1)。
【0042】
図7に示す如く、このときブレーキ機構4aは、制御装置5からの指令によって作動状態が保持されており、フリージョイント4はワーク保持装置3が所定の角度を保持するようにロール・ピッチ・ヨーの各方向への回転が規制された(ロックされた)状態となっている。
【0043】
(位置決め工程)
図6および図9に示す如く、次に作業者がパワーアシスト装置1を操作し、ウィンドウ10を、ボディ11のウィンドウ取付面11aの角度に対して垂直方向上方に略一定距離だけ離間した位置まで搬送していく。この位置はパワーアシスト装置1に予めティーチングされており、パワーアシスト装置1によって自律的にウィンドウ10の大まかな位置決めが成される。このとき作業者は、ウィンドウ10がパワーアシスト装置1によってウィンドウ取付面11aに対して大まかに位置決めが成されたことを目視で確認する(Step−2)。
【0044】
図7に示す如く、このときブレーキ機構4aは、制御装置5からの指令によって作動状態が保持されており、フリージョイント4はワーク保持装置3が所定の角度を保持するように引き続きロール・ピッチ・ヨーの各方向への回転が規制された(ロックされた)状態となっている。
【0045】
(第一押込指示工程)
図6および図9に示す如く、次に作業者は、パワーアシスト装置1によって、ウィンドウ10がウィンドウ取付面11aに対して大まかに位置決めが成されたことを目視で確認した後に、押込指示スイッチ7を押圧する。(Step−3)
【0046】
(第一押込工程)
作業者が押込指示スイッチ7を押圧すると、その信号が制御装置5に入力される。そして、制御装置5からパワーアシスト装置1に指令が成されて、パワーアシスト装置1が自律的に動作し、ウィンドウ10が、予めティーチングされた搬送経路に従ってウィンドウ取付面11aに近接する方向に搬送される。
【0047】
やがて、ウィンドウ10はウィンドウ取付面11aと接触するが、その後もパワーアシスト装置1の自律動作によるウィンドウ取付面11aに近接する方向への搬送が継続されてウィンドウ取付面11aに押し込まれる。このときウィンドウ10は、ウィンドウ取付面11aに対して押圧されている(Step−4)。
【0048】
図7に示す如く、このときブレーキ機構4aは、制御装置5からの指令によって作動状態が保持されており、フリージョイント4はワーク保持装置3が所定の角度を保持するように引き続きロール・ピッチ・ヨーの各方向への回転が規制された(ロックされた)状態となっている。
【0049】
(第一押圧力検知工程)
図6および図10に示す如く、次にパワーアシスト装置1の自律動作によって、ウィンドウ10がウィンドウ取付面11aに対して押圧されるとき、接圧センサ3e・3e・・・によって、そのときの押圧力が検知される。
検知された押圧力は、制御装置5に入力されて、図11に示す制御フローに基づく判定が成される。尚、本実施例に示すワーク保持装置3は、合計4個の接圧センサ3e・3e・・・を備える構成としているが、2個以上の接圧センサを備えるワーク保持装置によって構成されるパワーアシスト装置であれば、本発明に係るパワーアシスト装置の制御方法を適用することが可能である。また、接圧センサを1個だけ備える構成のパワーアシスト装置に対しても、本発明に係る制御方法を応用して容易に適用することが可能である。
【0050】
図11に示す如く、(Step−5)ではパワーアシスト装置1の自律動作によって、ウィンドウ10がウィンドウ取付面11aに対して押圧されるとき、接圧センサ3e・3e・・・によって、そのときの押圧力が検知される(Step−5−1)。
そして、4個の接圧センサ3e・3e・・・により検知された押圧力Fe1〜Fe4が制御装置5に入力される。
【0051】
(押圧力判定工程)
制御装置5では、まず予め設定された第一閾値Fcと、押圧力Fe1〜Fe4とを比較する(Step−5−2)。
ここで、押圧力Fe1〜Fe4の全てが第一閾値Fc未満である場合には、パワーアシスト装置1の自律動作によるウィンドウ取付面11aに近接する方向への搬送(即ち、押込)が継続される。
【0052】
また図7に示す如く、ブレーキ機構4aは、制御装置5からの指令によって作動状態が保持されており、フリージョイント4はワーク保持装置3が所定の角度を保持するように引き続きロール・ピッチ・ヨーの各方向への回転が規制された(ロックされた)状態となっている(Step−5−5)。
【0053】
一方、押圧力Fe1〜Fe4のうちいずれか一つ以上の押圧力が第一閾値Fcを越えている場合には、次の判定に遷移する。つまり、押圧力Fe1〜Fe4のうちいずれか一つ以上の押圧力が第一閾値Fcを越えている場合に限って、次の判定に遷移するようにしている。
【0054】
押圧力Fe1〜Fe4のうちいずれか一つ以上の押圧力が第一閾値Fcを越えている場合、制御装置5によって、押圧力Fe1〜Fe4の合計(Fe1+Fe2+Fe3+Fe4)を求めて、この合計と第二閾値Ftを比較する(Step−5−3)。
ここで、押圧力Fe1〜Fe4の合計(Fe1+Fe2+Fe3+Fe4)が第二閾値Ft未満である場合には、パワーアシスト装置1の自律動作によるウィンドウ取付面11aに近接する方向への搬送(即ち、押込)が継続される。
【0055】
またこの場合、図7に示す如く、ブレーキ機構4aは、制御装置5からの指令によって作動状態が保持されており、フリージョイント4はワーク保持装置3が所定の角度を保持するように引き続きロール・ピッチ・ヨーの各方向への回転が規制された(ロックされた)状態となっている(Step−5−5)。
一方、押圧力Fe1〜Fe4の合計(Fe1+Fe2+Fe3+Fe4)が第二閾値Ftを越えている場合には、さらに次の判定に遷移する。
【0056】
(デッドマンスイッチ判定工程)
押圧力Fe1〜Fe4の合計(Fe1+Fe2+Fe3+Fe4)が第二閾値Ftを越えている場合には、さらに制御装置5によって検知されるデッドマンスイッチ6・6・・・の押圧状態による判定を行う(Step−5−4)。
つまり、押圧力Fe1〜Fe4のうちいずれか一つ以上の押圧力が第一閾値Fcを越えており、かつ、押圧力Fe1〜Fe4の合計(Fe1+Fe2+Fe3+Fe4)が第二閾値Ftを越えている場合に限って、さらに次の判定に遷移するようにしている。
【0057】
(ブレーキ解除判定工程)
押圧力Fe1〜Fe4のうちいずれか一つ以上の押圧力が第一閾値Fcを越えており、かつ、押圧力Fe1〜Fe4の合計(Fe1+Fe2+Fe3+Fe4)が第二閾値Ftを越えている場合であって、デッドマンスイッチ6・6・・・が押圧されていない場合(即ち、作業者がワーク保持装置3の操作状態にない場合)には、パワーアシスト装置1の自律動作によるウィンドウ取付面11aに近接する方向への搬送(即ち、押込)が継続される。
【0058】
またこの場合、図7に示す如く、ブレーキ機構4aは、制御装置5からの指令によって作動状態が保持されており、フリージョイント4はワーク保持装置3が所定の角度を保持するように引き続きロール・ピッチ・ヨーの各方向への回転が規制された(ロックされた)状態となっている(Step−5−5)。
【0059】
一方、図7に示す如く、押圧力Fe1〜Fe4のうちいずれか一つ以上の押圧力が第一閾値Fcを越えており、かつ、押圧力Fe1〜Fe4の合計(Fe1+Fe2+Fe3+Fe4)が第二閾値Ftを越えている場合であって、デッドマンスイッチ6・6・・・が押圧されている場合(即ち、作業者がワーク保持装置3の操作状態にある場合)には、ブレーキ機構4aは、制御装置5からの指令によって作動状態が解除され、フリージョイント4がロール・ピッチ・ヨーの各方向へ自由に回転できる状態となっている(Step−6)。
【0060】
つまり、押圧力Fe1〜Fe4のうちいずれか一つ以上の押圧力が第一閾値Fcを越えており、かつ、押圧力Fe1〜Fe4の合計(Fe1+Fe2+Fe3+Fe4)が第二閾値Ftを越えており、かつ、デッドマンスイッチ6・6・・・がON状態である場合に限って、ブレーキ機構4aの作動を解除し、フリージョイント4が自由に回転できるようにしている。
【0061】
即ち、本発明に係るパワーアシスト装置1の制御方法は、複数の保持部たる吸盤3b・3b・・・を備え、かつ、複数の吸盤3b・3b・・・にそれぞれ接圧センサ3e・3e・・・を備えるワーク保持装置3を有するパワーアシスト装置1の制御方法であって、押圧力判定工程は、制御装置5により、複数の吸盤3b・3b・・・の接圧センサ3e・3e・・・により検知した複数の押圧力Fe1〜Fe4のうち、少なくとも一つ以上の押圧力が、予め設定した第一閾値Fcを超えているか否かを判定し、かつ、複数の吸盤3b・3b・・・の接圧センサ3e・3e・・・により検知した複数の押圧力の合計(即ち、Fe1+Fe2+Fe3+Fe4)が、予め設定した第二閾値Ftを越えているか否かを判定している。
これにより、搬送途中においてウィンドウ(即ち、ワーク)10の姿勢が安定した後に初めて作業者による組み付け位置の微調整を可能とすることにより、搬送途中におけるウィンドウ10の姿勢を安定させるとともに、位置決め精度を確保することができるのである。
【0062】
またこのとき、パワーアシスト装置1の自律動作によるウィンドウ取付面11aに近接する方向への搬送は中断される。
図11に示す如く、本実施例において第二閾値Ftは、Ft=2Fcとして規定しており、第二閾値Ftを第一閾値Fcの2倍に規定している。このように規定すれば、閾値の設定が容易であり、かつ、適切な閾値を設定することができる。尚、この第一閾値Fcおよび第二閾値Ftの決定方法は一例であり、もちろん他の決定方法とすることも可能である。
【0063】
即ち、本発明に係るパワーアシスト装置1の制御方法では、第二閾値Ftは、第一閾値Fcの2倍の値としている。
これにより、搬送途中におけるウィンドウ(即ち、ワーク)10の姿勢を確実に安定させることができるのである。また、ウィンドウ10の姿勢が確実に安定した状態で、作業者による組み付け位置の微調整をすることができるのである。
【0064】
(位置決め微調整工程)
図6および図12に示す如く、制御装置5からの指令によってブレーキ機構4aの作動状態が解除され、フリージョイント4がフリーに回転できる状態になると、作業者の操作によって、ワーク保持装置3の位置を微調整することが可能となる(Step−7)。これにより、例えば、ボディ11の姿勢が乱れており、大まかな位置決めではウィンドウ10の位置がウィンドウ取付面11aに対してズレていたとしても、作業者によって、ワーク保持装置3の姿勢を修正することができ、ウィンドウ取付面11aの正確な位置にウィンドウ10を組み付けることが可能となる。
【0065】
(第二押込指示工程)
図6および図12に示す如く、次に作業者の操作によって微調整が成され、ウィンドウ10がウィンドウ取付面11aに対して正確に位置決めが成されたことを目視等で確認した後に、作業者が押込指示スイッチ7を再度押圧する(Step−8)。
【0066】
図7に示す如く、このときブレーキ機構4aは、制御装置5からの指令によって再度作動状態が保持されるようになり、フリージョイント4はワーク保持装置3がウィンドウ取付面11aに対して正確に位置決めが成された角度を保持するようにロックされる。
【0067】
(第二押込工程)
図6および図13に示す如く、作業者が押込指示スイッチ7を再度押圧すると、その信号が制御装置5に入力される。そして、制御装置5からパワーアシスト装置1に指令が成されて、パワーアシスト装置1が再度自律的に動作し、ウィンドウ10が、予めティーチングされた搬送経路に従ってウィンドウ取付面11aにさらに近接する方向に搬送(即ち、押込)される。
【0068】
図7に示す如く、このときブレーキ機構4aは、制御装置5からの指令によって引き続き作動状態が保持されて、フリージョイント4はワーク保持装置3がウィンドウ取付面11aに対して正確に位置決めが成された角度を保持するようにロール・ピッチ・ヨーの各方向への回転が規制された(ロックされた)状態となっている。
【0069】
(第二押圧力検知工程)
図6および図13に示す如く、次にパワーアシスト装置1の自律動作によって、ウィンドウ10がウィンドウ取付面11aに対してさらに押し込まれるとき、接圧センサ3e・3e・・・によって、そのときの押圧力が検知される(Step−9)。
そして、4個の接圧センサ3e・3e・・・により検知された押圧力Fe1〜Fe4が制御装置5に入力される。
【0070】
制御装置5では、予め設定された第三閾値Fzと、押圧力Fe1〜Fe4を比較する。
ここで、押圧力Fe1〜Fe4の全てが第三閾値Fz未満である場合には、パワーアシスト装置1の自律動作によるウィンドウ取付面11aに近接する方向への搬送が継続される。また、ブレーキ機構4aは、制御装置5からの指令によって作動状態を保持しており、フリージョイント4はワーク保持装置3を所定の角度で保持するように引き続きロール・ピッチ・ヨーの各方向への回転が規制された(ロックされた)状態となっている。
【0071】
そして、押圧力Fe1〜Fe4の全てが第三閾値Fzを越えた場合には、ウィンドウ10が十分ボディ11に対して押圧されたものと判断し、パワーアシスト装置1の自律動作によるウィンドウ取付面11aに近接する方向への搬送(即ち、押込)を終了する。
【0072】
そして、図14に示す如く、パワーアシスト装置1の自律動作によるウィンドウ取付面11aに近接する方向への搬送(即ち、押込)を終了すると、ワーク保持装置3によるウィンドウ10の保持状態を解除し、ウィンドウ10の組み付けが完了する(Step−10)。
【0073】
また図7および図14に示す如く、このときブレーキ機構4aは、パワーアシスト装置1が作業開始位置に復帰する動作に備えて、制御装置5からの指令によって作動状態が保持され、フリージョイント4はワーク保持装置3が所定の角度を保持するように引き続きロール・ピッチ・ヨーの各方向への回転が規制された(ロックされた)状態となっている。このようにして、一連のウィンドウ組み付け作業を完了する構成としている。
【0074】
即ち、本発明に係るパワーアシスト装置1の制御方法においては、ワークたるウィンドウ10を保持するための保持部たる吸盤3b・3b・・・を備えるワーク保持装置3と、ワーク保持装置3を支持するアーム(即ち、多関節型ロボット2)と、ワーク保持装置3を多間接型ロボット2に対して回転可能に支持するフリージョイント4と、フリージョイント4の回転を規制可能なブレーキ機構4aと、ブレーキ機構4aによる規制状態を制御する制御装置5と、ワーク保持装置3に保持されるウィンドウ10に作用する押圧力を検知する接圧センサ3e・3e・・・と、ワーク保持装置3に備えるデッドマンスイッチ6と、を備えるパワーアシスト装置1の制御方法であって、接圧センサ3e・3e・・・により、ワーク保持装置3に保持されるウィンドウ10に作用する押圧力Fe1〜Fe4を検知し、その検知結果を制御装置5に入力する第一押圧力検知工程と、制御装置5により、接圧センサ3e・3e・・・により検知した押圧力Fe1〜Fe4が、予め設定した閾値(第一閾値Fcおよび第二閾値Ft)を越えているか否かを判定する押圧力判定工程と、制御装置5により、デッドマンスイッチ6が入状態であるか否かを判定するデッドマンスイッチ判定工程と、制御装置5により、押圧力検知工程の検知結果と押圧力判定工程の判定結果とデッドマンスイッチ判定工程の判定結果に応じて、前記ブレーキによる前記ジョイント部の回転の規制を解除するか否かを判定するブレーキ解除判定工程とを備えている。
【0075】
また、本発明に係るパワーアシスト装置1は、ワークたるウィンドウ10を保持するための複数の保持部たる吸盤3b・3b・・・を備えるワーク保持装置3と、ワーク保持装置3を支持する多関節型ロボット2と、吸盤3b・3b・・・を多関節型ロボット2に対して回転可能に支持するフリージョイント4と、フリージョイント4の回転を規制可能なブレーキ機構4aと、ブレーキ機構4aによる規制状態を制御する制御装置5と、吸盤3b・3b・・・にそれぞれ備えられ、ウィンドウ10に作用する押圧力Fe1〜Fe4を検知する複数の接圧センサ3e・3e・・・と、ワーク保持装置3に備えるデッドマンスイッチ6と、を備えるパワーアシスト装置1であって、制御装置5は、複数の吸盤3b・3b・・・の接圧センサ3e・3e・・・により検知した複数の押圧力Fe1〜Fe4のうち、少なくとも一つ以上の押圧力が、予め設定した第一閾値Fcを超えており、かつ、複数の吸盤3b・3b・・・の接圧センサ3e・3e・・・により検知した複数の押圧力Fe1〜Fe4の合計(Fe1+Fe2+Fe3+Fe4)が、予め設定した第二閾値Ftを越えており、かつ、前記デッドマンスイッチ6が入状態である場合には、ブレーキ機構4aによるフリージョイント4の回転の規制を解除する構成としている。
【0076】
パワーアシスト装置1およびその制御方法をこのような構成とすることにより、搬送途中におけるウィンドウ(即ち、ワーク)10の姿勢を安定させることができるのである。これにより、作業者がウィンドウ10の搬送をスムーズに行うことができるようになり、搬送作業の効率が改善されるのである。
また、搬送途中においてウィンドウ10と組み付け対象部材(ボディ11やラゲッジハッチ12)が接触することを防止することができ、ウィンドウ10や組み付け対象部材(ボディ11やラゲッジハッチ12)の破損や汚損を防止することができるのである。
さらに、搬送途中においてウィンドウ10の姿勢が安定した後に初めて作業者による組み付け位置の微調整を可能とすることにより、搬送途中におけるウィンドウ10の姿勢を安定させるとともに、ウィンドウ10の位置決め精度を確保することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施例に係るパワーアシスト装置の全体構成を示す模式図。
【図2】本発明の一実施例に係るワーク保持装置を示す平面および側面模式図。
【図3】本発明の一実施例に係る制御装置の接続状況を示す模式図。
【図4】本発明の適用に係るウィンドウとその組み付け対象部(ボディ)の概略を示す説明図。
【図5】ボディのウィンドウ取付面を示す拡大説明図。
【図6】本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の流れを示す作業フロー図。
【図7】本発明に係るパワーアシスト装置の各Stepにおけるフリージョイントの規制状態を示す説明図。
【図8】本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−1)を示す模式図。
【図9】本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−2)〜(Step−3)を示す模式図。
【図10】本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−4)〜(Step−5)を示す模式図。
【図11】本発明の第一実施例に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−5)における制御フロー図。
【図12】本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−6)〜(Step−8)を示す模式図。
【図13】本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−9)を示す模式図。
【図14】本発明の適用に係るパワーアシスト装置を用いたウィンドウ組み付け作業の(Step−10)を示す模式図。
【符号の説明】
【0078】
1 パワーアシスト装置
2 多関節型ロボット
3 ワーク保持装置
3b 吸盤
3c ハンドル
3e 接圧センサ
4 フリージョイント
4a ブレーキ機構
5 制御装置
6 デッドマンスイッチ
10 ウィンドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するための保持部を備えるワーク保持装置と、
該ワーク保持装置を支持するアームと、
前記ワーク保持装置を前記アームに対して回転可能に支持するジョイント部と、
該ジョイント部の回転を規制可能なブレーキと、
該ブレーキによる規制状態を制御する制御装置と、
前記ワーク保持装置に保持される前記ワークに作用する押圧力を検知する押圧力検知センサと、
前記ワーク保持装置に備えるデッドマンスイッチと、
を備えるパワーアシスト装置の制御方法であって、
前記押圧力検知センサにより、前記ワーク保持装置に保持される前記ワークに作用する押圧力を検知し、
その検知結果を前記制御装置に入力する押圧力検知工程と、
前記制御装置により、
前記押圧力検知センサにより検知した押圧力が、
予め設定した閾値を越えているか否かを判定する押圧力判定工程と、
前記制御装置により、
前記デッドマンスイッチが入状態であるか否かを判定するデッドマンスイッチ判定工程と、
前記制御装置により、
前記押圧力検知工程の検知結果と前記押圧力判定工程の判定結果と前記デッドマンスイッチ判定工程の判定結果に応じて、
前記ブレーキによる前記ジョイント部の回転の規制を解除するか否かを判定するブレーキ解除判定工程とを備える、
ことを特徴とするパワーアシスト装置の制御方法。
【請求項2】
前記ワーク保持装置は、
複数の前記保持部を備え、かつ、
前記複数の保持部にそれぞれ前記押圧力検知センサを備えるものであって、
前記押圧力判定工程では、
前記制御装置により、
複数の前記保持部の押圧力検知センサにより検知した複数の押圧力のうち、
少なくとも一つ以上の押圧力が、
予め設定した第一閾値を超えているか否かを判定し、かつ、
複数の前記保持部の押圧力検知センサにより検知した複数の押圧力の合計が、
予め設定した第二閾値を越えているか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1記載のパワーアシスト装置の制御方法。
【請求項3】
前記第二閾値は、
前記第一閾値の2倍の値とする、
ことを特徴とする請求項2記載のパワーアシスト装置の制御方法。
【請求項4】
ワークを保持するための複数の保持部を備えるワーク保持部と、
該ワーク保持部を支持するアームと、
前記ワーク保持部を前記アームに対して回転可能に支持するジョイント部と、
該ジョイント部の回転を規制可能なブレーキと、
該ブレーキによる規制状態を制御する制御装置と、
前記複数の保持部にそれぞれ備えられ、前記ワークに作用する押圧力を検知する複数の押圧力検知センサと、
前記ワーク保持部に備えるデッドマンスイッチと、
を備えるパワーアシスト装置であって、
前記制御装置は、
複数の前記保持部の押圧力検知センサにより検知した複数の押圧力のうち、
少なくとも一つ以上の押圧力が、
予め設定した第一閾値を超えており、かつ、
複数の前記保持部の押圧力検知センサにより検知した複数の押圧力の合計が、
予め設定した第二閾値を越えており、かつ、
前記デッドマンスイッチが入状態である場合には、
前記ブレーキによる前記ジョイント部の回転の規制を解除する、
ことを特徴とするパワーアシスト装置。
【請求項5】
前記第二閾値は、
前記第一閾値の2倍の値とする、
ことを特徴とする請求項4記載のパワーアシスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−202251(P2009−202251A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45010(P2008−45010)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】