説明

ヒータ制御回路及び熱伝導率測定装置

【課題】ヒータに加えるエネルギーを必要最小限にして熱的ストレスや電気的ストレスを低減しヒータの劣化を防止するとともに、計測時間を短縮してヒータを所定の温度に制御するヒータ制御回路等を提供する。
【解決手段】ヒータ制御回路は、発熱温度により抵抗値が変化するヒータ11、ヒータ11が所定温度を示す抵抗値と等価な抵抗値を持つ固定抵抗12、これらの抵抗へ電流を流すランプ電流源14、これらの抵抗に生じる電圧を比較するコンパレータ13を具備する。そして、ランプ電流源14は、同等のランプ電流を同一のタイミングで上記抵抗へ通電し、コンパレータ13は両抵抗に発生した電圧が等しくなる点を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータ制御回路及び熱伝導率測定装置に関し、特にヒータを発熱させて、ヒータから奪われる熱量や移動する熱量を計測することで、気体や液体の熱伝導率や流量を測定する技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、気体や液体の熱伝導率を測定することによって特定物質濃度を計測する湿度計測器、ガス濃度計測器、液体濃度計測器等が知られ、また測定された熱伝導率を用いて気体や液体の流れを計測する流速計やその計測値から流量を計測する流量計測器が知られている。
【0003】
熱伝導率は、等方性物体内の所定断面の上下面を通り法線方向に単位時間に流れる熱量が法線方向の温度傾斜と断面積に比例する定数である。例えば、熱伝導率が気体分子量に関係することに着目し、気体の熱伝導率の違いを利用した湿度計においては、加熱された発熱抵抗体から雰囲気中に放熱される放熱量の差によって生ずる発熱抵抗体の抵抗値変化量から湿度を求める。
【0004】
また、例えば感熱式の流速計においては、発熱抵抗体の上流と下流に測温抵抗体を配置し、発熱抵抗体を流体より一定温度だけ高温に発熱させた状態で上流と下流の測温抵抗体により流体の温度をそれぞれ測定し、この温度差、すなわち上流から下流へ移動した熱量により流体の流速を求める。
【0005】
このように、発熱抵抗体であるヒータを発熱させて、ヒータから奪われる熱量や移動する熱量を計測することにより、気体等の熱伝導率や流れを測定することができ、その技術に関して多くの技術が開示されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、ヒータを発熱させて、ヒータから移動する熱量を計測することで、気体の流れを計測する流量計測装置のヒータ制御方法に関し、特にヒータ温度を周囲気体温度に対して、一定温度高い温度に制御するヒータ制御方式に関する発明で、ヒータが経年劣化し抵抗値が変化した場合においても、ヒータに加わるエネルギー(ワッテージ)を一定に制御することで、常に周囲温度に対してヒータ発熱温度を一定温度高くする手段について開示されている。
【0007】
また、例えば特許文献2では、雰囲気の熱伝導率を計測する雰囲気計のヒータ駆動方法で、雰囲気の熱伝導率を計測する装置の中で、特に大気中の水分量(湿度)を計測する方法に関する発明で、ヒータを発熱させるのに、三角波の電流を用いて発熱のピーク温度で周囲気体の熱伝導率を計測することで、ヒータに加わるエネルギーを小さくする方法が提案されている。
【0008】
また、例えば特許文献3では、ヒータの抵抗値がヒータ温度を示す特性を利用して、ホイートストンブリッチ等を用いてヒータを一定温度で発熱させて周囲気体に奪われる熱量から湿度を計測する方法に関し、特に温度補償方法に関する発明で、ヒータの発熱温度を高温と低温に切り換えられるようにして、低温時にヒータに生じる電圧と高温時にヒータに生じる電圧との差をとることで温度補償を行う方法が開示されている。
【0009】
また、例えば特許文献4や特許文献5では、気体や液体の熱伝導率の温度依存性を利用し、気体や液体の成分を特定して濃度を計測する技術が提案されている。特許文献4では、周囲温度が変化しても一定温度になるようにヒータを制御して、発熱に要したエネルギーから周囲雰囲気の熱伝導率を計測するガス分析方法が提案されており、発熱させる温度を多段階に変化させて、各温度における周囲気体の熱伝導率の違いから、気体の成分を特定し濃度を計測している。また、特許文献5では、液体、特に液化天然ガス中の成分を検出する方法に関して述べられており、その制御は、ホイートストンブリッチの構成で、ブリッチの抵抗バランスをスイッチによって変えることで、ヒータ発熱温度を切り換える方法を用いている。
【特許文献1】特開平9−306637号公報
【特許文献2】特許第2889909号公報
【特許文献3】特許第3537595号公報
【特許文献4】特開平8−50109号公報
【特許文献5】特表2002−543385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の発明は、ヒータが経年劣化してもヒータの発熱温度を周囲温度に対して一定温度高い温度に保つヒータ制御手段に関して述べられているが、ヒータの劣化を防ぐものではなく限度がある。
【0011】
また、特許文献2の発明は、三角波の電流を用いてヒータを発熱させ、発熱のピーク温度で周囲気体の熱伝導率を計測する方法であるが、この方法は、ヒータへの通電開始から終了までの時間を固定することでヒータに加える電流の最大値を固定としているためヒータの発熱温度が周囲温度によって変動することになる。このような計測原理によるものにおいては、熱伝導率に温度依存性があるために誤差が生じる。また、このヒータ制御方式を上述したヒータ劣化を防ぐ手段として用いることも考えられるが、ヒータの発熱温度の制御方法が異なるため、対応させることは困難である。
【0012】
また、特許文献3の発明は、ヒータの発熱温度を高温と低温に切り換え、これらの出力差により温度補償が行われているが、通常、このような回路による温度切換えでは、ヒータの熱容量や熱伝達速度によってヒータに熱的な応答遅れが生じ、片や回路では抵抗バランスが取れるように大電流を印加するように動作するため、ヒータに過電流が流されることになる。他の従来技術では、上記の事象への対策として、抵抗やコンデンサを使った過電流防止方法が行われているが、この場合、抵抗とコンデンサによる時定数をヒータの熱時定数より十分大きくする必要があるため、計測に要する時間が長くかかることになってしまう。
【0013】
特許文献3による発熱温度の切換方法を図16に示す。図16は、小さな電源電圧で有効にヒータを加熱でき、不確定で大きな内部抵抗を有する半導体スイッチ等で回路切換えを行う際の半導体スイッチ等の内部抵抗が無視できるように構成されたものであるが、このような構成においては、温度切換えごとにオペアンプが必要であり、発熱温度を決定する固定抵抗等も複数必要になる。
【0014】
特許文献4や特許文献5の発明は、ホイートストンブリッチ回路を用いた制御方法で、測定を行うヒータ温度ごとにホイートストンブリッチのバランスを崩しているため、ヒータ温度が安定するのに時間を要し、測定を行うヒータ温度が増えるほど計測時間も長くなる。
【0015】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、ヒータに加えるエネルギーを必要最小限にして熱的ストレスや電気的ストレスを低減しヒータの劣化を防止するとともに、計測時間を短縮してヒータを所定の温度に制御するヒータ制御回路等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ヒータ制御回路において、通電により発熱した温度に基づいて抵抗値が変化する発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体が所定の温度において示す抵抗値と等価な値の抵抗体と、電圧発生手段による電圧を基準として2つの電流を発生させる電流発生手段を備えた通電手段と、前記発熱抵抗体の両端に生じる電圧である発熱抵抗体電圧と前記抵抗体の両端に生じる電圧である抵抗体電圧とを比較する比較手段とを有し、前記比較手段は、前記発熱抵抗体電圧と前記抵抗体電圧とが等しくなるタイミングを検出して検出信号を出力し、前記通電手段は、前記電流発生手段により発生させた2つの電流を前記発熱抵抗体及び前記抵抗体に通電し、前記検出信号に基づいて通電をリセットすることを特徴とする。
【0017】
本請求項に記載の発明は、発熱温度を決定する発熱抵抗体、発熱温度を示す抵抗値の抵抗体、これらの抵抗へ電流を流す通電手段、これらの抵抗に生じる電圧を比較する比較手段を具備するヒータ制御回路であり、通電手段により同等のランプ電流が同一のタイミングで上記抵抗へ通電され、比較手段により両抵抗に発生した電圧が等しくなる時点を検出し、通電をリセットすることで、必要最小限のエネルギーを用いて目標の発熱温度となるように制御できるものである。
【0018】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載のヒータ制御回路において、前記通電手段は、前記電流発生手段により発生させた大きさの等しい2つのランプ電流を前記発熱抵抗体及び前記抵抗体に通電することを特徴とする。
【0019】
また、請求項3記載の発明は、請求項1に記載のヒータ制御回路において、前記抵抗体と直列に接続された温度補償用の発熱抵抗体である温度補償抵抗体と、電圧を増幅する増幅手段とを有し、前記通電手段は、前記温度補償抵抗体が発熱しない大きさの微小ランプ電流を前記温度補償抵抗体及び前記抵抗体に通電し、前記増幅手段は、前記発熱抵抗体へのランプ電流と前記微小ランプ電流との比率に基づいて、前記温度補償抵抗体及び前記抵抗体の両端に生じる電圧である温度補償抵抗体電圧を増幅することを特徴とする。
【0020】
また、請求項4記載の発明は、熱伝導率測定装置において、請求項1から3のいずれか1項に記載のヒータ制御回路と、前記比較手段による前記検出信号の出力までの時間を計測する計時手段を備える制御手段とを有し、前記比較手段は、前記制御手段へ前記検出信号を出力し、前記制御手段は、前記比較手段からの検出信号を入力したときに前記計時手段による時間の計測を停止し、前記通電手段へリセット信号を出力し、前記通電手段は、前記制御手段からのリセット信号に基づいて通電をリセットすることを特徴とする。
【0021】
また、請求項5記載の発明は、請求項4に記載の熱伝導率測定装置において、回路動作を自由に切り換え可能な切換手段を有し、前記抵抗体は、複数が直列に接続され、かつ、1つに通電するか又は複数に通電するかを前記切換手段により切り換えでき、前記比較手段は、1つの前記抵抗体及び複数の前記抵抗体に通電した場合に、前記発熱抵抗体電圧と前記抵抗体電圧とが等しくなるタイミングをそれぞれ検出して前記制御手段へ前記検出信号を出力し、前記制御手段は、1つの前記抵抗体及び複数の前記抵抗体に通電した場合の前記比較手段からの検出信号に基づく計測結果をそれぞれ記憶し、前記計測結果から時間差を求めることを特徴とする。
【0022】
また、請求項6記載の発明は、請求項4に記載の熱伝導率測定装置において、回路動作を自由に切り換え可能な切換手段を有し、前記抵抗体は、複数が並列に接続され、かつ、いずれの前記抵抗体に通電するかを前記切換手段により切り換えでき、前記比較手段は、いずれの前記抵抗体にも通電した場合に、前記発熱抵抗体電圧と前記抵抗体電圧とが等しくなるタイミングをそれぞれ検出して前記制御手段へ前記検出信号を出力し、前記制御手段は、いずれの前記抵抗体にも通電した場合の前記比較手段からの検出信号に基づく計測結果をそれぞれ記憶し、前記計測結果から時間差を求めることを特徴とする。
【0023】
また、請求項7記載の発明は、請求項5又は6に記載の熱伝導率測定装置において、複数の前記切換手段により、前記比較手段や前記増幅手段を共通して使用できることを特徴とする。
【0024】
また、請求項8記載の発明は、請求項7に記載の熱伝導率測定装置において、前記電流発生手段によるランプ電流のオフセット調整を行うオフセット調整手段と、前記電流発生手段によるランプ電流の傾き調整を行う傾き調整手段とを有することを特徴とする。
【0025】
また、請求項9記載の発明は、請求項4から8のいずれか1項に記載の熱伝導率測定装置において、前記制御手段は、計測された時間又は求められた時間差に基づいて雰囲気の熱伝導率を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ヒータに加えるエネルギーを必要最小限にして熱的ストレスや電気的ストレスを低減しヒータの劣化を防止するとともに、計測時間を短縮しヒータを所定の温度に制御するヒータ制御回路等が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態におけるヒータ制御回路及び熱伝導率測定装置について、図面を参照して説明する。
【0028】
<実施形態1>
本実施形態のヒータ制御回路は、経年劣化の原因の1つである熱的ストレスや電気的ストレスを低減できるもので、特にヒータの発熱温度を所定の温度に制御するヒータ制御方式に関する。
【0029】
図1は、本実施形態のヒータ制御回路の概略構成を示すブロック回路図である。本実施形態のヒータ制御回路は、ヒータ11、R1(以下、固定抵抗という)12、コンパレータ13、ランプ電流源14から構成され、ランプ電流源14は、ランプ電圧発生回路15、電圧電流変換回路16及び17を備えている。
【0030】
ヒータ11は、温度に応じて抵抗値が正の変化をする白金抵抗体である。また、固定抵抗12の抵抗値は、ヒータ11が所定の温度時に示す抵抗値と同じものとしている。ランプ電圧発生回路15で発生した電圧は、電圧電流変換回路16及び17でランプ電流に変換され、また、ヒータ11に通電するランプ電流と固定抵抗12に通電するランプ電流は、同じ電流値を示すものが使用される。コンパレータ13は、ヒータ11で生じる電圧と固定抵抗12で生じる電圧の高低を比較しその比較結果を出力する。
【0031】
本実施形態では、ヒータを発熱させる通電手段にランプ電流を用いることでヒータの温度上昇速度を制限し、かつ、ヒータの発熱温度を決定する抵抗にも同等のランプ電流を同一タイミングで通電し、ヒータで生じる電圧と抵抗で生じる電圧が交差する点をコンパレータで捉えてランプ電流をリセットすることで、ヒータ発熱温度の最大値を抵抗で決められた発熱温度とし、ヒータに加えるエネルギーを少なくしている。
【0032】
本実施形態のヒータ制御回路の動作について図2を参照して説明する。図2は、ヒータとR1(固定抵抗12)で生じる電圧特性のグラフと、タイミングチャートを示したものである。
【0033】
ヒータ11は通電によって発熱し、発熱することで抵抗値が増加する素子であるため、ヒータ11に生じる電圧は電流の増加に伴って、図2のヒータ・R1電圧特性のグラフに示すような電圧波形になり、いずれは固定抵抗12で生じる電圧と交差する。この交点をコンパレータ13で捉えて、コンパレータ13の出力信号によって、ランプ電流のリセットが行なわれる。
【0034】
このときにコンパレータ13の入力は不定となってしまうのだが、固定抵抗12に並列にコンデンサを接続したり(不図示)、コンパレータ13の出力に微分回路を挿入したり(不図示)することで、コンパレータ13の入力は、ランプ電流通電開始時の状態に戻る。このように対応することで、グラフに示すような繰り返し動作になる。
【0035】
上述した一連の動作において、ヒータ11と固定抵抗12とで生じる電圧が交差する点では、ヒータ11と固定抵抗12に流す電流が同じであるので、ヒータ11の抵抗値と固定抵抗12の抵抗値は同じ抵抗値となっている。よって、ヒータ11が示す抵抗値はヒータ11の温度を示すものであるので、この交点でのヒータ発熱温度は固定抵抗12で定められた一定温度になっている。
【0036】
<実施形態2>
本発明の別の実施形態を図3に示す。図3は本実施形態のヒータ制御回路の概略構成を示すブロック回路図で、ヒータの発熱温度が周囲温度より一定温度高い温度となるように制御するヒータ制御回路を表している。本実施形態では、同一特性で同一形状の2つの白金抵抗体を使用し1つを温度補償用として用いており(以下、温度補償素子という)、また増幅器を用いる点で実施形態1と異なる。そして、固定抵抗側の電圧電流変換回路で微小電流に変換している点において相違する。上記の相違点以外の構成は実施形態1と共通するため、共通点の説明は省略する。
【0037】
ヒータ11と比較する固定抵抗12を「温度補償素子+R1」として用い、温度補償素子31が発熱しないように「温度補償素子+R1」に通電するランプ電流を微小電流(ヒータ11に流す電流の1/10)とする。そして、「温度補償素子+R1」で生じる電圧を、ヒータ11に流すランプ電流と「温度補償素子+R1」に流すランプ電流の比率に応じて増幅器32により増幅(10倍)し、コンパレータ13で比較できるようにしている。
【0038】
上記のように回路を構成することにより、ヒータ11は「温度補償素子+R1」の抵抗値が示す温度まで発熱することになる。すなわち、温度補償素子31の抵抗値は、ヒータ11が発熱していない状態での周囲温度に依存した抵抗値を示すものであるから、ヒータ11は、周囲温度より固定抵抗12で定められた一定温度の分だけ高い温度まで発熱することになる。
【0039】
以上述べたように、実施形態1と本実施形態のヒータ制御回路は、連続して発熱を得られるものではなく、発熱のピークにおいて一定温度あるいは一定温度差を得るものであるから、ヒータに加えるエネルギーを少なくできる。さらには、ヒータが急激に温度上昇することもないので、ヒートショックによる劣化を押さえることができ、また消費電流を少なくすることにもつながる。
【0040】
また、本実施形態のヒータ制御回路を流速計測に用いる場合、ヒータ発熱温度がピークを示すタイミングはコンパレータの出力から容易に得られるので、このタイミングを利用して、測温抵抗体で生じる電圧をサンプルホールド回路等で保持すれば計測が可能になる。また、雰囲気の熱伝導率計測に実施形態1のヒータ制御回路を用いる場合にも、ヒータ発熱温度がピークとなる時点のヒータ電圧をサンプルホールド回路等により保持するようにしてもよい。
【0041】
<実施形態3>
次に、本発明の別の実施形態について説明する。本実施形態では、実施形態1あるいは実施形態2のヒータ駆動回路を用いて、ランプ電流の通電開始からヒータの発熱温度が所定温度に達するまでの時間をマイコンのタイマ等で計測することによって、ヒータに生じる電圧を求められるようにしている。
【0042】
図4は、本実施形態のヒータ制御回路の概略構成を示すブロック回路図である。図4の回路は、実施形態1の回路に加えてマイコン41を具備している。マイコン41は、外部割込み機能と出力ポート制御機能とタイマ機能を内蔵しており、実施形態1におけるランプ電流のリセット制御を行う。その他の構成は実施形態1と同様であるため、共通する構成の説明は省略する。
【0043】
本実施形態のヒータ制御回路の動作について図5を参照して説明する。図5は、ヒータとR1(固定抵抗12)で生じる電圧特性のグラフと、タイミングチャートを示したものである。
【0044】
マイコン41は、任意のタイミングでリセット信号を解除し、タイマをスタートする。これにより、ヒータ11と固定抵抗12にランプ電流が流れる。ヒータ11で生じる電圧と固定抵抗12で生じる電圧は、ヒータ・R1特性のグラフに示すように時間とともに推移する。ヒータ11は通電により発熱して、発熱による温度上昇で抵抗値が増加する白金抵抗素子であるため、電流の増加に伴って、グラフに示すような電圧波形になる。また、ヒータ11で生じる電圧は、グラフで示すように時間が経過していくと固定抵抗12で生じる電圧と交差する。
【0045】
コンパレータ13は、電圧が交差した点を捉えてマイコン41の割込み入力に信号を出力する。マイコン41は割込みを受けて、リセット信号を出力しタイマを停止する。
【0046】
ヒータ11で生じる電圧と固定抵抗12で生じる電圧が交差する点は、ヒータ11と固定抵抗12に同一のランプ電流が流されているため、ヒータ11と固定抵抗12の抵抗値も同じ抵抗値になっている。固定抵抗12の抵抗値は、ヒータを所定の高温で発熱させたときの抵抗値に設定されているものであるので、この交点でヒータ温度は所定の温度に達したことになる。
【0047】
このように、交点におけるヒータ抵抗値は一定であり、ランプ電流の時間に対する傾きも常に一定であるので、マイコン41のタイマが示す値はヒータ電圧に比例した値になる(時間=電流であり、抵抗値は固定なので時間=電圧になる)。つまり、マイコン41のタイマ値から、ヒータが所定の温度(抵抗値)になった時点の電圧を計測することができる。
【0048】
本実施形態において、ヒータ11の温度上昇速度はランプ電流の傾きと周囲環境で決定されるものであり、高性能なランプ電流源を用いることで、繰り返し計測による再現性が優れたものとなり、かつ、ヒータ温度が上昇していく過程でヒータ発熱温度が所定温度になる電圧を時間により検出できるので、ヒータの発熱が平衡状態になるまでの時間を待たずして繰り返し計測が行うことが可能である。
【0049】
<実施形態4>
次に、本発明の別の実施形態について説明する。本実施形態では、2つの固定抵抗を用いて2つの異なる温度制御を行うとともに、実施形態3におけるマイコンのタイマ機能により計測した2つの時間差から2つの温度時の差電圧を求められるようにしている。
【0050】
図6は、本実施形態のヒータ制御回路の概略構成を示すブロック回路図である。図6の回路は、実施形態3の回路に加えてR2(以下、固定抵抗という)62及び2つのアナログスイッチを具備している。固定抵抗62は、固定抵抗12に直列して接続され、S1(以下、スイッチという)63及びS2(以下、スイッチという)64はマイコン61の出力を受けてON/OFFが切り換えられる。その他の構成は実施形態3と同様であるため、共通する構成の説明は省略する。
【0051】
固定抵抗12のみではヒータが所定の低温度時に示す抵抗値に等価な値であるが、固定抵抗62を直列に接続することでヒータが所定の高温度時に示す抵抗値に等価な値となる。また、各々の抵抗で生じる電圧をスイッチ63及び64によって切り換えられるようにして、コンパレータ13にて各々の固定抵抗で生じる電圧とヒータで生じる電圧との比較ができるようにしている。そして、これらの固定抵抗にヒータに流すランプ電流と等価なランプ電流を流して、ヒータで生じる電圧とこれらの固定抵抗で生じる電圧とをコンパレータ13で比較することによって、ヒータ温度が所定の低温度になる点と所定の高温度になる点を検出することができ、これらの点が発生する時間差をタイマにより計測することで、高温時にヒータに生じる電圧と低温時にヒータに生じる電圧の差電圧を求めることを可能にしている。
【0052】
また、上述した動作は、ランプ電流を流すことによるヒータ発熱の温度上昇過程でなされるものであり、ヒータに対して発熱温度の切り替え動作がなく、ヒータに過度電流が流れることもないので、特許文献3における問題は生じない。
【0053】
本実施形態のヒータ制御回路の動作について図7を参照してさらに説明する。図7は、ヒータとR1(固定抵抗12)とR2(固定抵抗62)で生じる電圧特性のグラフと、タイミングチャートを示したものである。
【0054】
マイコン61は、任意のタイミングでリセット信号を解除し、さらにスイッチ63をON、スイッチ64をOFFにする。これにより、ヒータ11と固定抵抗12と固定抵抗62にランプ電流が流れる。ヒータ11で生じる電圧と、固定抵抗12で生じる電圧と、固定抵抗12及び62で生じる電圧は、図7のヒータ・R1・R2特性のグラフに示すように時間とともに推移する。ヒータ11は、発熱による温度上昇で抵抗値が増加する白金抵抗素子であるため、通電により発熱し、電流の増加に伴って、グラフのような電圧波形になる。
【0055】
ヒータ11で生じる電圧は、時間が経過していくと、t1でR1(固定抵抗12)に生じる電圧と交差する。そして、コンパレータ13は、電圧が交差した点を捉えてマイコン61に割込み信号を出力する。すると、マイコン61は、割込みを受けて、スイッチ63をOFF、スイッチ64をONにしてタイマをスタートする。
【0056】
さらに時間が経過することによって、ヒータ11に生じる電圧は、「R1(固定抵抗12)+R2(固定抵抗62)」で生じる電圧とt2で交差する。そして、コンパレータ13は、電圧が交差した点を捉えてマイコンに割込み信号を出力する。すると、マイコン61は、割込みを受けてリセット信号を出力し、タイマを停止する。
【0057】
ヒータ11で生じる電圧が固定抵抗12で生じる電圧と交差する点t1と、「固定抵抗12+固定抵抗62」で生じる電圧と交差する点t2において、ヒータ11と固定抵抗12と固定抵抗62には同一のランプ電流が流されているのだから、ヒータの抵抗値は、固定抵抗12及び「固定抵抗12+固定抵抗62」の抵抗値と同じ抵抗値になる。そして、固定抵抗12の抵抗値は、ヒータ11を所定の低温で発熱させたときの抵抗値に設定されており、また、「固定抵抗12+固定抵抗62」の抵抗値は、ヒータ11を所定の高温で発熱させたときの抵抗値に設定されているので、これらの交点でヒータ温度は所定の低温と高温になっている。
【0058】
ランプ電流の時間に対する傾きは常に一定であるので、マイコンのタイマが示す値は、「高温時のヒータ電圧−低温時のヒータ電圧」に比例した値になる。このようにして得られたタイマ値をマイコンの演算機能で電圧値に、あるいは直接周囲気体の熱伝導率に変換することが容易にできる。
【0059】
<実施形態5>
本発明の別の実施形態を図8に示す。図8は、本実施形態のヒータ制御回路の概略構成を示すブロック回路図で、実施形態4で直列に設けられた2つの固定抵抗を並列に接続されたヒータ制御回路が表されている。図8では、固定抵抗82の抵抗値は図6の「固定抵抗12+固定抵抗62」と同等としている。
【0060】
本実施形態では、実施形態4と同様にランプ電流駆動であるので、電流を切り換えるスイッチを入れてもスイッチのインピーダンスに影響されることなく、実施形態4の回路と同様の動作が可能である。
【0061】
<実施形態6>
次に、本発明の別の実施形態について説明する。本実施形態では、半導体スイッチ等を複数用いてコンパレータ等の比較検出器を共通で使用できるようにし、また傾き調整回路及びオフセット調整回路を設けて傾き調整やオフセット調整ができるようにしている。
【0062】
図9は、本実施形態のヒータ制御回路の概略構成を示すブロック回路図である。図9の回路は、図6の回路にランプ電流のオフセット調整回路と傾き調整回路を付加し、さらにヒータで温度計測を行えるようにしたものである。調整回路の制御には、マイコン内臓のDAコンバータを用いている。また、実施形態2のように固定抵抗側の電圧電流回路では微小電流に変換し、増幅器を用いてヒータ側の電圧と比較可能に増幅させている。本回路においては、スイッチの組み合わせによって複数の動作状態が実現できるものであり、代表的な4つの状態に関して以下説明する。
【0063】
図10は熱伝導率計測状態を示す図で、(a)は制御状態、(b)はヒータや固定抵抗の電圧特性を表す。図9の回路と図6の回路との違いは、温度計測を行えるようにするためには、微弱のランプ電流源が必要であるため、R1(固定抵抗12)とR2(固定抵抗62)に流す電流をヒータ11に流れる電流の1/10にして、固定抵抗12と固定抵抗62で生じる電圧と、ヒータ11で生じる電圧との比較が行えるように10倍の増幅器を用いて増幅している点である。
【0064】
マイコン91は、まず任意のタイミングでリセット信号を解除し、電圧電流変換回路16及び33をONにして、S1(スイッチ101)、S4(スイッチ104)、S7(スイッチ107)、S10(スイッチ110)及びS13(スイッチ113)のみをONにする。これにより、ヒータ11と固定抵抗12と固定抵抗62にランプ電流が流れ、ヒータで生じる電圧と、固定抵抗12で生じる電圧と、固定抵抗62で生じる電圧は図10(b)のグラフに示すように時間とともに推移する。
【0065】
ヒータ11で生じる電圧は時間が経過すると固定抵抗12で生じる電圧と交差する。そして、コンパレータ13は電圧が交差した点を捉えてマイコン91に割込み信号を出力し、マイコン91は、割込みを受け、スイッチ107をOFF、スイッチ106をONにし、タイマをスタートする。
【0066】
さらに時間が経過すると、ヒータ11に生じる電圧は「固定抵抗12+固定抵抗62」で生じる電圧と交差する。コンパレータ32は、電圧が交差した点を捉えマイコン91に割込み信号を出力し、マイコン91は割込みを受けてリセット信号を出力し、タイマを停止する。
【0067】
このようにして得られたタイマ値について、実施形態4と同様に、マイコンの演算機能を用いて直接周囲気体の熱伝導率に変換することができる。
【0068】
図11は温度計測状態を示す図で、(a)は制御状態、(b)は基準電源電圧とヒータで生じる電圧の関係を表す。図11では、ヒータ11に1/10のランプ電流が流れるようにスイッチを切り換えている。
【0069】
すなわち、マイコン91は、任意のタイミングでリセット信号を解除し、電圧電流変換回路16及び33をONにして、S3(スイッチ103)、S5(スイッチ105)、S9(スイッチ109)及びS11(スイッチ111)のみをONにする。これにより、ヒータ11に1/10のランプ電流が流れるが、1/10のランプ電流では、ヒータ11はほとんど発熱しないので、ヒータ11の抵抗値は周囲温度に依存した値となり、ヒータ11で生じる電圧は、図11(b)のグラフに示すように、ランプ電流の電流増加に伴って単調増加する波形を示す。
【0070】
また、ランプ電流を1/10としたことで、ヒータ11で発生する電圧も1/10となるため、熱伝導率計測時に用いた10倍の増幅器32にて増幅を行っている。コンパレータ13は、こうして増幅した電圧を基準電源94の電圧と比較し、ヒータ11の電圧が基準電源の電圧と交差する点でマイコン91に対し割込み信号を出力する。
【0071】
マイコン91は、リセット信号の解除によるランプ電流の通電開始から、コンパレータ13からの割込み信号が入力されるまでの時間を計測することで、ヒータの抵抗値を求めて周囲温度を計測する(時間=電流値であり、基準電源94の電圧値が固定であることから、(基準電源の電圧値/時間)×係数で求められる)。
【0072】
図12はオフセット調整状態を示す図で、(a)は制御状態、(b)はタイミングチャート、(c)は調整制御のフローチャートを表す。ランプ電流がリセット状態のときに「R1(固定抵抗12)+R2(固定抵抗62)」に生じた電圧とGNDレベルをコンパレータ13で比較し、マイコン91でコンパレータ13の出力を監視して、マイコン91のDAコンバータによって調整するものである。
【0073】
図12(a)に示すとおり、マイコン91は、任意のタイミングでリセット信号を解除して電圧電流変換回路16をONにするときは、S2(スイッチ102)、S8(スイッチ108)及びS12(スイッチ112)のみをONにする。電圧電流変換回路33をONにするときは、S4(スイッチ104)、S6(スイッチ106)、S8(スイッチ108)及びS11(スイッチ111)のみをONにする。
【0074】
また、マイコン91の行うオフセット調整の制御を図12(c)に基づいて説明する。まず、3種類の変数n、m、aを0に設定する(ステップS101)。後述するが、nはDAコンバータデータに対する減算カウント、mは加算カウント、aはn及びmが1以上のときのカウントを表す。
【0075】
次に、コンパレータ13の出力を判定し、出力Highの場合(ステップS102/YES)はDAコンバータデータから1減算するためn=n+1とし(ステップs103)、出力Lowの場合(ステップS102/NO)はDAコンバータデータに1加算するためm=m+1とカウントする(ステップs103)。
【0076】
次に、n≧1かつm≧1である場合(ステップS105/YES)はa=a+1とカウントするとともに、nとmを0に設定する(ステップs106)。n≧1かつm≧1でない場合(ステップS105/NO)はコンパレータ13の出力判定に戻る(ステップS102)。そして、a≧5である場合(ステップS107/YES)は終了となり、a<5の場合(ステップS107/NO)はコンパレータ13の出力判定に戻る(ステップS102)。
【0077】
なお、上記の場合、DAコンバータの出力電圧範囲は、回路オフセットが変動する範囲でよいため、DAコンバータの出力電圧範囲を絞り込むことで、精度が悪いものでも充分に活用できる。また、回路の温度変化によってDAコンバータの出力が変化したとしても、定期的にオフセット調整を行うことでDAコンバータの温度依存性に左右されることなく使用することが可能である。
【0078】
図13は傾き調整状態を示す図で、(a)は制御状態、(b)は基準電源電圧と固定抵抗で生じる電圧の関係、(c)は調整制御のフローチャートを表す。ランプ電流を「R1(固定抵抗12)+R2(固定抵抗62)」に流して、これらの固定抵抗に生じた電圧と基準電源の電圧との交点をコンパレータ13で検出して、マイコン91に対して割込み信号を出力する。マイコン91は、ランプ電流の通電開始からコンパレータ13からの割込み信号が入力されるまでの時間を計測することで、ランプ電流の傾きを求め、あらかじめ決められた傾きと比較して、誤差に見合った補正値をDAコンバータから出力して再度調整を実行する。この動作を複数回繰り返すことで完全な補正を行うことができる。
【0079】
図13(a)に示すとおり、マイコン91は、任意のタイミングでリセット信号を解除して電圧電流変換回路16をONにするときは、S2(スイッチ102)、S9(スイッチ109)及びS12(スイッチ112)のみをONにする。電圧電流変換回路33をONにするときは、S4(スイッチ104)、S6(スイッチ106)、S9(スイッチ109)及びS11(スイッチ111)のみをONにする。
【0080】
また、マイコン91が行う傾き調整の制御を図13(c)に基づいて説明する。まず、DAコンバータのデータ値を7FH、カウンタを0に設定したうえで、ON/OFF制御をONにし(ステップS201)、外部割込み許可を行う(ステップS202)。
【0081】
次に、割込みが発生したら(ステップS203)、割込みの禁止を行いON/OFF制御をOFFにする(ステップS204)。そして、「カウンタ値−基準値」が0となった場合(ステップS205/YES)は、DA値を確定し終了となる(ステップS206)。一方、「カウンタ値−基準値」が0とならなかった場合(ステップS205/NO)は、「カウンタ値−基準値」からDA設定値を求め(ステップS207)、例えばDAをxxFに、カウンタを0に設定し、ON/OFF制御をONにし(ステップS208)、外部割込み許可を行う(ステップS209)。
【0082】
なお、上記の調整は、先に述べたオフセット調整状態と同様の理由で精度があまりよくないDAコンバータでも充分に活用できるものである。
【0083】
以上述べたように本実施形態では、回路に半導体スイッチ等を自由に入れることによってランプ電流のオフセットや傾きを容易に補正することができ、精度が要求される部品点数を少なくして、計測精度を高めることが可能である。さらに、ヒータで温度計測することができ、また、上述した制御状態でスイッチの組み合わせを変えることで、別の目的で利用することも可能である。例えば、図12のオフセット調整の状態を利用して、ランプ電流がリセット状態時におけるヒータ抵抗値を固定抵抗12とバランスが取れるようにDAコンバータで調整し、リセット状態におけるヒータ温度を低温発熱状態にしたり、図13で示すランプ電流の傾き調整状態を利用して、傾きを意図的に変化させることで計測分解能を変更したりすることもできる。
【0084】
<実施形態7>
次に、本発明の別の実施形態について説明する。本実施形態では、実施形態4の回路にさらにヒータと比較する固定抵抗を複数個使用することにより、1度のランプ電流の通電で複数の温度でのヒータ電圧を計測できるようにしている。
【0085】
図14は、本実施形態のヒータ制御回路の概略構成を示すブロック回路図である。固定抵抗がR1からRnまでn個直列に接続されており、それぞれマイコン61によりON/OFF切換えがなされる複数個のアナログスイッチが設けられている。その他の構成は実施形態4と同様である。図14では、図6の回路をもとにしているが、もちろん図9をもとにして構成することも可能であり、その場合にはより高性能化することができる。
【0086】
本実施形態のヒータ制御回路の動作について図15を参照してさらに説明する。図15は、ヒータと固定抵抗で生じる電圧特性のグラフと、タイミングチャートを示したものである。
【0087】
本回路の起動は、マイコン201によりリセット信号を解除して、ヒータ11と固定抵抗(R1〜Rn)にランプ電流を通電し、スイッチ211をONにすることで開始される(この段階では他のスイッチはOFF)。ランプ電流の通電が開始され、時間経過に伴う電流の増加によって、ヒータ11で生じる電圧と固定抵抗12で生じる電圧がt1で交差し、コンパレータ13からマイコン201に対して割込み信号が発生する。これを受けてマイコン201ではタイマをスタートしてスイッチ211をOFF、スイッチ212をONにする。
【0088】
さらに時間が経過することで、電流が増加し、ヒータ11で生じる電圧と「R1(固定抵抗12)+R2(固定抵抗202)」で生じる電圧がt2で交差し、コンパレータ13からマイコン201に対して割込み信号が発生する。これを受けてマイコン201は、タイマ値をメモリに保存して、スイッチ212をOFF、スイッチ213をONにする。
【0089】
このような動作を繰り返して、最終的にR1(固定抵抗12)+R2(固定抵抗202)+・・・・+Rn(固定抵抗203)で生じる電圧とヒータ11で生じる電圧がtnで交差し、コンパレータ13からマイコン201に割込み信号が発生して、マイコン201はタイマ値をメモリに保存後、スイッチ213をOFFにしてタイマを停止し、リセット信号をセットすることで、ランプ電流を停止する。
【0090】
メモリに保存されている数値は、ヒータの温度が所定の温度(抵抗値)に到達したときの電流値であるわけだから容易に電圧値に変換することができる。このように、本実施形態においては、1度のランプ電流の通電により、複数の温度でのヒータ電圧を計測でき、温度切換えごとにヒータ温度が安定する時間を待つ必要がなく、また連続した時間としてAD変換が行えるので、計測に無駄な時間を要さない。さらには、コンパレータ1つで複数の温度を検出できるのでコンパレータのオフセットばらつき等を考慮する必要がない。
【0091】
上記の実施形態によれば、ヒータに加わる電力を小さくすることができ、これにより電気的及び熱的ストレスを低減することが可能となる。
【0092】
また、上記の実施形態によれば、ヒータが所定の温度に発熱したときの電圧を時間により計測することで、周囲気体の熱伝導率を計測することが可能となる。
【0093】
また、上記の実施形態によれば、ヒータの発熱温度を切り換える際に発生するヒータへの過電流を流すことなく、高速に計測することが可能となる。
【0094】
また、上記の実施形態によれば、スイッチを自由に入れられることによって、機能の追加が容易に行えて、かつ、部品点数を少なくすることができ、計測精度を高めることが可能となる。
【0095】
また、上記の実施形態によれば、1度のランプ電流の通電により、複数のヒータ温度時でのヒータ電圧を計測でき、熱伝導率の温度依存性から複数のガスの弁別に対応することが可能となる。
【0096】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路のブロック回路図である。
【図2】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路の動作についての説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路のブロック回路図である。
【図4】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路のブロック回路図である。
【図5】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路の動作についての説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路のブロック回路図である。
【図7】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路の動作についての説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路のブロック回路図である。
【図9】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路のブロック回路図である。
【図10】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路の動作についての説明図である。
【図11】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路の動作についての説明図である。
【図12】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路の動作についての説明図である。
【図13】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路の動作についての説明図である。
【図14】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路のブロック回路図である。
【図15】本発明の実施形態に係るヒータ制御回路の動作についての説明図である。
【図16】従来技術におけるヒータ制御回路のブロック回路図である。
【符号の説明】
【0098】
11 ヒータ
12 固定抵抗(R1)
13,83,84 コンパレータ
14 ランプ電流源
15 ランプ電圧発生回路
16,17 電圧電流変換回路
31 温度補償素子
32 増幅器
33 電圧電流変換回路(×1/10)
41,61,81,91,201 マイコン
62,82,202 固定抵抗(R2)
63,101,211 スイッチ(S1)
64,102,212 スイッチ(S2)
92 傾き調整回路
93 オフセット調整回路
94 基準電源
103 スイッチ(S3)
104 スイッチ(S4)
105 スイッチ(S5)
106 スイッチ(S6)
107 スイッチ(S7)
108 スイッチ(S8)
109 スイッチ(S9)
110 スイッチ(S10)
111 スイッチ(S11)
112 スイッチ(S12)
113 スイッチ(S13)
203 固定抵抗(Rn)
213 スイッチ(Sn)
300 演算増幅回路
310 差動増幅器
320 スイッチ
330 抵抗
340 演算増幅回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱した温度に基づいて抵抗値が変化する発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体が所定の温度において示す抵抗値と等価な値の抵抗体と、
電圧発生手段による電圧を基準として2つの電流を発生させる電流発生手段を備えた通電手段と、
前記発熱抵抗体の両端に生じる電圧である発熱抵抗体電圧と前記抵抗体の両端に生じる電圧である抵抗体電圧とを比較する比較手段とを有し、
前記比較手段は、前記発熱抵抗体電圧と前記抵抗体電圧とが等しくなるタイミングを検出して検出信号を出力し、
前記通電手段は、前記電流発生手段により発生させた2つの電流を前記発熱抵抗体及び前記抵抗体に通電し、前記検出信号に基づいて通電をリセットすることを特徴とするヒータ制御回路。
【請求項2】
前記通電手段は、前記電流発生手段により発生させた大きさの等しい2つのランプ電流を前記発熱抵抗体及び前記抵抗体に通電することを特徴とする請求項1に記載のヒータ制御回路。
【請求項3】
前記抵抗体と直列に接続された温度補償用の発熱抵抗体である温度補償抵抗体と、
電圧を増幅する増幅手段とを有し、
前記通電手段は、前記温度補償抵抗体が発熱しない大きさの微小ランプ電流を前記温度補償抵抗体及び前記抵抗体に通電し、
前記増幅手段は、前記発熱抵抗体へのランプ電流と前記微小ランプ電流との比率に基づいて、前記温度補償抵抗体及び前記抵抗体の両端に生じる電圧である温度補償抵抗体電圧を増幅することを特徴とする請求項1に記載のヒータ制御回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のヒータ制御回路と、
前記比較手段による前記検出信号の出力までの時間を計測する計時手段を備える制御手段とを有し、
前記比較手段は、前記制御手段へ前記検出信号を出力し、
前記制御手段は、前記比較手段からの検出信号を入力したときに前記計時手段による時間の計測を停止し、前記通電手段へリセット信号を出力し、
前記通電手段は、前記制御手段からのリセット信号に基づいて通電をリセットすることを特徴とする熱伝導率測定装置。
【請求項5】
回路動作を自由に切り換え可能な切換手段を有し、
前記抵抗体は、複数が直列に接続され、かつ、1つに通電するか又は複数に通電するかを前記切換手段により切り換えでき、
前記比較手段は、1つの前記抵抗体及び複数の前記抵抗体に通電した場合に、前記発熱抵抗体電圧と前記抵抗体電圧とが等しくなるタイミングをそれぞれ検出して前記制御手段へ前記検出信号を出力し、
前記制御手段は、1つの前記抵抗体及び複数の前記抵抗体に通電した場合の前記比較手段からの検出信号に基づく計測結果をそれぞれ記憶し、前記計測結果から時間差を求めることを特徴とする請求項4に記載の熱伝導率測定装置。
【請求項6】
回路動作を自由に切り換え可能な切換手段を有し、
前記抵抗体は、複数が並列に接続され、かつ、いずれの前記抵抗体に通電するかを前記切換手段により切り換えでき、
前記比較手段は、いずれの前記抵抗体にも通電した場合に、前記発熱抵抗体電圧と前記抵抗体電圧とが等しくなるタイミングをそれぞれ検出して前記制御手段へ前記検出信号を出力し、
前記制御手段は、いずれの前記抵抗体にも通電した場合の前記比較手段からの検出信号に基づく計測結果をそれぞれ記憶し、前記計測結果から時間差を求めることを特徴とする請求項4に記載の熱伝導率測定装置。
【請求項7】
複数の前記切換手段により、前記比較手段や前記増幅手段を共通して使用できることを特徴とする請求項5又は6に記載の熱伝導率測定装置。
【請求項8】
前記電流発生手段によるランプ電流のオフセット調整を行うオフセット調整手段と、
前記電流発生手段によるランプ電流の傾き調整を行う傾き調整手段とを有することを特徴とする請求項7に記載の熱伝導率測定装置。
【請求項9】
前記制御手段は、計測された時間又は求められた時間差に基づいて雰囲気の熱伝導率を算出することを特徴とする請求項4から8のいずれか1項に記載の熱伝導率測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−192629(P2007−192629A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10023(P2006−10023)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】