フォトニックガイド装置
フォトニックガイド装置及びその製造方法、並びに使用を開示する。フォトニックガイド装置は、回路基板(240)上で電子回路を相互接続するように構成されている大コア中空導波路(150)を備えている。反射コーティング(108)が、反射コーティングの表面からの光の反射を可能にする高い反射率を提供するように、中空導波路の内側をカバーしている。コリメータ(220)は、中空導波路内に方向付けられるマルチモードのコヒーレント光をコリメートするように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
回路基板(回路配線板)上のコンピュータチップの速度は、これまでないほどに増大しており、そのため、チップ間の通信における通信障害(配線の問題)は、ますます大きな課題となっている。1つのあり得る解決策は、高速コンピュータチップを相互接続するために、光ファイバ(fiber optics)を使用することである。しかし、大抵の回路基板は多層を含み、その製造で求められる許容誤差は1ミクロン未満であることが多い。また、光ファイバを物理的に配置し、ファイバとチップとを接続することは、極めて不正確で時間もかかり得るので、回路基板の製造プロセスにおいて広く採用することはできない。したがって、ブロードバンドデータ転送が必要とされるにもかかわらず、チップ間の光学的な相互接続は幻想であると言われてきた。
【発明の概要】
【0002】
本発明の特徴及び利点は、本発明の特徴を例示的に図解する添付の図面に関連させて記述する以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0003】
以下、図解されている例示的な態様を参照されたい。ここでは、その態様を説明するために特定の言葉を使用する。しかし、それによって本発明の範囲の制限が意図されないということを理解されたい。回路基板上のコンピュータチップ間に光学的な相互接続を形成する1つの方法は、回路基板上に形成された光導波路を利用することである。光導波路は、リソグラフィ又は類似のプロセスを使用して回路基板上に形成可能であるため、光ファイバによる通信よりも優れ得る。導波路は、典型的には、回路基板上に、実質的に光透過性の材料、例えばポリマー及び/又は誘電体によって形成される。リソグラフィ又は類似のプロセスを使用して作られる光導波路は、他の種類の、回路基板上に取り付けられない基板上に形成することもできる。例えば、光導波路を可撓性の基板上に形成して、1つ以上の光導波路を有するリボンケーブルを構成してもよい。本出願に開示の光導波路は、リソグラフィ又は類似のプロセスを使用して基板上に形成される。
【0004】
このようにして光導波路を形成することによって、最新の多層回路基板上で使用可能で且つ必要な物理的公差で構成された相互接続を得ることができる。しかし、チップ及び回路基板の製造において内蔵の導波路を形成するために使用可能な前記のポリマー、誘電体及びその他の材料は、典型的には、光ファイバより著しく損失が多い。実際、内蔵導波路での損失量は、光導波路による相互接続の許容性を制限する1つの要因となっている。導波路を構築するのに使用されるポリマーは、センチメートル当たり0.1dBの損失を有し得る。これに対して、光ファイバでの損失は、1キロメートル当たり約0.1dBである。よって、ポリマー導波路は、光ファイバでの損失より大きなオーダーでの大きさの損失を有し得る。
【0005】
加えて、典型的な導波路は、通常、光の波長(前記導波路はそれを輸送するように設計されている)にほぼ比例する寸法を有するように製造される。例えば、1000nmの光を輸送するように構成された単一モードの導波路は、より高い屈折率のコア領域については1000nm〜5000nm(1μm〜5μm)の寸法を有していてよく、それは、より低い屈折率のクラッド領域に取り囲まれている。マルチモード導波路は、コア領域について20〜60μmのオーダーのより大きな寸法を有していてよい。単一モード及びマルチモードの導波路はいずれも、0.01〜0.02であるコア及びクラッドの屈折率差に対して、約0.2〜0.3の比較的高い開口数(NA)を有する。開口数は、放射ファイバからのビームの発散を決定する。よって、より大きなNAでは、ファイバ同士の分離(距離)に応じた若しくは比例する弱い結合が得られる。よって、そのようなサイズの導波路を接続することは、費用がかかり、大きな課題となり得る。
【0006】
また、このような導波路を使用して、ガイドされた光学ビームのスプリット(分割、splitting)及びタッピング(分岐、tapping)を達成するのも難しい。この導波路を形成及び接続するコストのために、これまでは、大抵の一般的な用途でこれらの導波路の利用が抑えられてきた。本発明の一局面によれば、他の導波路及び光デバイスとの相互接続がより簡単であり且つ光導波路内での損失量を著しく抑えることのできる安価なフォトニックガイド装置の必要性が認識されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1a】本発明の態様による、基板によって担持されたホスト層の図である。
【図1b】本発明の態様による、図1aのホスト層に形成されたチャネルを示す。
【図1c】本発明の態様による、図1bのチャネルの上に被着された反射コーティング及び保護層を示す。ベース部分が形成されている。
【図1d】本発明の態様による、反射コーティング及び保護層を有するキャップ部分を示す。
【図1e】本発明の態様による、図1cのベース部分に結合したキャップ部分を示す。
【図2a】本発明の態様による、フォトニックガイド装置のブロック図を示す。
【図2b】本発明の態様による、2つの回路基板を相互接続するために使用される、大コア中空導波路を示す。
【図2c】本発明の態様による、回路基板上の電子素子を相互接続するために使用される、大コア中空導波路を示す。
【図2d】本発明の態様による、再方向付け装置をスロット内に挿入可能にする所定の角度でスロットカットを有する、大コア中空導波路を示す。
【図3a】本発明の態様による、反射コーティング及び保護層を有する大コア中空導波路の一次元のアレイを示す。
【図3b】本発明の態様による、反射コーティング及び保護層を有する大コア中空導波路の三次元のアレイを示す。
【図4】本発明の態様による、コヒーレント光を方向付けるためのフォトニックガイド装置を製作する方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の態様による、光線をガイドする方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の態様により、図1a〜1eに、フォトニックガイド装置を製造する方法を図解する。この光導波路は、高反射性のクラッド層を有する中空のコアからなっている。この光導波路は、導波路のコア及びクラッド間の臨界角での全内部反射に依存する従来の光導波路とは異なる弱められた全内部反射の原則に従って動作する。図1aに、基板104によって担持されているホスト層102を示す。基板は、様々な異なる種類の材料からなっていてよい。例えば、基板は、プラスチックのような可撓性の材料又はプリント回路基板の材料であってよい。回路基板材料は、剛性又は可撓性であるように構成することができる。別態様では、基板は半導体材料からなっていてよい。
【0009】
ホスト層102は、基板材料の上に形成することができる。ホスト層は、ポリマーのような可撓性の材料又は半導体材料の種類であってもよく、これにより、材料を、標準的なリソグラフィプロセスを使用して処理することができる。チャネル106は、図1bに示すように、ホスト層に形成することができる。例えば、チャネルを形成するために、乾式エッチングプロセスを使用することができる。別態様では、成型プロセス又はスタンピング(型押し)プロセスを使用することもできる。チャネルの形状は、長方形、正方形、円形、又はコヒーレント光を効果的に(実効的に)伝達するために使用される他の幾何学形状であってよい。チャネルの高さ105及び/又は幅107は、フォトニックガイド装置内で方向付けされるコヒーレント光の波長よりも実質的に大きくなっていてよい。例えば、高さ又は幅は、コヒーレント光の波長よりも50倍〜100倍超で大きくなっていてよい。
【0010】
フォトニックガイド装置内でのコヒーレント光の散乱の低減を容易にするために、チャネルの壁部は、粗さを低減又は排除するように平滑化されていてよい。理想的には、壁部に沿った突き出た特徴構造はどれも、コヒーレント光の波長より小さくなっていなくてはならない。チャネルの壁部は、熱リフロー(heat reflow)プロセスを使用して平滑化することができる。このプロセスは、ホスト及び基板の材料を、チャネルのエッチング又はスタンピング後に残される不規則で粗い特徴構造を実質的に低減又は排除できるような温度に加熱することを必要とする。熱リフロープロセスが最適化される温度は、ホスト102及び基板104層を形成するのに使用される材料の種類に応じて決められる。
【0011】
チャネル内での反射率を増大させるために、反射コーティング108(図1c)を追加して、ホスト層102中のチャネル106の内側を覆う(カバーする)ことができる。この反射コーティングは、理解され得るであろうが、めっき、スパッタリング又は類似のプロセスを使用して形成することができる。ホスト材料102が、低融点を有するポリマー又は他の材料を含む場合、反射コーティングは、低温プロセス、例えば、電気めっき、スパッタリング又は熱蒸着を使用して被着させることができる。
【0012】
反射コーティング108は、金属、誘電体、又はコヒーレント光の波長で実質的に反射性を有する他の材料の1つ以上の層からなっていてよい。金属は、その反射率に基づいて選択することができる。チャネルを覆う高反射性の層が望ましい。例えば、反射性の層は、銀、金、アルミニウム、白金、又は高反射性の層を形成可能な他のいくつかの金属若しくは合金を使用して形成することができる。チタンのような接着層も、反射性の金属のホスト材料102への接着を促進させるために使用することができる。別態様では、反射性の層は、選択された波長で実質的に反射性を示す誘電材料の1つ以上の層から形成することのできる誘電スタック(積層体)であってよい。反射性の層には、熱リフロー又は類似のプロセスを行って、堆積プロセス中に生じ得る反射性の層中の粗さの異常を平滑化することもできる。滑らかな鏡面仕上げを得るために、電解研磨を使用することもできる。
【0013】
フォトニックガイド装置が保護されていない場合には、反射コーティング108は時間経過に伴い酸化し得る。反射コーティングの酸化は、実質的に反射率を低下させ得る。金属コーティングの反射率の悪化を低減又は排除するために、保護層110を反射コーティング上に形成し、シーラントとして作用させることもできる。この保護層は、コヒーレント光の波長で実質的に透過性の材料を含み得る。例えば、保護層は、二酸化シリコン、又は反射コーティング上で実質的に空気密に接合を形成可能な他のいくつかの材料から形成されていてよい。さらに、コーティング層の厚み及び屈折率は、より損失の多い金属層から光ビームを分離することによって、導波路内での伝搬損失をさらに低減させるように選択される。
【0014】
チャネル106、反射コーティング108及び保護層110は、図1dに示すように、フォトニックガイド装置のベース部分130を形成することができる。キャップ部分120は、反射コーティング124と、キャップ部分上に設けられた反射コーティングを酸化から保護するように構成されている保護層126とを重ねたカバー材料122から形成されていてよい。反射コーティング及び保護層は、ベース部分について前述したものと同じ材料を使用して形成することができる。別態様では、異なる材料を、キャップ部分の所望の部分に基づいて(応じて)使用することができる。
【0015】
カバー材料は、反射コーティング及び保護層を受容するように構成されている材料から形成されていてよい。可撓性の材料は、フォトニックガイド装置が可撓性を有することができるように選択することができる。例えば、フォトニックガイド装置は、電子デバイス又は光学デバイスを相互接続するために使用可能なリボンケーブルとして形成することができる。
【0016】
キャップ部分120を形成した後、図1eに示すように、キャップ部分をベース部分130に積層又は接合させる。キャップ部分をベース部分に接合すると、大コア中空導波路(large core hollow waveguide)150が形成される。この大コア中空導波路は、中空導波路の内側を覆う反射コーティング108を有する。反射コーティングによって、光が、金属コーティングの表面から反射することが可能となり、それにより、導波路を通して光を方向付けする際のレーザ光の減衰が低減される。
【0017】
図2aに、フォトニックガイド装置のブロック図を示す。フォトニックガイド装置は、マルチモードレーザ210に結合されていてよい。単一モードのレーザは、マルチモードレーザに比べ実質的により高価となり得る。よって、マルチモードレーザの使用により、システム全体のコストは実質的に低下する。しかし、マルチモードレーザを使用する上での1つの欠点は、レーザ光の大部分が、レーザから、光が放射される方向に対しかなり大きな角度で放射され得るということである。レーザ光のモードが高く(高次に)なるほど、レーザ光がレーザから放射される角度が大きくなる。大きな角度で放出された光は、大コア中空導波路230内でより多い回数反射する。反射の回数が多くなるほど、光は導波路内でより減衰する。つまり、より高いモードは、導波路内で実質的に減衰し得る。
【0018】
反射性の表面を有する中空導波路は、中実の導波路とは異なって動作する。中空導波路は、反射性の層からの反射によって光をガイドし、それは、典型的に、光ファイバのような中実の導波路において起こる全内部反射によってではない。中空導波路内の光は、理解されることであるが、全内部反射のために必要なものよりも小さな角度で反射することができる。
【0019】
円形の中空導波路では、TE01モードは、式1に従って決定することができる、ユニット長さ当たりの減衰を示す。
【式1】
【0020】
【0021】
式中、aは導波路半径であり、ωはラジアンでの光の周波数であり、ωcはTE01のカットオフ周波数であり、δは光の金属への浸透(penetration)の深さであり、μは透過率であり、ηは自由空間のインピーダンスである。この減衰は、金属壁部の有限の導電性によるものである。RSは、金属の表面抵抗であり、以下の式で得られる。
【式2】
【0022】
【0023】
式中、σは導電率であり、fは光の振動である。Rsは、fの二乗根として増大するのが分かる。
【0024】
上式(1)より、周波数の増大に伴い、TE01に対する減衰が低減することが分かる。周波数の増大と共に減衰の低減が起こるのは、高い周波数では前記モードが導波路壁部に結合されないからである。その他のモードは導波路壁部に結合することができ、TE01モードを、導波路の曲げ部及び不連続部でモード変換によって減衰させる。
【0025】
マルチモードレーザ210から放出されたより高いモードの減衰を解消するため、コリメータ220を、マルチモードレーザからのレーザビームの経路内に配置することができる。コリメータは、反射防止(anti-reflective)コーティングを備えたコリメートレンズ、例えばボールレンズであってよい。コリメータは、レーザから放射されたマルチモードビームを、それが大コア中空導波路230内に入射される前に、平行な光線にコリメートするように構成されている。このようにして、光線は、導波路内を伝搬する際、数回のみの跳ね返りをして、単に反射性の層をかすめ通るだけとなる。コリメータによって、実質的にあらゆる反射が、典型的には、導波路壁部に対して比較的浅い角度で起こり、よって、導波路内の反射の回数が最小限となり、したがって、中空導波路内の光の減衰が低減する。その結果、中空導波路を伝搬する低損失のモードは、極めて小さな開口数を有する。この特性によって、余分な損失がほとんど生じることなく、前記導波路内へ光スプリッタの挿入が可能となる。
【0026】
例えば、850nm光のマルチモードのコヒーレントビームは、反射コーティングを備えた大きなコアの導波路を通って、0.07dB/cmのオーダーでの損失で伝送することができる。導波路の損失は、そのサイズに合わせてスケーリングすることができる。より小さな導波路は、導波路内での内部反射(跳ね返り)の回数がより大きいことから、より大きな損失をもたらし得る。よって、損失を低減するには、より大きな導波路を使用してよい。
【0027】
大きな導波路はより大きな公差を有するので、50マイクロメートル(μm)〜250μmのオーダーのレーザ導波路は、接続がより簡単でより安価である。大コア導波路を通る直線のマルチモードのコヒーレント光へのコリメートレンズの使用も、フォトニックガイド装置全体のコストを実質的に低下させることができる。マルチモードレーザは、単一モードのそれに比べて極めて安価である。
【0028】
したがって、導波路内へと方向付けられるマルチモードのコヒーレント光をコリメートするように構成されているコリメータに結合された内部反射表面を有する大コア中空導波路を備えているフォトニックガイド装置は、1つ以上のプリント回路基板上で素子を相互接続する比較的安価で低損失の手段として作用する。ガイド装置が低損失であることによって、前記装置を、より一般的に、電子回路を光学的に相互接続する製品(商品)で使用することができる。
【0029】
電子回路は、回路から伝送された電気信号を光信号に変換し、またその逆を行う電気回路を含んでいてよい。電子回路は、変換の必要なしで光信号を使用して直接的に通信することができる光学回路を含むことができる。電子回路は、単一の回路基板上に収容されていてよい。別態様では、電子回路は、2つ以上の別個の回路基板上に配置されていてよく、前記導波路は、それらの基板を相互接続するために使用することができる。傾斜した半反射表面の使用によって前記導波路からの光信号を分岐させ方向付けることも比較的簡単である。これを従来の導波路で達成するのは、従来の導波路はより大きい開口数を有することから難しい。
【0030】
例えば、図2bに、内部反射性の表面を有する大コア中空導波路230を示す。その中空導波路は、2つの回路基板240を結合させるために使用される。より大きな導波路は、上述のように、回路基板間の導波路を相互接続のコストを低下させる。導波路内の反射性の表面は、損失を抑えることができ、それにより、コヒーレント光の低出力の信号を、導波路を通って隣接する回路基板に伝送することができる。1つの又は両方の回路基板に配置されている安価なマルチモードレーザは、コヒーレント光を伝送するために使用することができる。コリメートレンズは、1つの又は両方の回路基板上に収容され、導波路へ光結合されていてよい。コリメートレンズは、複数の反射によって生じる光のより高いモードの損失を低減することができる。中空導波路230相互接続部は、製造プロセスで、回路基板間を結合するように構成されていてよい。別態様では、中空導波路は、その製造後に回路基板に接続することができるコネクタ及び/又はケーブルとして形成されていてよい。
【0031】
内部反射表面を有する中空導波路230は、図2cに示すように、単一の回路基板240上の電子素子245を相互接続するためにも使用することができる。電子素子は、1つの導波路からの光を別の導波路へと再方向付けするために使用することができる。別態様では、90度の曲げは、光線から約45度の角度で再方向付け装置248を挿入することによって比較的簡単に達成される。スロット252は、図2dに示すように、例えばダイシングソーを使用して、中空導波路230に切り込むことができる。スロットは、基板内へと続き、再方向付け装置を装着するために追加される構造的な支持を提供する。再方向付け装置は、接着剤を使用して導波路に結合することができる。再方向付け装置は、理解され得るであろうが、ミラーであってよい。別態様では、光の一部のみを再方向付けしたい場合には、ミラーの場所に、光ビームスプリッタ、開口、半透過性ミラー、回折格子若しくは散乱体、又は類似の種類の光学デバイスを使用することもできる。
【0032】
大コア導波路は、1つのアレイで形成することができ、それにより、多数の信号を方向付けすることができる。例えば、図3aに、中空導波路330の一次元のアレイ300を示す。各導波路は、上述のように、反射性の材料302によって取り囲まれていてよい。反射性の材料は、酸化を抑えるための保護部304で被覆されていてよい。導波路のアレイは、基板又はホスト材料308上に構築することができる。
【0033】
図3bに、回路基板に結合している中空導波路330のアレイ300を示す。回路基板は、アレイ状の各中空導波路を取り付け可能な基板308として機能することができる。一態様では、回路基板は、光バックプレーン325として構成することができる。マルチモードのコヒーレント光は、上述のように、コリメータを使用して各導波路内へと方向付けされてよい。結合装置322、例えば光スプリッタは、ガイドされたマルチモードのコヒーレント光ビームの少なくとも一部を、選択された箇所で導波路から方向付けするように構成されていてよい。理想的には、光スプリッタは、ビームのウォークオフ(walking off)を防止するのに十分に薄くなくてはならない。例えば、200μmの厚みのビームスプリッタは、約60μmのビームウォークオフを生じうる。このウォークオフは、より大きな伝搬損失を招く。ビームウォークオフは、より短い光路を有するビームスプリッタ、例えば約5μmの厚みのスプリッタを使用することによって低減することができ、その場合、ウォークオフは1.5μmよりも小さくなる。よって、25μmより小さい厚みのスプリッタが好ましい。ビームスプリッタは、図2dで前述し図解したように、中空導波路内にスロットを形成することによって挿入することができる。例えば、図3bに示すように、結合装置は、前記中空導波路内のコヒーレント光の少なくとも一部を、回路基板のプレーンの外部にある光結合された大コア中空導波路324へと再方向付けするために使用することができる。光結合された導波路は、バックプレーンに対して直交していてよいが、実質的にあらゆる角度を利用することができる。
【0034】
回路基板のプレーン(若しくは回路基板のある面)からマルチモードのコヒーレント光を再方向付けすることによって、複数の回路カード、例えばドーターボード320をバックプレーン325に光学的に結合することができる。コヒーレント光信号で符号化されている高いデータ速度の情報を、バックプレーンから複数のドーターボードへと再方向付け又は分配することができる。
【0035】
反射性の内側コーティングを備えている大コア中空導波路によって、高いデータ速度の情報を、複数の異なる基板へ伝送することができる。中空導波路での損失は低いので、図3bに示すように、単一の光信号を多数の他の導波路へとルート付けする(導く)ことができる。各導波路を通ってガイドされるマルチモードのコヒーレント光ビームは、1秒当たり数十ギガビット以上の速度でデータを輸送できる。光ビームは、本質的に光速で伝搬し、それは、モードのインデックス(index)がほとんど単一であって、それにより実質的に最小限の伝搬遅れがもたらされるからである。中空導波路によって可能となる光学的な相互接続は、チップ及び回路基板間のスループットを実質的に増大させる安価な手段を提供する。
【0036】
別の態様は、図4のフローチャートに示すように、コヒーレント光を方向付けするためのフォトニックガイド装置を製造する方法400を提供する。この方法は、基板内にチャネルを形成して、回路基板上で電子回路を相互接続するように構成されている導波路を形成する操作410を含む。チャネルは、コヒーレント光の波長より実質的に大きい幅及び高さの少なくとも一方を有する。電子回路は、単一の回路基板又は別個の回路基板上に配置されていてよい。基板に形成されたチャネルは、コヒーレント光の波長より実質的に大きい高さ及び/又は幅を有する。導波路のサイズが比較的大きいので、上述のように、全内部反射ではなく反射の特性を利用して導波路を通して光を方向付けることができる。チャネルは、任意の望ましい形状で形成することができる。例えば、チャネルは、正方形又は長方形の断面形状を有していてよい。特定の形状、例えば円形又は楕円形は、多数の反射によって、より少ない損失をもたらすことができる。チャネルは、基板内にエッチング又はスタンピングすることができる。基板は、ポリマー又は半導体材料のような材料から形成することができる。基板は、プリント回路基板の層であってよい。基板は、プリント回路基板上に配置されたホスト材料であってもよい。
【0037】
方法400でのさらなる操作は、チャネル内側を実質的に覆う高反射性の材料の層を被着させること420を提供する。反射性の材料は、上述のように、その反射性の特性に基づいて選択することができる。さらなる操作は、チャネル表面に、高反射性の材料の層を含むカバーを結合させ、大コア中空導波路を形成すること430を提供する。酸化を低減させるために、保護層を反射性の材料上に追加することもできる。
【0038】
さらなる操作は、コリメートレンズを大コア中空導波路に光学的に接続すること440を含み、この場合、マルチモードのコヒーレント光の複数のモードを、導波路を通る平行なビームで方向付けすることができる。多数のモードを導波路を通って平行に方向付けることは、導波路内での最も低い損失のモードをもたらす。本発明の別の態様は、図5のフローチャートに示すように、光ビームをガイドする方法500を提供する。この方法は、マルチモードのコヒーレント光ビームをコリメートする操作510を含む。ビームは、コリメートレンズを使用してコリメートすることができる。追加の操作は、コリメートされたマルチモードのコヒーレント光ビームを、導波路の内側部分をカバーする反射コーティングを備える大コア中空導波路へと方向付けすること520を提供する。大コア中空導波路は、回路基板上で電子回路を相互接続するように構成されている。マルチモードビームをコリメートすることによって、マルチモードレーザによって発せられる複数のモードを、多数の反射による損失量を実質的に低減して、中空導波路を通して方向付けることができる。
【0039】
上記の例は、1つ以上の特定の適用において本発明の原理を例示するものではあるが、発明能力を発揮することなく、また本発明の原理及び構想から逸脱することなく、形状、使用及び実施の詳細において多数の変更が可能であることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲以外によって限定されることを意図されていない。
【背景技術】
【0001】
回路基板(回路配線板)上のコンピュータチップの速度は、これまでないほどに増大しており、そのため、チップ間の通信における通信障害(配線の問題)は、ますます大きな課題となっている。1つのあり得る解決策は、高速コンピュータチップを相互接続するために、光ファイバ(fiber optics)を使用することである。しかし、大抵の回路基板は多層を含み、その製造で求められる許容誤差は1ミクロン未満であることが多い。また、光ファイバを物理的に配置し、ファイバとチップとを接続することは、極めて不正確で時間もかかり得るので、回路基板の製造プロセスにおいて広く採用することはできない。したがって、ブロードバンドデータ転送が必要とされるにもかかわらず、チップ間の光学的な相互接続は幻想であると言われてきた。
【発明の概要】
【0002】
本発明の特徴及び利点は、本発明の特徴を例示的に図解する添付の図面に関連させて記述する以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0003】
以下、図解されている例示的な態様を参照されたい。ここでは、その態様を説明するために特定の言葉を使用する。しかし、それによって本発明の範囲の制限が意図されないということを理解されたい。回路基板上のコンピュータチップ間に光学的な相互接続を形成する1つの方法は、回路基板上に形成された光導波路を利用することである。光導波路は、リソグラフィ又は類似のプロセスを使用して回路基板上に形成可能であるため、光ファイバによる通信よりも優れ得る。導波路は、典型的には、回路基板上に、実質的に光透過性の材料、例えばポリマー及び/又は誘電体によって形成される。リソグラフィ又は類似のプロセスを使用して作られる光導波路は、他の種類の、回路基板上に取り付けられない基板上に形成することもできる。例えば、光導波路を可撓性の基板上に形成して、1つ以上の光導波路を有するリボンケーブルを構成してもよい。本出願に開示の光導波路は、リソグラフィ又は類似のプロセスを使用して基板上に形成される。
【0004】
このようにして光導波路を形成することによって、最新の多層回路基板上で使用可能で且つ必要な物理的公差で構成された相互接続を得ることができる。しかし、チップ及び回路基板の製造において内蔵の導波路を形成するために使用可能な前記のポリマー、誘電体及びその他の材料は、典型的には、光ファイバより著しく損失が多い。実際、内蔵導波路での損失量は、光導波路による相互接続の許容性を制限する1つの要因となっている。導波路を構築するのに使用されるポリマーは、センチメートル当たり0.1dBの損失を有し得る。これに対して、光ファイバでの損失は、1キロメートル当たり約0.1dBである。よって、ポリマー導波路は、光ファイバでの損失より大きなオーダーでの大きさの損失を有し得る。
【0005】
加えて、典型的な導波路は、通常、光の波長(前記導波路はそれを輸送するように設計されている)にほぼ比例する寸法を有するように製造される。例えば、1000nmの光を輸送するように構成された単一モードの導波路は、より高い屈折率のコア領域については1000nm〜5000nm(1μm〜5μm)の寸法を有していてよく、それは、より低い屈折率のクラッド領域に取り囲まれている。マルチモード導波路は、コア領域について20〜60μmのオーダーのより大きな寸法を有していてよい。単一モード及びマルチモードの導波路はいずれも、0.01〜0.02であるコア及びクラッドの屈折率差に対して、約0.2〜0.3の比較的高い開口数(NA)を有する。開口数は、放射ファイバからのビームの発散を決定する。よって、より大きなNAでは、ファイバ同士の分離(距離)に応じた若しくは比例する弱い結合が得られる。よって、そのようなサイズの導波路を接続することは、費用がかかり、大きな課題となり得る。
【0006】
また、このような導波路を使用して、ガイドされた光学ビームのスプリット(分割、splitting)及びタッピング(分岐、tapping)を達成するのも難しい。この導波路を形成及び接続するコストのために、これまでは、大抵の一般的な用途でこれらの導波路の利用が抑えられてきた。本発明の一局面によれば、他の導波路及び光デバイスとの相互接続がより簡単であり且つ光導波路内での損失量を著しく抑えることのできる安価なフォトニックガイド装置の必要性が認識されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1a】本発明の態様による、基板によって担持されたホスト層の図である。
【図1b】本発明の態様による、図1aのホスト層に形成されたチャネルを示す。
【図1c】本発明の態様による、図1bのチャネルの上に被着された反射コーティング及び保護層を示す。ベース部分が形成されている。
【図1d】本発明の態様による、反射コーティング及び保護層を有するキャップ部分を示す。
【図1e】本発明の態様による、図1cのベース部分に結合したキャップ部分を示す。
【図2a】本発明の態様による、フォトニックガイド装置のブロック図を示す。
【図2b】本発明の態様による、2つの回路基板を相互接続するために使用される、大コア中空導波路を示す。
【図2c】本発明の態様による、回路基板上の電子素子を相互接続するために使用される、大コア中空導波路を示す。
【図2d】本発明の態様による、再方向付け装置をスロット内に挿入可能にする所定の角度でスロットカットを有する、大コア中空導波路を示す。
【図3a】本発明の態様による、反射コーティング及び保護層を有する大コア中空導波路の一次元のアレイを示す。
【図3b】本発明の態様による、反射コーティング及び保護層を有する大コア中空導波路の三次元のアレイを示す。
【図4】本発明の態様による、コヒーレント光を方向付けるためのフォトニックガイド装置を製作する方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の態様による、光線をガイドする方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の態様により、図1a〜1eに、フォトニックガイド装置を製造する方法を図解する。この光導波路は、高反射性のクラッド層を有する中空のコアからなっている。この光導波路は、導波路のコア及びクラッド間の臨界角での全内部反射に依存する従来の光導波路とは異なる弱められた全内部反射の原則に従って動作する。図1aに、基板104によって担持されているホスト層102を示す。基板は、様々な異なる種類の材料からなっていてよい。例えば、基板は、プラスチックのような可撓性の材料又はプリント回路基板の材料であってよい。回路基板材料は、剛性又は可撓性であるように構成することができる。別態様では、基板は半導体材料からなっていてよい。
【0009】
ホスト層102は、基板材料の上に形成することができる。ホスト層は、ポリマーのような可撓性の材料又は半導体材料の種類であってもよく、これにより、材料を、標準的なリソグラフィプロセスを使用して処理することができる。チャネル106は、図1bに示すように、ホスト層に形成することができる。例えば、チャネルを形成するために、乾式エッチングプロセスを使用することができる。別態様では、成型プロセス又はスタンピング(型押し)プロセスを使用することもできる。チャネルの形状は、長方形、正方形、円形、又はコヒーレント光を効果的に(実効的に)伝達するために使用される他の幾何学形状であってよい。チャネルの高さ105及び/又は幅107は、フォトニックガイド装置内で方向付けされるコヒーレント光の波長よりも実質的に大きくなっていてよい。例えば、高さ又は幅は、コヒーレント光の波長よりも50倍〜100倍超で大きくなっていてよい。
【0010】
フォトニックガイド装置内でのコヒーレント光の散乱の低減を容易にするために、チャネルの壁部は、粗さを低減又は排除するように平滑化されていてよい。理想的には、壁部に沿った突き出た特徴構造はどれも、コヒーレント光の波長より小さくなっていなくてはならない。チャネルの壁部は、熱リフロー(heat reflow)プロセスを使用して平滑化することができる。このプロセスは、ホスト及び基板の材料を、チャネルのエッチング又はスタンピング後に残される不規則で粗い特徴構造を実質的に低減又は排除できるような温度に加熱することを必要とする。熱リフロープロセスが最適化される温度は、ホスト102及び基板104層を形成するのに使用される材料の種類に応じて決められる。
【0011】
チャネル内での反射率を増大させるために、反射コーティング108(図1c)を追加して、ホスト層102中のチャネル106の内側を覆う(カバーする)ことができる。この反射コーティングは、理解され得るであろうが、めっき、スパッタリング又は類似のプロセスを使用して形成することができる。ホスト材料102が、低融点を有するポリマー又は他の材料を含む場合、反射コーティングは、低温プロセス、例えば、電気めっき、スパッタリング又は熱蒸着を使用して被着させることができる。
【0012】
反射コーティング108は、金属、誘電体、又はコヒーレント光の波長で実質的に反射性を有する他の材料の1つ以上の層からなっていてよい。金属は、その反射率に基づいて選択することができる。チャネルを覆う高反射性の層が望ましい。例えば、反射性の層は、銀、金、アルミニウム、白金、又は高反射性の層を形成可能な他のいくつかの金属若しくは合金を使用して形成することができる。チタンのような接着層も、反射性の金属のホスト材料102への接着を促進させるために使用することができる。別態様では、反射性の層は、選択された波長で実質的に反射性を示す誘電材料の1つ以上の層から形成することのできる誘電スタック(積層体)であってよい。反射性の層には、熱リフロー又は類似のプロセスを行って、堆積プロセス中に生じ得る反射性の層中の粗さの異常を平滑化することもできる。滑らかな鏡面仕上げを得るために、電解研磨を使用することもできる。
【0013】
フォトニックガイド装置が保護されていない場合には、反射コーティング108は時間経過に伴い酸化し得る。反射コーティングの酸化は、実質的に反射率を低下させ得る。金属コーティングの反射率の悪化を低減又は排除するために、保護層110を反射コーティング上に形成し、シーラントとして作用させることもできる。この保護層は、コヒーレント光の波長で実質的に透過性の材料を含み得る。例えば、保護層は、二酸化シリコン、又は反射コーティング上で実質的に空気密に接合を形成可能な他のいくつかの材料から形成されていてよい。さらに、コーティング層の厚み及び屈折率は、より損失の多い金属層から光ビームを分離することによって、導波路内での伝搬損失をさらに低減させるように選択される。
【0014】
チャネル106、反射コーティング108及び保護層110は、図1dに示すように、フォトニックガイド装置のベース部分130を形成することができる。キャップ部分120は、反射コーティング124と、キャップ部分上に設けられた反射コーティングを酸化から保護するように構成されている保護層126とを重ねたカバー材料122から形成されていてよい。反射コーティング及び保護層は、ベース部分について前述したものと同じ材料を使用して形成することができる。別態様では、異なる材料を、キャップ部分の所望の部分に基づいて(応じて)使用することができる。
【0015】
カバー材料は、反射コーティング及び保護層を受容するように構成されている材料から形成されていてよい。可撓性の材料は、フォトニックガイド装置が可撓性を有することができるように選択することができる。例えば、フォトニックガイド装置は、電子デバイス又は光学デバイスを相互接続するために使用可能なリボンケーブルとして形成することができる。
【0016】
キャップ部分120を形成した後、図1eに示すように、キャップ部分をベース部分130に積層又は接合させる。キャップ部分をベース部分に接合すると、大コア中空導波路(large core hollow waveguide)150が形成される。この大コア中空導波路は、中空導波路の内側を覆う反射コーティング108を有する。反射コーティングによって、光が、金属コーティングの表面から反射することが可能となり、それにより、導波路を通して光を方向付けする際のレーザ光の減衰が低減される。
【0017】
図2aに、フォトニックガイド装置のブロック図を示す。フォトニックガイド装置は、マルチモードレーザ210に結合されていてよい。単一モードのレーザは、マルチモードレーザに比べ実質的により高価となり得る。よって、マルチモードレーザの使用により、システム全体のコストは実質的に低下する。しかし、マルチモードレーザを使用する上での1つの欠点は、レーザ光の大部分が、レーザから、光が放射される方向に対しかなり大きな角度で放射され得るということである。レーザ光のモードが高く(高次に)なるほど、レーザ光がレーザから放射される角度が大きくなる。大きな角度で放出された光は、大コア中空導波路230内でより多い回数反射する。反射の回数が多くなるほど、光は導波路内でより減衰する。つまり、より高いモードは、導波路内で実質的に減衰し得る。
【0018】
反射性の表面を有する中空導波路は、中実の導波路とは異なって動作する。中空導波路は、反射性の層からの反射によって光をガイドし、それは、典型的に、光ファイバのような中実の導波路において起こる全内部反射によってではない。中空導波路内の光は、理解されることであるが、全内部反射のために必要なものよりも小さな角度で反射することができる。
【0019】
円形の中空導波路では、TE01モードは、式1に従って決定することができる、ユニット長さ当たりの減衰を示す。
【式1】
【0020】
【0021】
式中、aは導波路半径であり、ωはラジアンでの光の周波数であり、ωcはTE01のカットオフ周波数であり、δは光の金属への浸透(penetration)の深さであり、μは透過率であり、ηは自由空間のインピーダンスである。この減衰は、金属壁部の有限の導電性によるものである。RSは、金属の表面抵抗であり、以下の式で得られる。
【式2】
【0022】
【0023】
式中、σは導電率であり、fは光の振動である。Rsは、fの二乗根として増大するのが分かる。
【0024】
上式(1)より、周波数の増大に伴い、TE01に対する減衰が低減することが分かる。周波数の増大と共に減衰の低減が起こるのは、高い周波数では前記モードが導波路壁部に結合されないからである。その他のモードは導波路壁部に結合することができ、TE01モードを、導波路の曲げ部及び不連続部でモード変換によって減衰させる。
【0025】
マルチモードレーザ210から放出されたより高いモードの減衰を解消するため、コリメータ220を、マルチモードレーザからのレーザビームの経路内に配置することができる。コリメータは、反射防止(anti-reflective)コーティングを備えたコリメートレンズ、例えばボールレンズであってよい。コリメータは、レーザから放射されたマルチモードビームを、それが大コア中空導波路230内に入射される前に、平行な光線にコリメートするように構成されている。このようにして、光線は、導波路内を伝搬する際、数回のみの跳ね返りをして、単に反射性の層をかすめ通るだけとなる。コリメータによって、実質的にあらゆる反射が、典型的には、導波路壁部に対して比較的浅い角度で起こり、よって、導波路内の反射の回数が最小限となり、したがって、中空導波路内の光の減衰が低減する。その結果、中空導波路を伝搬する低損失のモードは、極めて小さな開口数を有する。この特性によって、余分な損失がほとんど生じることなく、前記導波路内へ光スプリッタの挿入が可能となる。
【0026】
例えば、850nm光のマルチモードのコヒーレントビームは、反射コーティングを備えた大きなコアの導波路を通って、0.07dB/cmのオーダーでの損失で伝送することができる。導波路の損失は、そのサイズに合わせてスケーリングすることができる。より小さな導波路は、導波路内での内部反射(跳ね返り)の回数がより大きいことから、より大きな損失をもたらし得る。よって、損失を低減するには、より大きな導波路を使用してよい。
【0027】
大きな導波路はより大きな公差を有するので、50マイクロメートル(μm)〜250μmのオーダーのレーザ導波路は、接続がより簡単でより安価である。大コア導波路を通る直線のマルチモードのコヒーレント光へのコリメートレンズの使用も、フォトニックガイド装置全体のコストを実質的に低下させることができる。マルチモードレーザは、単一モードのそれに比べて極めて安価である。
【0028】
したがって、導波路内へと方向付けられるマルチモードのコヒーレント光をコリメートするように構成されているコリメータに結合された内部反射表面を有する大コア中空導波路を備えているフォトニックガイド装置は、1つ以上のプリント回路基板上で素子を相互接続する比較的安価で低損失の手段として作用する。ガイド装置が低損失であることによって、前記装置を、より一般的に、電子回路を光学的に相互接続する製品(商品)で使用することができる。
【0029】
電子回路は、回路から伝送された電気信号を光信号に変換し、またその逆を行う電気回路を含んでいてよい。電子回路は、変換の必要なしで光信号を使用して直接的に通信することができる光学回路を含むことができる。電子回路は、単一の回路基板上に収容されていてよい。別態様では、電子回路は、2つ以上の別個の回路基板上に配置されていてよく、前記導波路は、それらの基板を相互接続するために使用することができる。傾斜した半反射表面の使用によって前記導波路からの光信号を分岐させ方向付けることも比較的簡単である。これを従来の導波路で達成するのは、従来の導波路はより大きい開口数を有することから難しい。
【0030】
例えば、図2bに、内部反射性の表面を有する大コア中空導波路230を示す。その中空導波路は、2つの回路基板240を結合させるために使用される。より大きな導波路は、上述のように、回路基板間の導波路を相互接続のコストを低下させる。導波路内の反射性の表面は、損失を抑えることができ、それにより、コヒーレント光の低出力の信号を、導波路を通って隣接する回路基板に伝送することができる。1つの又は両方の回路基板に配置されている安価なマルチモードレーザは、コヒーレント光を伝送するために使用することができる。コリメートレンズは、1つの又は両方の回路基板上に収容され、導波路へ光結合されていてよい。コリメートレンズは、複数の反射によって生じる光のより高いモードの損失を低減することができる。中空導波路230相互接続部は、製造プロセスで、回路基板間を結合するように構成されていてよい。別態様では、中空導波路は、その製造後に回路基板に接続することができるコネクタ及び/又はケーブルとして形成されていてよい。
【0031】
内部反射表面を有する中空導波路230は、図2cに示すように、単一の回路基板240上の電子素子245を相互接続するためにも使用することができる。電子素子は、1つの導波路からの光を別の導波路へと再方向付けするために使用することができる。別態様では、90度の曲げは、光線から約45度の角度で再方向付け装置248を挿入することによって比較的簡単に達成される。スロット252は、図2dに示すように、例えばダイシングソーを使用して、中空導波路230に切り込むことができる。スロットは、基板内へと続き、再方向付け装置を装着するために追加される構造的な支持を提供する。再方向付け装置は、接着剤を使用して導波路に結合することができる。再方向付け装置は、理解され得るであろうが、ミラーであってよい。別態様では、光の一部のみを再方向付けしたい場合には、ミラーの場所に、光ビームスプリッタ、開口、半透過性ミラー、回折格子若しくは散乱体、又は類似の種類の光学デバイスを使用することもできる。
【0032】
大コア導波路は、1つのアレイで形成することができ、それにより、多数の信号を方向付けすることができる。例えば、図3aに、中空導波路330の一次元のアレイ300を示す。各導波路は、上述のように、反射性の材料302によって取り囲まれていてよい。反射性の材料は、酸化を抑えるための保護部304で被覆されていてよい。導波路のアレイは、基板又はホスト材料308上に構築することができる。
【0033】
図3bに、回路基板に結合している中空導波路330のアレイ300を示す。回路基板は、アレイ状の各中空導波路を取り付け可能な基板308として機能することができる。一態様では、回路基板は、光バックプレーン325として構成することができる。マルチモードのコヒーレント光は、上述のように、コリメータを使用して各導波路内へと方向付けされてよい。結合装置322、例えば光スプリッタは、ガイドされたマルチモードのコヒーレント光ビームの少なくとも一部を、選択された箇所で導波路から方向付けするように構成されていてよい。理想的には、光スプリッタは、ビームのウォークオフ(walking off)を防止するのに十分に薄くなくてはならない。例えば、200μmの厚みのビームスプリッタは、約60μmのビームウォークオフを生じうる。このウォークオフは、より大きな伝搬損失を招く。ビームウォークオフは、より短い光路を有するビームスプリッタ、例えば約5μmの厚みのスプリッタを使用することによって低減することができ、その場合、ウォークオフは1.5μmよりも小さくなる。よって、25μmより小さい厚みのスプリッタが好ましい。ビームスプリッタは、図2dで前述し図解したように、中空導波路内にスロットを形成することによって挿入することができる。例えば、図3bに示すように、結合装置は、前記中空導波路内のコヒーレント光の少なくとも一部を、回路基板のプレーンの外部にある光結合された大コア中空導波路324へと再方向付けするために使用することができる。光結合された導波路は、バックプレーンに対して直交していてよいが、実質的にあらゆる角度を利用することができる。
【0034】
回路基板のプレーン(若しくは回路基板のある面)からマルチモードのコヒーレント光を再方向付けすることによって、複数の回路カード、例えばドーターボード320をバックプレーン325に光学的に結合することができる。コヒーレント光信号で符号化されている高いデータ速度の情報を、バックプレーンから複数のドーターボードへと再方向付け又は分配することができる。
【0035】
反射性の内側コーティングを備えている大コア中空導波路によって、高いデータ速度の情報を、複数の異なる基板へ伝送することができる。中空導波路での損失は低いので、図3bに示すように、単一の光信号を多数の他の導波路へとルート付けする(導く)ことができる。各導波路を通ってガイドされるマルチモードのコヒーレント光ビームは、1秒当たり数十ギガビット以上の速度でデータを輸送できる。光ビームは、本質的に光速で伝搬し、それは、モードのインデックス(index)がほとんど単一であって、それにより実質的に最小限の伝搬遅れがもたらされるからである。中空導波路によって可能となる光学的な相互接続は、チップ及び回路基板間のスループットを実質的に増大させる安価な手段を提供する。
【0036】
別の態様は、図4のフローチャートに示すように、コヒーレント光を方向付けするためのフォトニックガイド装置を製造する方法400を提供する。この方法は、基板内にチャネルを形成して、回路基板上で電子回路を相互接続するように構成されている導波路を形成する操作410を含む。チャネルは、コヒーレント光の波長より実質的に大きい幅及び高さの少なくとも一方を有する。電子回路は、単一の回路基板又は別個の回路基板上に配置されていてよい。基板に形成されたチャネルは、コヒーレント光の波長より実質的に大きい高さ及び/又は幅を有する。導波路のサイズが比較的大きいので、上述のように、全内部反射ではなく反射の特性を利用して導波路を通して光を方向付けることができる。チャネルは、任意の望ましい形状で形成することができる。例えば、チャネルは、正方形又は長方形の断面形状を有していてよい。特定の形状、例えば円形又は楕円形は、多数の反射によって、より少ない損失をもたらすことができる。チャネルは、基板内にエッチング又はスタンピングすることができる。基板は、ポリマー又は半導体材料のような材料から形成することができる。基板は、プリント回路基板の層であってよい。基板は、プリント回路基板上に配置されたホスト材料であってもよい。
【0037】
方法400でのさらなる操作は、チャネル内側を実質的に覆う高反射性の材料の層を被着させること420を提供する。反射性の材料は、上述のように、その反射性の特性に基づいて選択することができる。さらなる操作は、チャネル表面に、高反射性の材料の層を含むカバーを結合させ、大コア中空導波路を形成すること430を提供する。酸化を低減させるために、保護層を反射性の材料上に追加することもできる。
【0038】
さらなる操作は、コリメートレンズを大コア中空導波路に光学的に接続すること440を含み、この場合、マルチモードのコヒーレント光の複数のモードを、導波路を通る平行なビームで方向付けすることができる。多数のモードを導波路を通って平行に方向付けることは、導波路内での最も低い損失のモードをもたらす。本発明の別の態様は、図5のフローチャートに示すように、光ビームをガイドする方法500を提供する。この方法は、マルチモードのコヒーレント光ビームをコリメートする操作510を含む。ビームは、コリメートレンズを使用してコリメートすることができる。追加の操作は、コリメートされたマルチモードのコヒーレント光ビームを、導波路の内側部分をカバーする反射コーティングを備える大コア中空導波路へと方向付けすること520を提供する。大コア中空導波路は、回路基板上で電子回路を相互接続するように構成されている。マルチモードビームをコリメートすることによって、マルチモードレーザによって発せられる複数のモードを、多数の反射による損失量を実質的に低減して、中空導波路を通して方向付けることができる。
【0039】
上記の例は、1つ以上の特定の適用において本発明の原理を例示するものではあるが、発明能力を発揮することなく、また本発明の原理及び構想から逸脱することなく、形状、使用及び実施の詳細において多数の変更が可能であることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲以外によって限定されることを意図されていない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレーンに配置された回路基板に結合された大コア中空導波路、
前記中空導波路の内側をカバーする反射コーティングであって、光を該反射コーティングの表面から反射させることができる高い反射率を有する、反射コーティング、並びに
前記中空導波路内へと方向付けされたマルチモードのコヒーレント光ビームをコリメートし、前記中空導波路の内側での前記マルチモードのコヒーレント光の反射の少ない回数で、前記マルチモードのコヒーレント光ビームを前記中空導波路を通してガイドすることを可能にし、それにより、前記導波路を通る前記マルチモードのコヒーレント光ビームの損失が減少するように構成されている、コリメータ
を備えている、フォトニックガイドシステム。
【請求項2】
ガイドされた前記マルチモードのコヒーレント光ビームの少なくとも一部を、前記回路基板のプレーンの外部にある光結合された前記大コア中空導波路へと方向付けするように構成されている結合装置をさらに備えている、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項3】
前記結合装置が、光ビームスプリッタ、開口、半透過性ミラー、回折格子、又は散乱体からなる群から選択される、請求項2に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項4】
前記反射コーティングの酸化を実質的に低減する、前記反射コーティング上に被着された保護層をさらに備えている、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項5】
前記コヒーレント光が、900ナノメートル未満の波長を有する、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項6】
前記マルチモードのコヒーレント光を前記中空導波路内へと方向付けるように構成されているマルチモードレーザをさらに備えている、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項7】
前記大コア中空導波路が、正方形、長方形、円形及び楕円形からなる群から選択される断面形状を有する、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項8】
前記反射コーティングが、1つ以上の金属層からなる、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項9】
光学ビームをガイドする方法であって、
マルチモードのコヒーレント光ビームをコリメートし、
前記コリメートされたマルチモードのコヒーレント光ビームを、導波路の内側部分をカバーする反射コーティングを有する大コア中空導波路へと方向付けし、前記大コア中空導波路が、プレーンに配置された回路基板に結合されており、
前記コリメートされたマルチモードのコヒーレント光ビームの少なくとも一部を、回路基板の前記プレーンに対して直交する垂直の大コア中空導波路内へと再方向付けする事を含む、方法。
【請求項10】
前記コリメートされた前記マルチモードのコヒーレント光ビームの少なくとも一部を、前記回路基板の前記プレーンの外部にある光結合された大コア中空導波路内へと再方向付けすることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項1】
プレーンに配置された回路基板に結合された大コア中空導波路、
前記中空導波路の内側をカバーする反射コーティングであって、光を該反射コーティングの表面から反射させることができる高い反射率を有する、反射コーティング、並びに
前記中空導波路内へと方向付けされたマルチモードのコヒーレント光ビームをコリメートし、前記中空導波路の内側での前記マルチモードのコヒーレント光の反射の少ない回数で、前記マルチモードのコヒーレント光ビームを前記中空導波路を通してガイドすることを可能にし、それにより、前記導波路を通る前記マルチモードのコヒーレント光ビームの損失が減少するように構成されている、コリメータ
を備えている、フォトニックガイドシステム。
【請求項2】
ガイドされた前記マルチモードのコヒーレント光ビームの少なくとも一部を、前記回路基板のプレーンの外部にある光結合された前記大コア中空導波路へと方向付けするように構成されている結合装置をさらに備えている、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項3】
前記結合装置が、光ビームスプリッタ、開口、半透過性ミラー、回折格子、又は散乱体からなる群から選択される、請求項2に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項4】
前記反射コーティングの酸化を実質的に低減する、前記反射コーティング上に被着された保護層をさらに備えている、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項5】
前記コヒーレント光が、900ナノメートル未満の波長を有する、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項6】
前記マルチモードのコヒーレント光を前記中空導波路内へと方向付けるように構成されているマルチモードレーザをさらに備えている、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項7】
前記大コア中空導波路が、正方形、長方形、円形及び楕円形からなる群から選択される断面形状を有する、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項8】
前記反射コーティングが、1つ以上の金属層からなる、請求項1に記載のフォトニックガイドシステム。
【請求項9】
光学ビームをガイドする方法であって、
マルチモードのコヒーレント光ビームをコリメートし、
前記コリメートされたマルチモードのコヒーレント光ビームを、導波路の内側部分をカバーする反射コーティングを有する大コア中空導波路へと方向付けし、前記大コア中空導波路が、プレーンに配置された回路基板に結合されており、
前記コリメートされたマルチモードのコヒーレント光ビームの少なくとも一部を、回路基板の前記プレーンに対して直交する垂直の大コア中空導波路内へと再方向付けする事を含む、方法。
【請求項10】
前記コリメートされた前記マルチモードのコヒーレント光ビームの少なくとも一部を、前記回路基板の前記プレーンの外部にある光結合された大コア中空導波路内へと再方向付けすることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【公表番号】特表2010−535357(P2010−535357A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519920(P2010−519920)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/009228
【国際公開番号】WO2009/017772
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/009228
【国際公開番号】WO2009/017772
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
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