説明

フォトポリマーベースの誘電材料ならびにその調製方法および使用方法

フォトポリマーベースの誘電材料とそれを調製する方法を提供する。そのような誘電材料を含む組成物及び電子デバイスも提供する。1つの態様において、本教示は、誘電材料を調製するのに用いることができるフォトポリマーを提供する。他の望ましい特性の主なものとして、本教示のポリマーは、一般的な有機溶媒に可溶性であり得るが、架橋、例えば、光架橋を受けた後に同じ溶媒に不溶性になることができ、これがある種の加工上の利点を生じさせる。より具体的には、本教示は、ポリマーが架橋することを可能にする、架橋性官能基、例えば、光架橋性官能基を有するポリマーを提供する。架橋官能性は、高密度に架橋したポリマーマトリックスの形成を可能にする。本教示のフォトポリマー及びそれらの架橋生成物は、誘電体としてのそれらの使用を可能にする優れた絶縁特性を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
導入
高分子誘電材料の開発は、有機電子デバイスの進歩のために必須である。特に、電子ペーパー及び無線高周波識別(RFID)デバイスなどの有機薄膜トランジスタ(OTFT)に基づく新興の表示及び識別/追跡/標識化技術は、非常に大きい範囲にわたる、かつ高生産方法によるプラスチック、紙又は他の柔軟な基板上のOTFTの製作を必要とする。したがって、スピンコーティング、キャスティング及び印刷などの溶液処理法により析出させることができるOTFT構成要素(半導体、誘電体及び接点)用の新たな材料を開発する相当な努力が払われた。
【0002】
様々なポリマーがOTFT用の誘電体として用いられたが、現世代の高分子誘電体を用いたOTFTのいくつかの限界が存在する。第一に、従来の高分子誘電体膜の漏洩電流密度は、比較的高い(通常2MV/cmで>1×10−7A/cm、4MV/cmで>>1×10−5A/cm)。第二に、非常に少数の高分子誘電材料が、特に安価な印刷技術により溶液処理するのに十分に可溶性である。溶液処理できるものについては、それらは、後続の溶液処理段階(例えば、TFTデバイスの製作の場合、半導体層(ボトムゲートデバイス用)、導体層及び受動(passive)層などのオーバーレイ層の析出)に用いられる条件にしばしば耐えぬくことができず、したがって、デバイス製作におけるそれらの適用は著しく制限される。第三に、現在入手可能な高分子誘電材料は、安定なTFTの性能及び動作の前提条件である、サブナノメートル/ナノメートル表面平滑度をしばしば達成できない。
【0003】
これらの問題に対処するために、架橋メラミン/Cr6+塩−ポリビニルフェノール(PVP)及び架橋ベンゾシクロブタン(BCB)などの架橋性高分子誘電体が導入された。しかし、これらの高分子膜は、高焼きなまし温度を必要とし、それらの漏洩電流密度は、通常2MV/cmで10−7A/cmより高い。これらの高分子誘電体の高い電流漏洩密度は、とりわけ、フェノールベースのポリマーの親水性及び架橋剤添加物の存在などの因子に起因すると考えられている。
【0004】
他方で、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)及びポリスチレンなどの疎水性主鎖を有するポリマーは、はるかに低いTFTゲート漏洩電流密度及びより大きい環境安定性を達成する可能性を有する。これらの疎水性ポリマーは、しばしば一般的有機溶媒に可溶性であるが、架橋官能性が欠けるため、さらなる層が析出する後続の溶液相処理段階に耐えることができない。
【0005】
したがって、当技術分野には、低い電流漏洩密度を示すことができ、溶液法により調製することができ、空気及び/又は水分に対して安定であることができ、多様なゲート及び/又は半導体材料と適合性を示すことができる架橋性高分子誘電材料に対する願望が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記のことを考慮して、本教示は、上で略述したことを含む従来技術の様々な欠陥及び短所に対処することができる、フォトポリマーベースの誘電材料(例えば、膜)及び関連デバイスを提供する。
【0007】
1つの態様において、本教示は、誘電材料を調製するのに用いることができるフォトポリマーを提供する。他の望ましい特性の主なものとして、本教示のポリマーは、一般的な有機溶媒に可溶性であり得るが、架橋、例えば、光架橋を受けた後に同じ溶媒に不溶性になることができ、これがある種の加工上の利点を生じさせる。より具体的には、本教示は、ポリマーが架橋することを可能にする、架橋性官能基、例えば、光架橋性官能基を有するポリマーを提供する。架橋官能性は、高密度に架橋したポリマーマトリックスの形成を可能にする。本教示のフォトポリマー及びそれらの架橋生成物は、誘電体としてのそれらの使用を可能にする優れた絶縁特性を有することができる。いくつかの実施形態において、フォトポリマー及びそれらの架橋生成物は、2MV/cmで約1×10−8A/cm未満又はそれに等しい漏洩電流密度を有することができる。
【0008】
本教示のポリマーは、式
【0009】
【化1】

を有するペンダント基を有することができ、
式中、R、R、L及びZは、本明細書で定義する通りである。特定の実施形態において、本教示は、式
【0010】
【化2】

を有するポリマーを提供し、
式中、R、R、R、R、R、R、R、R、L、L’、W、Z、m及びnは、本明細書で定義する通りである。
【0011】
本教示はまた、上述のポリマーを含む誘電材料を提供する。例えば、誘電材料は、上述のポリマーから調製することができる。互いの上部に逐次的に析出した誘電材料の2つ又はそれ以上の層を含み、層の少なくとも1つが本教示のポリマーから調製されている、多層誘電材料を提供する。これらのフォトポリマーは、様々な印刷技術を含む、様々な溶液法を用いて誘電材料を調製するのに用いることができる。
【0012】
本教示はさらに、上述の誘電材料のいずれかを含む、又はそれから製作される電子デバイスを提供する。電子デバイスの例は、有機薄膜トランジスタ(OTFT)(例えば、有機電界効果トランジスタ(OFET))及びコンデンサを含むが、これらに限定されない。誘電性構成要素に加えて、これらのデバイスは、例えば、基板構成要素、半導体構成要素及び/又は金属接点構成要素を含むことができる。
【0013】
上述のポリマー、誘電材料及び電子デバイスを調製する方法も、提供し、本教示の範囲内にある。
【0014】
本教示の前記並びに他の特徴及び利点は、以下の図、記述及び特許請求の範囲からより十分に理解されるであろう。
【0015】
下記の図面は、例示の目的のためであって、必ずしも縮小するためでないことは理解されよう。図面は、本教示の範囲を決して制限するもではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】絶縁層が本教示の誘電材料[P(CyVP0.55−co−MMA0.45)]である異なる加工寸法の種々の金属−絶縁体膜−半導体コンデンサ構造の漏洩電流密度(J)対電場(E)プロットを示す。
【図2】本教示の誘電材料及び他の比較誘電材料を用いて製作した種々の金属−絶縁体膜−半導体コンデンサ構造の漏洩電流密度(J)対電場(E)プロットを示す。
【図3】本教示の誘電材料及び他の比較誘電材料を用いて製作した種々の金属−絶縁体膜−半導体コンデンサ構造の漏洩電流密度(J)対電場(E)プロットを示す。
【図4】本教示のスピンコート誘電材料[P(CyEMA0.57−co−F5BEMA0.43)]を用いて製作したペンタセンベースの有機電界効果トランジスタの代表的なトランスファー及び出力プロットを示す。
【図5】本教示のスピンコート誘電材料[P(CyVP0.55−co−MMA0.45)]を用いて製作したn型有機電界効果トランジスタの代表的なトランスファー及び出力プロットを示す。
【図6】本教示の2層誘電材料[P(CyVP0.55−co−MMA0.45)]を組み込んでいる金属−絶縁体膜−半導体コンデンサ構造の漏洩電流密度(J)対電場(E)プロットを示す。
【図7】本教示の多層誘電材料[P(CyVP0.55−co−MMA0.45)]を組み込んでいるペンタセンベースの有機電界効果トランジスタの代表的なトランスファー及び出力プロットを示す。
【図8】本教示の印刷誘電材料[P(CyEMA0.80−co−AcEMA0.20)]を用いて製作したペンタセンベースの有機電界効果トランジスタの代表的なトランスファー及び出力プロットを示す。
【図9】架橋前及び後の本教示の誘電材料のIR吸収スペクトルを示す。
【図10】本教示のポリマーの典型的なDSCプロットを示す。
【図11】空気中で55日間保存した本教示の誘電材料を組み込んでいる金属−絶縁体膜−半導体コンデンサ構造の漏洩電流密度(J)対電場(E)プロットを示す。
【図12】本教示の印刷誘電材料及びN,N’−ビス(n−オクチル)−ジシアノペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシイミド)(PDI−8CN)から調製したドロップキャスト半導体層を組み込んでいる有機電界効果トランジスタの代表的なトランスファー及び出力プロットを示す。
【図13】100nmの膜厚を有する本教示の誘電材料を組み込んでいる金属−絶縁体−半導体コンデンサ構造の漏洩電流密度(J)対電場(E)プロットを示す。
【図14】本教示の誘電材料[P(CyVP0.55−co−MMA0.45)]及び競合誘電材料[P(VP0.30−co−CyVP0.25−co−MMA0.45)]を用いて製作した種々の金属−絶縁体膜−半導体コンデンサ構造の漏洩電流密度(J)対電場(E)プロットを示す。
【図15】本教示のスピンコート誘電材料(フォトパターニング、洗浄ともあり対フォトパターニング、洗浄ともなし)を用いて製作した金属−絶縁体膜−半導体コンデンサ構造の漏洩電流密度(J)対電場(E)プロットを示す。
【図16】有機電界効果トランジスタの種々の構成を示す。
【図17】本教示のスピンコート誘電材料及びペンタセンから調製した蒸着半導体層を組み込んでいるボトムコンタクトボトムゲート(bottom−contact bottom−gate)有機電界効果トランジスタの代表的なトランスファー及び出力プロットを示す。
【図18】本教示のスピンコート誘電材料及びペンタセンから調製した蒸着半導体層を組み込んでいるボトムコンタクトトップゲート(bottom−contact top−gate)有機電界効果トランジスタの代表的なトランスファープロットを示す。
【図19】本教示のスピンコート誘電材料及びボトムゲート電極としての伝導ポリマーを組み込んでいるトップコンタクトボトムゲート(top−contact bottom−gate)有機電界効果トランジスタの代表的な出力プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本教示は、誘電材料を調製するのに用いることができるフォトポリマー、そのようにして調製された誘電材料、フォトポリマー及び誘電材料を調製する方法、並びにそのようなフォトポリマー及び誘電材料を含む組成物、物品、構造及びデバイスに関する。
【0018】
より具体的には、本教示は、優れた絶縁特性を示すことができ、OTFTを含む様々な有機電子デバイスを製作するのに用いることができる頑健な不溶性誘電材料を提供するために架橋、例えば、光架橋させることができる溶液処理可能ポリマー(solution−processable polymers)を提供する。誘電材料はまた、空気安定性で、長い貯蔵安定性を有することができ、広範囲のp型及びn型有機及び無機半導体と適合性を有することができ、様々な有機電子デバイスを製作するための魅力的な材料である。
【0019】
記述を通して、組成物が固有の成分を有する、包含する、又は含むと記述されている場合、或いは方法が固有の方法の段階を有する、包含する、又は含むと記述されている場合、本教示の組成物も列挙する成分から本質的になり、又はからなり、本教示の方法も列挙する方法の段階から本質的になる、又はからなることが予測される。
【0020】
本出願において、要素又は成分が列挙する要素又は成分の一覧に含まれている、かつ/又は選択されると言われている場合、要素又は成分は列挙した要素又は成分のいずれか1つであってよく、列挙した要素又は成分の2つ又はそれ以上からなる群から選択することができると理解すべきである。さらに、本明細書で述べる組成物、装置又は方法の要素及び/又は特徴は、明示的であるか、又は黙示的であるかどうかにかかわりなく、本教示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な方法で組合せることができることを理解すべきである。
【0021】
「含む」「含んでいる」「有する」又は「有している」という語の使用は、特に明確に示さない限り、範囲が設定されておらず、非限定的であると一般的に理解すべきである。
【0022】
本明細書における単数形の語の使用は、特に明確に示さない限り、複数形の語を含む(及び逆もまた同じ)。さらに、「約」という語の使用が定量的な値の前である場合、本教示は、特に明確に示さない限り、特定の定量的な値自体も含む。本明細書で用いるように、「約」という語は、公称値から±10%の変動を意味する。
【0023】
段階の順序又は特定の処置を実施する順序は、本教示が実施可能である限り、重要でないことを理解すべきである。さらに、2つ又はそれ以上の段階又は処置は、同時に実施することができる。
【0024】
本明細書で用いるように、「ポリマー」又は「高分子化合物」は、共有化学結合により接続された少なくとも2つの反復単位(モノマー)からなる分子を意味する。ポリマー又は高分子化合物は、1つの種類の反復単位のみ並びに2つ又はそれ以上の種類の異なる反復単位を有していてよい。後者の場合、特にポリマーが化学的に著しく異なる反復単位を含む場合、「コポリマー」又は「共重合化合物」という用語を代わりに用いることができる。ポリマーは、一般的に任意選択のペンダント基を有する主鎖を含む。特に示さない限り、コポリマーにおける反復単位の集合は、頭−尾、頭−頭又は尾−尾であってよい。さらに、特に示さない限り、コポリマーは、ランダムコポリマー、交互コポリマー又はブロックコポリマーであってよい。いくつかの実施形態において、下のものと類似の式は、コポリマーを表すのに用いることができ、そのような式は、x%のQ、y%のQ及びz%のQからなる反復パターンを有するコポリマーを含むと解釈すべきであり、ただし、Q、Q及びQは、以下の異なる反復単位
【0025】
【化3】

である。
【0026】
本明細書で用いるように、「ペンダント基」は、ポリマーの主鎖上の置換されている部分を意味する。
【0027】
本明細書で用いるように、「フォトポリマー」は、しばしばスペクトルの紫外領域における光、又は他の種類の放射線への曝露により、硬化、例えば、架橋させることができるポリマーを意味する。
【0028】
本明細書で用いるように、「溶液処理可能」は、スピンコーティング、印刷(例えば、インクジェット印刷)、スプレーコーティング、エレクトロスプレーコーティング、ドロップキャスティング、ディップコーティング及びブレードコーティングを含むが、これらに限定されない、様々な溶液相法で用いることができる化合物、材料又は組成物を意味する。
【0029】
本明細書で用いるように、「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。
【0030】
本明細書で用いるように、「アミノ」は、−NH、−NH−アルキル基、−N(アルキル)基、−NH−アリールアルキル基、−N(アルキル)−アリールアルキル基及び−N(アリールアルキル)基を意味し、−NRの定義の範囲内にあり、式中、R及びRは本明細書で定義する通りである。
【0031】
本明細書で用いるように、「アルコキシ」は、−O−アルキル基を意味し、−ORの定義の範囲内にあり、式中、Rは本明細書で定義する通りである。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えば、n−プロポキシ及びイソプロポキシ)、t−ブトキシ基等を含むが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書で用いるように、「アルキルチオ」は、−S−アルキル基を意味する。アルキルチオ基の例は、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ(例えば、n−プロピルチオ及びイソプロピルチオ)、t−ブチルチオ基等を含むが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書で用いるように、「エステル」は、−O−C(O)−アルキル基及び−C(O)−O−アルキル基の両方を意味し、前者の基は−OC(O)Rの定義の範囲内にあり、Rは本明細書で定義する通りである。
【0034】
本明細書で用いるように、「オキソ」は、二重結合酸素(すなわち、=O)を意味する。
【0035】
本明細書で用いるように、「アルキル」は、直鎖又は分枝飽和炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n−プロピル及びイソプロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)、ペンチル基(例えば、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などがある。様々な実施形態において、アルキル基は、1〜30個の炭素原子を有し、すなわち、C1〜30アルキル基であってよく、例えば、アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有し、すなわち、C1〜20アルキル基であってよい。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1〜6個の炭素原子を有していてよく、「低級アルキル基」と呼ぶことができる。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、n−プロピル及びイソプロピル)及びブチル基(例えば、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)がある。いくつかの実施形態において、アルキル基は、本明細書に開示するように置換されていてよい。
【0036】
本明細書で用いるように、「ハロアルキル」は、1つ又は複数のハロゲン置換基を有するアルキル基を意味する。ハロアルキル基の例は、CF、C、CHF、CHF、CCl、CHCl、CHCl、CClなどを含むが、これらに限定されない。ペルハロアルキル基、すなわち、水素原子のすべてがハロゲン原子で置換されているアルキル基(例えば、CF及びC)は、「ハロアルキル」の定義の範囲内に含まれる。例えば、C1〜20ハロアルキル基は、式−C2n+1又は−C2n+1−tを有していてよく、式中、Xは、F、Cl、Br又はIであり、nは、1〜20の範囲の整数であり、tは、0〜41の範囲の整数であり、ただし、tは、2n+1未満であるか、又は等しい。
【0037】
本明細書で用いるように、「アルケニル」は、1つ又は複数の炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分枝アルキル基を意味する。アルケニル基の例は、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル基などを含むが、これらに限定されない。1つ又は複数の炭素−炭素二重結合は、内部(2−ブタンにおけるように)又は末端(1−ブタンにおけるように)であってよい。様々な実施形態において、アルケニル基は、2〜20個の炭素原子を有し、すなわち、C2〜20アルケニル基であってよい。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、本明細書に開示するように置換されていてよい。
【0038】
本明細書で用いるように、「アルキニル」は、1つ又は複数の三重炭素−炭素結合を有する直鎖又は分枝アルキル基を意味する。アルキニル基の例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルなどを含むが、これらに限定されない。1つ又は複数の三重炭素−炭素結合は、内部(2−ブチンにおけるように)又は末端(1−ブチンにおけるように)であってよい。様々な実施形態において、アルキニル基は、2〜20個の炭素原子を有し、すなわち、C2〜20アルキニル基であってよい。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、本明細書に開示するように置換されていてよい。
【0039】
本明細書で用いるように、「シクロアルキル」は、環化アルキル、アルケニル及びアルキニル基を含む非芳香族炭素環基を意味する。シクロアルキル基は、炭素原子が環系の内側又は外側にある、単環式(例えば、シクロヘキシル)又は多環式(例えば、縮合、架橋及び/又はスピロ環系を含む)であってよい。シクロアルキル基の適切な環位置は、定義された化学構造に共有結合させることができる。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルボルニル、ノルピニル、ノルカリル、アダマンチル及びスピロ[4.5]デカニル基並びにそれらの類似体、異性体などを含むが、これらに限定されない。様々な実施形態において、シクロアルキル基は、3〜10個の炭素原子(すなわち、C3〜10シクロアルキル基)を含む3〜14個の炭素原子を有していてよい。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は、本明細書に開示するように置換されていてよい。
【0040】
本明細書で用いるように、「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の元素の原子を意味し、例えば、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、リン及びセレンを含む。
【0041】
本明細書で用いるように、「シクロヘテロアルキル」は、O、N及びSから選択される少なくとも1つの環ヘテロ原子を含み、1つ又は複数の二重又は三重結合を場合によって含む、非芳香族シクロアルキル基を意味する。様々な実施形態において、シクロヘテロアルキル基は、3〜14個の環原子(すなわち、3〜14員シクロヘテロアルキル基)を含む3〜20個の環原子を有していてよい。シクロヘテロアルキル環における1つ又は複数のN又はS原子は、酸化されていてよい(例えば、モルホリンN−オキシド、チオモルホリンS−オキシド、チオモルホリンS,S−ジオキシド)。いくつかの実施形態において、シクロヘテロアルキル基の窒素原子は、置換基、例えば、水素原子、アルキル基又は本明細書で述べるような他の置換基を有していてよい。シクロヘテロアルキル基はまた、オキソピペリジル、オキソオキサゾリジル、ジオキソ−(1H,3H)−ピリミジル、オキソ−2(1H)−ピリジル等などの1つ又は複数のオキソ基を含んでいてよい。シクロヘテロアルキル基の例としては、とりわけ、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピペリジニル、ピペラジニルなどがある。いくつかの実施形態において、シクロヘテロアルキル基は、本明細書に開示するように置換されていてよい。
【0042】
本明細書で用いるように、「アリール」は、芳香族単環式炭化水素環系、或いは2つ若しくはそれ以上の芳香族炭化水素環が互いに縮合している(すなわち、共通の結合を有する)か、又は少なくとも1つの芳香族単環式炭化水素環が1つ又は複数のシクロアルキル及び/又はシクロヘテロアルキル環に縮合している多環式環系を意味する。アリール基は、複数の縮合環を含んでいてよい、その環系に6〜14個の炭素原子を有していてよい。いくつかの実施形態において、多環式アリール基は、7〜14個の炭素原子を有していてよい。アリール基の適切な環位置は、定義された化学構造に共有結合していてよい。芳香族炭素環式環のみを有するアリール基の例は、フェニル、1−ナフチル(二環式)、2−ナフチル(二環式)、アントラセニル(三環式)、フェナントレニル(三環式)及び同様な基を含むが、これらに限定されない。少なくとも1つの芳香族炭素環式環が1つ又は複数のシクロアルキル及び/又はシクロヘテロアルキル環に縮合している多環式環系の例としては、とりわけ、シクロペンタン(すなわち、5,6−二環式シクロアルキル/芳香環系であるインダニル基)、シクロヘキサン(すなわち、6,6−二環式シクロアルキル/芳香環系であるテトラヒドロナフチル基)、イミダゾリン(すなわち、5,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香環系であるベンゾイミダゾリニル基)及びピラン(すなわち、6,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香環系であるクロメニル基)のベンゾ誘導体などがある。アリール基の他の例は、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル、クロマニル、インドリニル基などを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、アリール基は、本明細書に開示するように5つまでの置換基で置換されていてよい。例えば、アリール基は、1つから5つのハロゲン置換基で置換されていてよく、そのようなアリール基は、「ハロアリール」基と呼ぶことができる。ハロアリール基の例は、フェニル基が5つのハロゲン原子で置換されているペルハロフェニル基である。
【0043】
本明細書で用いるように、「ヘテロアリール」は、酸素(O)、窒素(N)及び硫黄(S)から選択される少なくとも1つの環ヘテロ原子を含む芳香族単環式環系又は環系に存在する環の少なくとも1つが芳香族であり、少なくとも1つの環ヘテロ原子を含む多環式環系を意味する。多環式ヘテロアリール基は、互いに縮合した2つ又はそれ以上のヘテロアリール環並びに1つ又は複数の芳香族炭素環式環(アリール基)、非芳香族炭素環式環(シクロアルキル基)及び/又は非芳香族シクロヘテロアルキル基と縮合した単環式ヘテロアリール環を含む。ヘテロアリール基は、全体として、例えば、5〜14個の環原子を有していてよく、1〜5個の環ヘテロ原子を含む。ヘテロアリール基は、安定な構造をもたらすヘテロ原子又は炭素原子において、定義された化学構造に結合していてよい。一般的に、ヘテロアリール環は、O−O、S−S又はS−O結合を含まない。しかし、ヘテロアリール基における1つ又は複数のN又はS原子は、酸化されていてよい(例えば、ピリジンN−オキシド、チオフェンS−オキシド、チオフェンS,S−ジオキシド)。ヘテロアリール基の例としては、例えば、下に示す5員単環式及び5−6二環式環系などがある。
【0044】
【化4】

ただし、Tは、O、S、NH、N−アルキル、N−アリール又はN−(アリールアルキル)(例えば、N−ベンジル)である。ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフリル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリルなどがある。ヘテロアリール基のさらなる例は、4,5,6,7−テトラヒドロインドリル、テトラヒドロキノリル、ベンゾチエノピリジル、ベンゾフロピリジルなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、本明細書に開示するように置換されていてよい。
【0045】
本教示の化合物は、他の2つの部分との共有結合を形成することができる結合基として本明細書で定義する「二価基」を含んでいてよい。例えば、本教示の化合物は、メチレン基のような二価C1〜20アルキル基を含んでいてよいが、これに限定されない。
【0046】
本明細書で用いるように、「脱離基」(「LG」)は、例えば、置換又は脱離反応の結果として安定な種として置換することができる荷電又は非荷電原子(又は原子の群)を意味する。脱離基の例は、ハロゲン化物(例えば、Cl、Br、I)、トシラート(トルエンスルホニル基、TsO)、メシラート(メタンスルホニル基、MsO)、ブロシラート(p−ブロモベンゼンスルホニル基、BsO)、ノシラート(4−ニトロベンゼンスルホニル基、NsO)、水(HO)、アンモニア(NH)及びトリフラート(トリフルオロメタンスルホニル基、OTf)を含むが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書における様々な場所において、化合物の置換基を群又は範囲で開示する。該記述は、そのような群及び範囲のメンバーの各及びすべての個別の下位組合せ(subcombination)を含むことを明確に意図する。例えば、「C1〜6アルキル」という用語は、C、C、C、C、C、C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C及びC〜Cアルキルを個別に開示することを明確に意図する。他の例として、0〜40の範囲の整数は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39及び40を個別に開示することを明確に意図し、1〜20の範囲の整数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20を個別に開示することを明確に意図する。
【0048】
本明細書を通して、構造を化学名とともに示すこともあり、又は示さないこともある。命名法に関して疑問が生じた場合、構造が優先する。
【0049】
1つの態様において、本教示は、1つ又は複数の架橋性官能性を含むフォトポリマーを提供する。架橋基は、ポリマーの主鎖に共有結合したペンダント基の一部を形成できる、又はその一部であることができる。より具体的には、本教示は、式
【0050】
【化5】

を有するペンダント基を含むポリマーを提供し、
式中、
Lは、各出現時に、独立に、−Y−、−Y−O−Y−、−Q−、−Y−S−Y−、
−Y−C(O)−O−Y−、−Q−C(O)−O−Y−、−Y−O−C(O)−Q−、−Y−O−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Q−、−Y−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Y−又は−Y−C(O)−Q−であり、
式中、
Qは、各出現時に、−O−[Y−O]−Y−O−であり、
Yは、各出現時に、二価C1〜10アルキル基、二価C2〜10アルケニル基、二価C2〜10アルキニル基、二価C6〜10アリール基又は共有結合であり、前記C1〜10アルキル基、前記C2〜10アルケニル基、前記C2〜10アルキニル基及び前記C6〜10アリール基のそれぞれが、ハロゲン及びCNから独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されており、
pは、0〜10の範囲の整数であり、
及びRは、独立に、H、ハロゲン又はCNであり、
Zは、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基、又はハロゲン、CN、C1〜20アルキル基、C1〜20ハロアルキル基、C1〜20アルコキシ基、−O−C1〜20ハロアルキル基、−C(O)−C1〜6アルキル基、−C(O)−C1〜6ハロアルキル基及び−C(O)−O−C1〜6アルキル基から独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されているC6〜10アリール基である。
【0051】
いくつかの実施形態において、R及びRは、独立に、H又はFであってよい。特定の実施形態において、Zは、C1〜6アルキル基、C1〜6ペルフルオロアルキル基、或いはFのようなハロゲン、C1〜20アルキル基、C1〜20ハロアルキル基、C1〜20アルコキシ基、−O−C1〜20ハロアルキル基から独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されているフェニル基であってよい。例えば、Zは、フェニル基、ペルハロフェニル基、或いはトリフルオロメチル基、C1〜20アルコキシ基又は−O−C1〜20ハロアルキル基で置換されているフェニル基であってよい。いくつかの実施形態において、Lは、各出現時に、独立に、−O−、−C−O−、−C(O)−O−、−C(O)−O−CHCH−O−、−C(O)−O−CFCF−O−又は共有結合であってよい。
【0052】
様々な実施形態において、本教示のポリマーは、式
【0053】
【化6】

を有する反復単位を有していてよく、
式中、
、R及びRは、独立に、H、ハロゲン、C1〜10アルキル基又はC6〜14アリール基であり、前記C1〜10アルキル基及び前記C6〜14アリール基のそれぞれは、ハロゲン及びCNから独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されており、
、R、L及びZは、本明細書で定義した通りである。
【0054】
いくつかの実施形態において、本教示のポリマーは、
【0055】
【化7】

から選択される式を有する反復単位を有していてよく、
式中、R、R、R及びZは、本明細書で定義した通りである。例えば、本教示のポリマーは、式
【0056】
【化8】

を有する反復単位を有していてよく、
式中、
Uは、−Y−又は−Y−O−Y−であり、
12は、H、C1〜20アルキル基又はC1〜20ハロアルキル基であり、
Yは、本明細書で定義した通りである。
【0057】
いくつかの実施形態において、Uは、−O−又は共有結合であってよい。いくつかの実施形態において、R12は、H、−CF、ヘキシル基、デシル基、オクタデシル基又は−(CH(CFCFであってよい。例えば、本教示のポリマーは、
【0058】
【化9−1】

【0059】
【化9−2】

から選択される反復単位を有していてよい。
【0060】
様々な実施形態において、本教示のポリマーは、式
【0061】
【化10】

を有していてよく、
式中、
、R及びRは、独立に、H、ハロゲン、C1〜10アルキル基又はC6〜14アリール基であり、前記C1〜10アルキル基及び前記C6〜14アリール基のそれぞれが、ハロゲン及びCNから独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されており、L’は、−Y−、−Y−O−Y−、−Q−、−Y−S−Y−、−Y−C(O)−O−Y−、−Q−C(O)−O−Y−、−Y−O−C(O)−Q−、−Y−O−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Q−、−Y−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Y−又は−Y−C(O)−Q−であり、
Wは、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基、C1〜10アルコキシ基、又はハロゲン、CN、C1〜6アルキル基、C1〜6ハロアルキル基、C1〜6アルコキシ基、−C(O)−C1〜6アルキル基、−C(O)−C1〜6ハロアルキル基及び−C(O)−O−C1〜6アルキル基から独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されているC6〜10アリール基であり、
m及びnは、独立に実数であり、ただし、0<m≦1、0≦n<1及びm+n=1であり、
、R、R、R、R、L、Q、Y及びZは、本明細書で定義した通りである。
【0062】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、式
【0063】
【化11】

を有していてよく、
式中、R、R、R、R、W、Z、m及びnは、本明細書で定義した通りである。
【0064】
例えば、ポリマーは、
【0065】
【化12】

から選択される式を有していてよく、
式中、m及びnは、本明細書で定義した通りである。
【0066】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、式
【0067】
【化13】

を有していてよく、
式中、m、n、R12及びUは、本明細書で定義した通りである。
【0068】
例えば、ポリマーは、
【0069】
【化14−1】

【0070】
【化14−2】

から選択される式を有していてよく、
式中、m及びnは、本明細書で定義した通りである。
【0071】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、式
【0072】
【化15】

を有していてよく、
式中、R、R10及びR11は、独立に、H、ハロゲン、C1〜10アルキル基又はC6〜14アリール基であり、前記C1〜10アルキル基及び前記C6〜14アリール基のそれぞれが、ハロゲン及びCNから独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されており、
W’は、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基、C1〜10アルコキシ基、又はハロゲン、CN、C1〜6アルキル基、C1〜6ハロアルキル基、C1〜6アルコキシ基、−C(O)−C1〜6アルキル基、−C(O)−C1〜6ハロアルキル基及び−C(O)−O−C1〜6アルキル基から独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されているC6〜10アリール基であり、
m’、n’及びn’’は、独立に実数であり、ただし、0<m’≦1、0≦n’<1、0≦n’’<1及びm’+n’+n’’=1であり、
、R、R、R、R、R、R、R、L、L’、W及びZは、本明細書で定義した通りである。
【0073】
特定の実施形態において、W’は、C1〜6アルキル基、C1〜6ハロアルキル基、又はハロゲン、CN、C1〜6アルキル基、C1〜6ハロアルキル基、C1〜6アルコキシ基、−C(O)−C1〜6アルキル基、−C(O)−C1〜6ハロアルキル基及び−C(O)−O−C1〜6アルキル基から独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されているC6〜10アリール基であってよい。例えば、W’は、C1〜6アルキル基又はC1〜6ハロアルキル基であってよい。特定の実施形態において、W’は、CFであってよい。
【0074】
本教示のポリマーは、以下のポリマーを含んでいてもよいが、これらに限定されない。
【0075】
【化16−1】

【0076】
【化16−2】

本教示のフォトポリマーは、下のスキーム1に従って合成することができる。当業者に知られているものを含む他の合成経路も用いることができる。
【0077】
【化17】

上のスキームにおいて、所望のペンダント基は、ポリマー上の求核基を、求核基、例えば、求電子基との共有結合を形成することができる塩化アシル、アシル無水物又は同様な誘導体及び基と反応させることにより、ポリマー、例えば、疎水性ポリマー主鎖に結合させることができる。特定の理論に拘束されることを望むことなく、ポリマーのOH基を他の酸性がより低い基に誘導体化することによって、本教示のポリマーは、より低い電流漏洩並びに改善された貯蔵安定性を有することができると考えられる。いくつかの実施形態において、
本明細書に開示するポリマーは、一般的な有機溶媒中の十分な溶解度を有することができる。一般的な有機溶媒の例としては、石油エーテル、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、2−ブタノン及びシクロヘキサノンなどのケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル及びジオキサンなどのエーテル、エタノール、プロパノール及びイソプロピルアルコールなどのアルコール、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、酢酸エチルなどの酢酸エステル、ジクロロメタン、クロロホルム及び塩化エチレンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素並びにジメチルホルムアミド及びn−メチルピロリドンなどの他の非プロトン性溶媒を含むが、これらに限定されない。本明細書で用いるように、少なくとも1mgの化合物を1mLの溶媒に溶解させることができる場合、化合物は、溶媒に可溶であるとみなすことができる。
【0078】
本教示のポリマーは、スピンコーティング、プリンティング、ドロップキャスティング、ディップコーティング、吹付け及びブレードコーティングを含むが、これらに限定されない、様々な溶液相法に用いることができる。スピンコーティングは、過剰量のコーティング溶液を基板上にのせ、次いで、基板を高速度で回転させて、遠心力により流体を広げることを必要とする。この技術により調製される、結果と生ずる誘電体膜の厚さは、スピンコーティング速度、溶液の濃度並びに用いる溶媒に依存する。印刷は、例えば、グラビア印刷機械、フレキソ印刷機械又はインクジェット印字装置を用いて実施することができる。これらの場合における誘電体膜の厚さは、溶液の濃度、溶媒の選択及び印刷の繰返し回数に同様に依存する。温度、圧力及び湿度などの環境条件も結果と生ずる膜の厚さに影響を及ぼし得る。用いる特定の印刷技術によって、印刷の質は、溶解度及び粘度などのインクのレオロジー特性を含むが、これらに限定されない、異なるパラメーターによる影響を受ける可能性がある。インクジェット印刷などの非接触印刷技術については、溶解度要件は、一般的にさほど厳しくなく、約1〜4mg/mLと低い溶解度範囲で十分であり得る。グラビア印刷については、しばしば約50〜100mg/mLの範囲のより高い溶解度範囲が必要であり得る。スクリーン印刷及びフレキソ印刷などの他の接触印刷技術は、例えば、約100〜1000mg/mLのさらにより高い溶解度範囲が必要であり得る。
【0079】
本明細書に開示したポリマーの利点の1つは、基板上への析出後に架橋、例えば、光架橋するそれらの能力である。架橋官能性は、高密度架橋ポリマーマトリックスの形成を可能にする。架橋ポリマーマトリックスは、例えば、オーバーレイ層(例えば、トップコンタクトOFETにおける半導体層)を形成/析出するためのパターニング及び後続の溶液相工程を含むデバイス製作工程に一般的である様々な条件に耐えるのに十分に頑健である。特定の理論に拘束されることを望むことなく、架橋化学は、安定なシクロブタン部分をもたらす2+2光刺激付加環化を含み得る。架橋化学はまた、フリーラジカル付加を含み得る。本教示のポリマーは、例えば、約245nm〜350nmの波長の紫外光への曝露により、硬化、例えば、光架橋させることができる。架橋は、例えば、荷電粒子のイオンビームを用いた、また放射線源を用いた他の種類の放射線によっても達成することができる。架橋マトリックスの形成の後に、本教示の誘電材料を、追加の誘電、半導体及び/又は伝導層を含む追加の層を誘電材料の上部に形成させることができるパターニング及び処理段階に供することができる。
【0080】
本教示のフォトポリマーは、低漏洩電流密度、高絶縁破壊電圧、低ヒステリシス、大静電容量、均一な膜厚、溶液処理可能性(solution−processability)、低温及び/又は大気圧での二次加工可能性、空気及び水分安定性、及び/又は種々のゲート材料及び/又は半導体との適合性を含むが、これらに限定されない、広範囲の望ましい特性及び特徴を示すことができる誘電材料を調製するのに用いることができる。
【0081】
漏洩電流密度は、大きさが横断面積当たりの漏洩電流であるベクトルと一般的に定義される。本明細書で用いるように、「漏洩電流」は、電流が流れるべきでない半導体構造又はデバイスの領域を横切って流れる制御されていない(「暗」)電流、例えば、金属−酸化膜−半導体(MOS)構造におけるゲート酸化膜を横切って流れる電流を意味する。当業者によって知られているように、誘電材料の漏洩電流密度は、誘電材料を用いて標準的金属−絶縁膜−半導体(MIS)及び/又は金属−絶縁膜−金属(MIM)コンデンサ構造を製作し、次いで、漏洩電流を測定し、測定した電流を金属電極の面積で割ることによって求めることができる。
【0082】
本教示のフォトポリマー及びそれらの架橋生成物は、標準MIS及びMIMコンデンサ構造から測定される非常に低い漏洩電流密度を有することができる。例えば、本教示のフォトポリマー及びそれらの架橋生成物は、2MV/cmで約4×10−8A/cm未満又は等しい、2MV/cmで約2×10−8A/cm未満又は等しい、2MV/cmで約1×10−8A/cm未満又は等しい、2MV/cmで約8×10−9A/cm未満又は等しい、2MV/cmで約7×10−9A/cm未満又は等しい、2MV/cmで約6×10−9A/cm未満又は等しい、2MV/cmで約4×10−9A/cm未満又は等しい、2MV/cmで約2×10−9A/cm未満又は等しい、或いは2MV/cmで約1×10−9A/cm未満又は等しい漏洩電流密度を有することができる。本教示のフォトポリマーはまた、より高い電圧で低い漏洩電流密度、例えば、4MV/cmで約1×10−6A/cm未満又は等しい、4MV/cmで約5×10−7A/cm未満又は等しい、4MV/cmで約3×10−7A/cm未満又は等しい、4MV/cmで約1×10−7A/cm未満又は等しい、4MV/cmで約5×10−8A/cm未満又は等しい、或いは4MV/cmで約1×10−8A/cm未満又は等しい漏洩電流密度を示す。
【0083】
本教示のフォトポリマーから調製される誘電材料は、非常に高い絶縁破壊電圧(すなわち、誘電体が破壊し、伝導し始める前に誘電体の両端に加えることができる最大電圧差)に耐えることができることもわかった。例えば、本教示の誘電材料は、4MV/cm又はより高い絶縁破壊電圧に、6MV/cm又はより高い絶縁破壊電圧に、或いは7MV/cm又はより高い絶縁破壊電圧に耐えることができる。
【0084】
本教示のポリマーは、比較的低いガラス転移温度も有することができる。例えば、本教示のポリマーは、約100℃未満のガラス転移温度、約90℃未満のガラス転移温度、約80℃未満のガラス転移温度、約70℃未満のガラス転移温度、約60℃未満のガラス転移温度、約50℃未満のガラス転移温度、約40℃未満のガラス転移温度、約30℃未満のガラス転移温度を有することができる。特定の実施形態において、本教示のポリマーは、約30℃〜約60℃の範囲のガラス転移温度を有することができる。ガラス転移温度(T)は、物質が徐々により粘稠になり、ゴム状からガラス状に変化する温度範囲の中間点と定義することができる。この性質のため、本教示のポリマーから析出した誘電材料は、架橋の前の表面平坦化及びピンホールの充填を可能にし、したがって、表面の平滑性(例えば、サブナノメートル表面粗度の達成)並びにそれに応じて、デバイスの性能及び動作を改善することができる。ピンホールは、誘電材料の2つ又はそれ以上の層を互いの上に逐次的に析出させ、それにより、非常に良好な表面の均一性を有することができ、大面積にわたり本質的にピンホールがない状態になることができる多層誘電材料を形成させることによって、充填することもできる。
【0085】
本教示は、製造品、例えば、本教示の誘電材料並びに基板成分及び/又は半導体成分を含む複合材料をさらに提供する。基板成分は、ドープ処理ケイ素、インジウムスズ酸化物(ITO)、ITO被覆ガラス、ITO被覆ポリイミド若しくは他のプラスチック、単独又はポリマー若しくは他の基板上に被覆したアルミニウム若しくは他の金属、ドープ処理ポリチオフェンなどを含むが、これらに限定されない。複合材料は半導体成分を含むことができる。半導体成分は、様々な縮合複素環、ポリチオフェン、縮合芳香族化合物、並びにp型又はn型であるかにかかわりなく、当技術分野で他の点で既知又は有用であることが認められた、他のそのような有機半導体化合物又は材料から選択することができるが、これらに限定されない。半導体成分はまた、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウムなどの無機半導体材料であってよい。複合材料は、1つ又は複数の電気接点を含んでいてよい。そのような電気接点は、金属(例えば、金)製であってよく、ソース、ドレイン又はゲート接点として機能することができる。上述の複合材料の1つ又は複数のものは、OTFT、特に、OFET、並びにコンデンサ、相補的回路(例えば、インバータ回路)などの様々な有機電子デバイス内で具現化することができる。
【0086】
本教示の他の態様は、誘電材料を調製する方法に関する。方法は、本明細書に記載したポリマーを含む溶液を調製する工程及び溶液を基板上に印刷して誘電層を形成する工程を含んでいてよい。方法は、誘電体層を放射線源(例えば、紫外光)に曝露させて架橋を誘発し、それにより、架橋誘電材料を生成させる工程を含んでいてよい。方法はまた、追加の誘電体層を架橋誘電体層上に印刷して多層誘電材料を生成させる工程を含んでいてよい。
【0087】
本教示の他の態様は、本教示の誘電材料を含む有機電界効果トランジスタを製作する方法に関する。本教示の誘電材料は、トップゲートトップコンタクトコンデンサ構造、トップゲートボトムコンタクトコンデンサ構造、ボトムゲートトップコンタクトコンデンサ構造及びボトムゲートボトムコンタクトコンデンサ構造を含むが、これらに限定されない様々な種類の有機電界効果トランジスタを製作するのに用いることができる。
【0088】
いくつかの実施形態において、方法は、本明細書で述べたポリマーを含む溶液を調製する工程、溶液を基板(ゲート)上に印刷して誘電体層を形成させる工程、誘電体層を放射線に曝露させ、架橋を誘発して架橋誘電材料を生成させる工程、架橋誘電材料上に半導体層を形成させる工程、ならびに半導体層上に第1の電気接点及び第2の電気接点(ソース及びドレイン)を形成させて、トップコンタクトボトムゲート有機電界効果トランジスタを製作する工程を含んでいてよい。
【0089】
他の実施形態において、方法は、本明細書で述べた1つ又は複数のポリマーを含む溶液を調製する工程、溶液を基板(ゲート)上に印刷して誘電体層を形成させる工程、誘電体層を放射線に曝露させ、架橋を誘発して架橋誘電材料を生成させる工程、架橋誘電材料上に第1の電気接点及び第2の電気接点(ソース及びドレイン)を形成させる工程、第1の電気接点及び第2の電気接点並びに誘電材料の上に半導体層を形成させて(すなわち、電気接点、及び電気接点との間の誘電材料の部分を覆うために)、ボトムコンタクトボトムゲート有機電界効果トランジスタを製作する工程を含んでいてよい。
【0090】
いくつかの実施形態において、方法は、基板上に第1の電気接点及び第2の電気接点(ソース及びドレイン)を形成させる工程、基板並びに第1及び第2の電気接点の上に半導体層を形成させる工程(すなわち、電気接点及び電気接点との間の基板の部分を覆うために)、本明細書で述べた1つ又は複数のポリマーを含む溶液を調製する工程、溶液を半導体層上に印刷して誘電体層を形成する工程、誘電体層を放射線に曝露させ、架橋を誘発して架橋誘電材料を生成させる工程、架橋誘電材料上に第3の電気接点(ゲート)を形成させて(ただし第3の電気接点は第1及び第2の電気接点との間の部分の上にある)、ボトムコンタクトトップゲート有機電界効果トランジスタを製作する工程を含んでいてよい。
【0091】
他の実施形態において、方法は、基板上に半導体層を形成させる工程、半導体層上に第1の電気接点及び第2の電気接点(ソース及びドレイン)を形成させる工程、本明細書で述べた1つ又は複数のポリマーを含む溶液を調製する工程、溶液を、第1及び第2の電気接点並びに第1及び第2の電気接点との間の半導体層の部分の上に印刷して誘電体層を形成させる工程、誘電体層を放射線に曝露させ、架橋を誘発して架橋誘電材料を生成させる工程、ならびに誘電材料上に第3の電気接点(ゲート)を形成させて(ただし第3の電気接点は第1及び第2の電気接点との間の部分の上にある)、トップコンタクトトップゲート(top−contact top−gate)有機電界効果トランジスタを製作する工程を含んでいてよい。
【0092】
半導体層及び種々の電気接点は、当業者に知られている種々の析出法により形成させることができる。例えば、半導体層は、物理的蒸着、種々の種類の印刷技術(例えば、フレキソ印刷、リソ印刷、グラビア印刷、インクジェット法、パッド印刷など)、ドロップキャスティング、ディップコーティング、ドクターブレード法、ロールコーティング及びスピンコーティングなどの方法により形成させることができるが、これらに限定されない。電気接点は、熱蒸着及び高周波又は電子ビームスパッタリング、並びにすぐ上で述べたもの(例えば、フレキソ印刷、リソ印刷、グラビア印刷、インクジェット法、パッド印刷、ドロップキャスティング、ディップコーティング、ドクターブレード法、ロールコーティング及びスピンコーティング)を含むが、これらに限定されない種々の析出法などの方法により形成させることができるが、これらに限定されない。
【0093】
以下の実施例において、本教示によるポリマー及び誘電材料を調製し、NMR、IR分光法、元素分析、示差走査熱量測定法(DSC)、AFM、並びに金属−絶縁体膜−半導体(MIS)デバイス漏洩及びインピーダンス分光法測定によってキャラクタリゼーションを行って、とりわけ、それらの誘電特性並びに種々のp型及びn型有機半導体との適合性を実証した。これらの誘電体膜に基づく有機電子デバイス、例えば、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、特に、有機電界効果トランジスタ(OFET)も製作し、キャラクタリゼーションを行った。そのデータを下に記載する。
【0094】
以下の実施例は、さらに例示し、本教示の理解を促進するために示し、本発明を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0095】
(実施例1)ポリケイ皮酸ビニルフェニル(PCyVP)の調製
ポリ(ビニルフェノール)(2.0g、M=20,000g/モル)を20mLの無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、それに5mLの無水トリエチルアミン(過剰)を加えた。溶液を氷浴中に10分間入れた後、5mLの無水THF中塩化シンナモイル(5.25g、過剰)の溶液を加えた。一夜撹拌した後、反応混合物をろ過し、ポリマー沈殿物を反復沈殿により精製して、約2.5gのポリケイ皮酸ビニルフェニル(PCyVP)を白色粉末として得た。
【0096】
【化18】

(実施例2)ポリメタクリル酸シンナモイルエチル[P(CyEMA)]の調製
ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(2.0g、M=20,000g/モル、ヒドロキシル基:15.4mモル)を20mLの無水ピリジンに溶解した。溶液を氷浴中に10分間入れた後、6mLの無水THF中塩化シンナモイル(6g、36mモル)の溶液を加えた。反応物を室温で一夜撹拌し、次いで、約200mLの冷メタノール(MeOH)中で沈殿させた。ポリマー沈殿物を反復沈殿により精製して、約2.5gのポリメタクリル酸シンナモイルエチル[P(CyEMA)]を白色固体として得た。
【0097】
【化19】

(実施例3)ランダムコポリマーのケイ皮酸ビニル−メタクリ酸メチル共重合体[P(CyVP0.55−co−MMA0.45)]の調製
ビニルフェノール−メタクリ酸メチル共重合体(10.0g、M=8,000g/モル、ヒドロキシル基:50mモル、プロトンNMR積分からの計算に基づくビニルフェノール部分の比率55%)を80mLの無水THFに溶解し、それに9.6mLの無水トリエチルアミンを加えた。溶液を氷浴中に10分間入れた後、30mLの無水THF中塩化シンナモイル(10.95g、66mモル)の溶液を加えた。反応物を50℃に加熱し、一夜撹拌し、その後、反応混合物を700mLの冷MeOH中で沈殿させた。沈殿物をろ過し、MeOHで洗浄し、100mLのTHFに再溶解し、再び沈殿させた。さらに沈殿させた後(合計3回)、11g以上のランダムコポリマーケイ皮酸ビニル−メタクリ酸メチル共重合体[P(CyVP0.55−co−MMA0.45)]を白色粉末として得た。
【0098】
H NMRによりシンナモイル部分とメタクリレート部分との共重合体比率が55%:45%と確認された。
【0099】
【化20】

元素分析、実測値:C、76.31%、H、6.31%、計算値:C、76.27%、H、6.19%。
【0100】
(実施例4(比較例))ランダムコポリマーのビニルフェニノールケイ皮酸ビニル−メタクリ酸メチル共重合体[P(VP0.30−co−CyVP0.25−co−MMA0.45)]の調製
ビニルフェノール−メタクリ酸メチル共重合体(8.0g、M=8,000g/モル、ヒドロキシル基:40mモル、プロトンNMR積分からの計算に基づくビニルフェノール部分の比率55%)を60mLの無水THFに溶解し、それに2.6mLの無水トリエチルアミンを加えた。溶液を氷浴中に10分間入れた後、20mLの無水THF中塩化シンナモイル(3g、18mモル)の溶液を加えた。反応物を50℃に加熱し、一夜撹拌し、その後、反応混合物をろ過した。透明な溶液を真空中においてトリエチルアミン及び溶媒を除去して、8gのランダムコポリマーのビニルフェニル−ケイ皮酸ビニル−メタクリ酸メチル共重合体[P(VP0.30−co−CyVP0.25−co−MMA0.45)]を淡黄色ポリマーとして得た。
【0101】
H NMRによりフェノール、シンナモイル及びメタクリレート部分の共重合体比率が30%、25%及び45%であることが確認された。
【0102】
【化21】

(実施例5)高分子量ランダムコポリマーのメタクリル酸シンナモイルエチル−メタクリル酸アセトキシエチル共重合体[P(CyEMA0.50−co−AcEMA0.50)]の調製
ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(2.0g、M=1,000,000g/モル、ヒドロキシル基:15.4mモル)を60mLの無水ピリジンに溶解した。溶液を氷浴中に10分間入れた後、4mLの無水THF中塩化シンナモイル(1.28g、7.7mモル)の溶液を加えた。反応物を室温で30分間撹拌し、その後、3mLの無水酢酸(過剰)を加えて、ポリマー上の遊離OH基をキャップした。反応物を室温で一夜撹拌し、次いで、約200mLの冷MeOH中で沈殿させた。ポリマー沈殿物を反復沈殿により精製して、約2gの高分子量ランダムコポリマーのメタクリル酸シンナモイルエチル−メタクリル酸アセトキシエチル共重合体[P(CyEMA0.50−co−AcEMA0.50)]を白色固体として得た。
【0103】
H NMRにより共重合体比率が50%:50%と確認された。
【0104】
【化22】

(実施例6)ランダムコポリマーのメタクリル酸シンナモイルエチル−メタクリル酸アセトキシエチル共重合体[P(CyEMA0.57−co−AcEMA0.43)]の調製
ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(2.0g、M=20,000g/モル、ヒドロキシル基:15.4mモル)を20mLの無水ピリジンに溶解した。溶液を氷浴中に10分間入れた後、4mLの無水THF中塩化シンナモイル(1.46g、8.76mモル)の溶液を加えた。反応物を室温で30分間撹拌し、その後、3mLの無水酢酸(過剰)を加えて、ポリマー上の遊離OH基をキャップした。反応物を室温で一夜撹拌し、次いで、約200mLの冷MeOH中で沈殿させた。ポリマー沈殿物を反復沈殿により精製して、約2gのランダムコポリマーのメタクリル酸シンナモイルエチル−メタクリル酸アセトキシエチル共重合体[P(CyEMA0.57−co−AcEMA0.43)]を白色固体として得た。
【0105】
H NMRにより共重合体比率が57%:43%と確認された。
【0106】
【化23】

(実施例7)ランダムコポリマーのメタクリル酸シンナモイルエチル−メタクリル酸アセトキシエチル共重合体[P(CyEMA0.80−co−AcEMA0.20)]の調製
ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(3.0g、M=20,000g/モル、ヒドロキシル基:23mモル)を30mLの無水ピリジンに溶解した。溶液を氷浴中に10分間入れた後、4mLの無水THF中塩化シンナモイル(3.07g、18.4mモル)の溶液を加えた。反応物を室温で6時間撹拌し、その後、3mLの無水酢酸(過剰)を加えて、ポリマー上の遊離OH基をキャップした。反応物を室温で一夜撹拌し、次いで、約200mLの冷MeOH中で沈殿させた。ポリマー沈殿物を反復沈殿により精製して、約3gのランダムコポリマーのメタクリル酸シンナモイルエチル−メタクリル酸アセトキシエチル共重合体[P(CyEMA0.80−co−AcEMA0.20)]を白色固体として得た。
【0107】
H NMRにより共重合体比率が80%:20%と確認された。
【0108】
【化24】

(実施例8)ランダムコポリマーのメタクリル酸シンナモイルエチル−メタクリル酸(トリフルオロアセトキシ)エチル共重合体[P(CyEMA0.57−co−TFAcEMA0.43)]の調製
ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(2.0g、M=20,000g/モル、ヒドロキシル基:15.4mモル)を20mLの無水ピリジンに溶解した。溶液を氷浴中に10分間入れた後、4mLの無水THF中塩化シンナモイル(1.46g、8.76mモル)の溶液を加えた。反応物を室温で3時間撹拌し、その後、3mLの無水トリフルオロ酢酸(過剰)を加えて、ポリマー上の遊離OH基をキャップした。反応物を室温で一夜撹拌し、次いで、約200mLの冷MeOH中で沈殿させた。ポリマー沈殿物を反復沈殿により精製して、約2gのランダムコポリマーのメタクリル酸シンナモイルエチル−(トリフルオロアセトキシ)メタクリル酸エチル共重合体[P(CyEMA0.57−co−TFAcEMA0.43)]を白色固体として得た。
【0109】
H NMRにより共重合体比率が57%:43%と確認された。
【0110】
【化25】

(実施例9)ランダムコポリマーのメタクリル酸シンナモイルエチル−メタクリル酸(ペンタフルオロベンゾイル)エチル共重合体[P(CyEMA0.57−co−F5BEMA0.43)]の調製
ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(2.0g、M=20,000g/モル、ヒドロキシル基:15.4mモル)を20mLの無水ピリジンに溶解した。溶液を氷浴中に10分間入れた後、4mLの無水THF中塩化シンナモイル(1.46g、8.76mモル)の溶液を加えた。反応物を室温で3時間撹拌し、その後、3mLの塩化ペンタフルオロベンゾイル(過剰)を加えて、ポリマー上の遊離OH基をキャップした。反応物を室温で一夜撹拌し、次いで、約200mLの冷MeOH中で沈殿させた。ポリマー沈殿物を反復沈殿により精製して、約2gのランダムコポリマーのメタクリル酸シンナモイルエチル−メタクリル酸(ペンタフルオロベンゾイル)エチル共重合体[P(CyEMA0.57−co−F5BEMA0.43)]を白色固体として得た。
【0111】
H NMRにより共重合体比率が57%:43%と確認された。
【0112】
【化26】

(実施例10)ランダムコポリマーのメタクリル酸3−(トリフルオロメチル)−シンナモイルエチル−メタクリル酸アセトキシエチル共重合体[P(CF3CyEMA0.57−co−AcEMA0.43)]の調製
ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(2.0g、M=20,000g/モル、ヒドロキシル基:15.4mモル)を20mLの無水ピリジンに溶解した。溶液を氷浴中に10分間入れた後、4mLの無水THF中塩化3−トリフルオロメチルシンナモイル(2.06g、8.76mモル)の溶液を加えた。反応物を室温で3時間撹拌し、その後、3mLの無水酢酸(過剰)を加えて、ポリマー上の遊離OH基をキャップした。反応物を室温で一夜撹拌し、次いで、約200mLの冷MeOH中で沈殿させた。ポリマー沈殿物を反復沈殿により精製して、約2gのランダムコポリマーのメタクリル酸3−(トリフルオロメチル)−シンナモイルエチル−メタクリル酸アセトキシエチル共重合体[P(CF3CyEMA0.57−co−AcEMA0.43)]を白色固体として得た。
【0113】
H NMRにより共重合体比率が57%:43%と確認された。
【0114】
【化27】

(実施例11)キャップトポリメタクリル酸シンナモイルエチル[CAP−P(CyEMA)]の調製
P(CyEMA)(3.0g、実施例2)を30mLの新たに蒸留したTHFに溶解し、得られた溶液を氷水浴中に入れて冷却した。無水トリフルオロ酢酸(0.5g)を遮光して激しく撹拌しながら1滴ずつ加えた。反応物を室温に加温し、3時間撹拌し、減圧下で濃縮して乾燥した。得られた固体を30mLの新たに蒸留したTHFに溶解し、得られた溶液を氷水浴中に入れて冷却した。無水トリフルオロ酢酸の第2の部分(0.5g)を激しく撹拌しながら1滴ずつ加えた。反応物を室温に加温し、一夜撹拌し、減圧下で濃縮した。残留物をTHFに溶解し、メタノールを加えることにより沈殿させ、再びTHFに溶解し、ジエチルエーテルを加えることにより沈殿させ、得られた固体を真空中で乾燥して、CAP−P(CyEMA)を白色発泡体として得た(収率>95%)。
【0115】
(実施例12)スピンコート誘電体膜の表面形態
実施例1〜3のフォトポリマーをジオキサンに溶解して、それぞれ80mg/mLの濃度を有する溶液を得た。次いで、ポリマー溶液を1300rpm(加速20)で清浄なケイ素基板上にスピンコーティングした。スピンコーティング段階の後に、得られた誘電体膜を150W紫外オーブン中で10分間処理し、次いで、真空オーブン中で100℃で10分間アニーリングして、残存溶媒を完全に除去した。膜厚及び表面平滑度(粗度の二乗平均平方根(RMS)により表す)をそれぞれプロフィロメトリ及び原子間力顕微鏡法(AFM)により測定した。結果は、本教示のポリマー膜は非常に平滑で、粗度のRMSは約0.4nmの範囲にあることを示すものであった。
【0116】
(実施例13)スピンコート誘電体膜の誘電特性
金属−絶縁体膜−半導体(MIS)コンデンサ構造を実施例11から得られた誘電体膜を用いて製作し、誘電体膜の静電容量を測定した。MIS構造の製作のために、多量にドープしたn型Si(MEMC Electronic Materials、アンチモン/n−ドープ)を半導体として用い、その上に誘電体膜をスピンコーティングして絶縁体層を形成させた。次いで、トップAu電極(面積1=100μm×100μm;面積2=200μm×200μm;面積3=500μm×1000μm;面積4=1000μm×1000μm;面積5=1cm×2cm)をフォトポリマー絶縁体の上部に<1×10−6トルで真空蒸着して、MISコンデンサ構造を完成させた。シャドウマスクを用いて、100μm×100μm〜1000μm×1000μmの範囲の加工寸法を有する矩形又は正方形Auパッドを蒸着させて、異なるサイズのMIS構造を形成させることができる。特に示さない限り、本実施例及び以下の実施例における漏洩電流は、200μm×200μmの加工寸法を用いたAuパッド付きのコンデンサ構造を用いて測定した。本教示の誘電材料に基づくコンデンサのJ−E特性は、図1に示すように、Auパッドの面積に無関係であるように思われる。
【0117】
MIS構造の電流(I)−電圧(V)応答は、ローカルLabviewプログラム及び汎用インターフェースバスコミュニケーションにより動作するリモートプリアンプ付き高感度Keithley 6430 Sub−Femtoamp ソースメーター(Source Meter)を用いて測定した。すべての測定は、環境大気中(相対湿度=30〜80%)で行った。I−V走査中の電気ノイズを最小限にするために、3軸ケーブル及びプロービングシステム(Signatone、Gilroy、CA)を用いてMIS構造を探査した。Signatone3軸プロービングシステムとKeithley 6430ソースメーターとの併用により、10−15Aという低い値にノイズレベルが低下し、10−14A程度の低い電流の正確な測定が可能であった。測定中、ボトム電極は、計器接地を用いて探査し、トップAuパッドは、Keithleyソースメーターに接続された3軸プローブの軟性チップを用いて探査した。Labviewプログラムにより制御されたとき、3軸プローブにバイアスをかけることにより、I−Vスキャンを実施し、回路を通る電流を測定した。スキャン速度は、5〜15秒/ステップであり、これは遅延時間を0.5秒〜2秒に、ステップ当たりの測定回数を10〜20に設定して制御した。
【0118】
漏洩電流密度(J)(I/Auパッドの面積)対電界(E)(V/誘電体層の厚さ)プロットを図2に示す。PVP、PMMA及びPCyVPから調製した誘電体膜のJ−E応答を比較のために含める。
【0119】
同様なMISコンデンサ構造及び試験手順を用いて、実施例4〜10のフォトポリマーのキャラクタリゼーションを行った。漏洩電流密度(J)対電界(E)プロットを実施例2及び3のポリマーに関する比較データとともに図3に示す。誘電特性、すなわち、漏洩電流密度、静電容量(C)及び絶縁破壊電圧(BV)並びに前述の実施例の膜厚を表1に要約する。
【0120】
【表1】

(実施例14)スピンコート誘電体膜を用いて製作されたペンタセンベースのOFETのデバイス性能
ケイ素及びアルミニウムゲート材料上のペンタセンOFETを実施例11及び12の誘電体膜を用いて製作した。具体的には、ケイ素基板は、Montco Silicon Tech Inc.(Spring City、PA)から入手した高度にn−ドープしたケイ素ウェーハであり、使用前に有機溶媒中で音波処理により浄化した。アルミニウム基板は、Al被覆プラスチック基板から切断した。ペンタセンは、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)から購入し、基板温度を約50℃〜約70℃に維持しながら、約2×10−6トルで真空蒸着した(500Å、0.3Å/秒)。金(Au)電極は、シャドウマスクを介して3〜4×10−6トルで真空蒸着した(500Å、0.3Å/秒)。チャンネル長は50μmであり、チャンネル幅は5000μmであった。これらのOFETは、非常によく機能し、移動度(μ)は約0.5cm/Vsであり、Ion:Ioff比は最大2×10であり、ヒステリシスは無視でき、ゲート漏洩電流は極めて低かった。代表的なOFETトランスファー及び出力プロットを図4に示す(P(CyEMA0.57−co−F5BEMA0.43)を誘電体層として用いた)。これらのフォトポリマーベースのデバイスのOFET性能を表2に要約する。比較ペンタセンOFETデバイスは、二酸化ケイ素(SiO)を誘電材料として用いて製作した。二酸化ケイ素膜は、300nmの厚さを有する。この比較デバイスのキャリア移動度は、約0.1cm/Vs〜約0.3cm/Vsであることがわかった。
【0121】
【表2】

(実施例15)スピンコート誘電体膜を用いて製作したn型OFETのデバイス性能
ペリレン型n型半導体であるN,N’−ビス(n−オクチル)−ジシアノペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシイミド)(PDI−8CN)を用いて、本教示のフォトポリマーを誘電体層としたn型OFETデバイスを製作した。具体的には、ケイ素基板は、Montco Silicon Tech Inc.(Spring City、PA)から入手した高度にn−ドープしたケイ素ウェーハであり、使用前に有機溶媒中で音波処理により浄化した。PDI−8CNは、米国特許出願公開第2005/0176970号明細書に記載されている手順に従って合成し、基板温度を約100℃〜110℃に維持しながら約2×10−6トルで真空蒸着した(500Å、0.3Å/秒)。Au電極は、シャドウマスクを介して3〜4×10−6トルで真空蒸着した(500Å、0.3Å/秒)。チャンネル長は50μmであり、チャンネル幅は5000μmであった。これらのOFETは、非常によく機能し、n型移動度(μ)は約0.05cm/Vsであり、Ion:Ioff比は最大1×10であり、ヒステリシスは無視でき、ゲート漏洩電流は最小限であった。代表的なOFETトランスファー及び出力プロットを図5に示す(P(CyVP0.55−co−MMA0.45)を誘電体層として用いた)。
【0122】
(実施例16)光架橋前後のフォトポリマー材料の溶解度
本教示の多くのフォトポリマーは、テトラヒドロフラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ジオキサン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、トルエン、ジクロロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルホルムアミド、n−メチルピロリドン及びシクロヘキサノンを含むが、これらに限定されない一般的な有機溶媒に可溶である。例えば、実施例2のP(CyEMA)は、加熱せずに酢酸エチルに溶解させて、350mg/mLの濃度を有する溶液を得ることができる。そのような溶液は、グラビア印刷に用いるのに十分に粘稠である。
【0123】
印刷又は他の溶液相析出段階の後に、本教示のフォトポリマーは、紫外光への曝露(例えば、150W UVオーブン中で10分間の処理による)により硬化させることができ、これにより、光架橋段階の前には最初は可溶性であった有機溶媒に対してフォトポリマーが不溶性になる。硬化した誘電体膜は、比較的過酷な工程に耐えるのに十分に頑健であることがわかった。例えば、光架橋誘電体膜をジクロロベンゼン中で5分間音波処理したが、その後、その厚さ及び物理的外観は音波処理段階の前と実質的に同じであることがわかった。本誘電材料のこの特徴のため、それらは、誘電体層が半導体層の析出のための溶液処理溶媒(例えば、ジクロロベンゼン)に不溶性であることを必要とする、溶液処理ボトムゲートOFET用の魅力的な候補である。
【0124】
(実施例17)スピンコートフォトポリマー材料を用いて製作した多層誘電材料
本教示のフォトポリマーは光架橋後に一般的有機溶媒に不溶性になることができるので、誘電材料の多層は、前の析出層を溶解せずに互いの上部に被覆することができる。そのような多層誘電体構造は、より大きい面積にわたる最小限のピンホール及びより良好な均一性を含むが、これらに限定されない多くの性能上の利点がある。
【0125】
実施例12で述べたのと同様なMISコンデンサ構造及び試験手順を調製し、用いて、P(CyVP0.55−co−MMA0.45)(実施例3)から調製した2層誘電材料のキャラクタリゼーションを行った。漏洩電流密度(J)対電界(E)プロットを図6に示す。図9に示す試験ピクセルは約2cmの比較的大きい面積を有する(一般的なOFETデバイス及びMIS構造は一般的に0.01cmより小さい試験ピクセルを有する)が、試験した2層誘電体膜の漏洩電流密度は極めて低く、大きい面積にわたる優れた膜均一性が示唆される。2層誘電体膜の厚さは、約1000nmであり、実施例11の単層膜(500nm)より2倍厚く、これは、多層コーティング工程中の光架橋膜の不溶性であることを意味している。
【0126】
ペンタセンOFETは、上述の2層誘電体膜を用いて製作した。これらのペンタセンOFETは、約0.22cm/Vsの正孔移動度(μ)、約3×10のIon:Ioff比、無視できるヒステリシス及び180Vゲートバイアスにおける3nAと低いゲート漏洩電流により明らかなように、優れたデバイス性能を示した。トランスファー及び出力プロットを図7に示す。
【0127】
(実施例18)フォトポリマーを含む誘電組成物の印刷可能性
実施例7のフォトポリマーP(CyEMA0.80−co−AcEMA0.20)を用いて、印刷可能な誘電体層を製作した。フォトポリマーを酢酸エチルに溶解して、300mg/mL溶液の濃度を有する溶液を得た。印刷機械(IGT)を用い、グラビアモード及び次のパラメーターを用いて誘電体膜を印刷した。すなわち、アニロックス力100N、印刷速度0.4m/秒、アニロックスシリンダー402.100(40l/cm、銅刻印−クロムめっき、スタイラス130°、スクリーン角53、容積23.3mL/m)。フォトポリマーの第1の層をAl−PEN基板上に印刷し、10分間にわたりUV硬化させ、真空オーブン中で10分間乾燥した。フォトポリマーの第2の層を第1の層の上に印刷し、同じ方法で硬化させた。その後、MISコンデンサ構造及びペンタセンOFETを製作した。ペンタセンOFETの出力及びトランスファープロットを図8に示す。
【0128】
(実施例19)フォトポリマーのUV硬化
本教示の選択したフォトポリマーを、254nmの紫外光への曝露により架橋させた。IR分光法を用いて、これらのポリマーの光架橋を確認した。シンナモイル基の二重結合は、光架橋前には1630cm−1で特性IR吸収を示し、2+2付加環化光架橋反応後に予測通り消失した。図9にUV硬化の前後のフォトポリマー膜のIR吸収スペクトルを示す。C=O伸縮の強度はUV処理後に著しく低下したことを確認することができた。
【0129】
(実施例20)本フォトポリマーの低いガラス転移温度
本フォトポリマーのガラス転移特性を示差走査熱量測定法(DSC)により特性決定した。図10に本教示のフォトポリマーの典型的なDSCプロットを示す。いくつかのフォトポリマーに関する追加データを表3に要約する。例えば、P(CyEMA0.57−co−AEMA0.43)のガラス転移温度(T)を測定したところ約45℃であった(80〜100℃のTを有するPMMAなどの従来の高分子誘電材料と比較)。そのような低いガラス転移温度は、最終的な光硬化架橋誘電材料を得るための光架橋段階を開始する前に表面平坦化を達成し、ピンホールを充填するための時間を設けることを可能にし、これにより、本教示のフォトポリマーの良好な膜形成特性を説明することがきる。より低いガラス転移温度を有するポリマー(例えば、約80〜100℃のTを有するPMMA)は、より高いガラス転移温度を有するポリマー(例えば、150℃のTを有するPVP)と比較して一般的に良好な膜形成特性を有する。
【0130】
【表3】

(実施例21)フォトポリマー誘電体膜の貯蔵安定性
図11に空気中で55日間保存したP(CyVP0.55−co−MMA0.45)から調製した誘電体膜を組み込んだMISコンデンサ構造の漏洩電流密度対電界(J−E)プロットを示す。保存期間にもかかわらず、フォトポリマー誘電体膜は、非常に低い漏洩電流密度(55日後に実際にわずかに低下した)により明らかなように、依然として優れた誘電特性を示したことがわかる。したがって、これらの結果は、本フォトポリマー材料は誘電材料として優れた貯蔵安定性を有することを示すものである。認識されているように、OH基を含む誘電性ポリマーは一般的に水分に敏感であり、限られた貯蔵安定性を有する。特定の理論に拘束されることを望むことなく、存在するOH基の数を減少させるようにフォトポリマーを誘導体化することにより、本教示のフォトポリマーは、PVPなどの他の既知のポリマー誘電材料と比べて改善された貯蔵安定性を有すると考えられる。残存OH基は、例えば、無水トリフルオロ酢酸(例えば、実施例11)又は塩化トリフルオロアセチルを含む適切な試薬を用いることにより、キャップ又はマスクすることができる。
【0131】
(実施例22)全く溶液処理のみによるOFET
完全に溶液処理OFETは、誘電体層としての本教示のフォトポリマー及び半導体層としてのドロップキャストn型ペリレン材料を用いて製作した。これは、溶液から析出させた半導体層及び誘電体層を有する、製作された最初のn型OFETデバイスであったと考えられる。
【0132】
ペリレンベースのn型半導体であるN,N’−ビス(n−オクチル)−ジシアノペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシイミド)(PDI−8CN)は、Si基板上に溶液析出させ、次に架橋させたフォトポリマー誘電体層(700nm)上にジクロロベンゼン溶液(2mg/mL)からドロップキャストした。結晶性半導体膜を得るために溶媒を蒸発させていた間、基板を105℃に維持した。前の実施例で述べたのと同様な手順を用いて、OFETデバイスを製作し、試験した。代表的なトランスファー及び出力プロットを図12に示す。全く溶液処理のみによるOFETは、良好なデバイス性能を示し、N型移動度は0.035cm/Vsと高く計算され、Ion:Ioff比は約1×10と測定され、ゲート漏洩電流は約50nA又はそれ未満と測定された。これらの結果は、本フォトポリマーベースの誘電材料が、半導体層を析出させるのに用いる溶液法に用いる溶媒に対する優れた不溶性を有すること、及び本フォトポリマーベースの誘電材料が、溶液処理n型半導体材料との良好な適合性を有することを示している。
【0133】
(実施例23)フォトポリマー誘電体薄膜
図13に厚さ100nmのフォトポリマー誘電体膜のJ−Eプロットを示す。図14に示すデータは、以前の実施例で示した400nm〜500nmのフォトポリマー誘電体膜と比較して同等の漏洩電流密度を示している。そのような薄膜の絶縁破壊電界は7MV/cmと高いことがあり得ることがわかる。
【0134】
(実施例24)漏洩電流密度に対するフォトポリマー構造におけるOH基の影響
P(CyVP0.55−co−MMA0.45)(実施例3)及びP(VP0.30−co−CyVP0.25−co−MMA0.45)(実施例4)の漏洩電流密度対電界プロットを図14において比較する。P(CyVP0.55−co−MMA0.45)の漏洩電流密度はP(VP0.30−co−CyVP0.25−co−MMA0.45)の漏洩電流密度より約2桁低いことがわかる。2つのポリマーの主な相違点はP(VP0.30−co−CyVP0.25−co−MMA0.45)がかなりの量のOH基を有するのに対して、P(CyVP0.55−co−MMA0.45)はほぼ有していないことであるので、これらのデータは、OH基が誘電性ポリマーの漏洩電流密度に対して劇的な影響を及ぼし得ることを示唆している。残存OH基のさらなるキャップ又はマスク(例えば、実施例11)により、漏洩電流密度をさらに減少させ、環境条件下での電子的性能を安定化することができる。
【0135】
(実施例25)誘電特性に対するフォトパターニングの影響
スピンコートフォトポリマー膜[P(CyEMA)(実施例2)]をシャドウマスクを介して紫外光(254nm)に曝露させ、次いでTHFで洗浄し、乾燥した。膜は、シャドウマスクのパターンに対する明瞭なネガパターンを示した。次いで、膜を曝露させ、架橋させた領域の上にAu電極を蒸着して、MISコンデンサ構造を製作し、前述と同様な手順を用いてその漏洩電流を試験した。図15にそのような誘電体膜の漏洩電流密度対電界プロットを示す。フォトパターニング/溶媒洗浄処理を施さなかった同様な誘電体膜のJ−E応答も比較のために図に示した。パターンを形成させた誘電体膜の漏洩電流はパターンを形成させなかった誘電体膜と同等であったことがわかる。
【0136】
他の実験において、平行なAu線をSi基板上に析出させ、その後、フォトポリマー膜[P(CyEMA)(実施例2)]をAu線の上にスピンコートした。フォトポリマー膜を、下にあるAu線に垂直な線状開口部を有するシャドウマスクを介して紫外光(254nm)に曝露させた。フォトポリマー膜をTHFで洗浄し、乾燥した。得られた膜は、Au線とフォトマスク線との交差部分に矩形状の「ビアホール」を有する。「ビアホール」がフォトポリマー残存物を含んでいないかどうかを試験するために、Au電極の他の層を「ビアホール」の上に析出させたところ、「ビアホール」における直接接続抵抗は<5オームと推定された。
【0137】
これらの2つの実験により、フォトポリマー誘電材料は、フォトパターニング及び「ビアホール」パターニング工程を含む回路製作工程と容易に統合させることができることがわかる。
【0138】
(実施例26)フォトポリマー誘電体層を用いたボトムコンタクトボトムゲートOFET
図16に4つの一般的な種類のOFET構造、すなわち、トップコンタクトボトムゲート構造(a)、ボトムコンタクトボトムゲート構造(b)、ボトムコンタクトトップゲート構造(c)及びトップコンタクトトップゲート構造(d)を示す。図16に示すように、OFETは、誘電体層(例えば、図16a、16b、16c及び16dにそれぞれ8、8’、8’’及び8’’’として示す)、半導体層(例えば、図16a、16b、16c及び16dにそれぞれ6、6’、6’’及び6’’’として示す)、ゲート接点(例えば、図16a、16b、16c及び16dにそれぞれ10、10’、10’’及び10’’’として示す)、基板(例えば、図16a、16b、16c及び16dにそれぞれ12、12’、12’’及び12’’’として示す)並びにソース及びドレイン接点(例えば、図16a、16b、16c及び16dにそれぞれ2、2’、2’’、2’’’、4、4’、4’’及び4’’’として示す)を含むことができる。以前の実施例で示したOFETデバイスのほとんどがトップコンタクトボトムゲート構造を有する。この実施例では、本教示の誘電材料[実施例2におけるP(CyEMA)]を絶縁層として用いてボトムコンタクトボトムゲートOFETを製作した。最初に、約900nmの厚さを有するSi基板上に誘電体膜を製作した。Au(25nm)をシャドウマスクを介してフォトポリマー膜上に蒸着して、ソース及びドレイン電極を形成させ、次いで、それを飽和アルキルチオールエタノール溶液中で1時間処理した。次いで、ペンタセン(50nm)をトップ上に蒸着して(基板温度は60℃であった)、ボトムコンタクトデバイスを完成させた。そのようなボトムコンタクトデバイスのトランスファー及び出力プロットを図17に示す。約0.074cm/Vsの正孔移動度及び約1×10のIon/Ioff比が得られた。
【0139】
(実施例27)フォトポリマー誘電体層を用いたボトムコンタクトトップゲートOFET
この実施例では、本教示の誘電材料[実施例2におけるP(CyEMA)]を誘電体層として用いてボトムコンタクトトップゲートOFETを製作した。最初に、Au(25nm)をシャドウマスクを介して絶縁基板(SiO)上に蒸着して、ソース及びドレイン電極を形成させ、次に、それを飽和アルキルチオールエタノール溶液中で1時間処理した。次いで、ペンタセン(50nm)を上に蒸着して半導体層を形成させた。次いで、フォトポリマー膜を誘電体層としてペンタセンの上にスピンコートした後、Auをゲート電極として蒸着した。そのようなボトムコンタクトトップゲートデバイスのトランスファープロットを図18に示す。約0.01cm/Vsの正孔移動度及び約3×10のIon/Ioff比が得られた。
【0140】
(実施例28)フォトポリマー誘電体層及びボトムゲート電極としての導電性ポリマーを用いたトップコンタクトOFET
この実施例では、本教示の誘電材料[実施例3のP(CyVP0.55−co−MMA0.45)]を誘電体層として、導電性ポリマー薄膜をボトムゲート電極として用いてトップコンタクトOFETを製作した。最初に、導電性ポリマー(PEDOT−PSS、比率1:1)を3M(商標)オーバーヘッドスライド上にスピンコートして、ゲート電極を形成させた。次いで、誘電体及び半導体層(n型半導体、N,N’−ビス(n−オクチル)−ジシアノナフタレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシイミド)、NDI−8CN)を実施例14で述べたのと同様な手順を用いて析出させた。Au(25nm)を半導体層上に蒸着して、トップソース及びドレイン電極を形成させた。そのようなトップコンタクトボトムゲートデバイスのOFET特性(出力プロット)を図19に示す。約0.03cm/Vsの電子移動度及び約10のIon/Ioff比が得られた。
【0141】
本教示は、その精神又は本質的特性から逸脱することなく、他の特定の形態で実施することができる。したがって、前述の実施形態は、本明細書で述べた本教示に限定するのではなく、すべての点で実例となるものとみなすべきである。本教示の範囲は、先の記述によってではなく、添付する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び同等物の範囲内にあるすべての変更は、それに含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化28】

[式中、
Lは、各出現時に、独立に、−Y−、−Y−O−Y−、−Q−、−Y−S−Y−、−Y−C(O)−O−Y−、−Q−C(O)−O−Y−、−Y−O−C(O)−Q−、−Y−O−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Q−、−Y−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Y−又は−Y−C(O)−Q−であり、
式中、
Qは、各出現時に、−O−[Y−O]−Y−O−であり、
Yは、各出現時に、二価C1〜10アルキル基、二価C2〜10アルケニル基、二価C2〜10アルキニル基、二価C6〜10アリール基又は共有結合であり、前記C1〜10アルキル基、前記C2〜10アルケニル基、前記C2〜10アルキニル基及び前記C6〜10アリール基のそれぞれが、ハロゲン及びCNから独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されており、
pは、0〜10の範囲の整数であり、
及びRは、独立に、H、ハロゲン又はCNであり、
Zは、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基、又はハロゲン、CN、C1〜20アルキル基、C1〜20ハロアルキル基、C1〜20アルコキシ基、−O−C1〜20ハロアルキル基、−C(O)−C1〜6アルキル基、−C(O)−C1〜6ハロアルキル基及び−C(O)−O−C1〜6アルキル基から独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されているC6〜10アリール基である]
を有するペンダント基を含み、2MV/cmで約1×10−8A/cm未満の漏洩電流密度を有するポリマー。
【請求項2】
及びRが、独立に、H又はFである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
Zが、C1〜6アルキル基、C1〜6ペルフルオロアルキル基、又はF、C1〜20アルキル基、C1〜20ハロアルキル基、C1〜20アルコキシ基及び−O−C1〜20ハロアルキル基から独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されているフェニル基である、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】
Zが、フェニル基、ペルハロフェニル基、又はトリフルオロメチル基、C1〜20アルコキシ基若しくは−O−C1〜20ハロアルキル基で置換されているフェニル基である、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
Lが、各出現時に、独立に、−O−、−C−O−、−C(O)−O−、−C(O)−O−CHCH−O−、−C(O)−O−CFCF−O−又は共有結合である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】

【化29】

[式中、
、R及びRは、独立に、H、ハロゲン、C1〜10アルキル基又はC6〜14アリール基であり、前記C1〜10アルキル基及び前記C6〜14アリール基のそれぞれは、ハロゲン及びCNから独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されており、
、R、L及びZは、請求項1で定義した通りである]
を有する反復単位を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記反復単位が
【化30】

[式中、R、R、R及びZは、請求項1で定義した通りである]
から選択される式を有する、請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
前記反復単位が式
【化31】

[式中、
Uは、−Y−又は−Y−O−Y−であり、
12は、H、C1〜20アルキル基又はC1〜20ハロアルキニル基であり、
Yは、請求項1で定義した通りである]
を有する、請求項6又は請求項7に記載のポリマー。
【請求項9】
反復単位が
【化32−1】

【化32−2】

から選択される式を有する、請求項6から8のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項10】

【化33】

[式中、R、R及びRは、独立に、H、ハロゲン、C1〜10アルキル基又はC6〜14アリール基であり、前記C1〜10アルキル基及び前記C6〜14アリール基のそれぞれが、ハロゲン及びCNから独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されており、
L’は、−Y−、−Y−O−Y−、−Q−、−Y−S−Y−、−Y−C(O)−O−Y−、−Q−C(O)−O−Y−、−Y−O−C(O)−Q−、−Y−O−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Q−、−Y−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Y−又は−Y−C(O)−Q−であり、
Wは、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基、C1〜10アルコキシ基、又はハロゲン、CN、C1〜6アルキル基、C1〜6ハロアルキル基、C1〜6アルコキシ基、−C(O)−C1〜6アルキル基、−C(O)−C1〜6ハロアルキル基及び−C(O)−O−C1〜6アルキル基から独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されているC6〜10アリール基であり、
m及びnは、独立に実数であり、ただし、0<m≦1、0≦n<1及びm+n=1であり、
、R、R、R、R、L、Q、Y及びZは、請求項1で定義した通りである]
を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項11】

【化34】

[式中、R、R、R、R、W、Z、m及びnは、請求項10で定義した通りである]
を有する、請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
【化35】

[式中、m及びnは、請求項10で定義した通りである]
から選択される式を有する、請求項11に記載のポリマー。
【請求項13】

【化36】

[式中、
Uは、−Y−又は−Y−O−Y−であり、
12は、H、C1〜20アルキル基又はC1〜20ハロアルキル基であり、
m、n及びYは、請求項10で定義した通りである]
を有する、請求項10に記載のポリマー。
【請求項14】
【化37】

[式中、m及びnは請求項10で定義した通りである]
から選択される式を有する、請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】

【化38】

[式中、
、R10及びR11は、独立に、H、ハロゲン、C1〜10アルキル基又はC6〜14アリール基であり、前記C1〜10アルキル基及び前記C6〜14アリール基のそれぞれが、ハロゲン及びCNから独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されており、
W’は、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基、C1〜10アルコキシ基、又はハロゲン、CN、C1〜6アルキル基、C1〜6ハロアルキル基、C1〜6アルコキシ基、−C(O)−C1〜6アルキル基、−C(O)−C1〜6ハロアルキル基及び−C(O)−O−C1〜6アルキル基から独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されているC6〜10アリール基であり、
m’、n’及びn’’は、独立に実数であり、ただし、0<m’≦1、0≦n’<1、0≦n’’<1及びm’+n’+n’’=1であり、
、R、R、R、R、R、R、R、L、L’、W及びZは、請求項10で定義した通りである]
を有する、請求項10に記載のポリマー。
【請求項16】
W’がCFである、請求項15に記載のポリマー。
【請求項17】

【化39】

[式中、
Lは、各出現時に、独立に、−Y−、−Y−O−Y−、−Q−、−Y−S−Y−、−Y−C(O)−O−Y−、−Q−C(O)−O−Y−、−Y−O−C(O)−Q−、−Y−O−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Q−、−Y−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Y−又は−Y−C(O)−Q−であり、
式中、
Qは、各出現時に、−O−[Y−O]−Y−O−であり、
Yは、各出現時に、二価C1〜10アルキル基、二価C2〜10アルケニル基、二価C2〜10アルキニル基、二価C6〜10アリール基又は共有結合であり、前記C1〜10アルキル基、前記C2〜10アルケニル基、前記C2〜10アルキニル基及び前記C6〜10アリール基のそれぞれが、ハロゲン及びCNから独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されており、
pは、0〜10の範囲の整数であり、
及びRは、独立に、H、ハロゲン又はCNであり、
Zは、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基、又はハロゲン、CN、C1〜20アルキル基、C1〜20ハロアルキル基、C1〜20アルコキシ基、−O−C1〜20ハロアルキル基、−C(O)−C1〜6アルキル基、−C(O)−C1〜6ハロアルキル基及び−C(O)−O−C1〜6アルキル基から独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されているC6〜10アリール基である]
を有するペンダント基を含み、約100℃未満のガラス転移温度を有するポリマー。
【請求項18】
2MV/cmで約1×10−8A/cm未満の漏洩電流密度を有する、請求項17に記載のポリマー。
【請求項19】

【化40】

[式中、
Lは、各出現時に、独立に、−Y−、−Y−O−Y−、−Q−、−Y−S−Y−、−Y−C(O)−O−Y−、−Q−C(O)−O−Y−、−Y−O−C(O)−Q−、−Y−O−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Q−、−Y−C(O)−Y−、−Q−C(O)−Y−又は−Y−C(O)−Q−であり、
式中、
Qは、各出現時に、−O−[Y−O]−Y−O−であり、
Yは、各出現時に、二価C1〜10アルキル基、二価C2〜10アルケニル基、二価C2〜10アルキニル基、二価C6〜10アリール基又は共有結合であり、前記C1〜10アルキル基、前記C2〜10アルケニル基、前記C2〜10アルキニル基及び前記C6〜10アリール基のそれぞれが、ハロゲン及びCNから独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されており、
pは、0〜10の範囲の整数であり、
及びRは、独立に、H、ハロゲン又はCNであり、
Zは、C1〜10アルキル基、C1〜10ハロアルキル基、又はハロゲン、CN、C1〜20アルキル基、C1〜20ハロアルキル基、C1〜20アルコキシ基、−O−C1〜20ハロアルキル基、−C(O)−C1〜6アルキル基、−C(O)−C1〜6ハロアルキル基及び−C(O)−O−C1〜6アルキル基から独立に選択される1〜5つの置換基で場合によって置換されているC6〜10アリール基である]
のペンダント基を有する化合物の架橋生成物を含むポリマー。
【請求項20】
1つ又は複数の有機溶媒に溶解した請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマーを含む誘電性組成物。
【請求項21】
1つ又は複数の有機溶媒に溶解した請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマーを含む溶液処理可能な誘電性組成物。
【請求項22】
1つ又は複数の有機溶媒に溶解した請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマーを含む印刷可能な誘電性組成物。
【請求項23】
前記1つ又は複数の有機溶媒が、テトラヒドロフラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ジオキサン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、トルエン、ジクロロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルホルムアミド、n−メチルピロリドン及びシクロヘキサノンから選択される、請求項20から22のいずれか一項に記載の誘電性組成物。
【請求項24】
請求項1から19のいずれか一項に記載のポリマーを含む誘電材料。
【請求項25】
請求項1から19のいずれか一項に記載のポリマーを含む誘電材料の2つ又はそれ以上の層を含む多層誘電材料。
【請求項26】
請求項24又は25に記載の誘電材料を含む電子デバイス。
【請求項27】
有機電界効果トランジスタ(OFET)である、請求項26に記載の電子デバイス。
【請求項28】
トップコンタクトボトムゲートOFETである、請求項26又は27に記載の電子デバイス。
【請求項29】
ボトムコンタクトボトムゲートOFETである、請求項26又は27に記載の電子デバイス。
【請求項30】
ボトムコンタクトトップゲートOFETである、請求項26又は27に記載の電子デバイス。
【請求項31】
トップコンタクトトップゲートOFETである、請求項26又は27に記載の電子デバイス。
【請求項32】
溶液処理可能な半導体層を含む、請求項26から31のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項33】
蒸着半導体層を含む、請求項26から31のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項34】
請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマーを含む溶液を調製する工程、
前記溶液を基板上に印刷して誘電体層を形成させる工程、ならびに
前記誘電体層を放射線に曝露させ、架橋を誘発して架橋誘電材料を生成させる工程
を含む、誘電材料を調製する方法。
【請求項35】
第2の誘電体層を前記架橋誘電体層上に印刷する工程、ならびに
前記第2の誘電体層を放射線に曝露させ、架橋を誘発し、第2の架橋誘電材料を生成させて、多層誘電材料を形成させる工程
を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマーを含む溶液を調製する工程、
前記溶液を基板上に印刷して誘電体層を形成させる工程、
前記誘電体層を放射線に曝露させ、架橋を誘発して架橋誘電材料を生成させる工程、
前記架橋誘電材料上に半導体層を形成させる工程、ならびに
前記半導体層上に第1の電気接点及び第2の電気接点を形成させる工程
を含む、トップコンタクトボトムゲート有機電界効果トランジスタを製作する方法。
【請求項37】
請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマーを含む溶液を調製する工程、
前記溶液を基板上に印刷して誘電体層を形成させる工程、
前記誘電体層を放射線に曝露させ、架橋を誘発して架橋誘電材料を生成させる工程、
前記架橋誘電材料上に第1の電気接点及び第2の電気接点を形成させる工程、ならびに
前記架橋誘電材料、前記第1の電気接点及び前記第2の電気接点の上に半導体層を形成させる工程
を含む、ボトムコンタクトボトムゲート有機電界効果トランジスタを製作する方法。
【請求項38】
基板上に第1の電気接点及び第2の電気接点を形成させる工程、
前記基板、前記第1の電気接点及び前記第2の電気接点の上に半導体層を形成させる工程、
請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマーを含む溶液を調製する工程、
前記溶液を前記半導体層上に印刷して誘電体層を形成させる工程、
前記誘電体層を放射線に曝露させ、架橋を誘発して架橋誘電材料を生成させる工程、
前記架橋誘電材料上に第3の電気接点を形成させる工程
を含み、前記第3の電気接点が前記第1の電気接点と前記第2の電気接点との間の領域の上に存在する、ボトムコンタクトトップゲート有機電界効果トランジスタを製作する方法。
【請求項39】
基板上に半導体層を形成させる工程、
前記半導体層上に第1の電気接点及び第2の電気接点を形成させる工程、
請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマーを含む溶液を調製する工程、
前記半導体層、前記第1の電気接点及び前記第2の電気接点の上に前記溶液を印刷して誘電体層を形成させる工程、
誘電体層を放射線に曝露させ、架橋を誘発して架橋誘電材料を生成させる工程、
前記架橋誘電材料上に第3の電気接点を形成させる工程
を含み、前記第3の電気接点が前記第1の電気接点と前記第2の電気接点との間の領域の上に存在する、トップコンタクトトップゲート有機電界効果トランジスタを製作する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図16d】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2010−511094(P2010−511094A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539298(P2009−539298)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/024473
【国際公開番号】WO2008/066826
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(509137560)ポリエラ コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】