説明

フォトマスクの製造方法

【課題】解像度の高いフォトマスクが安定に得られ、且つ現像カス(スラッジ)の発生を長期間に亘って抑制できるフォトマスクの製造方法の提供。
【解決手段】透明基材上に、少なくとも遮光材料を含有し且つ近紫外光ないし可視光で画像形成が可能な感光性層を有するフォトマスク材料を、近紫外光ないし可視光で画像様露光した後、露光後のフォトマスク材料を、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を全質量中に1質量%以上10質量%以下含有するpH8〜13の現像液を用いて現像することを特徴とするフォトマスクの製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトマスクの製造方法に関し、より詳細には、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いうるフォトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いられるフォトマスクとしては、金属クロム層(Cr層)を設けたCrマスク、ハロゲン化銀乳剤層を設けたEmマスク(エマルションマスク)が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
Crマスクは、石英やガラス等の透明基材上にクロム層をスパッタリング法により形成後、この上にエッチングレジストを塗布などにより設け、HeCdレーザー(442nm)などによる露光、アルカリ水溶液などでの現像によるエッチングレジストのパターニング、クロムのエッチング、及びエッチングレジストの剥離を行って作製される。Crマスクは、ピンホール等の欠陥修正可能で、高解像度、高耐久性(耐傷性)、高洗浄性にも優れるというメリットを有する。その一方、Crマスクは、作製工程が煩雑なため高価であり、また、製造プロセスにおいてクロムエッチングが行われることに起因する廃液処理等の環境面の問題も有している。
【0004】
Emマスクは、ハロゲン化銀乳剤層(感光性層)を石英やガラス等の透明基材上に設け、YAGレーザーなどにより露光、現像、定着処理で作製されるものである。Emマスクの作製に用いられるハロゲン化銀乳剤は、光に対する感度が高いため、露光エネルギーが小さくてもよく(〜0.1mJ/cm)、また、環境にも優しく、安価なフォトマスク材料である。この反面、Emマスクは、感光性材料としてハロゲン化銀を用いるため、解像度が余り高くなく(3μm程度)、極微細なパターンを作製するには不向きであり、また感光性層がゼラチン膜であるため耐久性に乏しい。また、Emマスクは、欠陥修正が実質的に困難であるという欠点を有している。
【0005】
また、他のタイプのフォトマスクとして、黒色顔料等の黒色材料を含有し、かつ近紫外光ないし可視光で画像形成が可能な感光性層を有するフォトマスク材料を用いて作製されるものが知られている(特許文献1参照。)。該フォトマスク材料が有する感光性層は、フォトマスク作製時に照射される近紫外ないし可視領域における吸光度が小さいため高感度であり、一方、フォトマスク使用時に照射される紫外領域の光の吸収特性が良好なため、感光性層を露光・現像することにより、解像度に優れたフォトマスクを得ることができる。また、このフォトマスクは、金属膜を必要とせず、レリーフ画像であるため欠陥修正を簡便に行うことができ、感度や解像度等のバランスがよく、安価で環境への負荷も小さいという特徴も有する。
【0006】
ところで、フォトマスクの作製に黒色材料等の遮光材料を感光性層に含有するフォトマスク材料を用いる場合、露光により画像形成を行う際に遮光材料が露光光を吸収してしまう為、強い露光条件で露光する必要がある。しかし、強い露光条件で露光すると、非硬化部であるべき部分が硬化してしまうという予期せぬ硬化反応が起こってしまうことがあり、得られるフォトマスクの解像度が低下するという問題があった。また、黒色顔料等の黒色材料等の遮光材料を感光性層に有する場合には、該遮光材料が現像後の現像液に現像カス(スラッジ)として残り、現像液を汚染するという問題もあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】教育文科会編、「フォトファブリケーション」、日本フォトファブリケーション協会発行、67〜80ページ、1992年6月
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−283914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術における問題点に鑑みなされたものであり、解像度の高いフォトマスクが安定に得られ、且つ現像カス(スラッジ)の発生を長期間に亘って抑制できるフォトマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 透明基材上に、少なくとも遮光材料を含有し且つ近紫外光ないし可視光で画像形成が可能な感光性層を有するフォトマスク材料を、近紫外光ないし可視光で画像様露光した後、露光後のフォトマスク材料を、アアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を全質量中に1質量%以上10質量%以下含有するpH8〜13の現像液を用いて現像することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
<2> 前記現像液に含有されるアニオン界面活性剤が、スルホン酸のアニオン基又は硫酸モノエステルのアニオン基を有し、かつ置換基を有していてもよい少なくとも一つの芳香族基を有するアニオン界面活性剤であることを特徴とする<1>記載のフォトマスクの製造方法。
<3>前記現像液に含有されるノニオン界面活性剤が、下記一般式(1)で表されるノニオン芳香族エーテル系界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であることを特徴とする<1>又は<2>に記載のフォトマスクの製造方法。
X−Y−O−(A)−(B)−H (1)
(一般式(1)中、Xは置換基を有していてもよい芳香族基を表し、Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、A及びBは互いに異なる基であって、−CHCHO−又は−CHCH(CH)O−のいずれかを表し、n、mはそれぞれ0又は1〜100の整数を表し、但しnとmは同時に0ではなく、またn若しくはmのいずれかが0である場合にはn及びmは1ではない。)。
<4> 前記フォトマスク材料における感光性層が高分子バインダーを更に含有し、該高分子バインダーが、側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂又は側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル樹脂であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載のフォトマスクの製造方法。
<5> 前記画像様露光を250nm〜540nmの光を放射するレーザーを用いて行うことを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、解像度の高いフォトマスクが安定に得られ、且つ現像カス(スラッジ)の発生を長期間に亘って抑制できるフォトマスクの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のフォトマスクの製造方法は、透明基材上に、少なくとも遮光材料を含有し且つ近紫外光ないし可視光で画像形成が可能な感光性層を有するフォトマスク材料を、近紫外光ないし可視光で画像様露光した後、露光後のフォトマスク材料を、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を全質量中に1質量%以上10質量%以下含有するpH8〜13の現像液(以下、適宜「特定現像液」と称する。」)を用いて現像することを特徴とする。
【0013】
本発明のフォトマスクの製造方法によれば、解像度の高いフォトマスクが安定に得られ、且つ現像カス(スラッジ)の発生を長期間に亘って抑制できる。即ち、本発明の製造方法は、特定現像液を用いることにより、同じ現像液を繰り返し用いて現像処理を行っても、フォトマスク材料に形成される画像の解像度が低下することがない。また、特定現像液の使用は、スラッジ発生が長期間に亘る抑制することができる。これにより、現像液の使用寿命を延ばすことも可能となり、延いては環境に対する負荷も軽減する。本発明の発揮するこの優れた効果は、遮光材料として黒色材料を含有する感光性層を有するフォトマスク材料を用いた場合において充分に発揮される。
【0014】
以下、本発明のフォトマスクの製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」と称する。)について詳細に説明する。以下では、先ず、本発明の製造方法に用いられる特徴的な要素である特定現像液、及びフォトマスク材料について説明した後、フォトマスクの製造について説明する。
【0015】
〔現像液〕
本発明の製造方法に用いる現像液について説明する。
本発明の製造方法に用いる特定現像液は、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を全質量中に1質量%以上含有するpH8〜13の現像液である。
【0016】
<アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤>
本発明に適用する特定現像液は、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する。
【0017】
特定現像液におけるアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤の総含有は、特定現像液の全質量中、1質量%以上10質量%以下であり、スラッジの発生抑制、未露光部現像性向上の観点からは、2質量%〜8質量%が好ましく、3質量%〜7質量%より好ましい。
【0018】
アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤は、特定現像液に中にいずれか一方のみを含有してもよく、双方を含有してもよい。
アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを併用する場合における含有比(質量比)としては、アニオン界面活性剤:ノニオン界面活性剤が、1:9〜9:1であること好ましく、4:6〜6:4がより好ましく、3:7〜5:5が更に好ましい。
【0019】
アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤としては、以下に詳述するものを使用することができる。
【0020】
−アニオン界面活性剤−
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類、等のアニオン界面活性剤が挙げられる。
【0021】
アニオン界面活性剤としては、スルホン酸のアニオン基又は硫酸モノエステルのアニオン基を有するアニオン界面活性剤が好ましく、スルホン酸のアニオン基又は硫酸モノエステルのアニオン基を有し、かつ置換基を有していてもよい少なくとも一つの芳香族基を有するアニオン界面活性剤であることがさらに好ましい。
【0022】
アニオン界面活性剤の好ましい態様としては、下記一般式(I)で表される化合物、又は、一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
【化1】

【0024】
一般式(I)又は(II)中、R1、R2は、各々、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、又はアリール基を表し、これらの基は更に置換基を有していてもよい。Mはアルカリ金属を表す。
【0025】
1又はR2で表されるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20個のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基、等を好ましく挙げることができる。
【0026】
1又はR2で表されるシクロアルキル基は、単環型でもよく、多環型でもよい。単環型のシクロアルキル基としては炭素数3〜8個のものが挙げられ、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等を好ましく挙げることができる。多環型のシクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基等を好ましく挙げることができる。
【0027】
1又はR2で表されるアルケニル基としては、例えば、炭素数2〜20個のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等を好ましく挙げることができる。
【0028】
1又はR2で表されるアラルキル基としては、例えば、炭素数7〜12個のアラルキル基が挙げられ、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を好ましく挙げることができる。
【0029】
1又はR2で表されるアリール基としては、例えば、炭素数6〜15個のアリール基でが挙げられ、具体的には、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、9,10−ジメトキシアントリル基等を好ましく挙げることができる。
【0030】
1及びR2に更に導入しうる置換基としては、水素原子を除く一価の非金属原子団が挙げられる。該置換基基の好ましい例としては、ハロゲン原子(F、Br、Cl、I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミド基、エステル基、アシロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸アニオン基、又はスルホン酸アニオン基等が挙げられる。
【0031】
これらの置換基におけるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ステアリルオキシ基、メトキシエトキシ基、ポリ(エチレンオキシ)、ポリ(プロピレンオキシ)等の炭素数1〜40個、好ましくは炭素数1〜20個のものが挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜18個のものが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜24個のものが挙げられる。アミド基としては、アセトアミド基、プロピオン酸アミド基、ドデカン酸アミド基、パルチミン酸アミド基、ステアリン酸アミド基、安息香酸アミド基、ナフトイック酸アミド基等の炭素数2〜24個のものが挙げられる。アシロキシ基としては、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等の炭素数2〜20個のものが挙げられる。エステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ヘキシルエステル基、オクチルエステル基、ドデシルエステル基、ステアリルエステル基等の炭素数1〜24個のものが挙げられる。置換基は、上記置換基の2以上の組み合わせからなるものであってもよい。
【0032】
Mで表されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムが挙げられ、ナトリウム、カリウムがより好ましい。
【0033】
一般式(I)におけるRとしては、置換基を有してもよいアリール基であることがより好ましい。
【0034】
アニオン界面活性剤の他の好ましい態様としては、下記一般式(I−A)及び一般式(I−B)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
【化2】

【0036】
一般式(I−A)又は(I−B)中、R、Rは、それぞれ直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し;R、Rは、ぞれぞれ直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルキレン基を表し;p、qは、それぞれ0、1又は2を表し;X、Xは、それぞれ単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;r、sは、それぞれ1〜100の整数を表す。但し、r及びsが2以上の場合には、R又はRは2種類以上の基から選択されてもよい。Mはアルカリ金属を表す。
【0037】
Mで表されるアルカリ金属は、前記一般式(II)におけるMと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0038】
以下に、一般式(I)、(II)、(I−A)及び(I−B)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0039】
【化3】

【0040】
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
なお、上記具体例中のx、yは、各々エチレンオキシ鎖又はプロピレンオキシ鎖の繰り返し数を表し、1〜20の整数(それぞれ平均値)を表す。
【0048】
一般式(I)及び(II)で表される化合物としては、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、花王(株)製のペレックスNBL、日本乳化剤(株)製のニュ−コールB4SN、ニューコールB13SN、等が挙げられる。
【0049】
アニオン界面活性剤は、特定現像液中に、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
特定現像液がアニオン界面活性剤を含有する場合、特定現像液中におけるアニオン界面活性剤の含有量は、特定現像液の全質量中に1〜10質量%が好ましく、より好ましくは2〜8質量%である。アニオン界面活性剤の含有量が上記範囲内であれば、現像処理時における現像性及び感光性層成分の溶解性がより良好である。
【0051】
−ノニオン界面活性剤−
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンジグリセリン類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、等のノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0052】
ノニオン界面活性剤として特に好ましくは、下記式(1)で表されるノニオン芳香族エーテル系界面活性剤が挙げられる。
【0053】
X−Y−O−(A)n−(B)m−H (1)
一般式(1)中、Xは置換基を有していてもよい芳香族基を表し、Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、A及びBは互いに異なる基であって、−CH2CH2O−又は−CH2CH(CH3)O−のいずれかを表し、n、mはそれぞれ0又は1〜100の整数を表し、但しnとmは同時に0ではなく、またn若しくはmのいずれかが0である場合にはn及びmは1ではない。
【0054】
一般式(1)中、Xで表される芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素原子数1〜100の有機基が挙げられる。該有機基の例としては、後述する一般式(1−A)及び(1−B)の説明において記載する炭素原子数1〜100の有機基が全て挙げられる。
【0055】
なお、一般式(1)中に、A及びBが共に存在するときは、A及びBの配列は、交互であっても、各々ブロックを形成していても、ランダムであってもよい。
【0056】
一般式(1)で表される化合物として具体的には、下記一般式(1−A)及び(1−B)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
【化11】

【0058】
一般式(1−A)又は(1−B)中、R10、R20は、それぞれ水素原子又は炭素原子数1〜100の有機基を表し;t、uは、それぞれ1又は2を表し;Y、Yは、ぞれぞれ単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;v、wは、ぞれぞれ0又は1〜100の整数を表し;但しvとwは同時に0ではなく、またv又はwのいずれかが0である場合にはv及びwは1ではなく、v′、w′はそれぞれ0又は1〜100の整数を表し、但しv′とw′は同時に0ではなく、またv′又はw′のいずれかが0である場合にはv′及びw′は1ではない。
【0059】
一般式(1−A)において、tが2を表し、R10が炭素原子数1〜100の有機基であるとき、2つ存在するR10は同一でも異なっていてもよく、2つのR10が互いに結合して環を構成していてもよい。
一般式(1−B)において、uが2を表し、R20が炭素原子数1〜100の有機基であるとき、2つ存在するR20は同一でも異なっていてもよく、R20が互いに結合して環を構成していてもよい。
【0060】
10又はR20で表される、炭素原子数1〜100の有機基の具体例としては、飽和でも不飽和でよく直鎖でも分岐鎖でもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基など、その他に、アルコキシ基、アリーロキシ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、ポリオキシアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖が結合している上記の有機基などが挙げられる。上記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0061】
好ましいR10、R20としては、水素原子又は炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アルキルカルバモイル基、アシルオキシ基又はアシルアミノ基、繰り返し単位数5〜20程度のポリオキシアルキレン鎖、炭素原子数6〜20のアリール基、繰り返し単位数5〜20程度のポリオキシアルキレン鎖が結合しているアリール基などが挙げられる。
【0062】
一般式(1−A)及び(1−B)で表される化合物において、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位数は好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。ポリオキシプロピレン鎖の繰り返し単位数は好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5である。ポリオキシエチレン部とポリオキシプロピレン部の配列は、交互であっても、ランダムでもブロックであってもよい。
【0063】
一般式(1−A)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
一般式(1−B)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンメチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルナフチルエーテル、ホリオキシエチレンノニルナフチルエーテル等が挙げられる。
【0064】
以下に、一般式(1−A)又は(1−B)で表されるノニオン芳香族エーテル系活性剤の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
【化12】

【0066】
【化13】

【0067】
【化14】

【0068】
ノニオン界面活性剤は、特定現像液中に、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
ノニオン界面活性剤を用いる場合、特定現像液中におけるノニオン界面活性剤の含有量は、特定現像液の全質量中に1〜10質量%が好ましく、より好ましくは2〜8質量%である。含有量が上記範囲内において、現像処理時における現像性及び感光性層成分の溶解性が良好である。
【0070】
特定現像液には、上述した各種のアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤の他、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコン系等のアニオン又はノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。これら界面活性剤は2種以上併用することもできる。例えば、互いに異なる2種以上のアニオン界面活性剤の併用やアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤の併用が好ましい。これらの化合物は環境面への影響を考慮して適宜選択して使用することが好ましい。これらの界面活性剤を特定現像液に中に含有する場合の含有量としては、好ましくは特定現像液の全質量中0.01〜10質量%である。
【0071】
〔その他の成分〕
本発明の製造方法に適用される特定現像液には、上述したノニオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤の他、必要に応じて他の成分を含有させてもよい。特定現像液に含有させうる他の成分としては、例えば、水溶性高分子化合物、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩、等が挙げられる。
【0072】
<水溶性高分子化合物>
特定現像液には水溶性高分子化合物を含有させることができる。
水溶性高分子化合物としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)及びその変性体、プルラン、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0073】
大豆多糖類としては、従来知られているものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。
【0074】
変性澱粉としては、下記一般式(A)で示される澱粉が好ましい。一般式(A)で示される澱粉としては、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等のいずれの澱粉も使用できる。これらの澱粉の変性は、酸又は酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で行うことができる。
【0075】
【化15】

【0076】
一般式(A)中、エーテル化度(置換度)はグルコース単位当たり0.05〜1.2の範囲であり、n1は3〜30の整数を示し、m1は1〜3の整数を示す。
【0077】
水溶性高分子化合物の中でも、特に好ましいものとして、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0078】
水溶性高分子化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。水溶性高分子化合物の特定現像液中における含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0079】
なお、水溶性高分子化合物は、本発明における特定現像液に含有させうる他、該現像液による現像処理後に、任意に実施される処理(例えば、洗浄処理など)に適用される処理液に含有させて用いることもできる。
【0080】
<湿潤剤>
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。これらの湿潤剤は単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。一般に、湿潤剤は特定現像液の全質量中に0.1〜5質量%の量で使用される。
【0081】
<防腐剤>
防腐剤としては、フェノール又ははその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。
防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であればよい。細菌、カビ、酵母等の種類によっても異なるが、防腐剤の添加量は、使用時の特定現像液の全質量中0.01〜4質量%の範囲が好ましい。また、種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように、2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
【0082】
<キレート化合物>
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。これらキレート剤は、特定現像液組成中に安定に存在し、画像形成性を阻害しないものが選ばれる。キレート剤の添加量としては、使用時の特定現像液の全質量中に0.001〜1.0質量%が好適である。
【0083】
キレート化合物としては、市販品を用いてもよく、例えば、キレスト400((株)キレスト製)、ディクエスト2066(ソルーシアー・ジャパン(株)製)、等が挙げられる。
【0084】
<消泡剤>
消泡剤としては、一般的なシリコン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、界面活性剤ノニオン系のHLBの5以下等の化合物を使用することができる。シリコン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型及び可溶化等がいずれも使用できる。
消泡剤の含有量は、使用時の特定現像液の全質量中に0.001〜1.0質量%の範囲が好適であ
る。
【0085】
<有機酸>
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形で用いることもできる。有機酸の含有量は、特定現像液の全質量中に0.01〜0.5質量%の量が好ましい。
【0086】
<有機溶剤>
有機溶剤としては、エチレングリコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。有機溶剤の含有量は、特定現像液の全質量中に0.01〜1質量%の範囲であることが好ましい。
【0087】
<無機酸、無機塩>
無機酸及び無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。無機塩の含有量は特定現像液の全質量に基づいて0.01〜0.5質量%の量が好ましい。
【0088】
本発明において用いられる特定現像液は、必須成分であるノニオン及び/又アニオン界面活性剤、及び、必要に応じて用いられる上記の各成分を、水に溶解又は分散することによって調製することができる。使用時における特定現像液の固形分濃度は、好ましくは1〜20質量%である。また、特定現像液は、濃縮液を調製しておいて、使用時に水で希釈して用いることもできる。
【0089】
本発明において用いる特定現像液のpHは8〜13であり、画像ダメージの抑制と現像性の両立の観点からは、8.5〜12.8が好ましく、9〜12.5がより好ましい。
【0090】
特定現像液のpHの調整は、例えば、アルカリ剤(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)、又は緩衝剤(例えば、リン酸、クエン酸、マロン酸)などの添加により行うことができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に好ましいアルカリ剤は、pH8〜13に緩衝作用を発揮するアルカリ剤であり、特に炭酸塩と炭酸水素塩の併用が好ましく用いられる。
【0091】
特定現像液においてアルカリ剤を2種以上併用する場合であれば、その好適な組み合わせの態様としては、例えば、炭酸カリウムと炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム、の組み合わせなどが挙げられる。
【0092】
〔フォトマスク材料〕
本発明の製造方法に用いるフォトマスク材料について説明する。
本発明に用いられるフォトマスク材料は、透明基材上に、少なくとも遮光材料を含有し且つ紫外光ないし可視光で画像形成が可能な感光性層を有するものである。
【0093】
(透明基材)
フォトマスク材料における透明基材としては、石英、ソーダガラス、及び無アルカリガラス等のガラス板、或いは、ポリエチレンテレフタレートのような透明プラスティックフィルム、等を用いることができる。透明基材の厚さは、その用途によっても異なるが、一般に1mm〜7mmの範囲である。
【0094】
(感光性層)
フォトマスク材料が有する感光性層は、少なくとも遮光材料を含有し且つ紫外光ないし可視光で画像形成が可能な層である。即ち、感光性層は、近紫外光ないし可視光による像様の露光後、本発明における特定現像液を用いて現像処理することにより、画像形成が可能な層である。
【0095】
感光性層は、環境問題上アルカリ現像型が好ましく、露光部分が硬化してアルカリ現像液に不溶化するネガ型の層、露光部分がアルカリ現像液に可溶性であるポジ型の層のいずれでもよい。
【0096】
ネガ型の感光性層の場合であれば、少なくとも、前記遮光材料を含有し、且つ近紫外光ないし可視光の露光により重合して硬化する感光性組成物から形成される層が好ましい。該感光性組成物としては、例えば、少なくとも、遮光材料、アルカリ可溶性の高分子バインダー、エチレン性不飽和結合含有化合物、及び、光重合開始系を含有する光重合性組成物が挙げられる。
以下、感光性層について、上記光重合性組成物を用いて形成する例により説明をするが、本発明における感光性層は、これに限定されるものではない。
【0097】
<遮光材料>
感光性層は遮光材料を含有する。
本発明における遮光材料とは、250nm〜400nmの光を吸収し、好ましくは塗膜形成時のオプティカルデンシティー(O.D.)が2.5以上になる光吸収剤を指す。
本発明における遮光材料とは、フォトマスクが適用される活性光線の波長の光を反射、吸収することにより透過させない機能を有する材料であり、具体的には、マスクとして使用する際の露光光源(水銀灯、メタルハライド灯キセノン灯等)が発する波長域200〜450nm、好ましくは250〜400nm程度、の光を実質遮光できるものであり、塗膜形成時のオプティカルデンシティー(O.D.)が2.5以上であることを要し、好ましくは、3.0以上であるものを指す。
【0098】
本発明における遮光材料は、フォトマスクの使用目的等に応じて適宜選択すればよい。
遮光材料として具体的には、金属粒子(金属化合物粒子、複合粒子、コア・シェル粒子などを含む)、顔料、その他の粒子、フラーレンなどが好適に用いられる。
本発明に用いうる遮光材料としては、黒色材料であることが好ましく、該黒色材料としては、黒色顔料及び金属微粒子の少なくとも1種であることが好ましい。
以下、本発明に適用しうる遮光材料について詳細に説明する。
【0099】
−金属粒子−
遮光材料として金属粒子を用いる場合、該金属粒子は、1種の金属からなるものであっても、2種以上の金属を組み合わせたものであってもよく、合金であってもよい。また、金属粒子は、金属と金属化合物との複合微粒子であってもよい。遮蔽能力、耐光性、耐熱性の観点からは、遮光材料として、金属化合物を含む粒子を好適に用いることができる。
【0100】
金属粒子に含まれる好ましい金属の例としては、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、カルシウム、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。更に好ましい金属は、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、カルシウム、イリジウム、及びこれらの合金、より好ましい金属は、銅、銀、金、白金、パラジウム、錫、カルシウム、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましい金属は、銅、銀、金、白金、錫、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種である。とりわけ銀が粒子が好ましく(銀としてはコロイド銀が好ましい)、銀錫合金部を有する粒子も好適である。銀錫合金部を有する粒子については後述する。
【0101】
金属化合物とは、前記金属と金属以外の他の元素との化合物である。金属と他の元素との化合物としては、金属の酸化物、硫化物、硫酸塩、炭酸塩などが挙げられ、金属化合物粒子としてはこれらの粒子が好適である。中でも、色調や微粒子形成のし易さからは、硫化物の粒子が好ましい。
金属化合物の例としては、酸化銅(II)、硫化鉄、硫化銀、硫化銅(II)、チタンブラックなどがあるが、色調、微粒子形成のしやすさや安定性の観点から、硫化銀が特に好ましい。
【0102】
複合粒子は、金属と金属化合物とが結合して1つの粒子になったものをいう。例えば、粒子の内部と表面で組成の異なるもの、2種の粒子が合一したもの等を挙げることができる。また、金属化合物と金属とはそれぞれ1種でも2種以上であってもよい。
金属化合物と金属との複合微粒子の具体例としては、銀と硫化銀の複合微粒子、銀と酸化銅(II)の複合微粒子などが好適に挙げられる。
【0103】
遮光材料として複合粒子が用いられる場合、該複合粒子としては、コア・シェル構造を有する複合粒子(コアシェル粒子)であってもよい。コア・シェル型の複合粒子(コアシェル粒子)とは、コア材料の表面をシェル材料でコートしたものである。
コア・シェル型の複合粒子を構成するシェル材料としては、例えば、Si、Ge、AlSb、InP、Ga、As、GaP、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、PbS、PbSe、PbTe、Se、Te、CuCl、CuBr、CuI、TlCl、TlBr、TlIや、これらの固溶体及びこれらを90mol%以上含む固溶体から選ばれる少なくとも1種の半導体、又は銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、カルシウム、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種の金属が挙げられる。
シェル材料は、反射率を低下させる目的で屈折率の調整剤としても好適に用いられる。
好ましいコア材料としては、銅、銀、金、パラジウム、ニッケル、錫、ビスマス、アンモチン、鉛、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0104】
コア・シェル構造を有する複合粒子の作製方法には、特に制限はなく、代表的な方法としては、以下の(1)及び(2)が挙げられる。
(1)公知の方法で作製した金属微粒子の表面に、酸化、硫化などにより、金属化合物のシェルを形成する方法であり、例えば、金属微粒子を水などの分散媒に分散させて、硫化ナトリウムや硫化アンモニウムなどの硫化物を添加する方法である。この方法により粒子の表面が硫化されてコア・シェル粒子が形成できる。
この場合、用いる金属粒子は、気相法、液相法などの公知の方法で作製することができる。金属粒子の作製方法については、例えば、「超微粒子の技術と応用における最新動向II」(住ベテクノリサーチ(株)、2002年発行)に記載されている。
(2)金属粒子を作製する過程で連続的に表面に金属化合物のシェルを形成する方法であり、例えば、金属塩溶液に還元剤を添加して、金属イオンの一部を還元して金属微粒子を作製し、次いで硫化物を添加して、作製した金属微粒子の周囲に金属硫化物を形成する方法である。
【0105】
金属粒子は、市販のものを用いることができるほか、金属イオンの化学的還元法、無電解メッキ法、金属の蒸発法等により調製することが可能である。
【0106】
例えば、棒状の銀微粒子は、球形銀微粒子を種粒子としてその後、銀塩を更に添加し、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)等の界面活性剤の存在下でアスコルビン酸など比較的還元力の弱い還元剤を用いることにより、銀棒やワイヤーが得られる。これは、Advanced Materials 2002,14,80−82に記載がある。また、同様の記載が、Materials Chemistry and Physics 2004,84,197−204、Advanced Functional Materials 2004,14,183−189になされている。
また、電気分解を用いた方法として、Materials Letters 2001,49,91−95やマイクロ波を照射することにより銀棒を生成する方法がJournal of Materials Research 2004,19,469−473に記載されている。逆ミセルと超音波の併用した例として、Journal of Physical Chemistry B 2003,107,3679−3683が挙げられる。
金粒子に関しても同様に、Journal of Physical Chemistry B 1999,103、3073−3077及びLangmuir1999,15,701−709、Journal of American Chemical Society 2002,124,14316−14317に記載されている。
棒状の粒子の形成方法は、前記記載の方法を改良(添加量調整、pH制御)しても調製できる。
【0107】
銀錫合金部を有する粒子としては、銀錫合金からなるもの、銀錫合金部分とその他の金属部分からなるもの、及び銀錫合金部分と他の合金部分からなるものを含む。
銀錫合金部を有する粒子において、少なくとも一部が銀錫合金で構成されていることは、例えば、(株)日立製作所製のHD−2300とノーラン(Noran)社製のEDS(エネルギー分散型X線分析装置)とを用いて、加速電圧200kVによる各々の粒子の中心15nm□エリアのスペクトル測定により確認することができる。
銀錫合金部を有する粒子は、黒濃度が高く、少量で或いは薄膜で優れた遮光性能を発現し得ると共に、高い熱安定性を有するので、黒濃度を損なうことなく高温(例えば200度以上)での熱処理が可能であり、安定的に高度の遮光性を確保することができる。
【0108】
−顔料、その他の粒子−
遮光材料としては、顔料、その他の粒子を用いることができる。
顔料を用いたときには、より黒色に近い色相に構成することができる。遮光材料として顔料を用いる場合、顔料を単独で用いてもよいし、上記の金属粒子と共に用いてもよい。
【0109】
顔料、その他の粒子としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、黒鉛などの黒色材料からなる粒子が挙げられる。
【0110】
黒色顔料としては、例えば、ファット・ブラックHB(C.I.26150)、モノライト・ファースト・ブラックB(C.I.ピグメント・ブラック1)、及びカーボンブラック等が挙げられる。
カーボンブラックの例としては、Pigment Black(ピグメント・ブラック)7(カーボンブラック C.I.No.77266)が好ましい。市販品として、三菱カーボンブラック MA100(三菱化学(株)製)、三菱カーボンブラック #5(三菱化学(株)製)が挙げられる。
チタンブラックの例としては、TiO、TiO、TiNやこれらの混合物が好ましい。市販品として、三菱マテリアルズ(株)製の(商品名)12Sや13Mが挙げられる。
【0111】
本発明においては、上記以外の公知の顔料を遮光材料として用いることもできる。顔料は一般に有機顔料と無機顔料とに大別されるが、有機顔料が好ましい。好適に使用される顔料の例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料を挙げることができる。そのような有機顔料の色相は、例えば、黄色顔料、オレンジ顔料、赤色顔料、バイオレット顔料、青色顔料、緑色顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等が挙げられる。
【0112】
以下、本発明において使用可能な他の顔料等の粒子を以下に列挙する。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
具体的な例としては、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。
【0113】
また、「顔料便覧、日本顔料技術協会編、誠文堂新光社、1989」、「COLOUR
INDEX、THE SOCIETY OF DYES & COLOURIST、THIRD EDITION、1987」に記載の顔料を参照して、適宜用いることもできる。
【0114】
顔料を金属系粒子と共に用いる場合には、金属系粒子の色相と補色関係にあるものを用いることが望ましい。また、顔料は1種でも2種以上を組み合せて用いてもよい。好ましい顔料の組合わせとしては、赤色系及び青色系の互いに補色関係にある顔料混合物と黄色系及び紫色系の互いに補色関係にある顔料混合物との組合せや、前記の混合物に更に黒色の顔料を加えた組み合わせや、青色系と紫色系と黒色系との顔料の組合せを挙げることができる。
【0115】
本発明における遮光材料として特に好ましくは、カーボンブラックである。
遮光材料としてカーボンブラックを用いる場合、感光性層は、カーボンブラックのみを含有してもよいし、カーボンブラックと、他の色材(例えば、他の着色剤)を併用してもよい。カーボンブラックと他の色材を併用する場合には、感光性層に含有される全遮光材料中50質量%以上がカーボンブラックであると、感光性層を色濃度を高濃度にする点で好ましい。
【0116】
黒色材料等の遮光材料は、1μm以下の平均粒径を有するものが好ましく、10nm以上50nm以下のものがより好ましい。
【0117】
なお、黒色顔料等の顔料を用いる場合は、感光性層の形成に用いる感光性組成物中において、分散剤により分散されていることが好ましい。
【0118】
感光性組成物固形分中の遮光材料の含有量は、フォトマスクの濃度やフォトマスクを作製する際の感度、解像性等を考慮して決められ、その種類によっても異なるが、10〜70質量%が好ましく、より好ましくは30〜50質量%である。
【0119】
<高分子バインダー>
感光性層は、高分子バインダーを含有することが好ましい。高分子バインダーとしては、高分子化合物であれば特に限定されず利用することができるが、現像性の観点から、アルカリ可溶性の高分子化合物であることが好ましい。このような高分子化合物としては、側鎖にアルカリ可溶性基を有する高分子化合物が好ましい。アルカリ可溶性基としては、酸基又はその塩が挙げられる。可溶性基を有する高分子化合物としては、特に、カルボン酸基を有する高分子化合物が好ましく用いられる。また、該高分子バインダーとして好ましくは、側鎖に架橋性基を有する高分子バインダーである。
【0120】
ここで架橋性基とは、フォトマスク材料を露光した際に、感光性層中で起こるラジカル重合反応の過程で高分子バインダーを架橋させる基を意味する。架橋性基としては、このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基、オニウム塩構造等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましく、下記一般式(a1)〜(a3)で表される官能基が特に好ましい。
【0121】
【化16】

【0122】
上記一般式(a1)において、Rla〜R3aはそれぞれ独立に、1価の有機基を表す。R1aとしては、好ましくは、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。また、R2a、R3aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0123】
Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12a)−を表し、R12aは、水素原子、又は1価の有機基を表す。ここで、R12aは、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0124】
ここで、導入し得る置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0125】
【化17】

【0126】
一般式(a2)において、R4a〜R8aは、それぞれ独立に1価の有機基を表す。R4a〜R8aは、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。導入し得る置換基としては、一般式(a1)と同様のものが例示される。
【0127】
Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12a)−を表す。R12aは、一般式(a1)のR12aの場合と同義であり、好ましい例も同様である。
【0128】
【化18】

【0129】
一般式(a3)において、R9aとしては、好ましくは、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。R10a、R11aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0130】
ここで、導入し得る置換基としては、一般式(a1)と同様のものが例示される。また、Zは、酸素原子、硫黄原子、−N(R13a)−、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表す。R13aとしては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0131】
側鎖に上記架橋性基を有する高分子バインダーは、感光性層の皮膜形成剤として機能するだけでなく、現像液、好ましくはアルカリ現像液に溶解する必要があるため、アルカリ水に可溶性又は膨潤性である有機高分子重合体であることが好ましい。そのため、高分子バインダーは、側鎖に架橋性基の他にアルカリ可溶性基、例えばカルボキシル基などを有することが好ましい。
【0132】
高分子バインダーとしては、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているもの、すなわち、側鎖にアリル基、(メタ)アクリロイル基などの架橋性基を有する(メタ)アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が挙げられる。
また、高分子バインダーとしては、同様に側鎖に上記架橋性基とカルボキシル基を有する、ポリウレタン、酸性セルロース誘導体及び水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0133】
上記の中でも、感光性層が含有する高分子バインダーとしては、側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂、及び、側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。
【0134】
本発明で特に好ましく用いられる側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂は、例えば、(i)ジイソシアネート化合物、(ii)少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物、(iii)架橋性基を有するジイソシアネート化合物及び必要であれば(iv)カルボキシル基を有さないジオール化合物、を重付加反応させることにより得ることができる。
【0135】
高分子バインダーとしては、ポリウレタン合成時に側鎖に架橋性基を導入して得られる上記のポリウレタン樹脂のほかに、特開2003−270775号公報に記載されるようなカルボキシル基を有するポリウレタンに高分子反応で架橋性基を導入して得られるポリウレタン樹脂を用いることもできる。このようなポリウレタン樹脂の具体例は、特開2007−57597号公報の段落番号0050〜0137に挙げられており、同公報に記載のポリウレタン樹脂は、本発明において好ましく用いられる。
【0136】
また、本発明においては、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開2001−109139号、特開2001−117217号、特開2001−312062号、特開2003−131397号の各公報に記載のポリウレタン樹脂も好ましく用いられる。
【0137】
次に、側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル樹脂について、詳しく説明する。
本発明で用いられる側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル樹脂は、現像性の観点から、下記一般式(i)で表される繰り返し単位を有する樹脂が好ましい。
以下、一般式(i)で表される繰り返し単位を有する樹脂を、適宜、特定(メタ)アクリル樹脂と称し、詳細に説明する。
【0138】
【化19】

【0139】
一般式(i)中、R21は水素原子又はメチル基を表し、R22は、単結合、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される1以上の原子から構成される連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR23は−を表し、R23はは水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。n2は1〜5の整数を表す。
【0140】
一般式(i)におけるR21は、水素原子又はメチル基を表し、特にメチル基が好ましい。
【0141】
一般式(i)においてR22で表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1以上の原子から構成されるもので、その置換基を除く原子数が2〜82であることが好ましい。具体的には、R22で表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30であることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることが更に好ましく、5〜10であることが最も好ましい。なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、一般式(i)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
【0142】
また、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリレン、置換アリレンなどが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有していてもよい。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造もまた好ましいものとして例示することができる。
【0143】
この中でも、一般式(i)におけるR22で表される連結基は、炭素原子数3から30までの脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。より具体的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。また、R22は、置換基を含めて炭素数3から30であることが好ましい。
【0144】
脂肪族環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。耐刷性の点で、R22は縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環集合(複数の環が結合又は連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
【0145】
22で表される連結基としては、特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
【0146】
22で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(−Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPOH2)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルボリル基(−B(alkyl))、ジアリールボリル基(−B(aryl))、アルキルアリールボリル基(−B(alkyl)(aryl))、ジヒドロキシボリル基(−B(OH))及びその共役塩基基、アルキルヒドロキシボリル基(−B(alkyl)(OH))及びその共役塩基基、アリールヒドロキシボリル基(−B(aryl)(OH))及びその共役塩基基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0147】
本発明に用いるフォトマスク材料では、感光性層の設計にもよるが、水素結合可能な水素原子を有する置換基や、特に、カルボン酸よりも酸解離定数(pKa)が小さい酸性を有する置換基は、耐刷性を下げる傾向にあるので好ましくない。一方、ハロゲン原子や、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基などの疎水性置換基は、耐刷を向上する傾向にあるのでより好ましく、特に、環状構造がシクロペンタンやシクロヘキサン等の6員環以下の単環脂肪族炭化水素である場合には、このような疎水性の置換基を有していることが好ましい。これら置換基は可能であるならば、置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基は更に置換されていてもよい。
【0148】
一般式(i)におけるAが−NR23−である場合のR23は、水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。このR23で表される炭素数1〜10までの一価の炭化水素
基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。R23が有してもよ
い置換基としては、R22が導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、R23の炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
【0149】
一般式(i)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
【0150】
一般式(i)におけるn2は、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
【0151】
以下に、一般式(i)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0152】
【化20】

【0153】
【化21】

【0154】
本発明における特定(メタ)アクリル樹脂は、一般式(i)で表される繰り返し単位、側鎖に架橋性基を有する繰り返し単位、及び、必要に応じて、他の共重合成分と組み合わされた共重合体であることが好ましい。一般式(i)で表される繰り返し単位は、特定(メタ)アクリル樹脂中に1種類だけ含有してもよいし、2種類以上含有していてもよい。共重合体における一般式(i)で表される繰り返し単位の総含有量は、その構造や、光重合性組成物の設計等によって適宜決められるが、好ましくは樹脂成分の総モル量に対し、1〜99モル%、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜20モル%の範囲で含有される。
【0155】
側鎖に架橋性基であるエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又は−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0156】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2 n CR1 =CR2 3 、−(CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 n NH−CO−O−CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 n −O−CO−CR1 =CR2 3 及び−(CH2 CH2 O)2 −X(式中、R1 〜R3 はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1 とR2 又はR3 とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 (特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2 CH2 O−CH2 CH=CH2 、−CH2 C(CH3 )=CH2 、−CH2 CH=CH−C6 5 、−CH2 CH2 OCOCH=CH−C6 5 、−CH2 CH2 −NHCOO−CH2 CH=CH2 及び−CH2 CH2 O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 、−CH2 CH2 −Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2 CH2 −OCO−CH=CH2 が挙げられる。
【0157】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。又は、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0158】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol〜10.0mmol、より好ましくは1.0mmol〜7.0mmol、最も好ましくは2.0mmol〜5.5mmolである。この範囲で、より良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
【0159】
その他の共重合成分としては、ラジカル重合可能なモノマーであれば従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には、「高分子データハンドブック−基礎編−(高分子学会編、培風館、1986)」記載のモノマー類が挙げられる。このような共重合成分は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0160】
感光性層中での架橋性基を有する高分子バインダーの量は、適宜決めることができるが、感光性層中の不揮発性成分の総質量に対し、通常、10〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲である。
また、光重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物と架橋性基を有する高分子バインダーは、質量比で1/9〜9/1の範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は2/8〜8/2であり、更に好ましくは3/7〜7/3である。
【0161】
高分子バインダーとして、架橋性基を有する高分子バインダーとともに、他の樹脂を1種以上併用してもよい。
併用される樹脂は、架橋性基を有する高分子バインダーの質量に対し、一般的には50質量%以下、好ましくは30質量%以下で用いられる。
【0162】
本発明における高分子バインダーの分子量は、画像形成性や耐刷性の観点から適宜決定される。好ましい重量平均分子量としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。
【0163】
本発明おいて用いられる高分子バインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、架橋性基をもたない他のバインダーポリマーを1種以上併用して、混合物として用いてもよい。併用できるバインダーポリマーとしては、従来公知のアルカリ可溶性又は膨潤性バインダーを制限なく使用でき、具体的には、本業界においてよく使用されるアクリル主鎖バインダーや、ウレタンバインダー等が好ましく用いられる。
【0164】
感光性層中での高分子バインダー及び併用してもよいバインダーポリマーの合計量は、適宜決めることができるが、感光性層中の不揮発性成分の総質量に対し、通常、10〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲である。
【0165】
以上の他に、感光層には、その強度を改良するために、現像性等に悪影響を与えない範囲でエポキシ樹脂、メラミン樹脂等のアルカリ不溶のポリマーを添加することができる。当該ポリマーの感光性層固形分中における固形分含有量は、0.2〜50質量%が好ましく、より好ましくは1〜30重量%である。この範囲において、硬化膜強度の向上効果と現像性がより良好になる。
【0166】
<エチレン性不飽和結合含有化合物>
エチレン性不飽和結合含有化合物とは、エチレン性不飽和結合を少なくとも一つ有する化合物であり、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた時、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋、硬化に寄与する。
【0167】
エチレン性不飽和結合含有化合物は、例えば、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から任意に選択することができる。モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
【0168】
エチレン性不飽和結合含有化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エ−テル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0169】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス[p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ジメチルメタン、ビス−[p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル]ジメチルメタン等がある。
【0170】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,5−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0171】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。さらに、前述のエステルモノマーの混合物も挙げることができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレシビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0172】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(m)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加せしめた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0173】
CH2=C(R)COOCH2CH(R’)OH (m)
(ただし、R及びR’は、それぞれ独立にHあるいはCH3を示す。)
【0174】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。さらに日本接着協会誌Vo1.20,No.7, 300〜308ぺ−ジ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0175】
なお、これらエチレン性不飽和結合含有化合物の含有量は、感光性層の全質量に対し通常5〜80質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲である。
【0176】
<光重合開始系>
フォトマスク材料の感光性層に含有させる光重合開始系(剤)としては、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の光開始剤、あるいは、増感色素と開始剤化合物との併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができる。以下に、本発明に好適に適用される光開始系について詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0177】
−開始剤化合物−
本発明に適用しうる開始剤化合物について説明する。
本発明における開始剤化合物とは、エネルギーの付与により、併存する付加重合性化合物の重合(架橋)反応を開始、進行させる開始種となるラジカル、酸又は塩基を生成する化合物を指す。以下、このようにして生じたラジカル、酸、塩基を単に活性種と呼ぶ。
増感色素と開始剤化合物とを併用する一つの態様として、これらを適切な化学的方法(増感色素と、開始剤化合物との化学結合による連結等)によって単一の化合物として利用することも可能である。このような技術思想は、例えば、特許第2720195号公報に開示されている。
【0178】
通常これらの開始剤化合物の多くは、次の、(1)から(3)の初期化学プロセスを経て活性種を生成するものと考えられる。すなわち、(1)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物への電子移動反応に基づく、開始剤化合物の還元的分解、(2)開始剤化合物から増感色素の電子励起状態への電子移動に基づく、開始剤化合物の酸化的分解、(3)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物へのエネルギー移動に基づく、開始剤化合物の電子励起状態からの分解、である。個々の、開始剤化合物が上記(1)から(3)のどのタイプに属するかに関しては、曖昧な場合も多いが、本発明における、特定増感色素の大きな特徴は、これらの何れのタイプの開始剤化合物と組み合わせても非常に高い増感効果を示すことにある。
【0179】
具体的な開始剤化合物は、当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue, 93, 435 (1993)やR.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A:Chemistry,73.81 (1993); J.P.Faussier, "Photoinitiated Polymerization-Theory and Applications":Rapra Review vol.9, Report, Rapra Technology(1998); M.Tsunooka et al., Prog.Polym.Sci., 21, 1 (1996)等に多く記載されている。また、前記(1)、(2)の機能を有する他の化合物群としては、さらに、F.D.Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990); G.G.Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993); H.B.Shuster et al, JACS, 112, 6329 (1990); I.D.F.Eaton et al, JACS, 102, 3298 (1980)等に記載されているような、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0180】
以下、好ましい開始剤化合物の具体例に関し、(a)還元されて結合解裂を起こし活性種を生成するもの、(b)酸化されて結合解裂を起こし活性種を生成しうるもの、及び(c)その他のもの、に分類して説明するが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては通説がない場合も多く、本発明はこれらの反応機構に関する記述に制限を受けるものではない。
【0181】
(a)還元されて結合解裂を起こし活性種を生成するもの
炭素−ハロゲン結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性種を発生すると考えられる(例えば、Polymer Preprints, Jpn., 41 (3) 542 (1992)に記載れている)。活性種としては、ラジカル、酸を発生しうる。具体的には、例えば、ハロメチル−s−トリアジン類の他、M.P.Hutt, E.F.Elslager及びL.M.Merbel著, Journal of Heterocyclic Chemistry, 7, 511 (1970)に記載される合成方法により当業者が容易に合成しうるハロメチルオキサジアゾール類、また、ドイツ特許2641100号、同3333450号、同3021590号、同3021599号の各明細書に記載される化合物等が好適に使用できる。
【0182】
窒素−窒素結合もしくは、含窒素ヘテロ環−含窒素ヘテロ環結合を有する化合物:還元的に結合解裂を起こす(例えば、J.Pys.Chem., 96, 207 (1992)に記載されている)。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。生成する活性種はロフィンラジカルであり、必要に応じ水素供与体との併用で、ラジカル連鎖反応を開始するほか、ロフィンラジカルによる酸化反応を用いた画像形成も知られる(J.Imaging Sci., 30, 215 (1986)に記載される)。
【0183】
酸素−酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる(例えば、Polym.Adv.Technol., 1, 287 (1990)に記載されている)。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。活性種としてラジカルを 発生しうる。
【0184】
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や、酸素−窒素結合が解裂し、活性種を発生すると考えられる(例えば、J.Photopolym.Sci.Technol., 3, 149 (1990)に記載されている)。具体的には例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有しても良いベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号,同52−14279号各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0185】
活性エステル類:スルホン酸やカルボン酸のニトロベンジルエステル類、スルホン酸やカルボン酸とN-ヒドロキシ化合物(N−ヒドロキシフタルイミドやオキシム等)とのエステル類、ピロガロールのスルホン酸エステル類、ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸
エステル類等は還元的に分解しうる。活性種としては、ラジカル、酸、を発生しうる。具体的な、スルホン酸エステル類の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、同0388343号、米国特許3901710号、同4181531号の各明細書、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号の各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、同0101122号、米国特許4618564号、同4371605号、同4431774号の各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特開平4−365048号の各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号,特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられ、さらに、例えば下記に示すような化合物が挙げられる。(式中、Arは置換されてもよい芳香族基又は脂肪族基を表す。)
【0186】
【化22】

【0187】
フェロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的には例えば、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報に開示されている。
【0188】
また、活性種として塩基を生成することも可能であり、例えば下記のような化合物群が知られる。式中Rは置換されてもよい脂肪族基又は芳香族基を表す。
【0189】
【化23】

【0190】
ジスルホン類:還元的にS−S結合解裂を起こし酸を発生しうる。例えば特開昭61−166544号公報に記載されるようなジフェニルジスルホン類が知られる。
【0191】
(b)酸化されて結合解裂を起こし活性種を生成するもの
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる(例えば、J.Am.Chem.Soc., 112, 6329 (1990)に記載される)。具体的には例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
【0192】
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる(例えば、J.Am.Chem.Soc., 116, 4211 (1994)に記載される)。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等が挙げられる。
【0193】
含硫黄、含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成しうる。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られる。
【0194】
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化により、カルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成しうる。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらと、ヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類を挙げることができる。
【0195】
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的は、アリールスルフィン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0196】
(c)その他
増感機構は明確ではないが、開始剤化合物として機能しうるものも多い。チタノセン、フェロセン等の有機金属化合物や芳香族ケトン、アシルフォスフィン、ビスアシルフォス
フィン類等が挙げられ、活性種としては、ラジカル、酸を発生しうる。
【0197】
以下、本発明に使用しうる開始剤化合物の内、感度や安定性に特に優れる好ましい化合物群を具体的に例示する。
【0198】
(1)ハロメチルトリアジン類
下記式[II]で表される化合物が挙げられる。特にラジカル発生、酸発生能にすぐれる。
【0199】
【化24】

【0200】
式[II]中、Xはハロゲン原子を表す。Y1は−CX'3、−NH2、−NHR1'、−NR1'2、−OR1'を表す。ここでR1'はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。X'はハロゲン原子を表す。R1は−CX3、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基を表す。
【0201】
このような化合物の具体例としては、例えば、若林ら著、Bull. Chem. Soc. Japan, 42,2924(1969)記載の化合物、例えば、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2',4'−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許第1388492号明細書記載の化合物、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号公報記載の化合物、例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許第3337024 号明細書記載の化合物、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0202】
【化25】

【0203】
【化26】

【0204】
また、F. C. Schaefer等による J. Org. Chem.,29,1527(1964)記載の化合物、例えば2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。
【0205】
さらに特開昭62−58241号公報記載の化合物、例えば、下記の化合物を挙げることができる。
【0206】
【化27】

【0207】
更に特開平5−281728号公報記載の化合物、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0208】
【化28】

【0209】
(2)チタノセン類
開始剤化合物として特に好適に用いられる、チタノセン化合物は、前記した増感色素との共存下で光照射した場合、活性種を発生し得るチタノセン化合物であればいずれであってもよく、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41483号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−291号、特開平3−27393号、特開平3−12403号、特開平6−41170号の各公報に記載されている公知の化合物を適宜に選択して用いることができる。
【0210】
さらに具体的には、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフエニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフエニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフエニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフエニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフエニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)フェニル)チタニウム等を挙げることができる。
【0211】
(3)ボレート塩化合物
下記式[III]で表されるボレート塩類はラジカル発生能に優れる。
【0212】
【化29】

【0213】
式[III]中、R51、R52、R53及びR54は互いに同一でも異なっていてもよく、各々置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、又は置換もしくは無置換の複素環基を示し、R51、R52、R53及びR54はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R51、R52、R53及びR54のうち、少なくとも1つは置換又は無置換のアルキル基である。Z+はアルカリ金属カチオン又は第4級アンモニウムカチオンを示す。
【0214】
上記R51〜R54のアルキル基としては、直鎖、分枝、環状のものが含まれ、炭素原子数1〜18のものが好ましい。具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。また置換アルキル基としては、上記のようなアルキル基に、ハロゲン原子(例えば−Cl、−Brなど)、シアノ基、ニトロ基、アリール基(好ましくはフェニル基)、ヒドロキシ基、下記の基、
【0215】
【化30】

【0216】
(ここでR55、R56は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す。)、−COOR57(ここでR57は水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す。)、−COOR58又は−OR59(ここでR58は炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す。)を置換基として有するものが含まれる。
【0217】
上記R51〜R54のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの1〜3環のアリール基が含まれ、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に前述の置換アルキル基の置換基、又は炭素数1〜14のアルキル基を有するものが含まれる。
【0218】
上記R51〜R54のアルケニル基としては、炭素数2〜18の直鎖、分枝、環状のものが含まれ、置換アルケニル基の置換基としては、前記の置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。
【0219】
上記R51〜R54のアルキニル基としては、炭素数2〜28の直鎖又は分枝のものが含まれ、置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。
【0220】
また、上記R51〜R54の複素環基としてはN、S及びOの少なくとも1つを含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられ、この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。さらに置換基として前述の置換アリール基の置換基として挙げたものを有していてもよい。
【0221】
式[III]で示される化合物例としては具体的には米国特許第3567453号、同4343891号、ヨーロッパ特許第109772号、同109773号の各明細書に記載されている化合物及び以下に示すものが挙げられる。
【0222】
【化31】

【0223】
(4)ヘキサアリールビイミダゾール類
安定性に優れ、高感度なラジカル発生が可能である。具体的には、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2'−ビス(o,o'−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−メチルフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0224】
(5)オニウム塩化合物
周期律表の15(5B)、16(6B)、17(7B)族元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Iのオニウム化合物は感度にすぐれた開始剤化合物である、特にヨードニウム塩やスルホニウム塩、とりわけ、ジアリールヨードニウム、トリアリールスルホニウム塩化合物は感度と保存安定性の両方の観点で極めて優れている。酸、及び/又はラジカルの発生が可能であり、これらは目的に応じて、使用条件を適宜選択することで使い分けることができる。具体的には以下の化合物が挙げられる。
【0225】
【化32】

【0226】
【化33】

【0227】
【化34】

【0228】
【化35】

【0229】
(6)有機過酸化物
有機過酸化物型の開始剤化合物を用い場合、活性種としてラジカルの発生を非常に高感度で行うことができる。
【0230】
本発明に使用しうる有機過酸化物としては分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、アセチルパーオ
キサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシオクタノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチル過酸化マレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
【0231】
これらの中で、3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
開始剤化合物の好ましい例としては、チタノセン化合物、トリアジン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物が挙げられ、特に好ましい開始剤化合物としては、ヘキサアリールビイミダゾール化合物が挙げられる。
【0232】
以上述べた開始剤化合物に関しても、先の特定増感色素と同様、さらに、感光性層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、特定増感色素や、付加重合性不飽和化合物その他の開始剤化合物パートとの結合、親水性部位の導入、相溶性向上、結晶析出抑制のための置換基導入、密着性を向上させる置換基導入、ポリマー化等の方法が利用できる。
【0233】
これらの開始剤化合物の使用法に関しても、先述の増感色素同様、感材の性能設計により適宜、任意に設定できる。例えば、2種以上併用することで、感光性層への相溶性を高めることができる。
【0234】
感光性層における開始剤化合物の総含有量は、感光性層を構成する全固形分中、0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。
【0235】
−好適な増感色素−
本発明に適用しうる増感色素の好適な態様の一つは、下記一般式(B)で表される増感色素(以下、適宜、「特定増感色素」と称する。)である。
【0236】
【化36】

【0237】
一般式(B)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。Xは−N(R)を表す。R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、Rは、R、R、R又はRと脂肪族性又は芳香族性の環を形成するために結合することができる。Zは隣接する原子と共同して、酸性核を形成するのに必要な2価の非金属原子団を表す。
【0238】
特定増感色素の特徴の1つは、350nmから450nm波長領域に特に優れた吸収特性を有することにある。更に、特定増感色素は、感光性組成物中に含有される種々の開始剤化合物の分解を効率良く引き起こし、非常に高い感光性を示す。
【0239】
一般に、増感色素/開始剤化合物からなる光開始系の増感機構は(a)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物への電子移動反応に基づく、開始剤化合物の還元的分解、(b)開始剤化合物から増感色素の電子励起状態への電子移動に基づく、開始剤化合物の酸化的分解、(c)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物へのエネルギー移動に基づく、開始剤化合物の電子励起状態からの分解、といった経路が知られるが、特定増感色素は、これら何れのタイプの増感反応をも優れた効率で引き起こすものである。
【0240】
本発明者らは、本発明のフォトマスク材料が発揮する高感度及び優れた保存安定性は、感光性層が特定増感色素を必須成分として含有することに依拠するものであることを見出した。その作用機構は明らかではないが、以下のように推測される。
まず、特定増感色素が高感度化に寄与する要因としては、特定増感色素は、高強度の発光(ケイ光及び/又はリン光)スペクトルを示すことから、一つの可能性として、特定増感色素は励起状態の寿命が比較的長いため、開始剤化合物との反応の効率化に作用していることが推測される。その他の可能性としては、特定増感色素の分子構造が、増感反応初期過程(電子移動等)の効率化や、さらに、開始剤化合物分解にいたる後続反応の効率化に寄与している可能性もある。
次に、特定増感色素が保存安定性の向上に寄与する要因としては、特定増感色素は、自然経時条件下における色素凝集、会合等が少ないことから、増感効率の低下が抑制されるものであることが影響しているものと推測される。増感色素は、光開始反応において重要な役割を果たしており、感光性組成物中での凝集又は会合は、露光によるラジカル発生量の減少(感度減少)、即ち保存安定性の減少に大きく影響することから、色素凝集、会合等が少ない特定増感色素は、フォトマスク材料の保存安定性の向上に大きく寄与しているものと考えられる。
【0241】
以下、一般式(B)で表される増感色素(特定増感色素)について詳細に説明する。
一般式(B)中、Zは、酸性核を形成するのに必要な2価の非金属原子団を表し、好ましくはヘテロ原子を含む5員又は6員環構造を表す。
【0242】
ここで「酸性核」とは、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、198頁により定義されるものである。
【0243】
一般式(B)における酸性核の具体例としては、1,3−ジカルボニル核(例えば、1,3−インダンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン等)、ピラゾリノン核(例えば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾリル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン等)、イソオキサゾリノン核(例えば、3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン等)、オキシインドール核(例えば、1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール等)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核(例えば、ローダニン及びそのN置換誘導体、例えば、3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−フェニルローダニン、3−アリルローダニン、3−ベンジルローダニン、3−カルボキシメチルローダニン、3−カルボキシエチルローダニン、3−メトキシカルボニルメチルローダニン、3−ヒドロキシエチルローダニン、3−モルフォリノエチルローダニン等)、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、1,3−オキサゾリジン2,4−ジオン核(例えば、3−エチル−1,3−オキサゾリジン2,4−ジオン等)、チアナフテノン核(例えば、3(2H)−チアナフテノン、3(2H)−チアノフテノン−1,1−ジオキサイド等)、2−チオー2,5−チアゾリジンジオン核(例えば、3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン等)、2,4−チアゾリジンジオン核(例えば、2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン等)、チアゾリジノン核(例えば、4−チアゾリジノン、3−エチル−4−チアゾリジノン、2−エチルメルカプト−4−チアゾリジノン、2−メチルフェニルアミノ−4−チアゾリジノン等)、2−イミノ−2−オキサゾリン−4−オン核(すなわち、擬ヒダントイン核)、2,4−イミダゾリジンジオン核(すなわち、ヒダントイン核、例えば、2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン、1,3−ジエチル−2,4−イミダゾリジンジオン等)、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核(すなわち、チオヒダントイン核、例えば、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、1,3−ジエチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン等)、イミダゾリン−5−オン核(例えば、2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オン等)、フラン−5−オン核、チオインドキシル核(例えば、5−メチルチオインドキシル等)、2−イミノ−2,4−オキサゾリジンジオン核、などが挙げられる。
これらの酸性核はさらに置換基を有してもよい。酸性核に導入しうる好ましい置換基としては、アルケニル基、芳香族基、芳香族複素環残基等の不飽和結合を有する置換基が挙げられる。
【0244】
一般式(B)における好ましい酸性核としては、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、1,3−オキサゾリジン2,4−ジオン核、2−イミノ−2,4−オキサゾリジンジオン核が挙げられ、さらに好ましくは、1,3−オキサゾリジン−2,4−ジオン核、2−イミノ−2,4−オキサゾリジンジオン核である。
【0245】
一般式(B)中、R1、R、R、R、R又はRで表される一価の非金属原子団としては、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、及び置換若しくは無置換のアルコキシ基が好ましい。
【0246】
一般式(B)中、R1、R、R、R、R又はRで表されるアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、及び環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、及び炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0247】
一般式(B)中、R1、R、R、R、R又はRで表されるアルキル基が、置換アルキル基である場合における置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団から構成される基が挙げらられる。置換アルキル基が有する置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO32)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2を)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が挙げられる。これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、これらはさらに置換基を有していてもよい。
【0248】
一般式(B)中、R1、R、R、R、R又はRで表される置換アルキル基が、置換基として有するアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基等を挙げることができる。
【0249】
一般式(B)中、R1、R、R、R、R又はRで表される置換アルキル基が、置換基として有するヘテロアリール基としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環、又は多環芳香族環から誘導される基が挙げあれる。ヘテロアリール基中のヘテロアリール環の例として特に好ましくは、例えば、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジンや等が挙げられ、これらは、さらにベンゾ縮環してもよく、また置換基を有していてもよい。
【0250】
一般式(B)中、R1、R、R、R、R又はRで表される置換アルキル基が、置換基として有するアルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基、等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0251】
一般式(B)中、R1、R、R、R、R又はRで表される置換アルキル基が、置換基として有するアシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。これら置換基のうち、更により好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、モノアルキルホスホノ基、アルキルホスホナト基、モノアリールホスホノ基、アリールホスホナト基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基、アリール基、アルケニル基、アルキリデン基(メチレン基等)が挙げられる。
【0252】
一般式(B)中、R1、R、R、R、R又はRで表される置換アルキル基が、置換基として有するアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。
【0253】
上記置換基とアルキレン基とを組み合わせることにより得られる、R1、R、R、R、R又はRとして好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトプロピル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0254】
一般式(B)中、R1、R、R、R、R又はRとして好ましいアリール基の具体例としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基を挙げることができ、これらのなかでも、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。
【0255】
一般式(B)中、R1、R、R、R、R又はRで表される好ましい置換アリール基の具体例としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、(水素原子以外の)1価の非金属原子団の基を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。このような、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナトフェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホナトフェニル基、アリルフェニル基、1−プロペニルメチルフェニル基、2−ブテニルフェニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基、等を挙げることができる。
【0256】
一般式(B)中、R、R、R、R、R又はRとして好ましいアルコキシ基としては、炭素数1〜15のアルコキシ基が挙げられ、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0257】
一般式(B)におけるR及びRのより好ましい例としては、置換若しくは無置換のアルキル基、及び置換若しくは無置換のアルコキシ基が挙げられる。R及びRの更に好ましい例としては、置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。R及びRの両方が、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアルコキシ基である場合が、特に好ましい。
一般式(B)におけるR及びRのより好ましい例は、置換若しくは無置換のアルキル基であること、即ち、一般式(B)におけるXがジアルキルアミノ基であることである。R及びRのさらに好ましい例としては、置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルキル基であり、具体的にはエチル基、ブチル基が挙げられる。
一般式(B)におけるR、R、R及びRとして、これらの置換基が好適である要因は定かではないが、このような置換基を有することで、光吸収により生じる電子励起状態と開始剤化合物との相互作用が特に大きくなり、開始剤化合物のラジカル、酸又は塩基を発生させる効率が向上すること(感度向上効果)、芳香族環のオルト位に置換基を有するため、置換基Xがネジレ構造を取り、増感色素同士が凝集し難くく、感光性層中での凝集が抑制されること(保存安定性向上効果)が考えられる。
【0258】
また、一般式(B)におけるRのより好ましい例としては、置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルキル基、及び炭素数1〜15のアルコキシ基が挙げられる。
【0259】
特定増感色素の内でも、下記一般式(B1)〜(B7)で表される構造を有する増感色素は、高い増感能を有する上、保存安定性にも非常に優れた感光性組成物を与えるため、特に好ましい。これらの中でも、特定増感色素としては、一般式(B1)で表される増感色素が最も好ましい。
【0260】
【化37】

【0261】
一般式(B1)〜(B7)中、X〜X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又はNR21を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。Xは−N(R)を表す。R、R〜R20は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表し、Rは、R、R、R又はRと脂肪族性又は芳香族性の環を形成するために結合することができる。ここで、一般式B1)〜(B7)中、R〜R20で表される一価の非金属原子団は、前記一般式(B)における一価の非金属原子団と同義であり、好ましい範囲も同様である。さらに、Xとしては酸素原子が好ましい。YとしてはNR21が好ましく、R21は水素原子又は1価の非金属原子団を表し、特に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基が好ましい。
【0262】
以下に、特定増感色素の好ましい具体例(例示化合物D−1〜例示化合物D−32)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0263】
【化38】

【0264】
【化39】

【0265】
【化40】

【0266】
【化41】

【0267】
特定増感色素の合成方法について述べる。特定増感色素は、例えば、活性メチレン基を有する酸性核と、置換もしくは非置換の芳香族環又はヘテロ環と、の縮合反応によって合成することができる。かかる合成方法は、特公昭59−28329号公報を参照することができる。特定増感色素の合成方法の1つとしては、例えば、下記反応式(a)に示すように、酸性核化合物と、ヘテロ環上にアルデヒド基又はカルボニル基を有する塩基性核原料の縮合反応を利用する合成方法が挙げられる。縮合反応は必要に応じ、塩基(Base)存在下で実施される。塩基としては、一般的に汎用されるもの、例えば、アミン、ピリジン類(トリアルキルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンDBU等)、金属アミド類(リチウムジイソプロピルアミド等)、金属アルコキシド類(ナトリウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシド等)、金属水素化物類(水素化ナトリウム、水素化カリウム等)が制限なく利用できる。
【0268】
【化42】

【0269】
特定増感色素に関しては、さらに、感光性層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、特定増感色素と、付加重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを、共有結合、イオン結合、水素結合等の方法により結合させることで、感光性層(露光膜)の高強度化や、露光後の感光性層からの色素の不要な析出抑制を行うことができる。
【0270】
また、特定増感色素と後述する開始剤化合物におけるラジカル発生能を有する部分構造(例えば、ハロゲン化アルキル、オニウム、過酸化物、ビイミダゾール、オニウム、ビイミダゾール等の還元分解性部位や、ボレート、アミン、トリメチルシリルメチル、カルボキシメチル、カルボニル、イミン等の酸化解裂性部位)との結合により、特に開始系の濃度が低い状態での感光性を著しく高めることができる。
【0271】
さらに、アルカリ系、あるいは、水系の現像液への処理適性を高める目的に対しては、特定増感色素に、親水性部位(カルボキシル基並びにそのエステル、スルホン酸基並びにそのエステル、エチレンオキサイド基等の酸基もしくは極性基)を導入することが有効である。特にエステル型の親水性基は、感光性層中では比較的疎水的構造を有するため相溶性に優れ、かつ、現像液中では、加水分解により酸基を生成し、親水性が増大するという特徴を有する。
その他、例えば、感光性層中での相溶性向上、結晶析出抑制のために、特定増感色素に適宜置換基を導入することができる。例えば、ある種の感光系では、アリール基やアリル基等の不飽和結合が相溶性向上に非常に有効である場合があり、また、分岐アルキル構造導入等の方法により、色素π平面間の立体障害を導入することで、結晶析出が著しく抑制できる。また、ホスホン酸基やエポキシ基、トリアルコキシシリル基等の導入により、金属や金属酸化物等の無機物への密着性を向上させることができる。そのほか、目的に応じ、増感色素のポリマー化等の方法も利用できる。
【0272】
増感色素として特定増感色素を用いる場合には、前記一般式(B)で表される増感色素を少なくとも一種用いればよく、この一般式(B)で示される限りにおいて、例えば、先に述べた修飾を施したものなど、どのような構造の色素を用いるか、単独で使用するか2種以上併用するか、添加量はどうか、といった使用法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて適宜設定できる。例えば、特定増感色素を2種以上併用することで、感光性層への相溶性を高めることができる。
特定増感色素の選択は、感光性の他、使用する光源の発光波長でのモル吸光係数が重要な因子である。モル吸光係数の大きな色素を使用することにより、色素の添加量は比較的少なくできるので、経済的であり、かつ感光性層の膜物性の点からも有利である。
なお、本発明においては、特定増感色素に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて他の汎用の増感色素を併用することもできる。
【0273】
感光性層の感光性、解像度や、露光膜の物性は光源波長での吸光度に大きな影響を受ける
ので、これらを考慮して増感色素の添加量を適宜選択する。例えば、吸光度が0.1以下の低い領域では感度が低下する。また、ハレーションの影響により低解像度となる。但し、例えば5μm以上の厚い膜を硬化させる目的に対しては、このような低い吸光度の方がかえって硬化度を上げられる場合もある。
【0274】
例えば、フォトマスク材料における感光性層を比較的薄い膜厚とする場合には、増感色素の添加量は、感光性層の吸光度が0.1から1.5の範囲、好ましくは0.25から1の範囲となるように設定するのが好ましい。吸光度は、特定増感色素の添加量と感光性層の厚みとにより決定されるため、所定の吸光度は両者の条件を制御することにより得られる。感光性層の吸光度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、あるいは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量がフォトマスク材料として必要な範囲において適宜決定された厚みの感光性層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に感光性層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
【0275】
増感色素の添加量は、感光性層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
【0276】
<その他の成分>
−UV吸収剤、金属酸化物−
光重合性組成物には、更に、紫外領域の吸光度を高めたりする目的で、UV吸収剤、金属、酸化チタンのような金属酸化物なども同時に添加してもよい。UV吸収剤としては、特開平9−25360号公報に記載のような、加熱処理により紫外領域に強い吸収を発現する化合物も用いることができる。
【0277】
−熱重合禁止剤−
この他に添加剤として、光重合性組成物の調製中あるいは保存中において、重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合禁止剤を添加することが好ましい。更に熱重合防止剤を添加することが好ましい。その例としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、等が挙げられる。
【0278】
熱重合禁止剤の添加量は、感光性層を構成する全固形分に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光性層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体等の添加量は、感光性層を構成する全固形分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0279】
−その他の添加剤−
さらに、本発明で使用する組成物には必要に応じて公知の添加剤、例えば可塑剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0280】
感光性層の膜厚は、膜厚の均一性、解像度及び感度の観点から、0.3μm〜7μmの範囲が好ましい。特に好ましい膜厚は、0.5μm〜3μmである。
【0281】
感光性層は、前述した光重合性組成物等の感光性層を形成するための塗布液を、透明基材上に、スピンコーター、スリットスピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、あるいはカーテンコーター等を用いて直接塗布により設けることが可能である。
【0282】
(保護層)
本発明に用いるフォトマスク材料は、感光性層上に保護層を有していてもよい。下記に保護層について説明する。
【0283】
保護層は、25℃、1気圧下における酸素透過率が、1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下であり、2.0ml/m・day・atm以上1500ml/m・day・atm以下が好ましく、5.0ml/m・day・atm以上1000ml/m・day・atm以下がより好ましく、10ml/m・day・atm以上800ml/m・day・atm以下が最も好ましい。酸素透過率が上記範囲内であることで、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じることなく、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生ずるという問題もなく、良好な感度が得られる。
【0284】
また、保護層に望まれる特性としては、上記酸素透過率以外に、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光性層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
【0285】
保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドポリエステル、ポリウレタンなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いる事が、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0286】
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100モル%加水分解され、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものをあげる事ができる。具体的には、(株)クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8、KL−506、KLー318、KL−118、KM−618、KM−118、C−506、R−2105、R−1130、R−2130、M−205、MP−203、LM15,LM20、LM25等が挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。
【0287】
また、未置換のビニルアルコールに由来する繰り返し単位と、側鎖にポリオキシアルキレン基を有する繰り返し単位と、を含む共重合体も好ましく用いられる。この共重合体に含まれるポリオキシアルキレン基は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、及びオキシエチレン−オキシプロピレン混合基よりなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。
なお、オキシエチレン−オキシプロピレン混合基とは、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基の1つ以上が組み合わさってなる基であればよく、ポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基との混合基、ポリオキシエチレン基とオキシプロピレン基との混合基、オキシエチレン基とポリオキシプロピレン基との混合基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との混合基などがある。
【0288】
好ましい態様としてはポリビニルアルコールの保護層中の含有率が20〜95質量%、より好ましくは、30〜90質量%である。
【0289】
保護層には界面活性剤を添加することができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルスルホン酸ソーダ等のアルキルスルホン酸塩類、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が使用可能である。
【0290】
保護層に用いうる、特に好ましい界面活性剤としてはポリオキシエチレンヒマシ油エーテル系界面活性剤が挙げられる。ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル系界面活性剤の主成分である、ヒマシ油は、トウゴマの種子から圧搾法によって得られる、植物性の不乾性油である。種子全体に対して35〜57%の油が含まれる。成分は不飽和カルボン酸のリシノール酸を約85%含有する。リシノール酸は末端のカルボキシル基と12位にヒドロキシル基、9位に不飽和2重結合を有する、ステアリン酸誘導体である。ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル界面活性剤は、このヒマシ油の主成分である、リシノール酸にエチレンオキシドを付加させて合成する、ノニオン系界面活性剤の総称である。付加反応過程で、条件によりリシノール酸のヒドロキシ基とカルボン酸基が反応し、ポリエステルとなり、分子量が1万から2万にもなる、高分子を含む界面活性剤も形成できる。
また、リシノール酸のグリセロールにエチレンオキシドを付加したタイプの界面活性剤も含まれる。
【0291】
上記ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル界面活性剤は、HLB=10.0〜16.0、好ましくは、11.0〜15.0である。HLBが10.0より小さいと、水溶性が低く、ポリビニルアルコールの水溶液に添加した時、濁りを生じる。また、HLBが16より大きい場合は、親水性が高すぎて、保護層の吸湿性が増す。また、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル界面活性剤の重量平均分子量は、摩擦係数及び溶解性の観点から、800〜5000、好ましくは1000〜3000である。
【0292】
このようなポリオキシエチレンヒマシ油エーテル界面活性剤の具体例としては、竹本油脂株式会社製のパイオニンD−225、パイオニンD−240−W、パイオニンD−230、パイオニンD−236、パイオニンD−225−K、花王株式会社製エマノーンCH−25、エマノーンCH−40、エマノーンCH−60等を挙げることができる。
【0293】
ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル界面活性剤を用いる場合、その添加量は、保護層全固形分中の1.0〜10質量%、好ましくは2.0〜6.0質量%で有る。添加量が少なくなると、摩擦係数低下の効果が小さくなり、一方、添加量が多過ぎると保護層の塗布性が劣化し、塗布ムラを生じる。
【0294】
保護層における界面活性剤の含有量としては、保護層全固形分中、0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0295】
また保護層には、さらにシリカゲル、雲母といった充填剤を添加し、表面物性を調整することも可能である。
【0296】
保護層の塗設量は、乾燥質量として、一般的に0.1g/m〜10g/m、好ましくは0.5g/m〜5g/m2である。また塗布方法に関しては、逐次に塗設する方法と、一気に重層塗布する方法があるが、いずれであっても構わない。
【0297】
(下塗り層)
本発明のフォトマスク材料においては、透明基材上に下塗り層を設けることが好ましい。下塗り層を設けるときは、感光層は下塗り層の上に設けられる。下塗り層は、フォトマスクを作製する際、露光部においては透明基材と感光層との密着性を強化し、また、未露光部においては、感光層の透明基材からの剥離を生じやすくさせるため、現像性が向上する。
【0298】
下塗り層が含有する化合物としては、具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]トリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランが好適な化合物として挙げることができる。
下塗り層の塗設量は、乾燥質量として、2mg/m〜200mg/mが好ましく、5mg/m〜100mg/mがさらに好ましい。
【0299】
〔フォトマスクの製造〕
本発明の製造方法においては、既述のフォトマスク材料を、近紫外光ないし可視光で画像様露光した後(露光工程)、露光後のフォトマスク材料を、特定現像液を用いて現像すること(現像工程)によりフォトマスクを得る。
【0300】
<露光工程>
露光工程は、フォトマスク材料を、線画像、網点画像、等を有する透明原画を通して画像様に露光するか、デジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光することにより行うことが好ましい。
露光に好適な光源としては、カーボンアーク灯、水銀灯、キセノランプ、メタルハイラドランプ、ストロボ、紫外線、赤外線、レーザー光線などが挙げられる。
【0301】
露光工程においては、レーザーによる露光が特に好ましい。レーザーとしては、白灯又は黄色灯下で作業を行うことができる、可視光から近紫外光を放射するレーザーが好ましい。波長としては、250nm〜540nmの光を放射するレーザーが好適であり、300nm〜500nmの光を放射するレーザーが好ましく、350nm〜450nmの光を放射するレーザーがさらに好ましく、400nm〜430nmの光を放射するレーザーが最も好ましい。このようなレーザーとしては、例えば、250〜420nmの光を放射する紫外線半導体レーザー、可視光を放射するアルゴンイオンレーザー、FD−YAGレーザーなどが挙げられる。
本発明に適用しうるレーザーとして、より具体的には、405nmのバイオレットレーザー、442nmのHeCdレーザー、488nmのアルゴンレーザーなどが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0302】
<現像工程>
現像工程は、露光後のフォトマスク材料を、特定現像液を用いて現像することにより行う。
【0303】
現像工程において、露光後のフォトマスク材料に、特定現像液を接触させる態様としては、手処理、浸漬処理、及び機械による処理などが挙げられる。
【0304】
手処理としては、例えば、スポンジや脱脂綿に充分現像液を含ませ、全体を擦りながら処理し、処理終了後は充分に水洗する態様が挙げられる。
【0305】
浸漬処理としては、例えば、露光後のフォトマスク材料を、現像液の入ったバットや深タンクに浸して撹拌した後、脱脂綿やスポンジなどで擦りながら充分に水洗する方法が挙げられる。浸漬時間は、約60秒であることが好ましい。
【0306】
機械処理には、自動現像機を用いることができる。自動現像機を用いる場合としては、例えば、現像槽に仕込んだ現像液をポンプで汲み上げて、露光後のフォトマスク材料にスプレーノズルから吹き付けて処理する方式、現像液が満たされた槽中に液中ガイドロールなどによって、露光後のフォトマスク材料を浸漬搬送させて処理する方式、実質的に未使用の現像液を、一枚毎の露光後のフォトマスク材料に必要な分だけ供給して処理するいわゆる使い捨て処理方式のいずれの方式も適用できる。どの方式においても、高圧洗浄、ブラシやモルトンなどの機構があるものがより好ましい。また、レーザー露光部と自動現像機部分とが一体に組み込まれた装置を利用することもできる。
【0307】
また、現像する際における特定現像液の温度としては、20℃〜35℃の範囲が好ましく、25℃〜30℃の範囲がより好ましい。
【0308】
また、アルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に、現像後、純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0309】
<加熱工程>
本発明の製造方法においては、現像工程後のフォトマスク材料に対して、必要に応じて、加熱処理を施して膜強度を高めることも可能である(加熱工程)。加熱温度としては、120℃〜250℃の範囲が好ましく、、150℃〜250℃の範囲がより好ましい。い。また、加熱時間としては、15分〜90分が好ましく、30分〜60分がより好ましい。加熱には、ドライオーブン、ホットプレートなどの公知の手段を用いることができる。
【0310】
また、フォトマスク材料に対する画像形成後においては、画像上に熱硬化型のエポキシ樹脂等の保護膜を設けてもよい。画像上に保護膜を設けることで、更に膜強度を向上させることができる。
【0311】
以上のようにして、本発明の製造方法によりフォトマスクが得られる。
なお、得られたフォトマスクに欠陥がある場合には、以下のようにして欠陥修正を行うことができる。
【0312】
ここで、フォトマスクの欠陥とは、黒部の場合には、主として黒部の白抜け部分、例えば、ピンホールのような光を透過する欠陥を意味する。また、白部の場合には、例えば、本来白部となるべき部分の透明基材上に異物や感光性層が付着して光透過率が低下する欠陥をいう。黒部の白抜け部分が発生した場合には、感光性層用塗布液(感光性組成物)を欠陥周辺部に塗布した後、例えば、HeCdレーザーで露光、現像を行い不要の感光性層を除去することにより欠陥を修正することができる。また、HeCdレーザーで露光、現像する替わりに、YAGレーザーで不要部分をアブレーションにより除去することも可能である。一方、白部の欠陥の場合には、YAGレーザーなどでアブレーションにより除去可能である。この場合、Emマスクとは異なり、白部には感光性層などの有機物成分は無いため、レーザーアブレーションに伴う、新たな欠陥の発生は一切生じない。
【0313】
本発明の製造方法により得られたフォトマスクは、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において好適に用いることができる。
本発明で用いるフォトマスクを、紫外感光性のレジストのパターニング用に用いる際には、超高圧水銀灯などの紫外線露光機にバンドパスフィルターを組み入れて、露光波長を選択することも可能である。
【実施例】
【0314】
以下に、実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0315】
[実施例1〜22、比較例1〜10]
1.フォトマスク材料[P]の作製
(下塗り層の形成)
純水洗浄したガラス基板(10cm×10cm)上に、下記組成の下塗り組成物S−1
をミカサ(株)製スピンコーターMS−A−100にて乾燥後の質量が20mg/mとなるよう塗布し100℃で1分間乾燥させた。
【0316】
<下塗り組成物S−1>
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 99質量部
・3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 1質量部
【0317】
(感光性層の形成)
上記により塗設された下塗り層上に、下記組成の高感度光重合性組成物P−1を乾燥塗布質量が1.4g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光性層を形成した。
【0318】
<光重合性組成物P−1>
・カーボンラック分散液(30質量%メチルエチルケトン溶液) 16.0質量部
・エチレン性不飽和結合含有化合物(A−1)(下記構造化合物) 4.2質量部
・線状有機高分子重合体(B−1)(下記構造の高分子バインダー) 3.6質量部
・増感剤(C−1)(下記構造の化合物) 0.21質量部
・光重合開始剤(D−1)(下記構造の化合物) 0.81質量部
・連鎖移動剤(E−1)(下記構造の化合物) 0.3質量部
・ε―フタロシアニン分散物 0.76質量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤 0.05質量部
・ (メガファックF780、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 58質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 53質量部
【0319】
【化43】

【0320】
(保護層の形成)
この感光性層上に、下記保護層塗布液を塗布し乾燥して保護層を形成し、ネガ型のフォトマスク材料[P]を得た。なお、保護層形成における乾燥条件は、120℃、1分間であった。
【0321】
<保護層塗布液>
・水 87g
・ポリビニルアルコールPVA105((株)クラレ製) 10g
・ポリビニルピロリドン((株)BASF製) 2g
・EMALEX710(日本エマルジョン(株)製、界面活性剤) 1g
【0322】
2.現像液の調製
(特定現像液1〜14、比較用現像液C1〜C10の調製)
下記組成に示す量の水に、下記に示す界面活性剤及びキレート剤を溶解させ、水酸化カリウムにて所望のpHになるよう調整を行うことにより、特定現像液1〜14及び比較用現像液C1〜C10を調製した。
【0323】
<特定現像液1〜14、比較用現像液C1〜C10の組成>
・界面活性剤 下記表1に示す種類及び量
・キレート剤(キレスト400、キレスト(株)製) 0.1g
・水 94.75g
水酸化カリウム pH調整に必要な量
【0324】
(特定現像液15〜22の調製)
下記組成に示す量の水に、下記に示す界面活性剤及びキレート剤を溶解させ、アルカリ剤を表2に記載の量添加することにより、特定現像液15〜22を調製した。
【0325】
<特定現像液15〜22の組成>
・界面活性剤 下記表2に示す種類及び量
・キレート剤(キレスト400、キレスト(株)製) 0.1g
・アルカリ剤 下記表2に示す種類及び量
・水 合計で100gになる量
【0326】
3.フォトマスク作製
フォトマスク材料[P](10cm×10cm)を、レーザープロッターとして、VIOLD(大日本スクリーン製造(株)製)(レーザー出力350mW、光源は405nmバイオレットレーザー)により30%の出力で露光した。
更に、露光後のフォトマスク材料[P]を、1Lの特定現像液1に30℃、15秒間浸漬して現像、水洗後乾燥した。更に、180℃で30分加熱処理を行い、実施例1のフォトマスクを得た。
更に、現像液を特定現像液1から特定現像液2〜22、比較用現像液C1〜C10にそれぞれ変更した以外は、実施例1のフォトマスクと同様にして、実施例2〜22、比較例1〜10のフォトマスクを得た。
尚、露光感度は約6mJ/cmであった。また、現像、加熱処理後の各フォトマスクの365nmの吸光度は約4.0であった。
【0327】
[評価]
1.フォトマスクの解像度の評価
実施例1〜22、及び比較例1〜10で得られた各フォトマスクおけるライン/スペースを、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ「VHX−100F」により測定することにより、フォトマスクの解像度を評価した。
解像度の評価は、特定現像液1〜22、比較用現像液C1〜C10を用いて、露光後のフォトマスク材料[P]を、各現像液毎に50枚処理し、1枚目、25枚目、及び50枚目に得られたフォトマスクに対して行った。
【0328】
2.スラッジの発生状態の評価
次に、現像液の繰り返し処理性能を確認するために、各現像液を用いて、露光後のフォトマスク材料[P]を50枚処理し、その後、各現像液を放置し、スラッジの発生状態(沈殿の有無)を目視にて観察した。スラッジの発生状態の観察は、現像処理の2日後、7日後、15日後に行った。評価は、以下の評価基準に基づいて行った。
−評価基準−
○:スラッジなし
△:僅かだがスラッジの発生が認められる
×:多くのスラッジの発生が認められる
【0329】
以上の評価結果を、実施例1〜14及び比較例1〜10については下記表1に、実施例15〜22については下記表2に示す。

【0330】
【表1】

【0331】
【表2】

【0332】
表1及び表2中に示される界面活性剤A〜Cの詳細は、以下の通りである。
【0333】
【化44】

【0334】
表1又は表2に示すように、実施例1〜22で得られた各フォトマスクは、いずれも解像度に優れており、処理枚数が増加しても解像度の変動が無いか小さいことから、高解像度のフォトマスクが安定に得られることがわかった。また、実施例1〜22で用いた特定現像液1〜22は、いずれの評価時点においても、スラッジの発生が認められず、スラッジの発生が長期間に亘って抑制されていることがわかった。
【0335】
一方、比較例3、8については、表1に示すように、1枚目からフォトマスクの解像度が劣るものであった。比較例1、6については、処理枚数が増加するにしたがって悪化した。比較例2、4、7、9については、現像することができず、比較例5、10については画像流れを生じた。また、比較例5、10を除いては、いずれの比較例についても、現像浴底にスラッジの堆積が認められた。
【0336】
3.フォトマスクの性能評価
次に、実施例1〜22で得られたフォトマスクを用いて、紫外感光性のレジスト材料のパターン露光を行うことで、フォトマスクの性能を評価した。
パターン露光は、ガラス板上(ガラス板は、5%KOHアルカリ水溶液で洗浄、水洗後、ヘキサメチルジシラザンで表面処理したもの)に、紫外感光性のレジスト材料であるポジレジスト膜(富士フイルムオーリン(株)社製のポジレジスト204LT)を1.5μmの厚さに塗設してレジスト膜を形成し、該レジスト膜上に、365nmを中心波長とした半値幅約15nmのバンドパスフィルタを介して、前記フォトマスクをコンタクトさせ、2KW超高圧水銀灯を有するアライナーを用いて250mJ/cmの条件で露光することにより行った。露光後のガラス板を、現像液として、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド系現像液(FFO社製のFHD−5)を用いて、室温(23℃)で45秒間浸漬、水洗を行った。
得られたポジレジストの画像を評価したところ、フォトマスクの画像を再現した良好な画像が形成されていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に、少なくとも遮光材料を含有し且つ近紫外光ないし可視光で画像形成が可能な感光性層を有するフォトマスク材料を、近紫外光ないし可視光で画像様露光した後、露光後のフォトマスク材料を、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を全質量中に1質量%以上10質量%以下含有するpH8〜13の現像液を用いて現像することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記現像液に含有されるアニオン界面活性剤が、スルホン酸のアニオン基又は硫酸モノエステルのアニオン基を有し、かつ置換基を有していてもよい少なくとも一つの芳香族基を有するアニオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記現像液に含有されるノニオン界面活性剤が、下記一般式(1)で表されるノニオン芳香族エーテル系界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフォトマスクの製造方法。
X−Y−O−(A)−(B)−H (1)
(一般式(1)中、Xは置換基を有していてもよい芳香族基を表し、Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、A及びBは互いに異なる基であって、−CHCHO−又は−CHCH(CH)O−のいずれかを表し、n、mはそれぞれ0又は1〜100の整数を表し、但しnとmは同時に0ではなく、またn若しくはmのいずれかが0である場合にはn及びmは1ではない。)。
【請求項4】
前記フォトマスク材料における感光性層が高分子バインダーを更に含有し、該高分子バインダーが、側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂又は側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記画像様露光を250nm〜540nmの光を放射するレーザーを用いて行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフォトマスクの製造方法。

【公開番号】特開2009−237556(P2009−237556A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46463(P2009−46463)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】