説明

フォトマスクブランクの製造方法、フォトマスクの製造方法及び塗布装置

【課題】レジスト膜の膜厚変化を抑制し得るフォトマスクブランクの製造方法、フォトマスクの製造方法及び塗布装置を提供すること。
【解決手段】液槽20と、該液槽20に貯留されたレジスト液21を毛細管現象により上昇させる塗布ノズル22とを含む塗布手段2により上昇させたレジスト液21を下方に向けられた基板10の被塗布面10aに接液させ、塗布ノズル22と基板10とを相対的に移動させて基板10の被塗布面10aにレジスト膜21を形成する方法であって、基板10へのレジスト液21の塗布による該レジスト液21の消費により低下する液槽20のレジスト液21の液面高さの低下量dと、基板10の被塗布面10aに形成されるレジスト膜の膜厚変化との関係に基づいて決定された、レジスト膜の膜厚変化を許容範囲内に収めるための液槽20のレジスト液21の液面面積を少なくとも有する塗布手段2によりレジスト膜を形成することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクブランクの製造方法、フォトマスクの製造方法及び塗布装置に関し、例えば基板の表面にレジスト膜を塗布する工程を有して製造されるフォトマスクブランクの製造方法、該フォトマスクブランクを用いて得られるフォトマスクの製造方法及びレジスト液を塗布するための塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォトレジストなどの塗布液をフォトマスクブランク用基板やシリコンウエハ等の基板に塗布する塗布装置(コータ)として、通常、基板の中央に塗布液を滴下し、次いで基板を高速回転させることにより、遠心力の作用によって塗布液を伸展させ基板表面に塗布膜を形成するスピンコータが使用されてきた。
【0003】
ところで、上記スピンコータは、基板の周縁部にレジストのフリンジと呼ばれる盛り上がりが発生する問題があった。特に、液晶表示装置や液晶表示装置製造用のフォトマスクにおいては、大型基板(例えば、少なくとも、一辺が300mm以上の方形基板)にレジストを塗布する必要があり、さらに、近年におけるパターンの高精度化や、基板サイズの大型化にともない、大型基板に均一なレジスト膜を塗布する技術の開発が望まれていた。
【0004】
かかる課題を解決するための一つの方策として、大型基板に均一なレジスト膜を塗布する技術を用いた装置として、CAPコータ(キャピラリコータ)と呼ばれる塗布装置が提供されている(特許文献1参照)。このCAPコータは、塗布液が溜められた液槽に毛管状隙間を有する塗布ノズルを沈めておき、被塗布面が下方を向いた姿勢で吸着盤によって保持された基板の当該被塗布面近傍までノズルを上昇させるとともに毛管状隙間から塗布液を接液し、次いでノズルを被塗布面に亘って相対的に走査させることにより塗布膜を形成するものである。
【0005】
具体的には、所定の高さまでレジスト液が満たされている液槽のレジスト液中に完全に沈んだ状態の塗布ノズルを、被塗布基板の下方まで上昇させる。次いで、制御部は、液槽の上昇をいったん停止させ、液槽から塗布ノズルのみを突出させる。ここで、塗布ノズルはレジスト液に完全に沈んでいたので、毛管状隙間はレジスト液で満たされている。すなわち、ノズル塗布は、毛管状隙間の先端までレジスト液が満たされた状態で上昇する。
【0006】
次いで、制御部は、塗布ノズルのみの上昇を停止させ、再び液槽を上昇させることにより、フォトマスクブランクの被塗布面にレジスト液を接液する。即ち、制御部は、塗布ノズルの毛管状隙間に満たされているレジスト液を被塗布面に接触させる。このようにして、レジスト液をフォトマスクブランクの被塗布面に接液した状態で、塗布ノズルとともに液槽を塗布高さの位置まで下降させ、かつ、フォトマスクブランクを移動させて塗布ノズルを被塗布面全体にわたって走査させることによってレジスト膜を形成する。
【0007】
この装置を用いれば、基板の周縁部にフリンジが生ずることなく、従来のスピンコータの問題点を解決することができる。
【特許文献1】特開2004−327963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところでかかる従来のCAPコータにおいては、レジスト液を溜めるための液槽と、該液槽に溜められたレジスト液に沈められ、塗布時に該レジスト液から上昇させられる塗布ノズルとから主に構成されている。レジスト液に沈められていた塗布ノズルを上昇させると、該塗布ノズルの毛管状隙間には毛細管力によりレジスト液が保持された状態となる。この状態において、該塗布ノズルの先端部を基板の被塗布面に接近させると、塗布ノズルの先端部に保持されているレジスト液が被塗布面に接液する。レジスト液が基板の被塗布面に接液した状態において、基板と塗布ノズルとを相対移動させることで、基板の被塗布面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成する。
【0009】
塗布ノズルの毛管状隙間は、その下端部も開口しており、塗布時に塗布ノズルが上昇させられた状態においてもその開口は液槽内のレジスト液内に浸漬した状態となっており、基板への塗布過程(1枚の基板への塗布開始から塗布終了まで)におけるレジスト液の消費分を液槽内のレジスト液から得るようになっている。
【0010】
このように、レジスト液の消費分が液槽内のレジスト液により補充される構成においては、液槽内に溜められたレジスト液が塗布過程で減少し、その液面が塗布過程で次第に低下することとなる。液槽内のレジスト液の液面高さの低下は、塗布ノズルの毛管状隙間におけるレジスト液上昇の抵抗の増加につながる。レジスト液上昇の抵抗が増加すると、毛管状隙間の上端部(塗布ノズルの先端部)と基板の被塗布面との間に形成されるレジスト液のメニスカスの形状にも変化を及ぼすこととなり、この結果、基板の被塗布面に形成されるレジスト膜の膜厚が変化することとなる。
【0011】
すなわち、従来の塗布装置によるレジスト液の塗布処理においては、基板に形成されたレジスト膜の膜厚が、塗布開始位置から塗布方向に次第に変化するといった不都合が生じる問題があった。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、レジスト膜の膜厚変化を抑制し得るフォトマスクブランクの製造方法、フォトマスクの製造方法及び塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のフォトマスクブランクの製造方法は、液槽と、該液槽に貯留されたレジスト液を毛細管現象により上昇させる塗布ノズルとを含む塗布手段により前記上昇させた前記レジスト液を下方に向けられた基板の被塗布面に接液させ、前記塗布ノズルと前記基板とを相対的に移動させて前記基板の被塗布面にレジスト膜を形成することを含むフォトマスクブランクの製造方法であって、前記基板への前記レジスト液の塗布による該レジスト液の消費により低下する前記液槽のレジスト液の液面高さの低下量と、前記基板の被塗布面に形成される前記レジスト膜の膜厚面内変化との関係を把握し、該関係に基づいて、前記レジスト膜の膜厚面内変化を許容範囲内に収めるための前記液槽のレジスト液の液面面積を決定し、該液面面積を有する前記塗布手段により前記レジスト膜を形成することを特徴とする。この方法によれば、基板へのレジスト液の塗布による該レジスト液の消費により低下する液槽のレジスト液の液面高さの低下量と、基板の被塗布面に形成されるレジスト膜の膜厚面内変化との関係に基づいて、基板の被塗布面に形成されるレジスト膜の膜厚面内変化を所定の許容範囲内に収めることができる液面面積を求め、この液面面積を有する塗布装置によりレジスト液を塗布してレジスト膜を形成することにより、レジスト膜の膜厚面内変化を許容範囲内に収めることができる。
上記でレジスト膜厚は、塗布直後のウエット膜厚いう。このウェット膜厚は、レジスト乾燥後の乾燥膜厚と相関する。
【0014】
また本発明は、上記フォトマスクブランクの製造方法において、前記レジスト膜の膜厚面内変化の許容量は一辺が1000mm以上の矩形の基板に形成されるレジスト膜において20〔nm〕以下であることが好ましい。例えば、1220〔mm〕×1400〔mm〕の基板、またはそれ以上のサイズをもつ基板に形成されるレジスト膜において膜厚面内変化が20〔nm〕以下であることが好ましい。この場合には、上記許容量以下の膜厚面内変化を充足することに応じた液面面積を少なくとも有する液槽によってレジスト膜を形成することにより、パターン転写性の優れたフォトマスクブランクを製造することができる。尚、ここでの膜厚面内変化は、塗布直後のウエット膜厚面内変化である。
【0015】
また本発明は、上記フォトマスクブランクの製造方法において、前記液槽は、前記塗布ノズルの上下動に伴って該塗布ノズルが通る透孔部を前記液槽の天井部に具備し、前記透孔部の大きさは、前記液槽に貯留されるレジスト液の液面面積よりも小さいことが好ましい。この場合には、液槽内における液面上の空間と液槽外部の空間との連通する空間を小さくすることができる。これにより、液槽に溜められたレジスト液と液槽の外部空間との接触を少なくすることができ、レジスト液の表面酸化などの劣化や蒸発を抑制することができる。換言すれば、レジスト液の劣化を防止しつつ、レジスト液の液面面積を十分に得ることができる。
【0016】
また本発明は、上記フォトマスクブランクの製造方法において、塗布の開始時から終了時の間に、レジスト液面面積が最大になる液面高さとなるように、液槽内のレジスト量を調整することが好ましい。液槽の断面形状によっては、内部に蓄えられたレジスト液の液面高さによって、レジスト液面面積が変化するが、レジスト液面面積がもっとも大きい部分又はその付近にレジスト液面が位置するようにしつつ、塗布を行うと、上記本発明の効果が大きい。
【0017】
また本発明は、上記フォトマスクブランクの製造方法において、塗布の開始時から終了時の間に、基板に塗布されたレジスト膜厚の変動が、2%以下となるように、レジスト液面面積が調整されることが好ましい。これによって、パターン転写性の優れたフォトマスクブランクが得られる。
【0018】
本発明のフォトマスクの製造方法は、液槽と、該液槽に貯留されたレジスト液を毛細管現象により上昇させる塗布ノズルとを含む塗布手段により前記上昇させた前記レジスト液を下方に向けられた基板の被塗布面に接液させ、前記塗布ノズルと前記基板とを相対的に移動させて前記基板の被塗布面にレジスト膜を形成することにより製造されたレジスト膜付フォトマスクブランクを用意する工程と、前記レジスト膜付フォトマスクブランクのレジスト膜にパターンを描画し、現像することによってレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして該遮光膜をエッチング処理する工程とを含むフォトマスクの製造方法であって、前記レジスト膜付フォトマスクブランクは、上記したフォトマスクブランクのいずれかの製造方法によるものであることが好ましい。これにより、このフォトマスクブランクを用いて製造されたフォトマスクにおいては、所望の転写パターンに対する誤差の小さい遮光膜パターンを得ることができる。
【0019】
本発明の塗布装置は、液槽と、該液槽に貯留されたレジスト液を毛細管現象により上昇させる塗布ノズルとを含む塗布手段により前記上昇させた前記レジスト液を下方に向けられた基板の被塗布面に接液させ、前記塗布ノズルと前記基板とを相対的に移動させて前記基板の被塗布面にレジスト膜を形成する塗布装置であって、前記基板への前記レジスト液の塗布による該レジスト液の消費により低下する前記液槽のレジスト液の液面高さの低下量と、前記基板の被塗布面に形成される前記レジスト膜の面内膜厚変化との関係に基づいて決定された、前記レジスト膜の面内膜厚変化を許容範囲内に収めるための前記液槽のレジスト液の液面面積を少なくとも有する前記塗布手段を具備することを特徴とする。この構成によれば、基板へのレジスト液の塗布による該レジスト液の消費により低下する液槽のレジスト液の液面高さの低下量と、基板の被塗布面に形成されるレジスト膜の膜厚変化との関係に基づいて、基板の被塗布面に形成されるレジスト膜の膜厚変化を所定の許容範囲内に収めることができる液面面積を求め、この液面面積を有する塗布装置によりレジスト液を塗布してレジスト膜を形成することにより、レジスト膜の膜厚面内変化を許容範囲内に収めることができる。
【0020】
更に、本発明の塗布装置は、液槽と、該液槽に貯留されたレジスト液を毛細管現象により上昇させる塗布ノズルとを含む塗布手段により前記上昇させた前記レジスト液を下方に向けられた基板の被塗布面に接液させ、前記塗布ノズルと前記基板とを相対的に移動させて前記基板の被塗布面にレジスト膜を形成する塗布装置であって、
前記基板への前記レジスト液の塗布による該レジスト液の消費により低下する前記液槽のレジスト液の液面高さの低下にかかわらず、一辺が1000mm以上の矩形形状をもつ前記基板に形成される前記レジスト膜の面内膜厚変化が、塗布直後の膜厚面内変化量として、20nm以下となる、前記液槽のレジスト液の液面面積を有する前記塗布手段を具備する塗布装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液槽内のレジスト液の液面面積を、基板に形成されるレジスト液の膜厚面内変化が許容範囲内に収まるような面積とすることにより、面内膜厚均一性の高いレジスト膜を形成することができるフォトマスクブランクの製造方法、フォトマスクの製造方法及び塗布装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態において参照される図は、各構成部の関係を分かり易く表現するために、実際の各部の寸法関係とは異なる比率でこれらを示している。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態に係る塗布装置の構成を示す側面図である。図1に示すように、この塗布装置1は、ベースフレーム11と、このべースフレーム11に設置された塗布手段2と、ベースフレーム11上に移動可能に支持され移動手段4によって水平方向に移動操作される移動フレーム12と、この移動フレーム12に設けられ基板10を吸着する吸着手段3と、基板10を着脱自在に保持する保持手段5とを備えている。これら塗布手段2、吸着手段3、移動手段4及び保持手段5は、図示しない制御部によって制御される。
【0024】
本実施の形態において、基板10は、透明基板に遮光膜(金属クロム、又はその酸化物、窒化物などの層)が形成されたフォトマスクブランク(サイズ:1220mm×1400mm)であり、塗布装置1は、該透明基板10のクロム層表面にレジスト剤を塗布してレジスト膜を形成するための装置である。このレジスト膜が形成されたフォトマスクブランクは、その後の描画工程においてレジスト膜にパターン描画され、さらに現像工程によってレジストパターンが形成され、該レジストパターンをマスクとした、該遮光膜のエッチング工程等を経てフォトマスクとなるものである。
【0025】
図2は、この塗布装置1における塗布手段2の構成を示す断面図である。図2に示すように、塗布手段2は、液槽20に溜められた液体状のレジスト剤21を塗布ノズル22の毛管状隙間23における毛細管現象により上昇させ、下方に向けられた基板10の被塗布面10aに塗布ノズル22の上端部を近接させ、塗布ノズル22により上昇されたレジスト剤21を該塗布ノズル22の上端部を介して被塗布面10aに接液させるように構成されている。
【0026】
すなわち、この塗布手段2は、液体状のレジスト剤(以下これをレジスト液と呼ぶ)21を溜める液槽20を有している。この液槽20は、基板10の横方向、すなわち、後述するように移動フレーム12によって移動される方向に直交する方向の一辺の長さに相当する長さ(図2中において紙面に直交する方向となっている)を少なくとも有している。この液槽20は、支持プレート24の上端側に、上下方向に移動可能に取付けられて支持されている。そして、この液槽20は、図示しない駆動機構により、支持プレート24に対して、上下方向に移動操作される。この駆動機構は、制御部によって制御されて動作する。
【0027】
また、支持プレート24は、下端側において、互いに直交して配置されたリニアウェイ25、26を介して、ベースフレーム11の底フレーム72上に支持されている。すなわち、この支持プレート24は、底フレーム72上において、直交する2方向への位置調整が可能となっている。支持プレート24には、スライド機構27を介して、液槽20内に収納された塗布ノズル22を支持する支持柱28が取付けられている。
【0028】
図3及び図4は、この塗布装置1における塗布手段2の要部の構成を示す縦断面図である。また、図5は、図4のα−α線を断面にとって示す横断面図である。図3及び図4に示すように、支持柱28は、液槽20の底面部に設けられた透孔20bを介して、この液槽20内に上端側を進入させている。そして、この支持柱28の上端部には、塗布ノズル22が取付けられている。この塗布ノズル22は、支持柱28に支持されて、液槽20内に収納されている。この塗布ノズル22は、少なくとも基板10の横方向の長さに相当する長さ(図3、図4中において紙面に直交する方向となっている)を有して構成され、この長手方向に沿って、スリット状の毛管状隙間23を有している。この塗布ノズル22は、この毛管状隙間23を挟んで、尖った断面形状を有して構成されている。毛管状隙間23の上端部は、塗布ノズル22の上端部において、この塗布ノズル22の略全長に亘るスリット状に開口している。また、この毛管状隙間23は、塗布ノズル22の下方側に向けても開口されており、この下方側の開口部は、塗布ノズル22が上下移動(後述)した場合であっても、常に液槽20に溜められたレジスト液21に浸漬する高さとなっている。
【0029】
スライド機構27(図2)は、図示しない駆動機構により、制御部の制御にしたがって、支持柱28を支持プレート24に対して上下方向に移動させる。すなわち、液槽20と塗布ノズル22とは、互いに独立的に、支持プレート24に対して上下方向に移動可能となっている。
【0030】
液槽20の上面部には、塗布ノズル22の上端側をこの液槽20の上方側に突出させるための長方形の透孔部20aが設けられている。なお、液槽20の底面部の透孔20bの周囲部と塗布ノズル22の底面部とは、蛇腹29で繋がれており、この透孔20bからレジスト剤21が漏れることが防止されている。
【0031】
また、図5に示すように、液槽20内には、塗布ノズル22を取り囲むように、その周囲にレジスト液21が溜められている。このレジスト液21の液面21a(図3、図4)は、図4に示すように塗布ノズル22が上昇した状態において、塗布ノズル22の上方に突出した突起部22aの第2の側面部22cに接するようになされており、基板10の被塗布面10aへのレジスト液21の塗布によって、該レジスト液21が消費して液面21aの高さが低くなった場合においても、少なくとも1枚の基板10への塗布過程においては、液面21aが塗布ノズル22の第2の側面部22cに接する高さを維持するようになされている。なお、液槽20及び塗布ノズル22の詳細構成については、後述する。
【0032】
図1において、移動フレーム12は、吸着手段3を介して基板10を吸着保持し、この基板10を塗布手段2に対して水平方向に移動させる機構である。この移動フレーム12は、対向するー対の側板と、これら側板を連結する天板とが一体的に連結されて構成されており、剛性不足により基板10と塗布手段2との位置精度が狂うことがないように、十分な機械的強度を有して構成されている。
【0033】
この移動フレーム12は、ベースフレーム11上に設置されたリニアウェイ41を介して、ベースフレーム11により支持されており、このベースフレーム11上を水平方向に移動可能となされている。また、この移動フレーム12の一方の側板には、移動部材13が取付けられている。この移動部材13には、ナット部が形成されている。この移動部材13のナット部には、ベースフレーム11に取付けられた移動手段4を構成するボールスクリュー42が螺合する。
【0034】
そして、この移動フレーム12の天板の略中央部には、図示しない複数の吸着孔が穿設された吸着板を有し、基板10を吸着する吸着手段3が取り付けられている。
【0035】
移動手段4は、移動部材13のナット部に螺合するボールスクリュー42と、ボールスクリュー42を回転操作するモータ43とから構成されている。この移動手段4において、モータ43は、制御部による制御にしたがって駆動され、ボールスクリュー42を回転させる。制御部による制御によって、ボールスクリュー42が所定の方向に所定の回転数だけ回転されることにより、移動部材13は、所定の方向ヘ所定の距離だけ移動フレーム12を伴って水平に移動操作される。
【0036】
なお、吸着手段3と塗布手段2との垂直方向の位置(高さ)精度は、リニアウェイ41と吸着手段3との間の距離(高さ)の誤差、リニアウェイ41と塗布手段2との間の距離(高さ)の誤差及びリニアウェイ41そのものの形状誤差によって決まる。
【0037】
保持手段5は、この塗布装置外より搬入される基板10を、まず、略垂直に傾斜した状態で保持し(図1において破線で示す)、次にこの基板10を水平状態として、この基板10を移動フレーム12に取付けられた吸着手段3に受け渡すための機構である。また、この保持手段5は、塗布手段2によるレジスト剤の塗布が完了した基板10を吸着手段3から受取って水平状態として保持し、次に、この基板10を略垂直に傾斜した状態として、この基板10のこの塗布装置外への搬出を可能とするための機構である。
【0038】
図6は、塗布装置1の構成を示す正面図である。なお、本実施の形態においては、塗布装置1の基板10の搬入側を正面とする。図1及び図6に示すように、この保持手段5は、ベースプレート69と、このベースプレート69上において、水平状態と略垂直に傾斜した状態とに亘って回動可能に支持された回動プレート65とを有して構成されている。
【0039】
そして、この保持手段5は、回動プレート65上に、リニアウェイ64、一対のレール63及びリニアウェイ62を介して、それぞれが保持プレート61に固定された4個の保持部材55を備えている。これら保持部材55は、基板10の四隅の周縁部を保持するものである。
【0040】
各保持部材55の近傍には、保持部材55にセットされた基板10が保持部材55から外れないように、図示しない押さえ手段が設けられている。この押さえ手段は、例えば、上下動及び水平方向への回動が可能となされた押さえプレートにより構成されている。この押さえ手段は、保持部材55にセットされた基板10を保持部材55側に押さえ付けるようになっている。
【0041】
保持プレート61は、リニアウェイ62を介して、図1中矢印Yで示すベースフレーム11上のリニアウェイ41に平行な方向に配設された一対のレール63上に各二個ずつが配設されている。塗布手段2に近い側の2個の保持プレート61は、ボールスクリューとモータとを有する図示しない駆動手段により、図1中矢印Y方向に移動操作可能となっている。これにより、基板10の縦寸法が異なる場合であっても、この駆動手段により2個の保持プレート61をY方向に移動させて、各保持部材55を基板10の四隅の周縁部に対向させることができる。
【0042】
また、一対のレール63は、図1中矢印Xで示すベースフレーム11上のリニアウェイ41に直交する方向に配設されたリニアウェイ64を介して、それぞれの両端部において回動プレート65に取り付けられている。これらレール63は、ボールスクリューとモータを有する図示しない駆動手段により、図1中矢印X方向に移動可能となっている。これにより、基板10の横寸法が異なる場合であっても、この駆動手段により2個の保持プレート61をX方向に移動させて、各保持部材55を基板10の四隅の周縁部に対向させることができる。
【0043】
回動プレー卜65は、塗布手段2から遠い側の端部が、回動軸66により、ベースプレート69に対して回動可能に支持されている。この回動プレー卜65は、水平状態となったときには、塗布手段2に近い側の端部をベースプレート69上に突設されたストッパ68により支持される。
【0044】
そして、この回動プレート65は、一端側をベースプレート69に取付けられた回動シリンダ67により、回動軸66回りに回動操作される。すなわち、この回動シリンダ67は、他端側が回動プレート65に連結されており、伸縮可能となっている。
【0045】
また、ベースプレート69には、下面の四隅に、ガイド棒71が突設されている。これらガイド棒71は、ベースフレーム11に固定された保持手段フレーム70に貫通されている。ベースプレート69は、これらガイド棒71が保持手段フレーム70にガイドされることにより、水平状態を維持したまま、保持手段フレーム70に対して昇降移動することができる。そして、ベースプレート69は、ベースフレーム11の底フレーム72上に設置されたエアシリンダ等の昇降手段73により、垂直方向に昇降移動可能となっている。
【0046】
次に、塗布手段2の要部である液槽20及び塗布ノズル22の詳細構成について説明する。図3及び図4に示すように、塗布ノズル22は、その上端側に傾斜した2つの対称な第1の側面部22bを有し、この第1の側面部22bの中央部には、上方に突出した突起部22aが形成されている。この突起部22aは、第1の側面部22bよりも急傾斜である第2の側面部22cを有している。突起部22aの先端部22dには、毛管状隙間23の開口部が設けられている。上記のような塗布ノズルの形状は、液槽内に溜められるレジスト液の液量を少なくすることができると共に、第1の領域を十分な強度で指示することができる。液槽内の液量を少量化することは、レジスト液の交換の際の廃棄量を減少させること、液槽の重量を過大にせず、駆動系の負担を減少させる効果がある。
【0047】
一方、液槽20においては、塗布ノズル20の突起部22aを挿通させるための透孔部20aが設けられており、塗布ノズル22を液槽20に対して相対的に上昇させた場合に(図4)、この透孔部20aを介して、塗布ノズル22の突起部22aの先端部が液槽20の天井部20cから上方に突出する状態となるように構成されている。透孔部20aは、突起部22aを挿通し得る程度の大きさに形成されており、該透孔部20aの大きさは、液槽20内に溜められるレジスト液21の液面21aの面積よりも小さくなっている。これにより、図4に示すように、塗布ノズル22が上昇して突起部22aが透孔部20aを挿通した状態において、液槽20の内部におけるレジスト液21の液面21aの上部空間と液槽20の外部空間との間の連通する空間を小さくすることができる。これにより、液槽20に溜められたレジスト液21と液槽20の外部空間との接触を少なくすることができ、雰囲気気体との接触によるレジスト液21の劣化や蒸発を抑制するようになされている。この観点からすれば、液槽中のレジスト液面面積は、小さいほど好ましいことになる。しかしながら、後述するように、その観点のみでは不十分であることを、発明者らは見出した。
【0048】
また、液槽20の透孔部20aを有する天井部20cには、透孔部20aにおける端面部の厚みと略同一の厚みが維持される第1の領域AR1が設けられている。この第1の領域AR1においては、略同一の厚みの天井部20cが水平方向に延在している。このように液槽20においては、その天井部20cに水平方向に延在する第1の領域AR1が形成されている分、液槽20内のレジスト液21の液面21の面積が大きくなっている。なお、第1の領域AR1の形状は厳密に水平方向に延在する形状でなくてもよく、傾斜を持っている形状であってもよい。要は、レジスト液21の液面21aの面積が必要な大きさとなるように液槽21の内部が液面に沿う方向に拡がった形状であればよい。レジスト液21の液面21aの面積が大きくなる分、レジスト液21の消費に伴う液面21の高さの低下が小さくなる。このように、レジスト液21の液面21aの面積が拡がるように形成された液槽21の上部形状(第1の領域AR1の形状)により、レジスト液21の消費に伴う液面21の高さの低下を小さくすることができる。
【0049】
換言すれば、塗布の開始から終了までの間の、レジスト液面位置が、適切な高さの範囲にあるようにレジスト液量を調整することにより、塗布開始から終了までの間に、適切な液面面積と液面低下量が確保できるようにすることが好ましい。具体的には、液面面積が過大にならないようにし、レジストの雰囲気気体との接触による悪影響が抑制できること、更に、塗布によって消費するレジスト量によって生じる液面低下の低下量が、実質的に塗布の開始から終了までの膜厚の面内変動や膜質に、実質的に変動を与えないことである。また、塗布の開始時から終了時の間に、レジスト液面面積が最大になる液面高さとなるように、液槽内のレジスト量を適宜調整することが好ましい。
【0050】
また、塗布ノズル22の突起部22aは、第1の側面部22bよりも急傾斜でなる第2の側面部22cによって形成されていることにより、断面が幅の狭い鋭角な突起部となっている。これにより、図4に示すように、突起部22aがレジスト液21の液面21aから突出した場合におけるレジスト液21の液面21aの面積が十分な大きさとなる。このように、突起部22aの形状によりレジスト液21の液面21aの面積が大きくなる分、図7に示すように、レジスト液21の消費に伴う液面21の高さの低下量dが小さくなる。すなわち、レジスト液21の液面21aの面積が拡がるように形成された突起部22aの形状により、レジスト液21の消費に伴う液面21の高さの低下を小さくすることができる。
【0051】
なお、本実施の形態の塗布装置1においては、液槽20及び塗布ノズル22の両方の形状によってレジスト液21の液面21aの面積を拡大するようにしているが、本発明はこれに限られるものではなく、液槽20の形状のみによって液面面積を拡大するようにしてもよい。すなわち、塗布ノズル22として液面面積を拡大するために考慮されたものでなくとも、液槽20の形状を液面拡大に寄与する形状とすることで液面21aの高さの低下量を抑制することができる。
【0052】
ここで、塗布ノズル22における毛管状隙間23に保持されるレジスト液21に作用する毛細管力は、レジスト液21の液面21の高さが低下することに伴って小さくなることにより、レジスト液21の液面21aの高さの低下が抑制されると、毛管状隙間23に保持されるレジスト液21に作用する毛細管力の低下も抑制されることになる。これにより、基板10に対するレジスト液21の塗布過程においてレジスト液21の消費に伴う液面21aの低下が抑制されるので、該塗布過程における毛細管力の変化が抑制されることになる。毛細管力は、塗布ノズル22の突起部22aと基板10の被塗布面20aとの間に形成されるレジスト液21のメニスカスの形状に影響を与えるものであり、毛細管力の変化が抑制されると、メニスカスの形状変化も抑制される。メニスカスの形状変化は基板10の被塗布面10aにレジスト液21が塗布されてなるレジスト膜の厚みに影響を与えることにより、メニスカスの形状変化が抑制されると、レジスト膜の膜厚の変化が抑制されることになる。
【0053】
このように本実施の形態の塗布ノズル22においては、液槽20に溜められたレジスト液21の液面21aの面積を、十分に大きくしていることにより、基板10に対するレジスト液21の塗布過程においてレジスト液21が消費されても液面21aの高さの低下を少なくすることができ、その結果、基板10の被塗布面10aに形成されるレジスト膜の膜厚の面内変化を抑制することができる。
【0054】
本実施態様においては、塗布中の、液槽20におけるレジスト液21の液面21aの面積は、上述したように、液槽20及び塗布ノズル22の形状によって決定される。もちろん、塗布装置の構成によって液面面積を決定する装置の条件は異なるので、装置構成に応じて適宜変更することができる。本実施の形態の塗布装置1においては、基板10に形成されるレジスト膜の要求される膜厚面内分布(1枚の基板10における膜厚の面内の変化)が許容範囲内となるように、液面21aの面積を、液槽20及び塗布ノズル22の形状によって決定することができる。
【0055】
図8は、保持手段5(図1)に保持されて水平移動する基板10及び塗布ノズル22の先端部を示す上面図を示し、基板10の縁部10cが塗布ノズル22の上方に対向する位置に基板10を搬入した後、この状態で塗布ノズル22を上昇させることで該塗布ノズル22のレジスト液21を基板10の縁部10c付近の塗布開始位置に接液させる。そして、この状態で基板10を矢印Y1で示す方向に水平移動させることにより、基板10の被塗布面10aにおいて縁部10c側から縁部10g側に向かって(矢印Y2方向に)レジスト液21を塗布しレジスト膜を形成する。これらの制御は、塗布装置1の制御部(図示せず)によって実行される。
【0056】
このように、塗布装置1では、基板10の縁部10c付近に設定された、縁部10cに沿った塗布開始位置に塗布ノズル22のレジスト液21を接液させた後、基板10の水平移動に伴って基板の略全面にレジスト膜を形成するようになっていることにより、縁部10c近傍の該縁部10cに沿った塗布開始位置から基板10の水平移動に伴って形成されるレジスト膜においては、その塗布過程における液槽20のレジスト液21の消費に伴って、塗布方向(矢印Y2方向)に亘って膜厚が次第に小さくなる傾向がある。塗布装置1においては、この膜厚面内分布が許容範囲に収まるような液面21aの面積が得られる構成となっている。
【0057】
図9は、液槽20及び塗布ノズル22の形状を決定するための手順を示すフローチャートであり、まず、液面21aの高さの低下量とレジスト膜の面内膜厚レンジとの関係を求める(ステップST11)。ここで、図10は、液槽20におけるレジスト液21の液面21aの高さの低下量Bと塗布方向Y2の面内膜厚レンジ(膜厚変化)Cの関係を例示すグラフである。この図10に示すように、液面21aの低下量Bと膜厚レンジCとの関係は1次式で定義することができ、液面21aの低下量Bが大きくなるほど、膜厚レンジCも大きくなることが分かる。図10に示す低下量Bと膜厚レンジCとの関係を表す関係式は、縦軸をy、横軸をxとすると、例えば、y=0.13x−5.76によって表される。なお、この関係式の係数は、レジスト液によって異なる係数となるが、いずれのレジスト液を用いる場合においても、1次式で定義されることとなる。本実施の形態においては、かかる相関関係に着目し、以下に説明する演算を行うことにより、液面21aの面積の下限を決定する。
【0058】
すなわち、液面21aの低下量B、塗布面積A、レジスト膜のウェット膜厚W、液槽20における塗布時(図4に示した塗布ノズル22が上昇した状態)の液面21aの面積Sの関係は、次式、
S=(A×W)/B ……(1)
によって表すことができる。図10に示した関係から、面内膜厚レンジ(膜厚変化)Cに許容される膜厚レンジxを代入し、これに対応する液面低下量Bを図10の関係から求めることにより、許容される低下量が得られる(図9:ステップST12)。そして、この液面低下量Bを下限とするような液面21aの面積Sを上記演算式によって求める(図9:ステップST13)。このようにして求められた面積S以上となるように液槽20及び塗布ノズル22の形状を決定することにより、基板10の被塗布面10aに形成されるレジスト膜の膜厚を許容される膜厚レンジxに収めることができる。
【0059】
因みに、図10に示す関係は、予め測定された結果によって得られる関係であり、この関係は記憶部(図示せず)に記憶されている。そして、制御部(図示せず)が図10の関係(1次式)と、許容される膜厚レンジxとを用いて上述の演算を実行することにより、必要な液面の面積Sが求められる。なお、上述の演算を実行する制御部は、塗布装置1を制御する制御部又は塗布装置1から独立したコンピュータ等を用いることができる。
【0060】
塗布装置1の液槽20及び塗布ノズル22は、以上説明した液面21aの面積S(形成されたレジスト膜の膜厚レンジが許容される膜厚レンジxに収まる面積)を少なくとも有するような形状に形成されている。
【0061】
また上述したように、上記膜厚レンジは、液面21aの面積が広いほど良好な結果となるが、液面21aの面積の上限としては、レジスト液21の劣化を防止し得ると共にその使用量が必要以上となることを防ぐ点を考慮して決められる。
【0062】
液槽20においては、以上説明した第1の領域AR1に加えて、さらに該第1の領域AR1から液槽20の内側面20dに続く傾斜面(第2の領域)20eが形成されている。この傾斜面20eは、レジスト液21の液面21aに沿った方向(水平方向)に対して傾斜して形成されており、第1の領域AR1から遠ざかるにしたがって高さが低くなるように形成されている。これにより、液槽20内に溜められるレジスト液21の液量を少なくすることができると共に、第1の領域AR1を十分な強度で支持することができるようになっている。
【0063】
次に、本実施の形態にかかるフォトマスクブランクの製造工程を説明する。図11は、本実施の形態に係るフォトマスクブランクの製造工程を示すフローチャートである。図11に示すように塗布装置1では、基板10を搬入して保持手段5にセットし(ステップST21)、保持手段5によって基板10を水平に保持しながらこれを水平移動させて塗布手段2の上部の塗布位置まで移動させる(ステップST22)。このステップにおいて、塗布装置1では、塗布ノズル22の上部に基板10の塗布開始位置である縁部10c付近の所定位置がくるように位置決めされる。そして、この状態において塗布ノズル22が上昇される(ステップST23)。塗布ノズル22が上昇すると、該塗布ノズル22の先端部に保持されたレジスト液21は、基板10の被塗布面10aの縁部10c付近の一か所の塗布開始点(接液起点)から該縁部10cに沿った塗布開始位置に直線状に接液する(ステップST24)。基板10の塗布開始位置の全長に亘ってレジスト液21が接液すると、塗布ノズル22を僅かに下降させて塗布ノズル22と被塗布面10aとの間に適切な塗布ギャップを形成する(ステップST25)。そして、この状態において、基板10を水平移動させて(すなわち、基板10と塗布ノズル22とを相対移動させて)、レジスト液21を基板10の被塗布面10aに塗布する(ステップST26)。このとき、基板10の代わりに、ノズルを移動させてもよい。これにより、基板10にはレジスト液21が塗布され、その後、塗布されたレジスト液21を乾燥させ、搬出する(ステップST27)。かくして、これらの処理工程によって、フォトマスクブランクが製造される。
【0064】
また、図12は、図11の工程により完成したフォトマスクブランクを用いてフォトマスクを製造する工程を示すフローチャートである。図12に示すように、フォトマスクの製造工程においては、まず、フォトマスクブランクの表面に形成されたレジスト膜に対して描画処理を行い(ステップST31)、続いて該レジスト膜の現像処理、ついで該レジスト膜をマスクとした遮光膜のエッチング処理を実行する(ステップST32、ステップST33)。これにより、遮光膜に所定のパターンが形成される。そして、最後にレジスト膜を剥離することにより(ステップST34)、フォトマスクが完成する。尚、図12は、透明基板上に遮光膜による遮光パターンが形成された、いわゆるバイナリマスクについての工程であるが、用途に応じて、遮光膜を積層にし、或いは遮光膜と半透光膜、或いは他の機能性の膜とを用いた、積層構成のフォトマスクに本発明を適用することももちろん可能である。その場合には、フォトリソ工程が2回以上になり、これらのそれぞれの工程において、本発明のレジスト液塗布方法を適用することが可能であり、それにより更に良好な効果が得られる。
【0065】
以上説明した塗布装置1及びこの塗布装置1を用いたフォトマスクブランクの製造方法においては、図4に示したように、液槽20の上面から塗布ノズル22の先端部を突出させた状態で、該先端部に毛細管力により保持されたレジスト液21を基板10の被塗布面10aに塗布する。この場合、塗布過程においてレジスト液21が消費することにより、液槽21内のレジスト液21の量は減少し、その液面21aの高さは、図7に一点鎖線で示すように低下する。この低下量dは、レジスト液21の液面21aの面積に依存する。ここで、基板10へのレジスト液21の塗布により形成されるレジスト膜の膜厚は、基板10の被塗布面10aの全体に亘って均一であることが望ましく、膜厚変化は、液槽20におけるレジスト液21の液面の低下量dに依存する。本実施の形態の塗布装置1においては、許容される膜厚面内変化に応じて液面の低下量dが決定され、塗布開始前後における低下量がこの決定された低下量d以内に収まるような液面面積が得られるように構成されている。この液面面積は、塗布手段(液槽20、塗布ノズル22)の形状により決定される。
【0066】
本実施の形態において、例えば、許容される膜厚レンジ(膜厚変化)xが20〔nm〕(=200〔Å〕)である場合、この値を上述の(1)式に代入することにより、基板面積(塗布面積)A及び膜厚Wに応じて必要となる液面面積Sを求めることができる。そして、液槽20の第1の領域AR1の範囲を液面面積Sを得ることができる範囲とすることで、許容される膜厚レンジxを実現することができる。なお、上述したように、液面面積Sを得るための形状は、液槽20の第1の領域AR1に加えて、塗布ノズル22の形状の形状によっても達成することができる。
【0067】
尚、一辺が1000mm以上の矩形のフォトマスクブランクにおいて、レジスト膜のウエット膜厚の面内変化が20nm以下であれば、該フォトマスクブランクを用いて、液晶表示装置用などのフォトマスクを作製する際の、線幅制御が十分に行える。すなわち、ウェットエッチングによるエッチング終点の決定が、精緻に行える。
【0068】
以上説明したレジスト液21の塗布方法においては、基板10の被塗布面10aに形成されるレジスト膜の膜厚レンジが許容範囲外に大きくなることを防止することができる。このようにして製造されたフォトマスクブランクにおいては、後工程において形成されるレジストパターンの線幅等における精度が確保可能であり、歩留りを向上することができる。これにより、このフォトマスクブランクを用いて製造されたフォトマスクにおいては、目的パターンに対する誤差の小さい遮光膜パターンを得ることができる。
【0069】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態においては、液槽20の形状として、図3及び図4について上述したように、液槽20に第1の領域AR1を設けて液面面積を拡大する場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、図13及び図14に示すように、液槽20の内壁面の一部である傾斜面120dにおいて、液面21aと平行な液面拡大部120bを形成するようにしてもよい。この液面拡大部120bが設けられた領域AR11においては、液面拡大部120bの深さd´の範囲内に液面21aが存在する場合に液面21aが拡大されることになる。この液面拡大部120bの大きさは、基板10に形成されるレジスト膜の膜厚変化が許容される変化以内に収まるような液面面積が得られる大きさとなっており、さらにこの液面拡大部120bの深さd´は、少なくとも1枚の基板10へのレジスト液21の塗布過程において拡大された液面21aが維持される程度の深さに形成されている。
【0070】
かくして、本実施の形態においても、基板10の被塗布面10aに形成されたレジスト膜の膜厚変化を許容内に収めることができる。
【0071】
(他の実施の形態)
なお上述の実施の形態においては、液槽20の形状、または液槽20及び塗布ノズル22の形状によってレジスト液21の液面21aを拡大する場合について述べたが、本発明ではこれに限られるものではなく、例えば図15に示すように、液槽20本体とは別にサブタンク220を設け、このサブタンク220における液面221aの分だけ液槽20のレジスト液21の液面21aを実質的に拡大させるようにしても上述の場合と同様の効果を得ることができる。
【0072】
また上述の実施の形態においては、サイズが1220mm×1400mmのフォトマスクブランクを製造する場合について述べたが、本発明ではこれに限定されるものではなく、種々の大きさのフォトマスクブランクを製造する場合に適用することができる。
【0073】
以上、本発明に係る塗布装置及び製造方法について好ましい実施の形態を示して説明したが、本発明では前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)を製造するためのフォトマスクブランク及びフォトマスクを製造する場合に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る塗布装置を示す側面図
【図2】図1の塗布装置の塗布手段の構成を示す断面図
【図3】図2の塗布手段の液槽及び塗布ノズルの構成を示す拡大断面図
【図4】図2の塗布手段の液槽及び塗布ノズルの構成を示す拡大断面図
【図5】図4のa−a線を断面にとって示す横断面図
【図6】図1の塗布装置の構成を示す正面図
【図7】図2の塗布手段の液槽及び塗布ノズルの構成を示す拡大断面図
【図8】基板及び塗布ノズルを示す上面図
【図9】液面面積を算出するための処理手順を示すフローチャート
【図10】液面降下量と膜厚レンジ(膜厚変化量)との関係を示すグラフ
【図11】本発明によるフォトマスクブランクの製造工程を示すフローチャート
【図12】フォトマスクの製造工程を示すフローチャート
【図13】第2の実施の形態の液槽を示す拡大断面図
【図14】第2の実施の形態の液槽を示す拡大断面図
【図15】他の実施の形態のサブタンク付きの液槽を示す断面図
【符号の説明】
【0076】
1 塗布装置
2 塗布手段
3 吸着手段
4 移動手段
5 保持手段
10 基板
10a 被塗布面
10c 縁部
11 ベースフレーム
12 移動フレーム
20 液槽
20a 透孔部
20b 透孔
20c 天井部
20d 内側面
20e 傾斜面
21 レジスト液
21a、221a 液面
22 塗布ノズル
22a 突起部
22b 第1の側面部
22c 第2の側面部
23 毛管状隙間
120b 液面拡大部
120d 傾斜部
220 サブタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液槽と、該液槽に貯留されたレジスト液を毛細管現象により上昇させる塗布ノズルとを含む塗布手段により前記上昇させた前記レジスト液を下方に向けられた基板の被塗布面に接液させ、前記塗布ノズルと前記基板とを相対的に移動させて前記基板の被塗布面にレジスト膜を形成することを含むフォトマスクブランクの製造方法であって、
前記基板への前記レジスト液の塗布による該レジスト液の消費により低下する前記液槽のレジスト液の液面高さの低下量と、前記基板の被塗布面に形成される前記レジスト膜の膜厚面内変化との関係を把握し、
該関係に基づいて、前記レジスト膜の膜厚面内変化を許容範囲内に収めるための前記液槽のレジスト液の液面面積を決定し、
該液面面積を有する前記塗布手段により前記レジスト膜を形成することを特徴とするフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項2】
前記レジスト膜の膜厚面内変化の許容範囲は、塗布直後の膜厚の面内膜厚変化が、一辺が1000mm以上の矩形の基板に形成されるレジスト膜において20〔nm〕以下であることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項3】
前記液槽は、前記塗布ノズルの上下動に伴って該塗布ノズルが通る透孔部を前記液槽の天井部に具備し、前記透孔部の大きさは、前記液槽に貯留されるレジスト液の液面面積よりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項4】
塗布の開始時から終了時の間に、レジスト液面面積が最大になる液面高さとなるように、液槽内のレジスト量を調整することと特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載のフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項5】
塗布の開始時から終了時の間に、基板に塗布されたレジスト膜厚の変動が、2%以下となるように、レジスト液面面積が調整されることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載のフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項6】
液槽と、該液槽に貯留されたレジスト液を毛細管現象により上昇させる塗布ノズルとを含む塗布手段により前記上昇させた前記レジスト液を下方に向けられた基板の被塗布面に接液させ、前記塗布ノズルと前記基板とを相対的に移動させて前記基板の被塗布面にレジスト膜を形成することにより製造されたレジスト膜付フォトマスクブランクを用意する工程と、
前記レジスト膜付フォトマスクブランクのレジスト膜にパターンを描画し、現像することによってレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして該遮光膜をエッチング処理する工程とを含むフォトマスクの製造方法であって、
前記レジスト膜付フォトマスクブランクは、
請求項1から請求項5のいずれかの製造方法によって製造されたものであることを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項7】
液槽と、該液槽に貯留されたレジスト液を毛細管現象により上昇させる塗布ノズルとを含む塗布手段により前記上昇させた前記レジスト液を下方に向けられた基板の被塗布面に接液させ、前記塗布ノズルと前記基板とを相対的に移動させて前記基板の被塗布面にレジスト膜を形成する塗布装置であって、
前記基板への前記レジスト液の塗布による該レジスト液の消費により低下する前記液槽のレジスト液の液面高さの低下量と、前記基板の被塗布面に形成される前記レジスト膜の面内膜厚変化との関係に基づいて決定された、前記レジスト膜の面内膜厚変化を許容範囲内に収めるための前記液槽のレジスト液の液面面積を有する前記塗布手段を具備することを特徴とする塗布装置。
【請求項8】
液槽と、該液槽に貯留されたレジスト液を毛細管現象により上昇させる塗布ノズルとを含む塗布手段により前記上昇させた前記レジスト液を下方に向けられた基板の被塗布面に接液させ、前記塗布ノズルと前記基板とを相対的に移動させて前記基板の被塗布面にレジスト膜を形成する塗布装置であって、
前記基板への前記レジスト液の塗布による該レジスト液の消費により低下する前記液槽のレジスト液の液面高さの低下にかかわらず、一辺が1000mm以上の矩形形状をもつ前記基板に形成される前記レジスト膜の面内膜厚変化が、塗布直後の膜厚面内変化量として、20nm以下となる、前記液槽のレジスト液の液面面積を有する前記塗布手段を具備する塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−139876(P2010−139876A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317384(P2008−317384)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】