説明

プラズマ処理を行う方法、及び基板生産物を作製する方法

【課題】プラズマ処理の適切な終点を検知することが可能な、プラズマ処理を行う方法を提供する。
【解決手段】工程S108では、エッチング残さを除去するためのプラズマアッシングを開始する。プラズマアッシングの開始によりチャンバ内の圧力が上昇して、チャンバ内の圧力を調整するためにCVバルブの開度が調整される。工程S109では、エッチング装置では、CVバルブの開度を示す信号の変化を検知するために、この信号の微分演算又は差分演算を行う。微分演算を行う場合には、工程S110では、エッチング装置では、プラズマ処理の終点を検知するために、この微分値の判定を行う。プラズマ処理の終点では、反応物の生成が減少するので、CVバルブの開度を示す信号に変化が生じてアッシングが終点に近づくとチャンバ内の圧力が減少し、微分値は大きく変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理を行う方法及び基板生産物を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1−3には、CH/Hの混合ガスを用いたドライエッチングにより化合物半導体を加工して化合物半導体素子を作製している。非特許文献4−5には、CH/Hの混合ガスを用いたドライエッチングでは、ハイドロカーボンの堆積が生じ、その堆積物の分析が示されている。非特許文献6には、CH/Hの混合ガスを用いたドライエッチングとOアッシングとを交互に繰り返すプロセスが示されている。非特許文献7には、交互繰り返しプロセスにおいてはOアッシングにより損傷が生じることが記載されている。
【0003】
特許文献1−3には、Oアッシングにおける終点検知の方法が記載されている。特許文献1では水素の発光スペクトル強度変化を利用しており、特許文献2では試料表面の反射光強度変化を利用しており、特許文献3ではガス分析を利用している。
【非特許文献1】J.Lightwave.Technol,Vol.15,No.3,Mar 1997
【非特許文献2】Photonics.Technol.Lett,Vol.10,No.8,Aug 1998
【非特許文献3】Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 41 (2002) pp. 1072-1075 Part 1, No. 2B, February2002
【非特許文献4】J.Vac.Sci.Technol.B,Vol.7,No.5,Sep/Oct 1989
【非特許文献5】J.Vac.Sci.Technol.B,Vol.8,No.4,Jul/Aug 1990
【非特許文献6】Jpn. J. Appl. Phys., vol.38, no.11B, pp.L1323-L1326, Nov. 1999.
【非特許文献7】Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 41 (2002) pp. 1072-1075Part 1, No. 2B, February 2002
【特許文献1】特開2000−173992号公報
【特許文献2】特開2000−183041号公報
【特許文献3】特開平09−213682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1−3に示されるように、上記の混合ガスは、InP系半導体といったIII−V化合物半導体の加工(例えば、エッチング)に用いられる。この加工では、非特許文献4−6に示されるように、このエッチング中にハイドロカーボン(hydro-carbon)が堆積する。マスク上、マスク側面、および加工面側面に堆積したハイドロカーボンは、加工形状における変換差を大きくする要因となる。また、ハイドロカーボンはチャンバの内壁にも堆積する。このため、エッチングレート等がエッチング処理毎に変動する要因になる。
【0005】
これを解決するために、非特許文献6に示されるように、混合ガスによるドライエッチングのステップとハイドロカーボンを酸素プラズマのアッシングにより除去するステップを交互に繰り返す。ところが、非特許文献7に示されるように、長時間のプラズマアッシングは、半導体結晶を損傷させて、素子の信頼性低下を引き起こす。このため、プラズマアッシングを必要以上に長時間実施したくない。また、長時間のプラズマアッシングは、タクトタイム増大による生産性低下となる。
【0006】
したがって、プラズマアッシングといったプラズマ処理の適切な終点検出が望まれている。ハイドロカーボンのOガスによるプラズマアッシングの反応機構は、レジストのプラズマアッシングと基本的には同じである。プラズマアッシングの終点検知には、例えば、以下のような方法が知られている。
(1)アッシングに伴う反応生成物である炭化水素(CO)の発光スペクトル強度変化を利用する。
(2)特許文献1に示されるように、アッシングに伴う反応生成物である水素の発光スペクトル強度変化を利用する。
(3)特許文献2に示されるように、試料表面に照射した光の反射光強度変化を利用する。
(4)特許文献3に示されるように、アッシングに伴う反応生成物の量及び種の変化をガス分析でモニタする。
【0007】
しかしながら、上記の方法を実現する設備をチャンバ内に追加することが必要であり、この追加により既存のプロセス条件へ影響を与え、最適なプロセス条件を変化させる可能性がある。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、プラズマ処理の適切な終点を判定することが可能な、プラズマ処理を行う方法を提供することを目的とし、またプラズマ処理を行って基板生産物を作製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、半導体装置のためのプラズマ処理を行う方法である。この方法は、(a)チャンバ内の圧力のモニタによりコントロールゲートバルブの動作を制御して前記チャンバ内の圧力を調整可能であると共に前記チャンバに前記半導体装置のための基板を内包する処理装置に、プロセスガスを供給して、前記基板の被処理物へのプラズマ処理を開始する工程と、(b)前記コントロールゲートバルブの動作の変化に基づいて、前記プラズマ処理の終点判定を行う工程とを備え、前記基板は前記半導体装置のための半導体層を有する。
【0010】
この方法によれば、コントロールゲートバルブは、被処理物とプロセスガスとの反応の生成物により生じるチャンバの圧力変化に応答して調整される。故に、反応の終点では、反応の生成物の生成量が大きく変化して、この変化はコントロールゲートバルブの動作の変化に反映される。したがって、半導体層を有する基板にプラズマ処理を行う際に、コントロールゲートバルブの動作の変化に基づいてプラズマ処理の終点を検知できる。また、コントロールゲートバルブの動作をモニタすることにより終点検知を行うので、既存のプロセス条件への影響を低減できる。
【0011】
本発明に係る方法は、前記コントロールゲートバルブの動作の変化を得るために、前記コントロールゲートバルブの開度の時間変化の微分演算又は差分演算を行う工程を更に備えることができる。
【0012】
この方法によれば、プラズマ処理の終点検知は、コントロールゲートバルブ動作の変化の上記演算による変化率によって提供される。
【0013】
本発明に係る方法は、前記終点判定が終点の検知であることに応答して、前記プラズマ処理を停止する工程を更に備えることができる。この発明によれば、終点検知に応答してプラズマ処理を停止することによって、プラズマ処理のダメージを低減できる。
【0014】
本発明に係る方法では、前記コントロールゲートバルブのリミッティングコンダクタンスが、毎秒40リットル以下であることができる。この方法によれば、リミッティングコンダクタンスが上記の値程度でも、終点検知が可能である。
【0015】
本発明に係る方法では、前記被処理物は炭化水素化合物を含み、前記プラズマ処理は、酸素を含むガスによるプラズマアッシングであることができる。この方法によれば、炭化水素化合物の除去処理の終点検知が可能である。
【0016】
本発明に係る方法は、前記プラズマ処理に先立って、前記基板にドライエッチングを行う工程を更に備えることができる。前記被処理物は前記ドライエッチングによるハイドロカーボンを含み、前記プラズマ処理は、酸素を含むガスによるプラズマアッシングである。この方法によれば、ドライエッチングにより生成された被処理物の量をプラズマアッシングにより低減できる。
【0017】
本発明に係る方法では、前記基板はInP系半導体層を含み、前記ドライエッチングは、炭化水素ガス及び水素を含むガスを用いて前記InP系半導体層に対して行われる。この方法では、InP系半導体層のエッチングが行われる。
【0018】
本発明の別の側面は、基板を加工して半導体装置のための基板生産物を作製する方法である。この方法は、(a)チャンバ内の圧力のモニタによりコントロールゲートバルブの動作を制御して前記チャンバ内の圧力を調整する処理装置の前記チャンバ内に、支持基体と該支持基体上に設けられた被加工層及びマスク層とを含む基板を設置する第1の工程と、(b)エッチングのためのガスを前記処理装置に供給して、前記ガスのプラズマによるドライエッチング処理を前記マスク層を用いて前記被加工層に行う第2の工程と、(c)前記ドライエッチング処理の後に、プラズマアッシングのためのプロセスガスを前記チャンバに供給して、前記基板へのプラズマ処理を開始する第3の工程と、(d)前記コントロールゲートバルブの動作の変化に基づいて、前記プラズマ処理の終点検知を行う第4の工程と、(e)前記終点検知に応答して、前記プラズマ処理を停止する第5の工程と、(f)前記ドライエッチング処理による加工により作製された基板生産物を前記処理装置から取り出す第6の工程とを備えることができる。前記基板は半導体層を有する。
【0019】
この方法によれば、ドライエッチングにより生じた反応生成物をプラズマ処理により除去できる。
【0020】
本発明に係る方法は、前記第6の工程に先立って、前記第2の工程から前記第5の工程を繰り返す工程を更に備えることができる。この方法によれば、加工のためのドライエッチングと、プラズマ処理による反応生成物の除去とを繰り返すので、反応生成物の残存による影響をドライエッチング処理において低減できる。
【0021】
本発明に係る方法では、前記マスク層はシリコン系無機化合物絶縁物からなり、前記半導体層はInP系半導体からなる。この方法によれば、マスク層はプラズマ処理により実質的に影響されることなく、ドライエッチングの反応生成物がプラズマ処理により除去される。
【0022】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、プラズマ処理の適切な終点を検知することが可能な、プラズマ処理を行う方法が提供される。また、本発明によれば、プラズマ処理を行って基板生産物を作製する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明のプラズマ処理を行う方法及び基板生産物を作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係るプラズマ処理を行う方法及び基板生産物を作製する方法に用いるプラズマ処理装置を概略的に示す模式図である。プラズマ処理装置は、例えばドライエッチング装置である。引き続く実施例の説明では、このドライエッチング装置を用いて化合物半導体のエッチングを行う。このエッチングのプロセスでは、例えばCH/H混合ガスによるドライエッチングとOガスによるプラズマアッシングとが交互に繰り返される。
【0026】
まず、図1を参照しながら、ドライエッチング装置10を説明する。ドライエッチング装置10はチャンバ11を含み、チャンバ11内には基板Wを配置するためのステージ電極13が設けられている。誘導結合コイル14が、チャンバ11の外周に設けられており、チャンバ11に供給されたプロセスガスのプラズマ12を生成する。ステージ電極13には高周波電源15が接続されており、誘導結合コイル14には高周波電源16が接続されている。ドライエッチング装置10はチャンバ11を減圧するための排気ポンプ(例えば、ターボ分子ポンプ)17を含み、排気ポンプ17の上流にはメインバルブ19が設けられおり、排気ポンプ17の下流にはフォアバルブ20aを介して別の排気ポンプ(例えば、ロータリーポンプ)18が設けられている。排気ポンプ18は、ラフバルブ20bを介して直接にチャンバ11に接続されている。チャンバ11は、コントロールゲートバルブ(「CVバルブ」と記す)22を介してメインバルブ19に接続されている。
【0027】
CVバルブ22は、自動圧力制御コントローラ23からライン21を介して与えられる信号に応答して動作すると共に、CVバルブ22の開度(開きの程度)を示す信号を生成する。CVバルブ22の上流には、排気系の真空度をモニタする第1の真空計(例えば、ダイアフラム真空計)24及び第2の真空計(例えば、電離真空計)25が設けられており、より具体的には、真空計24は、処理する基板の近くに接続されている。真空計24は真空度を示す信号を生成して、この信号はライン31を介して自動圧力制御コントローラ23に提供される。自動圧力制御コントローラ23は、制御回路(例えばプログラマブルロジックコントローラ:PLC)26にライン32を介して接続されており、制御回路26は、高周波電源15、16を制御するための信号を生成し、これらの信号は、ライン33を介して高周波電源15、16に提供される。
【0028】
チャンバ11には、マスフローコントローラ(MFC)27、28、29を介していくつかのプロセスガスG(例えば、H、CH及び/又はO)が供給され、またリークバルブ30を介してNガスが供給される。
【0029】
この例では、自動圧力制御コントローラ23は、真空度の情報を含む信号S1をライン31を介して真空計24から受け取り、これに応答してCVバルブ22の開度を調整する。CVバルブ22は、実際の開度の情報を含む信号S2を制御回路26が提供する。制御回路26は、開度情報を含む信号S2に基づき終点の判定を行う。この信号S2は、CVバルブ22から提供され、例えばライン21、自動圧力制御コントローラ23及びライン32を介して制御回路26に提供される。制御回路26は信号S2に基づき終点の判定を行う。この判定が「終点未検出」であるとき、プロセスはそのまま継続される。また、この判定が「終点検出」であるとき、制御回路26が高周波電源15、16に信号S3を送り、高周波電源15、16はプロセス終了のための動作(例えば、パワーオフ)を行う。通常のドライエッチング装置は、ドライエッチング装置10のようなCVバルブ22および自動圧力制御コントローラ23等を備えられており、多くの場合、制御回路26のためのPLCを変更することにより、上記のような制御、つまり開度情報を含む信号に基づき終点の判定を行う制御が可能になる。
【0030】
具体的には、CVバルブ22の開度によりOプラズマアッシングの終点判定を行うことができる。制御回路26がCVバルブ22の開度情報を自動圧力制御コントローラ23を経由して受け取ると共に終点判定を行なって、この判定に応じて高周波電源15、16にプロセス終了の信号を出して、Oプラズマアッシングが終了する。
【0031】
図2は、上記のプロセスガスを用いたドライエッチングの後のプラズマアッシングにおける制御の一例を説明する図面である。ドライエッチングでは、ハイドロカーボン(C)といったエッチング残渣が発生する。ハイドロカーボンは、酸素プラズマと反応して反応生成物(CO、H、HO等)に変換されて低減される。この反応に際して、反応生成物(CO、H、HO等)がチャンバに放出されて、放出物によりチャンバ内の圧力が変化する。図2(b)に示されるように、時刻Sにおいて、チャンバには、例えば酸素が供給されている。図2(a)に示されるように、時刻Sにおいて、高周波電源がコイルにパワーを供給する。酸素プラズマが生成されると共に、ハイドロカーボンと酸素プラズマとの反応により反応生成物が生成される。反応生成物のため、図2(c)に示されるように、チャンバ内の圧力が上昇する。図2(d)に示されるように、この圧力上昇に応じて、CVバルブの開度が調整される。ここでは、圧力の上昇が発生したので、CVバルブはより大きく開かれる。図2(c)に示されるように、時刻Sでは、ハイドロカーボンの大部分は実質的に除去されてきており、反応生成物の量も除々に減少している。これに応答して、図2(d)に示されるように、この圧力減少に応じてCVバルブの開度が調整される。ここでは、圧力の減少が発生したので、CVバルブの開度は小さくなる。時刻Sにおいて、ハイドロカーボンはほぼ完全に除去されており、反応生成物による圧力変化がない。
【0032】
図3は、基板生産物を作製する方法の一例のための工程フローを示す図面である。工程プローを参照すると、工程S101では、複数のIII−V化合物半導体膜を支持基体上に成長して、エピタキシャル基板を作製する。この結晶成長は例えば有機金属気相成長法で行われる。エピタキシャル基板は、例えば、半導体ウエハ、InP系半導体光素子のための活性層(例えばGaInAsP)、n型半導体層(例えばSi添加InP)およびp型半導体層(例えばZn添加InP)を含むことができる。例えば、活性層のためのGaInAsP、n型クラッドのためのSi添加InPおよびp型クラッドのためZn添加InP層が、InPウエハといったIII−V化合物半導体ウエハ上に形成されている。
【0033】
工程S102では、エピタキシャル基板上に絶縁膜マスクを形成する。例えば、導波路構造を作製するためには、絶縁膜マスクはストライプ形状を成す。絶縁膜マスクは、例えばシリコン酸化膜といった絶縁性シリコン無機化合物からなることができる。
【0034】
絶縁膜マスクを形成した後に、工程S103では、エピタキシャル基板を処理装置にセットする。処理装置は、例えばドライエッチング装置10を用いることができる。次いで、工程S104では、絶縁膜マスクを用いてエピタキシャル基板を処理装置において加工する。本実施例では、工程S105において、絶縁膜マスクを用いてエピタキシャル基板のドライエッチングを行って、複数のIII−V化合物半導体膜を加工する。この結果、光導波路のための半導体メサ構造が作製される。この加工のために、プロセスガス(例えばH、CH)を用いる。このドライエッチングでは、不可避的に反応生成物も生成され、これは、エッチングにより生成された半導体表面やチャンバ内壁等に堆積する。この堆積物は、エッチングに好ましくないものである。ドライエッチングの後に、工程S106において、加工されたエピタキシャル基板のプラズマアッシングを絶縁膜マスクを用いて行う。工程S107において、所望の処理が完了するまでドライエッチング及びプラズマアッシングを繰り返して、エピタキシャル基板の全加工を完了する。
【0035】
工程S106をより詳細に説明する。工程S108では、エッチング残さを除去するためのプラズマアッシングを開始する。プラズマアッシングの開始により、図2に示されるように、チャンバ内の圧力が上昇して、チャンバ内の圧力を調整するためにCVバルブの開度が調整される。工程S109では、エッチング装置10では、CVバルブの開度を示す信号Aの変化を検知するために、この信号の変化率を求める演算(例えば、微分演算又は差分演算)を行う。微分演算では、CVバルブの開度を示す信号に変化が無ければ、微分値はゼロである。また、工程S110では、具体的には、図4(a)に示されるように、エッチング装置10が、プラズマ処理の終点を検知するために、この微分演算の値の判定を行う。プラズマ処理の終点では、反応物の生成が減少するので、CVバルブの開度を示す信号Aに変化が生じて、微分値Dは大きく変化する。プラズマアッシングが終点EPに近づくとチャンバ内の圧力が減少し、終点EPに到達した後にはチャンバ内の圧力が変化しなくなるので、微分値Dは、上昇してピーク値に到達した後に、減少する。信号Aの微分値を監視して、ある閾値TH1と比較する。この閾値TH1との比較(例えば、信号Aの値が閾値TH1より小さいか否かという比較)により終点EPを判定するので、終点EPの判定は正確になる。例えば、閾値TH1の値は0.8%/secである。工程S111では、プラズマアッシング終点の判定に応じて、プラズマ処理を停止する。
【0036】
ハイドロカーボンの酸素プラズマアッシングでは、酸素ラジカルや酸素イオンとの反応によって、ハイドロカーボンは一酸化炭素、水素および水に分解され揮発する。生成される一酸化炭素および水素等の揮発物の量は、被処理物(例えば、ハイドロカーボンやレジスト)の表面積が大きいほど多くなる。このため、完全に除去される間際になると生成量は急激に減少する。この減少に応答して、同じチャンバ圧力を維持するために動作しているCVバルブの開度は、上記の生成物の量の減少に伴って小さくなる。アッシングにより揮発物を生成する被処理物が完全に除去された後では、揮発物は生じないのでCVバルブ開度は一定になる。CVバルブ開度の時間変化をアッシングの終点検知として利用できる。
【0037】
上記の工程により、エピタキシャル基板を加工して基板生産物を作製することができる。所望のエッチングが完了した後に、工程S112において、基板生産物を処理装置から取り出す。
【0038】
微分値及び差分値といった変化率を用いること無く、プラズマアッシング終点の判定を行うこともできる。図4(b)に示されるように、CVバルブの開度を示す信号Aの値を監視して、ある閾値TH2と比較する。この閾値TH2との比較(例えば、信号Aの値が閾値TH2より小さいか否かという比較)により終点EPを判定するので、終点EPの判定は正確になる。
【0039】
図5は、エッチング及びアッシングの繰り返しを示す図面である。プロセスPは、本実施の形態に係る方法によるフローを示しており、プロセスCは、微分値を用いず閾値判定に係る方法によるフローを示す。
【0040】
プロセスCについて説明する。時刻t〜時刻tの期間Tにおいて第1エッチングを行う。時刻t〜時刻tの期間TV1において、チャンバ内からエッチングガス及び生成物を排気する。時刻t〜時刻tの期間TA2において、第1プラズマアッシングを行う。時刻t〜時刻tの期間TV2において、チャンバ内からアッシングガス及び生成物を排気する。この後に、これらの工程の期間T、TV1、TA2、TV2が繰り返されて、所望の基板生産物を作製する処理は時刻tE2に完了する。
【0041】
プロセスPについて説明する。時刻t〜時刻tの期間Tにおいて第1エッチングを行う。時刻t〜時刻tの期間TV1において、チャンバ内からエッチングガス及び生成物を排気する。時刻t〜時刻tの期間TA1において、第1プラズマアッシングを行う。このプラズマアッシングは、適切な終点判定のために、オーバーアッシングの期間を短くできるので、期間TA1は期間TA2に比べて短い。時刻t〜時刻tの期間TV2において、チャンバ内からアッシングガス及び生成物を排気する。この後に、これらの工程の期間T、TV1、TA1、TV2が繰り返されて、所望のプラズマ処理は時刻tE1に完了する。故に、プロセスPの処理時間は、プロセスCの処理時間より短い。
【0042】
上記の終点検知によってアッシング時間を最小限に最適化可能なので、タクトタイムは図5に示すように大幅に低減する。また、アッシング時間が最小限となることは結晶へのダメージ低減にも寄与する。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態では、ドライエッチング中の反応性生物発生によってチャンバ内の圧力が変化し、この圧力変化をプロセス終端判定方法として用いている。実施例における処理装置及び処理条件では、リミッティングコンダクタンスが毎秒20リットル程度であり、プロセスガス流量に対する反応生成物気体の発生量が相対的に大きい。このため、CVバルブの開度の変化として現れる圧力の変化を容易に捉えることができる。通常はあまり注目することのない処理中のCVバルブの開度変化を利用することによって適切な終点判定の情報を得ることができる。なお、リミッティングコンダクタンスが毎秒40リットル以下でも、反応の終了により圧力変化が、CV開度変化として現れることは確認している。本実施の形態は一例であり、本実施の形態では、CV開度変化に基づき圧力の小さい変化を検出している。リミッティングコンダクタンスが大きくなっても感度の良い圧力変動センサを用いることにより、CVバルブの開度を用いず終点の判定可能であると考えられる。
【0044】
本発明の実施例として、反応生成物量の変化を自動圧力制御機構のCVバルブの開度変化としてモニタすることによってプロセスの終点検知を行うドライエッチング及びプラズマアッシング方法を説明した。これによって、例えば、メタン/水素の混合ガスによるドライエッチング後に行う酸素ガスによるプラズマアッシングの処理時間を必要最小限にすることができ、最小限の損傷のエッチングを安定に、かつ最小限のタクトタイムで行うことが可能となる。また、レジストのプラズマアッシングや半導体のドライエッチング等の反応性生物がガスとして揮発するプラズマプロセスにおいても本実施の形態に係る方法を適用できる。
【0045】
チャンバ内の圧力を一定に制御するためにドライエッチング装置には必ず備えられている自動圧力制御機構を終点検知センサとして用いれば、付加的な装置は必要無く、他のアッシング終点検知方法と異なり、生産コストへの影響は小さい。また、既存の処理設備に後から本件を適用する場合においても、シーケンサ等の制御プログラムの変更等により対応可能であるので、設置面積の制約を受けず、また最適エッチング条件やウエハ面内分布が変化してしまうことも無い。
【0046】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るプラズマ処理を行う方法及び基板生産物を作製する方法に用いるプラズマ処理装置を概略的に示す模式図である。
【図2】図2は、プラズマアッシングにおける制御例を説明する図面である。
【図3】図3は、基板生産物を作製する方法の一例のための工程フローを示す図面である。
【図4】図4は、CVバルブの開度を利用して終点を判定する方法を例を示す図面である。
【図5】図5は、エッチング及びアッシングの繰り返しを示す図面である。
【符号の説明】
【0048】
10…ドライエッチング装置、11…チャンバ、W…基板、12…プラズマ、13…ステージ電極、14…誘導結合コイル、15、16…高周波電源、17、18…排気ポンプ、19…メインバルブ、20a…フォアバルブ、20b…ラフバルブ、22…コントロールゲートバルブ(CVバルブ)、23…自動圧力制御コントローラ、24、25…真空計、26…制御回路、27、28、29…マスフローコントローラ(MFC)、30…リークバルブ、21、31、32、33…ライン、S、S、S、S…時刻、D…微分値、EP、EP…終点、A…CVバルブの開度を示す信号、TH…閾値、T…エッチングの期間、TV1、TV2…排気の期間、TA2…プラズマアッシングの期間、TA1…プラズマアッシングの期間、tE1…所望の基板生産物を作製する処理時刻、tE2…所望の基板生産物を作製する処理は時刻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置のためのプラズマ処理を行う方法であって、
チャンバ内の圧力のモニタによりコントロールゲートバルブの動作を制御して前記チャンバ内の圧力を調整可能であると共に前記チャンバに前記半導体装置のための基板を内包する処理装置に、プロセスガスを供給して、前記基板の被処理物へのプラズマ処理を開始する工程と、
前記コントロールゲートバルブの動作の変化に基づいて、前記プラズマ処理の終点判定を行う工程と
を備え、
前記基板は、前記半導体装置のための半導体層を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コントロールゲートバルブの動作の変化を検知するために、前記コントロールゲートバルブの開度の時間変化おける微分演算又は差分演算を行う工程を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記終点判定が終点の検出であることに応答して、前記プラズマ処理を停止する工程を更に備える、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記コントロールゲートバルブのリミッティングコンダクタンスが、毎秒40リットル以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された方法。
【請求項5】
前記被処理物は、炭化水素化合物からなり、
前記プラズマ処理は、酸素を含むガスによるプラズマアッシングである、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された方法。
【請求項6】
前記プラズマ処理に先立って、前記基板にドライエッチングを行う工程を更に備え、
前記被処理物は前記ドライエッチングによるハイドロカーボンを含み、
前記プラズマ処理は、酸素を含むガスによるプラズマアッシングである、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された方法。
【請求項7】
前記基板はInP系半導体層を含み、
前記ドライエッチングは、炭化水素ガス及び水素を含むガスを用いて前記InP系半導体層に対して行われる、ことを特徴とする請求項6に記載された方法。
【請求項8】
基板を加工して半導体装置のための基板生産物を作製する方法であって、
チャンバ内の圧力のモニタによりコントロールゲートバルブの動作を制御して前記チャンバ内の圧力を調整する処理装置の前記チャンバ内に、支持基体と該支持基体上に設けられた被加工層及びマスク層とを有する基板を設置する第1の工程と、
前記ドライエッチング処理の後に、エッチングのためのガスを前記処理装置に供給して、前記ガスのプラズマによるドライエッチング処理を前記マスク層を用いて前記被加工層に行う第2の工程と、
プラズマアッシングのためのプロセスガスを前記チャンバに供給して、前記基板へのプラズマ処理を開始する第3の工程と、
前記コントロールゲートバルブの動作の変化に基づいて、前記プラズマ処理の終点検知を行う第4の工程と、
前記終点検知に応答して、前記プラズマ処理を停止する第5の工程と、
前記ドライエッチング処理による加工により作製された基板生産物を前記処理装置から取り出す第6の工程と
を備え、
前記基板の前記被加工層は前記半導体装置のための半導体層を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記第6の工程の工程に先立って、前記第2の工程から前記第5の工程を繰り返す工程を更に備える、ことを特徴とする請求項8に記載された方法。
【請求項10】
前記マスク層はシリコン系無機化合物絶縁物からなり、
前記半導体層はInP系半導体からなる、ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−40716(P2010−40716A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201023(P2008−201023)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】