プラズマ処理装置および薄膜太陽電池の製造方法
【課題】プラズマを用いて被処理基板に対してプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置において、被処理基板載置部材の上に載置された被処理基板に傷が付くことを抑制する。
【解決手段】被処理基板100に対してプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置1Aは、被処理基板載置部材5と、被処理基板載置部材5の表面5a上に設けられ、被処理基板載置部材5の上に載置された被処理基板100を上方支持することによって、被処理基板100と被処理基板載置部材5との間に隙間Sを形成する支持部材4と、被処理基板100に面するようにプラズマを生成することによって、被処理基板100にプラズマ処理を行なうプラズマ生成部と、を備える。
【解決手段】被処理基板100に対してプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置1Aは、被処理基板載置部材5と、被処理基板載置部材5の表面5a上に設けられ、被処理基板載置部材5の上に載置された被処理基板100を上方支持することによって、被処理基板100と被処理基板載置部材5との間に隙間Sを形成する支持部材4と、被処理基板100に面するようにプラズマを生成することによって、被処理基板100にプラズマ処理を行なうプラズマ生成部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて被処理基板に対してプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を用いた薄膜太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、太陽電池が注目を集めている。太陽電池は、太陽光を受光して光電変換を行なうことで電力を発生させるものであり、種々の構造のものが知られている。その一つに、薄膜太陽電池と称される太陽電池が知られている。
【0003】
薄膜太陽電池は、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板、樹脂基板、または半導体基板等のいずれかからなる基板上に、光電変換機能を有する半導体素子が形成されるとともに、さらに当該半導体素子上に金属膜が成膜されることで電極層が形成されてなるものである。ここで、光電変換機能を有する半導体素子としては、不純物添加半導体層/真性半導体層/不純物添加半導体層を積層した3層構造のものや、当該3層構造の積層体をさらに多段に積層した構造のものが利用される。
【0004】
上述した薄膜太陽電池の大面積化や大量生産等に適した成膜方法として、プラズマ成膜法が知られている。プラズマ成膜法においては、プラズマ処理によって被処理基板の表面に成膜が行なわれる。プラズマ成膜法には、プラズマ化学気相成長(プラズマCVD)法およびプラズマスパッタ法がある。
【0005】
プラズマCVD法は、原料となる物質をガス状態で被処理基板の表面に供給してプラズマ化し、これを被処理基板の表面において反応させることにより被処理基板の表面に反応物を堆積させることで成膜を行なう成膜方法である。一方、プラズマスパッタ法は、気体分子をプラズマ化させてイオンとし、これを材料ターゲットに衝突させることで材料ターゲット中に含まれる原子の叩き出しを行い、叩き出された原子を被処理基板の表面に堆積させる成膜方法である。
【0006】
特開2001−026866号公報(特許文献1)に開示されるように、薄膜太陽電池における電極層の形成には、プラズマスパッタ法を使用するプラズマスパッタ装置が利用される場合が多い。
【0007】
近年においては、「T.Goto, T.Matsuoka and T.Ohmi, "Rotation magnet sputtering: Damage-free novel magnetron sputtering using rotating helical magnet with very high target utilization" J.Vac. Sci. Technol.A 27(4), 653 (2009)」(非特許文献1)に開示されるように、プラズマスパッタ法を用いて発電層となる半導体層を被処理基板上に成膜した薄膜太陽電池とすることが検討されている。
【0008】
特開2009−033206号公報(特許文献2)には、非晶質半導体層と微結晶半導体層との間に透明金属酸化物からなる中間層をプラズマスパッタ法を用いて設けることにより、光電変換効率の向上が図られた薄膜太陽電池とすることが提案されている。
【0009】
特開平08−037317号公報(特許文献3)には、薄膜太陽電池の膜欠陥検査のために、透明金属酸化物からなる裏面電極面上にシリコン酸化膜をプラズマスパッタ法により成膜することが提案されている。
【0010】
このように、プラズマ処理装置は、種々の成膜工程においてその適用範囲が広がってきており、その開発が鋭意行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−026866号公報
【特許文献2】特開2009−033206号公報
【特許文献3】特開平08−037317号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】T.Goto, T.Matsuoka and T.Ohmi, "Rotation magnet sputtering: Damage-free novel magnetron sputtering using rotating helical magnet with very high target utilization" J.Vac. Sci. Technol.A 27(4), 653 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、プラズマ処理装置にあっては、通常、被処理基板が被処理基板載置部材(セッターとも称される)の上に載置された状態でプラズマ処理が行なわれる。被処理基板が被処理基板載置部材の上に載置されるにあたって、被処理基板載置部材の表面上には、アルミ屑などが残存している場合がある。また、被処理基板載置部材の表面も、完全な平面を形成しておらず、微細な突起物が形成されている場合がある。アルミ屑または微細な突起物との摺接が原因となって、被処理基板載置部材の上に載置された被処理基板に傷が付く場合がある。
【0014】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、プラズマを用いて被処理基板の表面にプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置であって、被処理基板載置部材の上に載置された被処理基板に傷が付くことを抑制することが可能なプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を用いた薄膜太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に基づくプラズマ処理装置は、被処理基板に対してプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置であって、被処理基板載置部材と、上記被処理基板載置部材の表面上に設けられ、上記被処理基板載置部材の上に載置された上記被処理基板を上方支持することによって、上記被処理基板と上記被処理基板載置部材との間に隙間を形成する支持部材と、上記被処理基板に面するようにプラズマを生成することによって、上記被処理基板に上記プラズマ処理を行なうプラズマ生成部と、を備える。
【0016】
好ましくは、上記支持部材は、上記被処理基板載置部材の上記表面上に貼り付けられたテープ状の部材である。
【0017】
好ましくは、上記支持部材は、上記被処理基板載置部材の上記表面上において上記被処理基板を水平支持可能なように5箇所に設けられる。
【0018】
本発明に基づく薄膜太陽電池の製造方法は、本発明に基づく上記のプラズマ処理装置を用いて、上記被処理基板に上記プラズマ処理を行なうことによって薄膜太陽電池を製造する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プラズマを用いて被処理基板の表面にプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置であって、被処理基板載置部材の上に載置された被処理基板に傷が付くことを抑制することが可能なプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を用いた薄膜太陽電池の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の装置構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すプラズマ処理装置の搬送路を上方から見た場合の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを上方から見た場合の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置(およびその比較例)を用いて行なったプラズマ成膜処理の前後において、被処理基板に生じていた大小の傷の数を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第1工程を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第2工程を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第3工程を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第4工程を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第5工程を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第6工程を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第7工程を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法によって製造された薄膜太陽電池を示す平面図である。
【図13】本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の装置構成を示す模式図である。
【図14】実施例1におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを示す平面図である。
【図15】実施例2におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを示す平面図である。
【図16】実施例3におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを示す平面図である。
【図17】実施例4におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを示す平面図である。
【図18】実施例1〜4および比較例に基づき行なったプラズマ成膜処理の前後において、被処理基板に生じていた大小の傷の数を示す図である。
【図19】本発明の他の実施の形態におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを上方から見た場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に基づいた各実施の形態および各実施例について、以下、図面を参照しながら説明する。以下に示す実施の形態1においては、プラズマ処理装置として、インライン型プラズマCVD装置に本発明を適用した場合を例示して説明を行い、以下に示す実施の形態2においては、プラズマ処理装置としてインライン型プラズマスパッタ装置に本発明を適用した場合を例示して説明を行なう。
【0022】
各実施の形態および各実施例の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態および各実施例の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0023】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の装置構成を示す模式図であり、図2は、図1に示すプラズマ処理装置の搬送路を上方から見た場合の平面図である。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態におけるプラズマ処理装置は、いわゆるインライン型プラズマCVD装置(以下、単にプラズマCVD装置とも称する)である。本実施の形態におけるプラズマCVD装置1Aは、チャンバ2と、搬送手段としての複数の搬送ローラ3と、プラズマ生成部としてのアノード11およびカソード12と、被処理基板載置部材としてのセッター5と、セッター5の表面5aに貼り付けられた支持部材としての耐熱テープ4(テープ状の部材)と、高周波電源13と、整合器14とを主として備えている。
【0025】
チャンバ2は、外部の空間と処理空間とを区画するための反応容器に相当し、たとえば箱状の形状を有している。チャンバ2の相対する一対の側面のうちの一方の側面には、セッター5およびセッター5(耐熱テープ4)の上に載置された処理前の被処理基板100を処理空間に搬入するためのスリット状の搬入口2aが設けられている。
【0026】
上記一対の側面のうちの他方の側面には、セッター5およびセッター5(耐熱テープ4)の上に載置された処理後の被処理基板100を処理空間から搬出するためのスリット状の搬出口2bが設けられている。また、チャンバ2の下面には、処理空間に充填された後述する材料ガスを排出するためのガス排出部2cが設けられている。
【0027】
搬送ローラ3は、チャンバ2の内側および外側に整列して複数設けられており、これにより上述した搬入口2aおよび搬出口2bを結ぶように搬送路3wが構成されている。搬送路3wは、セッター5およびセッター5(耐熱テープ4)の上に載置された被処理基板100を搬送するための通路であり、チャンバ2を横断するように直線状に設けられている。
【0028】
搬送ローラ3は、搬送路3wの下方に位置し、被処理基板100を搬送するセッター5の下面を支持しつつ、支持したセッター5を上記搬送路3w上において図中矢印A方向に搬送する。セッター5が搬送ローラ3によって搬送されることにより、被処理基板100も同方向に搬送される。
【0029】
図2に示すように、搬送ローラ3は、被処理基板100の搬送方向と直交する方向に沿って配置された複数の回転コロであるローラ部3aと、当該複数のローラ部3aを軸支するシャフト部3bとを含んでおり、図示しない駆動手段によってシャフト部3bが回転駆動されることでセッター5およびセッター5(耐熱テープ4)の上に載置された被処理基板100を搬送する。なお、これら複数のローラ部3aとシャフト部3bとからなる搬送ローラ3は、被処理基板100の搬送方向に沿って互いに平行に複数配置されている。
【0030】
図1に示すように、アノード11およびカソード12は、チャンバ2内の所定位置において搬送路3wを挟み込むように上下に配置されている。アノード11は、平板状の電圧印加電極に相当し、搬送路3wの上方にその下面が搬送路3wに面するように、当該搬送路3wから所定の距離をもって配置されている。カソード12は、平板状の接地電極に相当し、搬送路3wの下方にその上面が搬送路3wに面するように、当該搬送路3wから所定の距離をもって配置されている。
【0031】
アノード11には、材料ガスをチャンバ2内に導入するためのガス導入管10の一端が接続されており、またアノード11の内部には、ガス導入管10を通して導入された材料ガスを搬送路3w側に向けてシャワー状に吐出するための流路が形成されている。ガス導入管10の他端は、図示しない材料ガスの供給源に接続されており、これにより材料ガスが、図中に示す矢印B1方向に沿ってチャンバ2内の処理空間に導入されることになる。
【0032】
チャンバ2内に導入された材料ガスは、チャンバ2内を充填し、その後、カソード12の下方に位置する上述したガス排出部2cから図中矢印B2方向に向けて排出される。ここで、材料ガスは、被処理基板100に成膜すべき膜の組成に応じたガスが適宜選択される。
【0033】
高周波電源13は、整合器14を通してアノード11に電気的に接続されている。また、上述したようにカソード12は、接地されている。これにより、高周波電源13および整合器14によってアノード11にパルス状の電圧が印加されることになり、アノード11およびカソード12間に放電が生じ、これらアノード11およびカソード12間の空間を充填する材料ガスがプラズマ化されることになる。
【0034】
このアノード11およびカソード12間に位置する空間は、プラズマが生成される領域に相当し、搬送路3w上を搬送される被処理基板100の上面に面するようにプラズマが生成されることで、当該領域を搬送される被処理基板100の上面に所望の膜が成膜されることになる。
【0035】
ここで、図1および図2に示すように、セッター5の表面5a上に設けられた耐熱テープ4は、セッター5の上に載置された被処理基板100を上方支持する。当該上方支持によって、被処理基板100とセッター5との間には隙間Sが形成される。
【0036】
耐熱テープ4としては、被処理基板100を可能な限り水平な状態で支持するように設けられていることが好ましい。具体的には、搬送路3w上を搬送される被処理基板100の上面と、アノード11の下面との間の距離d(図1参照)は、放電の開始電圧Vsに影響を与えるため、また被処理基板100の上面に成膜される膜の膜厚に影響を与えるため、当該距離dが被処理基板100の搬送方向において一定となるように、耐熱テープ4の配置位置を設定することが好ましい。
【0037】
本実施の形態における耐熱テープ4は、図2に示すように、長方形状に形成された被処理基板100の4つの角部近傍に位置するように1つずつ設けられ、さらに被処理基板100の略中央に位置するように1つ設けられている。
【0038】
図3を参照して、より具体的に説明する。図3は、本実施の形態における、プラズマCVD装置1Aに用いられるセッター5および耐熱テープ4を上方から見た場合の平面図である。図示上の便宜のため、セッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100は、一点鎖線で示している。
【0039】
上述のとおり、本実施の形態においては、セッター5の表面5a上に、5枚の耐熱テープ4(4a〜4e)が設けられる。耐熱テープ4(4a〜4e)としては、たとえば、日東電工株式会社製の、ニトフロン粘着テープ No903UL(厚さ0.23mm)を使用することができる。この耐熱テープ4の材質としては、ポリテトラフルオロエチレンおよびシリコーン樹脂である。
【0040】
耐熱テープ4(4a〜4e)のそれぞれの幅Wは50mmであり、耐熱テープ4(4a〜4e)のそれぞれの長さLも50mmである。なお、セッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100の幅W50は560mmであり、長さL50は925mmである。
【0041】
被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、耐熱テープ4(4a,4d)は、被処理基板100の端部100tと耐熱テープ4(4a,4d)の端部との間の間隔L10が97.5mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4b)は、耐熱テープ4(4a,4d)の端部と耐熱テープ4(4b)の中心との間隔L20が365mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4c,4e)は、耐熱テープ4(4b)の中心と耐熱テープ4(4c,4e)の端部との間隔L30が365mmとなるように配置されている。
【0042】
被処理基板100の短手方向(幅方向)において、耐熱テープ4(4a,4c)は、被処理基板100の端部100sと耐熱テープ4(4a,4c)の端部との間の間隔W10が115mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4b)は、耐熱テープ4(4a,4c)の端部と耐熱テープ4(4b)の中心との間隔W20が165mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4d,4e)は、耐熱テープ4(4b)の中心と耐熱テープ4(4d,4e)の端部との間隔W30が165mmとなるように配置されている。
【0043】
(作用・効果)
以上において説明した本実施の形態におけるプラズマCVD装置1Aにあっては、セッター5の表面5a上に設けられた耐熱テープ4が、セッター5の上に載置された被処理基板100を上方支持する。当該上方支持によって、被処理基板100とセッター5の表面5aとの間に隙間Sが形成されるため、被処理基板100はセッター5の表面5aに対して浮いた状態となる。
【0044】
そのため、仮に、セッター5の表面5a上にアルミ屑などが残存していたり、セッター5の表面5a上に微細な突起物が形成されていたりしたとしても、被処理基板100が浮いている分だけ、被処理基板100とセッター5の表面5a上のアルミ屑などとの摺接は低減される。結果として、セッター5の上に載置された被処理基板100に傷が付くことは効果的に抑制されることができる。
【0045】
図4を参照して、実際に、本実施の形態におけるプラズマCVD装置1Aを利用して被処理基板100に対して成膜処理を行なった。図4は、TOP層(光電変換層)の成膜前後における被処理基板100の下面側に生じた大小の傷の数を示している。図4の上段は、耐熱テープ4(支持部材)をセッター5の表面5a上に設けた状態で被処理基板100に対して成膜処理を行なった際の結果である。図4の下段は、耐熱テープ4(支持部材)をセッター5の表面5a上に設けない状態で被処理基板100に対して成膜処理を行なった際の結果である。
【0046】
図4の上段に示されるTOP層成膜後の値は、耐熱テープ4を設けない場合(図4の下段)における大小の傷の数を100とした場合の相対的な値である。
【0047】
図4の上段に示されるように、耐熱テープ4が設けられる場合において、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。図4の下段に示されるように、耐熱テープ4が設けられられない場合において、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。
【0048】
上記のような被処理基板100に対して、耐熱テープ4が設けられる場合と耐熱テープ4が設けられない場合とでそれぞれ成膜処理を行なった。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、耐熱テープ4が設けられない場合の大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数を100とした場合(図4下段)、耐熱テープ4が設けられる場合の大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、10〜30%であった。耐熱テープ4が設けられない場合の大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数を100とした場合(図4下段)、耐熱テープ4が設けられる場合の大きさの小さい傷(全長2mm以上)の数は、5%以下であった。
【0049】
図4に示す結果からも、本実施の形態におけるプラズマCVD装置1Aは、耐熱テープ4の配設によって、セッター5の上に載置された被処理基板100に傷が付くことは効果的に抑制されることがわかる。
【0050】
(薄膜太陽電池1000の製造方法)
以下、実施の形態1におけるプラズマCVD装置1A(図1参照)を用いて被処理基板100にプラズマ処理を行なうことによって薄膜太陽電池1000(図11参照)を製造する薄膜太陽電池の製造方法について説明する。
【0051】
図5を参照して、本実施の形態における薄膜太陽電池の製造方法においては、まず透明性および絶縁性を有する被処理基板100が準備される。図6を参照して、プラズマCVD装置1A(図1参照)を用いて、被処理基板100上に透明電極層101を形成する。
【0052】
図7を参照して、レーザスクライブ法によって、透明電極層101の一部を除去することによって第1スクライブライン102を形成し、透明電極層101を複数個に分離する。図8を参照して、プラズマCVD装置1A(図1参照)を用いて、複数に分離された透明電極層101の上に非晶質シリコン薄膜からなるp層、i層、およびn層を順次積層して光電変換層103を形成する。
【0053】
図9を参照して、レーザスクライブ法によって、光電変換層103の一部を除去することによって第2スクライブライン104(コンタクトラインとも称される)を形成し、光電変換層103を複数個に分離する。図10を参照して、プラズマCVD装置1A(図1参照)を用いて、複数に分離された光電変換層103を覆うとともに第2スクライブライン104を埋めるようにして裏面電極層105を形成する。
【0054】
図11を参照して、最後に、レーザスクライブ法によって、光電変換層103および裏面電極層105を分離する第3スクライブライン106を形成する。このようにして、図11および図12に示すように、被処理基板100上に複数の薄膜太陽電池セル107を有する薄膜太陽電池1000が製造される。
【0055】
[実施の形態2]
図13は、本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の装置構成を示す模式図である。
【0056】
図13に示すように、本実施の形態におけるプラズマ処理装置は、いわゆるインライン型プラズマスパッタ装置(インライン型DCマグネトロンスパッタ装置(以下、単にプラズマスパッタ装置とも称する))である。本実施の形態におけるプラズマスパッタ装置1Bは、チャンバ2と、搬送手段としての複数の搬送ローラ3と、プラズマ生成部としてのカソード21と、材料ターゲット28と、被処理基板載置部材としてのセッター5と、セッター5の表面5aに設けられた支持部材としての耐熱テープ4と、電源接続部23とを主として備えている。
【0057】
ここで、チャンバ2、複数の搬送ローラ3、当該搬送ローラ3によって構成される搬送路3wの構成については、上述した本発明の実施の形態1におけるプラズマCVD装置1A(図1参照)と同様の構成であるため、その詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0058】
図10に示すように、カソード21は、チャンバ2内の所定位置において搬送路3wの上方に配置されている。カソード21は、平板状の電圧印加電極に相当し、搬送路3wの上方にその下面が搬送路3wに面するように、当該搬送路3wから所定の距離をもって配置されている。カソード21は、電源接続部23を通して図示しない直流電源に接続されている。
【0059】
また、カソード21の下面には、中央磁石22aおよび外周磁石22bが取付けられている。中央磁石22aは、カソード21の下面の中央部に配設されており、外周磁石22bは、当該中央磁石22aを囲むようにカソード21の下面の周縁に沿って環状に配置されている。
【0060】
カソード21は、電気的に接地されたカソードシールド24によって覆われており、当該カソードシールド24の下方の位置には、材料ターゲット28が取付けられている。材料ターゲット28は、スパッタリングによりスパッタ粒子を発生させるためのものであり、被処理基板100に成膜すべき膜の組成に応じた材料ターゲットが適宜選択される。
【0061】
カソードシールド24は、絶縁体25によって支持されてチャンバ2内に位置しており、当該カソードシールド24には、冷却水を導入および排出するための冷却水導入管26および冷却水排出管27が取付けられている。冷却水導入管26および冷却水排出管27は、内部を流動する冷却水によってカソード21の冷却を行なうものであり、図中矢印D1方向に沿って冷却水導入管26から導入された冷却水は、カソード21の冷却に使用され、その後図中矢印D2方向に沿って冷却水排出管27から排出される。
【0062】
チャンバ2の上面の所定位置には、ガス導入管20が設けられており、当該ガス導入管20には、図示しないガス供給源に接続されている。これにより、ガス導入管20を介してガスが、図中に示す矢印B1方向に沿ってチャンバ2内の処理空間に導入されることになる。チャンバ2内に導入されたガスは、チャンバ2内を充填し、その後、カソード12の下方に位置するガス排出部2cから図中矢印B2方向に向けて排出される。ここで、ガス導入管20によって導入されるガスは、主としてアルゴン等の希ガスである。
【0063】
カソード21に電圧が印加された状態においては、材料ターゲット28上に半円状の磁力線が発生し、強い発光のプラズマが材料ターゲット28の下方でかつ搬送路3wの上方の空間にドーナツ状に形成される。当該空間は、プラズマが生成される領域に相当し、これにより被処理基板100の上面に面するようにプラズマが生成される。
【0064】
これにより、気体分子がプラズマ化されてイオンとなり、当該イオンが材料ターゲット28に衝突することにより材料ターゲット28中に含まれる原子がスパッタ粒子として被処理基板100側に向けて叩き出される。そして、材料ターゲット28から叩き出されたスパッタ粒子が、上記領域を搬送される被処理基板100の上面に堆積することにより、所望の膜が成膜されることになる。
【0065】
ここで、セッター5の表面5a上に設けられた耐熱テープ4は、上述の実施の形態1と同様に、セッター5の上に載置された被処理基板100を上方支持する。当該上方支持によって、被処理基板100とセッター5との間には、隙間Sが形成される。
【0066】
耐熱テープ4としては、被処理基板100を可能な限り水平な状態で支持するように設けられていることが好ましい。具体的には、搬送路3w上を搬送される被処理基板100の上面と、アノード11の下面との間の距離dは、放電の開始電圧Vsに影響を与えないものの被処理基板100の上面に成膜される膜の膜厚に影響を与えるため、当該距離dが被処理基板100の搬送方向において一定となるように、耐熱テープ4の配置位置を設定することが好ましい。
【0067】
(作用・効果)
以上において説明した本実施の形態におけるプラズマスパッタ装置1Bにあっては、上述の実施の形態1におけるプラズマCVD装置1A(図1参照)と同様に、セッター5の表面5a上に設けられた耐熱テープ4が、セッター5の上に載置された被処理基板100を上方支持する。当該上方支持によって、被処理基板100とセッター5との間に隙間Sが形成されるため、被処理基板100はセッター5の表面5aに対して浮いた状態となる。
【0068】
そのため、仮に、セッター5の表面5a上にアルミ屑などが残存していたり、セッター5の表面5a上に微細な突起物が形成されていたりしたとしても、被処理基板100が浮いている分だけ、被処理基板100とセッター5の表面5a上のアルミ屑などとの摺接は低減される。結果として、セッター5の上に載置された被処理基板100に傷が付くことは効果的に抑制されることができる。
【0069】
[実施例・比較例]
図14〜図18を参照して、本発明に基づく実施例1〜4およびこれらに対する比較例について説明する。
【0070】
図14は、実施例1におけるプラズマ処理装置に備えられるセッター5および耐熱テープ4を示す平面図である。図15は、実施例2におけるプラズマ処理装置に備えられるセッター5および耐熱テープ4を示す平面図である。図16は、実施例3におけるプラズマ処理装置に備えられるセッター5および耐熱テープ4を示す平面図である。図17は、実施例4におけるプラズマ処理装置に備えられるセッター5および耐熱テープ4を示す平面図である。
【0071】
図14〜図18においては、図示上の便宜のため、セッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100は、一点鎖線で示している。なお、比較例においては、セッター5上に耐熱テープ4は設けられておらず、セッター5上に被処理基板100が直接載置されている。図18は、実施例1〜4および比較例の構成に基づいてプラズマ処理を行なった前後における被処理基板100に生じていた大小の傷の数を示す図である。図18の実施例1〜4に示されるTOP層成膜後の値およびIV測定後の値は、耐熱テープ4を設けない場合(比較例)における大小の傷の数を100とした場合の相対的な値である。
【0072】
(実施例1)
図14を参照して、セッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100の幅W50は560mmであり、長さL50は925mmである。実施例1におけるセッター5の表面5a上には、400枚(長手方向に20枚×短手方向に20枚)の耐熱テープ4が設けられる。
【0073】
それぞれの耐熱テープ4の幅W1は10mmであり、長さL1も10mmである。被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、隣り合う耐熱テープ4同士の間隔LS1は約27.9mmである。被処理基板100の短手方向(幅方向)において、隣り合う耐熱テープ4同士の間隔WS1は約6.9mmである。
【0074】
被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、紙面最左下に位置する耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100tと紙面最左下に位置する耐熱テープ4の端部との間の間隔L11が97.5mmとなるように配置されている。紙面最左下に位置する耐熱テープ4を基準として、20枚の耐熱テープ4が、被処理基板100の長手方向(長さ方向)に沿って、長さL21(730mm)にわたって配列されている。
【0075】
被処理基板100の短手方向(幅方向)において、紙面最左下に位置する耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100sと紙面最左下に位置する耐熱テープ4の端部との間の間隔W11が115mmとなるように配置されている。紙面最左下に位置する耐熱テープ4を基準として、20枚の耐熱テープ4が、被処理基板100の短手方向(幅方向)に沿って、幅W21(330mm)にわたって配列されている。
【0076】
図18を参照して、実施例1の構成に基づいて被処理基板100に対して成膜処理を行なった。実施例1においては、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%)に対して0〜10%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%)に対して30%以下である。
【0077】
BTM層(裏面電極層)を成膜した後、IV測定の実施とともに大小の傷の数を数えたところ、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して10〜30%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して99%以下であった。IV測定によって薄膜太陽電池としての電気特性(セルの出力特定および膜厚)が所定の基準を満足しているか否かを測定したところ、問題ないことが確認された。なお、実施例1の構成においては、プラズマ処理時であっても、被処理基板100は耐熱テープ4の上をほとんど移動していない(滑っていない)ことが確認された。
【0078】
(実施例2)
図15を参照して、実施例1と同様に、実施例2におけるセッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100の幅W50は560mmであり、長さL50は925mmである。実施例2におけるセッター5の表面5a上には、3枚の耐熱テープ4が設けられる。
【0079】
それぞれの耐熱テープ4の幅W2は50mmであり、長さL2は730mmである。被処理基板100の短手方向(幅方向)において、隣り合う耐熱テープ4同士の間隔WS2は70mmである。
【0080】
被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、3枚の耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100tとこれらの耐熱テープ4の端部との間の間隔L12が97.5mmとなるように配置されている。
【0081】
被処理基板100の短手方向(幅方向)において、紙面最下に位置する耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100sと紙面最下に位置する耐熱テープ4の端部との間の間隔W12が115mmとなるように配置されている。紙面最下に位置する耐熱テープ4を基準として、3枚の耐熱テープ4が、被処理基板100の短手方向(幅方向)に沿って、幅W22(140mm)および幅W32(140mm)の等間隔で配列されている。
【0082】
図18を参照して、実施例2の構成に基づいて被処理基板100に対して成膜処理を行なった。実施例2においては、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%)に対して0〜10%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%)に対して30%以下である。
【0083】
BTM層(裏面電極層)を成膜した後、IV測定の実施とともに大小の傷の数を数えたところ、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して10〜30%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して60%以下であった。IV測定によって薄膜太陽電池としての電気特性(セルの出力特定および膜厚)が所定の基準を満足しているか否かを測定したところ、問題ないことが確認された。なお、実施例2の構成においては、プラズマ処理時に、被処理基板100が耐熱テープ4の長手方向に沿って耐熱テープ4の上をやや移動している(滑っている)ことが確認された。
【0084】
(実施例3)
図16を参照して、実施例1,2と同様に、実施例3におけるセッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100の幅W50は560mmであり、長さL50は925mmである。実施例3におけるセッター5の表面5a上には、5枚の耐熱テープ4が設けられる。
【0085】
それぞれの耐熱テープ4の幅W3は330mmであり、長さL3は50mmである。被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、隣り合う耐熱テープ4同士の間隔LS3は120mmである。
【0086】
被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、紙面最左に位置する耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100tと紙面最左に位置する耐熱テープ4の端部との間の間隔L13が97.5mmとなるように配置されている。
【0087】
被処理基板100の短手方向(幅方向)において、紙面最左に位置する耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100sと紙面最左に位置する耐熱テープ4の端部との間の間隔W13が115mmとなるように配置されている。紙面最左に位置する耐熱テープ4を基準として、5枚の耐熱テープ4が、被処理基板100の長手方向(長さ方向)に沿って、長さL23(170mm)、長さL33(170mm)、長さL43(170mm)、および長さL53(170mm)の等間隔で配列されている。
【0088】
図18を参照して、実施例3の構成に基づいて被処理基板100に対して成膜処理を行なった。実施例3においては、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%)に対して0〜10%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%)に対して30%以下である。
【0089】
BTM層(裏面電極層)を成膜した後、IV測定の実施とともに大小の傷の数を数えたところ、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して10〜30%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して95%以下であった。IV測定によって薄膜太陽電池としての電気特性(セルの出力特定および膜厚)が所定の基準を満足しているか否かを測定したところ、問題ないことが確認された。なお、実施例3の構成においては、実施例2の構成と同様に、プラズマ処理時に、被処理基板100が耐熱テープ4の長手方向に沿って耐熱テープ4の上をやや移動している(滑っている)ことが確認された。
【0090】
(実施例4)
図17を参照して、実施例1〜3と同様に、実施例4におけるセッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100の幅W50は560mmであり、長さL50は925mmである。実施例4におけるセッター5の表面5a上には、5枚の耐熱テープ4が設けられる。
【0091】
耐熱テープ4(4a〜4e)は、耐熱テープ4(4b)を中心として点対称となるように配置される。それぞれの耐熱テープ4(4a〜4e)の幅W4は50mmであり、長さL4も50mmである。
【0092】
被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、耐熱テープ4(4a,4d)は、被処理基板100の端部100tと耐熱テープ4(4a,4d)の端部との間の間隔L14が97.5mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4b)は、耐熱テープ4(4a,4d)の端部と耐熱テープ4(4b)の端部との間隔L24が340mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4c,4e)は、耐熱テープ4(4b)の端部と耐熱テープ4(4c,4e)の端部との間隔L34が340mmとなるように配置されている。
【0093】
被処理基板100の短手方向(幅方向)において、耐熱テープ4(4a,4c)は、被処理基板100の端部100sと耐熱テープ4(4a,4c)の端部との間の間隔W14が115mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4b)は、耐熱テープ4(4a,4c)の端部と耐熱テープ4(4b)の端部との間隔W24が140mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4d,4e)は、耐熱テープ4(4b)の端部と耐熱テープ4(4d,4e)の端部との間隔W34が140mmとなるように配置されている。
【0094】
図18を参照して、実施例4の構成に基づいて被処理基板100に対して成膜処理を行なった。実施例4においては、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%)に対して0〜10%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%)に対して30%以下である。
【0095】
BTM層(裏面電極層)を成膜した後、IV測定の実施とともに大小の傷の数を数えたところ、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して10〜30%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して70%以下であった。IV測定によって薄膜太陽電池としての電気特性(セルの出力特定および膜厚)が所定の基準を満足しているか否かを測定したところ、問題ないことが確認された。なお、実施例4の構成においては、実施例1の構成と同様に、プラズマ処理時であっても、被処理基板100は耐熱テープ4の上をほとんど移動していない(滑っていない)ことが確認された。
【0096】
(比較例)
比較例においては、上述のとおり、セッター5上に耐熱テープ4は設けられておらず、セッター5上に被処理基板100が直接載置されている。
【0097】
図18を参照して、比較例の構成に基づいて被処理基板100に対して成膜処理を行なった。比較例においては、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、上述の実施例1〜4に対して約10倍以上であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、上述の実施例1〜4に対して約3倍以上である。
【0098】
上記の実施例1〜4および比較例の結果から、実施例1〜4の構成であれば、いずれのものであってもセッター5の上に載置された被処理基板100に傷が付くことは効果的に抑制されることがわかる。
【0099】
また、上記の実施例4の態様(図17参照)によれば、上記の実施例1〜3の態様に比べて、耐熱テープ4の使用面積(コスト)が低減され、耐熱テープ4の貼り付け時間(工数)も低減される。一方で、実施例1〜4では、発生した傷の数および電気特性に大きな差は見られない。したがって、実施例1〜4の中では実施例4の態様を採用することがよいことがわかる。
【0100】
以上、本発明に基づいた各実施の形態および各実施例について説明したが、今回開示された各実施の形態および各実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。
【0101】
たとえば、上記の各実施の形態1,2においては、いわゆる連続的な処理が可能なインライン型のプラズマ処理装置に基づいて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明は、セッター5が固定配置された状態でプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置にも適用されることが可能である。
【0102】
また、上記の各実施の形態1,2においては、被処理基板100を上方支持する支持部材として耐熱テープ4を例に説明したが、本発明の支持部材としてはこれに限られない。本発明の支持部材としては、耐熱テープの他にも、接着性のない(低い)薄い部材や、その他の素材であっても採用されることが可能である。支持部材の選定にあたっては、支持部材の耐久性、支持部材から出るガスの種類、プラズマ処理温度、その他のプロセス条件などに応じて、素材および厚さを最適なものとするとよい。
【0103】
上記の各実施の形態1,2および各実施例においては、被処理基板100を上方支持するために、複数の耐熱テープ4が用いられる。被処理基板100を上方支持するためには、1または複数の耐熱テープ4が用いられればよい。具体的には、図19に示すように、被処理基板100を上方支持するために、耐熱テープ4(テープ状の部材)が1枚のみ設けられていてもよい。当該構成によっても、耐熱テープ4の配設によって、セッター5の上に載置された被処理基板100に傷が付くことは効果的に抑制されることが可能である。
【0104】
したがって、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0105】
1A プラズマCVD装置(プラズマ処理装置)、1B プラズマスパッタ装置(プラズマ処理装置)、2 チャンバ、2a 搬入口、2b 搬出口、2c ガス排出部、3 搬送ローラ、3a ローラ部、3b シャフト部、3w 搬送路、4 耐熱テープ(支持部材)、5 セッター(被処理基板載置部材)、5a 表面、10,20 ガス導入管、11 アノード、12,21 カソード、13 高周波電源、14 整合器、22a 中央磁石、22b 外周磁石、23 電源接続部、24 カソードシールド、25 絶縁体、26 冷却水導入管、27 冷却水排出管、28 材料ターゲット、100 被処理基板、100s,100t 端部、101 透明電極層、102 第1スクライブライン、103 光電変換層、104 第2スクライブライン、105 裏面電極層、106 第3スクライブライン、107 薄膜太陽電池セル、1000 薄膜太陽電池、A,B1,B2,D1,D2 矢印、S 隙間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて被処理基板に対してプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を用いた薄膜太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、太陽電池が注目を集めている。太陽電池は、太陽光を受光して光電変換を行なうことで電力を発生させるものであり、種々の構造のものが知られている。その一つに、薄膜太陽電池と称される太陽電池が知られている。
【0003】
薄膜太陽電池は、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板、樹脂基板、または半導体基板等のいずれかからなる基板上に、光電変換機能を有する半導体素子が形成されるとともに、さらに当該半導体素子上に金属膜が成膜されることで電極層が形成されてなるものである。ここで、光電変換機能を有する半導体素子としては、不純物添加半導体層/真性半導体層/不純物添加半導体層を積層した3層構造のものや、当該3層構造の積層体をさらに多段に積層した構造のものが利用される。
【0004】
上述した薄膜太陽電池の大面積化や大量生産等に適した成膜方法として、プラズマ成膜法が知られている。プラズマ成膜法においては、プラズマ処理によって被処理基板の表面に成膜が行なわれる。プラズマ成膜法には、プラズマ化学気相成長(プラズマCVD)法およびプラズマスパッタ法がある。
【0005】
プラズマCVD法は、原料となる物質をガス状態で被処理基板の表面に供給してプラズマ化し、これを被処理基板の表面において反応させることにより被処理基板の表面に反応物を堆積させることで成膜を行なう成膜方法である。一方、プラズマスパッタ法は、気体分子をプラズマ化させてイオンとし、これを材料ターゲットに衝突させることで材料ターゲット中に含まれる原子の叩き出しを行い、叩き出された原子を被処理基板の表面に堆積させる成膜方法である。
【0006】
特開2001−026866号公報(特許文献1)に開示されるように、薄膜太陽電池における電極層の形成には、プラズマスパッタ法を使用するプラズマスパッタ装置が利用される場合が多い。
【0007】
近年においては、「T.Goto, T.Matsuoka and T.Ohmi, "Rotation magnet sputtering: Damage-free novel magnetron sputtering using rotating helical magnet with very high target utilization" J.Vac. Sci. Technol.A 27(4), 653 (2009)」(非特許文献1)に開示されるように、プラズマスパッタ法を用いて発電層となる半導体層を被処理基板上に成膜した薄膜太陽電池とすることが検討されている。
【0008】
特開2009−033206号公報(特許文献2)には、非晶質半導体層と微結晶半導体層との間に透明金属酸化物からなる中間層をプラズマスパッタ法を用いて設けることにより、光電変換効率の向上が図られた薄膜太陽電池とすることが提案されている。
【0009】
特開平08−037317号公報(特許文献3)には、薄膜太陽電池の膜欠陥検査のために、透明金属酸化物からなる裏面電極面上にシリコン酸化膜をプラズマスパッタ法により成膜することが提案されている。
【0010】
このように、プラズマ処理装置は、種々の成膜工程においてその適用範囲が広がってきており、その開発が鋭意行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−026866号公報
【特許文献2】特開2009−033206号公報
【特許文献3】特開平08−037317号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】T.Goto, T.Matsuoka and T.Ohmi, "Rotation magnet sputtering: Damage-free novel magnetron sputtering using rotating helical magnet with very high target utilization" J.Vac. Sci. Technol.A 27(4), 653 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、プラズマ処理装置にあっては、通常、被処理基板が被処理基板載置部材(セッターとも称される)の上に載置された状態でプラズマ処理が行なわれる。被処理基板が被処理基板載置部材の上に載置されるにあたって、被処理基板載置部材の表面上には、アルミ屑などが残存している場合がある。また、被処理基板載置部材の表面も、完全な平面を形成しておらず、微細な突起物が形成されている場合がある。アルミ屑または微細な突起物との摺接が原因となって、被処理基板載置部材の上に載置された被処理基板に傷が付く場合がある。
【0014】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、プラズマを用いて被処理基板の表面にプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置であって、被処理基板載置部材の上に載置された被処理基板に傷が付くことを抑制することが可能なプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を用いた薄膜太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に基づくプラズマ処理装置は、被処理基板に対してプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置であって、被処理基板載置部材と、上記被処理基板載置部材の表面上に設けられ、上記被処理基板載置部材の上に載置された上記被処理基板を上方支持することによって、上記被処理基板と上記被処理基板載置部材との間に隙間を形成する支持部材と、上記被処理基板に面するようにプラズマを生成することによって、上記被処理基板に上記プラズマ処理を行なうプラズマ生成部と、を備える。
【0016】
好ましくは、上記支持部材は、上記被処理基板載置部材の上記表面上に貼り付けられたテープ状の部材である。
【0017】
好ましくは、上記支持部材は、上記被処理基板載置部材の上記表面上において上記被処理基板を水平支持可能なように5箇所に設けられる。
【0018】
本発明に基づく薄膜太陽電池の製造方法は、本発明に基づく上記のプラズマ処理装置を用いて、上記被処理基板に上記プラズマ処理を行なうことによって薄膜太陽電池を製造する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プラズマを用いて被処理基板の表面にプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置であって、被処理基板載置部材の上に載置された被処理基板に傷が付くことを抑制することが可能なプラズマ処理装置、およびそのプラズマ処理装置を用いた薄膜太陽電池の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の装置構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すプラズマ処理装置の搬送路を上方から見た場合の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを上方から見た場合の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置(およびその比較例)を用いて行なったプラズマ成膜処理の前後において、被処理基板に生じていた大小の傷の数を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第1工程を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第2工程を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第3工程を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第4工程を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第5工程を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第6工程を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法の第7工程を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態1における薄膜太陽電池の製造方法によって製造された薄膜太陽電池を示す平面図である。
【図13】本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の装置構成を示す模式図である。
【図14】実施例1におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを示す平面図である。
【図15】実施例2におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを示す平面図である。
【図16】実施例3におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを示す平面図である。
【図17】実施例4におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを示す平面図である。
【図18】実施例1〜4および比較例に基づき行なったプラズマ成膜処理の前後において、被処理基板に生じていた大小の傷の数を示す図である。
【図19】本発明の他の実施の形態におけるプラズマ処理装置に備えられるセッターおよび耐熱テープを上方から見た場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に基づいた各実施の形態および各実施例について、以下、図面を参照しながら説明する。以下に示す実施の形態1においては、プラズマ処理装置として、インライン型プラズマCVD装置に本発明を適用した場合を例示して説明を行い、以下に示す実施の形態2においては、プラズマ処理装置としてインライン型プラズマスパッタ装置に本発明を適用した場合を例示して説明を行なう。
【0022】
各実施の形態および各実施例の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態および各実施例の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0023】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の装置構成を示す模式図であり、図2は、図1に示すプラズマ処理装置の搬送路を上方から見た場合の平面図である。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態におけるプラズマ処理装置は、いわゆるインライン型プラズマCVD装置(以下、単にプラズマCVD装置とも称する)である。本実施の形態におけるプラズマCVD装置1Aは、チャンバ2と、搬送手段としての複数の搬送ローラ3と、プラズマ生成部としてのアノード11およびカソード12と、被処理基板載置部材としてのセッター5と、セッター5の表面5aに貼り付けられた支持部材としての耐熱テープ4(テープ状の部材)と、高周波電源13と、整合器14とを主として備えている。
【0025】
チャンバ2は、外部の空間と処理空間とを区画するための反応容器に相当し、たとえば箱状の形状を有している。チャンバ2の相対する一対の側面のうちの一方の側面には、セッター5およびセッター5(耐熱テープ4)の上に載置された処理前の被処理基板100を処理空間に搬入するためのスリット状の搬入口2aが設けられている。
【0026】
上記一対の側面のうちの他方の側面には、セッター5およびセッター5(耐熱テープ4)の上に載置された処理後の被処理基板100を処理空間から搬出するためのスリット状の搬出口2bが設けられている。また、チャンバ2の下面には、処理空間に充填された後述する材料ガスを排出するためのガス排出部2cが設けられている。
【0027】
搬送ローラ3は、チャンバ2の内側および外側に整列して複数設けられており、これにより上述した搬入口2aおよび搬出口2bを結ぶように搬送路3wが構成されている。搬送路3wは、セッター5およびセッター5(耐熱テープ4)の上に載置された被処理基板100を搬送するための通路であり、チャンバ2を横断するように直線状に設けられている。
【0028】
搬送ローラ3は、搬送路3wの下方に位置し、被処理基板100を搬送するセッター5の下面を支持しつつ、支持したセッター5を上記搬送路3w上において図中矢印A方向に搬送する。セッター5が搬送ローラ3によって搬送されることにより、被処理基板100も同方向に搬送される。
【0029】
図2に示すように、搬送ローラ3は、被処理基板100の搬送方向と直交する方向に沿って配置された複数の回転コロであるローラ部3aと、当該複数のローラ部3aを軸支するシャフト部3bとを含んでおり、図示しない駆動手段によってシャフト部3bが回転駆動されることでセッター5およびセッター5(耐熱テープ4)の上に載置された被処理基板100を搬送する。なお、これら複数のローラ部3aとシャフト部3bとからなる搬送ローラ3は、被処理基板100の搬送方向に沿って互いに平行に複数配置されている。
【0030】
図1に示すように、アノード11およびカソード12は、チャンバ2内の所定位置において搬送路3wを挟み込むように上下に配置されている。アノード11は、平板状の電圧印加電極に相当し、搬送路3wの上方にその下面が搬送路3wに面するように、当該搬送路3wから所定の距離をもって配置されている。カソード12は、平板状の接地電極に相当し、搬送路3wの下方にその上面が搬送路3wに面するように、当該搬送路3wから所定の距離をもって配置されている。
【0031】
アノード11には、材料ガスをチャンバ2内に導入するためのガス導入管10の一端が接続されており、またアノード11の内部には、ガス導入管10を通して導入された材料ガスを搬送路3w側に向けてシャワー状に吐出するための流路が形成されている。ガス導入管10の他端は、図示しない材料ガスの供給源に接続されており、これにより材料ガスが、図中に示す矢印B1方向に沿ってチャンバ2内の処理空間に導入されることになる。
【0032】
チャンバ2内に導入された材料ガスは、チャンバ2内を充填し、その後、カソード12の下方に位置する上述したガス排出部2cから図中矢印B2方向に向けて排出される。ここで、材料ガスは、被処理基板100に成膜すべき膜の組成に応じたガスが適宜選択される。
【0033】
高周波電源13は、整合器14を通してアノード11に電気的に接続されている。また、上述したようにカソード12は、接地されている。これにより、高周波電源13および整合器14によってアノード11にパルス状の電圧が印加されることになり、アノード11およびカソード12間に放電が生じ、これらアノード11およびカソード12間の空間を充填する材料ガスがプラズマ化されることになる。
【0034】
このアノード11およびカソード12間に位置する空間は、プラズマが生成される領域に相当し、搬送路3w上を搬送される被処理基板100の上面に面するようにプラズマが生成されることで、当該領域を搬送される被処理基板100の上面に所望の膜が成膜されることになる。
【0035】
ここで、図1および図2に示すように、セッター5の表面5a上に設けられた耐熱テープ4は、セッター5の上に載置された被処理基板100を上方支持する。当該上方支持によって、被処理基板100とセッター5との間には隙間Sが形成される。
【0036】
耐熱テープ4としては、被処理基板100を可能な限り水平な状態で支持するように設けられていることが好ましい。具体的には、搬送路3w上を搬送される被処理基板100の上面と、アノード11の下面との間の距離d(図1参照)は、放電の開始電圧Vsに影響を与えるため、また被処理基板100の上面に成膜される膜の膜厚に影響を与えるため、当該距離dが被処理基板100の搬送方向において一定となるように、耐熱テープ4の配置位置を設定することが好ましい。
【0037】
本実施の形態における耐熱テープ4は、図2に示すように、長方形状に形成された被処理基板100の4つの角部近傍に位置するように1つずつ設けられ、さらに被処理基板100の略中央に位置するように1つ設けられている。
【0038】
図3を参照して、より具体的に説明する。図3は、本実施の形態における、プラズマCVD装置1Aに用いられるセッター5および耐熱テープ4を上方から見た場合の平面図である。図示上の便宜のため、セッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100は、一点鎖線で示している。
【0039】
上述のとおり、本実施の形態においては、セッター5の表面5a上に、5枚の耐熱テープ4(4a〜4e)が設けられる。耐熱テープ4(4a〜4e)としては、たとえば、日東電工株式会社製の、ニトフロン粘着テープ No903UL(厚さ0.23mm)を使用することができる。この耐熱テープ4の材質としては、ポリテトラフルオロエチレンおよびシリコーン樹脂である。
【0040】
耐熱テープ4(4a〜4e)のそれぞれの幅Wは50mmであり、耐熱テープ4(4a〜4e)のそれぞれの長さLも50mmである。なお、セッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100の幅W50は560mmであり、長さL50は925mmである。
【0041】
被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、耐熱テープ4(4a,4d)は、被処理基板100の端部100tと耐熱テープ4(4a,4d)の端部との間の間隔L10が97.5mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4b)は、耐熱テープ4(4a,4d)の端部と耐熱テープ4(4b)の中心との間隔L20が365mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4c,4e)は、耐熱テープ4(4b)の中心と耐熱テープ4(4c,4e)の端部との間隔L30が365mmとなるように配置されている。
【0042】
被処理基板100の短手方向(幅方向)において、耐熱テープ4(4a,4c)は、被処理基板100の端部100sと耐熱テープ4(4a,4c)の端部との間の間隔W10が115mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4b)は、耐熱テープ4(4a,4c)の端部と耐熱テープ4(4b)の中心との間隔W20が165mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4d,4e)は、耐熱テープ4(4b)の中心と耐熱テープ4(4d,4e)の端部との間隔W30が165mmとなるように配置されている。
【0043】
(作用・効果)
以上において説明した本実施の形態におけるプラズマCVD装置1Aにあっては、セッター5の表面5a上に設けられた耐熱テープ4が、セッター5の上に載置された被処理基板100を上方支持する。当該上方支持によって、被処理基板100とセッター5の表面5aとの間に隙間Sが形成されるため、被処理基板100はセッター5の表面5aに対して浮いた状態となる。
【0044】
そのため、仮に、セッター5の表面5a上にアルミ屑などが残存していたり、セッター5の表面5a上に微細な突起物が形成されていたりしたとしても、被処理基板100が浮いている分だけ、被処理基板100とセッター5の表面5a上のアルミ屑などとの摺接は低減される。結果として、セッター5の上に載置された被処理基板100に傷が付くことは効果的に抑制されることができる。
【0045】
図4を参照して、実際に、本実施の形態におけるプラズマCVD装置1Aを利用して被処理基板100に対して成膜処理を行なった。図4は、TOP層(光電変換層)の成膜前後における被処理基板100の下面側に生じた大小の傷の数を示している。図4の上段は、耐熱テープ4(支持部材)をセッター5の表面5a上に設けた状態で被処理基板100に対して成膜処理を行なった際の結果である。図4の下段は、耐熱テープ4(支持部材)をセッター5の表面5a上に設けない状態で被処理基板100に対して成膜処理を行なった際の結果である。
【0046】
図4の上段に示されるTOP層成膜後の値は、耐熱テープ4を設けない場合(図4の下段)における大小の傷の数を100とした場合の相対的な値である。
【0047】
図4の上段に示されるように、耐熱テープ4が設けられる場合において、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。図4の下段に示されるように、耐熱テープ4が設けられられない場合において、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。
【0048】
上記のような被処理基板100に対して、耐熱テープ4が設けられる場合と耐熱テープ4が設けられない場合とでそれぞれ成膜処理を行なった。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、耐熱テープ4が設けられない場合の大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数を100とした場合(図4下段)、耐熱テープ4が設けられる場合の大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、10〜30%であった。耐熱テープ4が設けられない場合の大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数を100とした場合(図4下段)、耐熱テープ4が設けられる場合の大きさの小さい傷(全長2mm以上)の数は、5%以下であった。
【0049】
図4に示す結果からも、本実施の形態におけるプラズマCVD装置1Aは、耐熱テープ4の配設によって、セッター5の上に載置された被処理基板100に傷が付くことは効果的に抑制されることがわかる。
【0050】
(薄膜太陽電池1000の製造方法)
以下、実施の形態1におけるプラズマCVD装置1A(図1参照)を用いて被処理基板100にプラズマ処理を行なうことによって薄膜太陽電池1000(図11参照)を製造する薄膜太陽電池の製造方法について説明する。
【0051】
図5を参照して、本実施の形態における薄膜太陽電池の製造方法においては、まず透明性および絶縁性を有する被処理基板100が準備される。図6を参照して、プラズマCVD装置1A(図1参照)を用いて、被処理基板100上に透明電極層101を形成する。
【0052】
図7を参照して、レーザスクライブ法によって、透明電極層101の一部を除去することによって第1スクライブライン102を形成し、透明電極層101を複数個に分離する。図8を参照して、プラズマCVD装置1A(図1参照)を用いて、複数に分離された透明電極層101の上に非晶質シリコン薄膜からなるp層、i層、およびn層を順次積層して光電変換層103を形成する。
【0053】
図9を参照して、レーザスクライブ法によって、光電変換層103の一部を除去することによって第2スクライブライン104(コンタクトラインとも称される)を形成し、光電変換層103を複数個に分離する。図10を参照して、プラズマCVD装置1A(図1参照)を用いて、複数に分離された光電変換層103を覆うとともに第2スクライブライン104を埋めるようにして裏面電極層105を形成する。
【0054】
図11を参照して、最後に、レーザスクライブ法によって、光電変換層103および裏面電極層105を分離する第3スクライブライン106を形成する。このようにして、図11および図12に示すように、被処理基板100上に複数の薄膜太陽電池セル107を有する薄膜太陽電池1000が製造される。
【0055】
[実施の形態2]
図13は、本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の装置構成を示す模式図である。
【0056】
図13に示すように、本実施の形態におけるプラズマ処理装置は、いわゆるインライン型プラズマスパッタ装置(インライン型DCマグネトロンスパッタ装置(以下、単にプラズマスパッタ装置とも称する))である。本実施の形態におけるプラズマスパッタ装置1Bは、チャンバ2と、搬送手段としての複数の搬送ローラ3と、プラズマ生成部としてのカソード21と、材料ターゲット28と、被処理基板載置部材としてのセッター5と、セッター5の表面5aに設けられた支持部材としての耐熱テープ4と、電源接続部23とを主として備えている。
【0057】
ここで、チャンバ2、複数の搬送ローラ3、当該搬送ローラ3によって構成される搬送路3wの構成については、上述した本発明の実施の形態1におけるプラズマCVD装置1A(図1参照)と同様の構成であるため、その詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0058】
図10に示すように、カソード21は、チャンバ2内の所定位置において搬送路3wの上方に配置されている。カソード21は、平板状の電圧印加電極に相当し、搬送路3wの上方にその下面が搬送路3wに面するように、当該搬送路3wから所定の距離をもって配置されている。カソード21は、電源接続部23を通して図示しない直流電源に接続されている。
【0059】
また、カソード21の下面には、中央磁石22aおよび外周磁石22bが取付けられている。中央磁石22aは、カソード21の下面の中央部に配設されており、外周磁石22bは、当該中央磁石22aを囲むようにカソード21の下面の周縁に沿って環状に配置されている。
【0060】
カソード21は、電気的に接地されたカソードシールド24によって覆われており、当該カソードシールド24の下方の位置には、材料ターゲット28が取付けられている。材料ターゲット28は、スパッタリングによりスパッタ粒子を発生させるためのものであり、被処理基板100に成膜すべき膜の組成に応じた材料ターゲットが適宜選択される。
【0061】
カソードシールド24は、絶縁体25によって支持されてチャンバ2内に位置しており、当該カソードシールド24には、冷却水を導入および排出するための冷却水導入管26および冷却水排出管27が取付けられている。冷却水導入管26および冷却水排出管27は、内部を流動する冷却水によってカソード21の冷却を行なうものであり、図中矢印D1方向に沿って冷却水導入管26から導入された冷却水は、カソード21の冷却に使用され、その後図中矢印D2方向に沿って冷却水排出管27から排出される。
【0062】
チャンバ2の上面の所定位置には、ガス導入管20が設けられており、当該ガス導入管20には、図示しないガス供給源に接続されている。これにより、ガス導入管20を介してガスが、図中に示す矢印B1方向に沿ってチャンバ2内の処理空間に導入されることになる。チャンバ2内に導入されたガスは、チャンバ2内を充填し、その後、カソード12の下方に位置するガス排出部2cから図中矢印B2方向に向けて排出される。ここで、ガス導入管20によって導入されるガスは、主としてアルゴン等の希ガスである。
【0063】
カソード21に電圧が印加された状態においては、材料ターゲット28上に半円状の磁力線が発生し、強い発光のプラズマが材料ターゲット28の下方でかつ搬送路3wの上方の空間にドーナツ状に形成される。当該空間は、プラズマが生成される領域に相当し、これにより被処理基板100の上面に面するようにプラズマが生成される。
【0064】
これにより、気体分子がプラズマ化されてイオンとなり、当該イオンが材料ターゲット28に衝突することにより材料ターゲット28中に含まれる原子がスパッタ粒子として被処理基板100側に向けて叩き出される。そして、材料ターゲット28から叩き出されたスパッタ粒子が、上記領域を搬送される被処理基板100の上面に堆積することにより、所望の膜が成膜されることになる。
【0065】
ここで、セッター5の表面5a上に設けられた耐熱テープ4は、上述の実施の形態1と同様に、セッター5の上に載置された被処理基板100を上方支持する。当該上方支持によって、被処理基板100とセッター5との間には、隙間Sが形成される。
【0066】
耐熱テープ4としては、被処理基板100を可能な限り水平な状態で支持するように設けられていることが好ましい。具体的には、搬送路3w上を搬送される被処理基板100の上面と、アノード11の下面との間の距離dは、放電の開始電圧Vsに影響を与えないものの被処理基板100の上面に成膜される膜の膜厚に影響を与えるため、当該距離dが被処理基板100の搬送方向において一定となるように、耐熱テープ4の配置位置を設定することが好ましい。
【0067】
(作用・効果)
以上において説明した本実施の形態におけるプラズマスパッタ装置1Bにあっては、上述の実施の形態1におけるプラズマCVD装置1A(図1参照)と同様に、セッター5の表面5a上に設けられた耐熱テープ4が、セッター5の上に載置された被処理基板100を上方支持する。当該上方支持によって、被処理基板100とセッター5との間に隙間Sが形成されるため、被処理基板100はセッター5の表面5aに対して浮いた状態となる。
【0068】
そのため、仮に、セッター5の表面5a上にアルミ屑などが残存していたり、セッター5の表面5a上に微細な突起物が形成されていたりしたとしても、被処理基板100が浮いている分だけ、被処理基板100とセッター5の表面5a上のアルミ屑などとの摺接は低減される。結果として、セッター5の上に載置された被処理基板100に傷が付くことは効果的に抑制されることができる。
【0069】
[実施例・比較例]
図14〜図18を参照して、本発明に基づく実施例1〜4およびこれらに対する比較例について説明する。
【0070】
図14は、実施例1におけるプラズマ処理装置に備えられるセッター5および耐熱テープ4を示す平面図である。図15は、実施例2におけるプラズマ処理装置に備えられるセッター5および耐熱テープ4を示す平面図である。図16は、実施例3におけるプラズマ処理装置に備えられるセッター5および耐熱テープ4を示す平面図である。図17は、実施例4におけるプラズマ処理装置に備えられるセッター5および耐熱テープ4を示す平面図である。
【0071】
図14〜図18においては、図示上の便宜のため、セッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100は、一点鎖線で示している。なお、比較例においては、セッター5上に耐熱テープ4は設けられておらず、セッター5上に被処理基板100が直接載置されている。図18は、実施例1〜4および比較例の構成に基づいてプラズマ処理を行なった前後における被処理基板100に生じていた大小の傷の数を示す図である。図18の実施例1〜4に示されるTOP層成膜後の値およびIV測定後の値は、耐熱テープ4を設けない場合(比較例)における大小の傷の数を100とした場合の相対的な値である。
【0072】
(実施例1)
図14を参照して、セッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100の幅W50は560mmであり、長さL50は925mmである。実施例1におけるセッター5の表面5a上には、400枚(長手方向に20枚×短手方向に20枚)の耐熱テープ4が設けられる。
【0073】
それぞれの耐熱テープ4の幅W1は10mmであり、長さL1も10mmである。被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、隣り合う耐熱テープ4同士の間隔LS1は約27.9mmである。被処理基板100の短手方向(幅方向)において、隣り合う耐熱テープ4同士の間隔WS1は約6.9mmである。
【0074】
被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、紙面最左下に位置する耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100tと紙面最左下に位置する耐熱テープ4の端部との間の間隔L11が97.5mmとなるように配置されている。紙面最左下に位置する耐熱テープ4を基準として、20枚の耐熱テープ4が、被処理基板100の長手方向(長さ方向)に沿って、長さL21(730mm)にわたって配列されている。
【0075】
被処理基板100の短手方向(幅方向)において、紙面最左下に位置する耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100sと紙面最左下に位置する耐熱テープ4の端部との間の間隔W11が115mmとなるように配置されている。紙面最左下に位置する耐熱テープ4を基準として、20枚の耐熱テープ4が、被処理基板100の短手方向(幅方向)に沿って、幅W21(330mm)にわたって配列されている。
【0076】
図18を参照して、実施例1の構成に基づいて被処理基板100に対して成膜処理を行なった。実施例1においては、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%)に対して0〜10%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%)に対して30%以下である。
【0077】
BTM層(裏面電極層)を成膜した後、IV測定の実施とともに大小の傷の数を数えたところ、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して10〜30%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して99%以下であった。IV測定によって薄膜太陽電池としての電気特性(セルの出力特定および膜厚)が所定の基準を満足しているか否かを測定したところ、問題ないことが確認された。なお、実施例1の構成においては、プラズマ処理時であっても、被処理基板100は耐熱テープ4の上をほとんど移動していない(滑っていない)ことが確認された。
【0078】
(実施例2)
図15を参照して、実施例1と同様に、実施例2におけるセッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100の幅W50は560mmであり、長さL50は925mmである。実施例2におけるセッター5の表面5a上には、3枚の耐熱テープ4が設けられる。
【0079】
それぞれの耐熱テープ4の幅W2は50mmであり、長さL2は730mmである。被処理基板100の短手方向(幅方向)において、隣り合う耐熱テープ4同士の間隔WS2は70mmである。
【0080】
被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、3枚の耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100tとこれらの耐熱テープ4の端部との間の間隔L12が97.5mmとなるように配置されている。
【0081】
被処理基板100の短手方向(幅方向)において、紙面最下に位置する耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100sと紙面最下に位置する耐熱テープ4の端部との間の間隔W12が115mmとなるように配置されている。紙面最下に位置する耐熱テープ4を基準として、3枚の耐熱テープ4が、被処理基板100の短手方向(幅方向)に沿って、幅W22(140mm)および幅W32(140mm)の等間隔で配列されている。
【0082】
図18を参照して、実施例2の構成に基づいて被処理基板100に対して成膜処理を行なった。実施例2においては、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%)に対して0〜10%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%)に対して30%以下である。
【0083】
BTM層(裏面電極層)を成膜した後、IV測定の実施とともに大小の傷の数を数えたところ、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して10〜30%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して60%以下であった。IV測定によって薄膜太陽電池としての電気特性(セルの出力特定および膜厚)が所定の基準を満足しているか否かを測定したところ、問題ないことが確認された。なお、実施例2の構成においては、プラズマ処理時に、被処理基板100が耐熱テープ4の長手方向に沿って耐熱テープ4の上をやや移動している(滑っている)ことが確認された。
【0084】
(実施例3)
図16を参照して、実施例1,2と同様に、実施例3におけるセッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100の幅W50は560mmであり、長さL50は925mmである。実施例3におけるセッター5の表面5a上には、5枚の耐熱テープ4が設けられる。
【0085】
それぞれの耐熱テープ4の幅W3は330mmであり、長さL3は50mmである。被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、隣り合う耐熱テープ4同士の間隔LS3は120mmである。
【0086】
被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、紙面最左に位置する耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100tと紙面最左に位置する耐熱テープ4の端部との間の間隔L13が97.5mmとなるように配置されている。
【0087】
被処理基板100の短手方向(幅方向)において、紙面最左に位置する耐熱テープ4は、被処理基板100の端部100sと紙面最左に位置する耐熱テープ4の端部との間の間隔W13が115mmとなるように配置されている。紙面最左に位置する耐熱テープ4を基準として、5枚の耐熱テープ4が、被処理基板100の長手方向(長さ方向)に沿って、長さL23(170mm)、長さL33(170mm)、長さL43(170mm)、および長さL53(170mm)の等間隔で配列されている。
【0088】
図18を参照して、実施例3の構成に基づいて被処理基板100に対して成膜処理を行なった。実施例3においては、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%)に対して0〜10%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%)に対して30%以下である。
【0089】
BTM層(裏面電極層)を成膜した後、IV測定の実施とともに大小の傷の数を数えたところ、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して10〜30%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して95%以下であった。IV測定によって薄膜太陽電池としての電気特性(セルの出力特定および膜厚)が所定の基準を満足しているか否かを測定したところ、問題ないことが確認された。なお、実施例3の構成においては、実施例2の構成と同様に、プラズマ処理時に、被処理基板100が耐熱テープ4の長手方向に沿って耐熱テープ4の上をやや移動している(滑っている)ことが確認された。
【0090】
(実施例4)
図17を参照して、実施例1〜3と同様に、実施例4におけるセッター5の上(耐熱テープ4の表面上)に載置される被処理基板100の幅W50は560mmであり、長さL50は925mmである。実施例4におけるセッター5の表面5a上には、5枚の耐熱テープ4が設けられる。
【0091】
耐熱テープ4(4a〜4e)は、耐熱テープ4(4b)を中心として点対称となるように配置される。それぞれの耐熱テープ4(4a〜4e)の幅W4は50mmであり、長さL4も50mmである。
【0092】
被処理基板100の長手方向(長さ方向)において、耐熱テープ4(4a,4d)は、被処理基板100の端部100tと耐熱テープ4(4a,4d)の端部との間の間隔L14が97.5mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4b)は、耐熱テープ4(4a,4d)の端部と耐熱テープ4(4b)の端部との間隔L24が340mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4c,4e)は、耐熱テープ4(4b)の端部と耐熱テープ4(4c,4e)の端部との間隔L34が340mmとなるように配置されている。
【0093】
被処理基板100の短手方向(幅方向)において、耐熱テープ4(4a,4c)は、被処理基板100の端部100sと耐熱テープ4(4a,4c)の端部との間の間隔W14が115mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4b)は、耐熱テープ4(4a,4c)の端部と耐熱テープ4(4b)の端部との間隔W24が140mmとなるように配置されている。耐熱テープ4(4d,4e)は、耐熱テープ4(4b)の端部と耐熱テープ4(4d,4e)の端部との間隔W34が140mmとなるように配置されている。
【0094】
図18を参照して、実施例4の構成に基づいて被処理基板100に対して成膜処理を行なった。実施例4においては、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%)に対して0〜10%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%)に対して30%以下である。
【0095】
BTM層(裏面電極層)を成膜した後、IV測定の実施とともに大小の傷の数を数えたところ、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して10〜30%であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、比較例(100%(TOP層成膜後の値))に対して70%以下であった。IV測定によって薄膜太陽電池としての電気特性(セルの出力特定および膜厚)が所定の基準を満足しているか否かを測定したところ、問題ないことが確認された。なお、実施例4の構成においては、実施例1の構成と同様に、プラズマ処理時であっても、被処理基板100は耐熱テープ4の上をほとんど移動していない(滑っていない)ことが確認された。
【0096】
(比較例)
比較例においては、上述のとおり、セッター5上に耐熱テープ4は設けられておらず、セッター5上に被処理基板100が直接載置されている。
【0097】
図18を参照して、比較例の構成に基づいて被処理基板100に対して成膜処理を行なった。比較例においては、TOP層(光電変換層)の成膜前においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は0個であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数も0個である。TOP層(光電変換層)の成膜後においては、大きさの大きい傷(全長2mm以上)の数は、上述の実施例1〜4に対して約10倍以上であり、大きさの小さい傷(全長2mm未満)の数は、上述の実施例1〜4に対して約3倍以上である。
【0098】
上記の実施例1〜4および比較例の結果から、実施例1〜4の構成であれば、いずれのものであってもセッター5の上に載置された被処理基板100に傷が付くことは効果的に抑制されることがわかる。
【0099】
また、上記の実施例4の態様(図17参照)によれば、上記の実施例1〜3の態様に比べて、耐熱テープ4の使用面積(コスト)が低減され、耐熱テープ4の貼り付け時間(工数)も低減される。一方で、実施例1〜4では、発生した傷の数および電気特性に大きな差は見られない。したがって、実施例1〜4の中では実施例4の態様を採用することがよいことがわかる。
【0100】
以上、本発明に基づいた各実施の形態および各実施例について説明したが、今回開示された各実施の形態および各実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。
【0101】
たとえば、上記の各実施の形態1,2においては、いわゆる連続的な処理が可能なインライン型のプラズマ処理装置に基づいて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明は、セッター5が固定配置された状態でプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置にも適用されることが可能である。
【0102】
また、上記の各実施の形態1,2においては、被処理基板100を上方支持する支持部材として耐熱テープ4を例に説明したが、本発明の支持部材としてはこれに限られない。本発明の支持部材としては、耐熱テープの他にも、接着性のない(低い)薄い部材や、その他の素材であっても採用されることが可能である。支持部材の選定にあたっては、支持部材の耐久性、支持部材から出るガスの種類、プラズマ処理温度、その他のプロセス条件などに応じて、素材および厚さを最適なものとするとよい。
【0103】
上記の各実施の形態1,2および各実施例においては、被処理基板100を上方支持するために、複数の耐熱テープ4が用いられる。被処理基板100を上方支持するためには、1または複数の耐熱テープ4が用いられればよい。具体的には、図19に示すように、被処理基板100を上方支持するために、耐熱テープ4(テープ状の部材)が1枚のみ設けられていてもよい。当該構成によっても、耐熱テープ4の配設によって、セッター5の上に載置された被処理基板100に傷が付くことは効果的に抑制されることが可能である。
【0104】
したがって、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0105】
1A プラズマCVD装置(プラズマ処理装置)、1B プラズマスパッタ装置(プラズマ処理装置)、2 チャンバ、2a 搬入口、2b 搬出口、2c ガス排出部、3 搬送ローラ、3a ローラ部、3b シャフト部、3w 搬送路、4 耐熱テープ(支持部材)、5 セッター(被処理基板載置部材)、5a 表面、10,20 ガス導入管、11 アノード、12,21 カソード、13 高周波電源、14 整合器、22a 中央磁石、22b 外周磁石、23 電源接続部、24 カソードシールド、25 絶縁体、26 冷却水導入管、27 冷却水排出管、28 材料ターゲット、100 被処理基板、100s,100t 端部、101 透明電極層、102 第1スクライブライン、103 光電変換層、104 第2スクライブライン、105 裏面電極層、106 第3スクライブライン、107 薄膜太陽電池セル、1000 薄膜太陽電池、A,B1,B2,D1,D2 矢印、S 隙間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に対してプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置であって、
被処理基板載置部材と、
前記被処理基板載置部材の表面上に設けられ、前記被処理基板載置部材の上に載置された前記被処理基板を上方支持することによって、前記被処理基板と前記被処理基板載置部材との間に隙間を形成する支持部材と、
前記被処理基板に面するようにプラズマを生成することによって、前記被処理基板に前記プラズマ処理を行なうプラズマ生成部と、を備える、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記被処理基板載置部材の前記表面上に貼り付けられたテープ状の部材である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記被処理基板載置部材の前記表面上において前記被処理基板を水平支持可能なように5箇所に設けられる、
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のプラズマ処理装置を用いて、前記被処理基板に前記プラズマ処理を行なうことによって薄膜太陽電池を製造する、
薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項1】
被処理基板に対してプラズマ処理を行なうプラズマ処理装置であって、
被処理基板載置部材と、
前記被処理基板載置部材の表面上に設けられ、前記被処理基板載置部材の上に載置された前記被処理基板を上方支持することによって、前記被処理基板と前記被処理基板載置部材との間に隙間を形成する支持部材と、
前記被処理基板に面するようにプラズマを生成することによって、前記被処理基板に前記プラズマ処理を行なうプラズマ生成部と、を備える、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記被処理基板載置部材の前記表面上に貼り付けられたテープ状の部材である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記被処理基板載置部材の前記表面上において前記被処理基板を水平支持可能なように5箇所に設けられる、
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のプラズマ処理装置を用いて、前記被処理基板に前記プラズマ処理を行なうことによって薄膜太陽電池を製造する、
薄膜太陽電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−243507(P2012−243507A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111415(P2011−111415)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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