説明

プラズマ処理装置

【課題】処理ガスをプラズマ生成空間及び吹出路に通して吹出し、被処理物を表面処理する際、吹出路からの電界の漏洩を防止する。
【解決手段】プラズマ生成部10の一対の電極11,12を対向方向に対向させ、これらの間にプラズマ生成空間19を形成する。ノズル部20を電気的に接地された金属製の角材21,22にて構成し、これをプラズマ生成部10の処理位置Pを向く面に配置する。連結部材31,32にてノズル部20をプラズマ生成部10に連結して支持する。吹出路29の吹出方向の長さをノズル部20の吹出路29を画成する面から上記対向方向の外側面までの寸法より大きくか略等しくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理ガスを電極間のプラズマ生成空間にてプラズマ化して被処理物に接触させて、表面改質(親液化、撥液化を含む)、洗浄、エッチング、成膜などの種々の表面処理を行なうプラズマ処理装置に関し、特に、被処理物がプラズマ生成空間の外部に配置される所謂リモート式のプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置は、電極間のプラズマ生成空間の内部に被処理物を配置する所謂ダイレクト式と、電極間のプラズマ生成空間の外部に被処理物を配置し、処理ガスをプラズマ生成空間に連なる吹出路から被処理物に吹き付ける所謂リモート式とに大別される。リモート式は、被処理物が電極間の電界及びプラズマに直接的に晒されることがなく、被処理物の損傷度を小さくできる点で有利である。しかし、電界が被処理物へ向けて漏れるおそれがあり、半導体装置等の高品質の被処理物ではその影響を無視できない場合がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に記載のリモート式のプラズマ処理装置では、一対の電極を含むプラズマ生成部の下側に、電気的に接地された金属板が設けられている。この金属板によって電極からの漏洩電界を遮蔽でき、被処理物の損傷を防止できる。金属板には、プラズマ生成空間に連なるスリット状の吹出路が設けられている。金属板における上記スリット状の吹出路の両縁は、それぞれ下方(被処理物の側)へ突出する凸部になっている。吹出路に入って来た漏洩電界は、上記凸部の吹出路画成面に捕捉される。これによって、吹出路からの電界漏洩を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−128710号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上掲特許文献1の装置において、上記凸部の突出量が小さいと、電界が吹出路から漏れやすくなる。上記凸部の突出量を大きくすれば電界の漏れを確実に防止できるが、そうすると、金属板の重量が嵩む。金属板を折り曲げ加工容易な薄さにし、L字状に折り曲げることで、上記凸部を形成することも考えられるが、折り曲げ部のRを処理幅方向(金属板の長手方向)に一定の大きさにするのが容易でなく、更には折り曲げ部の近傍の水平部分(プラズマ生成部に面する板部分)が斜めになりやすい。そうすると、その斜め部分とプラズマ生成部との間にガス溜まりが形成され、処理ガスの流れが処理幅方向に不均一になりやすい。
本発明は、上記事情に鑑み、リモート式のプラズマ処理装置において吹出路からの電界漏洩を確実に防止して被処理物の損傷を確実に防止するとともに、処理の均一性を確保し、ひいては処理品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、処理ガスをプラズマ生成空間及び該プラズマ生成空間の吹出方向の下流に連なる吹出路に順次通して吹出し、前記吹出路より前記吹出方向の下流側の処理位置に配置された被処理物に接触させ、前記被処理物を表面処理するプラズマ処理装置において、
前記吹出方向と直交する処理幅方向にそれぞれ延び、かつ互いに前記吹出方向とも前記処理幅方向とも直交する対向方向に対向する一対の電極と、これら電極を保持するホルダを含み、前記一対の電極どうしの間に前記プラズマ生成空間が形成されるプラズマ生成部と、
前記プラズマ生成部の前記吹出方向の下流側に配置され、かつ前記吹出路を画成する吹出路画成面を有して前記処理幅方向に延び、電気的に接地された金属製の角材から構成されたノズル部と、
前記ノズル部とは別体をなし、前記ノズル部より前記対向方向の外側に配置されて、前記ノズル部を前記プラズマ生成部に連結して支持する連結部材と、
を備え、前記ノズル部の前記吹出方向の寸法ひいては前記吹出路の前記吹出方向の長さが、前記ノズル部の前記吹出路画成面から前記対向方向の外側面までの寸法より大きいか略等しいことを特徴とする。
【0007】
上記特徴によれば、電極から処理位置へ向かう電気力線を途中のノズル部に落とすことで、電界を遮蔽できる。しかも、ノズル部の吹出方向の寸法を大きくすることで、電極から吹出路に入って来た電気力線をノズル部の吹出路画成面に確実に落とすことができる。これによって、電界が吹出路から処理位置へ漏れるのを確実に低減又は防止できる。したがって、被処理物が電界によって損傷するのを確実に抑制又は防止できる。一方、ノズル部の前記対向方向の寸法を小さくすることで、ノズル部の重量が嵩むのを抑えることができる。更に、上記寸法構成によって、ノズル部が吹出方向に変形するのを抑制できる。また、ノズル部を角材にて構成することで、ノズル部のプラズマ生成部を向く面の面精度及び吹出路画成面の面精度を高くでき、更にはこれら面が交差する角部のR精度を高くできる。したがって、処理ガス流ひいては表面処理の処理幅方向の均一性を確保できる。この結果、処理品質を高めることができる。
【0008】
前記ノズル部が、前記処理幅方向にそれぞれ延びかつ前記対向方向に対向して互いの間に前記吹出路を画成する金属製の角材からなる一対のノズル部材と、前記吹出路の前記処理幅方向の両端部をそれぞれ塞ぐ一対の端閉塞部材とを含むことが好ましい。一対のノズル部材をそれぞれ角材にて構成することで、各ノズル部材のプラズマ生成部を向く面の面精度及び吹出路画成面の面精度を高くでき、更にはこれら面が交差する角部のR精度を高くできる。加えて、端閉塞部材によって、処理ガスが吹出路の処理幅方向の両端部から処理幅方向の外方へ漏れるのを防止できる。これによって、処理ガス流を処理幅方向に均一な流れにでき、ひいては処理の均一性を確保できる。
前記吹出路の前記吹出方向の長さが、前記各ノズル部材の前記対向方向の寸法より大きいか略等しいことが好ましい。 これによって、吹出路からの電界漏洩を確実に低減又は防止できる。かつ、ノズル部材の重量が嵩むのを防止できる。更には、ノズル部材が吹出方向に変形するのを確実に抑制できる。
【0009】
前記吹出路の前記吹出方向の長さは、好ましくは5mm〜20mmである。前記吹出路の前記吹出方向の長さが5mm未満であると、電界漏洩の低減効果が小さくなる。前記吹出路の前記吹出方向の長さが20mmを超えると、プラズマ生成空間から被処理物までの距離が大きくなり過ぎ、プラズマ化された処理ガスが被処理物に到達するまでプラズマの活性を維持するのが容易でない。前記吹出路の前記吹出方向の長さは、より好ましくは5mm〜15mmであり、更に好ましくは8mm〜12mmである。前記各ノズル部材の前記対向方向の寸法は、好ましくは3mm〜10mmであり、より好ましくは5mm〜8mmである。
【0010】
前記連結部材が、前記プラズマ生成部の前記ノズル部より前記対向方向の外側の部分に固定された被固定部と、前記被固定部と前記ノズル部との間の前記プラズマ生成部における前記吹出方向の下流側を覆う覆部と、前記ノズル部に連結された連結部とを一体に有して、電気的に接地された金属製の板材にて構成されていることが好ましい。
これによって、電極からノズル部より対向方向の外側の処理位置へ向かう電界を連結部材の覆部にて遮蔽できる。したがって、電界漏洩による被処理物の損傷を一層確実に抑制又は防止できる。また、連結部材によって、ノズル部の上記対向方向への変形を抑制又は阻止できる。更には、ノズル部をプラズマ生成部に直接固定せず、かつ連結部材の被固定部をノズル部より上記対向方向の外側に配置することで、プラズマ生成部の熱応力がノズル部に直接的に伝達されるのを回避又は抑制でき、ノズル部の熱変形を抑制又は防止できる。
【0011】
前記覆部の前記処理位置を向く面と前記ノズル部の前記処理位置を向く面どうしが互いに面一をなしていることが好ましい。これによって、ノズル部と被処理物との間の処理流路の厚さと、覆部と被処理物との間の処理流路の厚さを同じにでき、被処理物の表面上での処理ガスの流れを安定させることができる。
【0012】
前記プラズマ処理装置が、前記プラズマ生成部の前記吹出方向の下流側を覆うようにして、前記プラズマ生成部と前記ノズル部との間に介在され、かつ電気的に接地された金属製の板材からなる介在部材を、更に備えていてもよい。これによって、電界漏洩を一層確実に防止できる。前記介在部材が、前記連結部材を兼ねていてもよい。
【0013】
前記吹出路が、前記ノズル部を前記吹出方向にそれぞれ貫通し、かつ前記処理幅方向に互いに並べられた複数の吹出孔を含んでいてもよい。
これによって、プラズマ生成空間の下流端をノズル部によって部分的に塞ぐことができる。したがって、電界漏洩を一層確実に防止できる。
【0014】
前記各吹出孔における前記処理位置側の部分が前記プラズマ生成空間側の部分より狭いことが好ましい。これによって、処理ガスの吹出し流速を高めることができ、被処理物に確実に接触させることができる。よって、被処理物を確実に表面処理することができる。
【0015】
前記一対のノズル部材の間に金属製の多孔部材が設けられていてもよい。これによって、吹出路からの電界漏洩を一層確実に防止できる。
【0016】
前記表面処理は、大気圧近傍下にて行なうことが好ましい。ここで、大気圧近傍とは、1.013×10〜50.663×10Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10〜10.664×10Paが好ましく、9.331×10〜10.397×10Paがより好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プラズマ処理装置における吹出路からの電界の漏洩を確実に低減又は防止して被処理物の損傷を確実に抑制又は防止できるとともに、処理の均一性を確保できる。この結果、処理品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表面処理装置を示す側面断面図である。
【図2】上記表面処理装置の処理ヘッドを、一部の要素を省略して示す斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う、上記処理ヘッドの平面断面図である。
【図4】上記処理ヘッドの下側部分を拡大して示す側面断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る表面処理装置を示す側面断面図である。
【図6】上記第2実施形態に係る表面処理装置の処理ヘッドの下側部分を拡大して示す側面断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示し、処理ヘッドの下側部分の側面断面図である。
【図8】上記第3実施形態の処理ヘッドのノズル部の平面図である。
【図9】上記第3実施形態のノズル部の変形例(第4実施形態)を示す平面図である。
【図10】本発明の第4実施形態を示し、処理ヘッドの下側部分の側面断面図である。
【図11(a)】実施例1及び比較例1−1〜1−3のTEG評価結果を示し、リーク電流の測定結果のグラフである。
【図11(b)】実施例1及び比較例1−1〜1−3のTEG評価結果を示し、GOI電圧の測定結果のグラフである。
【図12】実施例2及び比較例2の結果を示すグラフである。
【図13】実施例3及び比較例3の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。 図1は、本発明の第1実施形態を示したものである。被処理物9は、例えばフラットパネルディスプレイ用のガラス基板であるが、これに限られず、半導体ウェハや樹脂フィルム等であってもよい。表面処理の内容は、特に限定が無く、親水化、撥水化等の表面改質の他、洗浄、エッチング、アッシング、成膜などの種々の表面処理に適用できる。
なお、図において、被処理物9の厚さは誇張されている。
【0020】
表面処理装置1は、処理ヘッド2と、搬送手段4を備えている。搬送手段4は、例えば、ローラコンベアにて構成されている。被処理物9がローラコンベア4によって一方向(図1において左右)に搬送され、処理ヘッド2の下方を横切る。ローラコンベア4上の被処理物9が位置する高さの水平面における処理ヘッド2の直下に対応する部分が、「処理位置P」を構成する。
搬送手段4は、ローラコンベアに限られず、ベルトコンベア、移動ステージ、浮上ステージ、ロボットアーム等であってもよい。被処理物9が静止され、処理ヘッド2が移動されるようになっていてもよい。
【0021】
処理ヘッド2は、図示しない架台によって搬送手段4の上方に支持されている。処理ヘッド2は、整流部6と、プラズマ生成部10を備え、図1の紙面と直交する処理幅方向に長く延びている。整流部6に処理ガス源5が接続されている。処理ガスの成分は、表面処理の内容に応じて適宜選択される。例えば、親水化処理の場合、処理ガスが窒素(N)、酸素(O)等を含むことが好ましい。撥水化処理の場合、処理ガスがCF、C、CHF、F等のフッ素含有成分を含むことが好ましい。酸化シリコンのエッチング処理の場合、処理ガスとしてCF、C、CHF、F等のフッ素含有成分にHO等の水素含有添加成分を添加したガスを用いるのが好ましい。アモルファスシリコンやポリシリコンのエッチング処理の場合、処理ガス成分として更にオゾン等の酸化性成分を加えるのが好ましい。
【0022】
詳細な図示は省略するが、整流部6は、処理幅方向(図1の紙面直交方向)に延びるチャンバー、処理幅方向に延びるスリット、処理幅方向に分散して配置された多数の小孔等を有し、処理ガス源5からの処理ガスを処理幅方向に均一化する。
【0023】
図1に示すように、整流部6の上記処理幅方向と直交する吹出方向(上下方向)の下流側にプラズマ生成部10が配置されている。図1及び図2に示すように、プラズマ生成部10は、一対の電極11,12と、一対の誘電部材13,14と、ホルダ15,16を含む。各電極11,12は、それぞれ大略四角形の断面をなし、処理幅方向(図1の紙面直交方向)に延びている。電極11,12の長さは、被処理物9の処理幅方向の寸法とほぼ同じか少し大きく、例えば1m〜2mである。一対の電極11,12が、上記処理幅方向とも吹出方向とも直交する対向方向(図1の左右方向)に互いに対向している。
【0024】
図1において左側の第1電極11は、電源3に接続されて電圧印加電極となっている。図1において右側の第2電極12は、接地線3eを介して電気的に接地されて接地電極となっている。電源3は、例えばパルス状の高周波電力を出力する。これによって、電極11,12間に大気圧近傍下で放電が生成される。
電源3からの高周波はパルス波状等の間欠波に限定されず、交流正弦波状等の連続波であってもよい。
【0025】
各電極11,12の内部には、冷却路17(温調路)が形成されている。冷却路17内に水等の冷媒(温調媒体)が通されることで、電極11,12が冷却(温調)される。
【0026】
図4に示すように、電極11,12の下面(処理位置Pを向く面)から処理位置Pまでの距離H(以下「電極高さH」と称す)は、H=15mm〜35mm程度であることが好ましい。
【0027】
図1及び図2に示すように、電極11,12どうしの間に一対の誘電部材13,14が挟まれている。誘電部材13,14は、それぞれアルミナ( Al)等の固体誘電体にて構成され、処理幅方向(図1の紙面直交方向) に延びる板状になっている。第1誘電部材13は、断面コ字状になり、第1電極11における第2電極12との対向面に被さって接触している。第2誘電部材14は、第1誘電部材13を左右に反転させた断面形状を有し、第2電極12における第1電極11との対向面に被さって接触している。誘電部材13,14は、電極11,12よりも下方(吹出方向の下流側)へ延び出している。
誘電部材13,14に代えて、電極11,12の対向面にアルミナ等の溶射膜を被膜してもよい。
【0028】
誘電部材13,14どうしの間にプラズマ生成部内流路18が画成されている。生成部内流路18は、垂直をなし、かつ処理幅方向に誘電部材13,14と略同じ長さ延びている。生成部内流路18のうち電極11,12の上端部と対応する高さ付近から電極11,12の下端部と対応する高さ付近までの間が、大気圧近傍のプラズマ生成空間19を構成する。整流部6からの処理ガスが生成部内流路18に導入されて、流路18内を下方へ流れながらプラズマ生成空間19内においてプラズマ化(励起、活性化、ラジカル化、分解、イオン化等を含む)される。生成部内流路18及びプラズマ生成空間19の厚さ(図1の左右方向の寸法)は、例えば1mm〜数mm程度である。
【0029】
電極11,12及び誘電部材13,14の左右外側(対向方向の外側)には、ホルダ15,16が設けられている。第1ホルダ15は、第1電極11及び第1誘電部材13の外側に設けられている。第2ホルダ16は、第2電極12及び第2誘電部材14の外側に設けられている。各ホルダ15,16は、単一のホルダ部材にて構成されていてもよく、複数のホルダ部材が組み合わさることによって構成されていてもよい。ホルダ15,16の少なくとも電極11と接触ないしは対面する部分は、エンジニアリングプラスチック等の絶縁体にて構成されている。上記絶縁体を空気絶縁層にて構成してもよい。ホルダ15,16の外側部分は金属にて構成されていてもよい。ホルダ15,16によって電極11,12及び誘電部材13,14が保持されている。ホルダ15,16と誘電部材13,14の下面(吹出方向の下流側の面)どうしは、互いに面一になっている。
【0030】
プラズマ生成部10の下側(吹出方向の下流側)にノズル部20が設けられている。ノズル部20は、一対のノズル部材21,22を含む。ノズル部材21,22は、それぞれ断面四角形状の金属製の角材にて構成され、処理幅方向に延びている。ノズル部材21,22の処理幅方向(図1の紙面直交方向)の長さは、例えば1m〜2mである。ノズル部材21,22の材質は、ステンレスでもよく、アルミニウムでもよい。ノズル部材21,22は、接地線8aを介して電気的に接地されている。
【0031】
第1ノズル部材21は、第1電極11及び第1誘電部材13の直下に配置され、第1誘電部材13及び第1ホルダ15の下面に非固定状態で当てられている。第2ノズル部材22は、第2電極12及び第2誘電部材14の直下に配置され、第2誘電部材14及び第2ホルダ16の下面に非固定状態で当てられている。ノズル部20は、プラズマ生成部10に単に当てられているだけであり、プラズマ生成部10には直接的に固定されていない。
【0032】
一対のノズル部材21,22が、対向方向(図1の左右方向)に対向している。これらノズル部材21,22どうしの間に吹出路29が画成されている。ノズル部材21,22の対向面が、吹出路画成面を構成している。吹出路29は、垂直をなし、かつ処理幅方向にノズル部材21,22と略同じ長さ延びるスリット状になっている。生成部内流路18ひいてはプラズマ生成空間19が、吹出路29に一直線に連なっている。処理ガスが、生成部内流路18から吹出路29へ導かれ、吹出路29から処理位置Pへ向けて下方に吹き出される。吹出路29の厚さ(図1の左右方向の寸法)は、プラズマ生成空間19の厚さと等しく、例えば1mm〜数mm程度である。
吹出路29の厚さ(図1の左右方向の寸法)は、プラズマ生成空間19の厚さより大きくてもよく、プラズマ生成空間19の厚さより小さくてもよい。
【0033】
図4に示すように、各ノズル部材21,22の断面は、上下(吹出方向)に長く、左右(対向方向)に短い。換言すると、各ノズル部材21,22の上下寸法Lひいては吹出路29の路長は、各ノズル部材21,22の吹出口画成面から左右外側面(対向方向の外側面)までの寸法tより大きい(L>t)。ノズル部材21,22の上下寸法Lは、好ましくはL=5mm〜20mmであり、より好ましくはL=5mm〜15mmであり、更に好ましくはL=8mm〜12mmである。ノズル部材21,22の左右寸法tは、好ましくはt=3mm〜10mmであり、より好ましくはt=5mm〜8mmである。
【0034】
ノズル部材21,22の上下寸法Lは、左右寸法tとほぼ等しくてもよい(L≒t)。すなわち、上下寸法Lは、左右寸法tより大きい(L>t)だけに限られず、左右寸法tと等しくてもよく(L=t)、左右寸法tより僅かに小さくてもよい(L<t)。L<tの場合、左右寸法tと上下寸法Lの差(t−L)の上限は、(t−L)=+3mm程度である((t−L)≦+3mm)。
【0035】
ノズル部20の下面と処理位置Pとの間のワーキングディスタンスWDは、WD=1mm〜15mm程度が好ましい。
【0036】
図3に示すように、ノズル部材21,22の処理幅方向の一端部及び他端部には、それぞれ端閉塞部材23が設けられている。各端閉塞部材23がノズル部材21,22の端面どうし間に跨っている。各端閉塞部材23の中央部には凸状の閉塞部23aが設けられている。この閉塞部23aが吹出路29の処理幅方向の端部に差し入れられている。これら端閉塞部材23によって、吹出路29の処理幅方向の両端部が塞がれている。
【0037】
プラズマ生成部10の下側(吹出方向の下流側)かつノズル部20の左右外側(対向方向の外側)には、ノズル部20とは別体の連結部材31,32が設けられている。連結部材31,32を介して、ノズル部20が、プラズマ生成部10に連結されて支持されている。
【0038】
連結部材31,32は、大略L字の断面を有して処理幅方向(図1の紙面直交方向)に延びている。連結部材31,32は、ステンレスやアルミニウム等の金属にて構成されている。連結部材31,32は、金属の折り曲げ加工によって形成されているが、押し出し成形にて作製されてもよく、切削加工にて作製されてもよい。連結部材31,32の厚さは、1mm〜4mm程度であり、ノズル部材21,22を支持し得る十分な剛性を有している。
【0039】
連結部材31,32は、接地線8bを介して電気的に接地されている。第1ノズル部材21が第1連結部材31を介して接地されていてもよい。第2ノズル部材22が第2連結部材32を介して接地されていてもよい。
【0040】
各連結部材31,32の構造を更に詳述する。
第1連結部材31は、第1ホルダ15の下方かつ第1ノズル部材21の左外側に配置されている。第1連結部材31は、被固定部31aと、覆部31bと、連結部31cを有している。被固定部31aは、垂直をなしている。被固定部31aの上側部分が、第1ホルダ15の外側面(プラズマ生成部10のノズル部20より対向方向の外側の部分)に当てられ、ボルト33aにて第1ホルダ15に連結されている。被固定部31aは、プラズマ生成部10より下方(吹出方向の下流側)に突出している。
【0041】
覆部31bは、被固定部31aの下端(突出端)からノズル部20へ向かって水平に延びている。覆部31bによって、プラズマ生成部10の下面(処理位置Pを向く下流側面)における被固定部31aとノズル部20との間の部分が覆われている。覆部31bの下面(処理位置Pを向く面)と、ノズル部20の下面(処理位置Pを向く面)とが面一になっている。ホルダ15の下面と覆部31b31bとの間には、空気絶縁層が形成されている。
【0042】
連結部31cは、覆部31bの左右内側の端部から垂直に立ち上がっている。連結部31cが第1ノズル部材21の左側面(対向方向の外側面)に突き当てられている。この連結部31cが、ボルト33cにて第1ノズル部材21に連結されている。
【0043】
第2連結部材32は、第2ホルダ16の下方かつ第2ノズル部材22の右外側に配置されている。第2連結部材32は、被固定部32aと、覆部32bと、連結部32cを有している。被固定部32aは、垂直をなしている。被固定部32aの上側部分が、第2ホルダ16の外側面(プラズマ生成部10のノズル部20より対向方向の外側の部分)に当てられ、ボルト34aにて第2ホルダ16に連結されている。被固定部32aは、プラズマ生成部10より下方(吹出方向の下流側)に突出している。
【0044】
覆部32bは、被固定部32aの下端(突出端)からノズル部20へ向かって水平に延びている。覆部32bによって、プラズマ生成部10の下面(処理位置Pを向く下流側面)における被固定部32aとノズル部20との間の部分が覆われている。覆部32bの下面(処理位置Pを向く面)と、ノズル部20の下面(処理位置Pを向く面)とが面一になっている。ホルダ16の下面と覆部32bとの間には、空気絶縁層が形成されている。
【0045】
連結部32cは、覆部32bの左右内側の端部から垂直に立ち上がっている。連結部32cが第2ノズル部材22の左側面(対向方向の外側面)に突き当てられている。この連結部32cが、ボルト34cにて第2ノズル部材22に連結されている。
【0046】
上記のように構成された表面処理装置1によって被処理物9を表面処理する方法を説明する。
被処理物9を搬送手段4によって処理ヘッド2の下方を横切るように搬送する。被処理物9は、処理ヘッド2の直下において処理位置P上に配置される。併行して、電極11,12間にプラズマ電界を印加し、処理ガスを生成部内流路18内のプラズマ生成空間19でプラズマ化して、吹出路29から下方へ吹き出す。この処理ガスが処理位置P上の被処理物9に接触して反応が起き、被処理物9の表面処理がなされる。
【0047】
図4に示すように、第1電極11からの電気力線のうち、ほぼ真下に向かう電気力線e1は、金属製の第1ノズル部材21によって遮られる。第1電極11から左下に向かう電気力線e2は、第1連結部材31によって遮られる。第1電極11から第2電極12の下側へ斜めに向かう電気力線e3は、金属製の第2ノズル部材22及び第2連結部材32によって遮られる。更に、吹出路29に入った電気力線e4は、ノズル部材21,22の何れかの吹出路29を形成する面に落ちる。ノズル部材21,22を上下に厚肉にすることで、上記電気力線e4をノズル部材21,22の吹出路画成面に確実に落すことができる。これによって、電界が処理位置Pへ漏れるのを確実に防止でき、被処理物9が電界によって損傷するのを確実に防止できる。
【0048】
金属製角材からなるノズル部材21,22は、その上面(プラズマ生成部10を向く面)や吹出路画成面を切削したり研磨したりすることによって、これら面の平面精度を充分に高くでき、更にはこれら面が交差する角部のR精度を充分に高くできる。したがって、処理ガス流の処理幅方向の均一性を維持することができ、被処理物9を処理幅方向に均一に処理することができる。この結果、処理品質を向上させることができる。
【0049】
端閉塞部材23にて吹出路29の処理幅方向の両端部を塞ぐことで、処理ガスがノズル部材21,22どうし間の処理幅方向の両端部から外方へ漏れるのを防止できる。これによって、吹出路29における処理幅方向の両端部分での処理ガス流を処理幅方向の中央部と同じような流れにでき、処理の均一性を一層確実に高めることができる。
【0050】
吹き出し後の処理ガスは、被処理物9の表面に沿って流れる。ノズル部20と連結部材31,32の底面を面一にすることで、処理ヘッド2と被処理物9との間の処理流路の厚さを処理ヘッド2の底面全体にわたって一定にできる。したがって、被処理物9の表面上での処理ガスの流れを安定させることができる。
連結部材31,32をステンレス等の金属にて構成することによって、電界漏洩を一層確実に防止できるだけでなく、処理ガスに対する耐蝕性を確保できる。
【0051】
ノズル部材21,22は、プラズマ生成部10に単に当てられているだけであり直接には固定されておらず、しかも被固定部31a,32aがノズル部材21,22から離れてプラズマ生成部10の左右の外側部に配置されているため、プラズマ生成部10の構成要素11〜16がプラズマの熱で変形したとしても、熱応力がノズル部材21,22に伝達されるのを低減又は回避できる。したがって、ノズル部材21,22の変形を抑制又は防止できる。
【0052】
ノズル部材21,22の上下の寸法Lを、左右の寸法tより大きくするか(L>t)、左右寸法tとほぼ等しく(L≒t)することで、電気力線e4を確実に捕捉できるとともに、ノズル部材21,22の重量が嵩むのを防止できる。更には、ノズル部材21,22が上下に変形するのをより確実に抑制でき、ノズル部材21,22とプラズマ生成部10との間に隙間が形成されるのを防止できる。
ノズル部材21,22の左右方向(対向方向)の変形は、連結部材31,32によって抑制することができる。
ノズル部材21,22の上下の寸法(吹出路29の路長)を5mm〜20mmとすることによって、電界が吹出路29から漏れるのを確実に防止でき、かつ処理ガスが被処理物に到達するまで活性を確実に維持できる。
上下寸法Lが左右寸法tと略等しい場合(L≒t)において、上下寸法Lが左右寸法tより小さいとき(L<t)、左右寸法tと上下寸法Lの差(t−L)の上限を3mm程度にすることによって((t−L)≦+3mm)、ノズル部材21,22の重量が過大になるのを確実に抑制でき、吹出路29からの電界漏れを確実に防止できる。
【0053】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
図5及び図6は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態では、プラズマ生成部10とノズル部20の間に介在部材41,42が介在されている。介在部材41,42は、それぞれL字状の断面を有して、図5の紙面と直交する処理幅方向に延びている。これら介在部材41,42によって、プラズマ生成部10の下側(吹出方向の下流側)が覆われている。介在部材41,42は、ステンレスやアルミニウム等の金属製の板材にて構成され、接地線8cを介して電気的に接地されている。介在部材41,42の厚さは、1mm〜4mm程度である。
【0054】
介在部材41,42の構造を更に詳述する。
図5において、左側の第1介在部材41は、第1ホルダ15の底部と第1ノズル部材21との間に設けられている。第1介在部材41の垂直部が、第1ホルダ15の左外側面(プラズマ生成部10のノズル部20より対向方向の外側の部分)と被固定部31aとの間に挟まれ、被固定部31aと共にボルト33aによって第1ホルダ15に連結されて支持されている。第1介在部材41の水平部は、プラズマ生成部10の内部流路18より左側の下面を覆い、かつ該下面に非固定状態で当てられている。第1介在部材41の下面に第1ノズル部材21が当接されている。第1介在部材41と第1ノズル部材21とがボルト33dによって連結されている。第1介在部材41は、第1ノズル部材21をプラズマ生成部10に連結する連結部材としての機能を兼ねる。
【0055】
図5において、右側の第2介在部材42は、第2ホルダ16の底部と第2ノズル部材22との間に設けられている。第2介在部材42の垂直部が、第2ホルダ16の右外側面(プラズマ生成部10のノズル部20より対向方向の外側の部分)と被固定部32aとの間に挟まれ、被固定部32aと共にボルト34aによって第1ホルダ15に連結されて支持されている。第2介在部材42の水平部は、プラズマ生成部10の内部流路18より右側の下面を覆い、かつ該下面に非固定状態で当てられている。第2介在部材42の下面に第2ノズル部材22が当接されている。第2介在部材42と第2ノズル部材22とがボルト34dによって連結されている。第2介在部材42は、第2ノズル部材22をプラズマ生成部10に連結する連結部材としての機能を兼ねる。
【0056】
図6に示すように、第2実施形態では、第1電極11からの電気力線のうち、ほぼ真下又は左下に向かう電気力線e1,e2を第1介在部材41によって遮ることができる。第1電極11から第2電極12の下側へ斜めに向かう電気力線e3は、第2介在部材42によって遮ることができる。更に、吹出路29の路長が介在部材41,42の厚さ分だけ大きくなるため、吹出路29に入って来た電気力線e4をより確実に捕捉できる。これによって、電界が処理位置Pへ漏れるのを一層確実に防止できる。
【0057】
図7及び図8は、本発明の第3実施形態を示したものである。第3実施形態では、ノズル部24がノズル部材21,22に分かれておらず、1つの金属製の角材にて構成されている。ノズル部24は、第1誘電部材13の下面から第2誘電部材14の下面に跨り、かつ図7の紙面と直交する処理幅方向に延びている。ノズル部24の上面が、誘電部材13,14の下面に非固定状態で当てられている。連結部31cが、ノズル部24の左側面に突き当てられ、ボルト33cにてノズル部24と連結されている。連結部32cが、ノズル部24の右側面に突き当てられ、ボルト34cにてノズル部24と連結されている。
【0058】
図8に示すように、ノズル部24には、複数の吹出孔25が形成されている。これら吹出孔25は、処理幅方向(ノズル部24の長手方向)に一列に並べられている。各吹出孔25は、ノズル部24を上下(吹出方向)に貫通している。各吹出孔25の上端開口が生成部内流路18に連なっている。各吹出孔25の下端開口が処理位置Pに面している。これら吹出孔25によって吹出路29が構成されている。ノズル部24の上下(吹出方向)の寸法Lは、ノズル部24の左右(対向方向)の寸法の2分の1より大きく、吹出孔25の内周面からノズル部24の左右の外側面までの寸法より大きい(L>t)。
【0059】
図7に示すように、各吹出孔25の上下方向の中間部には段差が形成されており、段差より上側は大径になり、段差より下側は小径になっている。したがって、各吹出孔25における下側部分25b(処理位置P側の部分)が上側部分25c(プラズマ生成部10側の部分)より狭くなっている。
【0060】
第3実施形態では、生成部内流路18の下端開口がノズル部24における孔25の周辺部分24aによって塞がれる。この部分24aに電気力線e4を落とすができる。したがって、処理位置Pへの電界漏洩を一層確実に防止できる。処理ガスは、生成部内流路18から各吹出孔25を通過して吹き出される。このとき、処理ガスが吹出孔25の下側の小径部25bで絞られることで、流速を高めることができる。したがって、処理ガスを被処理物9に確実に接触させることができ、被処理物9を確実に表面処理することができる。
【0061】
図9は、第3実施形態の変形態様(第4実施形態)を示したものである。この態様では、各吹出孔25が長孔状になっている。吹出孔25の長軸が処理幅方向(ノズル部24の長手方向)に向けられている。
【0062】
図10に示す第5実施形態では、ノズル部材21,22の間に金属製の多孔部材26が設けられている。ここでは、多孔部材26として金網が用いられているが、多孔部材26が、パンチングメタル等の他の多孔部材にて構成されていてもよい。多孔部材26の両縁部がノズル部材21,22によって支持されている。多孔部材26は、吹出路29の好ましくは上端部に設けられているが、吹出路29の上下方向の中間部に設けられていてもよく、吹出路29の下端部に設けられていてもよい。誘電部材13,14とノズル部材21,22との間に多孔部材26が挟まれていてもよい。多孔部材26は、ノズル部材21,22を介して電気的に接地されている。
【0063】
第5実施形態(図10)では、生成部内流路18からの処理ガスは、多孔部材26の孔を通り、更に吹出路29を通って処理位置Pへ向けて吹き出される。第1電極11からの電気力線のうちノズル部材21,22の間に入って来た電気力線e4の大部分は、多孔部材26によって遮られる。多孔部材26の孔を通過した電気力線e41がノズル部材21,22の吹出路画成面に落ちる。これによって、処理位置Pへの電界漏洩を一層確実に防止することができる。
【0064】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、連結部材31,32の覆部31b,32bが、ノズル部20より上に引っ込んでいてもよく、ノズル部20より下に突出していてもよい。
連結部材31,32が、樹脂、セラミックス等の絶縁材料にて構成されていてもよい。上記絶縁材料は処理ガスに対する耐蝕性を有していることが好ましい。
第2実施形態(図5)において、連結部材31,32を省いてもよく、介在部材41,42だけでノズル部材21,22を支持してもよい。
第3、第4実施形態(図7〜図9)において、吹出孔25が途中に段差の無い、ストレートな孔であっていてもよい。
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば、第3〜第5実施形態(図7〜図10)では、ノズル部20,24がプラズマ生成部10に直接的に接しているが、これら実施形態でも第2実施形態(図5)と同様に、ノズル部20,24とプラズマ生成部10との間に介在部材41,42を介在させてもよい。
【実施例1】
【0065】
実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1では、第2実施形態(図5及び図6)の装置1を用いて、被処理物9にプラズマ照射を行ない、その後、TEG(Test Element Group)評価を行なった。被処理物9としてアンテナ比(ゲート絶縁膜の面積に対する電極膜の面積の比)が異なる複数の半導体チップを用意した。上記ゲート絶縁膜の膜厚は、80Åであった。
各ノズル部材21,22の上下(吹出方向)の寸法Lは、L=10mmであった。
各ノズル部材21,22の左右(対向方向)の寸法tは、t=7mmであった。
各介在部材41,42の上下の厚さは、2mmであった。
吹出路29の路長(上下方向の長さ)は、12mmであった。
吹出路29の処理幅方向の長さは、1540mmであった。
ワーキングディスタンスWDは、WD=3mmであった。
プラズマ生成部内流路18の左右(対向方向)の厚さは、1mmであった。
処理ガスとしてN- 900L/minを用いた。
電極11,12への投入電力は高周波変換前の直流で4kWであった。
電極11,12間の印加電圧は、Vpp=18kVであった。
被処理物9の搬送速度は1m/minとし、処理位置Pに20回通した。なお、上記被処理物9の実際の製造工程における搬送速度は3.5m/minであり、処理位置Pに通す回数は1回である。
【0066】
表面処理後の被処理物9について、絶縁膜への印加電圧に対するリーク電流及びGOI電圧を測定した。リーク電流は、印加電圧4V〜5Vの電流値を平均した。GOI電圧は、電流値が1nA(電流密度4×10−3A/cm)となる電圧値とした。リーク電流の測定結果を図11(a)に示し、GOI電圧の測定結果を図11(b)に示す。
【0067】
[比較例1−1]
比較例1−1として、表面処理を行なっていない状態の被処理物9について、絶縁膜への印加電圧に対するリーク電流及びGOI電圧を測定した。図11(a)に示すように、リーク電流は50pAを下回った。図11(b)に示すように、GOI電圧は、9.8Vであった。
【0068】
[比較例1−2]
比較例1−2では、図5において、ノズル20及び連結部材31,32を省略(撤去)した装置を用いた。介在部材41,42と被処理物9との間の距離すなわちワーキングディスタンスWDは、WD=3mmであった。その他の装置構造及び処理条件は、実施例1と同じとした。表面処理後、実施例1と同様にして、リーク電流及びGOI電圧を測定した。結果を図11(a)及び(b)に示す。
【0069】
[比較例1−3]
比較例1−3では、比較例1−2において、介在部材41,42と被処理物9との間の距離すなわちワーキングディスタンスWDを、WD=8mmとした。その他の装置構造及び処理条件は、比較例1−2と同じとした。表面処理後、実施例1と同様にして、リーク電流及びGOI電圧を測定した。結果を図11(a)及び(b)に示す。
【0070】
[比較例1−4]
比較例1−4では、比較例1−3において、電極11,12への投入電力を高周波変換前の直流で1.6kWとした。その他の装置構造及び処理条件は、比較例1−3と同じとした。表面処理後、実施例1と同様にして、リーク電流及びGOI電圧を測定した。結果を図11(a)及び(b)に示す。
【0071】
図11(a)から明らかな通り、本発明の実施例1によれば、アンテナ比が70万倍、50万倍、35万倍、3.5万倍の何れの場合においても、リーク電流を比較例1−2〜4より低減できた。図11(b)に示すように、GOI電圧は、比較例1−1のリファレンス(9.8V)に近づけることができた。したがって、本発明によれば、被処理物9に与えるダメージを低減できることが確認された。
【実施例2】
【0072】
実施例2では、第2実施形態(図5及び図6)の装置1を用いてガラス基板9の親水化処理を行ない、電極高さHと表面処理度(接触角)との関係を調べた。表面処理前の基板9の対水接触角は、40°であった。
標準の電極高さH(後記比較例2のWD=3mmのときの電極高さH)をH=18.5mmとし、電極高さHをH=H+10mm〜H+20mm(すなわちH=28.5mm〜38.5mm)の範囲で変化させた。H=H+10mmのときのワーキングディスタンスWDは、WD=3mmであった。H=H+20mmのときのワーキングディスタンスWDは、WD=13mmであった。それ以外の装置構造(ノズル部20の上下寸法L及び左右寸法tを含む)、処理ガス条件、プラズマ条件(投入電力、流路18の厚さを含む)は、実施例1と同じであった。
被処理物9の搬送速度は3.5m/minとした。被処理物9を処理位置Pに通した回数は、1回とした。
【0073】
表面処理後、被処理物9の表面の対水接触角を測定した。結果を図12に示す。H=H+10mm〜H+15mm(WD=3mm〜8mm)では、良好な表面処理度を得ることができた。電極高さHがノズル部20の高さ分だけ増大しても、ワーキングディスタンスWDの設定によって表面処理度を十分に確保できることが確認された。
【0074】
[比較例2]
比較例2として、図5において、ノズル20及び連結部材31,32を省略(撤去)した装置を用い、実施例2と同様にして、電極高さHと表面処理度(接触角)との関係を調べた。電極高さHをH=H+0mm〜H+15mm(すなわちH=18.5mm〜33.5mm)の範囲で変化させた。なお、H=H+0mmのときのワーキングディスタンスWDは、WD=3mmであった。H=H+10mmのときのワーキングディスタンスWDは、WD=13mmであり、H=H+15mmのときのワーキングディスタンスWDは、WD=18mmであった。それ以外の装置構造、処理ガス条件、プラズマ条件(投入電力、流路18の厚さを含む)は、実施例2と同じであった。表面処理後の対水接触角の測定結果を図12に示す。
【0075】
図12から明らかな通り、ワーキングディスタンスWDが同じであれば、ノズル部20の有無に拘わらず、表面処理度が同程度になった。電極高さHが同じであれば、ノズル20を設けた場合(実施例2)のほうが、ノズル20が無い場合(比較例2)よりも表面処理度が向上した。これは、ノズル20を設けることによって処理ガスを拡散させずに被処理物9に確実に吹き付けることができるためと考えられる。
【実施例3】
【0076】
実施例3では、第2実施形態(図5及び図6)の装置1を用いてガラス基板9の親水化処理を行ない、表面処理度(接触角)の処理幅方向の均一性を調べた。ノズル部材21,22は切削加工された金属角材であった。ワーキングディスタンスWDは、WD=3mmであった。それ以外の装置構造、及び処理条件(ガス条件、プラズマ条件、搬送速度、搬送回数を含む)は、実施例2と同じであった。
【0077】
表面処理後の被処理物9について、処理幅方向の各位置における対水接触角を測定した。結果を図13に示す。図13において、横軸は、被処理物9の処理幅方向の中央部を基準点(0mm)とし、各測定位置の上記基準点までの距離を示す。同図から明らかな通り、表面処理度(接触角)を処理幅方向にほぼ均一にすることができた。
【0078】
[比較例3]
比較例3として、切削加工された金属角材からなるノズル部材21,22に代えて、金属板を折り曲げ加工して形成したノズル部材を用いた。その他の装置構造及び処理条件は、実施例3と同じであった。
【0079】
表面処理後の被処理物9について、処理幅方向の各ポイントにおける対水接触角を測定した。図13に示すように、比較例3では実施例3より表面処理度(接触角)のばらつきが大きかった。上記ノズル部材の上面部と吹出路形成部との角部のRが、折り曲げ加工の精度上、処理幅方向に一定でなく、介在部材41,42と上記ノズル部材の上面部との間の所々にくぼみが形成されて、そこにガスが滞留したために処理の均一性が損なわれたものと考えられる。
【実施例4】
【0080】
実施例1において、ノズル部材21,22の左右(対向方向)の寸法tを、上下(吹出方向)の寸法Lと等しくし、t=L=10mmとした。上記寸法tを実施例1より大きくした分だけ、連結部材31,32の左右寸法を小さくした。それ以外の装置構造(電極11,12の左右寸法及びホルダ15、16の左右寸法を含む)及び処理条件については実施例1と同じにして、実施例1と同様の表面処理を行った。その結果、実施例1と同程度のリーク電流およびGOI電圧が得られた。したがって、ノズル部材21,22の左右寸法tと上下寸法Lを同じにしても、被処理物9に与えるダメージを低減できることが確認された。
【実施例5】
【0081】
実施例5では、実施例4と同じ装置を用いて、実施例2と同じ内容の表面処理を実施例2と同じ処理条件で行った。その結果、実施例2と同じような電極高さHと接触角(表面処理度)の関係が得られた。ノズル部材21,22の左右寸法tと上下寸法Lを同じにしても(t=L=10mm)、良好な表面処理度が得られることが確認された。
【実施例6】
【0082】
実施例6では、実施例4と同じ装置を用いて、実施例3と同じ内容の表面処理を実施例3と同じ処理条件で行った。その結果、実施例3と同程度の均一度が得られた。ノズル部材21,22の左右寸法tと上下寸法Lを同じにしても(t=L=10mm)、均一性を損なうことなく処理できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、例えば半導体装置の製造工程における基板の親水化、撥水化、洗浄、エッチング、成膜等の表面処理技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 表面処理装置
2 処理ヘッド
3 電源
3e 接地線
4 搬送手段
5 処理ガス源
6 整流部
8a,8b,8c 接地線
9 被処理物
10 プラズマ生成部
11,12 電極
13,14 誘電部材
15,16 ホルダ
17 冷却路
18 プラズマ生成部内流路
19 プラズマ生成空間
20 ノズル部
21,22 ノズル部材
23 端閉塞部材
23a 閉塞部
24 ノズル部
25 吹出孔
26 多孔部材
29 吹出路
31,32 連結部材
31a,32a 被固定部
31b,32b 覆部
31c,32c 連結部
33a,33c,33d,34a,34c,34d ボルト
41,42 介在部材
P 処理位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ガスをプラズマ生成空間及び該プラズマ生成空間の吹出方向の下流に連なる吹出路に順次通して吹出し、前記吹出路より前記吹出方向の下流側の処理位置に配置された被処理物に接触させ、前記被処理物を表面処理するプラズマ処理装置において、
前記吹出方向と直交する処理幅方向にそれぞれ延び、かつ互いに前記吹出方向とも前記処理幅方向とも直交する対向方向に対向する一対の電極と、これら電極を保持するホルダを含み、前記一対の電極どうしの間に前記プラズマ生成空間が形成されるプラズマ生成部と、
前記プラズマ生成部の前記吹出方向の下流側に配置され、かつ前記吹出路を画成する吹出路画成面を有して前記処理幅方向に延び、電気的に接地された金属製の角材から構成されたノズル部と、
前記ノズル部とは別体をなし、前記ノズル部より前記対向方向の外側に配置されて、前記ノズル部を前記プラズマ生成部に連結して支持する連結部材と、
を備え、前記ノズル部の前記吹出方向の寸法ひいては前記吹出路の前記吹出方向の長さが、前記ノズル部の前記吹出路画成面から前記対向方向の外側面までの寸法より大きいか略等しいことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ノズル部が、前記処理幅方向にそれぞれ延びかつ前記対向方向に対向して互いの間に前記吹出路を画成する金属製の角材からなる一対のノズル部材と、前記吹出路の前記処理幅方向の両端部をそれぞれ塞ぐ一対の端閉塞部材とを含み、前記吹出路の前記吹出方向の長さが、前記各ノズル部材の前記対向方向の寸法より大きいか略等しいことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記吹出路の前記吹出方向の長さが、5mm〜20mmであり、前記各ノズル部材の前記対向方向の寸法が、3mm〜10mmであることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記連結部材が、前記プラズマ生成部の前記ノズル部より前記対向方向の外側の部分に固定された被固定部と、前記被固定部と前記ノズル部との間の前記プラズマ生成部における前記吹出方向の下流側を覆う覆部と、前記ノズル部に連結された連結部とを一体に有して、電気的に接地された金属製の板材にて構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記覆部の前記処理位置を向く面と前記ノズル部の前記処理位置を向く面どうしが互いに面一をなしていることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記プラズマ生成部の前記吹出方向の下流側を覆うようにして、前記プラズマ生成部と前記ノズル部との間に介在され、かつ電気的に接地された金属製の板材からなる介在部材を、更に備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記吹出路が、前記ノズル部を前記吹出方向にそれぞれ貫通し、かつ前記処理幅方向に互いに並べられた複数の吹出孔を含むことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記各吹出孔における前記処理位置側の部分が前記プラズマ生成空間側の部分より狭いことを特徴とする請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記一対のノズル部材の間に金属製の多孔部材が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−216318(P2012−216318A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79213(P2011−79213)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】