プラントの制御装置
【課題】 フィードバック制御の制御偏差が小さいときに制御用アクチュエータの消費電力を低減するとともに、目標値が変化したときに良好な追従性能を得ることができるプラントの制御装置を提供する。
【解決手段】 プラントの制御量が目標値に一致するようにフィードバック制御を行う。プラントへの制御入力である出力操作量UFMを保持操作量UHOLDに設定可能であるときは、出力操作量UFMを保持操作量UHOLDに設定するとともに、制御偏差の積算値ERRIを保持操作量UHOLDと比例項UPとの差に積分項ゲインKIの逆数を乗算することにより算出し、積算値ERRIに積分項ゲインKIを乗算して積分項UIを算出する。
【解決手段】 プラントの制御量が目標値に一致するようにフィードバック制御を行う。プラントへの制御入力である出力操作量UFMを保持操作量UHOLDに設定可能であるときは、出力操作量UFMを保持操作量UHOLDに設定するとともに、制御偏差の積算値ERRIを保持操作量UHOLDと比例項UPとの差に積分項ゲインKIの逆数を乗算することにより算出し、積算値ERRIに積分項ゲインKIを乗算して積分項UIを算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの制御装置に関し、特にプラントの制御量を目標値にフィードバック制御するとともに、制御偏差が小さいときに操作量の保持動作を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関の吸気弁のリフト量を連続的に変化させる可変動弁機構の制御装置が示されている。この制御装置によれば、リフト量を変化させる制御軸の実作動角を目標作動角に一致させるフィードバック制御が行われ、実作動角と目標作動角の偏差(以下「制御偏差」という)の絶対値が所定値より大きいときは、通常のフィードバック(PID)制御によりフィードバック操作量が算出され、制御偏差の絶対値が所定値以下であるときは、フィードバック操作量の算出が禁止されるとともに、制御偏差の積分動作が停止される。
【0003】
また特許文献1には、先行技術として制御偏差が「0」となった後も、積分操作量を出力し、アクチュエータに電力を供給する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2005−30241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された装置は、アクチュエータの出力軸から制御軸へのトルク伝達を許容する一方、制御軸からアクチュエータの出力軸へのトルク伝達を禁止するトルク伝達機構を設けることが前提とされているため、このようなトルク伝達機構を採用しない場合には、制御偏差を「0」に維持するためにアクチュエータに電力を供給する必要がある。
【0005】
制御偏差を「0」に維持するためにアクチュエータに電力を供給するときに、制御対象の特性によっては、アクチュエータへの供給電力に許容幅がある場合がある。例えば、制御軸に接触する他の部材との摩擦が大きいために、制御軸が停止した状態から回転させるために必要な電流値に許容幅がある場合には、供給電流はできる限り小さな値とすることが望ましい。しかしそのように保持電流値を小さな値となるようにフィードバック制御装置の出力を変更してしまうと、目標作動角が変化したときに、実作動角が目標作動角に収束するまでの時間が長くなるという課題がある。
【0006】
本発明は上述した点に着目してなされたものであり、フィードバック制御の制御偏差が小さいときに制御用アクチュエータの消費電力を低減するとともに、目標値が変化したときに良好な追従性能を得ることができるプラントの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、プラントの制御量(CSA)を目標値(CSACMD)に一致させるようにフィードバック操作量(UFB)を算出するフィードバック制御手段を有するプラントの制御装置において、前記プラントの作動状態に応じて保持操作量(UHOLD)を算出する保持操作量算出手段と、前記制御量と目標値との制御偏差(ERR)が所定閾値(ERRHX)より大きいときは、前記プラントに入力する制御入力(UFM)を前記フィードバック操作量(UFB)に設定し、前記制御偏差(ERR)が前記所定閾値(ERRHX)以下であるときは前記制御入力(UFM)を前記保持操作量(UHOLD)に設定する制御入力設定手段とを備え、前記フィードバック制御手段は、前記制御入力(UFM)が前記保持操作量(UHOLD)に設定されているときは、前記フィードバック操作量(UFB)を前記保持操作量(UHOLD)に漸近または一致させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプラントの制御装置において、前記フィードバック制御手段は、前記制御偏差(ERR)に応じた比例項(UP)及び積分項(UI)を用いて前記フィードバック操作量(UFB)を算出し、前記制御入力(UFM)が前記保持操作量(UHOLD)に設定されているときは、該フィードバック操作量(UFM)と前記保持操作量(UHOLD)との差である操作量偏差(DUFB)を前記積分項(UI)にフィードバックすることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のプラントの制御装置において、前記フィードバック制御手段は、前記制御偏差(ERR)に応じた比例項(UP)及び積分項(UI)を用いて前記フィードバック操作量(UFB)を算出し、前記制御入力(UFM)が前記保持操作量(UHOLD)に設定されているときは、前記比例項(UP)と前記保持操作量(UHOLD)との差に比例するように前記積分項(UI)を設定することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1項に記載のプラントの制御装置において、前記保持操作量算出手段は、前記プラントの制御量を示すパラメータ(CSA)に応じて前記保持操作量(UHOLD)を算出することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか1項に記載のプラントの制御装置において、前記プラントは内燃機関の吸気弁のリフト量を連続的に変更する弁作動特性可変機構(41)であり、該弁作動特性可変機構(41)は前記リフト量を変更するためのコントロール軸(56)と、該コントロール軸(56)を回動させるためのアクチュエータ(43)とを有し、前記制御入力(UFM)に応じて前記アクチュエータ(43)に供給する電流値(IDM)が算出され、前記制御量は前記コントロール軸の回転角度(CSA)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、プラントの作動状態に応じて保持操作量が算出され、制御量と目標値との制御偏差が所定閾値より大きいときは、プラントに入力する制御入力がフィードバック操作量に設定され、制御偏差が所定閾値以下であるときは制御入力が保持操作量に設定される。制御入力が保持操作量に設定されているときは、フィードバック操作量が保持操作量に漸近または一致するように設定される。保持操作量を例えば制御用アクチュエータへの電力供給量が小さくなるように設定することにより消費電力を低減することができる。さらに、制御入力が保持操作量に設定されているときに、フィードバック操作量を保持操作量に漸近または一致させることにより、目標値が変化したとき、すなわち制御入力が保持操作量からフィードバック操作量に切り換えられたときに、良好な追従性能を得ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、制御偏差に応じた比例項及び積分項を用いてフィードバック操作量が算出され、制御入力が保持操作量に設定されているときは、該フィードバック操作量と保持操作量との差である操作量偏差が積分項にフィードバックされる。これにより、フィードバック操作量を保持操作量に漸近させることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、制御偏差に応じた比例項及び積分項を用いてフィードバック操作量が算出され、制御入力が保持操作量に設定されているときは、比例項と保持操作量との差に比例するように積分項が設定される。これにより、フィードバック操作量を保持操作量に直ちに一致させることが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、プラントの制御量を示すパラメータに応じて保持操作量が算出される。プラントの制御量または目標値に依存して、最適な保持操作量は変化するので、プラントの制御量または目標値に応じて保持操作量を算出することにより、消費電力の低減あるいはプラントの特性ばらつきの観点において最適な保持操作量を得ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、内燃機関の吸気弁のリフト量を連続的に変更する弁作動特性可変機構が制御対象とされる。機関の運転状態が同一であれば、吸気弁のリフト量が同一値に保持されるので、そのような作動状態において、弁作動特性可変機構のコントロール軸を回動させるアクチュエータに供給する電流値を低減することができるとともに、リフト量の目標値が変化したときに、実際のリフト量を迅速に追従させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる内燃機関とその制御装置の構成を示す図であり、図2は弁作動特性可変装置の構成を示す図である。図1において、例えば4気筒を有する内燃機関(以下単に「エンジン」という)1は、吸気弁及び排気弁と、これらを駆動するカムを備えるとともに、吸気弁の弁リフト量及び開角(開弁期間)を連続的に変更する第1弁作動特性可変機構41と、吸気弁を駆動するカムの、クランク軸回転角度を基準とした作動位相を連続的に変更するカム位相可変機構としての第2弁作動特性可変機構42とを有する弁作動特性可変装置40を備えている。第2弁作動特性可変機構42により吸気弁を駆動するカムの作動位相が変更され、吸気弁の作動位相が変更される。
【0018】
エンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。また、スロットル弁3にはスロットル弁開度(TH)センサ4が連結されており、当該スロットル弁3の開度に応じた電気信号を出力して電子コントロールユニット(以下(ECU)という)5に供給する。スロットル弁3には、スロットル弁3を駆動するアクチュエータ7が接続されており、アクチュエータ7は、ECU5によりその作動が制御される。
【0019】
燃料噴射弁6はエンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気管2の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されて当該ECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間が制御される。
【0020】
スロットル弁3の下流には吸気圧PBAを検出する吸気圧センサ8及び吸気温TAを検出する吸気温センサ9が取付けられている。またエンジン1の本体には、エンジン冷却水温TWを検出するエンジン冷却水温センサ10が取り付けられている。これらのセンサの検出信号は、ECU5に供給される。
【0021】
ECU5には、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ11及び、エンジン1の吸気弁を駆動するカムが固定されたカム軸の回転角度を検出するカム角度位置センサ12が接続されており、クランク軸の回転角度及びカム軸の回転角度に応じた信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ11は、一定クランク角周期毎(例えば30度周期)に1パルス(以下「CRKパルス」という)と、クランク軸の所定角度位置を特定するパルスを発生する。また、カム角度位置センサ12は、エンジン1の特定の気筒の所定クランク角度位置でパルス(以下「CYLパルス」という)と、各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)でパルス(以下「TDCパルス」という)を発生する。これらのパルスは、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御及びエンジン回転数(エンジン回転速度)NEの検出に使用される。なお、カム角度位置センサ12より出力されるTDCパルスと、クランク角度位置センサ11より出力されるCRKパルスとの相対関係からカム軸の実際の作動位相CAINが検出される。
【0022】
ECU5には、エンジン1によって駆動される車両のアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセルペダル操作量」という)APを検出するアクセルセンサ31、当該車両の走行速度(車速)VPを検出する車速センサ32、及び大気圧PAを検出する大気圧センサ33が接続されている。これらのセンサの検出信号は、ECU5に供給される。
【0023】
弁作動特性可変装置40は、図2に示すように、吸気弁のリフト量及び開角(以下単に「リフト量」という)を連続的に変更する第1弁作動特性可変機構41と、吸気弁の作動位相を連続的に変更する第2弁作動特性可変機構42と、吸気弁のリフト量LFTを連続的に変更するためのモータ43と、吸気弁の作動位相を連続的に変更するために、その開度が連続的に変更可能な電磁弁44とを備えている。吸気弁の作動位相を示すパラメータとして、上記カム軸の作動位相CAINが用いられる。電磁弁44には、オイルパン46の潤滑油がオイルポンプ45により、加圧されて供給される。なお、第2弁作動特性可変機構42の具体的な構成は、例えば特開2000−227013号公報に示されている。
【0024】
第1弁作動特性可変機構41は、図3(a)に示すように、カム52が設けられたカム軸51と、シリンダヘッドに軸55aを中心として揺動可能に支持されるコントロールアーム55と、コントロールアーム55を揺動させるコントロールカム57が設けられたコントロール軸56と、コントロールアーム55に支軸53bを介して揺動可能に支持されるとともに、カム52に従動して揺動するサブカム53と、サブカム53に従動し、吸気弁60を駆動するロッカアーム54とを備えている。ロッカアーム54は、コントロールアーム55内に揺動可能に支持されている。
【0025】
サブカム53は、カム52に当接するローラ53aを有し、カム軸51の回転により、軸53bを中心として揺動する。ロッカアーム54は、サブカム53に当接するローラ54aを有し、サブカム53の動きが、ローラ54aを介して、ロッカアーム54に伝達される。
【0026】
コントロールアーム55は、コントロールカム57に当接するローラ55bを有し、コントロール軸56の回動により軸55aを中心として揺動する。図3(a)に示す状態では、サブカム53の動きはロッカアーム54にほとんど伝達されないため、吸気弁60はほぼ全閉の状態を維持する。一方同図(b)に示す状態では、サブカム53の動きがロッカアーム54を介して吸気弁60に伝達され、吸気弁60は最大リフト量LFTMAX(例えば12mm)まで開弁する。
【0027】
したがって、モータ43によりコントロール軸56を回動させることにより、吸気弁60のリフト量LFTを連続的に変更することがきる。本実施形態では、第1弁作動特性可変機構41に、コントロール軸56の回転角度(以下「CS角度」という)CSAを検出するコントロール軸回転角度センサ14が設けられており、検出されるCS角度CSAがリフト量LFTを示すパラメータとして使用される。
【0028】
なお、第1弁作動特性可変機構41の詳細な構成は、本出願人による特許出願(特願2006−197254号)の明細書及び図面に示されている。
第1弁作動特性可変機構41により、図4(a)に示すように吸気弁のリフト量LFT(及び開角)が変更される。また第2弁作動特性可変機構42により、吸気弁は、同図(b)に実線L3及びL4で示す特性を中心として、カムの作動位相CAINの変化に伴って破線L1,L2で示す最進角位相から、一点鎖線L5,L6で示す最遅角位相までの間の位相で駆動される。
【0029】
ECU5は各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)、CPUで実行される演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路のほか、アクチュエータ7、燃料噴射弁6、モータ43、電磁弁44に駆動信号を供給する出力回路等から構成される。
【0030】
ECU5のCPUは、上記センサの検出信号に応じて、スロットル弁3の開度制御、エンジン1に供給する燃料量(燃料噴射弁6の開弁時間)の制御、並びにモータ43及び電磁弁44による弁作動特性(吸入空気流量)の制御を行う。
【0031】
吸気弁のリフト量制御(CS角度制御)においては、エンジン運転状態に応じて吸気弁のリフト量指令値LFTCMDが算出され、リフト量指令値LFTCMDに応じてCS角度指令値CSACMDが算出され、検出されるCS角度CSAがCS角度指令値CSACMDと一致するように、モータ43の駆動電流IMDのフィードバック制御が行われる。
【0032】
図5は、CS角度CSAと、モータ43の出力トルクTRQM(駆動電流IMDに比例する)との関係を示す図であり、モータ出力トルクTRQMが、実線L1で示される上限トルクTRQMHと、実線L2で示される下限トルクTRQML(負値)との間にあるときは、その時点のCS角度CSAが維持される。例えば、CS角度CSAが角度CSA1であるとき、モータ出力トルクTRQMが上限トルクTRQMH1以下かつ下限トルクTRQML1以上であるときは、角度CSA1が維持される。換言すれば、モータ出力トルクTRQMが上限トルクTRQMH1を超えると、CS角度CSAが増加する一方、モータ出力トルクTRQMが下限トルクTRQML1を下回ると、CS角度CSAが減少する。
【0033】
したがって、CS角度指令値CSACMDが一定であるときは、モータ出力トルクTRQMはできるだけ小さな値に設定することにより、消費電力を低減することができる。本実施形態では、上限トルクTRQMH及び下限トルクTRQMLが、弁作動特性可変機構41の特性ばらつきによって変化することを考慮し、上限トルクTRQMH及び下限トルクTRQMLのほぼ平均値に相当する保持トルクが得られるようにモータ43に供給する保持電流値IDMHLDが設定されるようにしている。
【0034】
図6は、モータ43に供給する駆動電流IMDを決定する出力操作量UFMを算出する出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。このモジュールを構成するブロックの機能は、ECU5のCPUにおける演算処理により実現される。出力操作量UFMが制御対象への制御入力に相当する。
【0035】
出力操作量算出モジュールは、フィードバック操作量算出部71と、保持操作量算出部72と、保持フラグ設定部73と、切換部74とを備えている。フィードバック操作量算出部71は、検出されるCS角度CSAがCS角度指令値CSACMDに一致するようにフィードバック操作量UFBを算出する。なお、本実施形態では、コントロール軸回転角度センサ14の出力にローパスフィルタ処理またはイプシロンフィルタ処理を施して、ノイズ成分を除去した検出値を、CS角度CSAとして使用する。なおイプシロンフィルタ処理は、特にスパイク状のノイズを効果的に減衰させる公知のフィルタ処理である。
【0036】
保持操作量算出部72は、CS角度CSA、エンジン回転数NE、及びエンジン冷却水温TWに応じて、保持操作量UHOLDを算出する。保持操作量UHOLDは上述した保持電流IDMHLDに対応する操作量である。
【0037】
保持フラグ設定部73は、CS角度指令値CSACMD及びCS角度CSAに応じて、保持フラグFHOLDの設定を行う。切換部74は、保持フラグFHOLDが「0」であるときは、フィードバック操作量UFBを選択し、保持フラグFHOLDが「1」に設定されると、保持操作量UHOLDを選択し、出力操作量UFMとして出力する。
【0038】
図7は、図6のフィードバック操作量算出部71及び切換部74の機能を実現する操作量算出処理のフローチャートである。この処理は、所定時間TCAL(例えば2ミリ秒)毎にECU5のCPUで実行される。
【0039】
ステップS11では、下記式(1)により、制御偏差ERR(k)を算出する。kは、本処理の実行周期TCALで離散化した離散化時刻である。
ERR(k)=CSACMD(k)−CSA(k) (1)
ステップS12では、下記式(2)に制御偏差ERR(k)及び比例項ゲインKPを適用し、比例項UPを算出する。
UP=KP×ERR(k) (2)
【0040】
ステップS13では、保持フラグFHOLDが「1」であるか否かを判別し、FHOLD=0であるときは、下記式(3)により偏差積分値ERRI(k)を算出する。
ERRI(k)=ERR(k)+ERRI(k-1) (3)
【0041】
ステップS13でFHOLD=1であるときは、下記式(4)により、偏差積分値ERRI(k)を設定する(ステップS14)。式(4)のKIは積分項ゲインである。
ERRI(k)=(UHOLD(k)−UP)/KI (4)
【0042】
ステップS16では、下記式(5)により、積分項UIを算出する。
UI=KI×ERRI(k) (5)
【0043】
ステップS17では、算出された比例項UPと積分項UIとを下記式(6)に適用し、フィードバック操作量UFBを算出する。そして出力操作量UFMをフィードバック操作量UFBに設定する(ステップS18)
UFB=UP+UI (6)
ステップS19では、偏差積分値の前回値ERRI(k-1)を今回値ERRI(k)に設定する。
【0044】
式(4)により算出される偏差積分値ERRI(k)を式(5)に適用すると、積分項UIは、下記式(7)で与えられる。したがって、これを式(6)に適用すると、フィードバック操作量UFBは、保持操作量UHOLD(k)に等しくなる。
UI=KI×(UHOLD(k)−UP)/KI
=UHOLD(k)−UP (7)
【0045】
図7の処理によれば、保持フラグFHOLDが「0」であるときは、フィードバック操作量UFBが通常のPI(比例積分)制御により設定され、出力操作量UFMも同様に設定される。一方保持フラグFHOLDが「1」であるときは、フィードバック操作量UFBが保持操作量UHOLD(k)と一致し、出力操作量UFMも保持操作量UHOLD(k)と一致する。
【0046】
図8は、図6の保持フラグ設定部73の機能を実現する保持フラグ設定処理のフローチャートである。この処理は、ECU5のCPUで所定時間TCAL毎に実行される。
【0047】
ステップS20では、図7のステップS11と同様に制御偏差ERR(k)を算出する。ステップS21では、制御偏差ERR(k)が所定閾値ERRHX以下であるか否かを判別する。この答が否定(NO)であるときは、カウンタCHLDを「0」に設定する(ステップS25)とともに、保持フラグFHOLDを「0」に設定する(ステップS28)。
【0048】
ステップS21で、ERR(k)≦ERRHXであるときは、下記式(8)によりCS角度指令値CSACMDの変化量である指令値変化量DCSACMDを算出する(ステップS22)。
DCSACMD=CSACMD(k)−CSACMD(k-1) (8)
【0049】
ステップS23では、指令値変化量DCSACMDが「0」であるか否かを判別する。この答が肯定(YES)であるときは、CS角度CSA(k)が所定保持制御範囲内にあるか否かを判別する(ステップS24)。
【0050】
CS角度指令値CSACMDが変化しているときは、駆動電流IMDを一定値に保持することはできないため、ステップS23の答が否定(NO)であるときは、前記ステップS25に進む。また本実施形態では、コントロール軸56にモータ43以外から加わるトルクのために、駆動電流IMDを一定値に保持しても、CS角度CSAを一定に維持することが困難な角度範囲があるため、そのような角度範囲以外を所定保持制御範囲としている。したがって、CS角度CSA(k)が所定保持制御範囲にないときは、前記ステップS25に進む。
【0051】
ステップS24の答が肯定(YES)、すなわちCS角度指令値CSACMDが一定でかつCS角度CSAが所定保持制御範囲内にあるときは、カウンタCHLDを「1」だけインクリメントし(ステップS26)、カウンタCHLDの値が所定値N0(例えば「5」)以上であるか否かを判別する(ステップS27)。この答が否定(NO)である間は前記ステップS28に進み、肯定(YES)となるとステップS29に進んで、保持フラグFHOLDを「1」に設定する。
【0052】
図9は、図6の保持操作量算出部72の機能を実現する保持操作量算出処理のフローチャートである。この処理は、ECU5のCPUで所定時間TCAL毎に実行される。
【0053】
ステップS31では、CS角度CSA(k)及びエンジン回転数NEに応じてUHOLDMマップを検索し、保持操作量マップ値UHOLDMを算出する。UHOLDMマップは、CS角度CSA(k)が増加するほど、保持操作量マップ値UHOLDMが増加するように設定されている。またエンジン回転数NEによって最適な保持操作量の値が変化するので、保持操作量マップ値UHOLDMはエンジン回転数NEに応じた最適な値となるように、予め実験を行って設定される。
【0054】
ステップS32では、エンジン冷却水温TWに応じてKTWテーブルを検索し、補正係数KTWを算出する。KTWテーブルは、エンジン冷却水温TWが高くなるほど、補正係数KTWが増加するように設定されている。
【0055】
ステップS33では、下記式(9)に保持操作量マップ値UHOLDM及び補正係数KTWを適用し、保持操作量UHOLD(k)を算出する。
UHOLD(k)=KTW×UHOLDM (9)
【0056】
以上詳述したように本実施形態では、制御出力(制御量)であるCS角度CSAに応じて保持操作量UHOLDが算出され、制御偏差ERRが所定閾値ERRHXより大きいときは、制御入力である出力操作量UFMがフィードバック操作量UFBに設定され、制御偏差ERRが所定閾値ERRHX以下であるときは出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定される。出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定されているときは、フィードバック操作量UFBが保持操作量UHOLDに一致するように設定される。本実施形態では、保持操作量UHOLDを、モータ43の駆動電流IMDが保持に必要な上下限電流値の平均的な値となるように設定するようにしたので、モータ43への供給電力を低減することができる。さらに、出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定されているときに、フィードバック操作量UFBを保持操作量UHOLDに一致させることにより、CS角度指令値CSACMDが変化したとき、すなわち出力操作量UFMが保持操作量UHOLDからフィードバック操作量UFBに切り換えられたときに、良好な追従性能を得ることができる。
【0057】
本実施形態では、ECU5がフィードバック制御手段、保持操作量算出手段、及び制御入力設定手段を構成する。具体的には、図6のフィードバック操作量算出部71がフィードバック制御手段に相当し、保持操作量算出部72が保持操作量算出手段に相当し、保持フラグ設定部73及び切換部74が制御入力設定手段に相当する。すなわち、図7のステップS11,S12,S16及びS17がフィードバック制御手段に相当し、図7のステップS13〜S15,S18,及び図8の処理が制御入力設定手段に相当し、図9の処理が保持操作量算出手段に相当する。
【0058】
[第2の実施形態]
図10は、本発明の第2の実施形態にかかる出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。図10に示す構成は、図6に示す構成のフィードバック操作量算出部71を、フィードバック操作量算出部71aに変更し、出力操作量UFMをフィードバック操作量算出部71aにフィードバックするようにしたものである。
【0059】
図11は、図10に示すフィードバック操作量算出部71aの構成を説明するためのブロック図である。フィードバック操作量算出部71aは、乗算部81,84,88と、減算部82,87と、加算部85と、積分部83とを備えている。これは通常のPI制御を実行するフィードバック操作量算出部72を構成する乗算部81,84,積分部83,及び加算部85に、減算部82,87及び乗算部88を追加したものである。
【0060】
減算部87は、フィードバック操作量UFBから出力操作量UFMを減算することにより、操作量偏差DUFBを算出する。乗算部88は、操作量偏差DUFBに比例項ゲインKPの逆数(1/KP)を乗算する。減算部82は、制御偏差ERRから(DFUB/KP)を減算し、修正制御偏差ERRMを算出する。積分部83は、修正制御偏差ERRMを積分し、修正偏差積分値ERRMIを算出する。乗算部84は、修正制御偏差積分値ERRMIに積分項ゲインKIを乗算し、積分項UIを算出する。乗算部81は、制御偏差ERRに比例項ゲインKPを乗算することにより、比例項UPを算出する。加算部85は、比例項UPと積分項UIを加算し、フィードバック操作量UFBを算出する。
【0061】
図11に基づいて、連続時間系の伝達関数を用いてフィードバック操作量UFBを表すと、式(10)及び(11)が得られる。式(10)の「s」はラプラス演算子である。
UFB=KP×ERR+KI×ERRM/s (10)
ERRM=ERR−(UFB−UFM)/KP (11)
【0062】
式(11)に式(10)で示されるフィードバック操作量UFBを適用すると、下記式(12)が得られる。
【数1】
【0063】
式(12)で示される出力操作量UFMから修正制御偏差ERRMへの伝達関数はハイパスフィルタの伝達関数となり、定常ゲインは「0」となる。したがって、出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定されると、制御偏差ERRに拘わらず、修正制御偏差ERRMは「0」に漸近していき、フィードバック操作量UFBが保持操作量UHOLDに漸近する。なお、UFM=UFBであるときは、修正制御偏差ERRMは制御偏差ERRと等しくなり、通常のPI制御動作が行われる。
【0064】
図11に示すように、フィードバック操作量UFBと出力操作量UFMとの偏差である操作量偏差DUFBに応じて制御偏差ERRを修正して修正制御偏差ERRMを算出し、修正制御偏差ERRMを積分部83に入力する構成を採用することにより、出力操作量UFMを保持操作量UHOLDに設定しているときに、フィードバック操作量UFBを保持操作量UHODに漸近させることができる(積分項UIを飽和させないようにすることができる)。その結果、保持フラグFHOLDが「1」から「0」に変化した直後、すなわち通常のフィードバック制御動作に復帰した直後において、CS角度CSAをCS角度指令値CSACMDに迅速に一致させることができる。
【0065】
図12は、図11に示すブロック図の機能を実現する処理のフローチャートである。この処理はECU5のCPUで所定時間TCAL毎に実行される。
ステップS41及びS42は、図7のステップS11及びS12と同一の処理であり、制御偏差ERR(k)及び比例項UPを算出する。
【0066】
ステップS43では、下記式(13)により、操作量偏差DUFB(k)を算出する。
DUFB(k)=UFB(k-1)−UFM(k-1) (13)
【0067】
ステップS44では、下記式(14)により、修正制御偏差ERRM(k)を算出し、ステップS45では、下記式(15)により、修正制御偏差ERRM(k)を積算し、修正偏差積分値ERRMI(k)を算出する。
ERRM(k)=ERR(k)−DUFB(k)/KP (14)
ERRMI(k)=ERRM(k)+ERRMI(k-1) (15)
【0068】
ステップS46では、修正偏差積分値の前回値ERRMI(k-1)を今回値ERRMI(k)に設定する。ステップS47では、修正偏差積分値ERRMI(k)に積分項ゲインKIを乗算することにより、積分項UIを算出する。ステップS48では、比例項UPと積分項UIとを加算してフィードバック操作量UFB(k)を算出する。
【0069】
ステップS49では、保持フラグFHOLDが「1」であるか否かを判別し、FHOLD=0であるときは、出力操作量UFM(k)をフィードバック操作量UFB(k)に設定する(ステップS50)。一方、保持フラグFHOLD=1であるときは、出力操作量UFM(k)を保持操作量UHOLD(k)に設定する(ステップS51)。
【0070】
以上のように本実施形態では、出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定されているときは、フィードバック操作量UFBと保持操作量UHOLDとの差である操作量偏差DUFBが積分項UIにフィードバックされ、フィードバック操作量UFBが保持操作量UHOLDに漸近するように制御される。したがって、CS角度指令値CSACMDが変更され、保持フラグFHOLDが「0」に変更された直後において、制御量であるCS角度CSAをCS角度指令値CSACMDに迅速に収束させることができる。
【0071】
次に図13〜図15を参照して、上述した制御動作の一例を説明する。これらの図には、CS角度指令値CSACMD、CS角度CSA、保持フラグFHOLD、フィードバック操作量UFB、及び出力操作量UFMの推移が示されている。図13(a)では破線がCS角度指令値CSACMDを示し、実線がCS角度CSAを示す。図14(a)及び図15(a)においても同様である。
【0072】
図13はCS角度指令値CSACMDが一定の状態(時刻t1より前)において、出力操作量UFMの保持動作を行わない例を示す。出力操作量UFMに対応してモータ駆動電流IDMが20A程度となり、消費電力が大きい。
【0073】
図14は、時刻t0において保持フラグFHOLDが「1」に設定され、保持動作に入った例を示している。ただし、この例では、フィードバック操作量算出部が、保持動作中(FHOLD=1)も通常のPI制御を継続してフィードバック操作量UFBを算出している。一方出力操作量UFMは保持操作量UHOLDに設定され(図14(d))、例えばモータ駆動電流IDMを5A程度に抑制することができる。しかしながら、フィードバック操作量UFBは積分項UIが飽和した状態となるため、出力操作量UFM(=保持操作量UHOLD)とは異なる値をとる(図14(c))。その結果、保持フラグFHOLDが「1」から「0」に切り換えられる時刻t1の直後において、制御遅れが発生している(図14(a)のA部参照)。
【0074】
図15は本実施形態の制御が適用された例を示している。保持動作に移行した時刻t0以後、フィードバック操作量UFBは出力操作量UFM(=保持操作量UHOLD)に漸近していき、時刻t1より前に出力操作量UFMと一致する。その結果、時刻t1の直後において図14に示すように制御遅れが発生せず、良好な追従特性を得ることができる。
【0075】
本実施形態では、フィードバック操作量算出部71aがフィードバック制御手段に相当する。
【0076】
[第3の実施形態]
図16は、本発明の第3の実施形態にかかる出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。図16に示す構成は、図6に示す構成のフィードバック操作量算出部71を、フィードバック操作量算出部71bに変更したものである。
【0077】
フィードバック操作量算出部71bは、図17に示すように、スライディングモード制御器101と、微分部102と、減算部103と、周波数整形制御器104とから構成される。
【0078】
微分部102は、CS角度CSAを微分し、CS角度CSAの変化速度(以下「CS角速度」という)dCSAを算出する。スライディングモード制御器101は、スライディングモード制御により、CS角度CSAがCS角度指令値CSACMDに一致するように、CS角速度dCSAの目標値であるCS角速度指令値dCSACMDを算出する。減算部103は、CS角速度指令値dCSACMDからCS角速度dCSAを減算し、角速度偏差DdCSAを算出する。
【0079】
周波数整形制御器104は、PI制御(比例積分制御)により、角速度偏差DdCSAが「0」となるように、フィードバック操作量UFBを算出する。
なお、実際にはフィードバック操作量UFBは切換部74を介して制御対象であるモータ43及び第1弁作動特性可変機構41に出力されるが、図17では、説明のためにフィードバック操作量UFBが直接、制御対象100に入力される構成が示されている。
【0080】
本実施形態では、微分部102、減算部103、周波数整形制御器104、及び制御対象100からなるブロックを拡大制御対象110とし、拡大制御対象110の伝達関数FX(s)が所望の目標伝達関数F(s)となるように、周波数整形制御器104の伝達関数である周波数整形伝達関数H(s)を設定する。
【0081】
拡大制御対象110の伝達関数FX(s)は、下記式(21)で与えられる。G(s)は制御対象100の伝達関数であり、sは微分部102の伝達関数である。
【数2】
【0082】
ここで伝達関数FX(s)を目標伝達関数F(s)とする周波数整形伝達関数H(s)は、式(21)のFX(s)をF(s)としてH(s)について解くことにより、得られる(下記式(22))。
【数3】
【0083】
次に目標伝達関数F(s)をどのように設定するかを説明する。第1弁作動特性可変機構41の伝達関数である(より正確には第1弁作動特性可変機構41をモデル化した制御対象モデルの伝達関数である)対象伝達関数G(s)は、下記式(23)で表すことができる。ここで、J及びBは、モータ43及び第1弁作動特性可変機構41の特性、例えばモータトルク定数、ギヤ減速比、モータ43の慣性モーメント、コントロール軸56の慣性モーメントなどによって決定される定数である。
【数4】
【0084】
そこで、制御対象の動特性変化や外乱が大きいといった誤差要因がある場合においても同様の伝達関数で表される拡大制御対象110を得るため、目標伝達関数F(s)を下記式(24)で与えると、周波数整形伝達関数H(s)は下記式(25)で与えられる。
【数5】
【0085】
この伝達関数H(s)は、PI(比例積分)制御に相当するものであり、上述した第1の実施形態におけるフィードバック操作量算出部71と同様の演算により、フィードバック操作量UFBを算出することができる。すなわち、本実施形態の角速度偏差DdCSAが、第1の実施形態における制御偏差ERRに相当し、図7においてステップS11を削除し、ステップS12及びS15の制御偏差ERRを角速度偏差DdCSAに置換することにより、フィードバック操作量UFBを算出することができる。
【0086】
次にスライディングモード制御器101におけるCS角速度指令値dCSACMDの算出手法を説明する。CS角速度指令値dCSACMDは、下記式(31)で示されるように、等価制御入力UEQと到達則制御入力URCHの和として算出される。
dCSACMD(k)=UEQ(k)+URCH(k) (31)
【0087】
また拡大制御対象110の伝達関数はF(s)であり、これを離散時間系の伝達関数に変換し、制御出力であるCS角度CSA(k)を、制御入力であるCS角速度指令値dCSACMD及びCS角度CSAの過去値で表すと、制御対象モデルを定義する下記式(32)が得られる。
CSA(k)=a11・CSA(k-1)+a12・CSA(k-2)
+b11・dCSACMD(k-1)
+b12・dCSACMD(k-2) (32)
ここで、a11,a12,b11,及びb12は、伝達関数F(s)に含まれる定数τ及び制御周期TCALを用いて周知の手法により算出されるモデルパラメータである。
【0088】
また切換関数値σ(k)は式(33)により算出される制御偏差DCSAを用いると、下記式(34)で定義される。
DCSA(k)=CSACMD(k)−CSA(k) (33)
σ(k)=DCSA(k)+VPOLE・DCSA(k-1) (34)
ここで、VPOLEは制御偏差DCSAの減衰特性を決める切換関数設定パラメータであり、−1より大きく0より小さい値に設定される。
【0089】
等価制御入力UEQは、下記式(35)を満たす操作量である。
σ(k)=σ(k+1) (35)
式(35)の条件に式(32)、(33)及び(34)を適用することにより、等価制御入力UEQは下記式(36)により算出される。
UEQ(k)=(1/b11){(1−a11−VPOLE)CSA(k)
+(VPOLE−a12)CSA(k-1)−b12・dCSACMD(k-1)
+CSACMD(k+1)+(VPOLE−1)CSACMD(k)
−VPOLE・CSACMD(k-1)} (36)
【0090】
また到達則制御入力URCHは、下記式(37)により算出される。
URCH(k)=(−F/b11)σ(k) (37)
ここでFは、到達則制御ゲインである。
【0091】
以上のように制御系を構成することにより、制御対象100の動特性変化や外乱が大きいといった誤差要因がある場合においても、減算部103及び周波数整形制御器104によるフィードバック制御により、誤差要因、すなわち動特性変化、外乱、あるいは非線形要素の影響を除去し、スライディングモード制御器101により安定した制御を行うことができる。さらに、周波数整形制御器104における演算を、第1の実施形態におけるフィードバック操作量算出部71と同様に行うことにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
すなわち、保持操作量UHOLDを、モータ43の駆動電流IMDが保持に必要な上下限電流値の平均的な値となるように設定することにより、モータ43への供給電力を低減することができる。さらに、出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定されているときに、フィードバック操作量UFBを保持操作量UHOLDに一致させることにより、CS角度指令値CSACMDが変化したとき、すなわち出力操作量UFMが保持操作量UHOLDからフィードバック操作量UFBに切り換えられたときに、良好な追従性能を得ることができる。
【0093】
本実施形態では、フィードバック操作量算出部71bがフィードバック制御手段に相当する。すなわち、スライディングモード制御器101、減算部103、周波数整形制御器104、及び微分部102が、フィードバック制御手段に相当する。
【0094】
(変形例)
なお、図18に示すように、周波数整形制御器104を周波数整形制御器104aに変更し、周波数整形制御器104aを図19に示すようにフィードバック操作量算出部71aと同様に構成するようにしてもよい。すなわち、制御偏差ERRを、角速度偏差DdCSAに置き換えて、乗算部81及び減算部82に入力することにより、保持動作中におけるフィードバック操作量UFBを、保持操作量UHOLDに漸近させることができる。
【0095】
[第4の実施形態]
図20は、本発明の第4の実施形態にかかるスロットル弁駆動装置及びその制御装置の構成を示す図である。
【0096】
エンジン101の吸気通路102には、スロットル弁103が設けられている。スロットル弁103には、該スロットル弁103を閉弁方向に付勢するリターンスプリング104と、該スロットル弁103を開弁方向に付勢する弾性部材105とが取り付けられている。またスロットル弁103は、モータ106によりギヤ(図示せず)を介して駆動できるように構成されている。スロットル弁103、リターンスプリング104、弾性部材105、モータ106、及び図示しないギヤによって、制御対象であるスロットル弁駆動装置110が構成される。
【0097】
モータ106は、ECU107に接続されており、その作動がECU107により制御される。スロットル弁103には、スロットル弁開度THを検出するスロットル弁開度センサ108が設けられており、その検出信号は、ECU107に供給される。
【0098】
またECU107には、エンジン101が搭載された車両の運転者の要求出力を示す、アクセルペダルの踏み込み量ACCを検出するアクセルセンサ109が接続されており、その検出信号がECU107に供給される。
【0099】
ECU107は、第1の実施形態におけるECU5と同様に、入力回路、CPU、メモリ回路、出力回路などにより構成される。ECU107は、アクセルペダルの踏み込み量ACCに応じてスロットル弁103の目標開度THRを算出し、検出したスロットル弁開度THが目標開度THRと一致するようにモータ106の操作量UFMを算出し、操作量UFMに応じた電気信号、具体的には操作量UFMに比例するデューティ比のパルス幅変調(PWM)信号をモータ106に供給する。
【0100】
スロットル弁103の開度THと、モータ106の出力トルクTRQMとは、図21に示すような関係を有する。すなわち、スロットル弁開度THが開度TH1であるとき、出力トルクTRQMが実線L11で示される上限トルクTRQMHを超えると、スロットル弁開度THが増加し、実線L12で示される下限トルクTRQMLを下回ると、スロットル弁開度THが減少し、上限トルクTRQMHと下限トルクTRQMLの間にあるときは、開度TH1が維持される。したがって、第1の実施形態と同様に、目標開度THRが一定であるときは、保持操作量UHOLDを適切に設定し、PWM信号のデューティ比を小さくして消費電力を低減することができる。
【0101】
図22は、本実施形態における出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。このモジュールは、第1の実施形態と同様に構成され、フィードバック操作量算出部121と、保持操作量算出部122と、保持フラグ設定部123と、切換部124とを備えている。
【0102】
フィードバック操作量算出部121は、検出されるスロットル弁開度THが目標開度THRに一致するように、比例積分(PI)制御により、フィードバック操作量UFBを算出する。具体的には、図7または図12に示す処理において、CS角度指令値CSACMD及びCS角度CSAを、それぞれ目標開度THR及びスロットル弁開度THに置換することにより得られる演算処理により、フィードバック操作量UFBが算出される。
【0103】
保持操作量算出部122は、スロットル弁開度THに応じて、保持操作量UHOLDを算出する。保持操作量UHOLDは、例えば第1の実施形態と同様に、上限トルクTRQMHと下限トルクTRQMLの平均値に対応する値に設定される。したがって、保持操作量UHOLDは、スロットル弁開度THが増加するほど増加するように設定される。
【0104】
保持フラグ設定部123は、目標開度THR及びスロットル弁開度THに応じて、図8に示す処理と同様に処理により、保持フラグFHOLDの設定を行う。切換部124は、保持フラグFHOLDが「0」であるときは、フィードバック操作量UFBを選択し、保持フラグFHOLDが「1」に設定されると、保持操作量UHOLDを選択し、出力操作量UFMとして出力する。
【0105】
以上のように出力操作量算出モジュールを構成することにより、第1の実施形態あるいは第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0106】
本実施形態では、フィードバック操作量算出部121がフィードバック制御手段に相当し、保持操作量算出部122が保持操作量算出手段に相当し、保持フラグ設定部123及び切換部124が制御入力設定手段に相当する。
【0107】
[他の実施形態]
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の制御、特に摩擦の大きい制御対象の位置決め制御に適用可能である。例えば、ボールねじを使用した位置決め装置(例えば加工用機械などで使用される)、電磁クラッチ式可変バルブタイミング装置、自動変速機のシフトフォーク位置決め装置などに適用可能である。
【0108】
また上述した第1〜第3の実施形態では、保持動作中に適用される保持操作量UHOLDを、モータ43の駆動電流IMDが保持に必要な上下限電流値の平均的な値となるように設定したが、下限電流値より大きく平均的な値より小さな値に設定するようにしてもよい。そのような設定により、さらにモータ43の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す弁作動特性可変装置の構成を示す図である。
【図3】図2に示す第1弁作動特性可変機構の概略構成を説明するための図である。
【図4】吸気弁の弁作動特性を示す図である。
【図5】第1弁作動特性可変機構のコントロール軸の回転角度(CSA)と、モータ出力トルク(TRQM)との関係を示す図である。
【図6】モータ駆動電流を決定する出力操作量(UFM)を算出するモジュールの構成を示すブロック図である。
【図7】図6のフィードバック操作量算出部における演算処理のフローチャートである。
【図8】図6の保持フラグ設定部における演算処理のフローチャートである。
【図9】図6の保持操作量算出部における演算処理のフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかる出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。
【図11】図10のフィードバック操作量算出部の構成を示すブロック図である。
【図12】図10のフィードバック操作量算出部における演算処理のフローチャートである。
【図13】制御動作例を説明するためのタイムチャートである。
【図14】制御動作例を説明するためのタイムチャートである。
【図15】制御動作例を説明するためのタイムチャートである。
【図16】本発明の第3の実施形態にかかる出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。
【図17】図16に示すフィードバック操作量算出部の構成を示すブロック図である。
【図18】図16に示す構成の変形例を示すブロック図である。
【図19】図18に示すフィードバック操作量算出部の構成を示すブロック図である。
【図20】本発明の第4の実施形態にかかる制御系の構成を示す図である。
【図21】スロットル弁開度(TH)とスロットル弁を駆動するモータの出力トルク(TRQM)との関係を示す図である。
【図22】第4の実施形態にかかる出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0110】
1 内燃機関
41 第1弁作動特性可変機構(プラント)
43 モータ(プラント)
71,71a,71b フィードバック操作量算出部(フィードバック制御手段)
72 保持操作量算出部(保持操作量算出手段)
73 保持フラグ設定部(制御入力設定手段)
74 切換部(制御入力設定手段)
100 制御対象(プラント)
110 スロットル弁駆動装置(プラント)
121 フィードバック操作量算出部(フィードバック制御手段)
122 保持操作量算出部(保持操作量算出手段)
123 保持フラグ設定部(制御入力設定手段)
124 切換部(制御入力設定手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの制御装置に関し、特にプラントの制御量を目標値にフィードバック制御するとともに、制御偏差が小さいときに操作量の保持動作を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関の吸気弁のリフト量を連続的に変化させる可変動弁機構の制御装置が示されている。この制御装置によれば、リフト量を変化させる制御軸の実作動角を目標作動角に一致させるフィードバック制御が行われ、実作動角と目標作動角の偏差(以下「制御偏差」という)の絶対値が所定値より大きいときは、通常のフィードバック(PID)制御によりフィードバック操作量が算出され、制御偏差の絶対値が所定値以下であるときは、フィードバック操作量の算出が禁止されるとともに、制御偏差の積分動作が停止される。
【0003】
また特許文献1には、先行技術として制御偏差が「0」となった後も、積分操作量を出力し、アクチュエータに電力を供給する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2005−30241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された装置は、アクチュエータの出力軸から制御軸へのトルク伝達を許容する一方、制御軸からアクチュエータの出力軸へのトルク伝達を禁止するトルク伝達機構を設けることが前提とされているため、このようなトルク伝達機構を採用しない場合には、制御偏差を「0」に維持するためにアクチュエータに電力を供給する必要がある。
【0005】
制御偏差を「0」に維持するためにアクチュエータに電力を供給するときに、制御対象の特性によっては、アクチュエータへの供給電力に許容幅がある場合がある。例えば、制御軸に接触する他の部材との摩擦が大きいために、制御軸が停止した状態から回転させるために必要な電流値に許容幅がある場合には、供給電流はできる限り小さな値とすることが望ましい。しかしそのように保持電流値を小さな値となるようにフィードバック制御装置の出力を変更してしまうと、目標作動角が変化したときに、実作動角が目標作動角に収束するまでの時間が長くなるという課題がある。
【0006】
本発明は上述した点に着目してなされたものであり、フィードバック制御の制御偏差が小さいときに制御用アクチュエータの消費電力を低減するとともに、目標値が変化したときに良好な追従性能を得ることができるプラントの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、プラントの制御量(CSA)を目標値(CSACMD)に一致させるようにフィードバック操作量(UFB)を算出するフィードバック制御手段を有するプラントの制御装置において、前記プラントの作動状態に応じて保持操作量(UHOLD)を算出する保持操作量算出手段と、前記制御量と目標値との制御偏差(ERR)が所定閾値(ERRHX)より大きいときは、前記プラントに入力する制御入力(UFM)を前記フィードバック操作量(UFB)に設定し、前記制御偏差(ERR)が前記所定閾値(ERRHX)以下であるときは前記制御入力(UFM)を前記保持操作量(UHOLD)に設定する制御入力設定手段とを備え、前記フィードバック制御手段は、前記制御入力(UFM)が前記保持操作量(UHOLD)に設定されているときは、前記フィードバック操作量(UFB)を前記保持操作量(UHOLD)に漸近または一致させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプラントの制御装置において、前記フィードバック制御手段は、前記制御偏差(ERR)に応じた比例項(UP)及び積分項(UI)を用いて前記フィードバック操作量(UFB)を算出し、前記制御入力(UFM)が前記保持操作量(UHOLD)に設定されているときは、該フィードバック操作量(UFM)と前記保持操作量(UHOLD)との差である操作量偏差(DUFB)を前記積分項(UI)にフィードバックすることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のプラントの制御装置において、前記フィードバック制御手段は、前記制御偏差(ERR)に応じた比例項(UP)及び積分項(UI)を用いて前記フィードバック操作量(UFB)を算出し、前記制御入力(UFM)が前記保持操作量(UHOLD)に設定されているときは、前記比例項(UP)と前記保持操作量(UHOLD)との差に比例するように前記積分項(UI)を設定することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1項に記載のプラントの制御装置において、前記保持操作量算出手段は、前記プラントの制御量を示すパラメータ(CSA)に応じて前記保持操作量(UHOLD)を算出することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか1項に記載のプラントの制御装置において、前記プラントは内燃機関の吸気弁のリフト量を連続的に変更する弁作動特性可変機構(41)であり、該弁作動特性可変機構(41)は前記リフト量を変更するためのコントロール軸(56)と、該コントロール軸(56)を回動させるためのアクチュエータ(43)とを有し、前記制御入力(UFM)に応じて前記アクチュエータ(43)に供給する電流値(IDM)が算出され、前記制御量は前記コントロール軸の回転角度(CSA)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、プラントの作動状態に応じて保持操作量が算出され、制御量と目標値との制御偏差が所定閾値より大きいときは、プラントに入力する制御入力がフィードバック操作量に設定され、制御偏差が所定閾値以下であるときは制御入力が保持操作量に設定される。制御入力が保持操作量に設定されているときは、フィードバック操作量が保持操作量に漸近または一致するように設定される。保持操作量を例えば制御用アクチュエータへの電力供給量が小さくなるように設定することにより消費電力を低減することができる。さらに、制御入力が保持操作量に設定されているときに、フィードバック操作量を保持操作量に漸近または一致させることにより、目標値が変化したとき、すなわち制御入力が保持操作量からフィードバック操作量に切り換えられたときに、良好な追従性能を得ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、制御偏差に応じた比例項及び積分項を用いてフィードバック操作量が算出され、制御入力が保持操作量に設定されているときは、該フィードバック操作量と保持操作量との差である操作量偏差が積分項にフィードバックされる。これにより、フィードバック操作量を保持操作量に漸近させることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、制御偏差に応じた比例項及び積分項を用いてフィードバック操作量が算出され、制御入力が保持操作量に設定されているときは、比例項と保持操作量との差に比例するように積分項が設定される。これにより、フィードバック操作量を保持操作量に直ちに一致させることが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、プラントの制御量を示すパラメータに応じて保持操作量が算出される。プラントの制御量または目標値に依存して、最適な保持操作量は変化するので、プラントの制御量または目標値に応じて保持操作量を算出することにより、消費電力の低減あるいはプラントの特性ばらつきの観点において最適な保持操作量を得ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、内燃機関の吸気弁のリフト量を連続的に変更する弁作動特性可変機構が制御対象とされる。機関の運転状態が同一であれば、吸気弁のリフト量が同一値に保持されるので、そのような作動状態において、弁作動特性可変機構のコントロール軸を回動させるアクチュエータに供給する電流値を低減することができるとともに、リフト量の目標値が変化したときに、実際のリフト量を迅速に追従させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる内燃機関とその制御装置の構成を示す図であり、図2は弁作動特性可変装置の構成を示す図である。図1において、例えば4気筒を有する内燃機関(以下単に「エンジン」という)1は、吸気弁及び排気弁と、これらを駆動するカムを備えるとともに、吸気弁の弁リフト量及び開角(開弁期間)を連続的に変更する第1弁作動特性可変機構41と、吸気弁を駆動するカムの、クランク軸回転角度を基準とした作動位相を連続的に変更するカム位相可変機構としての第2弁作動特性可変機構42とを有する弁作動特性可変装置40を備えている。第2弁作動特性可変機構42により吸気弁を駆動するカムの作動位相が変更され、吸気弁の作動位相が変更される。
【0018】
エンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。また、スロットル弁3にはスロットル弁開度(TH)センサ4が連結されており、当該スロットル弁3の開度に応じた電気信号を出力して電子コントロールユニット(以下(ECU)という)5に供給する。スロットル弁3には、スロットル弁3を駆動するアクチュエータ7が接続されており、アクチュエータ7は、ECU5によりその作動が制御される。
【0019】
燃料噴射弁6はエンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気管2の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されて当該ECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間が制御される。
【0020】
スロットル弁3の下流には吸気圧PBAを検出する吸気圧センサ8及び吸気温TAを検出する吸気温センサ9が取付けられている。またエンジン1の本体には、エンジン冷却水温TWを検出するエンジン冷却水温センサ10が取り付けられている。これらのセンサの検出信号は、ECU5に供給される。
【0021】
ECU5には、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ11及び、エンジン1の吸気弁を駆動するカムが固定されたカム軸の回転角度を検出するカム角度位置センサ12が接続されており、クランク軸の回転角度及びカム軸の回転角度に応じた信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ11は、一定クランク角周期毎(例えば30度周期)に1パルス(以下「CRKパルス」という)と、クランク軸の所定角度位置を特定するパルスを発生する。また、カム角度位置センサ12は、エンジン1の特定の気筒の所定クランク角度位置でパルス(以下「CYLパルス」という)と、各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)でパルス(以下「TDCパルス」という)を発生する。これらのパルスは、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御及びエンジン回転数(エンジン回転速度)NEの検出に使用される。なお、カム角度位置センサ12より出力されるTDCパルスと、クランク角度位置センサ11より出力されるCRKパルスとの相対関係からカム軸の実際の作動位相CAINが検出される。
【0022】
ECU5には、エンジン1によって駆動される車両のアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセルペダル操作量」という)APを検出するアクセルセンサ31、当該車両の走行速度(車速)VPを検出する車速センサ32、及び大気圧PAを検出する大気圧センサ33が接続されている。これらのセンサの検出信号は、ECU5に供給される。
【0023】
弁作動特性可変装置40は、図2に示すように、吸気弁のリフト量及び開角(以下単に「リフト量」という)を連続的に変更する第1弁作動特性可変機構41と、吸気弁の作動位相を連続的に変更する第2弁作動特性可変機構42と、吸気弁のリフト量LFTを連続的に変更するためのモータ43と、吸気弁の作動位相を連続的に変更するために、その開度が連続的に変更可能な電磁弁44とを備えている。吸気弁の作動位相を示すパラメータとして、上記カム軸の作動位相CAINが用いられる。電磁弁44には、オイルパン46の潤滑油がオイルポンプ45により、加圧されて供給される。なお、第2弁作動特性可変機構42の具体的な構成は、例えば特開2000−227013号公報に示されている。
【0024】
第1弁作動特性可変機構41は、図3(a)に示すように、カム52が設けられたカム軸51と、シリンダヘッドに軸55aを中心として揺動可能に支持されるコントロールアーム55と、コントロールアーム55を揺動させるコントロールカム57が設けられたコントロール軸56と、コントロールアーム55に支軸53bを介して揺動可能に支持されるとともに、カム52に従動して揺動するサブカム53と、サブカム53に従動し、吸気弁60を駆動するロッカアーム54とを備えている。ロッカアーム54は、コントロールアーム55内に揺動可能に支持されている。
【0025】
サブカム53は、カム52に当接するローラ53aを有し、カム軸51の回転により、軸53bを中心として揺動する。ロッカアーム54は、サブカム53に当接するローラ54aを有し、サブカム53の動きが、ローラ54aを介して、ロッカアーム54に伝達される。
【0026】
コントロールアーム55は、コントロールカム57に当接するローラ55bを有し、コントロール軸56の回動により軸55aを中心として揺動する。図3(a)に示す状態では、サブカム53の動きはロッカアーム54にほとんど伝達されないため、吸気弁60はほぼ全閉の状態を維持する。一方同図(b)に示す状態では、サブカム53の動きがロッカアーム54を介して吸気弁60に伝達され、吸気弁60は最大リフト量LFTMAX(例えば12mm)まで開弁する。
【0027】
したがって、モータ43によりコントロール軸56を回動させることにより、吸気弁60のリフト量LFTを連続的に変更することがきる。本実施形態では、第1弁作動特性可変機構41に、コントロール軸56の回転角度(以下「CS角度」という)CSAを検出するコントロール軸回転角度センサ14が設けられており、検出されるCS角度CSAがリフト量LFTを示すパラメータとして使用される。
【0028】
なお、第1弁作動特性可変機構41の詳細な構成は、本出願人による特許出願(特願2006−197254号)の明細書及び図面に示されている。
第1弁作動特性可変機構41により、図4(a)に示すように吸気弁のリフト量LFT(及び開角)が変更される。また第2弁作動特性可変機構42により、吸気弁は、同図(b)に実線L3及びL4で示す特性を中心として、カムの作動位相CAINの変化に伴って破線L1,L2で示す最進角位相から、一点鎖線L5,L6で示す最遅角位相までの間の位相で駆動される。
【0029】
ECU5は各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)、CPUで実行される演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路のほか、アクチュエータ7、燃料噴射弁6、モータ43、電磁弁44に駆動信号を供給する出力回路等から構成される。
【0030】
ECU5のCPUは、上記センサの検出信号に応じて、スロットル弁3の開度制御、エンジン1に供給する燃料量(燃料噴射弁6の開弁時間)の制御、並びにモータ43及び電磁弁44による弁作動特性(吸入空気流量)の制御を行う。
【0031】
吸気弁のリフト量制御(CS角度制御)においては、エンジン運転状態に応じて吸気弁のリフト量指令値LFTCMDが算出され、リフト量指令値LFTCMDに応じてCS角度指令値CSACMDが算出され、検出されるCS角度CSAがCS角度指令値CSACMDと一致するように、モータ43の駆動電流IMDのフィードバック制御が行われる。
【0032】
図5は、CS角度CSAと、モータ43の出力トルクTRQM(駆動電流IMDに比例する)との関係を示す図であり、モータ出力トルクTRQMが、実線L1で示される上限トルクTRQMHと、実線L2で示される下限トルクTRQML(負値)との間にあるときは、その時点のCS角度CSAが維持される。例えば、CS角度CSAが角度CSA1であるとき、モータ出力トルクTRQMが上限トルクTRQMH1以下かつ下限トルクTRQML1以上であるときは、角度CSA1が維持される。換言すれば、モータ出力トルクTRQMが上限トルクTRQMH1を超えると、CS角度CSAが増加する一方、モータ出力トルクTRQMが下限トルクTRQML1を下回ると、CS角度CSAが減少する。
【0033】
したがって、CS角度指令値CSACMDが一定であるときは、モータ出力トルクTRQMはできるだけ小さな値に設定することにより、消費電力を低減することができる。本実施形態では、上限トルクTRQMH及び下限トルクTRQMLが、弁作動特性可変機構41の特性ばらつきによって変化することを考慮し、上限トルクTRQMH及び下限トルクTRQMLのほぼ平均値に相当する保持トルクが得られるようにモータ43に供給する保持電流値IDMHLDが設定されるようにしている。
【0034】
図6は、モータ43に供給する駆動電流IMDを決定する出力操作量UFMを算出する出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。このモジュールを構成するブロックの機能は、ECU5のCPUにおける演算処理により実現される。出力操作量UFMが制御対象への制御入力に相当する。
【0035】
出力操作量算出モジュールは、フィードバック操作量算出部71と、保持操作量算出部72と、保持フラグ設定部73と、切換部74とを備えている。フィードバック操作量算出部71は、検出されるCS角度CSAがCS角度指令値CSACMDに一致するようにフィードバック操作量UFBを算出する。なお、本実施形態では、コントロール軸回転角度センサ14の出力にローパスフィルタ処理またはイプシロンフィルタ処理を施して、ノイズ成分を除去した検出値を、CS角度CSAとして使用する。なおイプシロンフィルタ処理は、特にスパイク状のノイズを効果的に減衰させる公知のフィルタ処理である。
【0036】
保持操作量算出部72は、CS角度CSA、エンジン回転数NE、及びエンジン冷却水温TWに応じて、保持操作量UHOLDを算出する。保持操作量UHOLDは上述した保持電流IDMHLDに対応する操作量である。
【0037】
保持フラグ設定部73は、CS角度指令値CSACMD及びCS角度CSAに応じて、保持フラグFHOLDの設定を行う。切換部74は、保持フラグFHOLDが「0」であるときは、フィードバック操作量UFBを選択し、保持フラグFHOLDが「1」に設定されると、保持操作量UHOLDを選択し、出力操作量UFMとして出力する。
【0038】
図7は、図6のフィードバック操作量算出部71及び切換部74の機能を実現する操作量算出処理のフローチャートである。この処理は、所定時間TCAL(例えば2ミリ秒)毎にECU5のCPUで実行される。
【0039】
ステップS11では、下記式(1)により、制御偏差ERR(k)を算出する。kは、本処理の実行周期TCALで離散化した離散化時刻である。
ERR(k)=CSACMD(k)−CSA(k) (1)
ステップS12では、下記式(2)に制御偏差ERR(k)及び比例項ゲインKPを適用し、比例項UPを算出する。
UP=KP×ERR(k) (2)
【0040】
ステップS13では、保持フラグFHOLDが「1」であるか否かを判別し、FHOLD=0であるときは、下記式(3)により偏差積分値ERRI(k)を算出する。
ERRI(k)=ERR(k)+ERRI(k-1) (3)
【0041】
ステップS13でFHOLD=1であるときは、下記式(4)により、偏差積分値ERRI(k)を設定する(ステップS14)。式(4)のKIは積分項ゲインである。
ERRI(k)=(UHOLD(k)−UP)/KI (4)
【0042】
ステップS16では、下記式(5)により、積分項UIを算出する。
UI=KI×ERRI(k) (5)
【0043】
ステップS17では、算出された比例項UPと積分項UIとを下記式(6)に適用し、フィードバック操作量UFBを算出する。そして出力操作量UFMをフィードバック操作量UFBに設定する(ステップS18)
UFB=UP+UI (6)
ステップS19では、偏差積分値の前回値ERRI(k-1)を今回値ERRI(k)に設定する。
【0044】
式(4)により算出される偏差積分値ERRI(k)を式(5)に適用すると、積分項UIは、下記式(7)で与えられる。したがって、これを式(6)に適用すると、フィードバック操作量UFBは、保持操作量UHOLD(k)に等しくなる。
UI=KI×(UHOLD(k)−UP)/KI
=UHOLD(k)−UP (7)
【0045】
図7の処理によれば、保持フラグFHOLDが「0」であるときは、フィードバック操作量UFBが通常のPI(比例積分)制御により設定され、出力操作量UFMも同様に設定される。一方保持フラグFHOLDが「1」であるときは、フィードバック操作量UFBが保持操作量UHOLD(k)と一致し、出力操作量UFMも保持操作量UHOLD(k)と一致する。
【0046】
図8は、図6の保持フラグ設定部73の機能を実現する保持フラグ設定処理のフローチャートである。この処理は、ECU5のCPUで所定時間TCAL毎に実行される。
【0047】
ステップS20では、図7のステップS11と同様に制御偏差ERR(k)を算出する。ステップS21では、制御偏差ERR(k)が所定閾値ERRHX以下であるか否かを判別する。この答が否定(NO)であるときは、カウンタCHLDを「0」に設定する(ステップS25)とともに、保持フラグFHOLDを「0」に設定する(ステップS28)。
【0048】
ステップS21で、ERR(k)≦ERRHXであるときは、下記式(8)によりCS角度指令値CSACMDの変化量である指令値変化量DCSACMDを算出する(ステップS22)。
DCSACMD=CSACMD(k)−CSACMD(k-1) (8)
【0049】
ステップS23では、指令値変化量DCSACMDが「0」であるか否かを判別する。この答が肯定(YES)であるときは、CS角度CSA(k)が所定保持制御範囲内にあるか否かを判別する(ステップS24)。
【0050】
CS角度指令値CSACMDが変化しているときは、駆動電流IMDを一定値に保持することはできないため、ステップS23の答が否定(NO)であるときは、前記ステップS25に進む。また本実施形態では、コントロール軸56にモータ43以外から加わるトルクのために、駆動電流IMDを一定値に保持しても、CS角度CSAを一定に維持することが困難な角度範囲があるため、そのような角度範囲以外を所定保持制御範囲としている。したがって、CS角度CSA(k)が所定保持制御範囲にないときは、前記ステップS25に進む。
【0051】
ステップS24の答が肯定(YES)、すなわちCS角度指令値CSACMDが一定でかつCS角度CSAが所定保持制御範囲内にあるときは、カウンタCHLDを「1」だけインクリメントし(ステップS26)、カウンタCHLDの値が所定値N0(例えば「5」)以上であるか否かを判別する(ステップS27)。この答が否定(NO)である間は前記ステップS28に進み、肯定(YES)となるとステップS29に進んで、保持フラグFHOLDを「1」に設定する。
【0052】
図9は、図6の保持操作量算出部72の機能を実現する保持操作量算出処理のフローチャートである。この処理は、ECU5のCPUで所定時間TCAL毎に実行される。
【0053】
ステップS31では、CS角度CSA(k)及びエンジン回転数NEに応じてUHOLDMマップを検索し、保持操作量マップ値UHOLDMを算出する。UHOLDMマップは、CS角度CSA(k)が増加するほど、保持操作量マップ値UHOLDMが増加するように設定されている。またエンジン回転数NEによって最適な保持操作量の値が変化するので、保持操作量マップ値UHOLDMはエンジン回転数NEに応じた最適な値となるように、予め実験を行って設定される。
【0054】
ステップS32では、エンジン冷却水温TWに応じてKTWテーブルを検索し、補正係数KTWを算出する。KTWテーブルは、エンジン冷却水温TWが高くなるほど、補正係数KTWが増加するように設定されている。
【0055】
ステップS33では、下記式(9)に保持操作量マップ値UHOLDM及び補正係数KTWを適用し、保持操作量UHOLD(k)を算出する。
UHOLD(k)=KTW×UHOLDM (9)
【0056】
以上詳述したように本実施形態では、制御出力(制御量)であるCS角度CSAに応じて保持操作量UHOLDが算出され、制御偏差ERRが所定閾値ERRHXより大きいときは、制御入力である出力操作量UFMがフィードバック操作量UFBに設定され、制御偏差ERRが所定閾値ERRHX以下であるときは出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定される。出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定されているときは、フィードバック操作量UFBが保持操作量UHOLDに一致するように設定される。本実施形態では、保持操作量UHOLDを、モータ43の駆動電流IMDが保持に必要な上下限電流値の平均的な値となるように設定するようにしたので、モータ43への供給電力を低減することができる。さらに、出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定されているときに、フィードバック操作量UFBを保持操作量UHOLDに一致させることにより、CS角度指令値CSACMDが変化したとき、すなわち出力操作量UFMが保持操作量UHOLDからフィードバック操作量UFBに切り換えられたときに、良好な追従性能を得ることができる。
【0057】
本実施形態では、ECU5がフィードバック制御手段、保持操作量算出手段、及び制御入力設定手段を構成する。具体的には、図6のフィードバック操作量算出部71がフィードバック制御手段に相当し、保持操作量算出部72が保持操作量算出手段に相当し、保持フラグ設定部73及び切換部74が制御入力設定手段に相当する。すなわち、図7のステップS11,S12,S16及びS17がフィードバック制御手段に相当し、図7のステップS13〜S15,S18,及び図8の処理が制御入力設定手段に相当し、図9の処理が保持操作量算出手段に相当する。
【0058】
[第2の実施形態]
図10は、本発明の第2の実施形態にかかる出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。図10に示す構成は、図6に示す構成のフィードバック操作量算出部71を、フィードバック操作量算出部71aに変更し、出力操作量UFMをフィードバック操作量算出部71aにフィードバックするようにしたものである。
【0059】
図11は、図10に示すフィードバック操作量算出部71aの構成を説明するためのブロック図である。フィードバック操作量算出部71aは、乗算部81,84,88と、減算部82,87と、加算部85と、積分部83とを備えている。これは通常のPI制御を実行するフィードバック操作量算出部72を構成する乗算部81,84,積分部83,及び加算部85に、減算部82,87及び乗算部88を追加したものである。
【0060】
減算部87は、フィードバック操作量UFBから出力操作量UFMを減算することにより、操作量偏差DUFBを算出する。乗算部88は、操作量偏差DUFBに比例項ゲインKPの逆数(1/KP)を乗算する。減算部82は、制御偏差ERRから(DFUB/KP)を減算し、修正制御偏差ERRMを算出する。積分部83は、修正制御偏差ERRMを積分し、修正偏差積分値ERRMIを算出する。乗算部84は、修正制御偏差積分値ERRMIに積分項ゲインKIを乗算し、積分項UIを算出する。乗算部81は、制御偏差ERRに比例項ゲインKPを乗算することにより、比例項UPを算出する。加算部85は、比例項UPと積分項UIを加算し、フィードバック操作量UFBを算出する。
【0061】
図11に基づいて、連続時間系の伝達関数を用いてフィードバック操作量UFBを表すと、式(10)及び(11)が得られる。式(10)の「s」はラプラス演算子である。
UFB=KP×ERR+KI×ERRM/s (10)
ERRM=ERR−(UFB−UFM)/KP (11)
【0062】
式(11)に式(10)で示されるフィードバック操作量UFBを適用すると、下記式(12)が得られる。
【数1】
【0063】
式(12)で示される出力操作量UFMから修正制御偏差ERRMへの伝達関数はハイパスフィルタの伝達関数となり、定常ゲインは「0」となる。したがって、出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定されると、制御偏差ERRに拘わらず、修正制御偏差ERRMは「0」に漸近していき、フィードバック操作量UFBが保持操作量UHOLDに漸近する。なお、UFM=UFBであるときは、修正制御偏差ERRMは制御偏差ERRと等しくなり、通常のPI制御動作が行われる。
【0064】
図11に示すように、フィードバック操作量UFBと出力操作量UFMとの偏差である操作量偏差DUFBに応じて制御偏差ERRを修正して修正制御偏差ERRMを算出し、修正制御偏差ERRMを積分部83に入力する構成を採用することにより、出力操作量UFMを保持操作量UHOLDに設定しているときに、フィードバック操作量UFBを保持操作量UHODに漸近させることができる(積分項UIを飽和させないようにすることができる)。その結果、保持フラグFHOLDが「1」から「0」に変化した直後、すなわち通常のフィードバック制御動作に復帰した直後において、CS角度CSAをCS角度指令値CSACMDに迅速に一致させることができる。
【0065】
図12は、図11に示すブロック図の機能を実現する処理のフローチャートである。この処理はECU5のCPUで所定時間TCAL毎に実行される。
ステップS41及びS42は、図7のステップS11及びS12と同一の処理であり、制御偏差ERR(k)及び比例項UPを算出する。
【0066】
ステップS43では、下記式(13)により、操作量偏差DUFB(k)を算出する。
DUFB(k)=UFB(k-1)−UFM(k-1) (13)
【0067】
ステップS44では、下記式(14)により、修正制御偏差ERRM(k)を算出し、ステップS45では、下記式(15)により、修正制御偏差ERRM(k)を積算し、修正偏差積分値ERRMI(k)を算出する。
ERRM(k)=ERR(k)−DUFB(k)/KP (14)
ERRMI(k)=ERRM(k)+ERRMI(k-1) (15)
【0068】
ステップS46では、修正偏差積分値の前回値ERRMI(k-1)を今回値ERRMI(k)に設定する。ステップS47では、修正偏差積分値ERRMI(k)に積分項ゲインKIを乗算することにより、積分項UIを算出する。ステップS48では、比例項UPと積分項UIとを加算してフィードバック操作量UFB(k)を算出する。
【0069】
ステップS49では、保持フラグFHOLDが「1」であるか否かを判別し、FHOLD=0であるときは、出力操作量UFM(k)をフィードバック操作量UFB(k)に設定する(ステップS50)。一方、保持フラグFHOLD=1であるときは、出力操作量UFM(k)を保持操作量UHOLD(k)に設定する(ステップS51)。
【0070】
以上のように本実施形態では、出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定されているときは、フィードバック操作量UFBと保持操作量UHOLDとの差である操作量偏差DUFBが積分項UIにフィードバックされ、フィードバック操作量UFBが保持操作量UHOLDに漸近するように制御される。したがって、CS角度指令値CSACMDが変更され、保持フラグFHOLDが「0」に変更された直後において、制御量であるCS角度CSAをCS角度指令値CSACMDに迅速に収束させることができる。
【0071】
次に図13〜図15を参照して、上述した制御動作の一例を説明する。これらの図には、CS角度指令値CSACMD、CS角度CSA、保持フラグFHOLD、フィードバック操作量UFB、及び出力操作量UFMの推移が示されている。図13(a)では破線がCS角度指令値CSACMDを示し、実線がCS角度CSAを示す。図14(a)及び図15(a)においても同様である。
【0072】
図13はCS角度指令値CSACMDが一定の状態(時刻t1より前)において、出力操作量UFMの保持動作を行わない例を示す。出力操作量UFMに対応してモータ駆動電流IDMが20A程度となり、消費電力が大きい。
【0073】
図14は、時刻t0において保持フラグFHOLDが「1」に設定され、保持動作に入った例を示している。ただし、この例では、フィードバック操作量算出部が、保持動作中(FHOLD=1)も通常のPI制御を継続してフィードバック操作量UFBを算出している。一方出力操作量UFMは保持操作量UHOLDに設定され(図14(d))、例えばモータ駆動電流IDMを5A程度に抑制することができる。しかしながら、フィードバック操作量UFBは積分項UIが飽和した状態となるため、出力操作量UFM(=保持操作量UHOLD)とは異なる値をとる(図14(c))。その結果、保持フラグFHOLDが「1」から「0」に切り換えられる時刻t1の直後において、制御遅れが発生している(図14(a)のA部参照)。
【0074】
図15は本実施形態の制御が適用された例を示している。保持動作に移行した時刻t0以後、フィードバック操作量UFBは出力操作量UFM(=保持操作量UHOLD)に漸近していき、時刻t1より前に出力操作量UFMと一致する。その結果、時刻t1の直後において図14に示すように制御遅れが発生せず、良好な追従特性を得ることができる。
【0075】
本実施形態では、フィードバック操作量算出部71aがフィードバック制御手段に相当する。
【0076】
[第3の実施形態]
図16は、本発明の第3の実施形態にかかる出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。図16に示す構成は、図6に示す構成のフィードバック操作量算出部71を、フィードバック操作量算出部71bに変更したものである。
【0077】
フィードバック操作量算出部71bは、図17に示すように、スライディングモード制御器101と、微分部102と、減算部103と、周波数整形制御器104とから構成される。
【0078】
微分部102は、CS角度CSAを微分し、CS角度CSAの変化速度(以下「CS角速度」という)dCSAを算出する。スライディングモード制御器101は、スライディングモード制御により、CS角度CSAがCS角度指令値CSACMDに一致するように、CS角速度dCSAの目標値であるCS角速度指令値dCSACMDを算出する。減算部103は、CS角速度指令値dCSACMDからCS角速度dCSAを減算し、角速度偏差DdCSAを算出する。
【0079】
周波数整形制御器104は、PI制御(比例積分制御)により、角速度偏差DdCSAが「0」となるように、フィードバック操作量UFBを算出する。
なお、実際にはフィードバック操作量UFBは切換部74を介して制御対象であるモータ43及び第1弁作動特性可変機構41に出力されるが、図17では、説明のためにフィードバック操作量UFBが直接、制御対象100に入力される構成が示されている。
【0080】
本実施形態では、微分部102、減算部103、周波数整形制御器104、及び制御対象100からなるブロックを拡大制御対象110とし、拡大制御対象110の伝達関数FX(s)が所望の目標伝達関数F(s)となるように、周波数整形制御器104の伝達関数である周波数整形伝達関数H(s)を設定する。
【0081】
拡大制御対象110の伝達関数FX(s)は、下記式(21)で与えられる。G(s)は制御対象100の伝達関数であり、sは微分部102の伝達関数である。
【数2】
【0082】
ここで伝達関数FX(s)を目標伝達関数F(s)とする周波数整形伝達関数H(s)は、式(21)のFX(s)をF(s)としてH(s)について解くことにより、得られる(下記式(22))。
【数3】
【0083】
次に目標伝達関数F(s)をどのように設定するかを説明する。第1弁作動特性可変機構41の伝達関数である(より正確には第1弁作動特性可変機構41をモデル化した制御対象モデルの伝達関数である)対象伝達関数G(s)は、下記式(23)で表すことができる。ここで、J及びBは、モータ43及び第1弁作動特性可変機構41の特性、例えばモータトルク定数、ギヤ減速比、モータ43の慣性モーメント、コントロール軸56の慣性モーメントなどによって決定される定数である。
【数4】
【0084】
そこで、制御対象の動特性変化や外乱が大きいといった誤差要因がある場合においても同様の伝達関数で表される拡大制御対象110を得るため、目標伝達関数F(s)を下記式(24)で与えると、周波数整形伝達関数H(s)は下記式(25)で与えられる。
【数5】
【0085】
この伝達関数H(s)は、PI(比例積分)制御に相当するものであり、上述した第1の実施形態におけるフィードバック操作量算出部71と同様の演算により、フィードバック操作量UFBを算出することができる。すなわち、本実施形態の角速度偏差DdCSAが、第1の実施形態における制御偏差ERRに相当し、図7においてステップS11を削除し、ステップS12及びS15の制御偏差ERRを角速度偏差DdCSAに置換することにより、フィードバック操作量UFBを算出することができる。
【0086】
次にスライディングモード制御器101におけるCS角速度指令値dCSACMDの算出手法を説明する。CS角速度指令値dCSACMDは、下記式(31)で示されるように、等価制御入力UEQと到達則制御入力URCHの和として算出される。
dCSACMD(k)=UEQ(k)+URCH(k) (31)
【0087】
また拡大制御対象110の伝達関数はF(s)であり、これを離散時間系の伝達関数に変換し、制御出力であるCS角度CSA(k)を、制御入力であるCS角速度指令値dCSACMD及びCS角度CSAの過去値で表すと、制御対象モデルを定義する下記式(32)が得られる。
CSA(k)=a11・CSA(k-1)+a12・CSA(k-2)
+b11・dCSACMD(k-1)
+b12・dCSACMD(k-2) (32)
ここで、a11,a12,b11,及びb12は、伝達関数F(s)に含まれる定数τ及び制御周期TCALを用いて周知の手法により算出されるモデルパラメータである。
【0088】
また切換関数値σ(k)は式(33)により算出される制御偏差DCSAを用いると、下記式(34)で定義される。
DCSA(k)=CSACMD(k)−CSA(k) (33)
σ(k)=DCSA(k)+VPOLE・DCSA(k-1) (34)
ここで、VPOLEは制御偏差DCSAの減衰特性を決める切換関数設定パラメータであり、−1より大きく0より小さい値に設定される。
【0089】
等価制御入力UEQは、下記式(35)を満たす操作量である。
σ(k)=σ(k+1) (35)
式(35)の条件に式(32)、(33)及び(34)を適用することにより、等価制御入力UEQは下記式(36)により算出される。
UEQ(k)=(1/b11){(1−a11−VPOLE)CSA(k)
+(VPOLE−a12)CSA(k-1)−b12・dCSACMD(k-1)
+CSACMD(k+1)+(VPOLE−1)CSACMD(k)
−VPOLE・CSACMD(k-1)} (36)
【0090】
また到達則制御入力URCHは、下記式(37)により算出される。
URCH(k)=(−F/b11)σ(k) (37)
ここでFは、到達則制御ゲインである。
【0091】
以上のように制御系を構成することにより、制御対象100の動特性変化や外乱が大きいといった誤差要因がある場合においても、減算部103及び周波数整形制御器104によるフィードバック制御により、誤差要因、すなわち動特性変化、外乱、あるいは非線形要素の影響を除去し、スライディングモード制御器101により安定した制御を行うことができる。さらに、周波数整形制御器104における演算を、第1の実施形態におけるフィードバック操作量算出部71と同様に行うことにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
すなわち、保持操作量UHOLDを、モータ43の駆動電流IMDが保持に必要な上下限電流値の平均的な値となるように設定することにより、モータ43への供給電力を低減することができる。さらに、出力操作量UFMが保持操作量UHOLDに設定されているときに、フィードバック操作量UFBを保持操作量UHOLDに一致させることにより、CS角度指令値CSACMDが変化したとき、すなわち出力操作量UFMが保持操作量UHOLDからフィードバック操作量UFBに切り換えられたときに、良好な追従性能を得ることができる。
【0093】
本実施形態では、フィードバック操作量算出部71bがフィードバック制御手段に相当する。すなわち、スライディングモード制御器101、減算部103、周波数整形制御器104、及び微分部102が、フィードバック制御手段に相当する。
【0094】
(変形例)
なお、図18に示すように、周波数整形制御器104を周波数整形制御器104aに変更し、周波数整形制御器104aを図19に示すようにフィードバック操作量算出部71aと同様に構成するようにしてもよい。すなわち、制御偏差ERRを、角速度偏差DdCSAに置き換えて、乗算部81及び減算部82に入力することにより、保持動作中におけるフィードバック操作量UFBを、保持操作量UHOLDに漸近させることができる。
【0095】
[第4の実施形態]
図20は、本発明の第4の実施形態にかかるスロットル弁駆動装置及びその制御装置の構成を示す図である。
【0096】
エンジン101の吸気通路102には、スロットル弁103が設けられている。スロットル弁103には、該スロットル弁103を閉弁方向に付勢するリターンスプリング104と、該スロットル弁103を開弁方向に付勢する弾性部材105とが取り付けられている。またスロットル弁103は、モータ106によりギヤ(図示せず)を介して駆動できるように構成されている。スロットル弁103、リターンスプリング104、弾性部材105、モータ106、及び図示しないギヤによって、制御対象であるスロットル弁駆動装置110が構成される。
【0097】
モータ106は、ECU107に接続されており、その作動がECU107により制御される。スロットル弁103には、スロットル弁開度THを検出するスロットル弁開度センサ108が設けられており、その検出信号は、ECU107に供給される。
【0098】
またECU107には、エンジン101が搭載された車両の運転者の要求出力を示す、アクセルペダルの踏み込み量ACCを検出するアクセルセンサ109が接続されており、その検出信号がECU107に供給される。
【0099】
ECU107は、第1の実施形態におけるECU5と同様に、入力回路、CPU、メモリ回路、出力回路などにより構成される。ECU107は、アクセルペダルの踏み込み量ACCに応じてスロットル弁103の目標開度THRを算出し、検出したスロットル弁開度THが目標開度THRと一致するようにモータ106の操作量UFMを算出し、操作量UFMに応じた電気信号、具体的には操作量UFMに比例するデューティ比のパルス幅変調(PWM)信号をモータ106に供給する。
【0100】
スロットル弁103の開度THと、モータ106の出力トルクTRQMとは、図21に示すような関係を有する。すなわち、スロットル弁開度THが開度TH1であるとき、出力トルクTRQMが実線L11で示される上限トルクTRQMHを超えると、スロットル弁開度THが増加し、実線L12で示される下限トルクTRQMLを下回ると、スロットル弁開度THが減少し、上限トルクTRQMHと下限トルクTRQMLの間にあるときは、開度TH1が維持される。したがって、第1の実施形態と同様に、目標開度THRが一定であるときは、保持操作量UHOLDを適切に設定し、PWM信号のデューティ比を小さくして消費電力を低減することができる。
【0101】
図22は、本実施形態における出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。このモジュールは、第1の実施形態と同様に構成され、フィードバック操作量算出部121と、保持操作量算出部122と、保持フラグ設定部123と、切換部124とを備えている。
【0102】
フィードバック操作量算出部121は、検出されるスロットル弁開度THが目標開度THRに一致するように、比例積分(PI)制御により、フィードバック操作量UFBを算出する。具体的には、図7または図12に示す処理において、CS角度指令値CSACMD及びCS角度CSAを、それぞれ目標開度THR及びスロットル弁開度THに置換することにより得られる演算処理により、フィードバック操作量UFBが算出される。
【0103】
保持操作量算出部122は、スロットル弁開度THに応じて、保持操作量UHOLDを算出する。保持操作量UHOLDは、例えば第1の実施形態と同様に、上限トルクTRQMHと下限トルクTRQMLの平均値に対応する値に設定される。したがって、保持操作量UHOLDは、スロットル弁開度THが増加するほど増加するように設定される。
【0104】
保持フラグ設定部123は、目標開度THR及びスロットル弁開度THに応じて、図8に示す処理と同様に処理により、保持フラグFHOLDの設定を行う。切換部124は、保持フラグFHOLDが「0」であるときは、フィードバック操作量UFBを選択し、保持フラグFHOLDが「1」に設定されると、保持操作量UHOLDを選択し、出力操作量UFMとして出力する。
【0105】
以上のように出力操作量算出モジュールを構成することにより、第1の実施形態あるいは第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0106】
本実施形態では、フィードバック操作量算出部121がフィードバック制御手段に相当し、保持操作量算出部122が保持操作量算出手段に相当し、保持フラグ設定部123及び切換部124が制御入力設定手段に相当する。
【0107】
[他の実施形態]
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の制御、特に摩擦の大きい制御対象の位置決め制御に適用可能である。例えば、ボールねじを使用した位置決め装置(例えば加工用機械などで使用される)、電磁クラッチ式可変バルブタイミング装置、自動変速機のシフトフォーク位置決め装置などに適用可能である。
【0108】
また上述した第1〜第3の実施形態では、保持動作中に適用される保持操作量UHOLDを、モータ43の駆動電流IMDが保持に必要な上下限電流値の平均的な値となるように設定したが、下限電流値より大きく平均的な値より小さな値に設定するようにしてもよい。そのような設定により、さらにモータ43の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す弁作動特性可変装置の構成を示す図である。
【図3】図2に示す第1弁作動特性可変機構の概略構成を説明するための図である。
【図4】吸気弁の弁作動特性を示す図である。
【図5】第1弁作動特性可変機構のコントロール軸の回転角度(CSA)と、モータ出力トルク(TRQM)との関係を示す図である。
【図6】モータ駆動電流を決定する出力操作量(UFM)を算出するモジュールの構成を示すブロック図である。
【図7】図6のフィードバック操作量算出部における演算処理のフローチャートである。
【図8】図6の保持フラグ設定部における演算処理のフローチャートである。
【図9】図6の保持操作量算出部における演算処理のフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかる出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。
【図11】図10のフィードバック操作量算出部の構成を示すブロック図である。
【図12】図10のフィードバック操作量算出部における演算処理のフローチャートである。
【図13】制御動作例を説明するためのタイムチャートである。
【図14】制御動作例を説明するためのタイムチャートである。
【図15】制御動作例を説明するためのタイムチャートである。
【図16】本発明の第3の実施形態にかかる出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。
【図17】図16に示すフィードバック操作量算出部の構成を示すブロック図である。
【図18】図16に示す構成の変形例を示すブロック図である。
【図19】図18に示すフィードバック操作量算出部の構成を示すブロック図である。
【図20】本発明の第4の実施形態にかかる制御系の構成を示す図である。
【図21】スロットル弁開度(TH)とスロットル弁を駆動するモータの出力トルク(TRQM)との関係を示す図である。
【図22】第4の実施形態にかかる出力操作量算出モジュールの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0110】
1 内燃機関
41 第1弁作動特性可変機構(プラント)
43 モータ(プラント)
71,71a,71b フィードバック操作量算出部(フィードバック制御手段)
72 保持操作量算出部(保持操作量算出手段)
73 保持フラグ設定部(制御入力設定手段)
74 切換部(制御入力設定手段)
100 制御対象(プラント)
110 スロットル弁駆動装置(プラント)
121 フィードバック操作量算出部(フィードバック制御手段)
122 保持操作量算出部(保持操作量算出手段)
123 保持フラグ設定部(制御入力設定手段)
124 切換部(制御入力設定手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの制御量を目標値に一致させるようにフィードバック操作量を算出するフィードバック制御手段を有するプラントの制御装置において、
前記プラントの作動状態に応じて保持操作量を算出する保持操作量算出手段と、
前記制御量と目標値との制御偏差が所定閾値より大きいときは、前記プラントに入力する制御入力を前記フィードバック操作量に設定し、前記制御偏差が前記所定閾値以下であるときは前記制御入力を前記保持操作量に設定する制御入力設定手段とを備え、
前記フィードバック制御手段は、前記制御入力が前記保持操作量に設定されているときは、前記フィードバック操作量を前記保持操作量に漸近または一致させることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項2】
前記フィードバック制御手段は、前記制御偏差に応じた比例項及び積分項を用いて前記フィードバック操作量を算出し、前記制御入力が前記保持操作量に設定されているときは、該フィードバック操作量と前記保持操作量との差である操作量偏差を前記積分項にフィードバックすることを特徴とする請求項1に記載のプラントの制御装置。
【請求項3】
前記フィードバック制御手段は、前記制御偏差に応じた比例項及び積分項を用いて前記フィードバック操作量を算出し、前記制御入力が前記保持操作量に設定されているときは、前記比例項と前記保持操作量との差に比例するように前記積分項を設定することを特徴とする請求項1に記載のプラントの制御装置。
【請求項4】
前記保持操作量算出手段は、前記プラントの制御量を示すパラメータに応じて前記保持操作量を算出することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のプラントの制御装置。
【請求項5】
前記プラントは内燃機関の吸気弁のリフト量を連続的に変更する弁作動特性可変機構であり、該弁作動特性可変機構は前記リフト量を変更するためのコントロール軸と、該コントロール軸を回動させるためのアクチュエータとを有し、前記制御入力に応じて前記アクチュエータに供給する電流値が算出され、前記制御量は前記コントロール軸の回転角度であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のプラントの制御装置。
【請求項1】
プラントの制御量を目標値に一致させるようにフィードバック操作量を算出するフィードバック制御手段を有するプラントの制御装置において、
前記プラントの作動状態に応じて保持操作量を算出する保持操作量算出手段と、
前記制御量と目標値との制御偏差が所定閾値より大きいときは、前記プラントに入力する制御入力を前記フィードバック操作量に設定し、前記制御偏差が前記所定閾値以下であるときは前記制御入力を前記保持操作量に設定する制御入力設定手段とを備え、
前記フィードバック制御手段は、前記制御入力が前記保持操作量に設定されているときは、前記フィードバック操作量を前記保持操作量に漸近または一致させることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項2】
前記フィードバック制御手段は、前記制御偏差に応じた比例項及び積分項を用いて前記フィードバック操作量を算出し、前記制御入力が前記保持操作量に設定されているときは、該フィードバック操作量と前記保持操作量との差である操作量偏差を前記積分項にフィードバックすることを特徴とする請求項1に記載のプラントの制御装置。
【請求項3】
前記フィードバック制御手段は、前記制御偏差に応じた比例項及び積分項を用いて前記フィードバック操作量を算出し、前記制御入力が前記保持操作量に設定されているときは、前記比例項と前記保持操作量との差に比例するように前記積分項を設定することを特徴とする請求項1に記載のプラントの制御装置。
【請求項4】
前記保持操作量算出手段は、前記プラントの制御量を示すパラメータに応じて前記保持操作量を算出することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のプラントの制御装置。
【請求項5】
前記プラントは内燃機関の吸気弁のリフト量を連続的に変更する弁作動特性可変機構であり、該弁作動特性可変機構は前記リフト量を変更するためのコントロール軸と、該コントロール軸を回動させるためのアクチュエータとを有し、前記制御入力に応じて前記アクチュエータに供給する電流値が算出され、前記制御量は前記コントロール軸の回転角度であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のプラントの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−36141(P2009−36141A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202467(P2007−202467)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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