説明

プリプレグ、積層板、金属箔張積層板及びこれを使用した印刷回路板

【課題】 金属箔や繊維基材との接着性、寸法安定性、耐熱性に十分優れ、かつハロゲンフリーで難燃性を示すプリプレグ、並びに、そのプリプレグを用いた積層板、金属箔張積層板、及び折り曲げ可能で電子機器の筐体内に高密度に収納可能な印刷回路板を提供するものである。
【解決手段】 本発明は、樹脂組成物に繊維基材を含浸させて得られるプリプレグであって、樹脂組成物が、アクリルゴムと、熱硬化性樹脂と、リン系化合物とを含み、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、リン系化合物の含有率が、リン原子換算で0.1〜10質量%である、プリプレグである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリプレグ、積層板、金属箔張積層板及びこれを使用した印刷回路板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板用の積層板は、電気絶縁性樹脂組成物をマトリックス樹脂とするプリプレグを所定枚数重ね、加熱及び加圧して一体化したものである。プリント配線板をサブトラクティブ法により形成する場合には、金属張積層板が用いられる。この金属張積層板は、プリプレグの表面(片面又は両面)に銅箔等の金属箔を積層して加熱及び加圧することにより製造される。電気絶縁性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドートリアジン樹脂等のような熱硬化性樹脂が汎用され、フッ素樹脂やポリフェニレンエーテル樹脂等のような熱可塑性樹脂が用いられることもある。
【0003】
一方、パーソナルコンピュータや携帯電話等の情報端末機器の普及に伴って、これらに搭載される印刷回路板は、小型化、実装の高密度化が進んでいる。そのような要求を満足するために、両面に回路を配した内層基板の回路上に、更にプリプレグ、金属箔を順に積層する工程を経て得られる多層印刷回路板が用いられている。その上、内層基板に形成された回路も高密度化されているため、プリプレグが内層基板の表面凹部にも隙間なく充填されるような高い回路充填性が必要となる。また、その実装形態はピン挿入型から表面実装型へ、さらにはプラスチック基板を使用したBGA(ボールグリッドアレイ)に代表されるエリアアレイ型へと進んでいる。BGAのようなベアチップを直接実装する場合、チップと基板との接続は、熱超音波圧着によるワイヤボンディングで行うのが一般的である。この際、ベアチップを実装する基板は150℃以上の高温にさらされることになるため、基板中の電気絶縁性の樹脂にはある程度の高い耐熱性が必要とされる。
【0004】
また、環境問題の観点から、はんだの鉛フリー化が進み、これに伴ってはんだの溶融温度が高温化しているため、基板にはより高い耐熱性が要求されるようになっている。それと共に、基板材料に対してはハロゲンフリーの要求が高まっているため、臭素系難燃剤の使用も難しくなってきている。更に一度実装したチップを交換し得る性能、いわゆるリペア性も要求される場合がある。チップの交換時には、まず、チップ実装時と同程度の熱をかけてチップを基板から取り外し、その後、再度熱をかけてチップを再実装する。したがって、リペア性の要求される基板では、高温での熱サイクル的な耐熱衝撃性も要求される。従来の絶縁性樹脂系では、耐熱衝撃性が低いために、チップ交換時又はチップを交換した後に、繊維基材と樹脂との間で剥離を起こす場合がある。
【0005】
耐熱衝撃性、耐リフロー性、耐クラック性に優れ、微細配線形成性を向上するために、繊維基材にポリアミドイミドを必須成分とする樹脂組成物を含浸したプリプレグが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
近年、電子機器の更なる小型化、高性能化の要求に伴い、部品実装を施された印刷回路板を限られた空間に収納できることが必要とされている。かかる要求に対して、複数の印刷回路板を多段に配し、相互をワイヤーハーネスやフレキシブル配線板によって接続する方法や、ポリイミドをベースとするフレキシブル基板と従来のリジッド基板とを多層化したリジッド−フレックス基板を用いる方法が用いられている。
【特許文献1】特開2003−55486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来、ハロゲンフリーでありながら難燃性が十分であると共に、金属箔や他のプリプレグとの接着性、可とう性、耐熱性、及び寸法安定性に優れるプリプレグについては未だ知られていない。
【0008】
加えて、回路充填性が高く、限られた空間内に高密度に充填可能な印刷回路板についても、未だ提案されていない。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、金属箔や繊維基材との接着性、寸法安定性、耐熱性に十分優れ、かつハロゲンフリーで難燃性を示すプリプレグ、並びに、そのプリプレグを用いた積層板、金属箔張積層板、さらにはその金属箔張積層板を用いた印刷回路板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は次のものに関する。
【0011】
(1)樹脂組成物に繊維基材を含浸させて得られるプリプレグであって、樹脂組成物が、アクリルゴムと、熱硬化性樹脂と、リン系化合物とを含み、樹脂組成物樹脂組成物中の固形分全量を基準として、リン系化合物の含有率が、リン原子換算で0.1〜10質量%である、プリプレグ。
【0012】
本発明のプリプレグは、繊維基材を樹脂組成物に含浸させて得られるため、所定量の樹脂組成物の固形分が繊維基材に付着した構造を有する。このとき、上記樹脂組成物には、アクリルゴム及び熱硬化性樹脂が含まれるため、この樹脂組成物に含浸させて得られるプリプレグは、接着性、寸法安定性、耐熱性に十分優れるものとなる。
【0013】
また、上記樹脂組成物には、含有率がリン原子換算で上記範囲となるようにリン系化合物が含まれるため、得られるプリプレグは、接着性、寸法安定性、耐熱性を十分高い状態に維持すると同時に、ハロゲンフリーでありながら難燃性に十分優れるものとなる。
【0014】
これらに起因して、本発明のプリプレグは、金属箔や繊維基材との接着性、寸法安定性、耐熱性に十分優れ、ハロゲンフリーで難燃性を示すことができる。また、このプリプレグを用いた印刷回路板は、プリプレグが硬化した後も可とう性を有しているため、折り曲げ可能であり、電子機器の筐体内に高密度で収納することが可能となる。
【0015】
(2)アクリルゴムは、エポキシ価が2〜18当量/kgとなる割合でエポキシ基を有している、項(1)記載のプリプレグ。この場合のプリプレグは、耐熱性及び寸法安定性の点でより優れるものとなる。
【0016】
(3)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む、項(1)又は(2)に記載のプリプレグ。この場合のプリプレグは、耐熱性及び寸法安定性の点でさらに優れるものとなる。
【0017】
(4)繊維基材の厚さが5〜100μm以下である、項(1)〜3のいずれか一項に記載のプリプレグ。この場合のプリプレグは、硬化後の可とう性の点でより優れるものとなる。
【0018】
(5)項(1)〜(4)のいずれか一項に記載のプリプレグを所定枚数重ねて加熱することにより樹脂組成物を硬化して得られる積層板。本発明の積層板は、上記本発明のプリプレグを用いて得られるものである。このため、上記積層板は、接着性、寸法安定性、耐熱性、難燃性、及び可とう性に優れるものとなる。
【0019】
(6)項(1)のいずれか一項に記載のプリプレグを加熱及び加圧して得られる基板と、基板の片側又は両側に設けられた金属箔と、を備える金属箔張積層板。本発明の金属箔張積層板は、上記本発明のプリプレグを用いて得られるものである。このため、上記金属箔張積層板は、プリプレグの硬化物間又はプリプレグの硬化物と金属箔との間の接着性、寸法安定性、耐熱性、難燃性、及び可とう性に優れるものとなる。
【0020】
(7)項(6)記載の金属箔張積層板に回路を形成して得られる印刷回路板。本発明の印刷回路板は、上記本発明の金属箔張積層板から得られるものである。このため、上記印刷回路板は、基板及び回路間の接着性、寸法安定性、耐熱性、難燃性、及び可とう性に優れるものとなる。また、上記印刷回路板は、折り曲げ可能となるため、電子機器の筐体内に高密度で収納することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金属箔や繊維基材との接着性、寸法安定性、耐熱性に十分優れ、かつハロゲンフリーで難燃性を示すプリプレグ、並びに、そのプリプレグを用いた積層板、金属箔張積層板、さらにはその金属箔張積層板を用いた印刷回路板を提供することができる。また、本発明による金属箔張積層板及び印刷回路板は、任意に折り曲げ可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。なお、「(メタ)アクリル」の語は、メタアクリル若しくはアクリルを意味する。
【0023】
図1は、本発明によるプリプレグの一実施形態を示す斜視図である。図1に示すプリプレグ100は、任意に折り曲げ可能な、可とう性を有する繊維基材を樹脂組成物に含浸させて得られる。このため、本発明のプリプレグは、所定量の樹脂組成物の固形分が繊維基材に付着した構造を有する。
【0024】
上記繊維基材の形態としては、金属箔張積層板や多層プリント配線板を製造する際に一般的に用いられるもの等から適宜選択できるが、通常、織布や不織布等の繊維基材が用いられる。繊維基材を構成する繊維としては、ガラス、アルミナ、アスベスト、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維や、アラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維、あるいはこれらの混抄系が挙げられる。これらのなかでも、ガラス繊維が好ましい。特に、繊維基材としてはガラスクロス(ガラス繊維の織布)が好ましく用いられる。
【0025】
また、繊維基材の厚みは、5〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。繊維基材の厚みが5〜100μmであると、得られるプリプレグの可とう性が大きくなると共に、製造プロセス上での温度変化、吸湿などに伴うプリプレグの寸法変化を小さくすることが可能となる。このことから、このプリプレグを用いた印刷回路板は、特定の樹脂組成物と組み合わせて用いることによって、任意に折り曲げることが可能となる。また、繊維基材としてガラスクロスを用い、このガラスクロスの厚みを上記範囲とした場合、可とう性が相乗的に優れるものとなる。
【0026】
次に、上記樹脂組成物について説明する。樹脂組成物は、アクリルゴムと、熱硬化性樹脂と、リン系化合物とを含む。
【0027】
本発明で用いられるアクリルゴムは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位とする重合体からなるゴムであり、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルからなる群より選ばれる少なくとも1種類(以下、単に「(メタ)アクリル酸エステル等」という。)と、2重結合を有する化合物とを共重合させることにより製造されることが好ましい。
【0028】
この2重結合を有する化合物は、(メタ)アクリル酸エステル等と共重合可能な化合物であれば特に制限はない。例えば、上記2重結合を持つ化合物としては、炭素数1〜20のアルキル基、脂環式基、グリシジル基、水酸基を含む炭素数1〜6のアルキル基又は含窒素環状化合物等をエステル鎖に有するアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等が挙げられる。より具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸エチレングリコールメチルエーテル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸アミド、アクリル酸イソデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸N−ビニルピロリドン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸エチレングリコールメチルエーテル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アミド、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸N−ビニルピロリドン、アクリルニトリル、ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
【0029】
一般に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ラジカルを発生させることでその(メタ)アクリル基を付加重合して重合体又は共重合体が生成される。本発明においても、上述した(メタ)アクリル酸エステル等と、2重結合を有する化合物とを、同様にして重合又は共重合させることにより、アクリルゴムを製造することが可能である。
【0030】
例えば、アクリルゴムを生成する際には、ラジカルを発生させるラジカル重合開始剤が用いられてもよい。ここで、ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過安息香酸tert−ブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジt―ブチルペルオキシド、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、t―ブチルペルイソブチレート、t―ブチルペルピバレート、過酸化水素/第一鉄塩、過硫酸塩/酸性亜硫酸ナトリウム、クメンヒドロペルオキシド/第一鉄塩、過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が組み合わせられてもよい。
【0031】
本発明で使用するアクリルゴムは、エポキシ基を有することが好ましく、かつエポキシ価が2〜18当量/kgのものが好ましく、3〜8当量/kgのものがより好ましい。エポキシ価が2当量/kg未満であると、エポキシ価が上記範囲にある場合と比較して、得られるプリプレグにおける樹脂組成物のガラス転移温度が低下するため、耐熱特性が低下する傾向にあり、エポキシ価が18当量/kgを超えると、エポキシ価が上記範囲にある場合と比較して、プリプレグの貯蔵弾性率の上昇による寸法安定性の低下が生じる傾向にある。
【0032】
このアクリルゴムのエポキシ価は、(メタ)アクリル酸グリシジルと二重結合を有する化合物との共重合の際の共重合比を変えることで、適宜調整することが可能である。例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル100質量部に対して、二重結合を有する化合物の比率を5〜15質量部として、重合させることにより、2〜18当量/kgのエポキシ価を有するアクリルゴムが得られる。
【0033】
エポキシ基を有するアクリルゴムは、例えば、「HTR860P3」(ナガセケムテックス株式会社製、商品名、エポキシ価3.05当量/kg)、「HM6−M50」(ナガセケムテックス株式会社製、商品名、エポキシ価8.00当量/kg)が市販品として入手可能である。
【0034】
なお、アクリルゴムは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他、アクリロニトリル等をモノマー単位として有していてもよい。
【0035】
上記アクリルゴムの重量平均分子量は、耐熱性を考慮すると、3万〜200万であることが好ましい。アクリルゴムの重量平均分子量が3万未満であると、プリプレグのタックが強くなりすぎたり、可とう性が低下したりする傾向にあり、200万を超えると、プリプレグの耐熱性が低下する傾向にある。ここで、上記の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって測定される値であって、標準ポリスチレン換算値のことを意味する。GPC分析は、例えば、カラムとして「GL8300 MDT−5」(日立化成(株)製、商品名)を用い、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として用いて行うことができる。
【0036】
樹脂組成物において、アクリルゴムの含有率は、樹脂組成物全量を基準として20〜60質量%であることが好ましい。アクリルゴムの含有率が20質量%未満であると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、ガラス転移温度が急激に低下して、耐熱性が低下する傾向にあり、60質量%を超えると、含有率が上記範囲にある場合と比較して、ガラスクロス等の繊維基材中に空隙が残り易くなる傾向にある。
【0037】
本発明で用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、エポキシ基を有する高分子化合物、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、加熱により架橋する架橋性官能基を複数有する熱硬化性樹脂であることが好ましく、特に、架橋性官能基としてのエポキシ基を複数有するポリエポキシ化合物又はエポキシ樹脂であることがより好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び多官能脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いられる。
【0039】
なお、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂としては「NC−3000H」(日本化薬株式会社製、商品名)が、リン含有エポキシ樹脂としては「ZX−1548」(東都化成株式会社製、商品名)が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては「EPICLON N−660」(大日本インキ株式会社製、商品名)が、それぞれ市販品として入手可能である。
【0040】
エポキシ樹脂を用いる場合、その硬化剤又は硬化促進剤を併用することもできる。硬化剤としては、一分子内に複数のフェノール性水酸基を有する化合物を用いることが好ましい。そのような化合物としては、ヒドロキノン等の1つのフェニル基に2つ以上の水酸基を有する化合物や、フェノール樹脂、クレゾール樹脂等の1つの分子にフェノール環又はクレゾール環を複数個含んだ化合物等が挙げられる。これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0041】
一分子内に複数のフェノール性水酸基を有する化合物は、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂である「フェノライト LA−1356、LA−3018−50P、EXB−9829」(以上、大日本インキ株式会社製、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0042】
硬化促進剤としては、アミン類やイミダゾール類が好適に用いられる。アミン類としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルエタン、グアニル尿素等が挙げられる。イミダゾール類としては、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト等のイミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。硬化促進剤の含有率は、樹脂組成物中のエポキシ基の量等に応じて適宜決定することができるが、一般的には、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、0.01〜10質量%とすることが好ましい。
【0043】
本発明で用いられるリン系化合物としては、モノマー型リン酸エステル、縮合型リン酸エステル、リン含有フィラー、赤燐、ポリリン酸、フォスファゼン等が挙げられる。これらのリン系化合物は、難燃剤として又はその他の目的で用いられるリン系化合物を樹脂組成物に含有させる。あるいは、リン系化合物は、リン原子を分子骨格に組み込んだアクリルゴム及び/又は熱硬化性樹脂であってもよい。この場合、リン原子を分子骨格に組み込んだアクリルゴム及び/又は熱硬化性樹脂は、本発明に係る樹脂組成物が含有するアクリルゴム及び/又は熱硬化性樹脂であると同時に、本発明に係る樹脂組成物が含有するリン系化合物でもある。
【0044】
なお、モノマー型リン酸エステルとしては「レオフォスTPP」(味の素ファインテクノ株式会社商品名)が、縮合型リン酸エステルとしては「レオフォスRDP,BAPP」(味の素ファインテクノ株式会社商品名)が、リン含有フィラーとしては「HCA−HQ」(三光化学工業株式会社商品名)や「OP930」(クラリアントジャパン株式会社製商品名)が、赤燐としては「ノーバクエル」(燐化学工業株式会社商品名)や「ヒシガード」(日本化学工業株式会社商品名)が、ポリリン酸としては「PMP100」(日産化学株式会社商品名)や「エクソリットOP1311」(クラリアントジャパン株式会社商品名)が、フォスファゼンとしては「SBP100」(大塚化学株式会社商品名)が、それぞれ市販品として入手可能である。
【0045】
上記リン含有フィラーは、硬化前の樹脂組成物において固体粒子状に分散し、硬化物においても固体粒子状のまま残存するフィラー(以下「不溶性フィラー」という)であって、リンを含有するものである。このリン含有フィラーの平均粒径は、0.1〜30μmの範囲内にあることが好ましい。リン含有フィラーの平均粒径が30μmを超えるとプリプレグの可とう性が低下する傾向にあり、0.1μm未満であるとプリプレグのタックが大きくなる傾向にある。ここで、リン含有フィラーの上記平均粒径は、レーザー回折法によって測定される平均粒径である。レーザー回析法による平均粒径の測定は、例えば、島津製作所製のレーザー回析式粒度分布測定装置である「SALD−2000」を用いて測定することができる。
【0046】
不溶性フィラーとしてのリン含有フィラーは、ホスフィン酸アルミニウム塩を含んでいることが特に好ましい。これにより、プリプレグのタック、並びにプリプレグの難燃性及び可とう性について、特に顕著な効果が得られる。ホスフィン酸アルミニウム塩を含み、不溶性フィラーとして用いることのできるリン含有フィラーとしては、例えば、「OP930」(クラリアントジャパン株式会社製、商品名)が市販品として入手可能である。また、不溶性フィラーとして用いることのできるリン含有フィラーとしては、他にも、「HCA−HQ」(三光株式会社製、商品名)が、市販品として入手可能である。
【0047】
上記リン系化合物の含有率は、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、リン原子換算で0.1〜10質量%であり、1〜10質量%であることが好ましい。リン系化合物の含有率が、0.1質量%未満であると、難燃性が低下し、リン系化合物の含有率が10質量%を超えると可とう性のみならず、接着性、寸法安定性、耐熱性が低下する。なお、リン系化合物の含有量が1質量%以上であれば、難燃助剤を添加する必要がなくなるので好ましい。
【0048】
本発明で用いられる樹脂組成物には、リン系化合物以外の難燃剤を含有していてもよい。かかる難燃剤としては、モリブデン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水和金属類、ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、タルク等の粘土鉱物、及びメラミンシアヌレート等の窒素系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の難燃剤が挙げられる。
【0049】
また、本発明で使用する樹脂組成物は、必要に応じて、イソシアネートやメラミン等の架橋剤、ゴム系エラストマ、シリカ等の無機充填剤、カップリング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、イオントラップ剤等を含有していてもよい。
【0050】
図1に示すプリプレグ100は、例えば、樹脂組成物が溶剤に溶解又は分散しているワニスに繊維基材を含浸させ、80℃〜180℃の加熱によりワニスから溶剤を除去して、製造することができる。なお、加熱時間はゲル化の状態に応じて適宜定めることができる。また、プリプレグ100においては、ワニスに使用した溶剤が残存していてもよいが、ワニスに含まれていた溶剤のうち80質量%以上が除去されていることが好ましい。また、ワニスは、ワニス中の樹脂組成物の量が、ワニス中の硬化性樹脂組成物及び繊維基材の合計質量に対して30〜80質量%となるような比率で繊維基材に含浸することが好ましい。
【0051】
上記ワニスに用いられる溶剤としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物系溶剤、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は複数種を組み合わせて用いられる。
【0052】
図2は、本発明による積層板の一実施形態を示す部分断面図である。図2に示す積層板200は、2枚のプリプレグ100を積層して構成される。
【0053】
積層板200は、例えば、2枚のプリプレグを重ね合わせ、これを加熱して、プリプレグ100中の樹脂組成物を硬化させることによって得られる。このときの加熱は、130〜250℃、好ましくは150〜210℃で行う。また、加圧は、0.5〜20MPa、好ましくは1〜8MPaの範囲の圧力で行う。
【0054】
こうして得られる積層体は、繊維強化樹脂や絶縁板として用いることができる。
【0055】
図3は、本発明による金属箔張積層板の一実施形態を示す部分断面図である。図3に示す金属箔張積層板300は、1枚のプリプレグ100を加熱及び加圧して得られるシート状の基板30と、基板30の両面に密着して設けられた2枚の金属箔10とで構成される。
【0056】
金属箔張積層板300は、例えば、プリプレグ100の両面に金属箔を重ね、これを加熱及び加圧して、プリプレグ100中の硬化性樹脂組成物を硬化させることによって得られる。このときの加熱は、130〜250℃、好ましくは150℃〜210℃で行う。また、加圧は、0.5〜20MPa、好ましくは1〜8MPaの範囲の圧力で行う。
【0057】
金属箔10としては、銅箔やアルミニウム箔が一般的に用いられるが、銅箔が好ましい。銅箔としては、通常銅張積層板に用いられている、1〜200μmの厚さのものを使用できるが、金属箔張積層板の柔軟性を高めるために、その厚さは5〜18μmであることがより好ましい。あるいは、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、この両面に0.5〜15μmの銅層と10〜300μmの銅層を設けた3層構造の複合箔あるいはアルミニウムと銅箔とを複合した2層構造複合箔を用いることもできる。
【0058】
金属箔張積層板の実施形態は、上記のような態様に限定されない。例えば、金属箔張積層板は基板の片側のみに金属箔を設けてもよい。
【0059】
図4は、本発明による印刷回路板の一実施形態を示す模式断面図である。図4に示される印刷回路板400は多層印刷回路板であり、貫通孔411に導電体412が充填された絶縁基板410の両側に内層回路413a、bをそれぞれ配してなる内層回路基板415と、その内層回路基板415の両側に設けられた、貫通孔421a、bに導電体422a、bがそれぞれ充填された絶縁基板420a、bと、それら絶縁基板420a、bの外側に形成された回路423a、bと、を備える。
【0060】
印刷回路板400は、例えば以下のようにして形成される。まず内層回路基板415の両側に、本発明に係るプリプレグ100を積層し、加熱及び加圧により硬化して絶縁基板420a、bを形成する。次いで、絶縁基板420a、bに貫通孔421a、bを設け、そこに導電体422a、bを充填する。そして、絶縁基板420a、bの外側にパターン化された回路423a、bを形成して印刷回路板400を完成する。
【0061】
あるいは、内層回路基板415の両側に、本発明に係るプリプレグ100を積層し、貫通孔421a、bを設け、そこに導電体422a、bを充填する。更に、プリプレグ100の外側に金属箔を積層して、加熱及び加圧を施した後に、金属箔をエッチング等によりパターン化して回路423a、bを形成し、印刷回路板400を完成する。この場合、本発明のプリプレグ100は寸法安定性に優れているため、加熱及び加圧処理によっても貫通孔421a、bの孔径変化が抑制され、貫通孔421a、bと導電体422a、bとの間に空隙が生じ難くなる。
【0062】
本発明のプリプレグは、内層回路413a、bが設けられていない絶縁基板420a、bの表面に、隙間なく密着した状態で積層できる。また、同様の理由により、本発明のプリプレグを硬化して得られる絶縁基板420a、bについて、その外側の面は凹凸の抑制された平滑な面となる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
熱硬化性樹脂である「NC−3000H」(エポキシ樹脂、日本化薬株式会社商品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分20質量%)と、硬化剤である「EXB−9829」(日本化薬株式会社商品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分20質量%)と、2−フェニルイミダゾール0.2gとを混合し、これを全体が均一になるまで約1時間撹拌してこれらの成分の混合物を得た。それから、リン系化合物である「OP930」(クラリアントジャパン株式会社製商品名)20gをメチルエチルケトンに分散したスラリーを、上記混合物に加えて更に1時間撹拌した。そして、アクリルゴムである「HTR860P3」(エポキシ価3.05当量/kg、ナガセケムテックス株式会社製品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分60質量%)を更に加えて1時間撹拌し、続いて脱泡のため24時間室温(25℃)で静置した。こうして、アクリルゴムをベースにし、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、リン系化合物の含有率をリン原子換算で5質量%(リン濃度で5重量%)とした樹脂組成物を作製した。
【0065】
(実施例2)
熱硬化性樹脂である「DER−331L」(エポキシ樹脂、ダウケミカル株式会社商品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分20質量%)と、硬化剤である「LA−1356」(日本化薬株式会社商品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分20質量%)と、2−フェニルイミダゾール0.2gとを混合し、これを全体が均一になるまで約1時間撹拌してこれらの成分の混合物を得た。それから、リン系化合物である「OP930」(クラリアントジャパン株式会社製商品名)20gをメチルエチルケトンに分散したスラリーを、上記混合物に加えて更に1時間撹拌した。そして、アクリルゴムである「HTR860P3」(エポキシ価3.05当量/kg、ナガセケムテックス株式会社製品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分60質量%)を更に加えて1時間撹拌し、続いて脱泡のため24時間室温(25℃)で静置した。こうして、アクリルゴムをベースにし、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、リン系化合物の含有率をリン原子換算で5質量%(リン濃度で5重量%)とした樹脂組成物を作製した。
【0066】
(実施例3)
熱硬化性樹脂である「DER−331L」(エポキシ樹脂、ダウケミカル株式会社商品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分20質量%)と、硬化剤である「LA−1356」(日本化薬株式会社商品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分20質量%)と、2−フェニルイミダゾール0.2gとを混合し、これを全体が均一になるまで約1時間撹拌してこれらの成分の混合物を得た。それから、リン系化合物である「HCA−HQ」(三光化学工業株式会社製商品名)35gをメチルエチルケトンに分散したスラリーを、上記混合物に加えて更に1時間撹拌した。そして、アクリルゴムである「HTR860P3」(エポキシ価3.05当量/kg、ナガセケムテックス株式会社製品名)のメチルエチルケトン溶液80g(樹脂固形分60質量%)を更に加えて1時間撹拌し、続いて脱泡のため24時間室温(25℃)で静置した。こうして、アクリルゴムをベースにし、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、リン系化合物の含有率をリン原子換算で5質量%(リン濃度で5重量%)とした樹脂組成物を作製した。
【0067】
(比較例1)
熱硬化性樹脂である「NC−3000H」(エポキシ樹脂、日本化薬株式会社商品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分20質量%)と、硬化剤である「LA−1356」(日本化薬株式会社商品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分20質量%)と、2−フェニルイミダゾール0.2gとを混合配合し、これを全体が均一になるまで約1時間撹拌してこれらの成分の混合物を得た。それから、アクリルゴムである「HTR860P3」(エポキシ価3.05当量/kg、ナガセケムテックス株式会社製品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分60質量%)を上記混合物に更に加えて1時間撹拌し、続いて脱泡のため24時間室温(25℃)で静置した。こうして、アクリルゴムをベースにし、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、リン系化合物の含有率をリン原子換算で0質量%(リン濃度で0重量%)とした樹脂組成物を作製した。
【0068】
(比較例2)
熱硬化性樹脂である「NC−3000H」(エポキシ樹脂、日本化薬株式会社商品名)のメチルエチルケトン溶液50g(樹脂固形分20質量%)と、硬化剤である「EXB−9829」(日本化薬株式会社商品名)のメチルエチルケトン溶液50g(樹脂固形分20質量%)と、2−フェニルイミダゾール0.2gとを混合し、これを全体が均一になるまで約1時間撹拌してこれらの成分の混合物を得た。それから、リン系化合物である「OP930」(クラリアントジャパン株式会社製商品名)40gをメチルエチルケトンに分散したスラリーを、上記混合物に更に加えて1時間撹拌した。そして、アクリルゴムである「HTR860P3」(エポキシ価3.05当量/kg、ナガセケムテックス株式会社製品名)のメチルエチルケトン溶液100g(樹脂固形分60質量%)を更に加えて1時間撹拌し、続いて脱泡のため24時間室温(25℃)で静置した。こうして、アクリルゴムをベースにし、樹脂組成物中の固形分全量を基準として、リン系化合物の含有率をリン原子換算で15質量%(リン濃度で15重量%)とした樹脂組成物を作製した。
【0069】
(プリプレグ及び銅張積層板の作製)
上記実施例及び比較例で調製した樹脂組成物に、それぞれ、厚さ28μmのガラスクロス「1037」(旭シュエーベル株式会社製、商品名)を含浸後、120℃で20分間加熱することにより溶媒を除去して、プリプレグを得た。得られたプリプレグの両面に、厚さ18μmの電解銅箔「F2−WS−18」(古河サーキットフォイル株式会社製、商品名)をその接着面がプリプレグと合わさるように重ねた積層体を、200℃で30分間、圧力4MPaの真空プレス条件で加熱及び加圧して、両面銅張積層板を作製した。
【0070】
(評価方法)
作製した両面銅張積層板を用い以下に示す評価を行った。
【0071】
<銅箔引き剥がし強さ>
両面銅箔張積層板を5mm幅にエッチングし、一定速度(50mm/分)で、90℃方向に銅箔を引き剥がしたときの最大荷重を銅箔引き剥がし強さとした。結果を表1に示した。
【0072】
<はんだ耐熱性>
プレッシャークッカを用いて121℃、1時間、2.1atmの条件下で吸湿させた両面銅箔張積層板を、260℃のはんだ浴に浸漬し、ふくれや剥がれ等の異常が認められるまでの時間を測定した。結果を表1に示した。
【0073】
<難燃性>
両面銅張積層板から全面エッチングにより銅箔を除去して、プリプレグを加熱及び加圧して形成される積層板の試料を作製した。この試料について、UL−94の垂直燃焼試験若しくは薄手材料垂直燃焼試験を行った。この試験において、残炎及び残燼の時間が10秒未満、且つ、燃焼距離が125mm未満であるときにV−0、VTM−0と判定した。結果を表1に示した。
【0074】
<可とう性>
可とう性の評価は以下のようにして行った。まず、作製した銅張積層板の銅箔を全面エッチングした積層板から、幅10mm×長さ100mmのサイズの矩形の試験片を切り出した。次いで、この試験片を0.50mm径のピンを挟んで台上に置いた。そして、ピンが挟まれている部分の試験片上でローラを1往復させることによって試験片を局所的に折り曲げたときの、クラックの発生の有無を観察し、以下の基準に基づいて評価した。結果を表1に示した。
○:異常なし
△:一部クラックにより白化
×:全面クラックにより白化
【表1】



【0075】
表1に示したように銅箔引き剥がし強さは、実施例1〜3で作製したどのプリプレグを用いた銅張積層板でも、1.0kN/mであった。吸湿はんだ耐熱性を測定した結果は、5分間以上ふくれや剥がれ等の異常が見られなかった。また、銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去した積層板は可とう性に富み、90度に折り曲げることが可能であった。さらに、実施例1〜3においてはUL−94の垂直燃焼試験もしくは薄手材料垂直燃焼試験において、残炎、残燼時間が10秒未満であり、かつ燃焼距離は125mm未満であり、難燃性はV−0、VTM−0と評価された。
【0076】
それに対しリン系化合物の含有率が0質量%の比較例1では難燃性が低く、UL−94の燃焼試験においてHBとなった。またリン系化合物の含有率がリン原子換算で15質量%である比較例2では可とう性が低く、積層板を折り曲げた際に破断が見られ、更に吸湿はんだ耐熱性の試験においては、ふくれや剥がれが見られた。
【0077】
以上より、本発明によれば、金属箔や繊維基材との接着性、寸法安定性、耐熱性に十分優れ、かつハロゲンフリーで難燃性を示すプリプレグ、並びに、そのプリプレグを用いた積層板、金属箔張積層板、及び折り曲げ可能で電子機器の筐体内に高密度に収納可能な印刷回路板を提供できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本発明によるプリプレグの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明による積層板の一実施形態を示す部分断面図である。
【図3】図3は、本発明による金属箔張積層板の一実施形態を示す部分断面図である。
【図4】図4は、本発明による印刷回路板の一実施形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0079】
10…金属箔、30…基板、100…プリプレグ、200…積層板、300…金属箔張積層板、400…印刷回路板、410…絶縁基板、411、421a、421b…貫通孔、412、422a、422b…導電体、413a、413b、423a、423b…回路、415…内層回路基板、420a、420b…絶縁基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物に繊維基材を含浸させて得られるプリプレグであって、
前記樹脂組成物が、アクリルゴムと、熱硬化性樹脂と、リン系化合物とを含み、
前記樹脂組成物中の固形分全量を基準として、前記リン系化合物の含有率が、リン原子換算で0.1〜10質量%である、プリプレグ。
【請求項2】
前記アクリルゴムは、エポキシ価が2〜18当量/kgとなる割合でエポキシ基を有している、請求項1記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記繊維基材の厚さが5〜100μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のプリプレグを所定枚数重ねて加熱することにより前記樹脂組成物を硬化して得られる、積層板。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のプリプレグを加熱及び加圧して得られる基板と、該基板の片側又は両側に設けられた金属箔と、を備える金属箔張積層板。
【請求項7】
請求項6記載の金属箔張積層板に回路を形成して得られる印刷回路板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−137942(P2006−137942A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297859(P2005−297859)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】