説明

プレート状物体のウェット処理用装置

プレート状物体を保持、回転させるスピンチャックと、該プレート状物体の該スピンチャックに面する側に非回転流体ノズルを通して流体を導く流体供給手段と、を具備するプレート状物体のウェット処理用の装置が開示されるが、該スピンチャックは該プレート状物体を該プレート状物体のエッジで保持する手段と、該プレート状物体のスピンチャックに面する側に向かうようガスを導くガス供給手段と、を備えており、該ガス供給手段は該プレート状物体と該スピンチャックの間にガスクッションを提供するために該スピンチャックと共に回転するガスノズルを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単一のプレート状物体のウェット処理用装置に関しており、該装置は該プレート状物体を保持、回転させるためのスピンチャックを具備しており、該スピンチャックは該プレート状物体を該プレート状物体のエッジで保持する手段と、該プレート状物体の該スピンチャックに面する側に向かってガスを導くガス供給手段と、を備えており、該ガス供給手段が該プレート状物体と該スピンチャックの間にガスクッションを設けるために、該スピンチャックと共に回転するガスノズルを有する、装置に関する。
【0002】
用語ウェット処理は基本的に、材料をクリーン化又はエッチング又は処理するために、該プレート状物体をウェット化する過程を意味する。
【0003】
もし下記で、用語、ウエーハが使われる場合、この様なプレート状物体を意味する。
【0004】
この様なプレート状物体は半導体ウエーハ、又はコンパクトディスクのみならず、フラットパネルディスプレー又はレティクルの様な多角形物体であってもよい。
【背景技術】
【0005】
特許文献1は、プレート状物体をウェット処理するための装置を開示しており、該装置は保持及び回転用スピンチャックを具備しており、該スピンチャックは該プレート状物体を該プレート状物体のエッジで保持する手段と、該プレート状物体の該スピンチャックに面する側に向かってガスを導くガス供給手段と、を備えており、該ガス供給手段が該プレート状物体と該スピンチャックの間のガスクッションを設けるために、該スピンチャックと共に回転するガスノズルを有する。この様なチャックはベルヌーイ(Bernoulli)チャックとして普通知られており、該プレート状物体が、ベルヌーイ効果と呼ばれる空力的逆説により発生される真空により該チャックの方へ引かれるからである。この様なベルヌーイチャックは半径方向に移動可能なピンを有してもよく、該ピンは、例え該ベルヌーイ効果を提供する圧縮ガスが無くても該プレート状物体を確実に保持する。
【0006】
代わりに、ベルヌーイチャックは、該プレート状物体が上に静止する移動不可能なピンを有してもよい(好ましくは、機械的接触が該プレート状物体を傷つけない該プレート状物体のエッジ領域上がよい)。この場合、該プレート状物体は該ピンの方へ引かれ、ベルヌーイ効果により確実に保持される。
【0007】
特定の応用では、該プレート状物体の該チャックに面する側に液体を注ぐことも有利である。プレート状物体の該チャックに面する側の方へのガス供給部を有するスピンチャック(いわゆるベルヌーイチャック)は、該プレート状物体の該チャックに面する側の無粒子濯ぎ用の液体供給ノズルを有しない。更に、プレート状物体の両側の液体処理用に設計された既知のスピンチャックは、該プレート状物体の該スピンチャックに面する側を処理液体によるウェット化から保護するために、ガスクッション提供用のガス給気手段を有しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,513,668号明細書
【特許文献2】米国特許第4,903,717号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明は、目的の充足を、下記のスピンチャック及び流体供給手段を具備する単一のプレート状物体のウェット処理用装置を提供することに依るものであり、
該スピンチャックは、該プレート状物体を該プレート状物体のエッジで保持する手段と、該プレート状物体の該スピンチャックに面する側の方へガスを導くガス供給手段と、を備える、該プレート状物体の保持、回転用スピンチャックであって、該ガス供給手段が該プレート状物体と該スピンチャックとの間にガスクッションを設けるために該スピンチャックと共に回転するガスノズルを有しており、
該流体供給手段は、該プレート状物体の該スピンチャックと面する側に、非回転流体ノズルを通して流体を導く手段である。
【0010】
該提供される装置は、該プレート状物体の該チャックに面しない第1の側にディスペンスされる液体が、該プレート状物体の該チャックに面する第2の側に流れ得ない利点を有する。この保護は該スピンチャックと該プレート状物体の間のガスクッションにより実行される。同時に、該提供される装置は、流体供給ライン用の回転部分(回転ジョイント又は回転ユニオンの様な)を完全に避けることにより、無粒子に保たれ得るパイプを通る流体(液体が好ましい)での該プレート状物体の該第2の側の処理を見越している。
【0011】
該ガス供給手段は回転軸線に対し環状に配置された複数のガスノズルを有してもよい。しかしながら、該ガスノズルはランダムに配置されてもよい。
【0012】
代わりに、或いは追加して、該ガス供給手段は環状のガスノズルを有してもよく、該ノズルは該プレート状物体を支持するために均一でスムーズなガスクッションを可能にする。
【0013】
好ましい実施例では、該ガスノズルは該スピンチャックの部分である回転ガス分配室を通して給気される。該ガス分配室は該スピンチャックの軸線の周りに環状に配置され、該スピンチャックの中央孔に向かって内方へ開いているのが有利である。
【0014】
好ましい実施例では、該ガス分配室は非回転ガス給気部を通して給気される。このガス給気部は単一のガスノズルを有し、該ノズルは該中央非回転ノズルヘッドから該回転ガス分配室内へ半径方向にガスを供給する。
【0015】
好ましくは、該非回転ガス給気部はガス分配室(環状形状が好ましい)と、該回転ガス分配室への給気用の、複数の環状配置されたノズル又はスリット形環状ノズルと、を有するのがよい。これはガス流れの高度に均一な軸対称分配を可能にする。
【0016】
好ましい実施例では、該非回転流体ノズルと非回転ガス給気部とは、該スピンチャックの中央を通して軸方向に突出するノズル組立体の要素である。
【0017】
有利なことに、該スピンチャックは該プレート状物体に平行なプレートを有し、該プレートは該非回転流体ノズルが通る中央孔を有する。もし、該プレートと該ノズルの間のギャップが0.5mm以下(好ましくは、0.2mm以下がよい)に選択されるなら、該ギャップを通して殆どガスは漏れず、ガスは回転ガスノズル又は複数回転ガスノズルを通って流れる。
【0018】
該スピンチャックは固定保持要素(摩擦力で該プレート状物体を保持する)と一緒に作動することも出来るが、好ましくは、該スピンチャックは該プレート状物体をそのエッジで把持し、該プレート状物体が該スピンチャックから外される時、該プレート状物体を解放する移動把持要素を有するのがよい。これは流体供給(例えば液体供給)がオンに切り替えられた時、該ガスクッションを提供するガスが閉止されるか又は顕著に減じられ得る
利点を有する。従って、ガスクッションを提供するガスが処理流体(例えば、液体)に干渉しないことが可能である。
【0019】
1実施例では、本装置は少なくとも2つの非回転流体ノズル、例えば、該プレート状物体の該スピンチャックに面する面に向かって液体をディスペンスする1つと、ガス(例えば、乾燥用ガス)をディスペンスする1つ、を有する。
【0020】
もう1つの実施例では、非回転流体ノズルは液体源に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のウェット処理装置の詳細を断面斜視図で示す。
【図2】本発明のウェット処理装置の詳細を断面図で示す。
【図3】非回転ノズルヘッドの詳細図を示す。
【実施例1】
【0022】
図1,図2及び図3は本発明の1実施例のウェット処理装置1の核心の種々の詳細な図面を示す。
【0023】
該装置はウエーハWを保持、回転させるスピンチャック3と、非回転ノズルヘッド20を有する。該スピンチャックは回転支持プレート41上に設置されるベースボデイ10を有する。
【0024】
該支持プレート41は、中空シャフトモーター40の部分である回転中空シャフト42(ローター)に結合される。該中空シャフトモーターは外側ステーター40と内側ローターとを有する。該ステーター40はフレームプレート43と結合用部分44とを有する機械フレーム部分43,44に結合される。円柱状非回転ノズルヘッド20は該結合部分44に静的に結合される。
【0025】
該ノズルヘッド20は従って該中空シャフト42及び支持プレート41を通過し、該中空シャフト42の内壁に対し小さいギャップ(0.05−0.5mm)を残す。該中空シャフト42とノズルヘッド20の間のこのギャップは環状ダクト47でシールされ、該ダクトは吸引ライン46を通して吸引デバイス(示されてない)に接続される。
【0026】
回転支持プレート41上に設置された該スピンチャックのベースボデイ10は内側孔を有し、該孔はノズルヘッド20に対し小さなギャップ(0.05−0.5mm)を残す。
【0027】
カバープレート12はベースボデイ10上に設置され、それにより、内方へ開いたガス分配室34が作られる。該カバープレート12は該カバープレートに設置される中央プレート11を有する。該中央プレート11は、ノズルヘッドの形状に対応するよう形作られ、該中央プレートは該ノズルヘッドに接触せず、該ノズルヘッド20と該中央プレート11の間に0.05及び0.5mmの範囲の距離を有する小さなギャップG2を残す。該中央プレート11の内側孔はノズル26と対応し、0.05及び0.5mmの範囲の距離dを有するギャップG3を残す。
【0028】
ガス分配室34の底部では、プレート9がベースプレート10に設置され、ベースプレート10とプレート9の間にツースギヤ16用の室を残す。該ツースギヤ16はベアリング17によりベースプレート10に回転可能に結合される。該ツースギヤ16用の室はか
くしてガス分配室34への接続部を有しない。
【0029】
該スピンチャック3は偏心設置された把持用ピン13を有する6つの円柱形保持用要素14を備える。該把持用ピン13はツースギヤ16により該保持用要素の円柱軸の周りで回転される。中空シャフトモーター40で該ベースボデイを僅かに回転させる間に、該ツースギヤ16は、垂直に移動可能なロッド18(該ベースボデイ内の示されてないスリットを通して貫入する)により該ツースギヤを保持することにより、該スピンチャックのベースボデイ10に対し回転させられる。それにより該円柱状保持用要素14は回転され、該把持用ピン13は開位置に替わる。該ツースギヤ16は保持要素14の部分であるツースギヤ15を駆動する。ウエーハが把持用ピン13内で、ガスノズル36を通して提供されるガスクッション上に置かれた後、該ベースボデイは戻るよう回り、該ツースギヤは、ばね(示されてない)により駆動され閉位置へ替わる。それにより該把持用ピン13はウエーハのエッジに接触し、該ウエーハを確実に把持する。
【0030】
ノズルヘッド20は3本のライン(流体ライン24,ガスライン28,及び真空ライン46)を有し、該ラインは該スピンチャックの回転軸線と実質的に平行である。流体ライン24は、該スピンチャックに面するウエーハ面の処理用の流体ノズル26へ通じる。
【0031】
ガスライン28は該ガスクッション用のガスを提供するガス供給ラインの非回転部の部分である。該ノズルヘッドの上部部分で該ガスライン28は4つの枝29に分かれる。ガスラインの枝29は環状の非回転分配室30内で終了する。該非回転ガス分配室30は12個の開口部32を通じて回転ガス分配室34内へ開いている。
【0032】
環状に配置された複数のガスノズル36は回転軸線に対し同軸に配置される。各ガスノズルは該回転軸線に対し約30°の角度αで外方へ傾斜している。
【0033】
該非回転ガス分配室30から回転ガス分配室34内へ供給されたガスの80%より多くが、ウエーハとカバープレート12の間のギャップ38内のガスクッションを提供するために該開口部36を通してディスペンスされる。
【0034】
該回転ガス分配室34内へ導入されたガスの残りは該非回転ノズルヘッド20とスピンチャック3の間のギャップG1,G2,及びG3をパージするため使われる。
【0035】
G1はノズルヘッド20と該スピンチャックのベースボデイ10との間のギャップである。ギャップG1内の導入されたガスは、吸入ライン46に接続された環状ダクト47を通して除去される。
【0036】
G2はノズルヘッド20の上部部分と中央プレート11の下側との間のギャップであり、G3はノズル26と該中央プレート11の中央孔との間のギャップである。
【0037】
スピニング飛散した液体を集めるために、該スピンチャックの回りに同心に収集室(環状ダクト−示されてない)が配置される。種々の垂直に配置された環状ダクト内へ液体をスピニングするために静止フレームと該収集室が相互に対し軸方向にシフトされてもよい(例えば特許文献2で開示される様に)。
【0038】
下記では、半導体ウエーハの液体処理用の過程を説明する。
【0039】
ウエーハはガスノズル36を通して導入されるガスにより提供されるスピンチャックのガスクッション上に置かれる。該ウエーハは該ガスクッション上で自由に浮遊する。その後把持用ピン13は閉じられ、該ウエーハのエッジに接触することにより該ウエーハを保
持する。
【0040】
次いで、該チャックは回転し、処理液(エッチング液)は液体ディスペンスノズル50を通して該ウエーハの頂部面上にディスペンスされる。該液体は該ウエーハのエッジの方へ半径方向に流れ、ウエーハからスピニング飛散させられる。該液体は1部分が該ウエーハのエッジの周りを覆い、該ウエーハ下面の周辺領域をウェット化させる。
【0041】
その後濯ぎ液体がウエーハの頂部面上にディスペンスされ、それにより該ウエーハの頂部面と、下面の周辺領域と、から該処理液体を追い出す。しかしながら、該処理液体の残余部分は該下面上に残る。
【0042】
頂部面濯ぎ時これらの残余部分を除くために、該下面も又該非回転ノズル26を通して濯がれる。もし同じ濯ぎ液体が上下から使われるなら、これらの液体は一緒に集められ、直後の再利用のためにリサイクルされてもよい。濯ぎ用液体がノズル26を通してディスペンスされる間、ガスクッション用のガス流れは残る最小値まで減じられるので、液体はノズル36内へ又はギャップG3内へ流れることはない。しかしながら、該ガス流れは、該ウエーハの下面を横切って半径方向に流れる濯ぎ用液体が妨げられないよう、充分少なく選択されるべきである。言い換えれば−該濯ぎ用液体は該濯ぎ過程時ウエーハの下面を充分カバーすべきである。
【0043】
濯ぎ過程後、乾燥過程が行われ、乾燥用ガス(例えば、窒素又は窒素/2−プロパノールの混合物)が、ノズル26を通して下から、ノズル50を通して上から、供給される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のプレート状物体のエッジで該プレート状物体を保持する手段と、スピンチャックに面するプレート状物体の側方に向かってガスを導き、該プレート状物体とスピンチャックの間にガスクッションを設けるために該スピンチャックと共に回転するガスノズルを有するガス供給手段とを備える、プレート状物体を保持して回転するスピンチャックと、
該プレート状物体の該スピンチャックに面する側に、非回転流体ノズルを介して流体を導く流体供給手段と、を具備する単一のプレート状物体のウェット処理用装置。
【請求項2】
該ガス供給手段が複数のガスノズルを有する請求項1記載の装置。
【請求項3】
該複数のガスノズルが回転の軸線に対して環状に配置されている請求項2記載の装置。
【請求項4】
該ガス供給手段が環状のガスノズルを有する請求項1記載の装置。
【請求項5】
該ガスノズルが、該スピンチャックの一部分である回転ガス分配室を通して供給を受ける請求項1記載の装置。
【請求項6】
該ガス分配室が非回転ガス給気部を通して給気される請求項5記載の装置。
【請求項7】
該非回転ガス給気部がガス分配室と、該回転ガス分配室に給気するために、複数の環状配置されたノズル又はスリット形環状ノズルと、を有する請求項6記載の装置。
【請求項8】
該非回転流体ノズルと該非回転ガス給気部とが、該スピンチャックの中央を軸方向に通過するノズル組立体の要素である請求項7記載の装置。
【請求項9】
該スピンチャックが該プレート状物体に平行なプレートを備え、該プレートは該非回転流体ノズルが通過する中央孔を有する請求項1記載の装置。
【請求項10】
該スピンチャックが、該プレート状物体を該プレート状物体のエッジで把持する移動可能な把持用要素を備える請求項1記載の装置。
【請求項11】
少なくとも2つの非回転流体ノズルを有する請求項1記載の装置。
【請求項12】
非回転流体ノズルが液体源に接続される請求項1記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−537442(P2010−537442A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522290(P2010−522290)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060375
【国際公開番号】WO2009/027194
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(507161226)ラム・リサーチ・アクチエンゲゼルシヤフト (18)
【氏名又は名称原語表記】Lam Research AG
【Fターム(参考)】