説明

ベントバルブ

【課題】
真空チャンバ内のパーティクルの巻き上げ防止とスループットの低下防止を実現でき、操作および構成が簡単で製造コストも低いベントバルブを提供する。
【解決手段】
ケーシング11内の内部空間12に弁体21を設けると共に、スプリング31によって弁体21を全開位置に向かって付勢する。スプリング31に抗して弁体21をその閉鎖位置に向かって変位させるエアシリンダ51を設ける。弁体21が閉鎖位置にあり貫通孔24が閉鎖されていると、入口通路16と出口通路17との連通は遮断され、貫通孔24が開放されると連通する。閉鎖位置以外では、入口通路16と出口通路17は、貫通孔24と、ケーシング11の内面11aのテーパ溝13により連通する。テーパ溝13の断面積は、弁体21の閉鎖位置からの変位量の増加に応じて増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントバルブに関し、さらに言えば、半導体装置、液晶表示装置等の製造工程などで用いられる各種の真空装置(例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、PVD(Physical Vapor Deposition)装置、真空蒸着装置、プラズマエッチング装置など)において、真空(負圧)状態にある真空チャンバにガス(空気や不活性ガス)を導入して、当該真空チャンバ内の圧力を真空状態から大気圧にほぼ等しい状態(以下、大気圧状態という)に戻す際に、そのガスの流量(流動状態)を制御するために好適に使用されるベントバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、真空チャンバ内の圧力を所定の真空(負圧)状態にしたり、大気圧状態にしたりすることが多い。例えば、プラズマエッチング装置の半導体ウェーハ搬入側および半導体ウェーハ搬出側にそれぞれ設けられるロードロック室では、半導体ウェーハの搬入時にガス(例えば窒素ガスや空気)が導入され、大気圧状態に設定される。そして、その大気圧状態で当該ロードロック室の外部から半導体ウェーハが搬入され、その後、当該ロードロック室内のガスが排出されて所定の真空状態に達すると、当該半導体ウェーハは当該ロードロック室から搬出され、所定の真空状態に保持されているエッチング処理室に移される。半導体ウェーハの搬出が完了すると、当該ロードロック室に再びガスが導入されて大気圧状態に設定され、その状態で外部から半導体ウェーハが搬入される。搬入が完了すると、再び当該ロードロック室内のガスが排出されて所定の真空状態にされ、半導体ウェーハはその状態で当該ロードロック室から搬出されてエッチング処理室に移される。このように、真空チャンバは、半導体ウェーハの搬入・搬出の度に何度も真空状態と大気圧状態に切り替えられるのである。
【0003】
このように、ロードロック室について真空状態と大気圧状態の切り替えを行うのは、ロードロック室よりも容積の大きいエッチング処理室を常に所定の真空状態に保持できるようにして、エッチング処理室自体について大気圧状態と真空状態の切り替えを行う場合よりもスループットを向上させるためである。
【0004】
ところで、真空状態にあるロードロック室にガスを導入する際には、例えば窒素ガスを使用する場合は、窒素ガスを充填した容器(つまり窒素ガス供給源)(その圧力は大気圧に等しくされる)を適当なバルブを介してロードロック室に接続し、大気を使用する場合は、適当なバルブを介してロードロック室を空気(大気)に連通させる(つまり大気開放する)。その場合、導入初期にはガス供給源側の圧力(大気圧)とロードロック室の圧力との差が大きいため、ニードルバルブのように流路断面積が一定のバルブを用いると、窒素ガスまたは空気(以下、両者を含めて「ガス」という)は高流速・大流量で流入する。ガスの流入によってロードロック室の圧力が上昇してくると、ガス供給源側との圧力差が徐々に減少するため、それに応じて徐々にガスの流速が低下し、流量が減少する。このため、導入初期において、ロードロック室内の底部や側壁等に滞留していたパーティクル(微細なゴミ)が巻き上げられやすい。パーティクルがこうして巻き上げられると、それらパーティクルが再び滞留するまでエッチング処理を開始できないので、ガスの高流速・大流量の導入によってエッチング処理の歩留まりが低下することになる。
【0005】
ガスの導入初期におけるパーティクルの巻き上げを抑制または低減するには、ガスの流速を下げて流量を低減させればよいが、そうすると大気圧状態にするのにきわめて長時間を要するため、スループットの低下につながる。そこで、導入初期にはガスの流量を少なくしておき、その後これを増加させることによって、ロードロック室内のパーティクルの巻き上げを防止すると同時に、スループットの低下を防止する方法が提案されている(特許文献1(特開平3−283612号公報)を参照)。
【0006】
この方法を実現するため、特許文献1では次のような構成のリークバルブが使用されている。すなわち、内部にガス流路を有するバルブ本体と、前記ガス流路の途中に設けられたプランジャと、前記ガス流路の外側にこれを囲むように装着されたコイルとを備え、前記コイルへの電流の供給により生じる電磁力を利用して前記プランジャを前記ガス流路に沿って変位させ、もって前記ガス流路の隙間の大きさを変えるようにしたリークバルブである。このリークバルブによれば、前記コイルへ供給する電流量を調整することにより、前記プランジャの変位量が変わると共に前記隙間の大きさが変わるので、導入初期に前記ガス流路を通過するガスの流量を小さくし、その後これを大きくして、導入終期にはその流量を再び小さくする、という制御が可能である。
【0007】
なお、上記説明は、半導体装置の製造工程で使用されるプラズマエッチング装置の真空チャンバについて述べているが、それ以外の任意の真空装置についても同様に適用されることは言うまでもない。
【0008】
上記のような流量制御を可能とする他のバルブとしては、特許文献2(特許第2582993号公報)に開示されたスローベントバルブ、特許文献3(特許第2852843号公報)に開示されたスローベントバルブ、そして特許文献4(特開平7−145872号公報)に開示された真空排気バルブがある。
【0009】
特許文献2のスローベントバルブは、「真空ポンプにより真空状態とされる密閉容器とガス供給源とを連通する管路に設けられ、真空状態の密閉容器内にガスを供給して大気圧にするリークバルブと、リークバルブへの通電を開始した後時間経過に応じて、リークバルブの弁開度を所定開度まで徐々に変化させる弁開度制御手段とを有するスローベントバルブにおいて、前記リークバルブと前記ガス供給源との間の管路に付設されるガス開閉弁を有すると共に、前記リークバルブがノーマルオープン型リークバルブであることを特徴とするスローベントバルブ」である(請求項1参照)。つまり、このスローベントバルブは、密閉容器(真空チャンバ)とガス供給源とを連通する管路に、弁開度制御手段によって弁開度を所定開度まで徐々に変化させるようにしたノーマルオープン型リークバルブと、ガス開閉弁とを組み合わせて設けたものである(図1、図4参照)。
【0010】
特許文献2のスローベントバルブでは、ガス導入時には、まず前記リークバルブを全閉状態にし、その後1〜2秒経過してから前記ガス開閉弁を全開状態にする。その後、前記リークバルブに通電して所定時間で所定開度となるようにした後、その開度を保持する。密閉容器(真空チャンバ)の圧力が大気圧になったことを検知すると、前記リークバルブを全開状態にし、前記ガス開閉弁を全閉状態にする。このようにして、導入初期のガス流量を小さくし、その後これを大きくすることにより、ロードロック室内のパーティクル巻き上げ防止とスループット低下防止を実現する。
【0011】
特許文献3のスローベントバルブは、「ノーマルクローズタイプのメタルダイヤフラム弁に於いて、メタルダイヤフラムを押す弁棒を作動するアクチュエータが、弁全開用シリンダーとスローリーク用シリンダーとより成り、弁全開用シリンダーは弁棒の中間外周に一体に設けられたピストンと、このピストンをメタルダイヤフラム側に付勢するスプリングとを内蔵しており、スローリーク用シリンダーは弁全開用シリンダーに連設されていて、弁棒の上端部外周に摺動可能に設けられ弁棒上端に固定された止めリングに抜け止めされたリーク用ピストンと、このリーク用ピストン上に設けられたキャップ状のカム受けベースと、このカム受けベース上で上下に揺動可能に配されたカムと、このカムの先端に係合して前記リーク用ピストンをメタルダイヤフラム側に付勢するスプリングと、前記カムの揺動支点ボールとを内蔵し、且つ揺動支点ボールを進退するアジャスターと、カムの先端上面を押える調整摘みを備えてなることを特徴とするスローベントバルブ」である(請求項1参照)。
【0012】
特許文献3のスローベントバルブでは、ガス導入時には、まず前記スローリーク用シリンダーに圧縮空気を供給して前記リーク用ピストンを変位させることにより、前記メタルダイヤフラムを僅かに開く。こうして、ガスを真空チャンバ内にスローリークさせる。そして、真空チャンバ内の圧力が200〜400Torrまで上昇すると、前記弁全開用シリンダーに圧縮空気を供給して前記ピストンを変位させることにより、当該ピストンと一体の前記弁棒を前記カム受けベースに当接するまで変位させ、もって当該スローベントバルブを全開にする。こうして、大気圧となるまでガスを真空チャンバ内に導入する(段落0007参照)。このようにして、導入初期のガス流量を小さくし、その後これを大きくすることにより、真空チャンバ内のパーティクル巻き上げ防止とスループット低下防止を実現する。
【0013】
特許文献4の真空排気バルブは、「真空室と真空排気ポンプとを連結する真空排気配管経路に取り付けられる真空排気バルブにおいて、前記バルブ内には前記真空排気配管内を流れる気体流量に応じて管路抵抗を可変する手段を備えていることを特徴とする真空排気バルブ」である(請求項1参照)。前記可変する手段は、好ましくは、貫通穴を有する可動な遮蔽板と前記遮蔽板を保持するバネとから構成される(請求項2参照)。また、好ましくは、前記遮蔽板を保持しているバネが縮むに従い、前記内部空胴部と遮蔽板との間隙が次第に小さくなるような内壁を前記内部空胴部が有する(請求項3参照)。
【0014】
特許文献4の真空排気バルブは、その請求項1の記載から明らかなように、真空室(真空チャンバ)と真空排気ポンプとを連結する経路に取り付けられるものであり、真空室(真空チャンバ)から排気されるガスの流量を制御する。これに対し、上述した特許文献1のリークバルブと特許文献2および3のスローベントバルブは、真空チャンバとガス供給源とを連結する経路に取り付けられるものであり、真空チャンバへ供給(導入)されるガスの流量を制御する。したがって、特許文献4のバルブは、この点で特許文献1〜3のバルブとは明らかに異なっている。
【0015】
さらに、上記のような流量制御を可能とする他の従来技術として、図12に示す方法がある。図12の方法では、真空チャンバ(例えばロードロック室)101にガスを供給するための給気管103が、第1分岐管103aおよび第2分岐管103bに分岐されており、第1分岐管103aには大口径ベントバルブ104aが設置され、第2分岐管103bには小口径ベントバルブ104bが設置されている。真空チャンバ101には、第1分岐管103aおよび第2分岐管103bのいずれか一方(または双方)を通じて不活性ガスが導入される。
【0016】
真空チャンバ101には、さらに、給気管103の反対側に排気管107が設置されている。排気管107の端部には、真空チャンバ101の内部に存在するガスを排出して所望の真空状態を生成するための真空ポンプ106が接続されている。排気管107の途中には、排気管107から排出されるガスの流量を制御するための真空バルブ105が設置されている。なお、符号102は、真空チャンバ101内に載置されたワーク(例えば半導体ウェーハ)である。
【0017】
図12の構成では、真空チャンバ101内の圧力が例えば30kPaになるまでは、小口径ベントバルブ104bのみを開放し、第2分岐管103bのみを通じてガスを真空チャンバ101内に導入する。その後、小口径ベントバルブ104bを閉鎖すると共に(あるいは小口径ベントバルブ104bを開放したままで)、大口径ベントバルブ104aを開放し、第1分岐管103aのみを通じて(あるいは第1分岐管103aと第2分岐管103bの双方を通じて)ガスを真空チャンバ101内に導入する。このように、口径(流量)の異なる二つのベントバルブ104aと104bを用いて、流量を段階的に変えながらガスを真空チャンバ101内に導入するものである。
【0018】
上述したように、パーティクルの巻き上げを抑制しながら短時間で真空状態から大気圧状態にするには、導入初期とその後におけるガスの流量を連続的に変化させるのが好ましい。しかし、それを単一のベントバルブで実現するのは容易でないため、図12の方法が採用される。したがって、この方法は、流量の異なる二つのベントバルブ104aおよび104bを組み合わせることにより、便宜的にこれと類似の流量制御を実現しようとするものである。
【特許文献1】特開平3−283612号公報
【特許文献2】特許第2582993号
【特許文献3】特許第2852843号
【特許文献4】特開平7−145872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献1に開示されたリークバルブは、コイルへの電流供給により生じる電磁力を利用してガス流路に配置されたプランジャの変位量を調整し、それによってガス流路の隙間の大きさを変えるようにしているので、プランジャの変位量(ガス流路の隙間の大きさ)の制御が安定しない。また、コイルへ供給される電流量の制御によって、プランジャが所望の変位量を持つように電磁力を精密に制御することは、容易ではない。このため、特許文献1のリークバルブを用いて同文献に記載された流量制御を実現するのは容易ではないという問題がある。
【0020】
特許文献2のスローベントバルブは、特許文献1に記載された流量制御を実現することは可能であるが、ノーマルオープン型リークバルブとガス開閉弁とを組み合わせた構成を持っているから、構成が複雑であると共に製造コストが高くなるという問題がある。
【0021】
特許文献3のスローベントバルブは、特許文献1に記載された流量制御を実現することは可能であるが、ノーマルクローズタイプのメタルダイヤフラム弁において、メタルダイヤフラムを押す弁棒を作動するアクチュエータを、弁全開用シリンダーとスローリーク用シリンダーとから構成したものであるから、特許文献2のスローベントバルブと同様に、構成が複雑であると共に製造コストが高いという問題がある。
【0022】
特許文献4の真空排気バルブは、特許文献2および3のスローベントバルブに比べれば、構成が簡単であるが、この真空排気バルブは真空室(真空チャンバ)と真空排気ポンプとを連結する経路に取り付けられて、真空チャンバを真空排気するために使用されるものであり、真空室とガス供給源とを連結する経路に取り付けて使用することはできない。
【0023】
図12に示した従来方法では、真空チャンバ101への給気管103を第1分岐管103aと第2分岐管103bに分岐すると共に、第1分岐管103aと第2分岐管103bに大口径ベントバルブ104aと小口径ベントバルブ104bをそれぞれ設置し、ベントバルブ104aおよび104bの開閉を上述したように制御する必要がある。このため、操作が煩雑であるだけでなく、1個の真空チャンバ101に対して口径の異なる二つのベントバルブ104aおよび104bが必要になるため、当該方法を実施するためのコストも高くなるという問題がある。
【0024】
本発明は、従来技術におけるこのような事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の状態を真空(負圧)状態から大気圧状態に戻す際に、前記ガスの流量を制御して前記真空チャンバ内のパーティクルの巻き上げ防止とスループットの低下防止の双方を実現することができると共に、操作および構成が簡単で製造コストも低いベントバルブを提供することにある。
【0025】
ここに明記しない本発明の他の目的は、以下の説明及び添付図面から明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0026】
(1) 本発明の第1の観点によるベントバルブは、
真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の圧力を真空状態から大気圧状態に戻すために使用されるベントバルブであって、
入口通路および出口通路を有するケーシングと、
前記ケーシングの内部に形成された、前記入口通路と前記出口通路とを連結する内部空間と、
所定の閉鎖位置と所定の全開位置との間で変位可能として前記内部空間内に配置された弁体と、
弾性力によって前記弁体を前記全開位置に向かって付勢する付勢手段と、
前記付勢手段の弾性力に抗して前記弁体を前記閉鎖位置に向かって変位させるアクチュエータとを備え、
前記弁体は、前記内部空間内において前記入口通路と前記出口通路を連通する貫通孔を有していると共に、その貫通孔は前記アクチュエータによって閉鎖可能とされており、
前記弁体が前記閉鎖位置にあり且つ前記貫通孔が前記アクチュエータによって閉鎖されているときには、前記入口通路と前記出口通路との連通が遮断され、
前記弁体が前記閉鎖位置にあり且つ前記貫通孔が前記アクチュエータによって閉鎖されていないときには、前記入口通路と前記出口通路が前記貫通孔を介して連通し、
前記弁体が前記閉鎖位置以外の位置にあるときには、前記入口通路と前記出口通路が前記貫通孔を介して連通すると共に、前記ケーシングの内面と前記弁体との間に開口部が生成され、
前記開口部の断面積は、前記弁体の前記閉鎖位置からの変位量の増加に応じて増加することを特徴とするものである。
【0027】
本発明の第1の観点によるベントバルブは、上述した構成を有しているので、前記弁体を前記アクチュエータによって前記付勢手段の弾性力に抗して前記閉鎖位置に配置し、前記弁体の前記貫通孔を前記アクチュエータによって閉鎖すると、前記入口通路と前記出口通路との連通は遮断される。したがって、この状態では、前記入口通路から前記内部空間にガスを導入しても、そのガスは前記出口通路には達しない。つまり、前記出口通路に接続された前記真空チャンバにガスは導入されない。
【0028】
前記弁体が前記閉鎖位置にあるときに、前記アクチュエータを操作して前記弁体の前記貫通孔を開放すると、前記入口通路と前記出口通路は前記貫通孔を介して連通するので、前記入口通路から前記内部空間に導入されたガスは、前記貫通孔の断面積に応じた流量で前記出口通路に到達することができる。この時、前記出口通路に接続された前記真空チャンバ内は真空状態にあるため、前記内部空間に導入されたガスの圧力(これは大気圧に等しい)により、前記弁体は前記閉鎖位置に向かって前記付勢手段の弾性力に抗して押圧され、その押圧力によって前記弁体は前記閉鎖位置に保持される。したがって、前記貫通孔の断面積を適当な値に調整することにより、導入初期に要求される低流量でのガスの導入が実現され、前記真空チャンバ内でのパーティクルの巻き上げを低減または防止することができる。
【0029】
こうして前記真空チャンバ内にガスが導入され始めると、ガスの導入に伴って前記真空チャンバ内の圧力が徐々に上昇するので、前記出口通路の圧力も上昇し、前記弁体に作用する押圧力(これは前記全開位置に向かっている)が徐々に増加する。前記出口通路のガスによる押圧力と前記付勢手段の弾性力との和が、前記入口通路のガスによる押圧力より大きくなると、前記弁体は前記閉鎖位置から外れて前記全開位置に向かって変位を始める。このときの前記弁体の変位量は、前記出口通路のガスによる押圧力と前記付勢手段の弾性力との和が、前記入口通路のガスによる押圧力に等しくなる状態を保ちながら、前記真空チャンバへのガスの導入量が増加するにつれて増加する。
【0030】
前記弁体が前記閉鎖位置から外れて前記閉鎖位置以外の位置にある間は、前記入口通路と前記出口通路が前記弁体の前記貫通孔を介して連通すると共に、前記ケーシングの内面と前記弁体との間に前記開口部が生成される。このため、前記入口通路のガスは、前記貫通孔と前記開口部とを通じて前記出口通路へ流動するようになる、つまり、ガスの総流量が前記開口部の断面積に相当する分だけ増加する。ここで、前記開口部の断面積は、前記弁体の前記閉鎖位置からの変位量の増加に応じて増加するので、前記ガスの総流量は、前記弁体の変位量が増加するとそれに伴って増加することになる。その結果、前記弁体が前記閉鎖位置から外れると(導入初期を終えると)、直ちにガスの総流量が前記開口部の断面積に相当する分だけ増加し、その後は前記弁体の変位量の増加に応じて自動的に徐々に増加せしめられるのである。こうして、導入初期の終了の直後から、導入初期よりも増加した流量でガスが前記真空チャンバ内に導入され始めるため、スループットの低下が防止される。
【0031】
前記真空チャンバ内の圧力がさらに上昇してくると、それに応じて前記出口通路の圧力も上昇し、前記入口通路と前記出口通路との圧力差が減少するので、前記付勢手段の弾性力の影響が大きくなり、前記弁体の変位量がいっそう増加する。こうして、前記弁体は前記全開位置に近づく。この間、前記ケーシングの内面と前記弁体との間に生成された前記開口部の断面積は、前記弁体の変位量の増加に応じて増加する。この間に前記開口部の断面積が固定(不変)であると、前記入口通路と前記出口通路との圧力差の減少に起因するガス流量の減少が顕著となり、大気圧状態に達するまでの時間が長くなってスループットの低下につながりやすい。他方、このベントバルブでは、前記開口部の断面積が前記弁体の変位量の増加に応じて増加するので、前記入口通路と前記出口通路との圧力差の減少に起因するガス流量の減少が緩和され、その結果、スループットの低下が防止または緩和される。この間(つまり導入初期と導入終期の間)におけるガスの総流量とその変化は、前記入口通路と前記出口通路との圧力差と、前記開口部の断面積と、前記貫通孔の断面積との三者の関係によって決まるので、それらの値を必要に応じて適宜設定して、所望の総流量が得られるようにすればよい。
【0032】
導入終期になると、前記入口通路と前記出口通路との圧力差がほとんどなくなり、前記付勢手段の弾性力によって前記弁体は前記全開位置に到達せしめられる。この時、前記開口部の断面積は最大になる。導入終期では、前記貫通孔が閉鎖されてもよいし、開放されたままでもよいが、前記貫通孔の断面積は前記開口部の断面積よりもかなり小さいので、前記貫通孔の閉鎖・開放がガス流量に与える影響は小さい。このため、この時のガス流量は、前記入口通路と前記出口通路との圧力差と、前記開口部の断面積によって決まると言うことができる。
【0033】
以上述べたところから明らかなように、本発明の第1の観点によるベントバルブによれば、前記真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の状態を真空(負圧)状態から大気圧状態に戻す際に、前記ガスの流量を制御して前記真空チャンバ内のパーティクルの巻き上げ防止とスループットの低下防止の双方を実現することができる。
【0034】
また、本発明の第1の観点によるベントバルブは、前記ケーシングの内部空間内に前記閉鎖位置と前記全開位置との間で変位可能に前記弁体を配置すると共に、前記付勢手段の弾性力によって前記弁体を前記全開位置に向かって付勢し、前記アクチュエータによって前記弁体を前記閉鎖位置に向かって変位させるように構成しているから、当該ベントバルブの構成は簡単である。しかも、これらの構成部材はいずれも、特殊な性質や機能が不要であり、特殊な加工も不要であるから、当該ベントバルブの製造コストも低くてすむ。
【0035】
さらに、前記アクチュエータを用いて前記弁体を変位させると共に前記貫通孔を開閉するとにより、導入初期には前記貫通孔を介して前記真空チャンバにガスを導入するようにしてガスの総流量を小さく抑えている。導入初期の直後には、前記入口通路と前記出口通路との圧力差を利用して前記弁体を変位させることにより、前記ケーシングの内面と前記弁体との間に前記開口部を生成し、前記開口部の断面積に相当する分だけガスの総流量を増加させている。しかも、導入初期から導入終期までの間においては、前記圧力差に起因する前記弁体の変位量の増加に応じて前記開口部の断面積が増加するようにして、前記入口通路と前記出口通路との圧力差の減少に起因するガス流量の減少を緩和している。このように、導入初期に前記アクチュエータを用いた前記弁体の変位と前記貫通孔の開閉だけを行えば、他の動作はすべて自動的に行われるので、当該ベントバルブの操作は簡単である。
【0036】
よって、本発明の第1の観点によるベントバルブは、真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の状態を真空(負圧)状態から大気圧状態に戻す際に、前記ガスの流量を制御して前記真空チャンバ内のパーティクルの巻き上げ防止とスループットの低下防止の双方を実現することができ、操作および構成が簡単で製造コストも低いものである。
【0037】
(2) 本発明の第1の観点によるベントバルブの好ましい例では、前記ケーシングの内面に少なくとも1本のテーパ溝が形成されており、前記弁体が前記閉鎖位置以外の位置にあるときに前記ケーシングの内面と前記弁体との間に形成される前記開口部が、前記少なくとも1本のテーパ溝によって前記ケーシングの内面と前記弁体との間に生じる隙間によって形成される。
【0038】
この例では、前記弁体の変位量の増加に伴う前記開口部の断面積の増加を連続的にすることができると共に、前記開口部を形成するための加工が容易であるという利点がある。また、前記少なくとも1本のテーパ溝の幅や深さやテーパ角、あるいは当該テーパ溝の総数等を変えることにより、前記開口部の断面積の増加状況を容易に調整できるという利点もある。
【0039】
(3) 本発明の第1の観点によるベントバルブの他の好ましい例では、前記ケーシングの内面全体がテーパ状に形成されており、前記弁体が前記閉鎖位置以外の位置にあるときに前記ケーシングの内面と前記弁体との間に形成される前記開口部が、前記ケーシングの内面と前記弁体との間に生じる隙間によって形成される。
【0040】
この例では、前記開口部が前記ケーシングの内壁面全体にわたって形成されるので、前記弁体の変位に伴う前記開口の断面積の変化を連続的にすることができるだけでなく、前記弁体の変位に伴う前記開口の断面積の変化を容易に拡大することができるという利点がある。
【0041】
(4) 本発明の第1の観点によるベントバルブのさらに他の好ましい例では、前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記駆動部材が所定の伸長位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材によって押圧されて前記閉鎖位置に固定され、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材から独立して前記閉鎖位置と前記全開位置の間で変位可能とされる。
【0042】
この例では、前記アクチュエータとして公知のエアシリンダを用い、そのロッドを前記駆動部材とすることができるという利点がある。
【0043】
(5) 本発明の第1の観点によるベントバルブのさらに他の好ましい例では、前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記弁体の前記貫通孔が、前記駆動部材に装着されたシール材を前記貫通孔に押し付けることによって閉鎖される。
【0044】
この例では、前記アクチュエータとして公知のエアシリンダを用い、そのロッドを前記駆動部材とすることができると共に、前記貫通孔の開閉が容易に行えるという利点がある。
【0045】
(6) 本発明の第1の観点によるベントバルブのさらに他の好ましい例では、前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記弁体の変位する方向に沿って前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記駆動部材が所定の伸長位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材によって押圧されて前記閉鎖位置に固定されると共に、前記駆動部材に装着されたシール材で前記弁体の前記貫通孔が閉鎖され、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材から独立して前記閉鎖位置と前記全開位置の間で変位可能とされ、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときに前記弁体が前記駆動部材に当接する位置が、前記全開位置とされる。
【0046】
この例では、前記アクチュエータとして公知のエアシリンダを用い、そのロッドを前記駆動部材とすることができると共に、前記貫通孔の開閉が容易かつ確実に行えるという利点がある。
【0047】
(7) 本発明の第1の観点によるベントバルブのさらに他の好ましい例では、前記アクチュエータがエアシリンダとされ、前記アクチュエータの前記駆動部材がエアシリンダのロッドとされる。
【0048】
この例では、汎用のエアシリンダを利用すればよいので、前記アクチュエータの構成が簡単になると共に、製造コストの低減が容易であるという利点がある。
【0049】
(8) 本発明の第2の観点によるベントバルブは、
真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の圧力を真空状態から大気圧状態に戻すために使用されるベントバルブであって、
入口通路および出口通路を有するケーシングと、
前記ケーシングの内部に形成された、前記入口通路と前記出口通路とを連結する内部空間と、
所定の閉鎖位置と所定の全開位置との間で変位可能として前記内部空間内に配置された弁体と、
弾性力によって前記弁体を前記全開位置に向かって付勢する付勢手段と、
前記付勢手段の弾性力に抗して前記弁体を前記閉鎖位置に向かって変位させるアクチュエータとを備え、
前記弁体は、前記内部空間内において前記入口通路と前記出口通路を連通する貫通孔を有していると共に、その貫通孔は前記アクチュエータによって閉鎖可能とされており、
前記弁体が前記閉鎖位置にあり且つ前記貫通孔が前記アクチュエータによって閉鎖されているときには、前記入口通路と前記出口通路との連通が遮断され、
前記弁体が前記閉鎖位置にあり且つ前記貫通孔が前記アクチュエータによって閉鎖されていないときには、前記入口通路と前記出口通路が前記貫通孔を介して連通し、
前記弁体が前記閉鎖位置以外の位置にあるときには、前記入口通路と前記出口通路が前記貫通孔を介して連通すると共に、前記ケーシングを貫通してその外部と連通する開口部が生成され、
前記開口部の断面積は、前記弁体の前記閉鎖位置からの変位量の増加に応じて増加することを特徴とするものである。
【0050】
本発明の第2の観点によるベントバルブは、上述した本発明の第1の観点によるベントバルブとほぼ同じ構成であり、前記弁体が前記閉鎖位置以外の位置にあるときに、「前記ケーシングの内面と前記弁体との間に開口部が生成される」のに代えて、「前記ケーシングを貫通してその外部と連通する前記開口部が生成される」点が異なるだけである。
【0051】
すなわち、本発明の第2の観点によるベントバルブは、上述した構成を有しているので、前記弁体を前記アクチュエータによって前記付勢手段の弾性力に抗して前記閉鎖位置に配置し、前記弁体の前記貫通孔を前記アクチュエータによって閉鎖すると、前記入口通路と前記出口通路との連通は遮断される。したがって、この状態では、前記入口通路から前記内部空間にガスを導入しても、そのガスは前記出口通路には達しない。つまり、前記出口通路に接続された前記真空チャンバにガスは導入されない。この点は本発明の第1の観点によるベントバルブと同じである。
【0052】
前記弁体が前記閉鎖位置にあるときに、前記アクチュエータを操作して前記弁体の前記貫通孔を開放すると、前記入口通路と前記出口通路は前記貫通孔を介して連通するので、前記入口通路から前記内部空間に導入されたガスは、前記貫通孔の断面積に応じた流量で前記出口通路に達することができる。この時、前記出口通路に接続された前記真空チャンバ内は真空状態にあるため、前記内部空間に導入されたガスの圧力(これは大気圧に等しい)により、前記弁体は前記閉鎖位置に向かって前記付勢手段の弾性力に抗して押圧され、その押圧力によって前記弁体は前記閉鎖位置に保持される。したがって、前記貫通孔の断面積を適当な値に調整することにより、導入初期に要求される低流速、低流量でのガスの導入が実現され、前記真空チャンバ内でのパーティクルの巻き上げを低減または防止することができる。この点も本発明の第1の観点によるベントバルブと同じである。
【0053】
こうして前記真空チャンバ内にガスが導入され始める(導入初期を終える)と、ガスの導入に伴って前記真空チャンバ内の圧力が徐々に上昇するので、前記出口通路の圧力も上昇し、前記弁体に作用する押圧力(これは前記全開位置に向かっている)が徐々に増加する。前記出口通路のガスによる押圧力と前記付勢手段の弾性力との和が、前記入口通路のガスによる押圧力より大きくなると、前記弁体は前記閉鎖位置から外れて前記全開位置に向かって変位を始める。このときの前記弁体の変位量は、前記出口通路のガスによる押圧力と前記付勢手段の弾性力との和が、前記入口通路のガスによる押圧力に等しくなる状態を保ちながら、前記真空チャンバへのガスの導入量が増加するにつれて増加する。この点も本発明の第1の観点によるベントバルブと同じである。
【0054】
前記弁体が前記閉鎖位置から外れて前記閉鎖位置以外の位置にある間は、前記入口通路と前記出口通路が前記弁体の前記貫通孔を介して連通すると共に、「前記ケーシングを貫通してその外部と連通する前記開口部」が生成される。このため、前記入口通路のガスは、前記貫通孔を通じて前記出口通路へ流動するようになると共に、前記開口部を介して前記ケーシングの外部から前記出口通路へ流動するようになる。ここで、例えば、前記ケーシング(当該ベントバルブ)を前記ガス雰囲気中(例えば大気中)に置くことにより、前記ケーシングの外部からも前記ガス(例えば空気)を供給できるようにしておけば、前記ガスの総流量が前記開口部の断面積に相当する分だけ増加することになる。その結果、前記弁体が前記閉鎖位置から外れると(導入初期を終えると)、直ちにガスの総流量が前記開口部の断面積に相当する分だけ増加し、その後は前記弁体の変位量の増加に応じて自動的に徐々に増加せしめられるのである。こうして、導入初期の終了の直後から、導入初期よりも増加した流量でガスが前記真空チャンバ内に導入され始めるため、スループットの低下が防止される。この点は、本発明の第1の観点によるベントバルブとは少し異なっている。
【0055】
前記真空チャンバ内の圧力がさらに上昇してくると、それに応じて前記出口通路の圧力も上昇し、前記入口通路と前記出口通路との圧力差が減少するので、前記付勢手段の弾性力の影響が大きくなり、前記弁体の変位量がいっそう増加する。こうして、前記弁体は前記全開位置に近づく。この間、「前記ケーシングを貫通してその外部と連通する前記開口部」の断面積は、前記弁体の変位量の増加に応じて増加する。この間に前記開口部の断面積が固定(不変)であると、前記入口通路と前記出口通路との圧力差の減少に起因するガス流量の減少が顕著となり、大気圧状態に達するまでの時間が長くなってスループットの低下につながりやすい。他方、このベントバルブでは、前記開口部の断面積が前記弁体の変位量の増加に応じて増加するので、前記入口通路と前記出口通路との圧力差の減少に起因するガス流量の減少が緩和され、その結果、スループットの低下が防止または緩和される。この間(つまり導入初期と導入終期の間)におけるガスの総流量とその変化は、前記入口通路と前記出口通路との圧力差と、前記開口部の断面積と、前記貫通孔の断面積との三者の関係によって決まるので、それらの値を必要に応じて適宜設定して、所望の総流量が得られるようにすればよい。
【0056】
導入終期になると、前記入口通路と前記出口通路との圧力差がほとんどなくなり、前記付勢手段の弾性力によって前記弁体は前記全開位置に到達せしめられる。この時、前記開口部の断面積は最大になる。導入終期では、前記貫通孔が閉鎖されてもよいし、開放されたままでもよいが、前記開口部の断面積は前記開口部の断面積よりもかなり小さいので、前記貫通孔の閉鎖・開放がガス流量に与える影響は小さい。このため、この時のガス流量は、前記入口通路と前記出口通路との圧力差と、前記開口部の断面積によって決まると言うことができる。
【0057】
以上述べたところから明らかなように、本発明の第2の観点によるベントバルブによれば、本発明の第1の観点によるベントバルブと同様に、前記真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の状態を真空(負圧)状態から大気圧状態に戻す際に、前記ガスの流量を制御して前記真空チャンバ内のパーティクルの巻き上げ防止とスループットの低下防止の双方を実現することができる。
【0058】
また、本発明の第2の観点によるベントバルブは、前記ケーシングの内部空間内に前記閉鎖位置と前記全開位置との間で変位可能に前記弁体を配置すると共に、前記付勢手段の弾性力によって前記弁体を前記全開位置に向かって付勢し、前記アクチュエータによって前記弁体を前記閉鎖位置に向かって変位させると共に、前記弁体の貫通孔を閉鎖するように構成しているから、当該ベントバルブの構成は簡単である。しかも、これらの構成部材はいずれも、特殊な性質や機能が不要であり、特殊な加工も不要であるから、当該ベントバルブの製造コストも低くてすむ。
【0059】
さらに、前記アクチュエータを用いて前記弁体を変位させると共に前記貫通孔を開閉するとにより、導入初期には前記貫通孔を介して前記真空チャンバにガスを導入するようにしてガスの総流量を小さく抑えている。導入初期の直後には、前記入口通路と前記出口通路との圧力差を利用して前記弁体を変位させることにより、前記ケーシングを貫通してその外部と連通する前記開口部を生成し、前記開口部の断面積に相当する分だけガスの総流量を増加させている。しかも、導入初期から導入終期までの間においては、前記圧力差に起因する前記弁体の変位量の増加に応じて前記開口部の断面積が増加するようにして、前記入口通路と前記出口通路との圧力差の減少に起因するガス流量の減少を緩和している。このように、導入初期に前記アクチュエータを用いた前記弁体の変位と前記貫通孔の開閉だけを行えば、他の動作はすべて自動的に行われるので、当該ベントバルブの操作は簡単である。
【0060】
よって、本発明の第2の観点によるベントバルブは、本発明の第1の観点によるベントバルブと同様に、真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の状態を真空(負圧)状態から大気圧状態に戻す際に、前記ガスの流量を制御して前記真空チャンバ内のパーティクルの巻き上げ防止とスループットの低下防止の双方を実現することができ、操作および構成が簡単で製造コストも低いものである。
【0061】
(9) 本発明の第2の観点によるベントバルブの好ましい例では、前記ケーシングが、それを貫通すると共に前記弁体の変位する方向に沿って間隔をあけて配置された複数の透孔を有しており、前記弁体が前記閉鎖位置以外の位置にあるときに生成される前記開口部が、前記複数の透孔の少なくとも一つによって形成される。
【0062】
この例では、前記弁体の変位に伴う前記開口の断面積の変化が段階的になってしまうが、前記ケーシングの所定位置に複数の透孔をあけるだけでよいので、前記開口の形成・加工がきわめて容易であるという利点がある。また、前記複数の透孔の径や数や間隔、あるいは当該透孔の総数等を変えることにより、前記開口部の断面積の増加状況を容易に調整できるという利点もある。
【0063】
(10) 本発明の第2の観点によるベントバルブの他の好ましい例では、前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記駆動部材が所定の伸長位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材によって押圧されて前記閉鎖位置に固定され、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材から独立して前記閉鎖位置と前記全開位置の間で変位可能とされる。
【0064】
この例では、前記アクチュエータとして公知のエアシリンダを用い、そのロッドを前記駆動部材とすることができるという利点がある。
【0065】
(11) 本発明の第2の観点によるベントバルブのさらに他の好ましい例では、前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記弁体の前記貫通孔が、前記駆動部材に装着されたシール材を前記貫通孔に押し付けることによって閉鎖される。
【0066】
この例では、前記アクチュエータとして公知のエアシリンダを用い、そのロッドを前記駆動部材とすることができると共に、前記貫通孔の開閉が容易に行えるという利点がある。
【0067】
(12) 本発明の第2の観点によるベントバルブのさらに他の好ましい例では、前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記弁体の変位する方向に沿って前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記駆動部材が所定の伸長位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材によって押圧されて前記閉鎖位置に固定されると共に、前記駆動部材に装着されたシール材で前記弁体の前記貫通孔が閉鎖され、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材から独立して前記閉鎖位置と前記全開位置の間で変位可能とされ、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときに前記弁体が前記駆動部材に当接する位置が、前記全開位置とされる。
【0068】
この例では、前記アクチュエータとして公知のエアシリンダを用い、そのロッドを前記駆動部材とすることができると共に、前記貫通孔の開閉が容易かつ確実に行えるという利点がある。
【0069】
(13) 本発明の第2の観点によるベントバルブのさらに他の好ましい例では、前記アクチュエータがエアシリンダとされ、前記アクチュエータの前記駆動部材がエアシリンダのロッドとされる。
【0070】
この例では、汎用のエアシリンダを利用すればよいので、前記アクチュエータの構成が簡単になると共に、製造コストの低減が容易であるという利点がある。
【0071】
(14) 本発明の第1および第2の観点によるベントバルブにおいて、「真空チャンバ」とは、必要に応じてガスを導入・排出して内部を真空状態または大気圧状態に設定できるチャンバ(室)の意味であり、その形状や構成は任意である。
【0072】
真空チャンバに導入される「ガス」としては、例えば大気(空気)や、窒素(N2)等の不活性ガスなどが使用されることが多いが、これらに限定されず他のガスも使用可能である。
【0073】
「ケーシング」は、当該ベントバルブの外被を形成するものであり、入口通路および出口通路とそれらを連結する内部空間とを有していればよく、その構成や形状は任意である。
【0074】
「内部空間」は、ケーシングの内部に形成されていると共に、入口通路と出口通路とを連結し且つ内部に弁体を変位可能に配置できる空間であれば、その形状は任意である。
【0075】
「弁体」の形状と構成は、特に制限されない。前記内部空間内において、付勢手段の弾性力とガスの圧力によって所定の閉鎖位置と所定の全開位置との間で変位可能であればよい。
【0076】
「付勢手段」は、弾性力によって前記弁体を前記全開位置に向かって付勢するものであれば、その構成や材質は任意である。好ましくは、前記弁体を前記全開位置に向かって付勢する弾性力を持つスプリングとされるが、そのスプリングの形状は螺旋状、板状等、任意に設定することができる。
【0077】
「アクチュエータ」としては、付勢手段の弾性力に抗して弁体を閉鎖位置に向かって変位させることができるものであれば、任意のものを使用できる。好ましくは、エアシリンダが使用されるが、電動シリンダ等の他のシリンダも使用可能である。
【発明の効果】
【0078】
本発明の第1および第2の観点ベントバルブによれば、真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の状態を真空(負圧)状態から大気圧状態に戻す際に、前記ガスの流量を制御して前記真空チャンバ内のパーティクルの巻き上げ防止とスループットの低下防止の双方を実現することができ、しかも操作および構成が簡単で製造コストも低い、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0080】
(第1実施形態の構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るベントバルブ1の構成を示す要部断面図、図2はそのベントバルブ1のケーシングのエアシリンダ側の端面図である。エアシリンダの内部構造は周知であると共に重要ではないため、図1では本体部のみを断面としており、エアシリンダは外観図としてある。このベントバルブ1は、本発明の第1の観点によるベントバルブに対応する。
【0081】
第1実施形態のベントバルブ1は、図1に示すように、本体部10と、本体部10を駆動するための駆動部50とから構成されている。
【0082】
駆動部50は、本第1実施形態ではエアシリンダ51から構成されており、その上端および下端にそれぞれ設けられた給排気口54および55から圧縮空気を供給・排出することにより、所定の伸長位置と所定の引込位置の間でロッド52を上下方向に移動することができる。後述するように、ロッド52は、本体部10の内部空間12内に突出可能である。図1ではロッド52は伸長位置にあり、引込位置では図3のような状態になる。
【0083】
本体部10は、その縦軸を上下方向に配置してなる略円筒形のケーシング(バルブ本体)11と、ケーシング11の内部に形成された円筒形の内部空間12内に上下方向に変位可能に設けられた略円板状の弁体21と、弁体11を上方に向かって(換言すれば駆動部50に向かって)付勢する略円筒形の螺旋状スプリング31とを備えている。
【0084】
弁体21は、例えば図3から明らかなように、エアシリンダ51のロッド52には接続されていない。つまり、弁体21はロッド52とは分離されており、ロッド52が伸長位置にある時は、弁体21は図1のように弁座15に押し付けられるが、ロッド52が引込位置にある時は、ロッド52と弁座15の間で上下方向に変位可能である。
【0085】
ケーシング11(内部空間12)の上端部は、開口していて、そこに駆動部50のエアシリンダ51が装着されている。このため、エアシリンダ51のロッド52は、ケーシング11の内部空間12の内部に位置している。ケーシング11の下端部には、フランジ18が形成されており、本体部10(すなわちベントバルブ1)を図示しない真空チャンバ(またはそれに接続された管)に接続できるようになっている。
【0086】
弁体21は、ケーシング11の内部に形成された円筒形の内部空間12内において、所定の全閉位置と所定の全開位置の間で上下方向(内部空間12の中心軸方向)に変位可能である。ケーシング11の円筒形の内面(内部空間12の円筒形の側面)11aは、弁体21が変位する際に弁体21の案内面として機能する。弁体21の上面(表面)は平坦であるが、下面(裏面)にはその中央部に円柱形の凹部22が形成されており、凹部22の外側にそれを囲むように円環状の溝が形成されている。弁体21の下面の溝には、Oリング23が装着されている。凹部22には、スプリング31の上端部が嵌合せしめられており、スプリング31の下端は凹部22の底面にあるスプリング支持部32で支持されている。
【0087】
ケーシング11の内面11aには、断面が略半円形のテーパ溝13が形成されている。テーパ溝13の数は一つである。テーパ溝13は、ガスを流入させるための開口部を内面11aと弁体21との間に設けるために形成されたものである。テーパ溝13の深さは、内面11a(内部空間12)の下端(弁座15が形成された水平面)ではゼロであり、上方に向かう(駆動部50に近づく)につれて徐々に大きくなっている。したがって、テーパ溝13の深さは、内面11a(内部空間12)の下端からその上端まで連続的に単調増加している。これは、弁体21がその閉鎖位置以外の位置にあるときに、ケーシング11と弁体21との間に開口部が形成され、しかもその開口部の断面積が弁体21の閉鎖位置からの変位量の増加に応じて増加するようにするためである。テーパ溝13の幅と深さは、ガスの導入初期以降(つまり導入中期および導入終期)において最適なガス流量が得られるように決定される。テーパ溝13の形状と大きさは、必要に応じて任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0088】
弁体21には、その中心軸に沿って延在する小さな貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、弁体21をその変位方向(上下方向)に貫通しており、弁体21の上方の空間(図1では内部空間12)と下方の空間(図1では凹部22、空隙14および出口通路17)を相互に連結する。貫通孔24の大きさは、導入初期において最適なガス流量が得られるように決定される。
【0089】
弁体21の貫通孔24は、エアシリンダ51のロッド52の先端に固着されたシールパッキング53によって、閉鎖されることが可能である。つまり、ロッド52を突出させてその伸長位置まで移動させると、スプリング31の弾性力に抗して弁体21が下降せしめられ、弁体21の下面が弁座15に接触する。すると、弁体21のOリング23が弁座15に押し付けられるため、内部空間12(すなわち入口通路16)と空隙14(すなわち出口通路17)との連通は遮断される。それと同時に、シールパッキング53が弁体21の上面に押し付けられるため、シールパッキング53によって貫通孔24が閉鎖されるのである。こうして貫通孔24を封止することにより、真空チャンバへのガスの導入(流入)を完全に停止することができる。この動作は、エアシリンダ51のロッド52を突出させてその伸長位置に移動させるだけで実行される。
【0090】
ケーシング11の内部において、内部空間12の下端部には、それよりも直径が小さい円筒形の空隙14が連続形成されている。換言すれば、内部空間12の下端部において内部空間12の側壁が内側に向かって狭められており、それによって内部空間12の下端に連通せしめられた円筒形の空隙14が形成されている。内部空間12の側壁が狭められた部分に、弁体21と対向するように円環状の弁座15が形成されている。弁座15には、図1に示すように、弁体21の下面とOリング23が当接し、当該ベントバルブが閉鎖され、ガスの導入が遮断される。弁体21が弁座15から離れると、当該ベントバルブが開放され、ガスの導入が可能となる。
【0091】
空隙14の下端部では、その側壁が内側に向かってさらに狭められて、弁体21と対向するように、円環状のスプリング支持部32と略円筒形の出口通路17が形成されている。スプリング31の下端は、スプリング支持部32で支持されている。スプリング31は、弁体21の裏面の凹部22と空隙14とで形成される略円筒形の空間内に配置されている。出口通路17はガス排出用である。
【0092】
出口通路17は、ケーシング11の下端部において空隙14と重なり合う位置にある。出口通路17は、ケーシング11の縦軸上を上下方向に延在して空隙14と連通しているが、フランジ18の内側でフランジ18の大きさに合わせて広げられている。
【0093】
ケーシング11の上端付近の側壁には、ガス導入用の入口通路16が形成されている。入口通路16は、略円筒形で、ケーシング11の側壁を水平方向(弁体21の変位方向に直交する方向)に貫通して内部空間12の上部に達している。入口通路16の外周面にはネジが切られており、ガス供給用の管の先端をねじ込んで接続できるようになっている。ガスとして空気(大気)を使用する場合は、入口通路16はそのまま大気に開放するだけでよい。
【0094】
(第1実施形態の動作)
次に、以上の構成を持つ本発明の第1実施形態のベントバルブ1の動作(使用状態)について説明する。
【0095】
まず、フランジ18を用いて、例えば真空チャンバ(図示せず)のガス導入用経路の適当な位置にベントバルブ1を接続する。真空チャンバの内部は所定の真空状態(大気圧を基準とすると負圧状態)にある。その結果、ベントバルブ1は、その出口通路17を介して真空チャンバに接続される。他方、ベントバルブ1の入口通路16は、導入ガスが空気の場合は、そのまま大気に開放される。導入ガスが空気以外のガス、例えば窒素ガス等である場合は、入口通路16には窒素ガス等を供給する管の先端が接続される。こうして、ベントバルブ1の入口通路16と内部空間12に所定のガスが導入される。
【0096】
以上のようにして真空チャンバに接続されたベントバルブ1の使用を開始する際には、図1に示すように、エアシリンダ51のロッド52を突出させてその伸長位置に置き、弁体21を閉鎖位置に設定しておく。すなわち、給排気口54からエアシリンダ51の内部に所定圧力の圧縮空気を供給し、給排気口55からエアシリンダ51の内部に残存している空気を排出することにより、ロッド52を下方に突出させ、図1に示すように、ロッド52を伸長位置で停止させる。この時、弁体21は、ロッド52によってスプリング31の弾性力に抗して下方に押し付けられて、弁体21のOリング23が弁座15に加圧接触せしめられるので、内部空間12(入口通路16)と空隙14(出口通路17)との連通は遮断される。また、それと同時に、ロッド52の先端に固着したシールパッキング53により、弁体21の貫通孔24が塞がれる。よって、この状態では、入口通路16と内部空間12にあるガスはベントバルブ1を通って真空チャンバに導入されない。図1に示す弁体21の位置が、弁体21の閉鎖位置である。なお、図1の状態では、入口通路16と内部空間12にガス(その圧力は大気圧に等しい)が存在するが、真空チャンバ(出口通路17)は真空状態であるため、弁体21にはそのガスによって下向きの押圧力が作用している。
【0097】
次に、給排気口55からエアシリンダ51の内部に所定圧力の圧縮空気を供給し、給排気口54からエアシリンダ51の内部に残存している空気を排出することにより、ロッド52を上方に引き込ませると、図3に示すように、ロッド52は引込位置で停止する。図3から分かるように、ロッド52の先端付近(シールパッキング53を含む)は、引込位置でも内部空間12内に突出したままである。この時、ロッド52による弁体21の押圧力はなくなるが、弁体21の状態は変わらずその閉鎖位置に保持される。これは、入口通路16と内部空間12に存在するガスにより弁体21に下向きに作用する押圧力が、スプリング31により弁体21に上向きに作用する弾性力よりも大きくなるように、弁体21の大きさとスプリング31の弾性力の大きさが調整されているからである。他方、弁体21に形成されている微小な貫通孔24は、開放される。これは、ロッド52の引き込みに伴って、ロッド52の先端のシールパッキング53が弁体21から離れるからである。
【0098】
図3の状態では、弁体21はその閉鎖位置に保持されているが、弁体21に形成されている微小な貫通孔24が開放されているので、内部空間12にあるガスは貫通孔24を通り、空隙14と出口通路17を経て真空チャンバ内に流入することができる。この時、すなわち導入初期のガスの流量は、貫通孔24の断面積によって決定されるが、その値は真空チャンバ内でパーティクルの巻き上げが生じない範囲で、また真空チャンバ内のワーク(例えば半導体ウェーハ)の位置がずれたりしない範囲で、最適な値に設定される。
【0099】
導入初期には、貫通孔24を通って真空チャンバ内に流入するガスにより、真空チャンバ内の圧力はゆっくりと上昇するから、それに伴って、出口通路17側に存在するガスが弁体21を押し上げる力が徐々に増加する。換言すれば、弁体21を押し下げる力が徐々に減少する。そして、出口通路17側にあるガスによる弁体21の押し上げ力と、スプリング31による弁体21の押し上げ力との和が、入口通路16側にあるガスによる弁体21の押し下げ力よりも大きくなると、弁体21は押し上げられてその閉鎖位置から外れ、図4に示すように、内部空間12内で浮いた状態になる。こうして、弁体21が閉鎖位置から外れて浮いた状態になると、導入初期が終了して導入中期に入ったことになる。
【0100】
図4の状態では、弁体21は、ロッド52のシールパッキング53にも接触していない。この状態で弁体21が停止する位置は、出口通路17側にあるガスによる弁体21の押し上げ力と、スプリング31による弁体21の押し上げ力との和が、入口通路16側にあるガスによる弁体21の押し下げ力に等しくなる(平衡する)位置である。
【0101】
また、図4の状態では、弁体21の貫通孔24は開放されたままである。また、弁体21が上方に変位せしめられてその閉鎖位置からずれている、つまり弁体21がその閉鎖位置以外の位置にあるので、ケーシング11の内面11aにその縦軸に沿って上下方向に形成されたテーパ溝13により、内面11aと弁体21との間に開口部が生成されている。このため、入口通路16側にあるガスは、弁体21の貫通孔24だけでなく、この開口部(つまりテーパ溝13)をも通過して空隙14に到達し、出口通路17を経て真空チャンバ内に流入する。また、テーパ溝13の幅と深さは、内面11aの下端からの距離が増加するに伴って単調に増加しているため、弁体21がその閉鎖位置から外れた後その全開位置に達する直前まで、すなわちガスの導入中期では、ケーシング11の内面11aと弁体21との間の開口部(つまりテーパ溝13)の断面積が、弁体21の閉鎖位置からの変位量の増加に応じて単調に増加する。その結果、弁体21がその閉鎖位置から外れて導入初期を終えると、直ちにガスの総流量が前記開口部の断面積に相当する分だけ増加し、その後は弁体21の変位量の増加に応じて自動的に徐々に増加せしめられる。こうして、導入中期では、導入初期の終了の直後から、導入初期よりも増加した流量でガスが真空チャンバ内に導入され始めるため、スループットの低下が防止される。
【0102】
導入中期のガスの総流量は、貫通孔24の断面積と前記開口部(テーパ溝13)の断面積の和によって決定され、導入初期のそれよりもかなり大きい。具体的に言えば、導入中期のガスの総流量は、問題の生じない範囲で、可能な限り短時間で真空チャンバ内を大気圧状態にすることができる最大値に設定されるのが一般的である。
【0103】
真空チャンバ内の圧力がさらに上昇してくると、それに応じて出口通路17の圧力も上昇し、入口通路16と出口通路17との圧力差が小さくなるので、スプリング31の弾性力の影響が大きくなり、弁体21の変位量がいっそう増加する。こうして、弁体21はその全開位置に近づく。この間、ケーシング11の内面11aと弁体21との間に生成された前記開口部(テーパ溝13)の断面積は、弁体21の変位量の増加に応じて増加する。この間に前記開口部の断面積が固定(不変)であると、入口通路16と出口通路17との圧力差の減少に起因するガス流量の減少が顕著となり、大気圧状態に達するまでの時間が長くなってスループットの低下につながりやすい。他方、このベントバルブ1では、前記開口部の断面積が弁体21の変位量の増加に応じて増加するので、入口通路16と出口通路17との圧力差の減少に起因するガス流量の減少が緩和され、その結果、スループットの低下が防止または緩和される。この間(つまり導入初期と導入終期の間)におけるガスの総流量とその変化は、入口通路16と出口通路17との圧力差と、前記開口部の断面積と、貫通孔24の断面積との三者の関係によって決まるので、それらの値を必要に応じて適宜設定して、所望の総流量が得られるようにすればよい。
【0104】
真空チャンバ内の圧力がさらに上昇して大気圧の近傍に達すると、つまり導入終期になると、入口通路16と出口通路17との圧力差がほとんどなくなる。このため、最終的には、弁体21はスプリング31の弾性力により、図5に示すように、引込位置にあるロッド52の先端のシールパッキング53に当接して停止する。この位置が弁体21の全開位置であり、前記開口部の断面積が最大になる。
【0105】
全開位置では、弁体21の貫通孔24がシールパッキング53によって閉鎖されるので、入口通路16側にあるガスは、前記開口部(テーパ溝13)のみを通過し、出口通路17を経て真空チャンバ内に流入する。したがって、理論的には、導入終期ではガスの総流量がその直前よりも減少することになるが、貫通孔24の断面積は前記開口部の断面積よりもかなり小さいし、入口通路16と出口通路17との圧力差も小さいので、貫通孔24の閉鎖がガス流量に与える影響は非常に小さい。したがって、この時のガス流量は、入口通路16と出口通路17との圧力差と、前記開口部の断面積によって決まると考えてよい。
【0106】
したがって、スプリング31の弾性力または自由長を調整し、全開位置においても弁体21がシールパッキング53に接触しないようにするか、あるいは弁体21がシールパッキング53に接触しても密着はしないようにして、全開位置においても貫通孔24が開放されたままになるようにしてもよい。なお、この場合でも、シールパッキング53は、全開位置に達した際の弁体21の衝撃を緩和するクッションの作用をする。
【0107】
以上のようにして、真空チャンバ内の圧力が大気圧とほぼ同じ値になると(つまり大気圧状態に戻ると)、エアシリンダ51を動作させてロッド52を突出させ、ロッド52で弁体21を押し下げて図1の初期状態に戻す。すると、ガスの導入が遮断されるので、真空チャンバへのガス導入作業は終了する。
【0108】
真空チャンバへのガス導入作業を再度実施する場合は、図1の初期状態から上述した動作を繰り返せばよい。
【0109】
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係るベントバルブ1によれば、弁体21をエアシリンダ51によってスプリング31の弾性力に抗してその閉鎖位置に配置し、弁体21の貫通孔24をエアシリンダ51によって閉鎖すると、入口通路16と出口通路17との連通が遮断される。したがって、この状態では、入口通路16から内部空間12にガスを導入しても、そのガスは出口通路17には達しない。つまり、出口通路17に接続された真空チャンバにガスは導入されない。
【0110】
弁体21がその閉鎖位置にあるときに、エアシリンダ51を操作して弁体21の貫通孔24を開放すると、入口通路16と出口通路17は貫通孔24を介して連通するので、入口通路16から内部空間12に導入されたガスは、貫通孔24の断面積に応じた流量で出口通路17に達することができる。この時、出口通路17に接続された真空チャンバ内は真空状態にあるため、内部空間12に導入されたガスの圧力(これは大気圧に等しい)により、弁体21はその閉鎖位置に向かってスプリング31の弾性力に抗して押圧され、その押圧力によって弁体21はその閉鎖位置に保持される。したがって、貫通孔24の断面積を適当な値に調整することにより、導入初期に要求される低流速、低流量でのガスの導入が実現され、真空チャンバ内でのパーティクルの巻き上げを低減または防止することができる。
【0111】
こうして真空チャンバ内に窒素ガスが導入され始めると、ガスの導入に伴って真空チャンバ内の圧力が徐々に上昇するので、出口通路17の圧力も上昇し、弁体21に作用する押圧力(これは全開位置に向かっている)が徐々に増加する。出口通路17のガスによる押圧力とスプリング31の弾性力との和が、入口通路16のガスによる押圧力より大きくなると、弁体21はその閉鎖位置から外れてその全開位置に向かって変位を始める。このときの弁体21の変位量は、出口通路17のガスによる押圧力とスプリング31の弾性力との和が、入口通路16のガスによる押圧力に等しくなる状態を保ちながら、真空チャンバへのガスの導入量が増加するにつれて増加する。
【0112】
弁体21がその閉鎖位置から外れている間、すなわち、弁体21がその閉鎖位置以外の位置にある間は、入口通路16と出口通路17が弁体21の貫通孔24を介して連通すると共に、ケーシング11の内面11aと弁体21との間にテーパ溝13によって前記開口部が生成される。このため、入口通路16のガスは、貫通孔24と前記開口部(テーパ溝13)とを通じて出口通路17へ流動するようになる、つまり、ガスの総流量が前記開口部(テーパ溝13)の断面積に相当する分だけ増加する。ここで、前記開口部(テーパ溝13)の断面積は、弁体21の閉鎖位置からの変位量の増加に応じて増加するので、ガスの総流量は、弁体21の変位量が増加するとそれに伴って増加することになる。その結果、弁体21が閉鎖位置から外れると(導入初期を終えると)、直ちにガスの総流量が前記開口部の断面積に相当する分だけ増加し、その後は弁体21の変位量の増加に応じて自動的に徐々に増加せしめられるのである。こうして、導入初期の終了の直後から、導入初期よりも増加した流量でガスが真空チャンバ内に導入され始めるため、スループットの低下が防止される。
【0113】
真空チャンバ内の圧力がさらに上昇してくると、それに応じて出口通路17の圧力も上昇し、入口通路16と出口通路17との圧力差が減少するので、スプリング31の弾性力の影響が大きくなり、弁体21の変位量がいっそう増加する。こうして、弁体21はその全開位置に近づく。この間、ケーシング11の内面11aと弁体21との間に生成された前記開口部(テーパ溝13)の断面積は、弁体21の変位量の増加に応じて増加する。この間に前記開口部の断面積が固定(不変)であると、入口通路16と出口通路17との圧力差の減少に起因するガス流量の減少が顕著となり、大気圧状態に達するまでの時間が長くなってスループットの低下につながりやすい。他方、このベントバルブ1では、前記開口部の断面積が弁体21の変位量の増加に応じて増加するので、入口通路16と出口通路17との圧力差の減少に起因するガス流量の減少が緩和され、その結果、スループットの低下が防止または緩和される。この間(つまり導入初期と導入終期の間)におけるガスの総流量とその変化は、入口通路16と出口通路17との圧力差と、前記開口部の断面積と、貫通孔24の断面積との三者の関係によって決まるので、それらの値を必要に応じて適宜設定して、所望の総流量が得られるようにすればよい。
【0114】
導入終期になると、入口通路16と出口通路17との圧力差がほとんどなくなり、スプリング31の弾性力によって弁体21はその全開位置に到達せしめられる。この時、前記開口部(テーパ溝13)の断面積は最大になる。導入終期では、貫通孔24が閉鎖されてもよいし、開放されたままでもよいが、貫通孔24の断面積は前記開口部の断面積よりもかなり小さいので、貫通孔24の閉鎖・開放がガス流量に与える影響は小さい。このため、この時のガス流量は、入口通路16と出口通路17との圧力差と、前記開口部の断面積によって決まると言うことができる。
【0115】
以上述べた理由により、本発明の第1実施形態のベントバルブ1によれば、真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の状態を真空(負圧)状態から大気圧状態に戻す際に、ガスの流量を制御して当該真空チャンバ内のパーティクルの巻き上げ防止とスループットの低下防止の双方を実現することができる。
【0116】
また、このベントバルブ1は、ケーシング11の内部空間12内に閉鎖位置と全開位置との間で変位可能に弁体21を配置すると共に、スプリング31の弾性力によって弁体21をその全開位置に向かって付勢し、エアシリンダ51によって弁体21をその閉鎖位置に向かって変位させるように構成しているから、当該ベントバルブ1の構成は簡単である。しかも、これらの構成部材はいずれも、特殊な性質や機能が不要であり、特殊な加工も不要であるから、ベントバルブ1の製造コストも低くてすむ。
【0117】
さらに、エアシリンダ51を用いて弁体21を変位させると共に貫通孔24を開閉するとにより、導入初期には貫通孔24を介して真空チャンバにガスを導入するようにしてガスの総流量を小さく抑えている。導入初期の直後には、入口通路16と出口通路17との圧力差を利用して弁体21を変位させることにより、ケーシング11の内面11aと弁体21との間に前記開口部を生成し、前記開口部の断面積に相当する分だけガスの総流量を増加させている。しかも、導入初期から導入終期までの間においては、前記圧力差に起因する弁体21の変位量の増加に応じて前記開口部の断面積が増加するようにして、入口通路16と出口通路17との圧力差の減少に起因するガス流量の減少を緩和している。このように、導入初期にエアシリンダ51を用いた弁体21の変位と貫通孔24の開閉だけを行えば、他の動作はすべて自動的に行われるので、ベントバルブ1の操作は簡単である。
【0118】
よって、本発明の第1実施形態のベントバルブ1は、真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の状態を真空(負圧)状態から大気圧状態に戻す際に、ガスの流量を制御して当該真空チャンバ内のパーティクルの巻き上げ防止とスループットの低下防止の双方を実現することができ、しかも、操作および構成が簡単で製造コストも低いものである。
【0119】
(第2実施形態)
図6および図7は、本発明の第2実施形態に係るベントバルブ1Aの構成を示す。このベントバルブ1Aは、本発明の第2の観点によるベントバルブに対応する。
【0120】
図6および図7に示すように、第2実施形態のベントバルブ1Aは、ケーシング11の内面11aに形成されたテーパ溝13に代えて、ケーシング11Aを水平方向(弁体21の変位する方向に直交する方向)に貫通すると共に、上下方向(弁体21の変位する方向)に間隔をあけて配置された複数(ここでは6個)の透孔19が形成されている点を除いて、上述した第1実施形態のベントバルブ1と同一である。これらの透孔19は、いずれも同じ大きさであり、また同じ形状である。これら6個の透孔19は、ケーシング11Aを貫通してその外部(大気)と連通する開口部を構成する。
【0121】
よって、構成が同一の部分については、第1実施形態のベントバルブ1において使用したのと同じ符号を付してその説明を省略する。なお、テーパ溝13が存在しないため、ケーシング11Aの内面11Aaは全体が円筒形である。
【0122】
本発明の第2実施形態のベントバルブ1Aでは、ケーシング11Aに、それを水平方向に貫通すると共に、上下方向に沿って間隔をあけて配置された複数の透孔19が形成されているので、弁体21がその閉鎖位置から全開位置に向かって上向きに変位すると、弁体21の変位量に応じて、最下位にある透孔19から順に段階的に内部空間12に露出し、その結果、内部空間12とケーシング11Aの外部との連通が順に段階的に実現される。
【0123】
つまり、弁体21が押し上げられてその閉鎖位置から外れた直後は、最下位の透孔19のみが弁体11の下方に位置(露出)するので、ケーシング11の内部空間12は最下位にある透孔19のみを介してケーシング11A(ベントバルブ1A)の外部と連通する。すると、大気中に開口している透孔19を介して、外部からガスすなわち空気(大気)が内部空間12に導入可能となる。このため、弁体21の貫通孔24だけでなく、その透孔19をも通ってガス(空気)が内部空間12に導入され、さらに出口通路17を介して真空チャンバに導入されるようになる。その結果、その透孔19の断面積に相当する流量の分だけ、ガス(空気)の総流量が増加する。
【0124】
弁体21がさらに押し上げられると、最下位の透孔19と最下位から二番目の透孔19を介して、内部空間12がケーシング11A(ベントバルブ1A)の外部と連通する。すると、弁体21の貫通孔24だけでなく、大気中に開口している二つの透孔19をも介してガス(空気)が内部空間12に導入可能されるようになる。このため、それら二つの透孔19の断面積の和に相当する流量の分だけ、ガス(空気)の総流量が増加する。
【0125】
以後同様にして、弁体21の変位量が増えるにつれて、内部空間12と連通する透孔19の数が増加するので、各透孔19の断面積に相当する分ずつガス(空気)の流量が増加していく。そして、弁体21の全開位置(図5を参照)では、6個の透孔19すべてが弁体11の下方に位置するので、弁体21の貫通孔24だけでなく、6個の透孔19をも介してガス(空気)が内部空間12に導入可能されるようになる。このため、それら6個の透孔19の断面積の和に相当する流量の分だけ、ガス(空気)の総流量が増加する。なお、この時、ケーシング11Aを貫通してその外部(大気)と連通する開口部の断面積が最大となる。
【0126】
本発明の第2実施形態のベントバルブ1Aは、ケーシング11の内面と弁体21との間に生成される開口部(ケーシング11の内面11aのテーパ溝13)に代えて、ケーシング11Aを貫通してその外部(大気)と連通する開口部として複数の透孔19を設けている点を除いて、第1実施形態のベントバルブ1と構成および動作が同一であるので、第1実施形態のベントバルブ1と同じ効果が得られることが明らかである。
【0127】
また、ケーシング11の内面11aのテーパ溝13に代えて、前記開口部としてケーシング11Aを貫通してその外部(大気)と連通する複数の透孔19を設けているので、弁体21の変位に伴う前記開口部の断面積の変化が段階的になってしまう。しかし、ケーシング11Aの所定位置にそれを水平方向(弁体21の変位方向に直交する方向)に貫通する複数の透孔19を形成するだけでよいので、前記開口の形成・加工が第1実施形態よりも容易であるという利点がある。
【0128】
なお、第2実施形態のベントバルブ1Aは、ケーシング11Aを貫通してその外部(大気)と連通する開口部として複数の透孔19を設けているので、真空チャンバに導入するガスとしては空気(大気)が好適である。しかし、入口通路16から内部空間12に導入したガスと同じガスを透孔19からも導入できるようにすれば、空気以外のガスも使用可能である。
【0129】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係るベントバルブの本体部10Bの構成を示す。このベントバルブは、本発明の第1の観点によるベントバルブに対応する。
【0130】
図8に示すように、第3実施形態のベントバルブは、上述した第1実施形態のベントバルブ1においてケーシング11の内面11aにテーパ溝13aを追加して、テーパ溝の総数を2にしたものである。よって、構成が同一の部分については、第1実施形態のベントバルブ1において使用したのと同じ符号を付してその説明を省略する。
【0131】
テーパ溝13aの形状と大きさは、ケーシング11の縦軸(中心軸)に関してテーパ溝13の位置とは対称な位置に配置されていることを除いて同じであり、両者とも同じ幅と同じ深さと同じテーパ角を有している。
【0132】
このように、ケーシング11の内面11aに形成されるテーパ溝の数を2とすることができるが、これに限定されず、3あるいはそれ以上の任意の数にしてもよい。テーパ溝の形状や大きさを互いに異ならせてもよい。各テーパ溝の配置も任意である。
【0133】
(第4実施形態)
図9は、本発明の第4実施形態に係るベントバルブの本体部10Cの構成を示す。このベントバルブは、本発明の第2の観点によるベントバルブに対応する。
【0134】
図9に示すように、第4実施形態のベントバルブは、上述した第2実施形態のベントバルブ1Aにおいて、ケーシング11を貫通すると共に弁体21の変位する方向(上下方向)に沿って間隔をあけて配置された複数(ここでは6個)の透孔19aを追加したものである。よって、構成が同一の部分については、第2実施形態のベントバルブ1Aにおいて使用したのと同じ符号を付してその説明を省略する。
【0135】
透孔19aの形状と大きさは、ケーシング11Cの縦軸(中心軸)に関して透孔19の位置とは対称な位置に配置されていることを除いて同じである。
【0136】
このように、ケーシング11Cの内面11Caを貫通する透孔を配置する個所の数を2とすることができるが、これに限定されず、3あるいはそれ以上の任意の数にしてもよい。透孔の形状や大きさを互いに異ならせてもよい。
【0137】
(第5実施形態)
図10および図11は、本発明の第5実施形態に係るベントバルブ1Dの構成を示す。このベントバルブ1Dは、本発明の第1の観点によるベントバルブに対応する。
【0138】
図10および図11に示すように、第5実施形態のベントバルブ1Dは、ケーシング11Dの内面11Daの全体をテーパ状の円筒面としたものであり、それ以外の点は上述した第1実施形態のベントバルブ1と同じである。よって、構成が同一の部分については、第1実施形態のベントバルブ1において使用したのと同じ符号を付してその説明を省略する。
【0139】
ケーシング11Dの内面11Daは、その下端(弁座15のある箇所)からその上端(開口端)まで一定のテーパ角で徐々に広がっているので、弁体21がその全閉位置以外の位置にあるときに、ケーシング11Dと弁体21との間に円環状の開口部が形成され、しかもその開口部の断面積が弁体21の全閉位置からの変位量の増加に応じて増加する。テーパ角の大きさは、導入中期および導入終期において最適なガス流量が得られるように決定される。
【0140】
本発明の第5実施形態のベントバルブ1Dは、このような構成を持っているので、第1実施形態のベントバルブ1と同じ効果が得られることが明らかである。
【0141】
また、弁体21がその全閉位置以外の位置にあるときにケーシング11Dの内面11Daと弁体21との間に形成される開口部が円環状であり、弁体21の全周にわたって存在しているため、第1実施形態のベントバルブ1よりも当該開口部の断面積の変化量が大きい。よって、導入中期のガスの流量を第1実施形態よりも大きくすることができるという利点がある。
【0142】
(変形例)
上述した第1〜第5の実施形態は本発明を具体化した例を示すものである。したがって、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0143】
例えば、上述した実施形態では、ベントバルブが、ケーシングを縦方向に向けてエアシリンダが上位に位置するように装着されるものとして説明しているが、これは、弁体の変位を円滑にするためであり、また、スプリング31の弾性力を弁体21とスプリング31の自重を考慮して設定しているためである。したがって、そのような点を考慮してスプリング31の弾性力等のパラメータを適宜調整すれば、ベントバルブの装着方向は任意であり、例えば、エアシリンダが下位に位置するように装着してもよいし、エアシリンダが水平方向に位置するように装着してもよい。
【0144】
また、真空チャンバに導入するガスとして空気または窒素ガスを用いているが、これに限定されず、必要に応じてそれ以外の不活性ガス(アルゴン等)や不活性ガス以外のガスを用いてもよい。
【0145】
また、アクチュエータとしては、エアシリンダが簡便で好ましいが、閉鎖位置と全開位置の間で変位可能な弁体を、導入初期にその閉鎖位置に移動させることができ、導入初期以降は弁体が自由に変位できるようにすることができれば、それ以外のものを用いてもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の第1実施形態に係るベントバルブの構成を示す要部断面図で、本体部については断面を、駆動部については外観をそれぞれ示している。
【図2】本発明の第1実施形態に係るベントバルブの本体部の駆動部側の端面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るベントバルブの動作を示す、図1と同様の要部断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るベントバルブの動作を示す、図1と同様の要部断面図で、図3の続きである。
【図5】本発明の第1実施形態に係るベントバルブの動作を示す、図1と同様の要部断面図で、図4の続きである。
【図6】本発明の第2実施形態に係るベントバルブの構成を示す要部断面図で、本体部については断面を、駆動部については外観をそれぞれ示している。
【図7】本発明の第2実施形態に係るベントバルブの本体部の、図6のA−A線に沿った端面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るベントバルブの本体部の駆動部側の端面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係るベントバルブの本体部の駆動部側の端面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係るベントバルブの構成を示す要部断面図で、本体部については断面を、駆動部については外観をそれぞれ示している。
【図11】本発明の第5実施形態に係るベントバルブの本体部の駆動部側の端面図である。
【図12】真空状態にある真空チャンバにベントバルブを介してガスを導入して大気圧状態にするための従来方法を示す配管構造図である。
【符号の説明】
【0147】
1、1A、1D ベントバルブ
10、10A、10B、10C、10D 本体部
11、11A、11B、11C、11D ケーシング
11a、11Aa、11Ba、11Ca、11Da ケーシングの内面
12 内部空間
13、13a テーパ溝
14 空隙
15 弁座
16 入口通路
17 出口通路
18 フランジ
19 透孔
21 弁体
22 弁体の凹部
23 Oリング
24 弁体の貫通孔
31 スプリング
32 スプリング支持部
50 駆動部
51 エアシリンダ
52 ロッド
53 シールパッキング
54、55 給排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の圧力を真空状態から大気圧状態に戻すために使用されるベントバルブであって、
入口通路および出口通路を有するケーシングと、
前記ケーシングの内部に形成された、前記入口通路と前記出口通路とを連結する内部空間と、
所定の閉鎖位置と所定の全開位置との間で変位可能として前記内部空間内に配置された弁体と、
弾性力によって前記弁体を前記全開位置に向かって付勢する付勢手段と、
前記付勢手段の弾性力に抗して前記弁体を前記閉鎖位置に向かって変位させるアクチュエータとを備え、
前記弁体は、前記内部空間内において前記入口通路と前記出口通路を連通する貫通孔を有していると共に、その貫通孔は前記アクチュエータによって閉鎖可能とされており、
前記弁体が前記閉鎖位置にあり且つ前記貫通孔が前記アクチュエータによって閉鎖されているときには、前記入口通路と前記出口通路との連通が遮断され、
前記弁体が前記閉鎖位置にあり且つ前記貫通孔が前記アクチュエータによって閉鎖されていないときには、前記入口通路と前記出口通路が前記貫通孔を介して連通し、
前記弁体が前記閉鎖位置以外の位置にあるときには、前記入口通路と前記出口通路が前記貫通孔を介して連通すると共に、前記ケーシングの内面と前記弁体との間に開口部が生成され、
前記開口部の断面積は、前記弁体の前記閉鎖位置からの変位量の増加に応じて増加することを特徴とするベントバルブ。
【請求項2】
前記ケーシングの内面に少なくとも1本のテーパ溝が形成されており、前記弁体が前記閉鎖位置以外の位置にあるときに前記ケーシングの内面と前記弁体との間に形成される前記開口部が、前記少なくとも1本のテーパ溝によって前記ケーシングの内面と前記弁体との間に生じる隙間によって形成される請求項1に記載のベントバルブ。
【請求項3】
前記ケーシングの内面全体がテーパ状に形成されており、前記弁体が前記閉鎖位置以外の位置にあるときに前記ケーシングの内面と前記弁体との間に形成される前記開口部が、前記ケーシングの内面と前記弁体との間に生じる隙間によって形成されている請求項1に記載のベントバルブ。
【請求項4】
前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記駆動部材が所定の伸長位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材によって押圧されて前記閉鎖位置に固定され、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材から独立して前記閉鎖位置と前記全開位置の間で変位可能とされる請求項1〜3のいずれか1項に記載のベントバルブ。
【請求項5】
前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記弁体の前記貫通孔が、前記駆動部材に装着されたシール材を前記貫通孔に押し付けることによって閉鎖される請求項1〜3のいずれか1項に記載のベントバルブ。
【請求項6】
前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記弁体の変位する方向に沿って前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記駆動部材が所定の伸長位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材によって押圧されて前記閉鎖位置に固定されると共に、前記駆動部材に装着されたシール材で前記弁体の前記貫通孔が閉鎖され、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材から独立して前記閉鎖位置と前記全開位置の間で変位可能とされ、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときに前記弁体が前記駆動部材に当接する位置が、前記全開位置とされる請求項1〜3のいずれか1項に記載のベントバルブ。
【請求項7】
前記アクチュエータがエアシリンダとされ、前記アクチュエータの前記駆動部材がエアシリンダのロッドとされている請求項1〜6のいずれか1項に記載のベントバルブ。
【請求項8】
真空チャンバにガスを導入して当該真空チャンバ内の圧力を真空状態から大気圧状態に戻すために使用されるベントバルブであって、
入口通路および出口通路を有するケーシングと、
前記ケーシングの内部に形成された、前記入口通路と前記出口通路とを連結する内部空間と、
所定の閉鎖位置と所定の全開位置との間で変位可能として前記内部空間内に配置された弁体と、
弾性力によって前記弁体を前記全開位置に向かって付勢する付勢手段と、
前記付勢手段の弾性力に抗して前記弁体を前記閉鎖位置に向かって変位させるアクチュエータとを備え、
前記弁体は、前記内部空間内において前記入口通路と前記出口通路を連通する貫通孔を有していると共に、その貫通孔は前記アクチュエータによって閉鎖可能とされており、
前記弁体が前記閉鎖位置にあり且つ前記貫通孔が前記アクチュエータによって閉鎖されているときには、前記入口通路と前記出口通路との連通が遮断され、
前記弁体が前記閉鎖位置にあり且つ前記貫通孔が前記アクチュエータによって閉鎖されていないときには、前記入口通路と前記出口通路が前記貫通孔を介して連通し、
前記弁体が前記閉鎖位置以外の位置にあるときには、前記入口通路と前記出口通路が前記貫通孔を介して連通すると共に、前記ケーシングを貫通してその外部と連通する開口部が生成され、
前記開口部の断面積は、前記弁体の前記閉鎖位置からの変位量の増加に応じて増加することを特徴とするベントバルブ。
【請求項9】
前記ケーシングが、それを貫通すると共に前記弁体の変位する方向に沿って間隔をあけて配置された複数の透孔を有しており、前記弁体が前記閉鎖位置以外の位置にあるときに生成される前記開口部が、前記複数の透孔の少なくとも一つによって形成される請求項8に記載のベントバルブ。
【請求項10】
前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記駆動部材が所定の伸長位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材によって押圧されて前記閉鎖位置に固定され、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材から独立して前記閉鎖位置と前記全開位置の間で変位可能とされる請求項8または9に記載のベントバルブ。
【請求項11】
前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記弁体の前記貫通孔が、前記駆動部材に装着されたシール材を前記貫通孔に押し付けることによって閉鎖される請求項8または9に記載のベントバルブ。
【請求項12】
前記アクチュエータが、前記内部空間内に突出可能に構成された駆動部材を有していて、その駆動部材を前記弁体の変位する方向に沿って前記内部空間内に突出させて前記弁体に当接させることにより、前記弁体が前記閉鎖位置に向かって変位するように構成されており、
前記駆動部材が所定の伸長位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材によって押圧されて前記閉鎖位置に固定されると共に、前記駆動部材に装着されたシール材で前記弁体の前記貫通孔が閉鎖され、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときには、前記弁体は前記駆動部材から独立して前記閉鎖位置と前記全開位置の間で変位可能とされ、
前記駆動部材が所定の引込位置にあるときに前記弁体が前記駆動部材に当接する位置が、前記全開位置とされる請求項8または9に記載のベントバルブ。
【請求項13】
前記アクチュエータがエアシリンダとされ、前記アクチュエータの前記駆動部材がエアシリンダのロッドとされている請求項8〜12のいずれか1項に記載のベントバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−30720(P2009−30720A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195243(P2007−195243)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(592036379)
【Fターム(参考)】