説明

ポリイソブテニルフェノール類の製造方法

本発明は、2−アルキル−ポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物の製造方法、この方法により得ることができる組成物並びにそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−アルキルポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物の製造方法、この方法により得ることができる組成物並びにそれらの使用に関する。
【0002】
ポリアルケニルフェノール類の製造のために、酸性触媒の使用下に芳香族ヒドロキシ化合物をポリオレフィン類でアルキル化することは公知である。このいわゆるフリーデル−クラフツ−アルキル化は通例アルキル化生成物の混合物をもたらす、それというのもアルキル化生成物は非置換の出発製品よりも反応しやすいからである。そのうえ、より高分子のアルキル化剤の使用の際に、ポリオレフィン上並びにアルキル化生成物上で、しばしばフラグメンテーション反応が起こるので、通例、複雑に構成された生成物混合物が得られる。
【0003】
多くの工業的な使用のためには、そのような混合物は不適格である。むしろ、定義された位置にポリオレフィン置換を有し、定義された組成の生成物が必要である。そのうえ、所望の製品特性を達成するためには、しばしば芳香族化合物上に別の置換基、例えば低分子アルキル基が必要であり、その際にそれらの位置並びにそれらの位置は関連していてよい。それゆえ、付加的に芳香族化合物の(OH基に対して)2位及び/又は別の位置に置換されているポリイソブテニルフェノール類の製造を可能にする方法の需要が存在する。
【0004】
英国特許(GB-A)第1 159 368号明細書には、触媒としての三フッ化ホウ素−フェノラートの使用下での700〜300000の分子量を有するモノオレフィン系ポリマーアルキル化剤でのフェノールのアルキル化が開示されており、その際にこの触媒は反応混合物中へのBF3ガスの導通によりその場で発生されることができる。
【0005】
米国特許(US)第4,238,628号明細書には、触媒としての三フッ化ホウ素の存在で、ベンゼン、フェノール及びナフトールを、少なくとも3個の炭素原子を有するモノマー類からなるポリオレフィン類、好ましくはポリブテンでアルキル化する方法が開示されている。このアルキル化反応の前に、このオレフィンポリマーは、広範囲に及ぶエチレン−末端(Terminierung)を得るために、エチレンと反応されなければならない。アルキルフェノールの収率は44〜64%であるに過ぎない。
【0006】
米国特許(US)第4,429,099号明細書には、約700〜50000もしくは約1000〜75000の分子量を有するビス(ポリイソブテン)ベンゼン又はトリス(ポリイソブテン)ベンゼンでのフェノール又は置換フェノール類のアルキル化が開示されている。触媒としてとりわけBF3及びBF3O(C252が開示されている。
【0007】
国際公開(WO-A)第94/14739号パンフレットには、ポリイソブテニルヒドロキシ芳香族化合物の製造方法が教示されている。この方法の場合に、ヒドロキシ芳香族化合物は、酸性アルキル化触媒の存在で、少なくとも70%のビニリデン末端(α−オレフィン)を有し、300〜5000の数平均分子量を有するポリイソブテン(PIB)と反応される。適しているアルキル化触媒として、かなり一般的にルイス酸、トリフルオロメタンスルホン酸及び酸性モレキュラーシーブが挙げられる。具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸に加えてジエチルエーテル、リン酸及びフェノールとのBF3錯体が使用される。
【0008】
Kennedy、Guhaniyogi及びPercec (Polym. Bull. 8, 563 (1970))は、アルキル化触媒としてのBF3−ジエチルエーテラートの使用を教示し、その際にPIB:フェノール比は1:2.5又は1:1.7(その都度ポリイソブテニル末端基に対して)である。
【0009】
国際公開(WO)第01/25293号パンフレット及び国際公開(WO)第01/25294号パンフレットには、50℃を下回る温度でアルキル化触媒の存在で芳香族ヒドロキシ化合物を高反応性ポリイソブテンでアルキル化し、かつこうして得られたアルキル化生成物を、マンニッヒ反応においてホルムアルデヒド源及び少なくとも1つのアミンと反応させることによるポリイソブテンフェノール−含有のマンニッヒ付加物の製造方法が記載されている。適しているアルキル化触媒として、一般的にプロトン酸及びルイス酸、とりわけC1〜C6−アルカノール類、フェノール類又はエーテル類との三フッ化ホウ素の付加物が挙げられる。
【0010】
国際公開(WO)第03/106595号パンフレットには、多数の別の成分に加えて炭化水素置換されたフェノール、アルデヒド及びアミンからなるマンニッヒ付加物も含有していてよい、タービン燃料用の添加剤濃縮物が記載されている。
【0011】
国際公開(WO)第02/26839号パンフレットには、ルイス酸性のアルキル化触媒の存在でのポリイソブテン類での芳香族ヒドロキシ化合物のアルキル化によるポリイソブテニルフェノール類の製造方法が記載されており、その際に付加的に、ルイス酸としてのBF3の場合に少なくとも102g/molの分子量を有するエーテルが助触媒として使用される。
【0012】
国際公開(WO)第02/26840号パンフレットには、ルイス酸性のアルキル化触媒の存在でのポリイソブテン類での芳香族ヒドロキシ化合物のアルキル化によるポリイソブテニルフェノール類の製造方法が記載されており、その際に前記ポリイソブテン類の少なくとも35mol%がβ位の二重結合を有する。
【0013】
本発明の基礎となるのは、ポリイソブテン類での置換フェノール類のアルキル化法を提供するという課題である。この方法は、アルキル置換基を2位に並びに場合により別の置換基を特に6位に有するフェノール類のアルキル化に特に適しているべきである。好ましくは、このアルキル化反応の際にポリイソブテン又は使用される置換フェノールのフラグメンテーション反応が本質的には行われるべきではない。この方法は、2位及び/又は6位に分枝鎖状アルキル置換基、例えばイソブチル又はt−ブチルを有するフェノール類のアルキル化にも特に適しているべきである。
【0014】
意外なことに、この課題は、出発物質として使用される2−アルキルフェノール化合物と錯生成することのできる適したBF3源がアルキル化触媒として使用されることによるアルキル化法により解決されることが目下見出された。
【0015】
本発明の対象は、2−アルキルポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物の製造方法であって、この方法の場合に
a)少なくとも1つの芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物を、2−アルキルヒドロキシ化合物と錯生成することのできるBF3源の触媒活性な量と接触させ、かつ本質的にモノエチレン系不飽和でかつ本質的にホモポリマーのポリイソブテン類でアルキル化し、
b)場合により、工程a)において得られた2−アルキルポリイソブテニルフェノール類をアミノアルキル化する。
【0016】
本発明により使用可能ではない触媒は次のものである:
・脂肪族エーテル類、例えばジアルキルエーテル類(例えばジエチルエーテル)、ジシクロアルキルエーテル類(例えばジシクロヘキシルエーテル)及びテトラヒドロフランとのBF3錯体、
・フェノール及びアリールアルキルエーテル類(例えばアニソール)とのBF3錯体、
・BF3 1mol当たりアルコール少なくとも2molを有する、脂肪族アルコール類とのBF3錯体。
【0017】
本発明による方法は、既にアルキル置換基を2位に並びに場合により別の置換基を特に6位に有するフェノール類のポリイソブテン−アルキル化を可能にする。その場合に、そのようなフェノール類のポリイソブテン−アルキル化の際に技術水準から公知の方法を用いて生じる欠点は広範囲に及んで回避されることができる。例えば、このアルキル化反応の場合にポリイソブテン又は使用される置換フェノールのフラグメンテーション反応は本質的に観察されない。出発物質として使用されるポリイソブテンは、高い転化率を伴ってアルキル化に使用されることができる。助触媒としてフェノール及びアリールアルキルエーテル類とのBF3錯体を使用する際に望ましくない副反応として生じる助触媒のアルキル化は回避される。そのうえ、本発明による方法は、2位及び/又は6位に分枝鎖状アルキル置換基、例えばイソブチル又はt−ブチルを有するフェノール類のアルキル化にも適している。技術水準から公知の方法を用いるそのようなフェノール類のポリイソブテン−アルキル化の場合には、一般的に分枝鎖状アルキル置換基の部分的又は完全な脱離となる。
【0018】
本発明の説明の目的のために、"アルキル"という用語は直鎖状及び分枝鎖状のアルキル基を含む。好ましくはこれは直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C20−アルキル、より好ましくはC1〜C10−アルキル基、特に好ましくはC1〜C8−アルキル基及び極めて特に好ましくはC1〜C4−アルキル基である。アルキル基の例は、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、ノニル、デシルである。
【0019】
"アルキル"という用語は、一般的に1、2、3、4又は5個、好ましくは1、2又は3個及び特に好ましくは1個の置換基を有する置換されているアルキル基も含む。これらは、例えば、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、アミノ、アルコキシカルボニル、アシル、ニトロ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、カルボキシレート及びスルホネートの中から選択されている。
【0020】
"シクロアルキル"という用語は本発明の範囲内で、非置換並びに置換のシクロアルキル基、好ましくはC5〜C7−シクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルを含む。これらは、置換の場合に一般的に1、2、3、4又は5個、好ましくは1、2又は3個の置換基を有していてよい。これらの置換基は例えばアルキル及び前記の置換されているアルキル基について挙げた置換基の中から選択されている。
【0021】
"アリール"という用語は本発明の範囲内で、非置換並びに置換のアリール基を含み、かつ好ましくはフェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル又はナフタセニル、特に好ましくはフェニル又はナフチルを表す。これらのアリール基は、置換の場合に一般的に1、2、3、4又は5個、好ましくは1、2又は3個の置換基を有していてよい。これらの置換基は例えばアルキル及び前記の置換されているアルキル基について挙げた置換基の中から選択されている。
【0022】
"ヘテロアリール"という用語は本発明の範囲内で、非置換又は置換の、ヘテロ環式芳香族基、好ましくは以下の基:ピリジル、キノリニル、アクリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、インドリル、プリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル及びカルバゾリルを含む。これらのヘテロ環式芳香族基は、置換の場合に一般的に1、2又は3個の置換基を有していてよい。これらの置換基は例えばアルキル及び前記の置換されているアルキル基について挙げた置換基の中から選択されている。
【0023】
カルボキシレート及びスルホネートは本発明の範囲内で、好ましくはカルボン酸官能基もしくはスルホン酸官能基の誘導体、特に金属カルボキシレート又は金属スルホネート、カルボン酸エステル官能基又はスルホン酸エステル官能基又はカルボン酸アミド官能基又はスルホン酸アミド官能基を表す。これらには例えばC1〜C4−アルカノール類、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール及びt−ブタノールとのエステルが含まれる。
【0024】
"アシル"という用語は本発明の範囲内で、一般的に炭素原子2〜11個、好ましくは2〜8個を有するアルカノイル基又はアロイル基、例えばアセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、2−エチルヘキサノイル基、2−プロピルヘプタノイル基、ベンゾイル基又はナフトイル基を表す。
【0025】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素、好ましくはフッ素、塩素及び臭素を表す。
【0026】
好ましくは工程a)において使用されるBF3源は、次のものの中から選択されている:
i)ガス状BF3
ii)工程a)において使用される芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物の少なくとも1つとのBF3錯体、
iii)工程a)における反応条件下で本質的にアルキル化されない芳香族ヒドロキシ化合物とのBF3錯体、及び
iv)BF3 1mol当たりアルコール2mol未満を有する、BF3と脂肪族アルコール類との混合物。
【0027】
前記の実施態様i)によれば、アルキル化触媒は、出発物質として使用される芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物及びBF3からその場で形成される。このためにはヒドロキシ芳香族化合物が反応帯域中にバルクで又は好ましくは溶解状態で装入され、引き続いてガス状BF3が添加されることができる。
【0028】
前記の実施態様ii)によれば、アルキル化触媒は、出発物質として使用される芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物の少なくとも1つ及びBF3源から前もって別個に形成される。この態様による適したBF3源は、ガス状BF3並びに出発物質として使用される芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物とのBF3錯体よりも低い錯生成定数を有するBF3錯体である。
【0029】
前記の実施態様iii)によれば、工程a)における反応条件下に本質的にアルキル化されない芳香族ヒドロキシ化合物との少なくとも1つのBF3錯体がBF3源として使用される。これらには、OH基に対して2、4及び6位に水素とは異なる置換基を有する置換フェノール類、好ましくは2,4,6−トリアルキルフェノール類、例えば2,4,6−トリメチルフェノールが含まれる。さらにこれらには、OH基及びアルキル基に加えて、反応性を低下させる少なくとも1つの別の置換基、例えばアシル、カルボキシル、シアノ、ニトロ及び特にハロゲンを有する置換フェノール類が含まれる。例えば、フェノール基に対して4位に反応性を低下させる別の置換基を有する2−アルキルフェノール類が適している。ハロゲンフェノール類、特に2−クロロフェノール、4−クロロフェノール及び2,4−ジクロロフェノールが好ましい。
【0030】
前記の実施態様iv)によれば、BF3源としてBF3と少なくとも1つの脂肪族アルコールとの混合物が使用され、その際にアルコール対BF3のモル量比は2未満:1である。好ましくはアルコール対BF3のモル量比は多くとも1.9:1であり、特に好ましくは多くとも1.5:1、殊に多くとも1.1:1である。
【0031】
好ましくは前記脂肪族アルコールは、C1〜C4−アルカノール類、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール及びt−ブタノールの中から選択されている。特に好ましくはメタノールが使用される。
【0032】
工程a)におけるアルキル化のために使用されるポリイソブテンは、好ましくは少なくとも100の数平均分子量Mnを有する。100〜500000、特に好ましくは120〜20000、より好ましくは150〜5000及び特に200〜1000の範囲内の数平均分子量Mnを有するポリイソブテン類が好ましい。"ポリイソブテン"という概念の中には、本発明の範囲内で、オリゴマーイソブテン類、例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体及び七量体のイソブテンも含まれる。
【0033】
ポリイソブテンとしてアルキル化反応において原則的に、各々一般的でかつ商業的に入手可能なポリイソブテンが使用されることができる。
【0034】
好ましくは、工程a)におけるアルキル化のためにいわゆる"反応性の"ポリイソブテンが使用される。"反応性の"ポリイソブテン類は"低反応性の"ポリイソブテン類とは末端に配置された二重結合含量により区別される。故に、反応性のポリイソブテン類は、、ポリイソブテン−高分子の総数に対して、少なくとも50mol%の末端に配置された二重結合を有する。ポリイソブテン−高分子の総数に対して、少なくとも60mol%及び特に少なくとも80mol%の末端に配置された二重結合を有するポリイソブテン類が特に好ましい。末端に配置された二重結合は、ビニル二重結合[−CH=C(CH32](β−オレフィン)並びにビニリデン二重結合[−CH−C(=CH2)−CH3](α−オレフィン)であってよい。そのうえ、アルキル化のためには、均一なポリマー骨格を有する本質的にホモポリマーのポリイソブテン類が使用される。これらは本発明の範囲内で、少なくとも85質量%、好ましくは少なくとも90質量%及び特に好ましくは少なくとも95質量%がイソブテン単位[−CH2C(CH32−]から構成されているそのようなポリイソブテン類であると理解される。
【0035】
さらに工程a)において使用されるポリイソブテン類は好ましくは1.05〜10の多分散性指数(PDI)を有する。多分散性は、質量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnからの商(PDI=Mw/Mn)であると理解される。特定のPDIを有するアルキル化に使用されるポリイソブテン類の選択は、アルキル化生成物もしくはそれらのマンニッヒ付加物の使用目的により決定される。その際に一般的に、与えられたMnでのPDI値は粘度と相関する。相応して、使用媒体との容易な混和性又は加工性、ひいては低い粘度が必要とされる使用のためには、好ましくは多くとも3.0のPDIを有するポリイソブテンが選択される。これに反してコーティングの形での表面変性のためには、しばしばより高い粘度が望ましいので、この場合に1.5〜10の範囲内のPDIを有するポリイソブテン類が好ましい。
【0036】
ポリイソブテン基を有し、ポリイソブテン基の狭い分子量分布(PDI 約1.05〜約3.0、好ましくは約1.05〜約2.0)を有する2−アルキルポリイソブテニルフェノール類は例えば、燃料組成物及び潤滑剤組成物における清浄剤又は分散剤として、圧力系における、ポリマー類における又は単層における疎水化のための添加剤としての使用に適している。ポリイソブテン基を有し、中程度の分子量分布(PDI 約1.6〜約2.5)を有する2−アルキルポリイソブテニルフェノール類は例えば、乳濁液又は分散液における使用並びに基礎材料、例えば炭酸カルシウム(例えばモルタルの形で)、セッコウ又はセメントの疎水化に適しているのに対し、幅広い分子量分布(約2.1〜約10のポリイソブテン基のPDI)を有するそのようなものは、腐食抑制剤としての使用又は同様に基礎材料の疎水化に適している。
【0037】
ポリイソブテン類は本発明の範囲内で、好ましくは少なくとも60質量%のイソブテン、特に好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%及び特に少なくとも95質量%のイソブテンを重合導入されて含有し、カチオン重合により得ることができる全てのポリマー類であると理解される。それに加えて、ポリイソブテン類は別のブテン異性体、例えば1−又は2−ブテン並びにそれらとは異なり、イソブテンとカチオン重合条件下で共重合性であるオレフィン系不飽和モノマー類を重合導入されて含有していてよい。
【0038】
出発物質として本発明による方法に適しているポリイソブテン類の製造のためのイソブテン装入原料として、それに応じて、イソブテン自体並びに含まれている1,3−ブタジエンが広範囲に及んで取り除かれている限り、イソブテン含有C4炭化水素流、例えばC4ラフィネート、イソブテン脱水素からのC4留分、スチームクラッカー、FCC−クラッカー(FCC:流動接触分解)からのC4留分が適している。特に適しているC4炭化水素流は、通例500ppm未満、好ましくは200ppm未満のブタジエンを含有する。装入材料としてC4留分を使用する場合にイソブテンとは異なる炭化水素が不活性溶剤の役割を引き受ける。
【0039】
共重合性モノマーとして、ビニル芳香族化合物、例えばスチレン及びα−メチルスチレン、C1〜C4−アルキルスチレン類、例えば2−、3−及び4−メチルスチレン並びに4−t−ブチルスチレン、炭素原子5〜10個を有するイソオレフィン類、例えば2−メチルブテン−1、2−メチルペンテン−1、2−メチルヘキセン−1、2−エチルペンテン−1、2−エチルヘキセン−1及び2−プロピルヘプテン−1が考慮の対象になる。コモノマーとして、シリル基を有するオレフィン類、例えば1−トリメトキシシリルエテン、1−(トリメトキシシリル)プロペン、1−(トリメトキシシリル)−2−メチルプロペン−2、1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]エテン、1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]プロペン及び1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]−2−メチルプロペン−2がさらに考慮の対象になる。
【0040】
適しているポリイソブテン類は、普通のカチオン重合又はリビングカチオン重合により得ることができる全てのポリイソブテン類である。しかしながら、前記で既に記載されたいわゆる"反応性の"ポリイソブテン類が好ましい。
【0041】
適しているポリイソブテン類は、例えばBASF AktiengesellschaftのGlissopal−商標、例えばGlissopal 550、Glissopal 1000及びGlissopal 2300、並びにBASF AktiengesellschaftのOppanol−商標、例えばOppanol B10、B12及びB15である。
【0042】
適しているポリイソブテン類の製造方法は、例えば独国特許出願公開(DE-A)第27 02 604号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第145 235号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第481 297号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第671 419号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第628 575号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第807 641号明細書及び国際公開(WO)第99/31151号パンフレットから公知である。イソブテンもしくはイソブテン含有モノマー混合物のリビングカチオン重合により製造されるポリイソブテン類は、例えば米国特許(US)第4,946,899号明細書、米国特許(US)第4,327,201号明細書、米国特許(US)第5,169,914号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第206 756号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第265 053号明細書、国際公開(WO)第02/48216号パンフレット及びJ.P. Kennedy, B. Ivan, "Designed Polymers by Carbocationic Macromolecular Engineering"、Oxford University Press、New York 1991に記載されている。ポリイソブテン類を記載するこれらの及び他の刊行物については本明細書により全面的に関連づけられている。
【0043】
重合法に依存して、得られるポリイソブテン類の多分散性指数(PDI=Mw/Mn)は約1.05〜10である。リビングカチオン重合からのポリマーは通例、約1.05〜2.0のPDIを有する。本発明による方法において使用されるポリイソブテン類の分子量分布は、2−アルキルポリイソブテニルフェノール類の分子量分布に直接影響を及ぼす。既に述べたように、使用目的に応じてアルキル化のために低い分子量分布、中程度の分子量分布又は幅広い分子量分布を有するポリイソブテン類が選択される。
【0044】
工程a)におけるアルキル化に使用される芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物は、OH基及びアルキル基に加えてさらに少なくとも1つの別の置換基を有していてよいフェノール性化合物の中から好ましくは選択されている。適した別の置換基は、例えばアルキル、ヒドロキシ、ポリアルキレンオキシド及びポリアルキレンイミンである。特に好ましくは、工程a)におけるアルキル化に使用される芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物は、一般式I
【化1】

[式中、
1はC1〜C20−アルキルを表し、かつ
2は、水素、C1〜C20−アルキル、ヒドロキシを表すか又はO、S及びNR3の中から選択されている少なくとも1つの原子団により中断されているC2〜C4000−アルキルを表し、ここでR3は水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールを表す]で示される化合物の中から選択されている。
【0045】
好ましい一態様において基R2は水素を表す。別の好ましい態様において基R2は、ベンゼン環上の6位に結合されており、水素とは異なる基を表す。好ましくはR2は初めに与えられた定義によるアルキル基を表す。
【0046】
式Iの好ましい化合物は、o−クレゾール、2−エチルフェノール、2−(n−プロピル)フェノール、2−(n−ブチル)フェノール、2,3−、2,4−、2,5−及び2,6−ジメチルフェノール、2,3−、2,4−、2,5−及び2,6−ジエチルフェノール、2,3−、2,4−、2,5−及び2,6−ジ(n−プロピル)フェノール、2,3−、2,4−、2,5−及び2,6−ジ(n−ブチル)フェノールである。
【0047】
本発明による方法は、2位及び/又は6位に分枝鎖状アルキル置換基を有するフェノール類のアルキル化に特別に適している。これらには、好ましくは一般式Iの2−アルキルヒドロキシ化合物が含まれ、ここでR1及び/又はR2は少なくとも1個の第三級又は第四級炭素原子を有するC1〜C20−アルキル基を表す。少なくとも1個の第三級又は第四級炭素原子を有する適したC1〜C20−アルキル基は、イソプロピル、2−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル等である。好ましいC1〜C20−アルキル基はイソプロピル及びt−ブチルである。
【0048】
2位及び/又は6位に分枝鎖状アルキル置換基を有する好ましいフェノール類は、2−イソプロピルフェノール、2−(t−ブチル)フェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール及び2,6−ジ(t−ブチル)フェノールである。
【0049】
有利には、本発明による方法は工程a)におけるアルキル化に使用される芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物の本質的に選択的なポリイソブテン−モノアルキル化を可能にする。本発明による方法により、通例、(使用される出発物質がポリアルキル化を許容する限り)多くとも20mol%、好ましくは多くとも10mol%、特に多くとも5mol%が、一度よりも多くポリイソブテンでアルキル化されている2−アルキルポリイソブテニルフェノール類が得られる。2位及び/又は6位にアルキル置換基を有する前記の好ましいフェノール類からは、その場合に4位にポリイソブテンでアルキル化された化合物が本質的に選択的に得られる。
【0050】
有利には、本発明による方法は、芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物の大過剰量が使用される必要なく、本質的に選択的なポリイソブテン−アルキル化を可能にする。好ましくは芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物及びポリアルケン類は、5:1〜1:1、特に好ましくは2.5:1〜1:1、殊に好ましくは2:1〜1:1のモル量比で使用される。しかしながらもちろん、100%及びそれ以上の芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物の過剰量も適している。芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物のモル量はその場合に、アルキル化に有効に利用できる量であると理解される(すなわち触媒の形成の際にBF3との錯生成のための消費された量を差し引いて)。
【0051】
通例、芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物に対してBF3源1〜30mol%が使用される。特別な場合に、例えばより高い反応速度を達成するために、より多量、例えば50又は80mol%が使用されることができる。
【0052】
本発明による方法は溶剤不含で実施されることができる。しかしながら溶剤としての炭化水素、例えばn−アルカン又はそれらの混合物の使用が好ましい。ポリイソブテン類でのアルキル化に対してそれらの低い反応性のために、アルキル芳香族化合物又はそれらの混合物も使用されることができる。この際に特に有利には、芳香族化合物、例えばトルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、異性体トリメチルベンゼン類又はそれらの混合物(例えばExxon Companyから"Aromatic 100"又は"Aromatic 150"として販売される混合物)が使用される。これらの溶剤中で、通例、工程b)における任意の別の反応も行われることができ、又はこの生成物が市場に出されることができる。
【0053】
好ましくは工程a)における反応は高くとも40℃、好ましくは高くとも30℃の範囲内での温度で行われる。これは、BF3源との芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物の接触並びにポリイソブテン類でのアルキル化が当てはまる。その場合に、BF3源との芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物の接触は高くとも20℃、好ましくは高くとも10℃のより低い温度でも行われることができる。
【0054】
工程a)における反応は通常、大気圧で実施されるが、しかしより高い圧力又はより低い圧力でも実施されることができる。
【0055】
反応成分の添加順序は原則的に重要でない。しかしながら、芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物をバルクで又は溶解状態で装入し、BF3源をガス状BF3として、付加物として又はアルコールとの混合物として前記のように添加し、最後にポリイソブテンを同様にバルクで又は溶解状態で添加することが有利であることが判明している。この反応はアルカノール、例えばメタノールを用いて停止されることができる。後処理のためには、水、アルカノール類又は水−アルカノール−混合物で洗浄され、引き続いて有機相は常法により、例えば硫酸ナトリウム又は硫酸マグネシウム上で乾燥され、かつ溶剤は除去されることができる。
【0056】
本発明による方法の工程a)において得られた2−アルキルポリイソブテニルフェノール類は、多数の工業的な使用のため及び特に光、酸素及び熱の作用に対する無生物有機材料の安定化のため、燃料添加剤として並びに燃料清浄剤を製造するための中間生成物として適している。これらの使用分野については以下に本発明による組成物の場合にさらに詳細に検討される。
【0057】
本発明による方法の工程a)において得られた2−アルキルポリイソブテニルフェノール類は、後続反応として工程b)においてアミノアルキル化されることができる。ポリイソブテニルフェノール含有マンニッヒ付加物の適した製造方法は当業者に原則的に公知であり、かつ例えば欧州特許出願公開(EP-A)第0 831 141号明細書、国際公開(WO)第01/25293号パンフレット及び国際公開(WO)第01/25294号パンフレットに記載されており、これらについては本明細書に全面的に関連付けられている。
【0058】
好ましくは工程b)における反応のために一般式Iの化合物のポリイソブテン−アルキル化生成物が使用され、ここでR1はC1〜C20−アルキル基を表し、かつR2は水素を表す。特別な一態様において、一般式Iの化合物のポリイソブテン−アルキル化生成物が使用され、ここでR1は少なくとも1つの第三級又は第四級炭素原子を有するC1〜C20−アルキル基を表す。
【0059】
アミノアルキル化のためには、a)のもとで得られた反応生成物は、b)のもとでアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒド又はそのオリゴマー又はポリマー、及び少なくとも1つの第一級アミノ官能基又は少なくとも1つの第二級アミノ官能基を有する少なくとも1つのアミンと反応されることができる。a)のもとで得られた反応生成物と、ホルムアルデヒドとの第一級アミン類からなる付加物、例えばヘキサヒドロトリアジン類、例えばトリフェニルヘキサヒドロトリアジンとの反応も可能である。この反応は以下にマンニッヒ反応とも呼ばれる。
【0060】
好ましいアルデヒド類は、ホルムアルデヒド、ホルマリン溶液、ホルムアルデヒドオリゴマー類、例えばトリオキサン、又はホルムアルデヒドのポリマー類、例えばパラホルムアルデヒドである。もちろんガス状ホルムアルデヒドも使用されることができる。
【0061】
適しているアミン類は少なくとも1つの第一級又は第二級アミノ官能基を有する。第一級アミノ官能基は本発明の範囲内で、式HNR45のアミノ官能基であって、ここで基R4又はR5の1つが水素原子を表し、かつ他方の基が水素とは異なる置換基の中から選択されている。
【0062】
第二級アミノ官能基は本発明の範囲内で、式HNR45のアミノ官能基であって、ここで基R4及びR5は、水素とは異なる置換基の中から選択されている。
【0063】
好ましくは基R4及びR5は、水素並びにN及びOの中から選択されるヘテロ原子により中断されていてよい及び/又は置換されていてよいC1〜C20−アルキル基、C3〜C8−シクロアルキル基及びC1〜C20−アルコキシ基の中から選択されており、その場合にヘテロ原子はそしてまたH、C1〜C6−アルキル、アリール及びヘテロアリールの中から好ましくは選択される置換基を有していてよく;又はR4及びR5はこれらが結合されている窒素原子と一緒になって、N及びOの中から選択される1又は2個のヘテロ原子を有していてよく、かつ1、2又は3個のC1〜C6−アルキル基で置換されていてよい5又は6員環を形成する。さらにR4及びR5は、アリール基及びヘテロアリール基を表してもよい。アリール基及びヘテロアリール基は場合により、例えばヒドロキシ及び前記のアルキル基、シクロアルキル基又はアルコキシ基及びポリイソブテン基の中から選択される1〜3個の置換基を有する。
【0064】
適している基R4、R5は、例えば水素、メチル、エチル、n−プロピル、s−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシル、5、6及び7員の飽和、不飽和又は芳香族の炭素環及びヘテロ環、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、トリル、キシリル、シクロヘプチル、ナフチル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、ピロリジル、ピペリジル、ピリジル及びピリミジルである。
【0065】
専ら第一級アミノ官能基を有する式HNR45の適している化合物は、例えばメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン及びベンジルアミンである。
【0066】
専ら第一級アミノ官能基を有し、かつ基R4又はR5がヘテロ原子Oにより中断されている及び/又は置換されているアルキル基を表す式HNR45の適している化合物は、例えばCH3−O−C24−NH2、C25−O−C24−NH2、CH3−O−C36−NH2、C25−O−C36−NH2、n−C49−O−C48−NH2、HO−C24−NH2、HO−C37−NH2及びHO−C48−NH2である。
【0067】
専ら第二級アミノ官能基を有する式HNR45の適している化合物は、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−s−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン及びジフェニルアミンである。
【0068】
専ら第二級アミノ官能基を有し、かつ基R4及びR5がヘテロ原子Oにより中断されている及び/又は置換されているアルキル基を表す式HNR45の適している化合物は、例えば(CH3−O−C242NH、(C25−O−C242NH、(CH3−O−C362NH、(C25−O−C362NH、(n−C49−O−C482NH、(HO−C242NH、(HO−C362NH及び(HO−C482NHである。
【0069】
4及びR5がこれらが結合されている窒素原子と一緒になって、N及びOの中から選択される1個又は2個のヘテロ原子を有していてよく、かつ1、2又は3個のC1〜C6−アルキル基で置換されていてよい5、6又は7員の環を形成する式HNR45の適している化合物は、例えばピロリジン、ピペリジン、モルホリン及びピペラジン並びにそれらの置換されている誘導体、例えばN−C1〜C6−アルキルピペラジン類及びジメチルモルホリンである。
【0070】
Nにより中断されている及び/又は置換されているアルキル基を有する式HNR45の適している化合物は、アルキレンジアミン類、ジアルキレントリアミン類、トリアルキレンテトラミン類及びポリアルキレンポリアミン類、例えばオリゴアルキレンイミン類又はポリアルキレンイミン類、特にオリゴエチレンイミン類又はポリエチレンイミン類、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個及び特に好ましくは2〜6個のエチレンイミン単位からなるオリゴエチレンイミン類である。適しているそのような化合物は、特にn−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びポリエチレンイミン類、並びに少なくとも1つの第一級又は第二級アミノ官能基を有するそれらのアルキル化生成物、例えば3−(ジメチルアミノ)−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン及びN,N,N′,N′−テトラメチルジエチレントリアミンである。エチレンジアミンが同様に適している。
【0071】
式HNR45のさらに適している化合物は、アルキレンオキシド類、特にエチレンオキシドと第一級アミン類との反応生成物、並びにエチレンオキシドとエチレンイミン及び/又は第一級又は第二級C1〜C6−アルキルアミン類とのコポリマー類である。
【0072】
式HNR45の好ましい化合物は、3−(ジメチルアミノ)−n−プロピルアミン、ジ[3−(ジメチルアミノ)−n−プロピル]アミン、ジ[3−(ジエチルアミノ)−n−プロピル]アミン、ジ[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ジメチルモルホリン、N−メチルピペラジン、HO−C24−NH2、(HO−C242NH、H3C−O−(CH22−NH2、H3C−O−(CH23−NH2、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルジエチレントリアミン及びポリエチレンイミン類である。
【0073】
式HNR45の特に好ましい化合物は、3−(ジメチルアミノ)−n−プロピルアミン、ジ[3−(ジメチルアミノ)−n−プロピル]アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ジフェニルアミン及びモルホリンである。
【0074】
(マンニッヒ)反応の際に反応水が生じる。通例、この水は反応混合物から除去される。反応水は、反応の間、反応時間の終了時又は反応が終了した後に、例えば蒸留により除去されることができる。有利には反応水は共沸剤の存在での反応混合物の加熱により除去されることができる。例えば、水とアゼオトロープを形成する及び/又は水の沸点を上回る沸点を有する有機溶剤が共沸剤として適している。
【0075】
特に適している共沸剤は、パラフィン類、ベンゼン及びアルキル芳香族化合物、特にトルエン、キシレン類及びアルキル芳香族化合物と他の(高沸点)炭化水素との混合物である。通例、反応水の除去は、共沸剤又は水と共沸剤とからなるアゼオトロープの沸点にほぼ相当する温度で実施される。
【0076】
反応水の除去に適した温度は故に常圧で75〜200℃、好ましくは80〜180℃の範囲内、及び特に好ましくは80〜150℃の範囲内である。反応水が減圧で除去される場合には、温度は下降した沸騰温度に相応して低下されるべきである。
【0077】
マンニッヒ反応の適した反応温度は、好ましくは10〜200℃の範囲内、特に20〜180℃の範囲内、例えば約35℃、約90℃、約120℃又は約140℃である。
【0078】
好ましい一実施態様において、マンニッヒ反応及び反応水の除去は、ほぼ大気圧及び約80℃、約110℃又は約130℃の温度で共沸剤として芳香族溶剤、好ましくはトルエン、キシレン類又はそれらの混合物を用いて実施される。マンニッヒ反応は好ましくは、反応物が10〜50℃の温度範囲内で合一され、場合によりこの温度範囲内で混合され、引き続いて反応水の蒸留による除去に必要な温度にするようにして実施される。
【0079】
b)のもとで実施されるマンニッヒ反応の場合に、a)からの2−アルキルポリイソブテニルフェノール1molに対して、通例0.5〜3.0mol、好ましくは0.5〜2.0mol及び特に0.8〜1.5molのアルデヒド、並びに0.5〜3.0mol、好ましくは0.5〜2.0mol及び特に0.8〜1.5molのアミンが使用される。
【0080】
本発明による方法はまず最初に、極めて高い収率での2位及び/又は6位に分枝鎖状アルキル置換基を有するフェノール類のアルキル化並びにそれらのマンニッヒ付加物の製造に適している。故に、本発明のさらなる対象は、前記のような方法により得ることができる、少なくとも1つの2−アルキルポリイソブテニルフェノール及び/又は少なくとも1つのそのマンニッヒ付加物を含有している組成物である。好ましくは、R1及び/又はR2が少なくとも1つの第三級又は第四級炭素原子を有するC1〜C20−アルキル基を表す一般式Iの少なくとも1つの芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物のアルキル化により得ることができる組成物が重要である。特に、本発明による組成物は、少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも95質量%の少なくとも1つの2−アルキルポリイソブテニルフェノール及び/又はその少なくとも1つのマンニッヒ付加物を含有する。
【0081】
本発明による方法により得ることができる2−アルキルポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物並びに本発明による組成物は有利には、光、酸素及び熱の作用に対する無生物有機材料の安定化に適している。好ましくはこの使用のために2位及び/又は6位に分枝鎖状アルキル置換基を有する2−アルキルポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物が使用される。これらには、好ましくは2−イソプロピル−4−ポリイソブテニルフェノール、2−(t−ブチル)−4−ポリイソブテニルフェノール、2,6−ジイソプロピル−4−ポリイソブテニルフェノール及び2,6−ジ(t−ブチル)−4−ポリイソブテニルフェノール並びにそれらのマンニッヒ付加物が含まれる。
【0082】
無生物有機材料、例えばプラスチック及び塗料の機械的、化学的及び/又は美的な性質は周知のように光、酸素及び熱の作用により悪化される。この悪化は通常、材料の黄変、変色、割れの発生又はぜい化として示される。少なくとも1つの2−アルキルポリイソブテニルフェノール及び/又はそのマンニッヒ付加物を含有する安定剤又は安定剤組成物を用いて、光、酸素及び熱による有機材料の障害に対する良好な保護が達成される。このことは特に、2位及び/又は6位に分枝鎖状アルキル置換基を有する2−アルキルポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物に当てはまる。
【0083】
使用される成分は、室温で一般的に粘稠な液体として存在し、かつ故に安定化すべき材料中へ容易に配合されることができ、かつ均質に分配されることができる。
【0084】
2−アルキルポリイソブテニルフェノール類及び/又はそれらのマンニッヒ付加物は安定化すべき有機材料に、その製造の前、その間又はその後に、この有機材料に対して、通例0.005〜5質量%、好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.01〜2質量%、特に0.05〜1質量%の濃度で添加される。
【0085】
無生物有機材料は、例えば化粧品、例えばクリーム及びローション、医薬製剤、例えばピル及び座薬、写真記録材料、特に写真乳剤、塗装組成物(Anstrichmittel)及びプラスチックであると理解されるべきである。これにはさらに鉱油、例えばディーゼル燃料、ガソリン燃料、モーター油又は潤滑油、グリースが含まれる。本発明による安定剤により安定化されることができるプラスチックとして、例えば次のものが挙げられる:
モノオレフィン類又はジオレフィン類のポリマー類、例えば低密度又は高密度のポリエチレン、ポリプロピレン、線状ポリブテン−1、ポリイソプレン、ポリブタジエン並びにモノオレフィン類又はジオレフィン類のコポリマー類又は挙げられたポリマー類の混合物;
ポリスチレン並びにスチレン又はα−メチルスチレンとジエン類及び/又はアクリル誘導体とのコポリマー類、例えばスチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、スチレン−エチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン−エチルアクリレート、スチレン−アクリロニトリル−メタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)又はメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS);ハロゲン含有ポリマー類、例えばポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン並びにそれらのコポリマー類;
α,β−不飽和酸及びそれらの誘導体から誘導されるポリマー類、例えばポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリアクリルアミド類及びポリアクリロニトリル類;
不飽和アルコール類及びアミン類からもしくはそれらのアシル誘導体又はアセタール類から誘導されるポリマー類、例えばポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニル;
ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリ尿素類、ポリフェニレンエーテル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類及びポリエーテルケトン類。
【0086】
本発明による安定剤で安定化されることができる塗装組成物には、とりわけ塗料、例えばアルキド樹脂塗料、分散塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン塗料、アクリル樹脂塗料、硝酸セルロースラッカー、又はワニス、例えば木材保護ワニスが含まれる。
【0087】
本発明による安定剤は、ポリウレタン類、特に熱可塑性ポリウレタン類の安定化に特に適している。本発明による方法の工程a)により得ることができる2−アルキルポリイソブテニルフェノール類並びに本発明による組成物は、有利には燃料添加剤として及び燃料清浄剤の製造に適している。本発明による方法の工程b)により得ることができる2−アルキルポリイソブテニルフェノールのマンニッヒ付加物及びそれらの組成物は有利には燃料組成物及び潤滑剤組成物における清浄剤添加剤として適している。
【0088】
本発明のさらなる対象は、液状炭化水素燃料の主要量並びに少なくとも1つの2−アルキルポリイソブテニルフェノール及び/又はそのマンニッヒ付加物を含有している燃料組成物である。
【0089】
本発明により得ることができる2−アルキルポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物は、好ましくはガソリン燃料及びディーゼル燃料の中から及び特にガソリン燃料の中から選択されている燃料に、好ましくは0.1〜40000質量ppmの濃度で添加される。燃料における及び特にガソリン燃料における本発明による2−アルキルポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物の使用は、モーター操作の間にこれらが到達する内燃機関のモーター油(潤滑油;lubricating oil)の性質の改善をもたらす。特にこれらはモーター油の安定化する(とりわけ抗酸化的な)及び摩擦摩耗を低下させる性質並びにその粘度を改善する。そのうえこれらは減少された燃料消費をもたらすことができる。好適には、内燃機関のモーター油(潤滑油)の性質の改善のための燃料における本発明による2−アルキルポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物の使用の場合に技術水準の公知方法に類似して行われ、これらは例えば国際公開(WO)第03/091365号パンフレット又は国際公開(WO)第94/22988号パンフレットに記載されており、これらの内容については全面的に関連付けられている。
【0090】
本発明のさらなる対象は、液状、半固体又は固体の潤滑剤の主要量並びに少なくとも1つの2−アルキルポリイソブテニルフェノール及び/又はそのマンニッヒ付加物の清浄剤活性量を含有している潤滑剤組成物である。
【0091】
本発明による前記の組成物は有利には、例えば航空機駆動装置として使用されるようなタービンの燃料循環路及び燃焼系において熱安定性を改善する及び/又は堆積物(Ablagerungen)を減少させるのに適している。故に本発明のさらなる対象は、タービン燃料(ジェット燃料)及び組成物を前記のように含有するタービン燃料組成物である。
【0092】
タービン燃料組成物は、液状タービン燃料の主要量を含有し、これは例えば民間用又は軍用の航空において常用のタービン燃料であってよい。これらには例えば名称ジェット燃料A、ジェット燃料A−1、ジェット燃料B、JP−4、JP−5、JP−7、JP−8及びJP−8+100の燃料が含まれる。ジェットA及びジェットA−1は、燈油ベースの商業的に入手可能なタービン燃料仕様である。属する規格はASTM D 1655並びにDEF STAN 91-91である。ジェットBは、ナフサ留分及び燈油留分をベースとするさらにカットされた燃料である。JP−4はジェットBに等価である。JP−5、JP−7、JP−8及びJP−8+100は、軍用タービン燃料であり、これらは例えば海軍及び空軍により使用される。一部は、これらの規格は既に別の添加剤、例えば腐食抑制剤、凍結防止剤、帯電消散剤(statische Dissipatoren)等を含有する配合物を表す。
【0093】
本発明による2−アルキルポリイソブテニルフェノール類及び/又はそれらのマンニッヒ付加物は前記タービン燃料組成物に、個々に、混合物として及び場合によりそれ自体として公知の別の添加剤との組合せで添加されることができる。
【0094】
本発明によるタービン燃料組成物中に含まれていてよい適した添加剤は、清浄剤、腐食抑制剤、酸化防止剤、例えば立体障害性t−ブチルフェノール類又はN−ブチルフェニレンジアミン類、金属不活性化剤、例えばN,N′−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン、可溶化剤、帯電防止剤、例えばStadis 450、殺生物剤、氷結防止剤、例えばジエチレングリコールメチルエーテル及びそれらの混合物を含む。
【0095】
好ましい添加剤a)は、長鎖炭化水素基を有し、無水コハク酸から誘導される化合物である。これらは、好ましくはヒドロキシ基、アミノ基、アミド基及び/又はイミド基の中から選択されている別の官能基を有していてよい。好ましい添加剤は、例えば、熱的な方法での又は塩素化炭化水素を経てのポリアルケン類と無水マレイン酸との反応により得ることができるポリアルケニル無水コハク酸の相応する誘導体である。長鎖炭化水素基の数平均分子量は好ましくは約200〜10000、特に好ましくは400〜5000、特に600〜3000及び殊に650〜2000の範囲内である。好ましくはこれらの長鎖炭化水素基は常用のポリイソブテン類及び特に前記の反応性のポリイソブテン類から誘導される。アンモニア、モノアミン類、ポリアミン類、モノアルコール類及びポリオール類を有するポリアルケニル無水コハク酸の誘導体が添加剤a)として特に興味深い。誘導体化のために好ましいポリアミン類は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、プロピレンジアミン等を含む。適しているアルコール類は、一価アルコール類、例えばエタノール、アリルアルコール、ドデカノール及びベンジルアルコール、多価アルコール類、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトール、マンニトール及びソルビトールを含む。
【0096】
添加剤として適している無水コハク酸誘導体a)は、例えば米国特許(US)第3,522,179号明細書、米国特許(US)第4,234,435号明細書、米国特許(US)第4,849,572号明細書、米国特許(US)第4,904,401号明細書、米国特許(US)第5,569,644号明細書及び米国特許(US)第6,165,235号明細書に記載されており、これらについては本明細書に全面的に関連付けられている。
【0097】
適している添加剤b)は、ポリアルケニルチオホスホネートエステルである。これらのエステルのポリアルケニル基は、好ましくは約300〜5000、特に好ましくは400〜2000及び特に500〜1500の範囲内の数平均分子量を有する。ポリアルケニル基は好ましくは、前記で成分a)で長鎖炭化水素基として記載されたようなポリオレフィン類から誘導される。これらは殊に、常用又は反応性のポリイソブテン類から誘導されるポリアルケニル基である。ポリオレフィンとチオホスホリル化剤との反応による適したポリアルケニルチオホスホネートエステルの適している製造方法は、例えば米国特許(US)第5,725,611号明細書に記載されており、これについては本明細書に関連付けられている。
【0098】
適している添加剤c)は、本発明によるマンニッヒ付加物とは異なるマンニッヒ付加物である。そのような付加物は原則的に、芳香族ヒドロキシル化合物、特にフェノール及びフェノール誘導体とアルデヒド類及びモノアミン類又はポリアミン類とのマンニッヒ反応により得られる。好ましくは、ポリイソブテン置換フェノール類とホルムアルデヒド及びモノアミン類又はポリアミン類、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン等との反応生成物が重要である。適しているマンニッヒ付加物及びそれらの製造方法は、例えば米国特許(US)第5,876,468号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第831 141号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第1 233 990号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A)第1 226 188号明細書に記載されており、これらについては本明細書に全面的に関連付けられている。
【0099】
本発明によるタービン燃料組成物は、少なくとも1つの2−アルキルポリイソブテニルフェノール及び/又はそのマンニッヒ付加物を、前記のように、タービン燃料組成物の全量に対して0.0001〜1質量%、特に好ましくは0.001〜0.5質量%、特に0.01〜0.2質量%及び殊に0.01〜0.1質量%の量で含有する。
【0100】
付加的な成分a)〜c)並びに前記の付加的な成分の別の成分は、タービン燃料組成物の全量に対して、通常0.0001〜1質量%、好ましくは0.001〜0.6質量%及び特に0.0015〜0.4質量%の量でその都度使用されることができる。
【0101】
本願のさらなる対象は、少なくとも1つの2−アルキルポリイソブテニルフェノール及び/又はそのマンニッヒ付加物、前記のように、場合により少なくとも1つの希釈剤並びに場合により前記のものの中から選択されている少なくとも1つの別の添加剤を含有している、タービン燃料用の添加剤濃縮物である。
【0102】
適している希釈剤は、例えば石油加工の際に生じる留分、例えば燈油、ナフサ又はブライトストックである。さらにまた芳香族及び脂肪族の炭化水素、例えばソルベントナフサヘビー、Solvesso(登録商標)又はShellsol(登録商標)並びにこれらの溶剤及び希釈剤の混合物が適している。
【0103】
本発明によるポリマーは前記濃縮物中に、前記濃縮物の全質量に対して、好ましくは0.1〜100質量%、特に好ましくは1〜80質量%及び特に10〜70質量%の量で存在する。
【0104】
本発明による2−アルキルポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物は有利にはタービン燃料の熱安定性の改善に適している。これらはさらにタービン、特に航空機タービンの燃料循環路中及び燃焼系中の堆積物を減少させるのにも適している。故に本発明のさらなる対象は、これらの使用分野のための少なくとも1つの本発明による2−アルキルポリイソブテニルフェノール及び/又はそのマンニッヒ付加物の使用でもある。
【0105】
本発明は、限定されない次の例に基づいてより詳細に説明される。
【実施例】
【0106】
比較例1)
触媒としてBF3−フェノール錯体を用いるアルキル化
撹拌機、温度計及び滴下漏斗を備えている2l四つ口フラスコ中で、o−クレゾール65gをトルエン20ml中に溶解させる。ついでBF3−フェノール錯体(1:2、mol:mol)11.8gを添加し、n−ヘキサン300ml中のポリイソブテン300g(Mn=1000ダルトン、Mw/Mn=1.6;Glissopal(登録商標)1000)を20〜30℃で滴加し、16h後撹拌する。反応混合物を25%アンモニア溶液で1回及び水500mlで5回洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ロータリーエバポレーター上で160℃/5mbarで濃縮する。
油325g、1H−NMRa)による
2−メチル−4−ポリイソブテニルフェノール(δ:6.66ppm 二重線、7.04ppm 二重線の二重線(Dublett von Dubletts:dd)、7.09ppm 二重線、各1H;2.24ppm 一重線 3H)及び4−ポリイソブテニルフェノール10mol%(6.73ppm 二重線、7.22ppm 二重線 各2H)。
【0107】
比較例2)
触媒としてBF3−ジエチルエーテル錯体を用いるアルキル化
撹拌機、温度計及び滴下漏斗を備えている1l四つ口フラスコ中で、2−t−ブチルフェノール60gをBF3−エーテラート14ml中に溶解させる。ついでn−ヘキサン200ml中のポリイソブテン200g(Mn=1000ダルトン、Mw/Mn=1.6;Glissopal(登録商標)1000)を19〜23℃で滴加し、16h後撹拌する。反応混合物をメタノール500mlで3回洗浄し、ロータリーエバポレーター上で140℃/5mbarで濃縮する。
油180g、1H−NMRa)による(単位:mol%):
2−t−ブチル−4−ポリイソブテニルフェノール(δ:6.57ppm 二重線、7.15ppm 二重線の二重線、7.26ppm 二重線、各1H;1.40ppm 9H) 17%及び
4−ポリイソブテニルフェノール(δ:6.73ppm 二重線、7.22ppm 二重線 各2H) 7%
転位した二重結合を有するポリイソブテン 76%。
【0108】
比較例3)
触媒としてCF3−SO3Hを用いるアルキル化
撹拌機、温度計及び滴下漏斗を備えている1l四つ口フラスコ中で、2−t−ブチルフェノール41.2gをトルエン10ml中に溶解させる。ついでCF3−SO3H 5gを添加し、n−ヘキサン100ml中のポリイソブテン200g(Mn=1000ダルトン、Mw/Mn=1.6;Glissopal(登録商標)1000)を19〜25℃で滴加し、16h後撹拌する。反応混合物を5%アンモニア溶液で1回及びメタノール500mlで3回洗浄し、ロータリーエバポレーター上で120℃/5mbarで濃縮する。
油200g、1H−NMRa)による(単位:mol%):
芳香族混合物、個々の異性体は確認できない 20%
転位した二重結合を有するポリイソブテン 80%。
【0109】
例4(本発明による)
撹拌機、温度計及び滴下漏斗を備えている4l四つ口フラスコ中で、2−t−ブチルフェノール300gをトルエン200ml中に溶解させる。ついで0〜5℃でBF3 3.5gをガス導入し(eingegast)、引き続いてn−ヘキサン400ml中のポリイソブテン1000g(Mw=1000ダルトン、Mw/Mn=1.6;Glissopal(登録商標)1000)を0〜10℃で滴加し、2h後撹拌する。反応をメタノール200mlで停止させ、メタノール1.5 lで2回洗浄し、ロータリーエバポレーター上で160℃/5mbarで濃縮する。
油970g、1H−NMRa)による(単位:質量%):
2−t−ブチル−4−ポリイソブテニルフェノール(δ:6.57ppm 二重線、7.15ppm 二重線の二重線、7.26ppm 二重線、各1H;1.40ppm 9H) >95%及びそれに加えて僅少量の2−t−ブチルフェノール。
【0110】
例5(本発明による)
撹拌機、温度計及び滴下漏斗を備えている4l四つ口フラスコ中で、2−t−ブチルフェノール300gをトルエン200ml中に溶解させる。ついで0〜5℃までBF3/MeOH錯体1:1.1 10gを滴加し、引き続いてn−ヘキサン400ml中のポリイソブテン1000g(Mn=1000ダルトン、Mw/Mn=1.6;Glissopal(登録商標) 1000)を0〜10℃で滴加し、2h後撹拌する。反応をメタノール200mlで停止させ、メタノール1 lで2回洗浄し、ロータリーエバポレーター上で160℃/5mbarまで濃縮する。
油958g、1H−NMRa)による(単位:質量%):
2−t−ブチル−4−ポリイソブテニルフェノール(δ:6.57ppm 二重線、7.15ppm 二重線の二重線、7.26ppm 二重線、各1H;1.40ppm 9H) 約95%及びそれに加えて僅少量の2−t−ブチルフェノール。
【0111】
例6(本発明による)
撹拌機、温度計及び滴下漏斗を備えている4l四つ口フラスコ中に、トルエン100ml中の2−メチルフェノール324gを装入する。ついで室温でBF3 8.5gをガス導入し、引き続いてn−ヘキサン200ml中のポリイソブテン1500g(Mn=1000ダルトン、Mw/Mn=1.6;Glissopal(登録商標)1000)を供給し、その際に内部温度は30℃まで上昇する。室温で一晩に亘り後撹拌する。反応をメタノール500mlで停止させ、メタノール1 lで洗浄し、ロータリーエバポレーター上で150℃/5mbarで濃縮する。
油1530g、1H−NMRa)による(単位:質量%):
2−メチル−4−ポリイソブテニルフェノール(δ:6.66ppm 二重線、7.04ppm 二重線の二重線、7.09ppm 二重線、各1H、2.24ppm 一重線 3H) >95%及びそれに加えて僅少量の2−メチルフェノール。
【0112】
例7(本発明による)
撹拌機、温度計及び滴下漏斗を備えている4l四つ口フラスコ中に、トルエン100ml中の2−イソプロピルフェノール272gを装入する。ついで0〜5℃でBF3 10gをガス導入し、引き続いてn−ヘキサン400ml中のポリイソブテン1000g(Mw=1000ダルトン、Mw/Mn=1.6;Glissopal(登録商標)1000)を供給し、その際に内部温度は10℃まで上昇する。室温で一晩に亘り後撹拌する。反応をメタノール500mlで停止させ、メタノール1 lで2回洗浄し、ロータリーエバポレーター上で150℃/5mbarで濃縮する。
油950g、1H−NMRa)による(単位:質量%):
2−イソプロピル−4−ポリイソブテニルフェノール(δ:6.64ppm 二重線、7.01ppm 二重線の二重線、7.18ppm 二重線、3.19ppm 七重線 各1H、1.24ppm 二重線、6H) >95%及びそれに加えて僅少量の2−イソプロピルフェノール。
【0113】
例8(マンニッヒによるアミノアルキル化)
撹拌機、温度計及び滴下漏斗及び水分離器を備えている0.5l四つ口フラスコ中で、2−t−ブチル−4−ポリイソブテニルフェノール(例4から)100gをキシレン100ml中に溶解させる。ついで30%ホルムアルデヒド溶液12gを添加し、40%ジメチルアミン溶液13.5gを滴加する。キシレンが澄明になるまで激しく還流しながら水を分離する。溶液を140℃、5mbarでロータリーエバポレーター上で濃縮する。
油105g、1H−NMRb)による
2−t−ブチル−4−ポリイソブテニル−6−(N,N−ジメチルアミノ)メチルフェノール(δ:7.15ppm 二重線、6.79ppm 二重線、各1H、3.58ppm 一重線 2H)。
【0114】
例8に類似して製造する:
【化2】

【0115】
【表1】

【0116】
例20
撹拌機、温度計及び還流冷却器を備えている0.5l四つ口フラスコ中で、2−メチル−4−ポリイソブテニルフェノール(例6から)100gをキシレン100ml中に溶解させる。ついでトリフェニルヘキサヒドロトリアジン15gを添加し、激しく還流しながら1h煮沸する。溶液は澄明になる。溶液を160℃、3mbarで、ロータリーエバポレーター上で濃縮する。
油108g、1H−NMRb)による
2−メチル−4−ポリイソブテニル−6−(N−フェニルアミノ)メチルフェノール(δ:6.97ppm 二重線、6.84ppm 二重線、各1H、4.58ppm 一重線 2H)。
【0117】
全てのNMR:16スキャン、400MHz、CD2Cl2
a):芳香族プロトン及び2−アルキル基のシフトが記載されている
b):芳香族プロトン及びベンジル基のシフトが記載されている。
【0118】
例21(タービン燃料(ジェット燃料)の熱安定性の改善)
DEF STAN 91-91もしくはASTM D 1655による仕様ジェットA−1のタービン燃料を使用した。熱安定性の調査はASTM D 3241によるJFTOT-ブレークポイント法により行った。添加剤の添加されない(nicht additivierten)タービン燃料の場合に250℃の値が算出された。例8による本発明によるマンニッヒ付加物100mg/lが添加されていた燃料に関しては、270℃の値が測定された。
【0119】
例22(熱安定性の調査)
例20と同じ燃料を使用した。そしてまた例8による組成物100mg/lを添加した。撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えている三つ口ガラスフラスコ中で、まず最初に室温で空気5 lを1hかけて調査すべき燃料150mlに導通させた。引き続いて燃料を油浴を用いて140℃に加熱し、この温度でさらに5h撹拌した。室温への冷却後に、全燃料量を0.45μmメンブランフィルターに通してろ過した。引き続いて、フィルター残留物を乾燥戸棚中で115℃で45minの乾燥及び引き続いてデシケーター中で真空下に2時間の乾燥後に重量測定した。
空試験値(添加剤なし):4.4mg
本発明による(例8 100mg/lを添加した):2.6mg。
【0120】
本発明による添加剤の使用により、タービン燃料の熱的負荷により生じるパーティクル量は明らかに減少されることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−アルキル−ポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物の製造方法において、
a)少なくとも1つの芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物を、2−アルキルヒドロキシ化合物と錯生成することのできるBF3源の触媒活性な量と接触させ、かつ本質的にモノエチレン系不飽和でかつ本質的にホモポリマーのポリイソブテン類でアルキル化し、
b)場合により、工程a)において得られた2−アルキル−ポリイソブテニルフェノール類をアミノアルキル化する
ことを特徴とする、2−アルキル−ポリイソブテニルフェノール類及びそれらのマンニッヒ付加物の製造方法。
【請求項2】
工程a)において使用されるBF3源が、
i)ガス状BF3
ii)工程a)において使用される芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物の少なくとも1つとのBF3錯体、
iii)工程a)における反応条件下で本質的にはアルキル化されない芳香族ヒドロキシ化合物とのBF3錯体、及び
iv)BF3 1mol当たりアルコール2mol未満を含有する、BF3と脂肪族アルコール類との混合物
の中から選択されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
BF3源として使用されるBF3錯体iii)の芳香族ヒドロキシ化合物が、2,4,6−トリアルキルフェノール類及び4−ハロゲンフェノール類の中から選択されている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
BF3源として使用されるBF3と脂肪族アルコール類との混合物iv)中でアルコール対BF3のモル量比が多くとも1.9:1、好ましくは多くとも1.5:1、特に多くとも1.1:1である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物とBF3源との接触及びポリイソブテン類でのアルキル化を高くとも40℃、好ましくは高くとも30℃の温度で行う、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物とBF3源との接触を高くとも20℃、好ましくは高くとも10℃の温度で行う、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程a)におけるアルキル化に使用される芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物が、一般式I
【化1】

[式中、
1はC1〜C20−アルキルを表し、かつ
2は、水素、C1〜C20−アルキル、ヒドロキシを表すか又はO、S及びNR3の中から選択されている少なくとも1つの原子団により中断されているC2〜C4000−アルキルを表し、ここでR3は水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールを表す]で示される化合物の中から選択されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
1及び/又はR2が少なくとも1つの第三級又は第四級炭素原子を有するC1〜C20−アルキル基を表す、請求項7記載の方法。
【請求項9】
1がC1〜C20−アルキル基を表し、かつR2が水素を表し、かつ工程a)において得られた2−アルキルポリイソブテニルフェノール類を工程b)においてアミノアルキル化する、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
2が、ベンゼン環上の6位に結合されており、水素とは異なる基を表す、請求項7又は8記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法により得ることができる、少なくとも1つの2−アルキル−ポリイソブテニルフェノール及び/又はその少なくとも1つのマンニッヒ付加物を含有している組成物。
【請求項12】
1及び/又はR2が少なくとも1つの第三級又は第四級炭素原子を有するC1〜C20−アルキル基を表す一般式Iの少なくとも1つの芳香族2−アルキルヒドロキシ化合物のアルキル化により得ることができる、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも90質量%の少なくとも1つの2−アルキル−ポリイソブテニルフェノール及び/又はその少なくとも1つのマンニッヒ付加物を含有している、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
液状炭化水素燃料の主要量を含有している燃料組成物の形の、請求項11から13までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
液状、半固体又は固体の潤滑剤の主要量を含有している潤滑剤組成物の形の、請求項11から13までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
タービン燃料(ジェット燃料)及び請求項11から13までのいずれか1項に定義された組成物を含有している、タービン燃料組成物。
【請求項17】
・請求項11から13までのいずれか1項に定義された少なくとも1つの組成物、
・場合により少なくとも1つの希釈剤、
・場合により少なくとも1つの添加剤
を含有している、タービン燃料用の添加剤濃縮物。
【請求項18】
光、酸素及び熱の作用に対して無生物有機材料を安定化するための、請求項11から13までのいずれか1項に定義された組成物の使用。
【請求項19】
燃料添加剤として及び燃料清浄剤の製造のための、請求項11から13までのいずれか1項に定義された2−アルキル−ポリイソブテニルフェノール含有組成物の使用。
【請求項20】
燃料組成物及び潤滑剤組成物における清浄剤添加剤としての、請求項11から13までのいずれか1項に定義された2−アルキル−ポリイソブテニルフェノールのマンニッヒ付加物を含有している組成物の使用。
【請求項21】
タービン燃料の熱安定性を改善するための、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法により得ることができる、少なくとも1つの2−アルキル−ポリイソブテニルフェノール及び/又はその少なくとも1つのマンニッヒ付加物の使用。
【請求項22】
タービンの燃料系及び/又は燃焼系における堆積物を減少させるためのタービン燃料用の添加剤としての、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法により得ることができる、少なくとも1つの2−アルキル−ポリイソブテニルフェノール及び/又はその少なくとも1つのマンニッヒ付加物の使用。

【公表番号】特表2007−523897(P2007−523897A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551784(P2006−551784)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000986
【国際公開番号】WO2005/073152
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】