説明

マイクロエレクトロニクスの基板用の洗浄組成物

マイクロエレクトロニクスの基板を洗浄するための剥離および洗浄組成物であって、少なくとも1種の有機剥離溶媒、少なくとも1種の求核性アミン、剥離組成物が約9.6ないし約10.9の水中pHを有するように、求核性アミンの重量の約3%ないし約75%を中和するのに十分な量の少なくとも1種の窒素不含弱酸であって、水性溶液中のpK値2.0またはそれ以上および140より小さい当量を有する弱酸、ジエチレングリコールおよびジエチレングリコールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の金属除去化合物、および水を含む組成物、並びにこれらの組成物を用いてマイクロエレクトロニクスの基板を洗浄する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マイクロエレクトロニクスの基板用の、そして、特に、過度のアルミニウム腐食を引き起こさずにアルミニウムを含有するマイクロエレクトロニクス素子から金属含有残渣を洗浄するための、洗浄および剥離組成物に関する。本発明はまた、チタンまたは窒化チタン層などのマイクロエレクトロニクス素子の金属層を貫き通すビア(via)の洗浄に関し、同時に、下にあるアルミニウム構造と適合する、即ち、マイクロエレクトロニクス素子に殆どまたは全く金属腐食を引き起こさない。本発明はさらに、他のビアおよび金属ラインから灰化後の(post-ash)残渣も洗浄できる、そして、灰化していないフォトレジストをマイクロエレクトロニクスの基板から洗浄または剥離できる、かかる洗浄組成物に関する。本発明のさらなる態様は、アルミニウム含有マイクロエレクトロニクス素子から、過度のアルミニウム腐食を引き起こさずに、フォトレジストおよび残渣を洗浄または剥離する方法である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
マイクロエレクトロニクスの装置を製造する際に、フォトレジストを用いてイメージをマイクロエレクトロニクスの基板に転写し、所望の回路層を創成する。マイクロエレクトロニクスの装置の多くは、アルミニウムでメタライゼーション(metallization)されている。また、マイクロエレクトロニクスの基板は、接着促進剤および拡散障壁として、チタン、窒化チタン、タングステンなどの金属を用い得る。
【0003】
架橋および硬化したフォトレジストおよびエッチング後の残渣などの他の残渣を、かかるマイクロエレクトロニクスの基板から除去するために、多くのアルカリ性のマイクロエレクトロニクスの剥離および洗浄組成物が提唱されてきた。しかしながら、かかる剥離および洗浄組成物に伴う1つの問題は、かかる洗浄組成物の使用の結果として生じる金属腐食の可能性である。かかる腐食は、装置の基板中の金属と用いたアルカリ性剥離剤との反応に少なくとも部分的には起因する、金属ラインのウィスカー、点食、ノッチング(notching)をもたらす。そのようなアルカリ性のマイクロエレクトロニクスの剥離および洗浄組成物の1つは、米国特許第5,308,745号に開示のものである。その特許の剥離および洗浄組成物は、硬化および架橋したフォトレジストを基板から剥離するために商業的に用いられてきたが、この特許の洗浄組成物を用いて、アルミニウムメタライゼーションを有し、チタン、窒化チタン、タングステンなどの層のような層からの金属の残渣を含むマイクロエレクトロニクスの基板を洗浄する試みは、有意なアルミニウム腐食または金属残渣の不十分な洗浄をもたらした。従って、下にあるチタン、窒化チタン、タングステンなどの層を貫通する(punch-through)ビアの洗浄におけるその特許の洗浄組成物の使用には制限がある。
【0004】
従って、かかる金属残渣を効果的に除去でき、剥離および洗浄組成物に由来する有意なアルミニウム腐食を伴わずにそれを行うマイクロエレクトロニクスの剥離および洗浄組成物への要望がある。また、これらの金属残渣の洗浄に加えて、他のビアおよび金属ラインから灰化後の残渣も効果的に洗浄する、そして、灰化していないフォトレジスト残渣を基板から洗浄する、剥離および洗浄組成物への要望もある。
【発明の開示】
【0005】
発明の簡潔な要旨
本発明によると、マイクロエレクトロニクスの基板を洗浄するための剥離および洗浄組成物であって、少なくとも1種の有機剥離溶媒、少なくとも1種の求核性アミン、剥離組成物が約9.6ないし約10.9の水中pHを有するように、求核性アミンの重量の約3%ないし約75%、好ましくは約19%ないし約75%を中和するのに十分な量の少なくとも1種の窒素不含弱酸であって、水性溶液中のpK値2.0またはそれ以上を有し、140より小さい当量の弱酸、ジエチレングリコールおよびジエチレングリコールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の金属除去化合物、および水を含む組成物、並びにこれらの組成物を用いてマイクロエレクトロニクスの基板を洗浄する方法が提供される。
【0006】
マイクロエレクトロニクスの基板を洗浄するための本発明の剥離および洗浄組成物は、
a)少なくとも1種の有機剥離溶媒、
b)少なくとも1種の求核性アミン、
c)剥離組成物が約9.6ないし約10.9の水中pHを有するように、求核性アミンの重量の約3%ないし約75%、好ましくは約19%ないし約75%を中和するのに十分な量の少なくとも1種の窒素不含弱酸、該弱酸は、水性溶液中のpK値2.0またはそれ以上および140より小さい当量を有する、
d)ジエチレングリコールおよびジエチレングリコールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の金属除去化合物、および
e)水
を含む。
本組成物は、さらに、金属錯体化/腐食耐性化合物、他の腐食阻害剤および界面活性剤などの1種またはそれ以上の成分を含み得る。
【0007】
本発明によるマイクロエレクトロニクスの基板の洗浄方法は、実質的な金属腐食をもたらさずにマイクロエレクトロニクスの基板を洗浄する方法を含み、その基板はフォトレジスト重合性材料、エッチング残渣および金属残渣の少なくとも1種を含み、その方法は、その基板を洗浄するのに十分な時間、その基板を洗浄組成物と接触させることを含み、洗浄組成物は、
a)少なくとも1種の有機剥離溶媒、
b)少なくとも1種の求核性アミン、
c)剥離組成物が約9.6ないし約10.9の水中pHを有するように、求核性アミンの重量の約3%ないし約75%、好ましくは約19%ないし約75%を中和するのに十分な量の少なくとも1種の窒素不含弱酸、該弱酸は、水性溶液中のpK値2.0またはそれ以上および140より小さい当量を有する、
d)ジエチレングリコールおよびジエチレングリコールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の金属除去化合物、および
e)水
を含む。
本発明の方法で使用する組成物は、さらに、金属錯体化/腐食耐性化合物、他の腐食阻害剤および界面活性剤などの1種またはそれ以上の成分を含み得る。本発明によるマイクロエレクトロニクスの基板の洗浄方法は、ビアを有し、チタンおよび/または窒化チタンの層の少なくとも1つに由来する金属残渣を含む、アルミニウムメタライゼーションされた基板を含む基板の洗浄に特に有用である。
【0008】
発明の詳細な説明および好ましい実施態様
本発明は、マイクロエレクトロニクスの基板を洗浄するための剥離および洗浄組成物であって、少なくとも1種の有機剥離溶媒、少なくとも1種の求核性アミン、剥離組成物が約9.6ないし約10.9の水中pHを有するように、求核性アミンの重量の約3%ないし約75%、好ましくは約19%ないし約75%を中和するのに十分な量の少なくとも1種の窒素不含弱酸であって、水性溶液中のpK値2.0またはそれ以上および140より小さい当量を有する弱酸、ジエチレングリコールおよびジエチレングリコールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の金属除去化合物、および水を含む組成物、並びにこれらの組成物を用いてマイクロエレクトロニクスの基板を洗浄する方法が提供される。
【0009】
本発明のマイクロエレクトロニクスの基板を洗浄するための剥離および洗浄組成物は、
a)少なくとも1種の有機剥離溶媒、
b)少なくとも1種の求核性アミン、
c)剥離組成物が約9.6ないし約10.9の水中pHを有するように、求核性アミンの重量の約3%ないし約75%、好ましくは約19%ないし約75%を中和するのに十分な量の少なくとも1種の窒素不含弱酸、該弱酸は、水性溶液中のpK値2.0またはそれ以上および140より小さい当量を有する、
d)ジエチレングリコールおよびジエチレングリコールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の金属除去化合物、および
e)水
を含む。
本組成物は、さらに、金属錯体化/腐食耐性化合物、他の腐食阻害剤および界面活性剤などの1種またはそれ以上の成分を含み得る。
【0010】
少なくとも1種の有機剥離溶媒は、一般的に、約20ないし約80wt%、好ましくは約30ないし約75wt%、より好ましくは約40ないし約60wt%の量で組成物中に存在する。有機剥離溶媒は、一般的に、3つのハンセン溶解度パラメーター(分散、極性および水素結合)の合計の平方根をとって得られる溶解度パラメーターで約8ないし約15を有するものである。溶媒系は、1種またはそれ以上のかかる溶媒を含み得る。適する溶媒には、2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピロリジノン、1−エチル−2−ピロリジノン、1−プロピル−2−ピロリジノン、1−ヒドロキシエチル−2−ピロリジノン、1−ヒドロキシプロピル−2−ピロリジノンなど、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類、例えば式HO−CH−CH−O−CH−CH−O−R(ここで、Rは1個ないし4個の炭素原子のアルキル基である)のもの、酸化硫黄を含有する化合物、例えば、式R−S(O)(O)−R(ここで、RおよびRは、1個ないし4個の炭素原子のアルキルである)のジアルキルスルホン類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド化合物、例えばスルホラン、メチルスルホランおよびアルキルスルホラン類、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、溶媒は、N−メチルピロリドンである。
【0011】
本発明の組成物の少なくとも1種の求核性アミン成分は、一般的に、約1ないし約50wt%、好ましくは約10ないし約45wt%、そしてより好ましくは約20ないし約30wt%の量で、組成物中に存在する。本発明で使用し得るアルカリ性の剥離剤成分は、また、幅広い範囲の構造のタイプに及ぶ。pK値として表されるそれらの解離定数は、一般的にベータ−酸素またはベータ−窒素置換アミン類の約9ないし約11から、第2級アミン、モルホリンおよびヒドロキシルアミン類の約8.3までの範囲にあり、ヒドロキシルアミン誘導体はそれらより幾分か低いpK値である。使用し得るアルカリ性成分の中で、求核性アミン類、好ましくは、例えば、アルカノールアミン類、特にモノエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−アミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミンなどに言及し得る。アミンの実際のpK値より重要なのは、その求核性であり、それは高くあるべきである。最も好ましくは、求核性アミンは、モノエタノールアミンまたは1−アミノ−2−プロパノールである。
【0012】
本発明の組成物の窒素不含弱酸成分は、一般的に、約0.5ないし約10wt%、好ましくは約1ないし約8wt%、より好ましくは約2ないし約6wt%の量で組成物中に存在する。本発明で用い得る窒素不含弱酸には、カルボン酸またはフェノール類などの有機のもの、並びに炭酸またはフッ化水素酸などの無機酸の塩が含まれる。弱酸は、水性溶液中の解離定数について、低くとも2.0またはそれ以上、好ましくは2.5またはそれ以上の、「pK」として表現される強度を有する酸を意味する。特に有用なのは、pK>2.0の、そして好ましくは約140より小さい当量を有する弱酸である。本発明で有用なかかる窒素不含弱酸の例として、例えば、カルボン酸、例えば酢酸、フタル酸、フェノキシ酢酸など、有機酸、例えば2−メルカプト安息香酸、2−メルカプトエタノールなど、一般的に9ないし10の範囲にpKを有するフェノール類、例えばフェノール、カテコール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ピロガロール、レゾルシノール、4−tert−ブチルカテコールなど、無機酸、例えば炭酸、フッ化水素酸などに言及し得る。本発明の剥離組成物中で用いる弱酸の量は、剥離組成物中に存在するアミンの重量で、約3%ないし約75%、好ましくは約19%ないし約75%を中和し、それにより約pH9.6ないし約10.9の該剥離組成物の水性すすぎのpHをもたらす量である。最も好ましくは、弱酸はカテコールである。
【0013】
少なくとも1種の金属除去成分は、ジエチレングリコールまたはジエチレングリコールアミンまたはそれらの混合物である。この成分は、一般的に、約0.5ないし約40wt%、好ましくは約1ないし約20wt%、より好ましくは約5ないし約15wt%の量で組成物中に存在する。この成分は、好ましくはジエチレングリコールである。
【0014】
本発明の洗浄および剥離組成物は、アルカリ性水性組成物であり、水は、一般的に約0.5ないし約50wt%、好ましくは約1ないし約35wt%、より好ましくは約5ないし約20wt%の量で存在する。
【0015】
本発明の組成物は、場合により、他のさらなる成分も含有し得る。かかる任意のさらなる成分には、金属錯体化/腐食耐性化合物、他の腐食阻害剤および界面活性剤が含まれる。
【0016】
有機または無機キレート化または金属錯体化剤/腐食阻害剤は、必要とされないが、場合により本発明の組成物に含めてもよい。しかし、それらは、例えば、本発明の洗浄組成物に組み込んだときの製品安定性の改善などの、実質的な利益をもたらす。適するキレート化または錯体化剤の例には、trans−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸(CyDTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、スズ酸塩(stannate)、ピロリン酸塩、アルキリデン−ジホスホン酸誘導体(例えば、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホネート)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンまたはトリエチレンテトラミン官能部分を含有するホスホン酸塩[例えば、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)が含まれるがこれらに限定されない。キレート化剤は、組成物の重量をベースとして、0ないし約5wt%、好ましくは約0.1ないし約2wt%の量で組成物中に存在する。
【0017】
本発明の水性洗浄組成物は、場合により、他の腐食阻害剤およびマイクロエレクトロニクスの洗浄組成物で用いられる類似の非腐食性成分も含有できる。それらの化合物には、レゾルシノール、没食子酸、没食子酸プロピル、ピロガロール、ヒドロキノン、ベンゾトリアゾールおよびベンゾトリアゾールの誘導体、並びに多官能性カルボン酸、例えばクエン酸、酒石酸、グルコン酸、サッカリン酸、グリセリン酸、蓚酸、フタル酸、マレイン酸、マンデル酸、マロン酸、乳酸およびサリチル酸が含まれ得る。これらの他の腐食阻害剤は、任意の適当な量で、一般的には約0ないし約5wt%、好ましくは約0.1ないし約3wt%、より好ましくは約0.2ないし約2wt%の量で存在し得る。
【0018】
本発明の組成物は、また、任意の適当な水溶性の、両性、非イオン性、陽イオン性または陰イオン性の界面活性剤も場合により含有し得る。界面活性剤の添加は、製剤の表面張力を低下させ、洗浄しようとする表面の湿潤を改善し、従って組成物の洗浄作用を改善する。界面活性剤は、また、さらなるアルミニウム腐食阻害が望ましい場合に、アルミニウム腐食率を低下させるために添加してもよい。本発明の組成物で有用な両性界面活性剤には、ベタイン類およびスルホベタイン類、例えばアルキルベタイン類、アミドアルキルベタイン類、アルキルスルホベタイン類およびアミドアルキルスルホベタイン類;アミノカルボン酸誘導体、例えばアムホ(ampho)グリシネート類、アムホプロピオネート類、アムホジグリシネート類およびアムホジプロピオネート類;イミノ二酸(iminodiacid)類、例えばアルコキシアルキルイミノ二酸類またはアルコキシアルキルイミノ二酸類;アミンオキシド類、例えばアルキルアミンオキシド類およびアルキルアミドアルキルアミンオキシド類;フルオロアルキルスルホネート類およびフッ化両性アルキル(fluorinated alkyl amphoteric)類;およびこれらの混合物が含まれる。好ましくは、両性界面活性剤は、ココアミド(cocoamido)プロピルベタイン、ココアミドプロピルジメチルベタイン、ココアミドプロピルヒドロキシスルテイン(sultaine)、カプリロアムホジピロピオネート、ココアミドジプロピオネート、ココアムホ(cocoampho)プロピオネート、ココアムホヒドロキシエチルプロピオネート、イソデシルオキシプロピルイミノジプロピオン酸、ラウリルイミノジプロピオネート、ココアミドプロピルアミンオキシドおよびココアミンオキシドおよびフッ化両性アルキル類である。本発明の組成物で有用な非イオン性界面活性剤には、アセチレンジオール(acetylenic diol)類、エトキシル化アセチレンジオール類、フッ化アルキルアルコキシレート類、フッ化アルキルエステル類、フッ化ポリオキシエチレンアルカノール類、多価アルコール類の脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンジオール類、シロキサン型界面活性剤およびアルキレングリコールモノアルキルエーテル類が含まれる。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、アセチルレンジオール類またはエトキシル化アセチルレンジオール類である。本発明の組成物で有用な陰イオン性界面活性剤には、カルボキシレート類、N−アシルサルコシネート(sarcosinate)類、スルホネート類、スルフェート類、およびオルトリン酸のモノおよびジエステル類、例えばデシルホスフェートが含まれる。好ましくは、陰イオン性界面活性剤は、金属不含の界面活性剤である。本発明の組成物で有用な陽イオン性界面活性剤には、アミンエトキシレート類、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルキルモルホリナム(morpholinum)塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、およびアルキルピリジニウム塩が含まれる。好ましくは、陽イオン性界面活性剤は、ハロゲン不含界面活性剤である。特に適する界面活性剤の例には、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(Surfynol-61)、エトキシル化2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール(Surfynol-465)、ポリテトラフルオロエチレンセトキシプロピルベタイン(Zonyl FSK)、Zonyl FSH、Triton X-100、即ちオクチルフェノキシポリエトキシエタノールなどが含まれるが、これらに限定されない。界面活性剤は、一般的に、組成物の重量をベースとして0ないし約5wt%、好ましくは0.001ないし約3wt%の量で存在する。
【実施例】
【0019】
本発明の洗浄組成物の例には、下表1、2、3および4に記載の組成物が含まれるが、これらに限定されない。表1、2、3および4並びに下表5ないし9中、用いる略号は以下の通りである:
NMP=N−メチルピロリジノン
DMSO=ジメチルスルホキシド
DMAC=ジメチルアセトアミド
DMF=ジメチルホルムアミド
DEG=ジエチレングリコール
DEGA=ジエチレングリコールアミン
CAT=カテコール
MEA=モノエタノールアミン
AMP=1−アミノ−2−プロパノール
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
DEGおよびDEGAの代わりに他のポリヒドロキシル(polyhyroxyl)化合物を含む類似の組成物と比較した本発明の洗浄組成物の洗浄および非腐食特性の群を抜く性能は、以下の洗浄実施例1ないし11により立証される。NMP26g、モノエタノールアミン20g、カテコール1g、DI水4gおよび以下からの洗浄化合物8g:ジエチレングリコール(DEG)、ジエチレングリコールアミン(DEGA)、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールプロピレングリコール、N−メチルエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−ブテン−1,4−ジオールおよび2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、を混合することにより、数種の洗浄組成物を調製した。「貫通」ビア構造(SiおよびTiNを通してAl層までエッチングされたビア)を有する、パターン化されたAl技術のウエハのサンプルを、85℃に加熱したこれらの溶液中に20分間置き、その後、それらを取り出し、DI水中で2分間すすぎ、窒素で送風乾燥した。比較のために、同じウエハを、米国特許第5,308,745号の購入できる剥離組成物(NMP、スルホラン、MEA、カテコールおよびDI水を含有する)の中で洗浄した。次いで、洗浄されたウエハを、下記表5に記す通り、灰化残渣の除去(0=除去無しから、10=100%の除去まで)およびアルミニウム腐食(0=腐食無しから、10=腐食まで)について評価した。
【0025】
【表5】

【0026】
DEGおよびDEGAのみが、優れた灰化残渣の除去とアルミニウム腐食の阻害の両方をもたらす。様々な時間と温度の洗浄条件下での、様々な組成を有する本発明の洗浄組成物の有用性を、以下の実施例12ないし29で例証する。
【0027】
実施例12ないし16
1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、モノエタノールアミン(MEA)、ジエチレングリコールアミン(DEGA)、カテコール(CAT)およびDI水を下記に示す量で混合することにより、数種の洗浄組成物を調製した。実施例1ないし11で用いたものと同じタイプの、「貫通」ビアを有するパターン化されたAl技術のウエハサンプルを、85℃に加熱したこれらの溶液中に20分間置き、その後、それらを取り出し、DI水中で2分間すすぎ、窒素で送風乾燥した。次いで、洗浄されたウエハを、表6に記す通り、灰化残渣の除去(0=除去無しから、10=100%の除去まで)およびアルミニウム腐食(0=腐食無しから、10=腐食まで)について評価した。
【0028】
【表6】

【0029】
実施例17ないし22
NMP26g、モノエタノールアミン(MEA)15g、ジエチレングリコールアミン(DEGA)またはジエチレングリコール(DEG)5g、カテコール(CAT)3gおよびDI水7gを混合することにより、数種の洗浄組成物を調製した。上記の実施例で用いたものと同じタイプの、「貫通」ビアを有するパターン化されたAl技術のウエハサンプルを、下記に示す温度に加熱したこれらの溶液中に20分間置き、その後、それらを取り出し、DI水中で2分間すすぎ、窒素で送風乾燥した。次いで、洗浄されたウエハを、下記表7に記す通り、灰化残渣の除去(0=除去無しから、10=100%の除去まで)およびアルミニウム腐食(0=腐食無しから、10=腐食まで)について評価した。
【0030】
【表7】

【0031】
実施例23ないし25
1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、モノエタノールアミン(MEA)、ジエチレングリコール(DEG)、カテコール(CAT)およびDI水を下記に示す量で混合することにより、数種の洗浄組成物を調製した。上記の実施例で用いたものと同じタイプの、「貫通」ビアを有するパターン化されたAl技術のウエハサンプルを、65℃に加熱したこれらの溶液中に20分間置き、その後、それらを取り出し、DI水中で2分間すすぎ、窒素で送風乾燥した。次いで、洗浄されたウエハを、下記表8に記す通り、灰化残渣の除去(0=除去無しから、10=100%の除去まで)およびアルミニウム腐食(0=腐食無しから、10=腐食まで)について評価した。
【0032】
【表8】

【0033】
実施例26−29
以下から選択される溶媒46g:1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)またはジメチルスルホキシド(DMSO);モノエタノールアミン(MEA)または1−アミノ−2−プロパノール(AMP)23g;ジエチレングリコール(DEG)11g、カテコール(CAT)5gおよびDI水15gを混合することにより、数種の洗浄組成物を調製した。上記の実施例で用いたものと同じタイプの、「貫通」ビアを有するパターン化されたAl技術のウエハサンプルを、65℃に加熱したこれらの溶液中に20分間置き、その後、それらを取り出し、DI水中で2分間すすぎ、窒素で送風乾燥した。次いで、洗浄されたウエハを、下記表9に記す通り、灰化残渣の除去(0=除去無しから、10=100%の除去まで)およびアルミニウム腐食(0=腐食無しから、10=腐食まで)について評価した。
【0034】
【表9】

【0035】
特定の実施態様を参照して本発明を説明したが、本明細書で開示した発明の概念の精神および範囲を逸脱せずに、変更、改変および変形を行えることが理解されよう。従って、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内にある全てのそのような変更、改変および変形が包含されると意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロエレクトロニクスの基板を洗浄するための剥離および洗浄組成物であって、
a)少なくとも1種の有機剥離溶媒、
b)少なくとも1種の求核性アミン、
c)該剥離組成物が約9.6ないし約10.9の水性pHを有するように、該求核性アミンの重量の約3%ないし約75%を中和するのに十分な量の少なくとも1種の窒素不含弱酸、該弱酸は、水性溶液中のpK値2.0またはそれ以上および140より小さい当量を有する、
d)ジエチレングリコールおよびジエチレングリコールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の金属除去化合物、および
e)水
を含む組成物。
【請求項2】
該少なくとも1種の求核性アミンがアルカノールアミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該少なくとも1種の有機剥離溶媒が、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択される溶媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該少なくとも1種の求核性アミンがアルカノールアミンを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
該アルカノールアミンが、モノエタノールアミンおよび1−アミノ−2−プロパノールからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
該少なくとも1種の弱酸がカテコールを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
該少なくとも1種の有機剥離溶媒がN−メチルピロリドンを含み、該アルカノールアミンがモノエタノールアミンを含み、該少なくとも1種の金属除去化合物がジエチレングリコールを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
金属錯体化/腐食耐性化合物、他の腐食阻害剤および界面活性剤からなる群から選択される1種またはそれ以上の成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
金属錯体化/腐食耐性化合物、他の腐食阻害剤および界面活性剤からなる群から選択される1種またはそれ以上の成分をさらに含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
約20ないし約80wt%の該少なくとも1種の剥離溶媒、約1ないし約50wt%の該少なくとも1種の求核性アミン、約0.5ないし約40wt%の該少なくとも1種の金属除去化合物、約0.5ないし約10wt%の該少なくとも1種の弱酸、および約0.5ないし約50wt%の水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
約20ないし約80wt%のN−メチルピロリドン、約1ないし約50wt%のモノエタノールアミン、約0.5ないし約40wt%のジエチレングリコール、約0.5ないし約10wt%のカテコール、約0.5ないし約50wt%の水を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
約40ないし約60wt%の該少なくとも1種の有機剥離溶媒、約20ないし約30wt%の該少なくとも1種の求核性アミン、約5ないし約15wt%の該少なくとも1種の金属除去化合物、約2ないし約6wt%の該少なくとも1種の弱酸および約5ないし約20wt%の水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
約40ないし約60wt%のN−メチルピロリドン、約20ないし約30wt%のモノエタノールアミン、約5ないし約15wt%のジエチレングリコール、約2ないし約6wt%のカテコールおよび約5ないし約20wt%の水を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
約46wt%のN−メチルピロリドン、約23wt%のモノエタノールアミン、約11wt%のジエチレングリコール、約5wt%のカテコールおよび約15wt%の水を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
実質的な金属腐食をもたらさずにマイクロエレクトロニクスの基板を洗浄する方法であって、基板はフォトレジスト重合性材料、エッチング残渣および金属残渣の少なくとも1種を含み、該方法は、該基板を洗浄するのに十分な時間、該基板を洗浄組成物と接触させることを含み、該洗浄組成物は、
a)少なくとも1種の有機剥離溶媒、
b)少なくとも1種の求核性アミン、
c)該剥離組成物が約9.6ないし約10.9の水中pHを有するように、該求核性アミンの重量の約3%ないし約75%を中和するのに十分な量の少なくとも1種の窒素不含弱酸、該弱酸は、水性溶液中のpK値2.0またはそれ以上および140より小さい当量を有する、
d)ジエチレングリコールおよびジエチレングリコールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の金属除去化合物、および
e)水
を含むものである、方法。
【請求項16】
該少なくとも1種の求核性アミンがアルカノールアミンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該少なくとも1種の有機剥離溶媒が、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択される溶媒を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
該少なくとも1種の求核性アミンがアルカノールアミンを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該アルカノールアミンが、モノエタノールアミンおよび1−アミノ−2−プロパノールからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該少なくとも1種の弱酸がカテコールを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該少なくとも1種の有機剥離溶媒がN−メチルピロリドンを含み、該アルカノールアミンがモノエタノールアミンを含み、該少なくとも1種の金属除去化合物がジエチレングリコールを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
金属錯体化/腐食耐性化合物、他の腐食阻害剤および界面活性剤からなる群から選択される1種またはそれ以上の成分をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
金属錯体化/腐食耐性化合物、他の腐食阻害剤および界面活性剤からなる群から選択される1種またはそれ以上の成分をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
約20ないし約80wt%の該少なくとも1種の有機剥離溶媒、約1ないし約50wt%の該少なくとも1種の求核性アミン、約0.5ないし約40wt%の該少なくとも1種の金属除去化合物、約0.5ないし約10wt%の該少なくとも1種の弱酸、および約0.5ないし約50wt%の水を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
約20ないし約80wt%のN−メチルピロリドン、約1ないし約50wt%のモノエタノールアミン、約0.5ないし約40wt%のジエチレングリコール、約0.5ないし約10wt%のカテコール、および約0.5ないし約50wt%の水を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
約40ないし約60wt%の該少なくとも1種の有機剥離溶媒、約20ないし約30wt%の該少なくとも1種の求核性アミン、約5ないし約15wt%の該少なくとも1種の金属除去化合物、約2ないし約6wt%の該少なくとも1種の弱酸および約5ないし約20wt%の水を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
約40ないし約60wt%のN−メチルピロリドン、約20ないし約30wt%のモノエタノールアミン、約5ないし約15wt%のジエチレングリコール、約2ないし約6wt%のカテコール、および約5ないし約20wt%の水を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
約46wt%のN−メチルピロリドン、約23wt%のモノエタノールアミン、約11wt%のジエチレングリコール、約5wt%のカテコールおよび約15wt%の水を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
該基板が、ビアを有し、金属残渣を含む、アルミニウムメタライゼーションされた基板を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
該金属残渣が、チタン層および窒化チタン層からなる群から選択される少なくとも1つの層である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
該基板が、ビアを有し、金属残渣を含む、アルミニウムメタライゼーションされた基板を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
該金属残渣が、チタン層および窒化チタン層からなる群から選択される少なくとも1つの層である、請求項31に記載の方法。

【公表番号】特表2008−509554(P2008−509554A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524802(P2007−524802)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/022598
【国際公開番号】WO2006/023061
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(503077143)マリンクロッド・ベイカー・インコーポレイテッド (21)
【氏名又は名称原語表記】MALLINCKRODT BAKER, INC.
【Fターム(参考)】