マルチバンド高周波回路及びこれを用いたマルチバンド通信装置
【課題】 少なくとも2つの通信システムに共用可能なマルチバンド高周波回路を提供する。
【解決手段】 通信周波数が異なる複数の通信システムの無線通信を行うマルチバンド高周波回路であって、マルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替える高周波スイッチ回路と、高周波スイッチ回路と送信側回路との間に、送信信号を分波する第1の分波回路と、低周波側に接続される第1の増幅器及び第1の平衡−不平衡変換回路と、高周波側に接続される第2の増幅器及び第2の平衡−不平衡変換回路とを有し、高周波スイッチ回路と受信側回路との間に、受信信号を分波する第2の分波回路と、低周波側に接続された第3の平衡−不平衡変換回路と、高周波側に接続された第4の平衡−不平衡変換回路とを有するマルチバンド高周波回路。
【解決手段】 通信周波数が異なる複数の通信システムの無線通信を行うマルチバンド高周波回路であって、マルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替える高周波スイッチ回路と、高周波スイッチ回路と送信側回路との間に、送信信号を分波する第1の分波回路と、低周波側に接続される第1の増幅器及び第1の平衡−不平衡変換回路と、高周波側に接続される第2の増幅器及び第2の平衡−不平衡変換回路とを有し、高周波スイッチ回路と受信側回路との間に、受信信号を分波する第2の分波回路と、低周波側に接続された第3の平衡−不平衡変換回路と、高周波側に接続された第4の平衡−不平衡変換回路とを有するマルチバンド高周波回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子電器機器間における無線伝送を行う無線通信装置に関し、特には少なくとも2つの通信システムに共用でき、さらにはダイバーシティ受信が可能なマルチバンド高周波回路及びこれを用いたマルチバンド通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、IEEE802.11規格に代表される無線LAN(WLAN)によるデータ通信が広く一般化している。例えばパーソナルコンピュータ(PC)、プリンタやハードディスク、ブロードバンドルータ等のPCの周辺機器、FAX、冷蔵庫、標準テレビ(SDTV)、高品位テレビ(HDTV)、カメラ、ビデオ、携帯電話等の電子機器、自動車内や航空機内でのワイヤに変わる信号伝達手段として採用され、それぞれの電子電器機器間において無線データ伝送が行われている。
【0003】
WLANの規格として現在複数の規格が存在する。例えば、IEEE802.11aは、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiples:直交周波数多重分割)変調方式を用いて、最大54 Mbpsの高速データ通信をサポートするものであり、その周波数帯域は5 GHz帯が利用される。なおIEEE802.11aを欧州で使用可能にするための規格としてIEEE802.11hがある。
【0004】
またIEEE802.11bは、DSSS(Direct Sequence Spread Spectrumダイレクト・シーケンス・スペクトル拡散)方式で、5.5 Mbps,11 Mbpsの高速通信をサポートするものであり、無線免許なしに自由に利用可能な、2.4 GHzのISM(Industrial, Scientific and Medical、産業、科学及び医療)帯域が利用される。
【0005】
またIEEE802.11gは、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiples:直交周波数多重分割)変調方式を用いて、最大54 Mbpsの高速データ通信をサポートするものであり、IEEE802.11bと同様に2.4 GHz帯域が利用される。
以下の説明ではIEEE802.11a、IEEE802.11hを第1の通信システムとし、IEEE802.11b、IEEE802.11gを第2の通信システムとして説明する場合がある。
【0006】
このようなWLANを用いたマルチバンド通信装置は特開2003-169008号に記載されている。このマルチバンド通信装置は、通信周波数帯が異なる2つの通信システム(IEEE802.11a、IEEE802.11b)で送受信が可能な2つのデュアルバンドアンテナと、各通信システムでの送信データを変調し、受信データを復調する2つの送受信部と、前記アンテナを前記送受信部にそれぞれ接続するための複数のスイッチ手段と、前記スイッチ手段の切り換え制御を行うスイッチ制御手段とを備え、ダイバーシティ受信が可能である(図33参照)。
【0007】
他の例として、特開2002-033714号は、一つのマルチバンドアンテナを備えたマルチバンド通信装置を記載している。このマルチバンド通信装置は、スイッチ回路や増幅器、ミキサ等を備えた2.4 GHz帯のフロントエンド回路及び5 GHz帯のフロントエンド回路を備え、両者のうちの一つを選択的に共通のマルチバンドアンテナに接続するスイッチ回路SW1、送受信回路を切り替えるスイッチ回路SW2,SW3と、中間周波数フィルタBPFに接続するスイッチ回路SW4とを具備する(図34参照)。
【0008】
WLAN用のマルチバンド通信装置では、キャリア検出多元接続方式(CSMA: Carrier Sense Multiple Access)が採用されており、通信を開始する前に、まず周波数スキャンを行い、受信可能な周波数チャンネルを探索(キャリアセンス)することが規格化されている。
【0009】
特開2003-169008号のマルチバンド通信装置では、このスキャン動作を行う場合に、6つのSPDT(単極双投)のスイッチ手段(SW1〜SW6)により、アンテナANT1を802.11a送受信部の受信端子Rxに接続し、同時にアンテナANT2を802.11b送受信部の受信端子Rxに接続する。802.11a送受信部では5 GHz帯でスキャンし、これと並行し802.11b送受信部では2.4 GHz帯でスキャンして、受信可能な全ての空きチャンネルを検出する。
【0010】
次のステップとして、デュアルバンドアンテナANT1で受信した5 GHz帯の受信信号とデュアルバンドアンテナANT2で受信した2.4 GHz帯の受信信号とを比較し、2つの通信システムのうち望ましい方の信号が受信される方をアクティブ通信システムとして選択する。
【0011】
このスキャン動作後に、選択された通信システムの送受信装置に接続するアンテナを他方のアンテナに変更して、受信チャンネルを変更せずに受信し、2つのアンテナでの受信信号を比較して、より良好な受信ができる方のアンテナをアクティブアンテナとして選択し、ダイバーシティ受信を行う。
【0012】
また特開2002-033714号のマルチバンド通信装置では、一つのデュアルバンドアンテナANT1で2.4 GHz帯、5 GHz帯での受信信号をスキャンし、受信可能な全ての空きチャンネルを検出して、通信に望ましい通信システムのチャンネルを選択する。
【0013】
従来のマルチバンド通信装置のように、通信システムごとに異なるアンテナに接続するか、一つのアンテナに接続して得られた受信信号を比較した結果に基づいて通信システムのチャンネルを選択する方法では、他の通信システムや電子機器からのノイズの影響や、フェージング等の外乱の影響が無視できず、選択すべき通信システムのチャンネルがビシー状態として誤認識されたり、受信信号の振幅が最も大きい通信システムが選択されないことがある。
【0014】
特に2.4 GHz帯の周波数帯域には、電子レンジからの漏洩電波や、Bluetooth(R)、RFID(Radio Frequency Identification)等の通信システムによるノイズがあり、また近傍の周波数帯にはWCDMA(Wide Band Code Division Multiple Access)等の比較的大きな送信電力を有する携帯電話の通信システムが存在し、これらの高周波信号は、WLANシステムにおいては通信の妨害となっている。しかしながら、従来のマルチバンド通信装置では、このようなノイズが何等考慮されていなかった。
【0015】
また従来のマルチバンド通信装置では、多くのスイッチ手段で高周波信号の経路を切り替える必要があるため、スイッチ手段の数に応じて制御が複雑化する。またスイッチ手段はある程度の伝送損失を有するため、アンテナから送受信部に至る経路において、多数のスイッチ手段が存在すると、それに応じて伝送損失が増加する。特に受信時においてはアンテナから入射する高周波信号の品質が劣化するといった問題もあった。またスイッチ手段の切り替えに消費される電力も、ノートPCや携帯電話等のバッテリーを駆動電源とする機器では無視できないため、少ないスイッチ手段でマルチバンド高周波回路を構成することが求められていた。
【0016】
またIEEE802.11hでは、新たにDFS(Dynamic Frequency Selection)やTPC(Transmission Power Control)機能が要求される。ここでTPC機能とは、例えば端末と基地局が近い場合、送信パワーを抑えても良好な通信ができる時は送信電力を抑え、消費電力を必要最小限のレベルに押え込むものである。
【0017】
電力増幅器の出力ポートからマルチバンドアンテナまでの間には、スイッチ回路等の様々な回路素子によって生じる通過損失がある。この通過損失は周波数特性を有するものであるから、マルチバンド高周波回路が使用する周波数チャンネルによってマルチバンドアンテナからの出力電力は一定ではなく、使用チャンネルに対応して変動する。このため、増幅器からの出力パワーを精度良く制御する必要がある。
【0018】
例えば、特開2003-169008号のマルチバンド通信装置でTPC機能を実現しようとすれば、IEEE802.11a送受信部とスイッチ回路SW3の間、及び、IEEE802.11b送受信部とスイッチ回路SW4の間の各々に結合回路(例えば方向性結合器)を接続し、方向性結合器からの検波信号を検波回路に入力し、得られた検波電圧をもとに出力信号を制御しなければならない。しかしながら、この方法では2.4 GHz帯及び5 GHz帯の両方に方向性結合器、検波ダイオード、平滑回路が必要であり、さらに制御回路を共用する場合には、2.4 GHz帯及び5 GHz帯の検波電圧端子を選択するアナログスイッチも必要である。このため、部品点数が増大して通信装置の小型化が困難になる等の問題がある。
【0019】
またWLANの高周波回路では、ダイバーシティスイッチや送信回路、受信回路を切り替えるスイッチ回路の他にも、送信信号や受信信号に含まれる不要な周波数成分を除去するフィルタ回路が必要である。さらに不平衡信号を平衡信号に変換する平衡―不平衡変換回路や、インピーダンス変換回路も必要である。
【0020】
さらに携帯電話やノートPCに内蔵する場合や、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)のネットワークカードとする場合には、マルチバンド通信装置を小型化することが強く望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明の第1の目的は、少なくとも2つの通信システムに共用可能なマルチバンド高周波回路において、ノイズやフェージング等の影響を実質的に受けずに最も望ましい無線通信チャンネルを選択することができるマルチバンド高周波回路、及びさらにダイバーシティ受信を行うことが可能なマルチバンド高周波回路を提供することである。
【0022】
本発明の第2の目的は、少ないスイッチ手段でマルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えることができ、少ない部品点数で結合回路、フィルタ回路、平衡―不平衡変換回路及びインピーダンス変換回路を備えたマルチバンド高周波回路を提供することである。
【0023】
本発明の第3の目的は、各通信システムでの送信データを変調し、受信データを復調する送受信部と、前記高周波スイッチの切り替えを制御するスイッチ回路制御部を備えたマルチバンド通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
通信周波数が異なる複数の通信システムの無線通信を行う本発明の一実施態様によるマルチバンド高周波回路は、マルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えるスイッチング素子を備えた高周波スイッチ回路と、前記高周波スイッチ回路と送信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第1の低周波側フィルタ回路と第1の高周波側フィルタ回路により送信信号を分波する第1の分波回路と、前記第1の低周波側フィルタ回路と接続される第1の増幅器と、前記第1の増幅器と接続される第1の平衡−不平衡変換回路と、前記第1の高周波側フィルタ回路と接続される第2の増幅器と、前記第2の増幅器と接続される第2の平衡−不平衡変換回路とを有し、前記高周波スイッチ回路と受信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第2の低周波側フィルタ回路と第2の高周波側フィルタ回路により受信信号を分波する第2の分波回路と、前記第2の低周波側フィルタ回路と接続された第3の平衡−不平衡変換回路と、前記第2の高周波側フィルタ回路と接続された第4の平衡−不平衡変換回路とを有することを特徴とする。
【0025】
前記スイッチング素子をON状態あるいはOFF状態に制御して、前記マルチバンドアンテナを第2の分波回路を介して複数の通信システムの受信側回路と接続し、受信可能な周波数チャンネルを複数の通信システムにおいて検出するとともに、受信信号の比較結果に基づいて、いずれか一つの通信システムの周波数チャンネルを選択した後、前記マルチバンドアンテナと送信側回路との接続、あるいは受信側回路との接続を切り替えて送受信しても良い。
【0026】
通信周波数が異なる複数の通信システムの無線通信を行う本発明の別の実施態様によるマルチバンド高周波回路は、第1及び第2のマルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えるスイッチング素子を備えた高周波スイッチ回路と、前記高周波スイッチ回路と送信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第1の低周波側フィルタ回路と第1の高周波側フィルタ回路により送信信号を分波する第1の分波回路と、前記第1の低周波側フィルタ回路と接続される第1の増幅器と、前記第1の増幅器と接続される第1の平衡−不平衡変換回路と、前記第1の高周波側フィルタ回路と接続される第2の増幅器と、前記第2の増幅器と接続される第2の平衡−不平衡変換回路とを有し、前記高周波スイッチ回路と受信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第2の低周波側フィルタ回路と第2の高周波側フィルタ回路により受信信号を分波する第2の分波回路と、前記第2の低周波側フィルタ回路と接続された第3の平衡−不平衡変換回路と、前記第2の高周波側フィルタ回路と接続された第4の平衡−不平衡変換回路とを有し、前記高周波スイッチ回路は第1乃至第4のポートを有し、第1のポートは前記第1のマルチバンドアンテナと接続され、第2のポートは前記第2のマルチバンドアンテナと接続され、第3のポートは前記第1の分波回路と接続され、第4のポートは前記第2の分波回路と接続されており、前記スイッチング素子をON状態あるいはOFF状態に制御して、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナの何れかを前記第2の分波回路を介して複数の通信システムの受信側回路と接続し、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナごとに、受信可能な周波数チャンネルを複数の通信システムにおいて検出するとともに、受信信号の比較結果に基づいて、いずれか一つの通信システムの周波数チャンネルと無線通信を行うマルチバンドアンテナを選択した後、選択されたマルチバンドアンテナと送信側回路との接続、あるいは受信側回路との接続を切り替えて送受信することを特徴とする。
【0027】
受信可能な周波数チャンネルの検出を、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナごとに複数の通信システムにおいて並行して行っても良い。
【0028】
複数の通信システムの送信電力の一部を取り出す結合回路と、前記結合回路と接続された検波回路と、前記検波回路からの検出信号と基準信号とを比較して前記第1の増幅器及び前記第2の増幅器からの出力電圧を変化させる比較制御手段を備えても良い。
【0029】
本発明のマルチバンド通信装置は前記マルチバンド高周波回路を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明のマルチバンド高周波回路は、WLANによるデータ通信において、ノイズやフェージング等の影響を実質的に受けずに最も望ましい無線通信チャンネルを選択することでき、またダイバーシティ受信を行うことが可能である。また少ないスイッチ手段で電力消費を抑えながらマルチバンドアンテナと送信側回路、受信側回路との接続を切り替えることが可能である。
【0031】
本発明の高周波回路は各通信システムでの送信データを変調し、受信データを復調する送受信部と、前記高周波スイッチの切り替えを制御するスイッチ回路制御部を備えたマルチバンド通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施態様によるマルチバンド通信装置の回路を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施態様によるマルチバンド高周波回路を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施態様によるマルチバンド高周波回路の等価回路を示す図である。
【図4】本発明に用いるDPDTスイッチの一例の等価回路を示す図である。
【図5】本発明に用いるDPDTスイッチの他の例の等価回路を示す図である。
【図6】本発明に用いるDPDTスイッチのさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図7】本発明に用いるDPDTスイッチのさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図8】本発明に用いる分波回路の一例の等価回路を示す図である。
【図9】本発明に用いる分波回路の他の例の等価回路を示す図である。
【図10】本発明に用いるフィルタ回路の一例の等価回路を示す図である。
【図11】本発明に用いるフィルタ回路の他の例の等価回路を示す図である。
【図12】本発明に用いるフィルタ回路のさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図13】本発明に用いるフィルタ回路のさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図14】本発明に用いる平衡−不平衡回路の一例の等価回路を示す図である。
【図15】本発明に用いる平衡−不平衡回路の他の例の等価回路を示す図である。
【図16】本発明に用いる平衡−不平衡回路のさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図17】本発明の他の実施態様によるマルチバンド高周波回路を示すブロック図である。
【図18】本発明に用いるSPDTスイッチの一例の等価回路を示す図である。
【図19】本発明に用いるSPDTスイッチの他の例の等価回路を示す図である。
【図20】本発明に用いるSPDTスイッチのさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図21】本発明のさらに他の実施態様によるマルチバンド高周波回路を示すブロック図である。
【図22】本発明に用いるSPSTスイッチの一例の等価回路を示す図である。
【図23】本発明に用いるSPSTスイッチの他の例の等価回路を示す図である。
【図24】本発明に用いるSPSTスイッチのさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図25】本発明に用いるSPSTスイッチのさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図26】本発明の一実施態様によるマルチバンド高周波回路を用いたマルチバンド高周波回路部品を示す斜視図である。
【図27】本発明のマルチバンド高周波回路を用いたマルチバンド高周波回路部品を構成する積層基板の一部を示す分解斜視図である。
【図28】本発明のマルチバンド高周波回路を用いたマルチバンド高周波回路部品を構成する積層基板の残部を示す分解斜視図である。
【図29】本発明のさらに他の実施態様によるマルチバンド高周波回路の等価回路を示す図である。
【図30】本発明のさらに他の実施態様によるマルチバンド高周波回路を示すブロック図である。
【図31】本発明のさらに他の実施態様によるマルチバンド高周波回路の等価回路を示す図である。
【図32】本発明のさらに他の実施態様によるマルチバンド高周波回路の等価回路を示す図である。
【図33】従来のマルチバンド通信装置を示すブロック図である。
【図34】別の従来のマルチバンド通信装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を添付図面を参照して以下詳細に説明する。
実施例1
図1は本発明の好ましい実施態様によるマルチバンド通信装置の回路を示す。このマルチバンド通信装置は、2.4 GHz帯及び5 GHz帯で送受信が可能な2つのマルチバンドアンテナANT1,ANT2と、前記マルチバンドアンテナと送信回路及び受信回路との接続を切り替える高周波スイッチや複数の分波回路を備えた高周波回路部1と、各通信システムでの送信データを変調し、受信データを復調するIEEE802.11aの送受信部、及びIEEE802.11bの送受信部と、前記高周波スイッチの切り替えを制御するスイッチ回路制御部と、受信信号増幅器とを備えた送受信回路部RF-ICと、平衡信号を不平衡信号に変換する平衡−不平衡変換回路53,54と、この平衡−不平衡変換回路と接続する送信信号用の増幅器PA1,PA2とを具備する。他の態様として、平衡−不平衡変換回路53,54や送信信号用の増幅器PA1,PA2、結合回路を送受信回路部RF-ICに備えるものもある。
【0034】
本例では第1の通信システムをIEEE802.11aとし、第2の通信システムをIEEE802.11bとしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、前記のようにIEEE802.11hはIEEE802.11aと同じ周波数帯で、IEEE802.11gはIEEE802.11bと同じ周波数帯であるので、それぞれの回路部を各通信システムに使用しても良い。IEEE802.11b及びIEEE802.11gをともに扱う場合、変調方式が異なるため、それぞれに対応可能な送受信部が必要となる。
【0035】
図2は高周波回路部1の一例を示し、図3は高周波回路部1の等価回路を示す。本発明のマルチバンド高周波回路(高周波回路部1)は、高周波スイッチ回路10と、これに接続された第1及び第2の分波回路20,25を基本構成とする。本実施例におけるマルチバンド高周波回路は、4つのポートを備えたDPDT(双極双投)の高周波スイッチ回路10に、複数のマルチバンドアンテナと複数の分波回路が接続されたもので、高周波スイッチ回路10の第1のポート10aには、DCカットコンデンサを兼ねる結合コンデンサC1からなる整合回路を介して第1のマルチバンドアンテナANT1が接続し、第2のポート10bには、結合コンデンサC2からなる整合回路を介して第2のマルチバンドアンテナANT2が接続し、第3のポート10cには、送信信号を分波する第1の分波回路20が接続し、第4のポート10dには、受信信号を分波する第2の分波回路25が接続している。第1の分波回路20の第3ポート20cにはフィルタ回路60が接続し、第2の分波回路25の第2ポート25bにはフィルタ回路30及び平衡−不平衡変換回路50が接続し、第3のポート25cにはフィルタ回路40及び平衡−不平衡変換回路55が接続している。
【0036】
高周波スイッチ回路10は、電界効果型トランジスタ(FET)やダイオード等のスイッチング素子を主構成とし、適宜インダクタンス素子及びキャパシタンス素子を具備しても良い。高周波スイッチ回路10の一構成例を図4に示す。この高周波スイッチ回路10は、リング状に配置された4つの信号経路に4つの電界効果トランジスタをシリーズに接続するとともに、4つの信号経路のうち、第3のポート10c及び第4のポート10d側にDCカットコンデンサCを直列接続したものであり、高周波信号の経路に配置されるスイッチング素子の数が少ないために、スイッチング素子による損失が少ない。
【0037】
スイッチ回路制御部により制御された電圧がコントロール端子V1,V2に与えられると、高周波スイッチ回路10の各ポート間は表1に示すように接続される。
【0038】
【表1】
【0039】
高周波スイッチ回路10のコントロール端子V1に、電界効果型トランジスタが動作する閾値以上の電圧(例えば、+1〜+5 V)を印加(High)して、コントロール端子V2は閾値以下の電圧で例えば0 V(Low)とした場合について、以下詳細に説明する。
【0040】
この場合、電界効果型トランジスタFET1とFET4がON状態、電界効果型トランジスタFET2とFET3がOFF状態となる。そのため、高周波スイッチ回路10のポート10c(第1の分波回路側)から入力した高周波信号はON状態の電界効果型トランジスタFET1を通過し、ポート10a(第1のマルチバンドアンテナ側)に伝送される。このとき電界効果型トランジスタFET3はOFF状態なので、そのアイソレーション特性によってポート10b(第2のマルチバンドアンテナ側)への高周波信号の漏洩はほとんどなく、かつ電界効果型トランジスタFET2もOFF状態なのでポート10d(第2の分波回路側)への高周波信号の漏洩もほとんどない。
【0041】
一方、高周波スイッチ回路10のポート10b(第2のマルチバンドアンテナ側)から入力した高周波信号は、ON状態の電界効果型トランジスタFET4を通過し、ポート10d(第2の分波回路側)に伝送される。このとき、電界効果型トランジスタFET2はOFF状態なので、ポート10a(第1のマルチバンドアンテナ側)への高周波信号の漏洩はほとんどなく、かつ電界効果型トランジスタFET3もOFF状態なので、ポート10c(第1の分波回路側)への高周波信号の漏洩もほとんどない。
【0042】
次にコントロール端子V2に電界効果型トランジスタが動作する閾値以上の電圧(例えば、+1〜+5 V)を印加し、コントロール端子V1は閾値以下の電圧で0 Vとした場合について説明する。この場合、電界効果型トランジスタFET2とFET3がON状態、電界効果型トランジスタFET1とFET4がOFF状態となる。そのため、高周波スイッチ回路10のポート10a(第1のマルチバンドアンテナ側)から入力した高周波信号はON状態の電界効果型トランジスタFET2を通過し、ポート10d(第2の分波回路側)に伝送される。一方、高周波スイッチ回路10のポート10c(第1の分波回路側)から入力した高周波信号は、ON状態の電界効果型トランジスタFET3を通過し、ポート10b(第2のマルチバンドアンテナ側)に伝送される。
【0043】
本発明のマルチバンド高周波回路において送受信を行う場合、まず通信を開始する前に周波数スキャンを行い、受信可能な周波数チャンネルを探索する(キャリアスキャン)。スキャン動作を行う場合には、例えば表1の接続モード1となるように、スイッチ回路制御部により高周波スイッチ回路10を制御する。このとき、第2のマルチバンドアンテナANT2と第2の分波回路25とが接続され、一つのマルチバンドアンテナに2つの通信システムの受信回路が接続する。
【0044】
高周波スイッチ回路10の第4のポート10dと接続する第2の分波回路25は、2.4 GHz帯(IEEE802.11b)の高周波信号を通過させるが、5 GHz帯(802.11a)の高周波信号を減衰させる低周波側フィルタ回路と、5 GHz帯(IEEE802.11a)の高周波信号を通過させるが、2.4 GHz帯(IEEE802.11b)の送信信号を減衰させる高周波側フィルタ回路とを組み合わせて構成される。本実施例では、低周波側フィルタ回路はインダクタンス素子及びキャパシタンス素子からなるローパスフィルタ回路により構成し、高周波側フィルタ回路はハイパスフィルタ回路により構成している。
【0045】
このような構成により、マルチバンドアンテナに入射し、高周波スイッチ回路10の第4のポート10dに現れる高周波信号のうち、2.4 GHz帯の高周波信号は第2の分波回路25の第2のポート25bに現れるが、第3のポート25cには現れず、5 GHz帯の高周波信号は第2の分波回路25の第3のポート25cに現れるが、第2のポート25bには現れない。このようにして、2.4 GHz帯の高周波信号と5 GHz帯の高周波信号とを分波することができる。
【0046】
第2の分波回路25において、その第2のポート25bに現れた高周波信号は、バンドパスフィルタ回路30によりノイズ成分が除去され、平衡−不平衡変換回路50により不平衡信号から平衡信号に変換されてIEEE802.11bの受信回路に入力する。また第3のポート25cに現れた高周波信号は、フィルタ回路40及び平衡−不平衡変換回路55を経てIEEE802.11aの受信回路に入力する。
【0047】
得られた高周波信号に基づいて、IEEE802.11aの受信回路部では5 GHz帯でスキャンし、これと並行し802.11b送受信部では2.4 GHz帯でスキャンして、受信可能な全てのチャンネルを検出する。
【0048】
次に接続モード2となるように、スイッチ回路10をスイッチ回路制御部により制御する。このとき、第1のマルチバンドアンテナANT1と受信回路側の第2の分波回路25とが接続される。得られた高周波信号に基づいて、IEEE802.11aの受信回路部では5 GHz帯でスキャンし、これと並行してIEEE802.11bの送受信部では2.4 GHz帯でスキャンして、受信可能な全てのチャンネルを検出する。
【0049】
周波数スキャンの結果に基づいて、アクティブにする通信システムのチャンネルを選択するとともに、第1及び第2のデュアルバンドアンテナANT1、ANT2で受信した受信信号を振幅で比較して、前記通信システムの送受信回路と接続するマルチバンドアンテナを選択する。
【0050】
従って、フェージング等の外乱が生じても最も好ましい通信システムを選択してダイバーシティ受信を行うことができる。またフィルタ回路によってノイズを除いた受信信号によりキャリアセンスを行うことにより、無線通信において最も望ましいチャンネルを選択することができる。キャリアセンスで全てのチャンネルが使用中(ビジー)であると判断された場合、一定時間経過した後、再度キャリアセンスを行う。
【0051】
次いで、選択されたチャンネルで送信を行う。選択されたマルチバンドアンテナを、高周波スイッチ回路10の第3のポート10cを介して第1の分波回路20と接続する。第1の分波回路20は、2.4 GHz帯(IEEE802.11b)の高周波信号を通過させるが、5 GHz帯(IEEE802.11a)の高周波信号を減衰させる低周波側フィルタ回路と、5 GHz帯(IEEE802.11a)の高周波信号を通過させるが、2.4 GHz帯(IEEE802.11b)の送信信号を減衰させる高周波側フィルタ回路との組合せからなる。本実施例では、低周波側フィルタ回路をローパスフィルタ回路で構成し、高周波側フィルタ回路をハイパスフィルタ回路で構成している。
【0052】
このためIEEE802.11bの送信回路から第1の分波回路20の第2のポート20bに入力する2.4 GHz帯の高周波信号は、低周波側フィルタ回路を介して第1のポート20aに現れるが、第3のポート20cには現れず、他方、IEEE802.11aの送信回路から第1の分波回路の第3のポート20cに入力する5 GHz帯の高周波信号は、高周波側フィルタ回路を介して第1のポート20aに現れるが、第2のポート20bには現れない。このようにして、2.4 GHz帯の高周波信号と5 GHz帯の高周波信号とを分波することができる。なお、同じポートから2.4 GHz帯及び5 GHz帯の高周波信号を取り出すことから、「合成する」と表現することもある。
【0053】
第1のポート20aに現れた高周波信号は、前記スイッチ回路の第3のポート10cに入力し、前記マルチバンドアンテナから放射される。
【0054】
スイッチ回路10の他の例の等価回路を図5〜図7に示す。これらの等価回路は、電界効果トランジスタFETやダイオードD1〜D4等のスイッチング素子を主構成とし、適宜インダクタンス素子及びキャパシタンス素子を有するものであり、例えば2つのSPDT(単極双投)スイッチを用いて構成することができる。
【0055】
第1及び第2の分波回路20,25は、インダクタンス素子及びキャパシタンス素子で構成されたローパスフィルタ回路、ハイパスフィルタ回路及びバンドパスフィルタ回路を適宜組み合わせて構成される。分波回路20,25の一例の等価回路を図8及び9に示す。
【0056】
フィルタ回路30、40、60も同様にローパスフィルタ回路、ハイパスフィルタ回路及び/又はバンドパスフィルタ回路で構成される。これらのフィルタ回路は分波回路20,25の帯域外減衰量により適宜選択する。フィルタ回路30、40、60の他の例の等価回路を図10〜13に示す。
【0057】
平衡−不平衡変換回路50,55はインダクタンス素子及びキャパシタンス素子で構成され、インピーダンス変換機能も具備し得る。その等価回路の例を図14〜16に示す。不平衡入力−平衡出力型のSAWフィルタを用いれば、フィルタ回路と平衡−不平衡変換回路とを一つの回路素子で実現できるので、部品点数が削減でき、高周波回路の低コスト化及び小型化が達成される。入力インピーダンスと出力インピーダンスの異なるSAWフィルタを用いても良い。この場合、インピーダンス変換機能も具備し得る。SAWフィルタの代わりにFBARフィルタを用いることもできる。
【0058】
上記の種々の分波回路、フィルタ回路、平衡−不平衡変換回路及び/又はスイッチ回路を用いて構成したマルチバンド高周波回路は、図3に示すマルチバンド高周波回路と同様に優れた機能を発揮する。
【0059】
複数のマルチバンドアンテナを配置できない場合、図17のブロック図に示すように、高周波スイッチ回路10としてSPDTスイッチ12を使用すれば、一つのマルチバンドアンテナと接続するマルチバンド高周波回路を得ることができる。この場合、スイッチ回路以外は図1〜3に示す実施態様と同様であるので、ダイバーシティ受信以外は、実施例1のマルチバンド高周波回路と同様の機能を発揮する。SPDTスイッチ12としては、図18〜20に示すスイッチ回路を適宜用いることができる。
【0060】
送信側回路と受信側回路とのアイソレーションを確保する場合、図21に示すように、高周波スイッチ回路10と第2の分波回路25との間にSPST(単極単投)スイッチ回路11を配置するのが好ましい。SPSTスイッチ回路11は、例えば図22〜25に示すように、スイッチング素子、インダクタンス素子及びキャパシタンス素子で構成され、高周波スイッチ回路10のポート10cがポート10a又はポート10bに接続される場合に信号の通過を遮断するように制御される。
【0061】
実施例2
図3に示す等価回路を有するマルチバンド高周波回路を積層基板に構成した例を図26〜28に示す。図26は、第1及び第2の分波回路20,25、フィルタ回路30,40,60、第1及び第2の平衡−不平衡回路50,55等を積層基板の内外に設けたマルチバンド高周波回路部品の外観を示す。図27及び28は高周波回路部品を構成する積層基板100の各層の構成を示す。
【0062】
積層基板100は、例えば1000℃以下の低温で焼結可能なセラミック誘電体からなり、AgやCu等の導電ペーストを印刷して所定の電極パターンを形成した厚さ10〜200μmの複数のセラミックグリーンシートを積層し、一体的に焼結することにより製造することができる。
【0063】
最下層のグリーンシート15の表面にはほぼ全面を覆うグランド電極GNDが形成されており、裏面には回路基板に実装するための端子電極が形成されている。端子電極はアンテナポートANT1,ANT2と、不平衡信号が入力する送信ポートTx1,Tx2と、平衡信号が出力される受信ポートRx1+,Rx1-,Rx2+,Rx2-と、グランドポートGNDと、スイッチ回路制御用のコントロールポートV1、V2を有し、それぞれがグリーンシートに形成されたビアホール(図中、黒丸で表示)を介して上層のグリーンシート上の電極パターンに接続されている。本実施例では端子電極をLGA(Land Grid Array)としているが、BGA(Ball Grid Array)等も採用することができる。
【0064】
グリーンシート15の上にはグリーンシート1〜14が積層される。これらのグリーンシート上で、第1及び第2の分波回路20,25、フィルタ回路30,40,60、平衡−不平衡変換回路50,55を構成するインダクタンス素子は伝送線路により、またキャパシタンス素子は所定の電極パターンにより形成され、ビアホールを介して適宜接続されている。フィルタ回路30,40と平衡−不平衡変換回路50,55との間に配置される整合回路80,85は、所定の線路長の伝送線路により形成されている。インダクタンス素子及びキャパシタンス素子は、当然チップインダクタ及びチップコンデンサとして積層基板100上に実装することも可能である。
【0065】
各回路は積層基板100に三次元的に構成されるが、回路を構成する電極パターンは相互に不要な電磁気的干渉を防ぐように、グランド電極GNDにより分離されるか、積層方向に重ならないように配置されている。5 GHz帯の高周波信号が通過する伝送線路と他の電極パターンは、電磁気的な干渉を防ぐために少なくとも50μm離間する。
【0066】
誘電体としては、例えばAl,Si及びSrを主成分として、Ti,Bi,Cu,Mn,Na,K等を副成分とするセラミックス、Al,Si及びSrを主成分として、Ca,Pb,Na,K等を複成分とするセラミックス、Al,Mg,Si及びGdを含むセラミックス、Al,Si,Zr及びMg含むセラミックスが挙げられる。誘電体の誘電率は5〜15程度が好ましい。またセラミック誘電体の他に、樹脂や、樹脂/セラミック複合材を用いることも可能である。さらにHTCC(高温同時焼成セラミック)技術により、Al2O3を主体とする誘電体基板上に、タングステンやモリブデン等の高温焼結可能な金属導体により電極パターンを形成しても良い。
【0067】
グリーンシート1には複数のランド電極が形成されており、ランド電極にDPDTスイッチ(GaAs FET)や、積層基板に内蔵されないカップリングコンデンサがチップ部品として搭載されている。ランド電極はビアホールを介して積層基板内の接続線路や回路素子と接続している。
【0068】
ベア状態のスイッチをランド電極に実装し、樹脂や管で封止しても良い。このようなマルチバンド高周波回路部品は小型化に適する。なお送受信回路部を構成するRF-ICやベースバンドICも積層基板に複合化して良い。
【0069】
実施例3
図29はマルチバンド高周波回路の他の例の等価回路を示す。このマルチバンド高周波回路の特徴的は、第2の分波回路25の低周波側フィルタ回路が、位相回路Lfr1と2.4 GHz帯を通過帯域とするバンドパスフィルタ回路30で構成されている点である。位相回路Lfr1は高周波信号の位相を適宜調整し、もってバンドパスフィルタ回路30を高周波スイッチ回路側から見た時に、5 GHz帯におけるインピーダンスを高インピーダンスとし、2.4 GHz帯の受信回路に5 GHz帯の高周波信号が漏洩するのを防ぐ。この例では、位相回路Lfr1を伝送線路とすることにより、マルチバンド高周波回路を少ない回路素子で構成することができる。
【0070】
実施例4
図30〜図32はマルチバンド高周波回路の他の例を示す。図30は結合回路を含むマルチバンド高周波回路の送信側回路を示す。この例では、TPC機能を付与するように、実施例1のマルチバンド高周波回路の高周波スイッチ回路10と第1の分波回路20との間に、複数の通信システムに対応する送信電力の一部を取り出す結合回路150を配置したものである。
【0071】
本実施例では、2.4 GHz帯及び5 GHz帯の高周波信号から、結合回路150及び検波ダイオード(ショットキダイオード)を含む検波回路300で出力電力の一部を検出する。このようにアンテナ出力端に近いところで出力電力をモニタすることにより、検波精度が向上している。結合回路150は、例えば方向性結合器や結合コンデンサにより構成される。
【0072】
本実施例のマルチバンド高周波回路では、2.4 GHz帯及び5 GHz帯で1つの結合回路を用いる。前記結合回路の結合度は5 GHz帯の方が2.4 GHz帯より大きく、その差は5 dB程度にもなる。結合度の差はそのまま検波電圧に反映し、増幅器からの出力電力に対する検波電圧は異なる。そこで、結合回路150と検波回路300との間に整合回路200を配置することにより、2.4 GHz帯における結合回路150のインピーダンスと、検波回路300のインピーダンスとを整合させ、もって結合度(検波電圧)が小さい2.4 GHz帯においても大きな検波電圧を得ることができる。
【0073】
前記整合回路は、結合回路150の出力ポート150cに接続されたシャントインダクタと、結合回路150と検波ダイオードの間に接続された位相回路とで構成するのが好ましい。この整合回路のスミスチャート上での整合調整では、シャントインダクタによる振幅調整と、位相回路による位相調整を個別に行うことができる。これにより、2.4 GHz帯における結合回路と検波回路とのインピーダンス整合が簡単になる。
【0074】
図31は、結合回路150として方向性結合器を用いたマルチバンド高周波回路の結合回路部の等価回路を示す。前記方向性結合器は、主線路STL1、副線路STL2及び抵抗R1により構成され、第1の分波回路20からの送信信号が方向性結合器150の入力ポート150bから入力され、出力ポート150aに出力される。主線路STL1、副線路STL2は、電磁気的に結合しており、送信信号の一部が結合ポート150cに出力される。
【0075】
整合回路200は、シャントインダクタLss及び位相回路Lsiにより構成され、シャントインダクタLss、及び位相回路Lsiの定数は、2.4 GHz帯において方向性結合回路の結合ポート150cの出力インピーダンスと、検波回路300の入力インピーダンスとを整合するように設定されている。シャントインダクタLssにより振幅調整を行い、位相回路Lsiにより位相調整を行う。
【0076】
検波ダイオードDkのアノードは整合回路200に接続し、カソードはシャント接続されたコンデンサCk及び抵抗Rkからなる電圧平滑回路に接続している。結合回路150からの高周波信号は検波ダイオードDkに入力され、その順電圧を超えた高周波信号のみがカソードへ伝播し、平滑回路で直流電圧に変換され、検波回路300の出力側に接続した比較制御手段に検波電圧として入力する。
【0077】
比較制御手段400は、演算増幅器、抵抗、制御トランジスタ等により構成されており、入力された基準信号と検波ダイオードDkから与えられる検出信号とを比較してその両信号のレベル差が零になるように増幅器の出力電力を変化させる。
【0078】
高周波回路の他の例として、図32は、図31に示す結合回路部分を結合コンデンサCc1で構成した高周波回路を示す。この結合回路においても2.4 GHz帯の結合度より5 GHz帯の結合度の方が5 dB程度大きいため、整合回路200により2.4 GHz帯の検波電圧を増加させることにより、5 GHz帯の検波電圧との偏差を小さくすることができる。
【0079】
結合回路部分を結合コンデンサCc1で構成した回路でも、周波数に対する検波電圧のばらつきが小さく、部品点数が削減でき、小型化が可能である。従って、このような高周波回路は、TPC機能を備えたIEEE802.11hの通信システムに好適である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のマルチバンド高周波回路は、WLANによるデータ通信においてノイズやフェージング等の影響を受けにくく、無線通信において最も望ましいチャンネルを選択することでき、またダイバーシティ受信を行うことが可能である。本発明のマルチバンド高周波回路はまた、少ないスイッチ手段で電力消費を抑えながらマルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えることが可能である。
【0081】
上記高周波回路を小型の三次元積層構造にした高周波回路部品により、各通信システムでの送信データを変調し、受信データを復調する送受信部と、前記高周波スイッチの切り替えを制御するスイッチ回路制御部を備えたマルチバンド通信装置が得られる。
【0082】
このような特徴を有する本発明のマルチバンド高周波回路は、パーソナルコンピュータ、PCの周辺機器(プリンタ、ハードディスク、ブロードバンドルータ等)、電子機器(FAX、冷蔵庫、標準テレビ、高品位テレビ、カメラ、ビデオ、携帯電話等)、自動車内や航空機内の信号伝達手段に好適である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子電器機器間における無線伝送を行う無線通信装置に関し、特には少なくとも2つの通信システムに共用でき、さらにはダイバーシティ受信が可能なマルチバンド高周波回路及びこれを用いたマルチバンド通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、IEEE802.11規格に代表される無線LAN(WLAN)によるデータ通信が広く一般化している。例えばパーソナルコンピュータ(PC)、プリンタやハードディスク、ブロードバンドルータ等のPCの周辺機器、FAX、冷蔵庫、標準テレビ(SDTV)、高品位テレビ(HDTV)、カメラ、ビデオ、携帯電話等の電子機器、自動車内や航空機内でのワイヤに変わる信号伝達手段として採用され、それぞれの電子電器機器間において無線データ伝送が行われている。
【0003】
WLANの規格として現在複数の規格が存在する。例えば、IEEE802.11aは、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiples:直交周波数多重分割)変調方式を用いて、最大54 Mbpsの高速データ通信をサポートするものであり、その周波数帯域は5 GHz帯が利用される。なおIEEE802.11aを欧州で使用可能にするための規格としてIEEE802.11hがある。
【0004】
またIEEE802.11bは、DSSS(Direct Sequence Spread Spectrumダイレクト・シーケンス・スペクトル拡散)方式で、5.5 Mbps,11 Mbpsの高速通信をサポートするものであり、無線免許なしに自由に利用可能な、2.4 GHzのISM(Industrial, Scientific and Medical、産業、科学及び医療)帯域が利用される。
【0005】
またIEEE802.11gは、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiples:直交周波数多重分割)変調方式を用いて、最大54 Mbpsの高速データ通信をサポートするものであり、IEEE802.11bと同様に2.4 GHz帯域が利用される。
以下の説明ではIEEE802.11a、IEEE802.11hを第1の通信システムとし、IEEE802.11b、IEEE802.11gを第2の通信システムとして説明する場合がある。
【0006】
このようなWLANを用いたマルチバンド通信装置は特開2003-169008号に記載されている。このマルチバンド通信装置は、通信周波数帯が異なる2つの通信システム(IEEE802.11a、IEEE802.11b)で送受信が可能な2つのデュアルバンドアンテナと、各通信システムでの送信データを変調し、受信データを復調する2つの送受信部と、前記アンテナを前記送受信部にそれぞれ接続するための複数のスイッチ手段と、前記スイッチ手段の切り換え制御を行うスイッチ制御手段とを備え、ダイバーシティ受信が可能である(図33参照)。
【0007】
他の例として、特開2002-033714号は、一つのマルチバンドアンテナを備えたマルチバンド通信装置を記載している。このマルチバンド通信装置は、スイッチ回路や増幅器、ミキサ等を備えた2.4 GHz帯のフロントエンド回路及び5 GHz帯のフロントエンド回路を備え、両者のうちの一つを選択的に共通のマルチバンドアンテナに接続するスイッチ回路SW1、送受信回路を切り替えるスイッチ回路SW2,SW3と、中間周波数フィルタBPFに接続するスイッチ回路SW4とを具備する(図34参照)。
【0008】
WLAN用のマルチバンド通信装置では、キャリア検出多元接続方式(CSMA: Carrier Sense Multiple Access)が採用されており、通信を開始する前に、まず周波数スキャンを行い、受信可能な周波数チャンネルを探索(キャリアセンス)することが規格化されている。
【0009】
特開2003-169008号のマルチバンド通信装置では、このスキャン動作を行う場合に、6つのSPDT(単極双投)のスイッチ手段(SW1〜SW6)により、アンテナANT1を802.11a送受信部の受信端子Rxに接続し、同時にアンテナANT2を802.11b送受信部の受信端子Rxに接続する。802.11a送受信部では5 GHz帯でスキャンし、これと並行し802.11b送受信部では2.4 GHz帯でスキャンして、受信可能な全ての空きチャンネルを検出する。
【0010】
次のステップとして、デュアルバンドアンテナANT1で受信した5 GHz帯の受信信号とデュアルバンドアンテナANT2で受信した2.4 GHz帯の受信信号とを比較し、2つの通信システムのうち望ましい方の信号が受信される方をアクティブ通信システムとして選択する。
【0011】
このスキャン動作後に、選択された通信システムの送受信装置に接続するアンテナを他方のアンテナに変更して、受信チャンネルを変更せずに受信し、2つのアンテナでの受信信号を比較して、より良好な受信ができる方のアンテナをアクティブアンテナとして選択し、ダイバーシティ受信を行う。
【0012】
また特開2002-033714号のマルチバンド通信装置では、一つのデュアルバンドアンテナANT1で2.4 GHz帯、5 GHz帯での受信信号をスキャンし、受信可能な全ての空きチャンネルを検出して、通信に望ましい通信システムのチャンネルを選択する。
【0013】
従来のマルチバンド通信装置のように、通信システムごとに異なるアンテナに接続するか、一つのアンテナに接続して得られた受信信号を比較した結果に基づいて通信システムのチャンネルを選択する方法では、他の通信システムや電子機器からのノイズの影響や、フェージング等の外乱の影響が無視できず、選択すべき通信システムのチャンネルがビシー状態として誤認識されたり、受信信号の振幅が最も大きい通信システムが選択されないことがある。
【0014】
特に2.4 GHz帯の周波数帯域には、電子レンジからの漏洩電波や、Bluetooth(R)、RFID(Radio Frequency Identification)等の通信システムによるノイズがあり、また近傍の周波数帯にはWCDMA(Wide Band Code Division Multiple Access)等の比較的大きな送信電力を有する携帯電話の通信システムが存在し、これらの高周波信号は、WLANシステムにおいては通信の妨害となっている。しかしながら、従来のマルチバンド通信装置では、このようなノイズが何等考慮されていなかった。
【0015】
また従来のマルチバンド通信装置では、多くのスイッチ手段で高周波信号の経路を切り替える必要があるため、スイッチ手段の数に応じて制御が複雑化する。またスイッチ手段はある程度の伝送損失を有するため、アンテナから送受信部に至る経路において、多数のスイッチ手段が存在すると、それに応じて伝送損失が増加する。特に受信時においてはアンテナから入射する高周波信号の品質が劣化するといった問題もあった。またスイッチ手段の切り替えに消費される電力も、ノートPCや携帯電話等のバッテリーを駆動電源とする機器では無視できないため、少ないスイッチ手段でマルチバンド高周波回路を構成することが求められていた。
【0016】
またIEEE802.11hでは、新たにDFS(Dynamic Frequency Selection)やTPC(Transmission Power Control)機能が要求される。ここでTPC機能とは、例えば端末と基地局が近い場合、送信パワーを抑えても良好な通信ができる時は送信電力を抑え、消費電力を必要最小限のレベルに押え込むものである。
【0017】
電力増幅器の出力ポートからマルチバンドアンテナまでの間には、スイッチ回路等の様々な回路素子によって生じる通過損失がある。この通過損失は周波数特性を有するものであるから、マルチバンド高周波回路が使用する周波数チャンネルによってマルチバンドアンテナからの出力電力は一定ではなく、使用チャンネルに対応して変動する。このため、増幅器からの出力パワーを精度良く制御する必要がある。
【0018】
例えば、特開2003-169008号のマルチバンド通信装置でTPC機能を実現しようとすれば、IEEE802.11a送受信部とスイッチ回路SW3の間、及び、IEEE802.11b送受信部とスイッチ回路SW4の間の各々に結合回路(例えば方向性結合器)を接続し、方向性結合器からの検波信号を検波回路に入力し、得られた検波電圧をもとに出力信号を制御しなければならない。しかしながら、この方法では2.4 GHz帯及び5 GHz帯の両方に方向性結合器、検波ダイオード、平滑回路が必要であり、さらに制御回路を共用する場合には、2.4 GHz帯及び5 GHz帯の検波電圧端子を選択するアナログスイッチも必要である。このため、部品点数が増大して通信装置の小型化が困難になる等の問題がある。
【0019】
またWLANの高周波回路では、ダイバーシティスイッチや送信回路、受信回路を切り替えるスイッチ回路の他にも、送信信号や受信信号に含まれる不要な周波数成分を除去するフィルタ回路が必要である。さらに不平衡信号を平衡信号に変換する平衡―不平衡変換回路や、インピーダンス変換回路も必要である。
【0020】
さらに携帯電話やノートPCに内蔵する場合や、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)のネットワークカードとする場合には、マルチバンド通信装置を小型化することが強く望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明の第1の目的は、少なくとも2つの通信システムに共用可能なマルチバンド高周波回路において、ノイズやフェージング等の影響を実質的に受けずに最も望ましい無線通信チャンネルを選択することができるマルチバンド高周波回路、及びさらにダイバーシティ受信を行うことが可能なマルチバンド高周波回路を提供することである。
【0022】
本発明の第2の目的は、少ないスイッチ手段でマルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えることができ、少ない部品点数で結合回路、フィルタ回路、平衡―不平衡変換回路及びインピーダンス変換回路を備えたマルチバンド高周波回路を提供することである。
【0023】
本発明の第3の目的は、各通信システムでの送信データを変調し、受信データを復調する送受信部と、前記高周波スイッチの切り替えを制御するスイッチ回路制御部を備えたマルチバンド通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
通信周波数が異なる複数の通信システムの無線通信を行う本発明の一実施態様によるマルチバンド高周波回路は、マルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えるスイッチング素子を備えた高周波スイッチ回路と、前記高周波スイッチ回路と送信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第1の低周波側フィルタ回路と第1の高周波側フィルタ回路により送信信号を分波する第1の分波回路と、前記第1の低周波側フィルタ回路と接続される第1の増幅器と、前記第1の増幅器と接続される第1の平衡−不平衡変換回路と、前記第1の高周波側フィルタ回路と接続される第2の増幅器と、前記第2の増幅器と接続される第2の平衡−不平衡変換回路とを有し、前記高周波スイッチ回路と受信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第2の低周波側フィルタ回路と第2の高周波側フィルタ回路により受信信号を分波する第2の分波回路と、前記第2の低周波側フィルタ回路と接続された第3の平衡−不平衡変換回路と、前記第2の高周波側フィルタ回路と接続された第4の平衡−不平衡変換回路とを有することを特徴とする。
【0025】
前記スイッチング素子をON状態あるいはOFF状態に制御して、前記マルチバンドアンテナを第2の分波回路を介して複数の通信システムの受信側回路と接続し、受信可能な周波数チャンネルを複数の通信システムにおいて検出するとともに、受信信号の比較結果に基づいて、いずれか一つの通信システムの周波数チャンネルを選択した後、前記マルチバンドアンテナと送信側回路との接続、あるいは受信側回路との接続を切り替えて送受信しても良い。
【0026】
通信周波数が異なる複数の通信システムの無線通信を行う本発明の別の実施態様によるマルチバンド高周波回路は、第1及び第2のマルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えるスイッチング素子を備えた高周波スイッチ回路と、前記高周波スイッチ回路と送信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第1の低周波側フィルタ回路と第1の高周波側フィルタ回路により送信信号を分波する第1の分波回路と、前記第1の低周波側フィルタ回路と接続される第1の増幅器と、前記第1の増幅器と接続される第1の平衡−不平衡変換回路と、前記第1の高周波側フィルタ回路と接続される第2の増幅器と、前記第2の増幅器と接続される第2の平衡−不平衡変換回路とを有し、前記高周波スイッチ回路と受信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第2の低周波側フィルタ回路と第2の高周波側フィルタ回路により受信信号を分波する第2の分波回路と、前記第2の低周波側フィルタ回路と接続された第3の平衡−不平衡変換回路と、前記第2の高周波側フィルタ回路と接続された第4の平衡−不平衡変換回路とを有し、前記高周波スイッチ回路は第1乃至第4のポートを有し、第1のポートは前記第1のマルチバンドアンテナと接続され、第2のポートは前記第2のマルチバンドアンテナと接続され、第3のポートは前記第1の分波回路と接続され、第4のポートは前記第2の分波回路と接続されており、前記スイッチング素子をON状態あるいはOFF状態に制御して、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナの何れかを前記第2の分波回路を介して複数の通信システムの受信側回路と接続し、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナごとに、受信可能な周波数チャンネルを複数の通信システムにおいて検出するとともに、受信信号の比較結果に基づいて、いずれか一つの通信システムの周波数チャンネルと無線通信を行うマルチバンドアンテナを選択した後、選択されたマルチバンドアンテナと送信側回路との接続、あるいは受信側回路との接続を切り替えて送受信することを特徴とする。
【0027】
受信可能な周波数チャンネルの検出を、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナごとに複数の通信システムにおいて並行して行っても良い。
【0028】
複数の通信システムの送信電力の一部を取り出す結合回路と、前記結合回路と接続された検波回路と、前記検波回路からの検出信号と基準信号とを比較して前記第1の増幅器及び前記第2の増幅器からの出力電圧を変化させる比較制御手段を備えても良い。
【0029】
本発明のマルチバンド通信装置は前記マルチバンド高周波回路を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明のマルチバンド高周波回路は、WLANによるデータ通信において、ノイズやフェージング等の影響を実質的に受けずに最も望ましい無線通信チャンネルを選択することでき、またダイバーシティ受信を行うことが可能である。また少ないスイッチ手段で電力消費を抑えながらマルチバンドアンテナと送信側回路、受信側回路との接続を切り替えることが可能である。
【0031】
本発明の高周波回路は各通信システムでの送信データを変調し、受信データを復調する送受信部と、前記高周波スイッチの切り替えを制御するスイッチ回路制御部を備えたマルチバンド通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施態様によるマルチバンド通信装置の回路を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施態様によるマルチバンド高周波回路を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施態様によるマルチバンド高周波回路の等価回路を示す図である。
【図4】本発明に用いるDPDTスイッチの一例の等価回路を示す図である。
【図5】本発明に用いるDPDTスイッチの他の例の等価回路を示す図である。
【図6】本発明に用いるDPDTスイッチのさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図7】本発明に用いるDPDTスイッチのさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図8】本発明に用いる分波回路の一例の等価回路を示す図である。
【図9】本発明に用いる分波回路の他の例の等価回路を示す図である。
【図10】本発明に用いるフィルタ回路の一例の等価回路を示す図である。
【図11】本発明に用いるフィルタ回路の他の例の等価回路を示す図である。
【図12】本発明に用いるフィルタ回路のさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図13】本発明に用いるフィルタ回路のさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図14】本発明に用いる平衡−不平衡回路の一例の等価回路を示す図である。
【図15】本発明に用いる平衡−不平衡回路の他の例の等価回路を示す図である。
【図16】本発明に用いる平衡−不平衡回路のさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図17】本発明の他の実施態様によるマルチバンド高周波回路を示すブロック図である。
【図18】本発明に用いるSPDTスイッチの一例の等価回路を示す図である。
【図19】本発明に用いるSPDTスイッチの他の例の等価回路を示す図である。
【図20】本発明に用いるSPDTスイッチのさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図21】本発明のさらに他の実施態様によるマルチバンド高周波回路を示すブロック図である。
【図22】本発明に用いるSPSTスイッチの一例の等価回路を示す図である。
【図23】本発明に用いるSPSTスイッチの他の例の等価回路を示す図である。
【図24】本発明に用いるSPSTスイッチのさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図25】本発明に用いるSPSTスイッチのさらに他の例の等価回路を示す図である。
【図26】本発明の一実施態様によるマルチバンド高周波回路を用いたマルチバンド高周波回路部品を示す斜視図である。
【図27】本発明のマルチバンド高周波回路を用いたマルチバンド高周波回路部品を構成する積層基板の一部を示す分解斜視図である。
【図28】本発明のマルチバンド高周波回路を用いたマルチバンド高周波回路部品を構成する積層基板の残部を示す分解斜視図である。
【図29】本発明のさらに他の実施態様によるマルチバンド高周波回路の等価回路を示す図である。
【図30】本発明のさらに他の実施態様によるマルチバンド高周波回路を示すブロック図である。
【図31】本発明のさらに他の実施態様によるマルチバンド高周波回路の等価回路を示す図である。
【図32】本発明のさらに他の実施態様によるマルチバンド高周波回路の等価回路を示す図である。
【図33】従来のマルチバンド通信装置を示すブロック図である。
【図34】別の従来のマルチバンド通信装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を添付図面を参照して以下詳細に説明する。
実施例1
図1は本発明の好ましい実施態様によるマルチバンド通信装置の回路を示す。このマルチバンド通信装置は、2.4 GHz帯及び5 GHz帯で送受信が可能な2つのマルチバンドアンテナANT1,ANT2と、前記マルチバンドアンテナと送信回路及び受信回路との接続を切り替える高周波スイッチや複数の分波回路を備えた高周波回路部1と、各通信システムでの送信データを変調し、受信データを復調するIEEE802.11aの送受信部、及びIEEE802.11bの送受信部と、前記高周波スイッチの切り替えを制御するスイッチ回路制御部と、受信信号増幅器とを備えた送受信回路部RF-ICと、平衡信号を不平衡信号に変換する平衡−不平衡変換回路53,54と、この平衡−不平衡変換回路と接続する送信信号用の増幅器PA1,PA2とを具備する。他の態様として、平衡−不平衡変換回路53,54や送信信号用の増幅器PA1,PA2、結合回路を送受信回路部RF-ICに備えるものもある。
【0034】
本例では第1の通信システムをIEEE802.11aとし、第2の通信システムをIEEE802.11bとしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、前記のようにIEEE802.11hはIEEE802.11aと同じ周波数帯で、IEEE802.11gはIEEE802.11bと同じ周波数帯であるので、それぞれの回路部を各通信システムに使用しても良い。IEEE802.11b及びIEEE802.11gをともに扱う場合、変調方式が異なるため、それぞれに対応可能な送受信部が必要となる。
【0035】
図2は高周波回路部1の一例を示し、図3は高周波回路部1の等価回路を示す。本発明のマルチバンド高周波回路(高周波回路部1)は、高周波スイッチ回路10と、これに接続された第1及び第2の分波回路20,25を基本構成とする。本実施例におけるマルチバンド高周波回路は、4つのポートを備えたDPDT(双極双投)の高周波スイッチ回路10に、複数のマルチバンドアンテナと複数の分波回路が接続されたもので、高周波スイッチ回路10の第1のポート10aには、DCカットコンデンサを兼ねる結合コンデンサC1からなる整合回路を介して第1のマルチバンドアンテナANT1が接続し、第2のポート10bには、結合コンデンサC2からなる整合回路を介して第2のマルチバンドアンテナANT2が接続し、第3のポート10cには、送信信号を分波する第1の分波回路20が接続し、第4のポート10dには、受信信号を分波する第2の分波回路25が接続している。第1の分波回路20の第3ポート20cにはフィルタ回路60が接続し、第2の分波回路25の第2ポート25bにはフィルタ回路30及び平衡−不平衡変換回路50が接続し、第3のポート25cにはフィルタ回路40及び平衡−不平衡変換回路55が接続している。
【0036】
高周波スイッチ回路10は、電界効果型トランジスタ(FET)やダイオード等のスイッチング素子を主構成とし、適宜インダクタンス素子及びキャパシタンス素子を具備しても良い。高周波スイッチ回路10の一構成例を図4に示す。この高周波スイッチ回路10は、リング状に配置された4つの信号経路に4つの電界効果トランジスタをシリーズに接続するとともに、4つの信号経路のうち、第3のポート10c及び第4のポート10d側にDCカットコンデンサCを直列接続したものであり、高周波信号の経路に配置されるスイッチング素子の数が少ないために、スイッチング素子による損失が少ない。
【0037】
スイッチ回路制御部により制御された電圧がコントロール端子V1,V2に与えられると、高周波スイッチ回路10の各ポート間は表1に示すように接続される。
【0038】
【表1】
【0039】
高周波スイッチ回路10のコントロール端子V1に、電界効果型トランジスタが動作する閾値以上の電圧(例えば、+1〜+5 V)を印加(High)して、コントロール端子V2は閾値以下の電圧で例えば0 V(Low)とした場合について、以下詳細に説明する。
【0040】
この場合、電界効果型トランジスタFET1とFET4がON状態、電界効果型トランジスタFET2とFET3がOFF状態となる。そのため、高周波スイッチ回路10のポート10c(第1の分波回路側)から入力した高周波信号はON状態の電界効果型トランジスタFET1を通過し、ポート10a(第1のマルチバンドアンテナ側)に伝送される。このとき電界効果型トランジスタFET3はOFF状態なので、そのアイソレーション特性によってポート10b(第2のマルチバンドアンテナ側)への高周波信号の漏洩はほとんどなく、かつ電界効果型トランジスタFET2もOFF状態なのでポート10d(第2の分波回路側)への高周波信号の漏洩もほとんどない。
【0041】
一方、高周波スイッチ回路10のポート10b(第2のマルチバンドアンテナ側)から入力した高周波信号は、ON状態の電界効果型トランジスタFET4を通過し、ポート10d(第2の分波回路側)に伝送される。このとき、電界効果型トランジスタFET2はOFF状態なので、ポート10a(第1のマルチバンドアンテナ側)への高周波信号の漏洩はほとんどなく、かつ電界効果型トランジスタFET3もOFF状態なので、ポート10c(第1の分波回路側)への高周波信号の漏洩もほとんどない。
【0042】
次にコントロール端子V2に電界効果型トランジスタが動作する閾値以上の電圧(例えば、+1〜+5 V)を印加し、コントロール端子V1は閾値以下の電圧で0 Vとした場合について説明する。この場合、電界効果型トランジスタFET2とFET3がON状態、電界効果型トランジスタFET1とFET4がOFF状態となる。そのため、高周波スイッチ回路10のポート10a(第1のマルチバンドアンテナ側)から入力した高周波信号はON状態の電界効果型トランジスタFET2を通過し、ポート10d(第2の分波回路側)に伝送される。一方、高周波スイッチ回路10のポート10c(第1の分波回路側)から入力した高周波信号は、ON状態の電界効果型トランジスタFET3を通過し、ポート10b(第2のマルチバンドアンテナ側)に伝送される。
【0043】
本発明のマルチバンド高周波回路において送受信を行う場合、まず通信を開始する前に周波数スキャンを行い、受信可能な周波数チャンネルを探索する(キャリアスキャン)。スキャン動作を行う場合には、例えば表1の接続モード1となるように、スイッチ回路制御部により高周波スイッチ回路10を制御する。このとき、第2のマルチバンドアンテナANT2と第2の分波回路25とが接続され、一つのマルチバンドアンテナに2つの通信システムの受信回路が接続する。
【0044】
高周波スイッチ回路10の第4のポート10dと接続する第2の分波回路25は、2.4 GHz帯(IEEE802.11b)の高周波信号を通過させるが、5 GHz帯(802.11a)の高周波信号を減衰させる低周波側フィルタ回路と、5 GHz帯(IEEE802.11a)の高周波信号を通過させるが、2.4 GHz帯(IEEE802.11b)の送信信号を減衰させる高周波側フィルタ回路とを組み合わせて構成される。本実施例では、低周波側フィルタ回路はインダクタンス素子及びキャパシタンス素子からなるローパスフィルタ回路により構成し、高周波側フィルタ回路はハイパスフィルタ回路により構成している。
【0045】
このような構成により、マルチバンドアンテナに入射し、高周波スイッチ回路10の第4のポート10dに現れる高周波信号のうち、2.4 GHz帯の高周波信号は第2の分波回路25の第2のポート25bに現れるが、第3のポート25cには現れず、5 GHz帯の高周波信号は第2の分波回路25の第3のポート25cに現れるが、第2のポート25bには現れない。このようにして、2.4 GHz帯の高周波信号と5 GHz帯の高周波信号とを分波することができる。
【0046】
第2の分波回路25において、その第2のポート25bに現れた高周波信号は、バンドパスフィルタ回路30によりノイズ成分が除去され、平衡−不平衡変換回路50により不平衡信号から平衡信号に変換されてIEEE802.11bの受信回路に入力する。また第3のポート25cに現れた高周波信号は、フィルタ回路40及び平衡−不平衡変換回路55を経てIEEE802.11aの受信回路に入力する。
【0047】
得られた高周波信号に基づいて、IEEE802.11aの受信回路部では5 GHz帯でスキャンし、これと並行し802.11b送受信部では2.4 GHz帯でスキャンして、受信可能な全てのチャンネルを検出する。
【0048】
次に接続モード2となるように、スイッチ回路10をスイッチ回路制御部により制御する。このとき、第1のマルチバンドアンテナANT1と受信回路側の第2の分波回路25とが接続される。得られた高周波信号に基づいて、IEEE802.11aの受信回路部では5 GHz帯でスキャンし、これと並行してIEEE802.11bの送受信部では2.4 GHz帯でスキャンして、受信可能な全てのチャンネルを検出する。
【0049】
周波数スキャンの結果に基づいて、アクティブにする通信システムのチャンネルを選択するとともに、第1及び第2のデュアルバンドアンテナANT1、ANT2で受信した受信信号を振幅で比較して、前記通信システムの送受信回路と接続するマルチバンドアンテナを選択する。
【0050】
従って、フェージング等の外乱が生じても最も好ましい通信システムを選択してダイバーシティ受信を行うことができる。またフィルタ回路によってノイズを除いた受信信号によりキャリアセンスを行うことにより、無線通信において最も望ましいチャンネルを選択することができる。キャリアセンスで全てのチャンネルが使用中(ビジー)であると判断された場合、一定時間経過した後、再度キャリアセンスを行う。
【0051】
次いで、選択されたチャンネルで送信を行う。選択されたマルチバンドアンテナを、高周波スイッチ回路10の第3のポート10cを介して第1の分波回路20と接続する。第1の分波回路20は、2.4 GHz帯(IEEE802.11b)の高周波信号を通過させるが、5 GHz帯(IEEE802.11a)の高周波信号を減衰させる低周波側フィルタ回路と、5 GHz帯(IEEE802.11a)の高周波信号を通過させるが、2.4 GHz帯(IEEE802.11b)の送信信号を減衰させる高周波側フィルタ回路との組合せからなる。本実施例では、低周波側フィルタ回路をローパスフィルタ回路で構成し、高周波側フィルタ回路をハイパスフィルタ回路で構成している。
【0052】
このためIEEE802.11bの送信回路から第1の分波回路20の第2のポート20bに入力する2.4 GHz帯の高周波信号は、低周波側フィルタ回路を介して第1のポート20aに現れるが、第3のポート20cには現れず、他方、IEEE802.11aの送信回路から第1の分波回路の第3のポート20cに入力する5 GHz帯の高周波信号は、高周波側フィルタ回路を介して第1のポート20aに現れるが、第2のポート20bには現れない。このようにして、2.4 GHz帯の高周波信号と5 GHz帯の高周波信号とを分波することができる。なお、同じポートから2.4 GHz帯及び5 GHz帯の高周波信号を取り出すことから、「合成する」と表現することもある。
【0053】
第1のポート20aに現れた高周波信号は、前記スイッチ回路の第3のポート10cに入力し、前記マルチバンドアンテナから放射される。
【0054】
スイッチ回路10の他の例の等価回路を図5〜図7に示す。これらの等価回路は、電界効果トランジスタFETやダイオードD1〜D4等のスイッチング素子を主構成とし、適宜インダクタンス素子及びキャパシタンス素子を有するものであり、例えば2つのSPDT(単極双投)スイッチを用いて構成することができる。
【0055】
第1及び第2の分波回路20,25は、インダクタンス素子及びキャパシタンス素子で構成されたローパスフィルタ回路、ハイパスフィルタ回路及びバンドパスフィルタ回路を適宜組み合わせて構成される。分波回路20,25の一例の等価回路を図8及び9に示す。
【0056】
フィルタ回路30、40、60も同様にローパスフィルタ回路、ハイパスフィルタ回路及び/又はバンドパスフィルタ回路で構成される。これらのフィルタ回路は分波回路20,25の帯域外減衰量により適宜選択する。フィルタ回路30、40、60の他の例の等価回路を図10〜13に示す。
【0057】
平衡−不平衡変換回路50,55はインダクタンス素子及びキャパシタンス素子で構成され、インピーダンス変換機能も具備し得る。その等価回路の例を図14〜16に示す。不平衡入力−平衡出力型のSAWフィルタを用いれば、フィルタ回路と平衡−不平衡変換回路とを一つの回路素子で実現できるので、部品点数が削減でき、高周波回路の低コスト化及び小型化が達成される。入力インピーダンスと出力インピーダンスの異なるSAWフィルタを用いても良い。この場合、インピーダンス変換機能も具備し得る。SAWフィルタの代わりにFBARフィルタを用いることもできる。
【0058】
上記の種々の分波回路、フィルタ回路、平衡−不平衡変換回路及び/又はスイッチ回路を用いて構成したマルチバンド高周波回路は、図3に示すマルチバンド高周波回路と同様に優れた機能を発揮する。
【0059】
複数のマルチバンドアンテナを配置できない場合、図17のブロック図に示すように、高周波スイッチ回路10としてSPDTスイッチ12を使用すれば、一つのマルチバンドアンテナと接続するマルチバンド高周波回路を得ることができる。この場合、スイッチ回路以外は図1〜3に示す実施態様と同様であるので、ダイバーシティ受信以外は、実施例1のマルチバンド高周波回路と同様の機能を発揮する。SPDTスイッチ12としては、図18〜20に示すスイッチ回路を適宜用いることができる。
【0060】
送信側回路と受信側回路とのアイソレーションを確保する場合、図21に示すように、高周波スイッチ回路10と第2の分波回路25との間にSPST(単極単投)スイッチ回路11を配置するのが好ましい。SPSTスイッチ回路11は、例えば図22〜25に示すように、スイッチング素子、インダクタンス素子及びキャパシタンス素子で構成され、高周波スイッチ回路10のポート10cがポート10a又はポート10bに接続される場合に信号の通過を遮断するように制御される。
【0061】
実施例2
図3に示す等価回路を有するマルチバンド高周波回路を積層基板に構成した例を図26〜28に示す。図26は、第1及び第2の分波回路20,25、フィルタ回路30,40,60、第1及び第2の平衡−不平衡回路50,55等を積層基板の内外に設けたマルチバンド高周波回路部品の外観を示す。図27及び28は高周波回路部品を構成する積層基板100の各層の構成を示す。
【0062】
積層基板100は、例えば1000℃以下の低温で焼結可能なセラミック誘電体からなり、AgやCu等の導電ペーストを印刷して所定の電極パターンを形成した厚さ10〜200μmの複数のセラミックグリーンシートを積層し、一体的に焼結することにより製造することができる。
【0063】
最下層のグリーンシート15の表面にはほぼ全面を覆うグランド電極GNDが形成されており、裏面には回路基板に実装するための端子電極が形成されている。端子電極はアンテナポートANT1,ANT2と、不平衡信号が入力する送信ポートTx1,Tx2と、平衡信号が出力される受信ポートRx1+,Rx1-,Rx2+,Rx2-と、グランドポートGNDと、スイッチ回路制御用のコントロールポートV1、V2を有し、それぞれがグリーンシートに形成されたビアホール(図中、黒丸で表示)を介して上層のグリーンシート上の電極パターンに接続されている。本実施例では端子電極をLGA(Land Grid Array)としているが、BGA(Ball Grid Array)等も採用することができる。
【0064】
グリーンシート15の上にはグリーンシート1〜14が積層される。これらのグリーンシート上で、第1及び第2の分波回路20,25、フィルタ回路30,40,60、平衡−不平衡変換回路50,55を構成するインダクタンス素子は伝送線路により、またキャパシタンス素子は所定の電極パターンにより形成され、ビアホールを介して適宜接続されている。フィルタ回路30,40と平衡−不平衡変換回路50,55との間に配置される整合回路80,85は、所定の線路長の伝送線路により形成されている。インダクタンス素子及びキャパシタンス素子は、当然チップインダクタ及びチップコンデンサとして積層基板100上に実装することも可能である。
【0065】
各回路は積層基板100に三次元的に構成されるが、回路を構成する電極パターンは相互に不要な電磁気的干渉を防ぐように、グランド電極GNDにより分離されるか、積層方向に重ならないように配置されている。5 GHz帯の高周波信号が通過する伝送線路と他の電極パターンは、電磁気的な干渉を防ぐために少なくとも50μm離間する。
【0066】
誘電体としては、例えばAl,Si及びSrを主成分として、Ti,Bi,Cu,Mn,Na,K等を副成分とするセラミックス、Al,Si及びSrを主成分として、Ca,Pb,Na,K等を複成分とするセラミックス、Al,Mg,Si及びGdを含むセラミックス、Al,Si,Zr及びMg含むセラミックスが挙げられる。誘電体の誘電率は5〜15程度が好ましい。またセラミック誘電体の他に、樹脂や、樹脂/セラミック複合材を用いることも可能である。さらにHTCC(高温同時焼成セラミック)技術により、Al2O3を主体とする誘電体基板上に、タングステンやモリブデン等の高温焼結可能な金属導体により電極パターンを形成しても良い。
【0067】
グリーンシート1には複数のランド電極が形成されており、ランド電極にDPDTスイッチ(GaAs FET)や、積層基板に内蔵されないカップリングコンデンサがチップ部品として搭載されている。ランド電極はビアホールを介して積層基板内の接続線路や回路素子と接続している。
【0068】
ベア状態のスイッチをランド電極に実装し、樹脂や管で封止しても良い。このようなマルチバンド高周波回路部品は小型化に適する。なお送受信回路部を構成するRF-ICやベースバンドICも積層基板に複合化して良い。
【0069】
実施例3
図29はマルチバンド高周波回路の他の例の等価回路を示す。このマルチバンド高周波回路の特徴的は、第2の分波回路25の低周波側フィルタ回路が、位相回路Lfr1と2.4 GHz帯を通過帯域とするバンドパスフィルタ回路30で構成されている点である。位相回路Lfr1は高周波信号の位相を適宜調整し、もってバンドパスフィルタ回路30を高周波スイッチ回路側から見た時に、5 GHz帯におけるインピーダンスを高インピーダンスとし、2.4 GHz帯の受信回路に5 GHz帯の高周波信号が漏洩するのを防ぐ。この例では、位相回路Lfr1を伝送線路とすることにより、マルチバンド高周波回路を少ない回路素子で構成することができる。
【0070】
実施例4
図30〜図32はマルチバンド高周波回路の他の例を示す。図30は結合回路を含むマルチバンド高周波回路の送信側回路を示す。この例では、TPC機能を付与するように、実施例1のマルチバンド高周波回路の高周波スイッチ回路10と第1の分波回路20との間に、複数の通信システムに対応する送信電力の一部を取り出す結合回路150を配置したものである。
【0071】
本実施例では、2.4 GHz帯及び5 GHz帯の高周波信号から、結合回路150及び検波ダイオード(ショットキダイオード)を含む検波回路300で出力電力の一部を検出する。このようにアンテナ出力端に近いところで出力電力をモニタすることにより、検波精度が向上している。結合回路150は、例えば方向性結合器や結合コンデンサにより構成される。
【0072】
本実施例のマルチバンド高周波回路では、2.4 GHz帯及び5 GHz帯で1つの結合回路を用いる。前記結合回路の結合度は5 GHz帯の方が2.4 GHz帯より大きく、その差は5 dB程度にもなる。結合度の差はそのまま検波電圧に反映し、増幅器からの出力電力に対する検波電圧は異なる。そこで、結合回路150と検波回路300との間に整合回路200を配置することにより、2.4 GHz帯における結合回路150のインピーダンスと、検波回路300のインピーダンスとを整合させ、もって結合度(検波電圧)が小さい2.4 GHz帯においても大きな検波電圧を得ることができる。
【0073】
前記整合回路は、結合回路150の出力ポート150cに接続されたシャントインダクタと、結合回路150と検波ダイオードの間に接続された位相回路とで構成するのが好ましい。この整合回路のスミスチャート上での整合調整では、シャントインダクタによる振幅調整と、位相回路による位相調整を個別に行うことができる。これにより、2.4 GHz帯における結合回路と検波回路とのインピーダンス整合が簡単になる。
【0074】
図31は、結合回路150として方向性結合器を用いたマルチバンド高周波回路の結合回路部の等価回路を示す。前記方向性結合器は、主線路STL1、副線路STL2及び抵抗R1により構成され、第1の分波回路20からの送信信号が方向性結合器150の入力ポート150bから入力され、出力ポート150aに出力される。主線路STL1、副線路STL2は、電磁気的に結合しており、送信信号の一部が結合ポート150cに出力される。
【0075】
整合回路200は、シャントインダクタLss及び位相回路Lsiにより構成され、シャントインダクタLss、及び位相回路Lsiの定数は、2.4 GHz帯において方向性結合回路の結合ポート150cの出力インピーダンスと、検波回路300の入力インピーダンスとを整合するように設定されている。シャントインダクタLssにより振幅調整を行い、位相回路Lsiにより位相調整を行う。
【0076】
検波ダイオードDkのアノードは整合回路200に接続し、カソードはシャント接続されたコンデンサCk及び抵抗Rkからなる電圧平滑回路に接続している。結合回路150からの高周波信号は検波ダイオードDkに入力され、その順電圧を超えた高周波信号のみがカソードへ伝播し、平滑回路で直流電圧に変換され、検波回路300の出力側に接続した比較制御手段に検波電圧として入力する。
【0077】
比較制御手段400は、演算増幅器、抵抗、制御トランジスタ等により構成されており、入力された基準信号と検波ダイオードDkから与えられる検出信号とを比較してその両信号のレベル差が零になるように増幅器の出力電力を変化させる。
【0078】
高周波回路の他の例として、図32は、図31に示す結合回路部分を結合コンデンサCc1で構成した高周波回路を示す。この結合回路においても2.4 GHz帯の結合度より5 GHz帯の結合度の方が5 dB程度大きいため、整合回路200により2.4 GHz帯の検波電圧を増加させることにより、5 GHz帯の検波電圧との偏差を小さくすることができる。
【0079】
結合回路部分を結合コンデンサCc1で構成した回路でも、周波数に対する検波電圧のばらつきが小さく、部品点数が削減でき、小型化が可能である。従って、このような高周波回路は、TPC機能を備えたIEEE802.11hの通信システムに好適である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のマルチバンド高周波回路は、WLANによるデータ通信においてノイズやフェージング等の影響を受けにくく、無線通信において最も望ましいチャンネルを選択することでき、またダイバーシティ受信を行うことが可能である。本発明のマルチバンド高周波回路はまた、少ないスイッチ手段で電力消費を抑えながらマルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えることが可能である。
【0081】
上記高周波回路を小型の三次元積層構造にした高周波回路部品により、各通信システムでの送信データを変調し、受信データを復調する送受信部と、前記高周波スイッチの切り替えを制御するスイッチ回路制御部を備えたマルチバンド通信装置が得られる。
【0082】
このような特徴を有する本発明のマルチバンド高周波回路は、パーソナルコンピュータ、PCの周辺機器(プリンタ、ハードディスク、ブロードバンドルータ等)、電子機器(FAX、冷蔵庫、標準テレビ、高品位テレビ、カメラ、ビデオ、携帯電話等)、自動車内や航空機内の信号伝達手段に好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信周波数が異なる複数の通信システムの無線通信を行うマルチバンド高周波回路であって、
マルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えるスイッチング素子を備えた高周波スイッチ回路と、
前記高周波スイッチ回路と送信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第1の低周波側フィルタ回路と第1の高周波側フィルタ回路により送信信号を分波する第1の分波回路と、前記第1の低周波側フィルタ回路と接続される第1の増幅器と、前記第1の増幅器と接続される第1の平衡−不平衡変換回路と、前記第1の高周波側フィルタ回路と接続される第2の増幅器と、前記第2の増幅器と接続される第2の平衡−不平衡変換回路とを有し、
前記高周波スイッチ回路と受信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第2の低周波側フィルタ回路と第2の高周波側フィルタ回路により受信信号を分波する第2の分波回路と、前記第2の低周波側フィルタ回路と接続された第3の平衡−不平衡変換回路と、前記第2の高周波側フィルタ回路と接続された第4の平衡−不平衡変換回路とを有することを特徴とするマルチバンド高周波回路。
【請求項2】
前記スイッチング素子をON状態あるいはOFF状態に制御して、前記マルチバンドアンテナを第2の分波回路を介して複数の通信システムの受信側回路と接続し、受信可能な周波数チャンネルを複数の通信システムにおいて検出するとともに、受信信号の比較結果に基づいて、いずれか一つの通信システムの周波数チャンネルを選択した後、前記マルチバンドアンテナと送信側回路との接続、あるいは受信側回路との接続を切り替えて送受信することを特徴とする請求項1に記載のマルチバンド高周波回路。
【請求項3】
通信周波数が異なる複数の通信システムの無線通信を行うマルチバンド高周波回路であって、
第1及び第2のマルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えるスイッチング素子を備えた高周波スイッチ回路と、
前記高周波スイッチ回路と送信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第1の低周波側フィルタ回路と第1の高周波側フィルタ回路により送信信号を分波する第1の分波回路と、前記第1の低周波側フィルタ回路と接続される第1の増幅器と、前記第1の増幅器と接続される第1の平衡−不平衡変換回路と、前記第1の高周波側フィルタ回路と接続される第2の増幅器と、前記第2の増幅器と接続される第2の平衡−不平衡変換回路とを有し、
前記高周波スイッチ回路と受信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第2の低周波側フィルタ回路と第2の高周波側フィルタ回路により受信信号を分波する第2の分波回路と、前記第2の低周波側フィルタ回路と接続された第3の平衡−不平衡変換回路と、前記第2の高周波側フィルタ回路と接続された第4の平衡−不平衡変換回路とを有し、
前記高周波スイッチ回路は第1乃至第4のポートを有し、第1のポートは前記第1のマルチバンドアンテナと接続され、第2のポートは前記第2のマルチバンドアンテナと接続され、第3のポートは前記第1の分波回路と接続され、第4のポートは前記第2の分波回路と接続されており、
前記スイッチング素子をON状態あるいはOFF状態に制御して、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナの何れかを前記第2の分波回路を介して複数の通信システムの受信側回路と接続し、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナごとに、受信可能な周波数チャンネルを複数の通信システムにおいて検出するとともに、受信信号の比較結果に基づいて、いずれか一つの通信システムの周波数チャンネルと無線通信を行うマルチバンドアンテナを選択した後、選択されたマルチバンドアンテナと送信側回路との接続、あるいは受信側回路との接続を切り替えて送受信することを特徴とするマルチバンド高周波回路。
【請求項4】
受信可能な周波数チャンネルの検出を、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナごとに複数の通信システムにおいて並行して行うことを特徴とする請求項3に記載のマルチバンド高周波回路。
【請求項5】
複数の通信システムの送信電力の一部を取り出す結合回路と、前記結合回路と接続された検波回路と、前記検波回路からの検出信号と基準信号とを比較して前記第1の増幅器及び前記第2の増幅器からの出力電圧を変化させる比較制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマルチバンド高周波回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のマルチバンド高周波回路を具備することを特徴とするマルチバンド通信装置。
【請求項1】
通信周波数が異なる複数の通信システムの無線通信を行うマルチバンド高周波回路であって、
マルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えるスイッチング素子を備えた高周波スイッチ回路と、
前記高周波スイッチ回路と送信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第1の低周波側フィルタ回路と第1の高周波側フィルタ回路により送信信号を分波する第1の分波回路と、前記第1の低周波側フィルタ回路と接続される第1の増幅器と、前記第1の増幅器と接続される第1の平衡−不平衡変換回路と、前記第1の高周波側フィルタ回路と接続される第2の増幅器と、前記第2の増幅器と接続される第2の平衡−不平衡変換回路とを有し、
前記高周波スイッチ回路と受信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第2の低周波側フィルタ回路と第2の高周波側フィルタ回路により受信信号を分波する第2の分波回路と、前記第2の低周波側フィルタ回路と接続された第3の平衡−不平衡変換回路と、前記第2の高周波側フィルタ回路と接続された第4の平衡−不平衡変換回路とを有することを特徴とするマルチバンド高周波回路。
【請求項2】
前記スイッチング素子をON状態あるいはOFF状態に制御して、前記マルチバンドアンテナを第2の分波回路を介して複数の通信システムの受信側回路と接続し、受信可能な周波数チャンネルを複数の通信システムにおいて検出するとともに、受信信号の比較結果に基づいて、いずれか一つの通信システムの周波数チャンネルを選択した後、前記マルチバンドアンテナと送信側回路との接続、あるいは受信側回路との接続を切り替えて送受信することを特徴とする請求項1に記載のマルチバンド高周波回路。
【請求項3】
通信周波数が異なる複数の通信システムの無線通信を行うマルチバンド高周波回路であって、
第1及び第2のマルチバンドアンテナと送信側回路及び受信側回路との接続を切り替えるスイッチング素子を備えた高周波スイッチ回路と、
前記高周波スイッチ回路と送信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第1の低周波側フィルタ回路と第1の高周波側フィルタ回路により送信信号を分波する第1の分波回路と、前記第1の低周波側フィルタ回路と接続される第1の増幅器と、前記第1の増幅器と接続される第1の平衡−不平衡変換回路と、前記第1の高周波側フィルタ回路と接続される第2の増幅器と、前記第2の増幅器と接続される第2の平衡−不平衡変換回路とを有し、
前記高周波スイッチ回路と受信側回路との間に、前記通信システムの周波数帯域に応じて第2の低周波側フィルタ回路と第2の高周波側フィルタ回路により受信信号を分波する第2の分波回路と、前記第2の低周波側フィルタ回路と接続された第3の平衡−不平衡変換回路と、前記第2の高周波側フィルタ回路と接続された第4の平衡−不平衡変換回路とを有し、
前記高周波スイッチ回路は第1乃至第4のポートを有し、第1のポートは前記第1のマルチバンドアンテナと接続され、第2のポートは前記第2のマルチバンドアンテナと接続され、第3のポートは前記第1の分波回路と接続され、第4のポートは前記第2の分波回路と接続されており、
前記スイッチング素子をON状態あるいはOFF状態に制御して、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナの何れかを前記第2の分波回路を介して複数の通信システムの受信側回路と接続し、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナごとに、受信可能な周波数チャンネルを複数の通信システムにおいて検出するとともに、受信信号の比較結果に基づいて、いずれか一つの通信システムの周波数チャンネルと無線通信を行うマルチバンドアンテナを選択した後、選択されたマルチバンドアンテナと送信側回路との接続、あるいは受信側回路との接続を切り替えて送受信することを特徴とするマルチバンド高周波回路。
【請求項4】
受信可能な周波数チャンネルの検出を、前記第1及び第2のマルチバンドアンテナごとに複数の通信システムにおいて並行して行うことを特徴とする請求項3に記載のマルチバンド高周波回路。
【請求項5】
複数の通信システムの送信電力の一部を取り出す結合回路と、前記結合回路と接続された検波回路と、前記検波回路からの検出信号と基準信号とを比較して前記第1の増幅器及び前記第2の増幅器からの出力電圧を変化させる比較制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマルチバンド高周波回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のマルチバンド高周波回路を具備することを特徴とするマルチバンド通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2010−252346(P2010−252346A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112563(P2010−112563)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【分割の表示】特願2005−516224(P2005−516224)の分割
【原出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【分割の表示】特願2005−516224(P2005−516224)の分割
【原出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
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