説明

リフロー装置

【課題】最終段の冷却ゾーンの内壁に付着するフラックス量を大幅に低減させ、回路基板へのフラックス滴下等による不具合発生を抑制するとともに、メンテナンス性の極めて高いリフロー装置を提供する。
【解決手段】冷却ゾーンZ(6)及びその1つ手前のゾーンZ(5)において、ガス吹出口2aの左右(基板搬送方向と直交する方向に隣接する領域)にガス吸込口2bを設け、ガスの循環速度を、冷却ゾーンZ(6)よりも、その1つ手前のゾーンZ(5)の方が速くなるように構成し、冷却ゾーンZ(6)において、基板Pの無い状態で上下からのガスが、基板通過領域ARよりも下方でぶつかるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフロー装置に関し、特に炉内部へのフラックス付着を可及的に防止できるリフロー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リフロー装置を用いてハンダ付けをする場合は、一般にクリームハンダが用いられる。このクリームハンダは、ハンダ粒子を溶剤とフラックスと呼ばれる触媒で練ってクリーム状にしたものであることから、ハンダ付けに際して、炉内で溶融したクリームハンダからフラックスが気化して内部ガス内に混入する。そして、その気化フラックスが、何らかの要因で液化あるいは固化して顕出し、例えば回路基板に付着すると回路基板の品質低下をもたらすため、ガス中のフラックスを除去することが必要となる。
そこで、従来は、特許文献1や特許文献2に示すように、内部ガスを吸引して冷却器や絞り、フィルタなどからなるフラックス除去器を通過させ、ガス中に含まれるフラックスを除去した後、再度、炉に戻すというフラックス除去機構を設けている。
【特許文献1】特開2007−67061号公報
【特許文献2】特開2003−324272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のリフロー装置は、ゾーン間でのガス流通に着目しておらず、例えば、250℃のゾーンで気化したフラックスが、ガスとともに隣のより低い温度(例えば150℃)のゾーンに流入した場合、フラックス除去器でそれをすべて除去できずに、その一部が炉内壁で液化あるいは固化して付着し、炉内壁から滴下して回路基板にダメージを与えるといった不具合が生じる。
【0004】
この現象は、フラックスが急激に冷やされる最終段の冷却ゾーンで顕著に見られる。この現象に対し、従来は、冷却ゾーンでのフラックス付着は解決できないものと半ばあきらめられており、定期的な清掃や炉の交換によって対処しているのが実情である。
【0005】
本発明は、かかる問題点を鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、最終段の冷却ゾーンの内壁に付着するフラックス量を大幅に低減させ、回路基板へのフラックス滴下等による不具合発生を抑制するとともに、メンテナンス性の極めて高いリフロー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本請求項1の発明に係るリフロー装置は、互いに異なる温度に調節可能な複数のゾーンを水平に連続させた炉を具備し、各ゾーンに基板を通過させてハンダ付けするリフロー装置において、以下の要件(1)〜(3)を有することを特徴とする。
(1)前記ゾーンには、ガス循環機構が配備されている。このガス循環機構は、ブロアを少なくとも収容した収容室と、この収容室に接続されて先端部が前記ゾーンに開口し、ガス吹出口となる吹出経路と、前記収容室に接続されて先端部が前記ゾーンに開口し、ガス吸込口となる吸込経路からなる。前記ガス吹出口は、上下一対が互いに対向するように設けられており、上側及び下側ガス吹出口からそれぞれ吹き出したガスは、基板通過領域に基板がある場合には基板に当たり、基板が無い場合には互いにぶつかって水平方向に流れを変え、当該ゾーンのガス吸込口から吸い込まれ、収容室内に配置されたブロアを経て、再度、ガス吹出口から吹き出すように構成してある。
(2)前記ゾーンのうち、最終段の冷却ゾーンでは、例えば上側のガス吹出口からの風力を下側ガス吹出口からの風力よりも強くすることなどにより、基板の無い状態で上下からのガスが、基板通過領域よりも下方でぶつかるように構成してある。また、前記ガス吸込口は、前記下側ガス吹出口の基板進行方向と直交する方向に隣接する領域に形成してある。
(3)前記冷却ゾーンよりも1つ手前のゾーンでは、ガスの循環流速を前記冷却ゾーンにおけるガス循環流速よりも大きく設定してある。ガス吸込口は、前記上側又は下側いずれか少なくとも一方のガス吹出口の基板進行方向と直交する方向に隣接する領域に形成してある。
【0007】
このように、冷却ゾーン及びその1つ手前のゾーンにおいて、ガス吹出口の左右(基板搬送方向と直交する方向に隣接する領域)にガス吸込口を設けた構成によって、ガスは循環回転軸が基板搬送方向と合致することとなり、ゾーンでのガスの流れ方向に基板搬送方向成分がほとんど含まれなくなる。したがって、これらゾーン間においてガスがほとんど混ざり合うことがない。
また、仮に混ざり合ったとしても、ガスの循環速度を、冷却ゾーンよりもその1つ手前のゾーンの方が速くなるようにして、減圧効果を発生させ、手前のゾーンの圧力を冷却ゾーンの圧力よりも低くなるようにしているため、手前のゾーンから冷却ゾーンへのガス流入を抑制している。
以上のことから、本発明によれば、基板搬送を伴わない状態において、手前の高温ゾーンから冷却ゾーンへのガス流入を可及的に防止できるようになり、手前の高温ゾーンからのガス流入による最終段の冷却ゾーンでのフラックス顕出を大幅に抑制できることとなる。
一方、基板がゾーン間を通過して搬送されてくる場合、その基板に伴って、ある一定量のガスが手前の高温ゾーンから冷却ゾーンへ流入してくることは避けられない。
これに対し、本発明では、冷却ゾーンにおいて、基板通過領域において、上側からのガス吹出速度の方が下側からよりも速くなるようにするとともに、下側にのみガス吸込口を設け、基板付近には下降流が発生するように構成していることから、冷却ゾーンに前段から流入してきたガスは基板通過領域よりも下方における炉内壁で液化又は固化して付着することとなる。したがって、炉内壁に溜まったフラックスが基板に滴下することを確実に防止できる。
【0008】
また、所定のゾーンからガスを吸い込むとともに、その内部のガスに含まれる不純物を除去し、不純物除去後のガスを同一又は他のゾーンに戻す不純物除去回路をさらに設けておけば、不純物の炉内蓄積防止だけでなく、不純物の除去をも行うことができる。また、不純物除去回路は、閉じた回路であり、ダクトレス構造を維持できる。
【0009】
また、前段のゾーンとは設定温度が異なるゾーン又は一段目のゾーンに、前記不純物除去回路のガス吸入端を開口させておけば、それらゾーンには不純物が多く発生していることから、効率的な不純物除去を行える。特に前段のゾーンよりも温度が低く設定されたゾーンにはフラックスが顕出しやすいことから、当該ゾーンに前記ガス吸入端を開口させておくことが好ましい。
【0010】
前記不純物除去回路が、ガス吸入端を所定のゾーンに開口させるとともにガス吐出端を各ゾーンに開口させた冷却用ガス流路と、前記冷却用ガス流路上に設けられて流通するガスを冷却するとともにガス中の不純物を液化して除去する冷却器と、前記冷却器よりも下流における冷却用ガス流路上に設けられてガスを圧送するブロアと、冷却用ガス流路の各ガス吐出端近傍にそれぞれ設けられて、ガス吐出端から吐出するガス流量を調節する調節バルブと、を具備したものであれば、不純物除去回路によって、不純物除去のみならず、各ゾーンの温度調整を行えるうえ、季節や時間によって温度が変わる大気の導入方式と違って、所定温度にまで冷却したガスを用いることから、安定できめ細やかな温度制御が可能となる。
【0011】
また、各ゾーンにそれぞれ設けた温度センサによる検出温度が各ゾーンで予め定められた設定温度に近づくように、冷却器を通って各ゾーンに流入するガスの流量を前記各調節バルブを駆動して制御する制御部をさらに設けておけば、自動制御によって確実で精度のよい温度コントロールができる。
【0012】
前記冷却器を、下側収容室と略同じ高さか、それよりも下方に設けておけば、液化して冷却器内に蓄積されている不純物が、停電などの不測の場合に収容室や基板通過領域に戻ることを簡単な構成で防止できる。
【0013】
前記収容室の内部に区画壁を設けて、加熱器を収容する加熱器収容室と、ブロアを収容するブロア収容室とを形成するとともに、前記加熱器収容室に設けたガス導入口とは加熱器を隔てて略反対側に位置する区画壁の一部に所定の大きさの連通孔を設け、ガスが加熱器収容室、連通孔を順に通って、ブロア収容室に設けたガス導出口から吹き出すように構成しておけば、加熱器で十分に暖められたガスを、ブロアによってガス吹出口から吹き出すことができ、ガスを効率よく加熱できる。
【0014】
前記炉が、1又は複数のゾーンを形成する炉ユニットを複数接続して形成したものであり、各炉ユニットを接離可能に構成しておけば、ユニット化による部品の標準化が可能となり、種々のゾーン数の炉を容易に制作できる。また、炉ユニットを分離することにより部分的なメンテナンスが容易にできる。
【0015】
隣り合うガス吹出口の間に、基板通過領域に向かって上下方向に所定距離延出するガス分離板を設けておけば、各ゾーンが空間的には連通して基板の通過を阻害しないにも拘わらず、ゾーン間でのガス流通がより効果的に防止されるため、本発明の効果がさらに顕著となる。また、このようにゾーン間でのガス流通を抑制できることから、隣接するゾーンの温度影響が可及的に小さくなり、各ゾーンの温度を独立して安定かつ迅速に制御することができるようになる。そしてこのことにより、ゾーン間での温度差をつけるプロファイルを正確に作成でき、ΔTの低減等を効果的に図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、基板搬送を伴わない状態において、手前の高温ゾーンから冷却ゾーンへのガス流入を可及的に防止できるようになり、手前の高温ゾーンからのガス流入による最終段の冷却ゾーンでのフラックス顕出を大幅に抑制できることとなる。
一方、基板通過に伴って、一定量のガスが手前の高温ゾーンから冷却ゾーンへ流入し、そのガスが冷却されることによって液化又は固化フラックスが顕出したとしても、そのフラックスは冷却ゾーンにおいて上方に運ばれるため、基板にフラックスが滴下して付着することを防止できる。
さらに、ガスは炉内を循環するだけなので、いわゆるダクトレス化が可能であり、外部への不純物排出を可及的に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るリフロー装置100の模式的全体構成を示す図面である。
このリフロー装置100は、内部で加熱ガス又は冷却ガスを循環させるダクトレスタイプのものであり、基板Pを加熱するための炉1を具備している。この炉1の内部空間は、水平に直列する複数のゾーンZ(以下、ゾーンを区別するときには、Zの後にかっこ書きで段数を付記する。)に区分してあり、各ゾーンZは、空間的には連続しているものの、互いに異なる温度に調節可能なものである。
【0019】
ちなみに、この図1では、6つのゾーンZ(1)〜Z(6)が記載されており、基板Pの搬入される側から見て、1段目〜3段目のゾーンZ(1)〜Z(3)が予備加熱領域、4、5段目のゾーンZ(4)、Z(5)がハンダが溶融してハンダ付けされる本加熱領域、最終段である6段目のゾーンが冷却領域である。各ゾーンZ(1)〜Z(6)の設定温度の一例について言及しておくと、例えば、一段目のゾーンZ(1)は200℃、2段目のゾーンZ(2)は150℃、3段目のゾーンZ(3)は190℃、4段目及び5段目のゾーンZ(4)、(5)はそれぞれ250℃、6段目のゾーンZ(6)が70℃である。なお、以降、6段目のゾーンZ(6)を冷却ゾーンZ(6)と言うこともある。
【0020】
そして、各ゾーンZの温度を独立して調節するために、各ゾーンZには、それぞれガス循環機構W(図2参照)が配備されている。
このガス循環機構Wは、ブロア22及び加熱器21を収容した収容室2と、この収容室2及びゾーンZに開口するガス吹出口2aを連通させる吹出経路2’と、前記収容室2及びゾーンZに開口するガス吸込口2bを連通させる吸込経路2’’からなるものである。
【0021】
収容室2には、内部に区画壁23を設けて、加熱器である電気ヒータ21を収容する加熱器収容室24と、ブロア22を収容するブロア収容室25とを区画形成している。そして、加熱器収容室24にガス導入口2d、ブロア収容室25にガス導出口2eをそれぞれ設けるとともに、ガス導入口2dを前記吸込経路2’’の基端部に接続し、ガス導出口2eを前記吹出経路2’の基端部に接続している。
【0022】
さらに、区画壁23において、前記ガス導入口2dとは加熱器21を隔てて略反対側に位置する領域に、所定の大きさの連通孔2cを設けている。この部位に連通孔2cを設定しているのは、収容室2に吸い込まれたガスがヒータ21で十分に暖められた後、ブロア22に吸入されるようにして、ガスを効率よく加熱できるようにするためである。なお、符号26は、不純物(フラックス)のうち、VOCと称される揮発性有機化合物を主として除去する触媒フィルタである。
【0023】
次に、ガス吹出口2a及びガス吸込口2bについて説明する。
ガス吹出口2aは、図2、図3に示すように、矩形状(ほぼ正方形状)をなすもので、そこには、例えば多数の貫通孔が空いた簿板材が嵌め込まれている。
ガス吸込口2bは、図2、図3に示すように、ガス吹出口2aにおける基板進行方向とは直交する方向に隣接する両側にそれぞれ形成された帯状をなすものであり、その長さはガス吹出口2aの辺長さとほぼ同じである。
【0024】
しかして、この実施形態では、最終段のゾーンZ(6)を除く各ゾーンZには、前記ガス循環機構Wを上下に2つ設け、例えば、基板通過領域ARを対称軸としてその直上及び直下にガス吹出口2aをそれぞれ互いに対向するように開口させている。ガス吸込口2bも同様である。
【0025】
かかる構成によって、上側及び下側のガス吹出口2aからそれぞれ吹き出したガスは、基板通過領域ARに基板Pがある場合には基板Pに当たり、基板Pが無い場合には互いにぶつかって基板搬送方向と垂直でかつ水平方向に流れを変え、当該ゾーンZのガス吸込口2bから吸い込まれる。そして、収容室2内に配置されたヒータ21及びブロア22を経て、再度、ガス吹出口2aから吹き出すように構成してある。
【0026】
一方、最終段の冷却ゾーンZ(6)では、ガス循環機構Wの構造を他のゾーンZとは若干異ならせてある。すなわち、図4に示すように、上下のガス循環機構Wにおいて1つのブロア22を共用し、このブロア22から吹出経路2’を2本分岐させて、各吹出経路2’の先端をそれぞれ上下のガス吹出口2aにしている。また、上側のガス循環機構Wにおいてガス吸込口を封止し、ガスが下側のガス吸込口2bからのみ吸い込まれるようにしている。
【0027】
また、例えば下側のガス吹出用の吹出経路2’の内径を、上側のガス吹出用の吹出経路2’の内径よりも小さくすることによって、上側ガス吹出口2aからのガス流速(又はガス流量)が、下側ガス吹出口2aからのガス流速(又はガス流量)よりも小さくなるようにし、基板Pの無い状態での基板通過領域ARにおいて、ガスの流れが下方に向かうように設定している。なお、図4中、符号42’は、後述する冷却器42(図5参照)とほぼ同じ構造を有する冷却器であり、内部に図示しないフィルタを有している。また冷却ゾーンZ(6)におけるガス循環機構Wには、ヒータ21は、同図に示すように設けられていない。
【0028】
さらに、この冷却ゾーンZ(6)でのガス循環速度を、少なくともその1つ手前の5段目のゾーンZ(5)でのガス循環速度よりも小さくして動圧による圧力降下を抑制し、冷却ゾーンZ(6)での圧力が5段目のゾーンZ(5)での圧力よりも大きくなるように設定している。なお、ガス循環速度とは、上側及び下側のガス循環機構Wによる平均速度など、トータルとしてのガス循環速度であり、要は、前述したように、冷却ゾーンZ(6)での圧力が5段目のゾーンZ(5)での圧力よりも大きくなるようなガス循環速度に設定されていればよい。
【0029】
しかしてこのような構成によれば、各ゾーンZにおいて、ガス吹出口2aの左右(基板搬送方向と直交する方向に隣接する領域)にガス吸込口2bを設けた構成によって、ガスはその循環回転軸が基板搬送方向と合致することとなり、各ゾーンZでのガスの流れ方向に基板搬送方向成分がほとんど含まれなくなる。したがって、ゾーンZ間でのガスのぶつかり合いとそれによる乱流の発生を可及的に防止でき、ガスの混合を抑制することができる。
【0030】
また、仮に混ざり合ったとしても、ガスの循環速度を、冷却ゾーンZ(6)よりもその1つ手前のゾーンZ(5)の方が速くなるようにして、減圧効果を発生させ、手前のゾーンZ(5)の圧力が冷却ゾーンZ(6)の圧力よりも低くなるようにしているため、手前のゾーンZ(5)から冷却ゾーンZ(6)へのガス流入を抑制できる。
【0031】
以上のことから、本実施形態によれば、基板搬送を伴わない状態において、手前の高温ゾーンZ(5)から冷却ゾーンZ(6)へのガス流入を可及的に防止できるようになり、そのガス流入による最終段の冷却ゾーンZ(6)でのフラックス顕出を大幅に抑制できることとなる。
【0032】
一方、基板PがゾーンZ間を通過して搬送されてくる場合、その基板に伴って、ある一定量のガスが手前の高温ゾーンZ(5)から冷却ゾーンZ(6)へ流入してくることは避けられない。
【0033】
これに対し、本実施形態では、冷却ゾーンZ(6)の基板通過領域ARにおいて、上側からのガス吹出速度の方が下側からよりも速くなるようにするとともに、下側にのみガス吸込口2bを設け、基板P付近にはガスの下降流が発生するように構成しているので、基板Pとともに流入してきたガスは、炉内壁の基板通過領域ARよりも下方で顕出する。したがってそのフラックスが、基板Pに滴下して付着することを確実に防止できる。
【0034】
以上が、本実施形態に係るリフロー装置100の最も特徴的な部分に関する説明であるが、その特徴をさらに顕著にすべく、このリフロー装置100には、後述する構造を付加してある。
【0035】
その1つがガス分離板3である。このガス分離板は、図1、図3に示すように、ゾーンZ間、より具体的には、隣り合うガス吹出口2aの間に設けた簿板状をなすものであり、基板通過領域ARに向かって上下方向に所定距離延出させてある。また、その奥行き幅はガス吹出口2aよりも大きくしてガス吸込口2bに至る程度にしてある。このガス分離板3によって、各ゾーンZが空間的には連通して基板の通過を阻害しないにも拘わらず、ゾーンZ間でのガス流通がより効果的に防止される。
【0036】
もう1つが不純物除去回路4である。この不純物除去回路4は、図1、図2、図4に示すように所定のゾーンZからガスを吸い込むとともに、その内部のガスに含まれる不純物を除去し、不純物除去後のガスを同一又は他のゾーンZに戻すものである。
【0037】
より具体的には、この不純物除去回路4は、ガス吸入端4aを前記所定のゾーンZにおける収容室2に開口させるとともにガス吐出端4bを各収容室2に開口させた冷却用ガス流路41と、前記冷却用ガス流路41上に設けられて流通するガスを冷却するとともにガス中の不純物を液化して除去する冷却器42と、前記冷却器42よりも下流における冷却用ガス流路41上に設けられてガスを圧送するブロア43と、冷却用ガス流路41の各ガス吐出端4b近傍にそれぞれ設けられて、ガス吐出端4bから吐出するガス流量を調節する調節バルブ44と、を具備してなる。
【0038】
冷却用ガス流路41のガス吸入端4aが開口させてある収容室2は、前段の収容室2に比べて設定温度が所定以上高い又は所定以上低い収容室2である。
かかる箇所にガス吸入端4aを開口させているのは、これら収容室2の設定温度がその前段よりも高い場合には、フラックスがハンダから気化発生することから、この気化フラックスを効果的に除去するためであり、逆の場合は、ガス中に含まれる気体状のフラックスが境界で液化又は固化する恐れがあることから、この液化又は固化フラックス(主として樹脂成分)を効果的に除去するためである。全ての収容室2に冷却用ガス流路41のガス吸入端4aを開口させないのは、ガスの流れが乱れ、ゾーンZ間のガス不干渉といった効果を得ることができなくなる恐れがあるからである。
なお、各収容室2には冷却用ガス流路41のガス吸入端4aを接続するためのポートが設けられているので、温度設定に応じて冷却用ガス流路41のガス吸入端4aを他の収容室2に付け替えたり、増設、削除したりすることもできる。
【0039】
冷却用ガス流路41のガス吐出端4bに設けられた調節バルブ44は、例えば電磁弁であり、図示しない制御部によって自動制御される。この制御部は、アナログ電気回路又はCPUやメモリ等からなるデジタル電気回路、又はそれらの組み合わせからなるもので、各ゾーンZにそれぞれ設けた温度センサ(図示しない)からの出力信号を受信し、その出力信号が示す検出温度が各ゾーンZで予め定められた設定温度に近づくように、前記各調節バルブ44にそれぞれ駆動信号を出力して、その開度、つまり冷却器42を通って各収容室2に流入するガスの流量をそれぞれ個別に制御する。なお、予備加熱領域及び本加熱領域において全ての調節バルブ44が全閉となった場合は、冷却領域のゾーンに冷却されたガスが流入するように構成してある。
【0040】
また、この制御部は、加熱器21にも制御信号を送信して、温度制御を行う。ところで、温度制御をこのように2つの制御手段(加熱器21及び調節バルブ44)で行うと、両者が競合して制御に不具合が生じる恐れがあるが、ここでは、例えば一方のみを用いて温度制御を行い、その温度制御の結果、一方の動作範囲が予め定めた基準範囲を超えた場合に、他方を用いて温度制御を行うようにしている。
【0041】
冷却器42は、図5に示すように、迷路状に壁体を設け、所定の流路抵抗を有するものとした上で、該壁体を、例えば水などの液体で冷却するようにした水冷式のものである。この実施形態では、冷却器42のガス導入口42a及びガス導出口42bを、下側収容室2におけるガス吐出端4bの開口よりも下方に設けて、液化して冷却器42内に蓄積されている不純物が、停電などの不測の場合に収容室2や基板通過領域ARに戻ることを防止している。
【0042】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば冷却ゾーンにおいて、各ガス循環機構にそれぞれブロアを設け、ブロアの出力を上側が強くなるようにしたり、ブロアの出力を上下均等にしつつ、下側のガス吹出口を上側ガス吹出口よりも基板通過領域から遠ざけて配置したりして、基板通過領域においてガスが下降流となるように構成してもよい。
く、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るリフロー装置の模式的全体構成図。
【図2】同実施形態におけるリフロー装置の冷却ゾーン以外のゾーンを、基板通過方向から視たときの内部構造を示す模式的内部構造図。
【図3】同実施形態におけるリフロー装置の内部構造を示す模式的平面図。
【図4】同実施形態におけるリフロー装置の冷却ゾーンを、基板通過方向から視たときの内部構造を示す模式的内部構造図。
【図5】同実施形態における冷却器を示す模式的構造図。
【符号の説明】
【0044】
100・・・リフロー装置
Z・・・ゾーン
1・・・炉
2・・・収容室
21・・・加熱器
22・・・ブロア
23・・・区画壁
24・・・加熱器収容室
25・・・ブロア収容室
2a・・・ガス吹出口
2b・・・ガス吸込口
2c・・・連通孔
3・・・ガス分離板
4・・・不純物除去回路
41・・・冷却用ガス流路
42・・・冷却器
43・・・ブロア
44・・・調節バルブ
P・・・基板
AR・・・基板通過領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる温度に調節可能な複数のゾーンを水平に連続させた炉を具備し、各ゾーンに基板を通過させてハンダ付けするリフロー装置において、
前記ゾーンには、少なくともブロアを収容する収容室と、この収容室に接続されて先端部が前記ゾーンに開口し、ガス吹出口となる吹出経路と、前記収容室に接続されて先端部が前記ゾーンに開口し、ガス吸込口となる吸込経路とからなるガス循環機構を配備し、
前記ガス吹出口を、上下一対が互いに対向するように設けて、上側及び下側ガス吹出口からそれぞれ吹き出したガスが、基板通過領域に基板がある場合には基板に当たり、基板が無い場合には互いにぶつかって水平方向に流れを変え、当該ゾーンのガス吸込口から吸い込まれ、収容室内に配置されたブロアを経て、再度、ガス吹出口から吹き出すように構成するとともに、
前記ゾーンのうち、最終段の冷却ゾーンでは、基板の無い状態での基板通過領域におけるガスの流れが下方に向かうように、上下のガス吹出口の位置又は上下のガス吹出口からのガス流速を調整し、なおかつ、前記ガス吸込口を、前記下側ガス吹出口の基板進行方向と直交する方向に隣接する領域に形成する一方、
前記冷却ゾーンよりも1つ手前のゾーンでは、ガスの循環流速を前記冷却ゾーンにおけるガス循環流速よりも大きく設定し、なおかつ、ガス吸込口を、前記上側又は下側いずれか少なくとも一方のガス吹出口の基板進行方向と直交する方向に隣接する領域に形成したことを特徴とするリフロー装置。
【請求項2】
所定のゾーンからガスを吸い込むとともに、その内部のガスに含まれる不純物を除去し、不純物除去後のガスを同一又は他のゾーンに戻す不純物除去回路をさらに具備している請求項1記載のリフロー装置。
【請求項3】
前段のゾーンに比べて設定温度が異なるゾーンに、前記不純物除去回路のガス吸入端を開口させている請求項2記載のリフロー装置。
【請求項4】
前記不純物除去回路が、
ガス吸入端を所定のゾーンに開口させるとともにガス吐出端を各ゾーンに開口させた冷却用ガス流路と、
前記冷却用ガス流路上に設けられて流通するガスを冷却するとともにガス中の不純物を液化して除去する冷却器と、
前記冷却器よりも下流における冷却用ガス流路上に設けられてガスを圧送するブロアと、
冷却用ガス流路の各ガス吐出端近傍にそれぞれ設けられて、ガス吐出端から吐出するガス流量を調節する調節バルブと、を具備したものである請求項2又は3記載のリフロー装置。
【請求項5】
各ゾーンにそれぞれ設けた温度センサによる検出温度が各ゾーンで予め定められた設定温度に近づくように、冷却器を通って各ゾーンに流入するガスの流量を前記各調節バルブを駆動して制御する制御部をさらに具備している請求項4記載のリフロー装置。
【請求項6】
前記冷却器が、下側収容室と略同じ高さか、それよりも下方に設けてある請求項4又は5記載のリフロー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−109301(P2010−109301A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282563(P2008−282563)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(507118884)グリーンテクノロジーズ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】