説明

レトルト食品電磁誘導加熱装置

【課題】金属箔を含む包装材に食品を収容したレトルト食品を効率よく加熱する。
【解決手段】ユーザは、蓋部(2)を開き、レトルト食品(R)を凹部(1a)に置いて、蓋部(2)を閉じ、所望の温度にダイヤル(8d)を設定し、ボタン(8b)を押す。誘導加熱制御装置(7)は、ボタン(8b)が押されたことを検知したら、電磁誘導加熱コイル(3)(4)に20kHz〜100kHzの高周波電流を流す。誘導加熱制御装置7は、温度センサ(5)(6)により温度を検知しながら加熱し、ダイヤル(8d)で設定された温度になるとブザー(9)を鳴らす。
【効果】レトルト食品(r)の包装材に含まれる金属箔に渦電流が流れてジュール熱を発生し、レトルト食品(R)の内容物を効率よく加熱することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト食品電磁誘導加熱装置に関し、さらに詳しくは、金属箔を含む包装材に食品を収容したレトルト食品を効率よく加熱することが出来るレトルト食品電磁誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電熱ヒーターで100℃程度に熱した板をレトルト食品の袋に押し当ててレトルト食品を加熱するレトルト食品加熱器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
他方、加圧しながら遠赤外線ヒーターまたはマグネトロンでレトルト食品を加熱するレトルト食品用加熱調理装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平10−328033号公報([0014])
【特許文献2】特開2006−68437号公報([0019])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のレトルト食品加熱器では、電熱ヒーターの熱を板および袋を介してレトルト食品の内容物に伝導する間接的な加熱方法であり、加熱効率が悪い問題点がある。
他方、上記従来のレトルト食品用加熱調理装置では、遠赤外線が金属箔で反射されたり、マイクロ波が金属箔で阻止されるため、金属箔を含む包装材に食品を収容したレトルト食品をうまく加熱できない問題点がある。
そこで、本発明の目的は、金属箔を含む包装材に食品を収容したレトルト食品を効率よく加熱することが出来るレトルト食品電磁誘導加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、金属箔を含む包装材に食品を収容したレトルト食品を置くためのレトルト食品用空間と、前記レトルト食品用空間に近接して設置された電磁誘導加熱コイルと、前記前記レトルト食品用空間に置かれたレトルト食品の温度を検知するための温度センサと、前記温度センサで検知した温度が所定の上限温度を超えないように前記電磁誘導加熱コイルによる前記レトルト食品を電磁誘導加熱する誘導加熱制御手段とを具備したことを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置を提供する。
上記第1の観点によるレトルト食品電磁誘導加熱装置では、電磁誘導加熱コイルによって包装材の金属箔に渦電流を発生させ、金属箔を発熱させて内容物を加熱する。これにより、金属箔を含む包装材に食品を収容したレトルト食品を効率よく加熱することが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点によるレトルト食品電磁誘導加熱調理装置において、前記包装材の縁部を異常加熱せず且つ袋部を加熱するように前記電磁誘導加熱コイルを設置したことを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置を提供する。
上記第2の観点によるレトルト食品電磁誘導加熱装置では、包装材の縁部を異常加熱せず、袋部を加熱するように電磁誘導加熱コイルを設置した。これにより、内容物の加熱に寄与しない縁部の無駄な温度上昇を回避できる。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1または前記第2の観点によるレトルト食品電磁誘導加熱調理装置において、前記電磁誘導加熱コイルが、渦巻き状コイルであることを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置を提供する。
上記第3の観点によるレトルト食品電磁誘導加熱装置では、電磁誘導加熱コイルを包装材の表面にほぼ沿った外形形状や凹凸形状にすることが出来る。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第3の観点によるレトルト食品電磁誘導加熱調理装置において、前記レトルト食品用空間を挟むように2以上の渦巻き状コイルを設置したことを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置を提供する。
上記第4の観点によるレトルト食品電磁誘導加熱装置では、レトルト食品を挟んで両面から加熱することが出来るので、加熱時間を短縮できる。
【0008】
第5の観点では、本発明は、前記第1の観点によるレトルト食品電磁誘導加熱調理装置において、前記電磁誘導加熱コイルが、ソレノイド状コイルであることを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置を提供する。
上記第5の観点によるレトルト食品電磁誘導加熱装置では、電磁誘導加熱コイルでレトルト食品を囲むような形状にすることが出来る。
【0009】
第6の観点では、本発明は、前記第1から第5のいずれかの観点によるレトルト食品電磁誘導加熱調理装置において、複数個の前記電磁誘導加熱コイルを設置したことを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置を提供する。
上記第6の観点によるレトルト食品電磁誘導加熱装置では、レトルト食品を加熱するときの温度分布を調整することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明のレトルト食品電磁誘導加熱装置によれば、金属箔を含む包装材に食品を収容したレトルト食品を効率よく加熱することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置10を示す斜視図である。
このレトルト食品電磁誘導加熱装置10は、レトルト食品を水平に置くための凹部1aを上面に有する台部1と、台部1に対して開閉すると共に閉じた状態で凹部1aに対向する凹部2aを有する蓋部2と、所望の加熱温度を設定するためのダイヤル8dと、加熱スタートを指示するためのボタン8bとを備えている。
【0013】
図2は、レトルト食品電磁誘導加熱装置10の構造を示す模式的断面図である。
台部1の凹部1aの直下には、電磁誘導加熱コイル3と温度センサ5が設置されている。また、台部1には、誘導加熱制御装置7が内蔵されている。電磁誘導加熱コイル3と温度センサ5は、誘導加熱制御装置7に接続されている。
蓋部2の凹部2aの直上には、電磁誘導加熱コイル4と温度センサ6が設置されている。電磁誘導加熱コイル4と温度センサ6は、誘導加熱制御装置7に接続されている。
レトルト食品Rは、台部1の凹部1aと蓋部2の凹部2aで形成される空間に収容される。蓋部2は、レトルト食品Rの厚さに応じて上下しうるようになっている。
【0014】
なお、レトルト食品Rの包装材は、アルミ箔と合成樹脂フィルムのラミネート材による気密袋(レトルトパウチ)である。
【0015】
図3は、台部1の内部を示す模式的断面図である。
電磁誘導加熱コイル4は、渦巻き状コイルである。なお、電磁誘導加熱コイル5も渦巻き状コイルである。
【0016】
図4に示すように、レトルト食品Rを凹部1aに置いたとき、電磁誘導加熱コイル5は、レトルト食品Rの袋部Roのみに対応し、縁部Rfには対応しないように設置されている。
【0017】
ユーザは、蓋部2を開き、レトルト食品Rを凹部1aに置いて、蓋部2を閉じ、所望の温度にダイヤル8dを設定し、ボタン8bを押す。
誘導加熱制御装置7は、ボタン8bが押されたことを検知したら、電磁誘導加熱コイル3,4に20kHz〜100kHzの高周波電流を流す。これにより、アルミ箔に渦電流が流れてジュール熱を発生し、内容物が加熱される。
誘導加熱制御装置7は、温度センサ5,6により温度を検知しながら通電し、ダイヤル8dで設定された温度になるとブザー9を鳴らし、通電と遮断を繰り返して温度を維持する。あるいは、最初は高い周波数で高速に加熱し、ダイヤル8dで設定された温度に近づくと周波数を下げてダイヤル8dで設定された温度を大きく越えないように制御し、ダイヤル8dで設定された温度になるとブザー9を鳴らし、通電と遮断を繰り返して温度を維持する。
【0018】
実施例1のレトルト食品電磁誘導加熱装置10によれば、アルミ箔を含む包装材に食品を収容したレトルト食品を効率よく加熱することが出来る。また、包装材の縁部Rfの異常加熱を防止でき、袋部Roを好適に加熱できる。さらに、電磁誘導加熱コイル3,4を包装材の表面にほぼ沿った外形形状および凹凸形状にすることが出来る。
【0019】
なお、蓋部2の電磁誘導加熱コイル4および温度センサ6を省略すれば、加熱性能は低くなるが、薄型化できる。
また、加熱時間を設定するためのタイマーを付加してもよい。
【実施例2】
【0020】
図5は実施例2に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置20を示す図3相当図であり、図6は同図4相当図である。
このレトルト食品電磁誘導加熱装置20は、2以上の小さな電磁誘導加熱コイル3a,3bをレトルト食品Rの片面に対して分布配置したものである。
【0021】
実施例2のレトルト食品電磁誘導加熱装置20によれば、レトルト食品を加熱する際の温度分布を調節でき、ほぼ均等に加熱することも出来る。
【実施例3】
【0022】
図7は、実施例3に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置30を示す斜視図である。
このレトルト食品電磁誘導加熱装置30は、レトルト食品を収容するための空間を内部に有する本体部31と、本体部31に対してスライドして出入りしうるトレイ部32と、所望の加熱温度を設定するためのダイヤル8dと、加熱スタートを指示するためのボタン8bとを備えている。
【0023】
図8は、レトルト食品電磁誘導加熱装置30の構造を示す模式的断面図である。
本体部31には、ソレノイド状の電磁誘導加熱コイル33と誘導加熱制御装置7が内蔵されている。電磁誘導加熱コイル33は、誘導加熱制御装置7に接続されている。
トレイ部32には、温度センサ5が設置されている。温度センサ6は、誘導加熱制御装置7に接続されている。
レトルト食品Rを置いたトレイ部32を本体部31に入れると、電磁誘導加熱コイル33の内部にレトルト食品Rが入った状態になる。
【0024】
図9は、トレイ部32を本体部31に入れた状態を示す模式的断面図である。
図10に示すように、レトルト食品Rを置いたトレイ部32を本体部31に入れたとき、電磁誘導加熱コイル5は、レトルト食品Rの袋部Roおよびレトルト食品Rの左右の縁部Rfに対応するが、レトルト食品Rの上下の縁部Rfには対応しないように設置されている。
【0025】
ユーザは、トレイ部32を引き出し、レトルト食品Rをトレイ部32に置いて、トレイ部32を押し込み、所望の温度にダイヤル8dを設定し、ボタン8bを押す。
誘導加熱制御装置7は、ボタン8bが押されたことを検知したら、電磁誘導加熱コイル33に20kHz〜100kHzの高周波電流を流す。これにより、アルミ箔に渦電流が流れてジュール熱を発生し、内容物が加熱される。
誘導加熱制御装置7は、温度センサ5により温度を検知しながら通電し、ダイヤル8dで設定された温度になるとブザー9を鳴らし、通電と遮断を繰り返して温度を維持する。あるいは、最初は高い周波数で高速に加熱し、ダイヤル8dで設定された温度に近づくと周波数を下げてダイヤル8dで設定された温度を大きく越えないように制御し、ダイヤル8dで設定された温度になるとブザー9を鳴らし、通電と遮断を繰り返して温度を維持する。
【0026】
実施例3のレトルト食品電磁誘導加熱装置30によれば、金属箔を含む包装材に食品を収容したレトルト食品を効率よく加熱することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のレトルト食品電磁誘導加熱装置は、家庭用や業務用の調理装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置の構造を示す模式的縦断面図である。
【図3】実施例1に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置の台部の構造を示す模式的横断面図である。
【図4】実施例1に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置の電磁誘導加熱コイルとレトルト食品の位置関係を示す模式的横断面図である。
【図5】実施例2に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置の台部の構造を示す模式的横断面図である。
【図6】実施例2に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置の電磁誘導加熱コイルとレトルト食品の位置関係を示す模式的横断面図である。
【図7】実施例3に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置を示す斜視図である。
【図8】実施例3に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置の構造を示す模式的縦断面図である。
【図9】実施例3に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置の構造を示す模式的横断面図である。
【図10】実施例3に係るレトルト食品電磁誘導加熱装置の電磁誘導加熱コイルとレトルト食品の位置関係を示す模式的横断面図である。
【符号の説明】
【0029】
3,4,33 電磁誘導加熱コイル
5,6 温度センサ
7 誘導加熱制御装置
8b ボタン
8d ダイヤル
9 ブザー
10,20,30 レトルト食品電磁誘導加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔を含む包装材に食品を収容したレトルト食品を置くためのレトルト食品用空間と、前記レトルト食品用空間に近接して設置された電磁誘導加熱コイルと、前記前記レトルト食品用空間に置かれたレトルト食品の温度を検知するための温度センサと、前記温度センサで検知した温度が所定の上限温度を超えないように前記電磁誘導加熱コイルによる前記レトルト食品を電磁誘導加熱する誘導加熱制御手段とを具備したことを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレトルト食品電磁誘導加熱調理装置において、前記包装材の縁部を異常加熱せず且つ袋部を加熱するように前記電磁誘導加熱コイルを設置したことを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のレトルト食品電磁誘導加熱調理装置において、前記電磁誘導加熱コイルが、渦巻き状コイルであることを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレトルト食品電磁誘導加熱調理装置において、前記レトルト食品用空間を挟むように2以上の渦巻き状コイルを設置したことを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のレトルト食品電磁誘導加熱調理装置において、前記電磁誘導加熱コイルが、ソレノイド状コイルであることを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のレトルト食品電磁誘導加熱調理装置において、複数個の前記電磁誘導加熱コイルを設置したことを特徴とするレトルト食品電磁誘導加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−317507(P2007−317507A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146032(P2006−146032)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】