説明

ローラ搬送装置

【課題】真空容器内あるいはクリーンルーム内を塵埃の極めて少ないクリーンな状態に維持することができるローラ搬送装置を提供する。
【解決手段】真空容器内またはクリーンルーム内に形成された搬送路16の、一側方または両側方に配置されて前記搬送路16に沿って被搬送物を搬送するローラ搬送装置10であって、前記真空容器または前記クリーンルームを形成する隔壁17の外側に駆動源11が配置され、前記隔壁17の内側に駆動軸13および従動軸14が配置されており、前記駆動源11により駆動される前記駆動軸13の回転を前記従動軸14に伝達する部分と、前記従動軸14の軸部21を軸受け支持する部分とに転がり軸受23,26が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラ搬送装置、特に、液晶、半導体、有機EL等非常にクリーンな環境下での製造が要求される製造装置に適用されるローラ搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶、半導体、有機EL等非常にクリーンな環境下での製造が要求される製造装置に適用される搬送装置としては、特許文献1に開示されたものが知られている。
【特許文献1】特開2000−118710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された搬送装置では、駆動軸の回転が傘歯車を介して複数の従動軸に伝達されるようになっている。このような搬送装置を真空容器内で使用しようとした場合、通常は蒸気圧の非常に低い真空用グリースを歯面の潤滑に使用する場合が多いが、クリーンな高真空環境が求められる条件下においてはたとえ微量でも油分が蒸発し真空環境が油蒸気を含んだ状態になることは望ましくないため、出来れば真空用グリースの使用も避けることが望ましい。しかし、歯車の噛み合わせ部にグリース等の潤滑材を使用しなかった場合には歯面の摩耗が促進され、摩耗粉等の微粉末が発生し、この微粉末が真空容器内に飛散して真空容器内の清浄度(クリーン度)が低下してしまうといった問題点があった。
また、このような搬送装置をクリーンルーム内で使用しようとした場合、クリーンルーム用の潤滑材を使用することができるため、歯車の噛み合わせ部における歯面の摩耗を低減させることができる。しかし、微量ではあるが歯車の噛み合わせ部から摩耗粉等の微粉末が発生し、この微粉末がクリーンルーム内に飛散してクリーンルーム内の清浄度(クリーン度)が低下してしまうといった問題点があった。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、真空容器内あるいはクリーンルーム内を塵埃の極めて少ないクリーンな状態に維持することができるローラ搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明によるローラ搬送装置は、真空容器内またはクリーンルーム内に形成された搬送路の、一側方または両側方に配置されて前記搬送路に沿って被搬送物を搬送するローラ搬送装置であって、前記真空容器または前記クリーンルームを形成する隔壁の外側に駆動源が配置され、前記隔壁の内側に駆動軸および複数の従動軸が配置されており、前記駆動源により駆動される前記駆動軸の回転を前記従動軸に伝達する部分と、前記従動軸の軸部を軸受け支持する部分とに転がり軸受が配置されている。
このようなローラ搬送装置によれば、真空容器内あるいはクリーンルーム内における摺動部分のすべてが、発塵の極めて少ない転がり軸受により構成されることとなるので、真空容器内あるいはクリーンルーム内を塵埃の極めて少ないクリーンな状態に維持することができる。
また、摺動部分が転がり軸受のみとなり、メンテナンス箇所が大幅に低減することとなるので、保守点検作業の簡素化を図ることができるとともに、保守点検作業に要する時間とコストを大幅に低減させることができる。
さらに、摺動部分が幅方向に寸法を要しない転がり軸受で構成されることとなるので、真空容器あるいはクリーンルームの寸法、特に幅方向の寸法を減少させることができ、真空容器あるいはクリーンルームの小型化を図ることができるとともに、製造コストを削減することができる。
さらにまた、真空容器あるいはクリーンルームの小型化に伴い、真空ポンプの排気能力を小さくしたり、あるいは空気清浄機の能力を小さくすることができるので、装置全体の製造コストも削減することができる。
【0006】
上記ローラ搬送装置において、前記転がり軸受の転動体、内外輪、または保持器の表面に、テフロン(登録商標)等の樹脂コーティング、銀イオンプレーティング、または二硫化モリブデン等の固体潤滑皮膜が施されているか、転がり軸受の材質にセラミックが使用されているとさらに好適である。
このようなローラ搬送装置によれば、潤滑油や潤滑グリースを真空容器内あるいはクリーンルーム内から完全に排除することができて、真空容器内あるいはクリーンルーム内を油分のないクリーンな状態に維持することができる。
【0007】
本発明による電子部品製造装置は、上記ローラ搬送装置を具備している。
このような電子部品製造装置によれば、極めてクリーンな環境下で電子部品(液晶、半導体、有機EL等)が製造されることとなるので、電子部品の汚損あるいは欠損を低減させることができ、製造コストの低減化あるいは、製品品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるローラ搬送装置によれば、真空容器内あるいはクリーンルーム内を塵埃の極めて少ないクリーンな状態に維持することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明によるローラ搬送装置の第1実施形態について、図1および図2を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係るローラ搬送装置10の概略の構成を示す平面図、図2は図1に示すローラ搬送装置10のローラ周辺の拡大斜視図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係るローラ搬送装置10は、駆動源11と、回転導入機構12と、駆動軸13と、従動軸14と、連結板15とを主たる要素として構成されたものであり、搬送路16の両側部にそれぞれ配置されている。
駆動源11は、例えば、電動モータからなり、その出力軸11aの先端部には、回転導入機構12が接続されている。
回転導入機構12は、出力軸11aを介して駆動源11から伝達されてきた回転力を真空容器内の真空を保持しつつ真空容器内の駆動軸13に伝達するものである。
そして、駆動源11および回転導入機構12は、大気中(すなわち、電子部品製造装置を構成する真空容器あるいはクリーンルームを形成する隔壁17の外側)に配置されており、駆動軸13、従動軸14、および連結板15は、真空中あるいはクリーンな環境中(すなわち、電子部品製造装置を構成する真空容器あるいはクリーンルームを形成する隔壁17の内側)に配置されている。
【0011】
駆動軸13の回転軸線上に、その回転軸線が位置するように配置された従動軸14(図1において一番左側に位置する従動軸14)と、駆動軸13とは、偏心プレート20を介して連結されている。
従動軸14は、軸部21と、クランクアーム部22とを備え、搬送路16に沿って所定の間隔をおいて複数個(本実施形態では5個)配置されている。
軸部21は、搬送路16の両側部にそれぞれ設けられた図示しないフレーム(枠体)に取り付けられた固体潤滑方式の転がり軸受(例えば、転動体にテフロン(登録商標)コーティング等が施された玉軸受)23により軸受け支持されるとともに、その一端部(搬送路16側の端部)には、図示しないパレット(被搬送物)等を載せて搬送する送りローラ24が設けられている。
クランクアーム部22は、断面視L字状の部材であり、連結板15の板厚方向に貫通する貫通穴25内に嵌入された固体潤滑方式の転がり軸受(例えば、転動体の表面に樹脂(例えば、テフロン(登録商標))コーティング等が施された玉軸受)26により軸受け支持される軸部27と、前述した偏心プレート20と同一の形状を有する偏心プレート28とを備えている。
【0012】
図1において一番左側に位置する従動軸14の、クランクアーム部22の軸部27の他端面(搬送路16側と反対側の端面)は、偏心プレート20の一端面(搬送路16側の端面)に連結されている。
一方、クランクアーム部22の軸部27の一端面(搬送路16側の端面)は、偏心プレート28の他端面(搬送路16側と反対側の端面)に連結されているとともに、偏心プレート28の一端面(搬送路16側の端面)は、軸部21の他端面(搬送路16側と反対側の端面)に連結されている。
これにより、駆動軸13が回転すると、偏心プレート20および連結板15を介して従動軸14の軸部21および送りローラ24が、駆動軸13と同じ方向に同じ回転数で回転することとなる。
【0013】
本実施形態によるローラ搬送装置10によれば、従動軸14の軸部21およびクランクアーム部22の軸部27がそれぞれ、発塵の極めて少ない転がり軸受23,26により軸受け支持されているので、真空容器内あるいはクリーンルーム内を塵埃の極めて少ないクリーンな状態に維持することができる。
また、従動軸14の軸部21およびクランクアーム部22の軸部27を軸受け支持する転がり軸受23,26の転動体の表面には、テフロン(登録商標)等の樹脂がコーティングされているので、潤滑油や潤滑グリースを真空容器内あるいはクリーンルーム内から完全に排除することができて、真空容器内あるいはクリーンルーム内を油分のないクリーンな状態に維持することができる。
さらに、摺動部分が転がり軸受23,26のみとなり、メンテナンス箇所が大幅に低減することとなるので、保守点検作業の簡素化を図ることができるとともに、保守点検作業に要する時間とコストを大幅に低減させることができる。
さらにまた、駆動軸13の回転力が、偏心プレート20および連結板15のみを介してすべての従動軸14に伝達されることとなるので、真空容器あるいはクリーンルームの寸法、特に幅方向の寸法を減少させることができ、真空容器あるいはクリーンルームの小型化を図ることができるとともに、製造コストを削減することができる。
さらにまた、真空容器あるいはクリーンルームの小型化に伴い、真空ポンプの排気能力を小さくしたり、あるいは空気清浄機の能力を小さくすることができるので、装置全体の製造コストも削減することができる。
【0014】
本発明によるローラ搬送装置の第2実施形態を、図3および図4を用いて説明する。
本実施形態におけるローラ搬送装置30は、偏心プレート20、軸部27、および偏心プレート28の代わりに偏心プレート31が、転がり軸受26の代わりに転がり軸受32が設けられているという点で前述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0015】
偏心プレート31は、連結板15の板厚方向に貫通する貫通穴33内に嵌入された固体潤滑方式の転がり軸受(例えば、転動体にテフロン(登録商標)コーティング等が施された玉軸受)32により軸受け支持されている。また、偏心プレート31の一端面(搬送路16側の端面)は、従動軸34の軸部21の他端面(搬送路16側と反対側の端面)に連結あるいは偏芯プレート31と従動軸34の軸部21は単一部品で構成されているとともに、偏心プレート31の他端面(搬送路16側と反対側の端面)は、駆動軸13の一端面(搬送路16側の端面)に連結あるいは偏芯プレート31と駆動軸13は単一部品で構成されている。
なお、本実施形態において、従動軸34は、軸部21と、偏心プレート31とを備えていることとなる。
【0016】
本実施形態によるローラ搬送装置30の作用効果は、前述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0017】
本発明によるローラ搬送装置の第3実施形態を、図5を用いて説明する。
本実施形態におけるローラ搬送装置40は、前述した第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせたものである。すなわち、本実施形態におけるローラ搬送装置40は、駆動軸13の回転軸線上に、第2実施形態のところで説明した従動軸34の回転軸線が位置するように配置されているという点で前述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0018】
本実施形態によるローラ搬送装置40の作用効果は、前述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0019】
本発明によるローラ搬送装置の第4実施形態を、図6を用いて説明する。
本実施形態におけるローラ搬送装置50は、前述した第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせたものである。すなわち、本実施形態におけるローラ搬送装置50は、連結板15の両端部(すなわち、図6において一番左側および一番右側)に位置する従動軸が、第2実施形態のところで説明した従動軸34とされているという点で前述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0020】
本実施形態においては、連結板15の一端部(すなわち、図6において一番右側)に位置する従動軸34の偏心プレート31の他端面(搬送路16側と反対側の端面)にも駆動軸13aが連結されている。また、連結板15の一端部(すなわち、図6において一番右側)に位置する従動軸34は、その回転軸線が駆動軸13aの回転軸線上に位置するように配置されている。そして、駆動軸13と駆動軸13aとは真空容器外にて無端状のベルト(あるいはチェーン)51を介して連結されており、これにより、駆動軸13が回転すると、もう一方の駆動軸13aも駆動軸13と同じ方向に同じ回転数で回転することとなる。
なお、図6中の符号52は、ベルト51のテンション(張力)を調節するためのプーリである。
【0021】
本実施形態によるローラ搬送装置50の作用効果は、前述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0022】
なお、本発明は上述した実施形態のものに限定されるものではなく、駆動軸13の回転が、例えば、非接触式の磁気駆動伝達機構を介して偏心プレート20あるいは偏心プレート31に伝達されるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるローラ搬送装置の第1実施形態を示す図であって、その概略の構成を示す平面図である。
【図2】図1に示すローラ搬送装置のローラ周辺の拡大斜視図である。
【図3】本発明によるローラ搬送装置の第2実施形態を示す図であって、その概略の構成を示す平面図である。
【図4】図3に示すローラ搬送装置のローラ周辺の拡大斜視図である。
【図5】本発明によるローラ搬送装置の第3実施形態を示す図であって、ローラ周辺の拡大斜視図である。
【図6】本発明によるローラ搬送装置の第4実施形態を示す図であって、ローラ周辺の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ローラ搬送装置
11 駆動源
13 駆動軸
13a 駆動軸
14 従動軸
16 搬送路
17 隔壁
21 軸部
23 転がり軸受
26 転がり軸受
30 ローラ搬送装置
32 転がり軸受
34 従動軸
40 ローラ搬送装置
50 ローラ搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内またはクリーンルーム内に形成された搬送路の、一側方または両側方に配置されて前記搬送路に沿って被搬送物を搬送するローラ搬送装置であって、
前記真空容器または前記クリーンルームを形成する隔壁の外側に駆動源が配置され、前記隔壁の内側に駆動軸および従動軸が配置されており、
前記駆動源により駆動される前記駆動軸の回転を前記従動軸に伝達する部分と、前記従動軸の軸部を軸受け支持する部分とに転がり軸受が配置されていることを特徴とするローラ搬送装置。
【請求項2】
前記転がり軸受の転動体、内外輪、または保持器の表面に、テフロン(登録商標)等の樹脂コーティング、銀イオンプレーティング、または二硫化モリブデン等の固体潤滑皮膜が施されているか、転がり軸受の材質にセラミックが使用されていることを特徴とする請求項1に記載のローラ搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のローラ搬送装置を具備してなることを特徴とする電子部品製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−176668(P2007−176668A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378728(P2005−378728)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】