説明

中空型デバイス封止用樹脂組成物シートおよびそれを用いて封止した中空型デバイス

【課題】 中空部分への封止樹脂の流入を抑制しつつ、封止後の基板や表面弾性波素子の反りが小さく、さらにはダイシング時の作業安定性が良好な中空型デバイス封止用樹脂組成物シートおよびそれを用いて封止した中空型デバイスを提供する。
【解決手段】 中空封止が必要な素子を封止するために用いられる樹脂組成物シートであり、熱硬化後の25℃における引張弾性率が1×107〜1×109Paである物性を備えている。そして上記中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを用いて中空封止が必要な素子を封止してなる中空型デバイスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空型デバイスの封止に用いられる樹脂組成物シートおよびそれを用いて封止した中空型デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体および電子部品等のチップ型デバイスの封止は、粉末エポキシ樹脂によるトランスファー封止や液状エポキシ樹脂によるポッティング等によって行われているが、素子と基板の間を中空構造とする必要がある表面弾性波素子をはじめとする中空型デバイスを樹脂封止する際には、樹脂組成物シートを用いて素子を封止する方法が提案されている(特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開2004―327623号公報
【特許文献2】特開2003―17979号公報
【特許文献3】特開2006―19714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記樹脂組成物シートを用いた中空型デバイスの封止においては、基板や素子に反りが生じる問題があり、さらに、封止後のダイシング時に樹脂バリやチップ飛び、ダイシングテープの糊残りが生じるなどの問題があった。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、中空部分への封止樹脂の流入を抑制しつつ、封止後の基板や中空封止が必要な素子(以下、単に素子ということがある)の反りを低減し、さらにはダイシング時の作業安定性が向上する中空型デバイス封止用樹脂組成物シートの提供、および上記中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを用いて素子を封止してなる中空型デバイスの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、樹脂組成物シートとして、熱硬化後の25℃における引張弾性率を1×107〜1×109Paに設定してなる物性を備えたシートを用いると、中空封止が必要な素子の封止時に中空部分への封止樹脂の流入を抑制しつつ、封止後の基板および素子の反りを抑えた上に、さらにはダイシング作業安定性の高い封止が可能であることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0006】
このように、本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートは、基板上に搭載された中空封止が必要な素子を封止するために用いられ、熱硬化後の25℃における引張弾性率が1×107〜1×109Paに設定されてなるものである。これにより、中空部分への封止樹脂の流入を抑制しつつ、封止後の基板および素子の反りを抑えた封止を行うことができ、さらにはダイシング作業安定性の高い封止を行うことができるため、簡便かつ歩留まり良く樹脂封止を行うことが可能となる。
【0007】
そして、上記中空型デバイス封止用樹脂組成物シートとして、後述のA〜E成分を含有するエポキシ樹脂組成物を用いてシート状に形成したものであると、上記引張弾性率を1×107〜1×109Paの範囲に制御でき、かつ封止材としての高い信頼性を有し、さらにはダイシング作業安定性の高い中空型デバイス封止用樹脂組成物シートが容易に得られる。
【0008】
さらに、D成分である無機質充填剤の量をエポキシ樹脂組成物全体の50〜70重量%の割合に設定すると、上記引張弾性率を1×107〜1×109Paの範囲に制御でき、かつ封止材としての高い信頼性を有し、さらにはダイシング作業安定性の高い中空型デバイス封止用樹脂組成物シートが容易に得られる。
【0009】
さらに、A成分であるエポキシ樹脂がアセタール基を含有するものとすると、より上記引張弾性率を1×107〜1×109Paの範囲に制御しやすくなり、かつ封止材としての高い信頼性を有し、さらにはダイシング作業安定性の高い中空型デバイス封止用樹脂組成物シートが容易に得られる。
【0010】
さらに、中空型デバイス封止用樹脂組成物シートに、剥離用シートを貼り合わせると、より作業安定性や取扱い性の高い中空型デバイス封止用シートが容易に得られる。
【0011】
また、本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを用いて中空封止が必要な素子を封止すると、高い信頼性を有する中空型デバイスが容易に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0013】
本発明でいう中空型デバイスとは、中空構造を必要とするデバイスのことであり、例えば、表面弾性波デバイス、水晶デバイス、高周波デバイスなどが挙げられる。これら中空型デバイスは、伝搬する波を利用するため、素子を樹脂封止する際には、伝搬する波に影響を与えないように封止することが求められる。具体的には、他のデバイスの樹脂封止では不要な、素子と基板間の中空構造の維持が必要であり、さらにはデバイス特性の劣化につながるので、他のデバイス以上に封止後の素子と基板の反りを抑えることが要求される。一方で、他のデバイスを樹脂封止する際と同様に、封止後のダイシング時において、樹脂バリやチップ飛び、ダイシングテープの糊残りを防ぐなどの作業安定性も求められる。従って、従来用いられている他のデバイスで用いられる樹脂組成物シートで中空型デバイスを樹脂封止しても、満足のいく結果は得られにくい。
【0014】
本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートは、硬化後において特定の引張弾性率を有するものであり、好ましくは、エポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、エラストマー(C成分)、無機質充填剤(D成分)、硬化促進剤(E成分)を含有するエポキシ樹脂組成物をシート状に成型することにより得られるものである。
【0015】
上記エポキシ樹脂成分(A成分)としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、柔軟性骨格を導入したエポキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。中でも、低応力性、低反り性に必要な特性を確保する観点から、柔軟性骨格を導入したエポキシ樹脂を用いることが好ましい。柔軟性骨格を導入したエポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂の硬化体に柔軟性を与えるものであれば特に制限はないが、好ましくは高分子量化された2官能性エポキシ樹脂であり、より好ましくはアセタール基を有するエポキシ樹脂である。中でも、アセタール基を有する変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、液体状で取扱いが容易であることから特に好適に用いることができる。
【0016】
上記エポキシ樹脂成分(A成分)の含有量としては、エポキシ樹脂組成物全体に対して10〜20重量%の範囲に設定することが好ましい。中でも、柔軟性骨格を導入したエポキシ樹脂を用いた場合は、他のエポキシ樹脂と比べてエポキシ樹脂組成物の硬化体に柔軟性を与えるために、エポキシ樹脂組成物全体に対して10〜16重量%の範囲に設定することがより好ましい。
【0017】
上記フェノール樹脂(B成分)としては、上記エポキシ樹脂(A成分)との間で硬化反応を生起するものであれば特に限定するものではないが、例えば、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。そして、上記フェノール樹脂としては、水酸基当量が70〜250、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましく、中でも硬化反応性が高いという観点から、フェノールノボラック樹脂を好適に用いることができる。
【0018】
そして、上記エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)の配合割合は、エポキシ樹脂(A成分)中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂(B成分)中の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0019】
上記A成分およびB成分とともに用いられるエラストマー(C成分)は、エポキシ樹脂組成物に中空型デバイス封止用樹脂組成物として必要な柔軟性および可撓性を付与するものであり、このような作用を奏するものであれば特にその構造を限定するものではないが、例えば、つぎのようなゴム質重合体が挙げられる。すなわち、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル酸エステル系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等からなる重合体が挙げられる。中でも、上記エポキシ樹脂(A成分)へ分散させやすく、またエポキシ樹脂(A成分)との反応性も高いために、得られる樹脂組成物の耐熱性や強度を向上させることができるという観点から、アクリル酸エステル系共重合体を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
【0020】
上記エラストマー(C成分)の含有量としては、中空型デバイス封止用樹脂組成物として必要な柔軟性および可撓性を付与するという観点から、エポキシ樹脂組成物の全有機成分中の15〜70重量%である。すなわち、エラストマー(C成分)の含有量が15重量%未満では、エポキシ樹脂組成物の熱硬化後の25℃における引張弾性率が1×109Paを超えて、柔軟性や可撓性を付与することが困難となるため、樹脂封止シートとして取扱い作業性が低下する傾向を示し、逆に含有量が70重量%を超えると、硬化後の25℃における引張弾性率が1×107Pa未満となり、成形物とした際の強度が不足する傾向がみられるとともに、耐熱性も低下する傾向もみられるからである。
【0021】
上記無機質充填剤(D成分)としては、特に限定されるものではなく従来公知の各種充填剤を用いることができる。例えば、石英ガラス粉末、タルク、シリカ粉末(溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等)、アルミナ粉末、窒化アルミニウム、窒化珪素粉末等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。中でも、得られる硬化体の熱線膨張係数が低減し、内部応力を低減できる結果、樹脂封止後の基板と素子の反りを抑制できるという点から、シリカ粉末を用いることが好ましく、上記シリカ粉末の中でも溶融シリカ粉末を用いることが、高充填性および高流動性という点から特に好ましい。上記溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが特に好ましい。中でも、平均粒径が0.2〜30μmの範囲のものを用いることが好ましく、0.5〜15μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。なお、上記平均粒径は、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
【0022】
上記無機質充填剤(D成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の50〜70重量%の範囲に設定することが好ましい。すなわち、無機質充填剤(D成分)の含有量が50重量%未満では、硬化体の室温における引張弾性率が低くなり1×107Pa以上の引張弾性率が得られない場合があるとともに、耐熱性が低下する傾向がみられ、70重量%を超えると硬化体の引張弾性率が高くなり1×109Pa以下の引張弾性率が得られない場合があるとともに、基板や表面弾性波素子との接着性が低下する傾向がみられるためである。
【0023】
上記硬化促進剤(E成分)としては、上記エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)との硬化反応を促進させるものであれば、特に限定するものではなく、従来公知の各種硬化促進剤を用いることができる。例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられるが、常温で長期間保管できるという点から第四級ホスホニウム塩化合物を用いることが好ましく、中でもテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレートを用いることが好ましい。
【0024】
上記硬化促進剤(E成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の0.1〜10重量%の範囲に設定することが好ましく、さらに好ましくは0.3〜3重量%であり、特に好ましくは0.5〜2重量%である。
【0025】
なお、本発明において、上記エポキシ樹脂組成物には、上記A〜E成分以外に必要に応じて、難燃剤、カーボンブラックをはじめとする顔料等の他の添加剤を適宜配合することができる。
【0026】
上記難燃剤としては、例えば、有機リン化合物、酸化アンチモン、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
【0027】
本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートは、例えばつぎのようにして製造することができる。まず、各配合成分を混合することによりエポキシ樹脂組成物を調製するが、各配合成分が均一に分散混合される方法であれば特に限定するものではない。そして、必要に応じて各配合成分を有機溶剤等に溶解または分散しワニス塗工により製膜する。あるいは、各配合成分を直接ニーダー等で混練することにより固形樹脂組成物を調製し、このようにして得られた固形樹脂組成物をシート状に押し出して製膜成形してもよい。中でも、簡便に均一な厚みのシートを得ることができるという点から、上記ワニス塗工法を好適に用いることができる。
【0028】
上記ワニス塗工法による本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートの作製について述べる。すなわち、上記A〜E成分および必要に応じて他の添加剤を常法に準じて適宜混合し、有機溶剤に均一に溶解あるいは分散させ、ワニスを調製する。ついで、上記ワニスをポリエステル等の基材上に塗布し乾燥させることにより中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを得ることができる。そして必要により、シート表面を保護するためにポリエステルフィルム等のフィルムを貼り合わせてもよい。これらポリエステル等の基材およびポリエステルフィルム等のフィルムは剥離シートとして機能する。その際は、樹脂封止時に剥離シートを剥離する。
【0029】
上記有機溶剤としては、特に限定するものではなく従来公知の各種有機溶剤、例えばメチルエチルケトン、アセトン、ジオキサン、ジエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。また通常、ワニスの固形分濃度が30〜60重量%の範囲となるように有機溶剤を用いることが好ましい。
【0030】
有機溶剤乾燥後のシートの厚みは、特に制限されるものではないが、厚みの均一性と残存溶剤量の観点から、通常、5〜100μmに設定することが好ましく、より好ましくは20〜70μmである。このようにして得られた本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートは、必要により所望の厚みとなるように積層して使用してもよい。すなわち、本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートは、単層構造にて使用してもよいし、2層以上の多層構造に積層してなる積層体として使用してもよい。
【0031】
このようにして得られる本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを用いて、基板上に搭載された中空封止が必要な素子を樹脂封止するには、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、基板上の所定位置に素子を搭載した後に、素子の全面を覆うように中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを配置する。なお、素子の全面ではなく、中空構造とする箇所の外周縁を覆うように中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを配置してもよい。中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを配置後、所定の封止条件にてシートを加熱硬化することにより、素子と基板との空間を中空に保持した状態で樹脂封止する。樹脂封止後は樹脂封止面にダイシングテープを貼り、ダイシング工程に移る。
【0032】
上記封止条件としては、温度80〜100℃、圧力100〜500kPaにて0.5〜5分間真空プレスを行った後、大気開放して、温度150〜190℃にて30〜120分間加熱することが挙げられる。
【0033】
本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートは、熱硬化後の25℃における引張弾性率が、1×107〜1×109Paの範囲でなければならない。
【0034】
すなわち、熱硬化後の25℃における引張弾性率が1×107Pa未満では、中空封止が必要な素子を封止した後のダイシング工程において、中空型デバイス封止用樹脂組成物シートの硬化体による樹脂バリが生じやすくなるとともに、中空型デバイス封止用樹脂組成物シートの硬化体とダイシングテープとの剥離が困難となることにより、ダイシングテープ由来の粘着剤汚染が生じやすくなる。さらに、製品パッケージとしての形状、強度、耐熱性が劣る傾向もみられる。また、熱硬化後の25℃における引張弾性率が1×109Paを超えると、基板および素子との熱線膨張係数の差に起因する応力により基板の反りが発生してその後の製造プロセスにおける作業性が低下し、搬送トラブルやダイシング工程における樹脂バリやチップ飛び等の問題が生じやすくなるとともに、中空型デバイスそのものにも応力がかかるため、デバイス性能の劣化を引き起こす。
【0035】
上記熱硬化後の25℃における引張弾性率は、以下のように測定される。すなわち、中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを熱硬化させ、動的粘弾性測定装置を用いて所定の条件にて熱硬化後の25℃における貯蔵弾性率を測定することにより得られる。
【0036】
このようにして得られる中空型デバイスの構成の一例について述べる。すなわち、図1に示すように、中空封止が必要な表面弾性波素子1に設けられた接続用電極(バンプ)3と配線回路基板2に設けられた接続用電極(図示せず)を対向させた状態で、配線回路基板2上に表面弾性波素子1が搭載されている。そして、上記配線回路基板2上に搭載された表面弾性波素子1を覆うように、配線回路基板2上に封止樹脂層4が形成され樹脂封止されている。なお、表面弾性波素子1と配線回路基板2との間は、中空部分5が形成されている。
【0037】
なお、上記表面弾性波素子1に設けられた接続用電極部3がバンプ形状に形成されているが、特にこれに限定するものではなく、配線回路基板2に設けられた接続用電極部がバンプ形状に形成されてもよい。
【0038】
上記表面弾性波素子1と配線回路基板2との空隙(中空部分5)間距離は、上記接続用電極部(バンプ)3の大きさ等によって適宜設定されるが、一般に10〜100μm程度である。
【実施例】
【0039】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0040】
まず、下記に示す各成分を準備した。
〔エポキシ樹脂a〕
変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製EPICLON EXA−4850−150)
〔エポキシ樹脂b〕
トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EPPN−501HY)
〔フェノール樹脂〕
ノボラック型フェノール樹脂(明和化成社製、DL−65)
〔エラストマー〕
アクリル系共重合体(ブチルアクリレート:アクリロニトリル:グリシジルメタクリレート=85:8:7重量%からなる共重合体。重量平均分子量80万)
〔無機質充填剤〕
平均粒径5.5μmの球状溶融シリカ粉末
〔硬化促進剤〕
テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート
〔実施例1〜3、比較例1、2〕
後記の表1および表2に示す各成分を、同表に示す割合で分散混合し、これに各成分の合計量と同量のメチルエチルケトンを加えて、シート塗工用ワニスを調製した。
【0041】
つぎに、上記ワニスを、厚さ50μmのポリエステルフィルムA(三菱化学ポリエステル社製、MRF−50)の剥離処理面上にコンマコーターにて乾燥後の厚みが50μmとなるように塗工、乾燥した。ついで、厚さ38μmのポリエステルフィルムB(三菱化学ポリエステル社製、MRX−38)の剥離処理面を、ワニスを塗工および乾燥した面に貼り合わせて巻き取ることで中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを得た。その後、ポリエステルフィルムAおよびポリエステルフィルムBを適宜剥離しながら、ロールラミネーターにより上記中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを4枚積層することにより、厚さ200μmの中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを得た。
〔引張弾性率〕
得られた中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを175℃で1時間加熱して熱硬化させ、熱硬化後の25℃における引張弾性率を、ティー・エー・インスツルメント社製の粘弾性測定装置RSA■
を用いて、測定周波数1Hz、昇温速度10℃/分にて測定される貯蔵弾性率値として求めた。
〔反り評価〕
得られた中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを、80mm×80mm角、厚み200μmのアルミナ基板の全面に覆うように載置し、温度80℃、圧力1000kPaにて貼り合わせ、ついで、基板を175℃のオーブンに1時間投入することにより中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを加熱硬化させた後、常温まで自然冷却させた。得られた基板の最大反り量をティーテック社製レーザー3次元測定装置LS220−MT50で計測して、反り量が5mm未満のものを○、5mm以上のものを×として評価した。なお、5mmを超えると、デバイス特性の劣化が見られるとともに、その後の製造工程において搬送、吸着エラーを発生しやすくなる。
〔封止評価〕
得られた中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを、セラミック基板上に碁盤目状に配列搭載した表面弾性波素子(素子厚み300μm、バンプ高さ50μm)上に覆うように載置し、温度100℃、圧力300kPaの条件にて1分間真空プレス(到達真空度6.65×102Pa)した。大気開放後、基板を175℃のオーブンに1時間投入することにより中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを加熱硬化させた。
【0042】
その後、ダイシング装置を用いてパッケージを個片化し、得られた表面弾性波装置の断面観察を行い、チップ下部の中空部分への樹脂の侵入の有無とダイシング時の作業安定性について観察した。そして、表面弾性波素子下部の中空部分への樹脂の侵入が確認されたものを×、進入が確認されなかったものを○として評価した。また、ダイシング時の作業安定性については、問題なくダイシングできたものを○、樹脂バリやチップ飛び、ダイシングテープの糊残りがあったものを×として評価した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

上記の結果、熱硬化後の25℃における引張弾性率が1×107〜1×109Paである実施例品は、樹脂封止後の基板の反りを抑制し、表面弾性波素子下部の中空部分への樹脂の侵入がなく、ダイシング時の作業安定性も良好であった。
【0045】
これに対して、前記特定の引張弾性率を外れた比較例品は、ともにダイシング時の作業安定性の評価が劣るものであった。特に比較例1は、中空部分への樹脂の進入と樹脂封止後の基板の反りは抑制しているが、ダイシング時の作業安定性が悪く、前記特定の引張弾性率が有効であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを用いて封止してなる表面弾性波装置の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 表面弾性波素子
2 配線回路基板
3 表面弾性波素子の接続用電極部(バンプ)
4 封止樹脂層
5 中空部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化後の25℃における引張弾性率が1×107〜1×109Paであることを特徴とする、中空型デバイス封止用樹脂組成物シート。
【請求項2】
下記の(A)〜(E)成分を含有するエポキシ樹脂組成物をシート状に成型したものであることを特徴とする、請求項1に記載の中空型デバイス封止用樹脂組成物シート。
(A)エポキシ樹脂
(B)フェノール樹脂
(C)エラストマー
(D)無機質充填剤
(E)硬化促進剤
【請求項3】
前記(D)成分である無機質充填剤の含有量が、前記エポキシ樹脂組成物全体の50〜70重量%の割合である、請求項2に記載の中空型デバイス封止用樹脂組成物シート。
【請求項4】
前記(A)成分であるエポキシ樹脂がアセタール基を含有する、請求項2または3に記載の中空型デバイス封止用樹脂組成物シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートに、さらに剥離シートを貼り合わせてなる中空型デバイス封止用樹脂組成物シート
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の中空型デバイス封止用樹脂組成物シートを用いて中空封止が必要な素子を封止してなる中空型デバイス。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−91389(P2009−91389A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260455(P2007−260455)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】