説明

交通状況検出方法及びナビゲーション装置

【課題】ロータリーの案内情報を提供するための交通状況検出方法及びナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載されたナビゲーション装置1は、経路データ等を記憶した地理データ記憶部16と、交通関連データを外部から受信する通信部14と、環状交差点に対する進入路及び退出路の交通関連データを取得して、渋滞又は混雑が発生している進入路及び退出路を判断するとともに、渋滞又は混雑が発生した進入路と、渋滞又は混雑が発生した退出路との間の渋滞コスト11bを更新するCPU10を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通状況検出方法及びナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、渋滞等の交通問題を解決し、自動車の円滑な走行を図るために、高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems)の開発が進められている。このシステムの一
環として、交通関連情報を配信するVICS(登録商標、Vehicle Information and Communication Systems)や、交通関連情報を車々間通信等により取得するナビゲーション装
置、予め格納されたデータに基づき交通案内を行う高度化したナビゲーション装置が提案されている。ナビゲーション装置は、渋滞が発生した道路又は渋滞が発生する可能性が高い道路に関する案内を行ったり、渋滞を回避するための経路を案内する。
【0003】
このような装置として、特許文献1には、予め格納された道路のデータに基づき、交差点の信号の有無を判断し、信号機の待ち時間を予測する装置が記載されている。さらに、この装置は、待ち時間を含めた目的地までの所要時間を算出し、所要時間が短い経路を案内する。
【特許文献1】特開2001−165684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したナビゲーション装置では、信号待ちによる渋滞は予測できるが、その他の要因による渋滞は予測することができない。また、交通関連情報を通信により取得するナビゲーション装置では、高速道路・国道等の主要道路で発生した長距離に亘る渋滞の情報は取得できても、環状交差点(以下、ロータリーという)内の渋滞又は混雑に関する交通関連情報は取得できない。このため、ロータリー内の渋滞状況を加味せずに経路を探索して、所要時間の長い経路を案内してしまうことがある。また、ロータリー内が渋滞していても、渋滞情報を提供することができない問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロータリーの案内情報を提供するための交通状況検出方法及びナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、道路データを記憶した道路データ記憶手段と、交通関連データを外部から受信する通信手段とを用いて、環状交差点の渋滞又は混雑を検出するための交通状況検出方法であって、環状交差点に対する進入路及び退出路の交通関連データを前記通信手段により取得して、渋滞又は混雑が発生している進入路及び退出路を検出するとともに、検出した進入路と退出路に基づいて、前記環状交差点内の周回道路を渋滞道路又は混雑道路であると判断することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の交通状況検出方法において、渋滞又は混雑が発生している前記進入路と前記退出路との間の周回道路を、渋滞道路又は混雑道路であると判断することを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、車両に搭載されたナビゲーション装置において、道路データを記憶した道路データ記憶手段と、交通関連データを外部から受信する通信手段と、環状交差点に対する進入路及び退出路の前記交通関連データを取得して、渋滞又は混雑が発生している進入路及び退出路を検出する状況検出手段と、検出した進入路と退出路とに基づ
いて、前記環状交差点内の周回道路のコストを更新するコスト更新手段とを備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のナビゲーション装置において、前記コスト更新手段は、渋滞又は混雑が発生している前記進入路と前記退出路との間の周回道路のコストを更新することを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のナビゲーション装置において、前記コスト更新手段は、渋滞又は混雑が発生している退出路のうち、渋滞又は混雑が発生している進入路から最も遠い退出路を検出し、その退出路と前記進入路との間の周回道路のコストを更新することを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、現在位置から目的地までの案内経路を探索する探索手段を備えるとともに、前記探索手段は、更新された環状交差点内のコストに基づき、案内経路を再探索することを要旨とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のナビゲーション装置において、前記探索手段は、前記車両が環状交差点に接近した際に、更新された前記環状交差点内のコストに基づき、案内経路を再探索することを要旨とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項3〜7のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、環状交差点内の渋滞又は混雑に関する案内情報を出力する案内出力制御手段をさらに備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、渋滞が発生している進入路及び退出路を検出し、環状交差点内において、進入路と退出路との間の周回道路を、渋滞道路又は混雑道路であると判断する。このため、環状交差点内の交通関連データが配信されない場合にも、環状交差点内の交通状況を予測することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、渋滞又は混雑が発生している進入路と退出路との間の周回道路を、渋滞道路又は混雑道路であると判断する。このため、渋滞又は混雑が発生している可能性がある周回道路を、漏れなく検出できる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、環状交差点の進入路及び退出路の渋滞又は混雑を検出し、渋滞又は混雑している進入路及び退出路が検出された場合には、検出した進入路及び退出路に基づき、周回道路のコストを更新する。このため、環状交差点の渋滞状況に関する情報を利用して、例えば、環状交差点内の交通状況に関するデータを取得不可能である場合に、環状交差点内のコストに応じた案内を行うことができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、渋滞又は混雑している進入路及び退出路との間にある周回道路のコストを更新する。このため、渋滞又は混雑が発生している可能性がある周回道路のコストを、漏れなく高くすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、渋滞又は混雑している進入路から、最も遠い退出路が検出され、その退出路と進入路との間のコストが更新される。このため、渋滞又は混雑が予測される周回道路のコストを更新するので、渋滞している周回道路を漏れなく検出できる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、環状交差点内のコストに基づき案内経路が再探索されるので、環状交差点内の渋滞又は混雑を回避することができる。
請求項7に記載の発明によれば、更新されたコストに基づき、一度探索された案内経路を再探索するので、環状交差点内の渋滞又は混雑が発生した周回道路を回避した経路を案内することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、環状交差点内の渋滞又は混雑に関する案内情報を出力するので、ドライバーは、環状交差点内の情報を取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図8に従って説明する。
図1に示すように、車両に搭載されたナビゲーション装置1は、状況検出手段、コスト更新手段及び探索手段としてのCPU10、RAM11、ROM12、GPS受信部13、通信手段としての通信部14を備えている。CPU10は、GPS(Global Positioning System)衛星からGPS受信部13が受信した、緯度・経度等の座標を示す位置検出
信号を入力する。また、センサ側I/F部15を介して、車両に設けられた車速センサ30及びジャイロセンサ31から車速パルス、角速度をそれぞれ入力する。そして、CPU10は、これらの信号に基づき、電波航法及び自律航法を組み合わせて自車位置を検出する。
【0022】
通信部14は、VICS(登録商標、Vehicle Information and Communication Systems)を構成するビーコン又は基地局から、交通関連データTを受信する。交通関連データ
Tは、数分毎に更新されるとともに、電波ビーコン又は光ビーコン等からは、その周辺の交通関連データTが発信され、FM多重放送を発信する基地局からは各都道府県単位の交通関連データTが発信される。この交通関連データTには、渋滞又は混雑が生じた道路のVICSリンクと、渋滞又は混雑を示す渋滞データが含まれている。尚、本実施形態では、渋滞は、各自動車の平均速度がある一定の速度(例えば時速20km〜30km)まで低下した状態、又は低速度の自動車の列が一定以上の距離に達した状態を言い、混雑は、渋滞よりも混雑度(渋滞度)の低い状態を言う。
【0023】
また、ナビゲーション装置1は、道路データ記憶手段としての地理データ記憶部16、案内出力制御手段としての画像プロセッサ20を備えている。地理データ記憶部16は、内蔵されたハードディスク、又は光ディスク等の外部記憶媒体である。この地理データ記憶部16には、目的地までの経路を探索するための道路データとしての各経路ネットワークデータ(以下、経路データ17という)と、出力手段としてのディスプレイ25に、案内情報としての地図画面25aを出力するための各地図描画データ18とが格納されている。図2に示すように、経路データ17は、全国を各区域に区画したリージョン毎のデータであって、ヘッダ17a、ノードデータ17b、リンクデータ17c、リンクコスト17d、座標データ17e、道路属性データ17f、バージョン17gを有している。ヘッダ17aは、各経路データ17を管理するためのデータを有している。ノードデータ17bは、交差点、道路の端点等を示す各ノードの番号等の識別データ、隣接するノードの識別データ等を有している。リンクデータ17cは、リンクIDや、接続ノードを示す各リンクID、通行規制を示すデータ等を有している。リンクコスト17dは、リンク長、平均旅行時間等から構成されるデータ群である。座標データ17eは、各ノードの絶対座標を示す。道路属性データ17fは、通行方向、高速道路、環状交差点(以下、ロータリーという)等を示すデータである。バージョン17gは、その経路データ17のバージョンを示している。
【0024】
CPU10は、この経路データ17を用いて、目的地と現在の自車位置とを接続する案内経路を探索する。このとき、リンクコスト17dのリンク長、平均旅行時間等を用い、
最短距離となる案内経路、走行時間が最も短縮化される案内経路、経費が縮小できる案内経路等のように、複数の経路を探索する。そして、CPU10は、各案内経路を一度探索すると、その経路データを表すノード・リンクを示す、探索履歴データ11aをRAM11に記憶する。
【0025】
また、地図描画データ18は、全国の地図を分割したエリア毎に格納され、広域の地図から狭域の地図まで各階層毎に分かれている。図3に示すように、各地図描画データ18は、ヘッダ18a、道路描画データ18b、背景データ18c、バージョン18dを有している。ヘッダ18aは、その地図描画データ18の階層、エリア等を示し、管理目的のデータである。道路描画データ18bは、地図上に表示される道路の形状や、路面状況を示すデータである。背景データ18cは、道路、市街地、河川等を描画する描画データである。
【0026】
ナビゲーション装置1の画像プロセッサ20は、CPU10に基づき、自車位置から所定距離内に相当する地図描画データ18を地理データ記憶部16から読出す。そして、道路描画データ18bに基づいた形状の道路、背景データ18cに基づく市街地等を描画するための描画データを生成し、内蔵メモリに一時記憶する。そして、描画データに基づく映像信号を、自車位置を示す指標データとともにディスプレイ25に出力する。その結果、図1に示すように、自車位置を示す現在位置指標25bが重畳された地図画面25aがディスプレイ25に表示される。
【0027】
また、ナビゲーション装置1は、図1に示すように音声プロセッサ19を備えている。音声プロセッサ19は、CPU10の制御に従って、図示しない音声ファイルデータベースから音声ファイルを読出して音声信号を出力手段としてのスピーカ26に出力する。これにより、経路を案内する案内音声等が出力される。
【0028】
また、ナビゲーション装置1は、外部入力I/F部21を備えている。外部入力I/F部21は、ナビゲーション装置1のディスプレイ25に隣設された操作スイッチ27等が操作されたとき、その入力操作に応じた電気信号をCPU10に出力する。また、ディスプレイ25は、タッチパネルであって、タッチパネルが入力操作されると、外部入力I/F部21は、入力操作に応じた電気信号をCPU10に出力する。
【0029】
次に、本実施形態の処理手順について図4及び図5に従って説明する。まず、CPU10は、ナビゲーション装置1が起動した後、経路案内又は自車位置周辺の案内が開始されるのを待機する(ステップS1−1)。そして、案内を開始したと判断すると(ステップS1−1においてYES)、現在のモードが、目的地までの経路を探索及び案内するモードであるか否かを判断する(ステップS1−2)。
【0030】
CPU10が経路データ17に基づき目的地までの経路を探索したと判断すると(ステップS1−2においてYES)、その経路上において、現在の自車位置から所定距離(例えば、5km)内にロータリーがあるか否かを判断する(ステップS1−3)。このとき、CPU10は、経路データ17中の道路属性データ17f、又はリンクデータ17c等に基づき、経路上のロータリーの有無を判断する。
【0031】
所定距離内の経路上にロータリーがないと判断した場合には(ステップS1−3においてNO)、ステップS1−8に進み、案内を終了するか否かを判断する。このとき、CPU10は、操作スイッチ27等により案内終了の入力操作がされたか、又は目的地に到着したか否か等を判断する。案内を終了しないと判断すると(ステップS1−8においてNO)、ステップS1−1に戻る。
【0032】
所定距離内の経路上にロータリーがあると判断すると(ステップS1−3においてYES)、検出されたロータリーに接続する道路を対象として渋滞コスト設定処理を行う(ステップS1−4)。
【0033】
この渋滞コスト設定処理について、図5に従って説明する。
まず、CPU10は、RAM11に記憶された基準道路番号nを「1」に初期化する(ステップS2−1)。基準道路番号nは、ステップS1−3において図6に示すようなロータリー100が検出された際に、そのロータリー100に対し進入又は退出可能な接続道路R1〜R4に付与される番号である。ロータリー100内では、車両Cは、一定方向(時計方向)に周回する。また、接続道路R1〜R4内の車両Cよりもロータリー100内の車両Cが優先されるため、接続道路R1〜R4内の車両Cがロータリー100内に進入する場合、ロータリー100内が渋滞又は混雑していると進入路内で待機しなければならない。尚、図6ではロータリー100には4本の接続道路R1〜R4がロータリー100に連結しているが、6本等、これ以外の本数でもよい。
【0034】
次にCPU10は、基準となる接続道路Rnを設定する(ステップS2−2)。最初は、基準道路番号nは「1」であるため、ナビゲーション装置1が搭載された車両Cが走行する接続道路R1を設定する。
【0035】
さらに、CPU10は、接続道路R1の進入路R1aが渋滞(又は混雑)しているか否かを判断する(ステップS2−3)。このとき、CPU10は、通信部14が取得した交通関連データT内のVICSリンク、渋滞データ等に基づき、接続道路R1の進入路R1aが渋滞又は混雑しているか否かを判断する。
【0036】
接続道路R1の進入路R1aが渋滞又は混雑していないと判断すると(ステップS2−3においてNO)、基準道路番号nに「1」を加算して更新する(ステップS2−4)。また、CPU10は、経路データ17に基づき、ロータリー100に接続する全ての道路数を、接続道路数Naとする。例えば、図6に示すロータリー100では、接続道路数Naは「4」になる。
【0037】
そして、CPU10は、ステップS2−4で更新した基準道路番号nが、接続道路数Naよりも大きいか否かを判断する(ステップS2−5)。ここでは、基準道路番号nは「2」になっているので、接続道路数Na「4」以下であると判断して、ステップS2−2に戻る。ステップS2−2では、基準道路番号nが「2」になっているので、接続道路R2を基準の道路とする。そして、接続道路R1〜R4の進入路R1a〜R4aのうち、渋滞又は混雑した進入路が検出されるまで上記した処理を繰り返す。全ての進入路R1a〜R4aが渋滞又は混雑していないと判断した場合には、ステップS2−4において、基準道路番号nが「5」に更新される。そして、CPU10は、ステップS2−5において、基準道路番号nが接続道路数Na「4」よりも大きいと判断し、ステップS1−5(図4参照)に進む。
【0038】
一方、接続道路R1の進入路R1aが渋滞又は混雑していると判断した場合には(ステップS2−3においてYES)、渋滞データに基づき、退出路R1b〜R4bの渋滞状況又は混雑状況を取得する(ステップS2−6)。さらに、渋滞状況又は混雑状況に基づき、渋滞(又は混雑)している退出路があるか否かを判断する(ステップS2−7)。渋滞又は混雑している退出路がないと判断すると(ステップS2−7においてNO)、ステップS1−5(図4参照)に進む。
【0039】
渋滞又は混雑している退出路があると判断すると(ステップS2−7においてYES)、その退出路のうち、基準の接続道路R1から最も遠い渋滞退出路Jmを検出する(ステ
ップS2−8)。例えば、ステップS2−6において、接続道路R2〜R4のうち、接続道路R2の退出路R2bのみ、又は接続道路R3の退出路R3bのみ、又は接続道路R4の退出路R4bのみが渋滞又は混雑していた場合には、退出路R2b,R3b,R4bをそれぞれ渋滞退出路J2,J3,J4とする。また、2つの接続道路R2,R3の退出路R2b,R3bが、ともに渋滞又は混雑していた場合には、接続道路R1から経路上遠い方の接続道路R3の退出路R3bを渋滞退出路J3とする。3つの退出路R2b〜R4bが全て渋滞又は混雑していた場合には、経路上最も遠い退出路R4bを渋滞退出路J4とする。
【0040】
次に、CPU10は、基準の接続道路R1から渋滞退出路Jmに至るリンクLnに対する渋滞コスト11b(図1参照)を高く(コストアップ)する(ステップS2−9)。ステップS2−7において接続道路R2の退出路R2bが渋滞退出路J2に設定された場合、接続道路R1の進入路R1aから接続道路R2の退出路R2bまでが渋滞又は混雑していることが想定される。このため、図6に示すロータリー100内の周回道路において、接続道路R1から接続道路R2(渋滞退出路J2)までのリンクL1の渋滞コスト11bを、渋滞を示す値又は混雑を示す値に更新する。そして、その渋滞コスト11bとリンクL1とを関連付けて、RAM11に記憶する。
【0041】
接続道路R3の退出路R3bが渋滞退出路J3である場合、接続道路R1の進入路R1aから接続道路R3の退出路R3bまで経路が渋滞又は混雑していると想定される。このため、接続道路R1から接続道路R3(渋滞退出路J3)までのリンクL1及びリンクL2の渋滞コスト11bを、渋滞を示す値又は混雑を示す値に更新する。即ち、渋滞又は混雑が発生した進入路R1aから、渋滞又は混雑が発生した退出路のうち最も遠い渋滞退出路Jmまでのロータリー100内の周回道路は、渋滞道路又は混雑道路である可能性が高い。このため、その周回道路に対応するリンクLnの渋滞コスト11bを大きくして、周回道路を通行する際にかかる時間を長く設定する。
【0042】
そして、渋滞コスト11bをコストアップすると、CPU10は、案内経路に関わるロータリー100内の周回道路について、渋滞コスト11bの設定を終了したか否かを判断する(ステップS2−10)。ここでは、ロータリー100の1周分の渋滞コスト11bを演算していないと判断する。そして、RAM11に記憶した基準道路番号nに、渋滞道路番号mの値を入力して(即ち、n=m)、基準道路番号nを更新し(ステップS2−11)、ステップS2−2に戻る。
【0043】
ステップS2−2に戻ると、更新した基準道路番号nに基づき、基準となる接続道路Rnを設定する。基準道路番号nが、例えば「3」である場合には、新たに基準とする接続道路Rnを、接続道路R3とする。さらに、CPU10は、接続道路R3の進入路R3aが渋滞又は混雑しているか否かを判断し(ステップS2−3)、渋滞又は混雑している場合には(ステップS2−3においてYES)、交通関連データTに基づき、全ての退出路の渋滞又は混雑状況を取得する(ステップS2−6)。
【0044】
さらに、CPU10は、混雑している退出路があるか否かを判断し(ステップS2−7)、渋滞又は混雑している退出路があると判断した場合には(ステップS2−7においてYES)、今回基準としている接続道路R3から最も遠い退出路(例えば、退出路R2b)を、渋滞退出路Jmとする。
【0045】
そして、CPU10は、基準としている接続道路R3から、渋滞退出路J2(接続道路R2)までのリンクL3,L4,L1に対する渋滞コスト11bを、コストアップする(ステップS2−9)。尚、一度コストアップした渋滞コスト11bは、それ以上コストアップしない。コストアップする渋滞コスト11bの重複等があると、CPU10は、1周
分の渋滞コスト11bを算出したと判断して、演算を終了すると判断し(ステップS2−10においてYES)、ステップS1−5に進む。
【0046】
図4に示すステップS1−5では、CPU10は、渋滞コスト11bに基づき、目的地までの案内経路を再探索する。例えば、経路データ17のリンクコスト17dに渋滞コスト11bを加算する等、渋滞コスト11bを加味して案内経路を再探索する。そして、RAM11に記憶された探索履歴データ11aに基づく過去に探索した経路と、新たに探索した案内経路との間に変更があるか否かを判断する(ステップS1−6)。変更がないと判断した場合には(ステップS1−6においてNO)、ステップS1−8に進み、案内を終了するか否かを判断する。案内を終了しないと判断すると(ステップS1−8においてNO)、ステップS1−1に戻る。
【0047】
変更があると判断した場合には(ステップS1−6においてYES)、経路変更の案内を行う(ステップS1−7)。具体的には、CPU10は、画像プロセッサ20を制御して、新たに探索した経路を示す地図描画データ18を地理データ記憶部16から読出す。そして、地図描画データ18と、車両Cの現在位置を示す指標データ、経路を示す経路指標データ、案内表示データをディスプレイ25に出力する。その結果、図7に示す地図画面25aがディスプレイ25に表示される。地図画面25aには、自車位置周辺の地図に、自車位置を示す現在位置指標25bが重畳されて表示されている。また、ロータリー100を回避する経路を示す経路指標25cと、経路変更を通知する、案内情報としての変更通知表示25dとが表示されている。さらに、CPU10は、音声プロセッサ19を制御して、案内経路の変更を通知する、案内情報としての変更通知音声26aをスピーカ26から出力する。地図画面25a、変更通知音声26a等を出力すると、CPU10は、案内終了か否かを判断し(ステップS1−8)、案内終了でない場合には(ステップS1−8においてNO)、ステップS1−1に戻る。
【0048】
一方、図4に示すように、ステップS1−2において、ナビゲーション装置1が経路を探索せず、車両Cの現在位置周辺を案内するモードであると判断すると(ステップS1−2においてNO)、CPU10は、経路データ17に基づいて、車両Cから所定距離範囲内にロータリー100があるか否かを判断する(ステップS1−9)。この所定距離は、車両Cを中心とした距離範囲であって、例えば5km〜10kmの範囲である。渋滞コスト設定処理の対象となるロータリー100があると判断すると(ステップS1−9においてYES)、上記した渋滞コスト設定処理と同様に、交通関連データTに基づいて、ロータリー100内のリンクLnに対し渋滞コスト11bの設定を行う(ステップS1−10)。
【0049】
渋滞コスト設定処理を終了すると、CPU10は、その渋滞コスト11bに基づいて、ロータリー100内が渋滞又は混雑しているか否かを判断する(ステップS1−11)。ロータリー100の渋滞コスト11bに基づき、ロータリー100内が渋滞又は混雑していないと判断すると(ステップS1−11においてNO)、ステップS1−8に進む。
【0050】
ロータリー100内が渋滞又は混雑していると判断すると(ステップS1−11においてYES)、CPU10は、渋滞又は混雑を通知する(ステップS1−12)。例えば、CPU10は、図8に示すような地図画面25aを表示し、渋滞又は混雑が発生している位置に、渋滞を示す渋滞指標25eを表示する。また、地図画面25aに、「前方のロータリーが混んでいます」等の案内情報としての渋滞案内表示25fを重畳する。さらに、CPU10は、音声プロセッサ19を制御して、スピーカ26から「前方のロータリーが混んでいます」等の案内情報としての案内音声26bを出力する。このように、渋滞又は混雑を通知すると、ステップS1−8に進み、案内が終了したか否かを判断する。目的地に到着又は操作スイッチ27等の入力操作が行われた場合には、案内終了であると判断し
て(ステップS1−8においてYES)、処理を終了する。
【0051】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、ナビゲーション装置1は、通信部14により、ロータリー100に対する進入路及び退出路に関する交通関連データTを受信して、渋滞又は混雑が発生している進入路又は退出路を検出するようにした。そして、渋滞又は混雑が発生している進入路と、渋滞又は混雑が発生している退出路との間の渋滞コスト11bをコストアップして、その進入路と退出路の間を通行する際にかかるコスト(時間)を大きく設定するようにした。このため、ロータリー100内の交通状況に関するデータを取得不可能である場合にも、ロータリー100内の渋滞コスト11bが設定することができる。従って、渋滞コスト11bに応じた経路案内を行うことができる。
【0052】
(2)上記実施形態では、渋滞又は混雑が検出された退出路のうち、ナビゲーション装置1が走行しているロータリー100への進入路から最も遠い退出路を、渋滞退出路Jmとして設定するようにした。そして、基準となる接続道路Rnと、渋滞退出路Jmとの間のリンクLnに対する渋滞コスト11bをコストアップするようにした。このため、ロータリー100内の渋滞又は混雑が発生している周回道路、又は渋滞又は混雑の発生の可能性の高い周回道路に対する渋滞コスト11bを漏れなくコストアップすることができる。
【0053】
(3)上記実施形態では、ナビゲーション装置1が目的地までの経路案内を行っている場合に、新たに設定された渋滞コスト11bを加味して、目的地までの経路を再探索するようにした。また、再探索により案内経路が変更された場合には、変更を地図画面25a、変更通知音声26aで通知するようにした。このため、ロータリー100内の案内経路に関わる部分が渋滞又は混雑していたとき、ドライバーは、変更された案内経路に従うことによって、その渋滞又は混雑を回避することができる。
【0054】
(4)上記実施形態では、ナビゲーション装置1が、経路探索を行わず、単に自車位置周辺を案内している場合に、車両C前方のロータリー100を検出し、ロータリー100に繋がる全ての接続道路R1〜R4を渋滞コスト設定処理の対象とするようにした。そして、ロータリー100に渋滞又は混雑が生じている場合、地図画面25aにロータリー100内の渋滞又は混雑状況を示す地図画面25a、案内音声26bを出力するようにした。このため、ロータリー100内の全領域の渋滞又は混雑状況を把握できるので、渋滞又は混雑を円滑に回避することができる。
【0055】
尚、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のナビゲーション装置1はVICSを用いているが、他の通信システムを用いることができる。例えば、ナビゲーション装置1が欧州を走行する車両Cに搭載される場合には、FM多重放送を用いるRDS/TMC(Radio Data System/Traffic Message Channel)を用いることができる。
【0056】
・上記実施形態では、経路データ17及び地図描画データ18を、図2及び図3に示すデータ構造にしたが、これ以外のデータ構造でもよい。
・上記実施形態では、ナビゲーション装置1が経路探索を行っていない場合にも、ユーザによって目的地が新たに入力された場合には、RAM11に記憶された渋滞コスト11bを用いて、経路を探索するようにしてもよい。
【0057】
・上記実施形態では、ステップS2−3において、基準となる進入路R1a〜R4aの渋滞又は混雑を判断し、渋滞又は混雑している場合には(ステップS2−3においてYES)、渋滞コストの設定に進むようにした。これ以外に、ステップS2−3を省略し、基準となる接続道路R1〜R4の退出路R1b〜R4bに対し、順番に渋滞又は混雑状況を
判断するようにしてもよい。例えば退出路R2bが混雑していた場合には、その退出路R2bよりも下流のリンクL1に対し、渋滞コスト11bをコストアップするようにしてもよい。そして、次に退出路R3bの渋滞又は混雑状況を判断し、渋滞又は混雑している場合には、リンクL2に対する渋滞コスト11bをコストアップする。さらに、退出路R4b,R1bについても、渋滞又は混雑状況を判断し、リンクL3,L4に対する渋滞コスト11bのコストアップ可否を判断する。
【0058】
・上記実施形態では、算出した渋滞コスト11bを、車々間通信によって、他車両に配信するようにしてもよい。或いは、基地局等に送信して、路車間通信により、他車両に配信するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態のナビゲーション装置のブロック図。
【図2】経路データの説明図。
【図3】地図描画データの説明図。
【図4】本実施形態の処理手順の説明図。
【図5】本実施形態の処理手順の説明図。
【図6】ロータリーの説明図。
【図7】渋滞案内の画面及び音声の説明図。
【図8】渋滞案内の画面及び音声の説明図。
【符号の説明】
【0060】
1…ナビゲーション装置、10…状況検出手段、コスト更新手段及び探索手段としてのCPU、11b…コストとしての渋滞コスト、14…通信手段としての通信部、16…道路データ記憶手段としての地理データ記憶部、17…道路データとしての経路データ、20…案内出力制御手段としての画像プロセッサ、25a…案内情報としての地図画面、25d…案内情報としての変更通知表示、25f…案内情報としての渋滞案内表示、26a…案内情報としての変更通知音声、100…環状交差点としてのロータリー、C…車両、R1a〜R4a…進入路、R1b〜R4b…退出路、T…交通関連データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路データを記憶した道路データ記憶手段と、交通関連データを外部から受信する通信手段とを用いて、環状交差点の渋滞又は混雑を検出するための交通状況検出方法であって、
環状交差点に対する進入路及び退出路の交通関連データを前記通信手段により取得して、渋滞又は混雑が発生している進入路及び退出路を検出するとともに、検出した進入路と退出路に基づいて、前記環状交差点内の周回道路を渋滞道路又は混雑道路であると判断することを特徴とする交通状況検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の交通状況検出方法において、
渋滞又は混雑が発生している前記進入路と前記退出路との間の周回道路を、渋滞道路又は混雑道路であると判断することを特徴とする交通状況検出方法。
【請求項3】
車両に搭載されたナビゲーション装置において、
道路データを記憶した道路データ記憶手段と、
交通関連データを外部から受信する通信手段と、
環状交差点に対する進入路及び退出路の前記交通関連データを取得して、渋滞又は混雑が発生している進入路及び退出路を検出する状況検出手段と、
検出した進入路と退出路とに基づいて、前記環状交差点内の周回道路のコストを更新するコスト更新手段と
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載のナビゲーション装置において、
前記コスト更新手段は、
渋滞又は混雑が発生している前記進入路と前記退出路との間の周回道路のコストを更新することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項4に記載のナビゲーション装置において、
前記コスト更新手段は、
渋滞又は混雑が発生している退出路のうち、渋滞又は混雑が発生している進入路から最も遠い退出路を検出し、その退出路と前記進入路との間の周回道路のコストを更新することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、
現在位置から目的地までの案内経路を探索する探索手段を備えるとともに、
前記探索手段は、更新された環状交差点内のコストに基づき、案内経路を探索することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項6に記載のナビゲーション装置において、
前記探索手段は、前記車両が環状交差点に接近した際に、更新された前記環状交差点内のコストに基づき、案内経路を再探索することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、
環状交差点内の渋滞又は混雑に関する案内情報を出力する案内出力制御手段をさらに備えたことを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−178219(P2007−178219A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375820(P2005−375820)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】