説明

人工呼吸装置および人工呼吸装置用空気ポンプ

【課題】 吸気を安定して患者に供給する人工呼吸装置を提供する。
【解決手段】 ほぼ円筒状の軸線方向に伸縮可能なベローズ11を含んで人工呼吸装置用ポンプを構成する。このベローズ11は、可撓性を有して円筒状に形成される膜73と、軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並ぶ複数の第1リング74と、第1リング74と交互に軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並び、前記第1リング74よりも小径に形成される複数の第2リング73とを備える。これによってベローズの断面積の変化を最小に保つことができるとともにベローズのばね定数をほぼゼロとすることができ、患者に吸気を安定して円滑に供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の肺の換気機能を支援するための人工呼吸装置および人工呼吸装置用空気ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
このような患者のための人工呼吸装置は、病院での使用は言うまでもなく、在宅介護を行うためにも、必要になっている。典型的な先行技術は特許文献1に開示される。この先行技術では、シリンダ内で変位可能に設けられたピストンを往復駆動するリニア駆動モータを、ピストンに関してシリンダヘッドとは反対側に配置して構成される。
【0003】
この先行技術では、シリンダの軸線とピストンの軸線とが一直線上に存在している状態でピストンが円滑に変位されなければならず、さもなければ患者の吸気を円滑に供給することができず、この目的を達成するためにピストンはシリンダの内周面に比較的長い距離を有して案内される。このことによってもまた大形化するという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特許第2714288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、構成の小形化を図ることができるようにした人工呼吸装置および人工呼吸装置用空気ポンプを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、患者に吸気を安定して円滑に供給することができるようにした人工呼吸装置および人工呼吸装置用空気ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)予め定める軸線方向に伸縮可能なほぼ筒状のベローズであって、
(a1)円筒状に形成され、可撓性を有する膜と、
(a2)前記膜の内周面に形成され、軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並ぶ複数の第1リングと、
(a3)前記膜の外周面に形成され、第1リングと交互に軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並び、前記第1リングよりも小径に形成される複数の第2リングとを備えるベローズと、
(b)ベローズの軸線方向一端部に連結され、ベローズの前記一端部を軸線方向に往復駆動する駆動手段と、
(c)ベローズの軸線方向他端部が固定される基体と、
(d)基体に設けられ、外部の空気をベローズの内部空間に導く給気逆止弁と、
(e)基体に設けられ、ベローズの前記内部空間内の空気を患者の吸気として導く吐出逆止弁とを含むことを特徴とする人工呼吸装置用空気ポンプである。
【0008】
また本発明は、(a)予め定める軸線方向に伸縮可能なほぼ筒状のベローズであって、
(a1)円筒状に形成され、可撓性を有する膜と、
(a2)前記膜に同軸に一体化され、軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並ぶ複数の第1リングと、
(a3)前記膜に同軸に一体化され、第1リングと交互に軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並び、前記第1リングよりも小径に形成される複数の第2リングとを備えるベローズと、
(b)ベローズの軸線方向一端部に連結され、ベローズの前記一端部を軸線方向に往復駆動する駆動手段と、
(c)ベローズの軸線方向他端部が固定される基体と、
(d)基体に設けられ、外部の空気をベローズの内部空間に導く給気逆止弁と、
(e)基体に設けられ、ベローズの前記内部空間内の空気を患者の吸気として導く吐出逆止弁とを含むことを特徴とする人工呼吸装置用空気ポンプである。
【0009】
また本発明は、(a)予め定める軸線方向に伸縮可能なほぼ筒状のベローズであって、
(a1)軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並ぶ複数の大径筒部と、
(a2)大径筒部と交互に軸線方向にそれぞれ並ぶとともに軸線方向に間隔あけてそれぞれ並び、大径筒部よりも小径に形成される複数の小径筒部と、
(a3)可撓性を有し、前記大径筒部と前記小径筒部との間に介在され、大径筒部と小径筒部との半径方向の隙間を塞ぐ膜とを備えるベローズと、
(b)ベローズの軸線方向一端部に連結され、ベローズの前記一端部を軸線方向に往復駆動する駆動手段と、
(c)ベローズの軸線方向他端部が固定される基体と、
(d)基体に設けられ、外部の空気をベローズの内部空間に導く給気逆止弁と、
(e)基体に設けられ、ベローズの前記内部空間内の空気を患者の吸気として導く吐出逆止弁とを含むことを特徴とする人工呼吸装置用空気ポンプである。
【0010】
また本発明は、ベローズの軸線方向の伸縮速度を検出する速度検出手段と、
速度検出手段の出力に応答し、検出される伸縮速度が高くなるにつれて、駆動手段の駆動力を減少させる駆動制御手段とを含むことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記人工呼吸装置用ポンプと、
吐出逆止弁に接続され、ベローズの内部空間内の空気を患者の吸気として患者に導くための吸気管路と、
患者の呼気を大気放散するための呼気管路と、
前記呼気管路に介在される呼気弁手段とを含むことを特徴とする人工呼吸装置である。
【0012】
また本発明は、人工呼吸装置用ポンプに用いられ、予め定める軸線方向に伸縮可能なほぼ筒状のベローズであって、
円筒状に形成され、可撓性を有する膜と、
前記膜に同軸に一体化され、軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並ぶ複数の第1リングと、
前記膜に同軸に一体化され、第1リングと交互に軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並び、前記第1リングよりも小径に形成される複数の第2リングとを備えることを特徴とするベローズである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ほぼ筒状のベローズを、駆動手段によって、ベローズの軸線方向に往復駆動し、給気逆止弁と吐出逆止弁との働きによって患者に肺の換気機能を支援する空気を、吸気として供給することができる。
【0014】
駆動手段によってベローズが伸張されると、ベローズの内部空間がベローズの外方空間に対して負圧になる。これによってベローズの外方空間の空気が、給気逆止弁を経てベローズの内部空間に吸引される。駆動手段によってベローズが縮退されると、ベローズの内部空間がベローズの外方空間に対して正圧になる。これによってベローズの内部空間の空気が、吐出逆止弁を経て患者に導かれる。
【0015】
本発明では、ベローズ伸張時では各リングの軸線方向の間隔が広がり、ベローズ縮退時では各リングの軸線方向の間隔が狭まる。ベローズがこのような各リングを有するので、伸縮時においてベローズの内部空間の圧力が正圧または負圧になっても、ベローズの断面積の変化を最小に保つことができる。これによって患者に吸気を安定して円滑に供給することができる。
【0016】
またベローズを伸縮する場合に、ベローズのばね定数をほぼゼロとすることができる。これによって吸気圧力に誤差が生じることを防いで、正確な吸気圧力を達成することができ、所望の吸気を患者に供給することができる。
【0017】
本発明によれば、ほぼ筒状のベローズを、駆動手段によって、ベローズの軸線方向に往復駆動し、給気逆止弁と吐出逆止弁との働きによって患者に肺の換気機能を支援する空気を、吸気として供給することができる。
【0018】
駆動手段によってベローズが伸張されると、ベローズの内部空間がベローズの外方空間に対して負圧になる。これによってベローズの外方空間の空気が、給気逆止弁を経てベローズの内部空間に吸引される。駆動手段によってベローズが縮退されると、ベローズの内部空間がベローズの外方空間に対して正圧になる。これによってベローズの内部空間の空気が、吐出逆止弁を経て患者に導かれる。
【0019】
本発明では、ベローズ伸張時では各リングの軸線方向の間隔が広がり、ベローズ縮退時では各リングの軸線方向の間隔が狭まる。ベローズがこのような各リングを有するので、伸縮時においてベローズの内部空間の圧力が正圧または負圧になっても、ベローズの断面積の変化を最小に保つことができる。これによって患者に吸気を安定して円滑に供給することができる。
【0020】
また可撓性を有する膜に各リングが同軸に配置されることで、ベローズを伸縮する場合に、ベローズのばね定数をほぼゼロとすることができる。これによって吸気圧力に誤差が生じることを防いで、正確な吸気圧力を達成することができ、所望の吸気を患者に供給することができる。
【0021】
本発明によれば、ほぼ筒状のベローズを、駆動手段によって、ベローズの軸線方向に往復駆動し、給気逆止弁と吐出逆止弁との働きによって患者に肺の換気機能を支援する空気を、吸気として供給することができる。
【0022】
駆動手段によってベローズが伸張されると、ベローズの内部空間がベローズの外方空間に対して負圧になる。これによってベローズの外方空間の空気が、給気逆止弁を経てベローズの内部空間に吸引される。駆動手段によってベローズが縮退されると、ベローズの内部空間がベローズの外方空間に対して正圧になる。これによってベローズの内部空間の空気が、吐出逆止弁を経て患者に導かれる。
【0023】
本発明では、ベローズ伸張時では、隣接する大径筒部の間の軸線方向間隔と、隣接する小径筒部の間の軸線方向間隔とがそれぞれ広がる。またベローズ縮退時では、隣接する大径筒部の間の軸線方向間隔と、隣接する小径筒部の間の軸線方向間隔とがそれぞれ狭まる。ベローズがこのような各筒部を有するので、伸縮時においてベローズの内部空間の圧力が正圧または負圧になっても、ベローズの断面積の変化を最小に保つことができる。これによって患者に吸気を安定して円滑に供給することができる。
【0024】
また可撓性を有する膜が、大径筒部と小径筒部との半径方向の隙間を塞ぐことで、ベローズを伸縮する場合に、ベローズのばね定数をほぼゼロとすることができる。これによって吸気圧力に誤差が生じることを防いで、正確な吸気圧力を達成することができ、所望の吸気を患者に供給することができる。
【0025】
本発明によれば、速度検出手段によってベローズの軸線方向の伸縮速度を検出し、こうして検出された伸縮速度が高いときに、駆動制御手段による駆動手段の駆動力を減少し、これによってベローズの高速度伸縮時にベローズが自励振動を生じることを防ぐ。これによってベローズを含む可動部分の構成要素によって構成される発振系の安定化を図り、ベローズの軸線方向の伸縮速度を、予め定める値に正確に追従させることができるようになる。
【0026】
速度検出手段は、ベローズの軸線方向の位置を検出する位置検出器と、その位置検出器の出力の時間変化率を演算する演算器とを含む構成によって実現されてもよいけれども、本発明の実施の他の形態では、ベローズの速度を直接に検出する構成であってもよく、そのほかの構成であってもよい。
【0027】
本発明によれば、ベローズを縮退させることで、吸気管路を経て患者に吸気を導くことができる。また患者から排出される呼気が呼気管路を経て大気放散される。ベローズを伸張させた場合には、人工呼吸装置用ポンプに吐出逆止弁が設けられるので、吸気管路内の空気が吸引されることなく、吸気逆止弁を経てベローズ内に空気が流入する。上述したように、人工呼吸装置の一部に本発明の人工呼吸装置用空気ポンプを用いることで、患者に吸気を安定して円滑に供給することができる。
【0028】
本発明によれば、ベローズ伸張時では各リングの軸線方向の間隔が広がり、ベローズ縮退時では各リングの軸線方向の間隔が狭まる。ベローズがこのような各リングを有するので、伸縮時においてベローズの内部空間の圧力が正圧または負圧になっても、ベローズの断面積の変化を最小に保つことができる。これによって人工呼吸装置用空気ポンプに本発明のベローズを用いることで、人工呼吸装置用空気ポンプは、患者に吸気を安定して円滑に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明に関連する実施の一形態である人工呼吸装置用空気ポンプ2の構成を簡略化して示す断面図である。この図1に示される人工呼吸装置用空気ポンプ(以後、空気ポンプと略称する)2からの空気は、予め定める圧力で患者に吸気として供給される。
【0030】
図2は、図1に示される空気ポンプ2を含む人工呼吸装置1の全体の構成を示す系統図である。空気ポンプ2には、外部の空気が入口3から吸入され、管路4から管路5を経て矢符6で示されるように吸気が患者に供給される。患者の呼気は、矢符7で示されるように管路5に排出され、管路8から呼気弁手段9を経て大気放散される。
【0031】
空気ポンプ2において、ほぼ直円筒状のベローズ11は、軸線12方向(図1の左右方向)に伸縮可能である。ベローズ11は、たとえばゴムまたは合成樹脂などの材料から成り、可撓性を有する。ベローズ11は、蛇腹状であり、その断面はジグザグに形成される。ベローズ11の軸線方向一端部には、剛性の端板13が固定される。ベローズ11の軸線方向他端部は、固定位置に設けられる基体14の基部14aに固定される。基体14は、基部14aと後述の連結部材55とを含んで構成される。外部からの空気の入口3とベローズ11の内部空間15との間には、給気逆止弁16が介在される。この給気逆止弁16は、弁座17に着座し、また離間する弁体18と、弁体18を弁座17に向けてばね力を与えるばね19とを含む。基体14の基部14aにはまた、吐出逆止弁21が設けられる。この吐出逆止弁21は、基部14aに形成された弁座22とその弁座22に着座することができる弁体23と、弁体23を弁座22に向けてばね力を与えるばね24とを含む。
【0032】
ベローズ11を伸縮駆動するために、駆動手段26が設けられる。この駆動手段26は、ベローズ11の前記一端部の端板13に取付部材27を介して固定されるコイル28と、このコイル28に、ベローズ11の軸線12方向の移動範囲内で直流磁界を与える磁界発生手段である永久磁石片29とを含む。コイル28は、軸線12と同一軸線を有する環状体であり、この実施の形態ではたとえば直円筒状に形成される。永久磁石片29は、一方の磁極(たとえばN)を有する磁石部材31と、他方の磁極(たとえばS)を有するもう1つの磁石部材32と、これらの磁石部材31,32の前記軸線12方向の一端部で連結する強磁性材料から成る連結片33とを含む。磁石部材31,32は、直円筒状であり、磁石部材31が磁石部材32の半径方向外方に間隔をあけて同心円状に配置される。これらの磁石部材31,32間の空間34には、半径方向に、均一な直流磁界が形成される。この磁界内に、コイル28が存在する。したがって、コイル28に直流電流が供給されることによって、コイル28および端板13には、軸線12の方向の電磁力が、フレミング左手の法則に従って発生し、こうしてベローズ11は、軸線12方向の前後に往復駆動される。コイル28および磁石部材31,32は、軸線12を共通の軸線とする。
【0033】
基体14の基部14aには、直円柱状の案内部材35の基端部が固定される。この案内部材35は、端板13を挿通し、軸線方向外方(図1の右方)に突出する。端板13には、案内部材35の外周面に低摩擦力で接触する軸受37が設けられる。軸受37は、アキシャルベアリングであり、端板13を案内部材35に沿って軸線12の方向に案内する。案内部材35は、前述の軸線12と同一軸線を有する。これによってベローズ11は、軸線12の垂直な半径方向の芯ずれを生じることなく、ベローズ11が円滑に伸縮変位することができるようになる。したがって、コイル28と磁石部材31,32との接触を防止することができる。端板13には、帽状のカバー38が固定され、案内部材35の遊端部39を均一に覆う。
【0034】
基体14の基部14aには、端板13の位置、すなわちベローズ11の前記一端部の軸線12に沿う位置を検出する位置検出器41が設けられる。この位置検出器41は、たとえば端板13に固定された強磁性材料から成る可動片と、基部14aに連結部材55を介して固定されるコイルとを含む差動トランスなどによって実現されてもよく、そのほかの構成によって実現されてもよい。
【0035】
駆動手段26のコイル28には、図2に示される駆動制御手段43から励磁電力が供給され、これによってコイル28に電磁力が発生し、ベローズ11の駆動力が得られる。この駆動力は、設定回路44によって調整自在に設定することができる。コイル28に励磁電流が与えられることによって、ベローズ11は図1の縮小位置から、カバー38の参照符45で示される伸長位置まで変位することができ、またその逆方向に変位することができる。
【0036】
患者が肺の換気機能を行うとき、吸気は、ベローズ11の内部空間15内の空気が、吐出逆止弁21を経て管路4,5から矢符6で示されるように供給される。駆動手段26のコイル28に与えられる電流を、駆動制御手段43によって適切に定めることによって、吸気の圧力を適切に設定することができる。患者の呼気が管路5,8を経て呼気弁手段9から大気放散されるとき、駆動手段26は、駆動制御手段43によって制御され、ベローズ11が図1の右方に伸長される。これによって外部の空気は、入口3から給気逆止弁16を経てベローズ11の内部空間15に吸入される。こうして患者の吸気と呼気との各期間に一致するようにして、空気ポンプ2から空気が間欠的に供給されることになる。
【0037】
上述の実施の形態では案内部材35は、ベローズ11の軸線12と同軸に配置されているけれども、本発明の実施の他の形態では、ベローズ11の軸線12を含む図1の紙面内である一仮想平面内で、軸線12に平行な軸線を有する1または複数の案内部材35が、端板13を挿通して設けられるように構成されてもよい。また永久磁石片29は、磁界発生手段を構成し、直流電力によって励磁される電磁石によって実現されてもよい。
【0038】
図3は、本発明に関連する実施の他の形態である空気ポンプ46の断面図である。この空気ポンプ46は、前述の図1に示される空気ポンプ2に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。特にこの実施の形態では、駆動手段47は、ベローズ11の内部空間15内に設けられる。この駆動手段47は、前述の駆動手段26と同様な構成を有し、軸線12と同一軸線を有する。このような構成によれば、空気ポンプ46をさらに小形化することができる。
【0039】
図4は、本発明に関連する実施のさらに他の形態である空気ポンプ50の断面図である。この実施の形態は、前述の図1に示される実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。注目すべきはこの実施の形態ではベローズ11の端板13にさらに、呼気制御用空気源51が設けられる。
【0040】
この呼気制御用空気源51の管路52から供給される呼気制御用空気は、前述の図2に示される呼気弁手段9に与えられ、患者の呼気に、大気圧よりも高い気道圧力を加える働きをする。呼気制御用空気源51は、前述の空気ポンプ2と類似の構成を有し、呼気用ベローズ53と基部4bとを備える。この呼気用ベローズ53は、ほぼ直円筒状に構成され、その軸線54方向の一端部は、端板13に連結される。ベローズ53の他端部は、基部14bに固定される。この基部14bは、連結部材55aによって、前述の基部14aに固定される。こうして基部14a,14b,連結部材55aは、一体的に構成されて基体110を形成する。基体110の基部14bには、給気逆止弁57と吐出逆止弁58とが設けられる。給気逆止弁57は、基部14bに形成された弁座61に着座することができる弁体62と、その弁体62を弁座61に向けてばね力を与えるばね63とを含む。吐出逆止弁58は、基部14bに形成された弁座64と、この弁座64に着座することができる弁体65と、弁体65を弁座64に向けてばね力を与えるばね66とを含む。
【0041】
図5は、図4に示される空気ポンプ50の動作を説明するための図である。図5(1)は患者の吸気と呼気の肺の換気機能を示す図である。図5(2)は基部14aの給気逆止弁16と基部14bの吐出逆止弁58との開閉動作を示す図である。さらに図5(3)は基部14aの吐出逆止弁21と基部14bの給気逆止弁57との開閉動作を示す図である。図5(4)は、呼気弁手段9の開閉動作を示す図である。吐出逆止弁21から管路4を経て吸気が供給される時刻t1〜t2では、ベローズ11は縮小し、このとき呼気制御用空気源51のベローズ53は伸長し、したがってそのベローズ53の内部空間68には、給気逆止弁57を介して外部の空気が導入される。患者の呼気の時刻t2〜t3の期間では、ベローズ11が伸長され、このときベローズ53が縮小され、ベローズ53の内部空間68内の空気は、吐出逆止弁58から管路52を経て呼気弁手段9に与えられ、これによって患者には、大気圧よりも高い気道圧力、いわゆる呼気終末陽圧(PEEP)が加えられる。
【0042】
図6は、本発明に関連する実施の他の形態である空気ポンプ71の簡略化した断面図である。この実施の形態は前述の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。注目すべきはこの実施の形態では、ベローズ11の端板13は、連結接続部材72を介して、このベローズ11の軸線12の延長線上に配置された駆動手段26のコイル28に連結される。ベローズ11を軸線12に沿って芯ずれを生じることなく伸縮変位するために、1または複数(この実施の形態では2)の案内部材35が設けられる。そのほかの構成は、前述の実施の形態と同様である。このような実施の形態によってもまた、ベローズ11を軸線12に沿って円滑に変位して駆動手段26によって駆動することができる。
【0043】
図7は、本発明の実施の一形態である人工呼吸装置用空気ポンプ71の構成を簡略化して示す断面図である。この実施の形態は、前述の図1〜図6に示される実施の形態、特に図6の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。ベローズ11の軸線12の延長線上に、駆動手段26が配置される。
【0044】
図8は、図7に示される空気ポンプ71のベローズ11の一部拡大断面図である。ベローズ11は、薄いゴムまたは合成樹脂などの材料から成る円筒状の膜73と、この膜73の内周面に形成された無端環状のリング74と、膜73の外周面に配置されるリング74よりも小径のリング75とが、軸線12方向に交互に間隔をあけて配置して構成される。この結果、ベローズ内の圧力が大きく正圧または負圧になってもベローズ11の断面積の変化を最小に保つことができる。こうしてベローズ11には、軸線12方向のばね力を生じないようにし、したがってばね定数をほぼ零とすることができる。これによって駆動手段26によって吸気に正確な圧力を与えることができるようになり、ベローズ11のばね力によって吸気圧力に誤差が生じることがなく、正確な吸気圧力を達成することができる。
【0045】
図9は、本発明の実施の他の形態のベローズ11の一部の断面図である。この実施の形態は、前述の図7および図8に示される実施の形態に類似する。注目すべきはこの実施の形態では、円筒状薄膜73には、リング74,75が埋設して成形されて構成される。また、円筒状薄膜73、リング74,75は一体化されたものでもよい。これによってリング74,75の位置が、膜73から軸線12方向にずれる恐れがない。
【0046】
図10は、本発明に関連する実施の形態の空気ポンプ76の断面図である。この空気ポンプ76は、前述の図1〜図9の実施の形態に類似し、特に図6〜図9の実施の形態に類似する。注目すべきはこの実施の形態では、ベローズ77は、軸線12方向に厚みが変化されて構成される。
【0047】
図11は、図10に示されるベローズ77の一部の拡大断面図である。ベローズ77は、可撓性を有する環状の膜部分78,79と、これらの膜部分78,79間に連なる剛性の中空円錐台部81,82とを含む。さらにベローズ77は、基体14に連なる剛性の筒部83と、端板13に連なる筒部84とを含む。このような構成を有するベローズ77によってもまた、吸気の圧送を実現することができる。
【0048】
図12は、本発明に関連する実施のさらに他の形態の空気ポンプ87の断面図である。この実施の形態では、基体111に形成された凹所が内部空間15とされ、環状の可撓性部分88が剛性のリング88aと端板13との間に介在されてダイヤフラム89が構成される。そのほかの実施の形態は、前述の実施の形態と同様である。
【0049】
図13は、本発明の実施のさらに他の形態の空気ポンプ91の断面図である。この実施の形態は、特に図6〜図12の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。基体60に固定された筒部92と軸線方向に交互に配置された大径筒部93と小径筒部94との間に、可撓性を有する筒状膜95が介在して固定され、こうしてベローズ96が構成される。
【0050】
図14は、図13に示されるベローズ96の一部の拡大断面図である。ベローズ96は、筒部92〜94と筒状の膜95とが個別的に構成されて連結されてもよく、または立体的に成形されて構成されてもよい。
【0051】
図15は、本発明の実施の他の形態のベローズ11の軸線に垂直な断面図である。図1に示されるベローズ11は、円形の軸直角断面を有するけれども、本発明の実施の他の形態では、図15(1)に示されるように正方形または長方形などの矩形であってもよく、図15(2)に示されるように楕円形または卵形であってもよく、さらに図15(3)に示されるように六角形およびその他の多角形であってもよく、本発明の実施のさらに他の形態では、他の断面形状を有していてもよい。
【0052】
図16は、図2に示される駆動制御回路43の具体的な電気的構成を示すブロック図である。設定回路44からは、駆動手段26によってコイル28、すなわちベローズ11に与えられる駆動力に対応する電圧が与えられ、駆動制御手段43の加算回路101に与えられる。ベローズ11の軸線12方向の位置を検出する位置検出器41の出力は、演算器102に与えられ、ベローズ11の軸線12方向の時間変化率が演算して求められ、こうしてベローズ11の速度を表す信号が、関数発生回路103に与えられる。
【0053】
図17は、図16に示される関数発生回路103の特性を示す図である。演算器102から与えられるベローズ11の速度を表す信号が増大するにつれて、加算器101に与えられる出力電圧が、たとえば1次関数で増大される。これによってベローズ11の高速度時における自励振動を抑制し、その速度を、設定回路44で設定した正確な速度にもたらすことができ、ベローズ11、端板13、取付部材27およびコイル28等の移動する構成要素の発振系の安定化を図ることができるようになる。
【0054】
加算回路101の出力は、増幅器104によって増幅され、コイル28に励磁電流が与えられ、コイル28が駆動される。
【0055】
図18は、本発明に関連する実施のさらに他の形態の駆動制御手段43の具体的な電気的構成を示すブロック図である。この実施の形態は、前述の実施の形態に類似する。特にこの実施の形態では、関数発生回路106は、位置検出器41の出力に応答し、ベローズ11の軸線12に沿う伸縮の位置に対応した不所望なばね力を打消すための信号を導出して加算回路101に与える。
【0056】
図19は、関数発生回路106の特性を示す図である。位置検出器41から与えられるベローズ11の軸線12に沿う位置に対応して、関数発生回路106は、ベローズ11が有する位置に対応するばね力を打消す力をコイル28に与えるための出力電圧を、導出して加算回路101に与える。こうしてベローズ11が有するばね力を常に零とし、したがってベローズ11のばね定数を零とし、たとえば非線形のばね定数を有するベローズ11のばね定数を、見かけ上、零とすることができ、または希望する一定の値に設定することができる。したがってベローズ11を駆動手段26によって高い応答速度で制御することができるようになる。
【0057】
図20は本発明に関連する実施のさらに他の形態である空気ポンプ113の構成を簡略化して示す断面図であり、図21は図20の切断面線XXI−XXIから見た断面図である。空気ポンプ113は図1に示す空気ポンプ2に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付し説明を省略する。
【0058】
注目すべきは、空気ポンプ113では永久磁石片29の磁石部材32の外周面およびコイル28の内周面に案内摺動部材114が設けられ、図1に示す空気ポンプ2の案内部材35、軸受37およびカバー38が省略されている点である。
【0059】
さらに詳しく述べると、磁石部材32の外周面には、被覆によって実現される膜状部材114aが設けられ、コイル28の内周面にはベローズ11の軸線12方向に延びる棒状部材114bが周方向に等間隔をあけて複数(3以上本実施の形態では4)設けられる。棒状部材114bの軸線に垂直な断面形状は略台形である。棒状部材114bは、たとえば接着剤によって固定される。膜状部材114aおよび棒状部材114bは案内摺動部材114を構成する。案内摺動部材114は摩擦係数の小さい材料、たとえばテトラフルオロエチレン樹脂(商品名テフロン(登録商標))からなる。膜状部材114aおよび棒状部材114bの半径方向厚さはコイル28が前記空間34の中心に存在するように配置される。
【0060】
これによってコイル28は、偏心することなく円滑にベローズ11の軸線12方向に往復変位駆動することができ、コイル28には変動の少ない電磁力が安定して発生する。また摺動部分の摩擦係数が小さいので、ベローズ11を応答性よく往復変位駆動することができる。本実施の形態のその他の構成は、図1に示す空気ポンプ2の構成と同一である。
【0061】
本実施の形態では、案内摺動部材114が磁石部材32の外周面およびコイル28の内周面に設けられているけれども、案内摺動部材114は永久磁石片29とコイル28との対向する面に設けられればよい。したがって、案内摺動部材114を磁石部材31の内周面およびコイル28の外周面に同様にして設けるように構成してもよい。また、磁石部材31または磁石部材32に膜状部材114aが設けられ、コイル28に棒状部材114bが設けられるように構成されているけれども、磁石部材31または磁石部材32に棒状部材114bを設け、コイル28に膜状部材114aを設けるように構成してもよい。また、案内摺動部材114を構成する膜状部材114aおよび棒状部材114bは2つ1組として設けられているけれども、それらのいずれか一方を前記対向面である磁石部材31の内周面、磁石部材32の外周面、コイル28の内周面および外周面のいずれか1面にのみ設けるように構成してもよい。また棒状部材114bに代わって、円筒状の部材を設けるように構成してもよい。また、本実施の形態の案内摺動部材114を図1に示す実施の形態ばかりでなく、図3,4,6〜15に示す実施の形態に対しても同様に適用してもよい。
【0062】
図22は、本発明に関連する実施のさらに他の形態である空気ポンプ118の構成を簡略化して示す断面図であり、図23は図22の切断面線XXIII−XXIIIから見た断面図である。空気ポンプ118は、図20に示す空気ポンプ113に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。注目すべきは、磁界を発生する永久磁石片119の磁石部材120,121が周方向にそれぞれ分割されている点である。磁石部材120,121は、複数(本実施の形態では4)の分割片120a〜120d,121a〜121dをそれぞれ含み、各分割片は周方向に間隔をあけて設けられる。磁石部材120,121の全体形状はともに大略的に円筒形であり、磁石部材120は磁石部材121の半径方向外方に間隔をあけて同心円状に配置される。磁石部材120,121は、ベローズ11の軸線12の一端部で連結片33を介して連結される。
【0063】
このように、磁石部材120,121がともに分割され、かつ分割片120a〜120d,121a〜121dが相互に周方向に間隔をあけて配置されているので、磁石部材120,121の半径方向に空気通路が形成される。これによって、図23に示すように矢符122方向への空気の出入が可能となり、コイル28の発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0064】
本実施の形態のその他の構成は、図20に示す空気ポンプ113の構成と同一である。また、本実施の形態の永久磁石片119を図20に示す実施の形態ばかりでなく、図1,3,4,6〜15に示す実施の形態に対して同様に適用してもよい。
【0065】
本発明の実施の他の形態では、駆動手段26は、たとえばリニアモータおよびトルクモータなどによって、またはそのほかの構成によってベローズ11を伸縮駆動する構成を有してもよい。図16〜図19の駆動制御手段43は、図3〜図15および図20〜図23の各実施の形態に関連してもまた実施することができる。図7〜図15に関連して述べたベローズの各構成は、呼気制御用空気ポンプ51に関連してもまた同様に実施することができる。
【0066】
本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1)予め定める軸線方向に伸縮可能なほぼ筒状のベローズと、ベローズの軸線方向一端部に連結され、ベローズを囲んで配置され、ベローズの前記一端部を軸線方向に往復駆動する駆動手段と、ベローズの軸線方向他端部が固定される基体と、基体に設けられ、外部の空気をベローズの内部空間に導く給気逆止弁と、基体に設けられ、ベローズの前記内部空間内の空気を患者の吸気として導く吐出逆止弁とを含むことを特徴とする人工呼吸器用空気ポンプ。
【0067】
ほぼ筒状のベローズを、そのベローズを外方で囲む駆動手段によって、ベローズの軸線方向に往復駆動し、給気逆止弁と吐出逆止弁との働きによって患者に肺の換気機能を支援する空気を、吸気として供給することができる。
【0068】
駆動手段は、上述のようにベローズを外方で囲む構成を有するので、ベローズと駆動手段とを組合わせたアセンブリの全体の構成を比較的短くすることができ、小形化が可能である。このような構成は、前述の図1に示される。
【0069】
またベローズと駆動手段とを組合わせたアセンブリの構成を短くすることができるので、駆動手段によって駆動されるベローズの軸線方向に垂直な芯ずれを生じることが抑制される。これによってベローズは駆動手段によってその軸線方向に円滑に伸縮駆動されることができるようになる。
【0070】
(2)予め定める軸線方向に伸縮可能なほぼ筒状のベローズと、ベローズの軸線方向一端部に連結され、ベローズの内部空間に配置され、ベローズの前記一端部を軸線方向に往復駆動する駆動手段と、ベローズの軸線方向他端部が固定される基体と、基体に設けられ、外部の空気をベローズの内部空間に導く給気逆止弁と、基体に設けられ、ベローズの前記内部空間内の空気を患者の吸気として導く吐出逆止弁とを含むことを特徴とする人工呼吸器用空気ポンプ。
【0071】
前述の図3に示されるように、駆動手段はベローズの内部空間に配置されており、したがってベローズと駆動手段とを組合わせたアセンブリの全体を、短く構成し、このことによってもまた小形化が可能である。
【0072】
ベローズの外方または内方に、そのベローズを軸線方向に駆動する駆動手段が設けられ、これによってベローズと駆動手段とを組合わせたアセンブリをできるだけ短くすることができ、構成を小形化することができる。このことは特に在宅介護を行う人工呼吸装置において重要なことであり、取扱いが容易になる。
【0073】
(3)ベローズの前記一端部に連結される一端部を有し、前記ベローズの前記軸線方向に伸縮可能な呼気用ベローズと、前記基体に設けられ、外部の空気を呼気用ベローズの内部空間に導く呼気用給気逆止弁と、前記基体に設けられ、呼気用ベローズの前記内部空間内の空気を、呼気制御用空気として吐出する呼気用吐出逆止弁と、患者の呼気に、呼気用吐出逆止弁からの呼気制御用空気によって大気圧よりも高い気道圧力を患者に加える呼気弁手段とを含むことを特徴とする人工呼吸器用空気ポンプ。
【0074】
前述の図4に示されるように、吸気を患者に供給するベローズに、呼気用ベローズを連結し、この呼気用ベローズによって供給される空気を利用して呼気弁手段によって患者の呼気に与えられる気道圧力を、大気圧よりもわずかに高い圧力とし、適切な呼気を得ることができる。患者に前記ベローズから吸気が供給される気管では、呼気用ベローズ内に外部の空気が吸入され、患者の呼気が患者から排出されるとき、前記ベローズが駆動手段によって伸長され、このとき呼気用ベローズが収縮し、呼気用ベローズから呼気制御用空気が供給されて呼気弁手段によって呼気が大気圧よりも高い気道圧力となるように圧力制御を行うことができる。
【0075】
患者に吸気を供給するベローズには、患者の呼気に大気圧よりも高い気道圧力を与える呼気制御用空気を発生する呼気用ベローズが連結され、これによって駆動手段は呼気制御用空気を得るためにもまた、用いられ、構成の簡略化が図られる。
【0076】
(4)予め定める軸線方向に伸縮可能なほぼ筒状のベローズと、ベローズの軸線方向一端部に連結され、ベローズの前記一端部を軸線方向に往復駆動する駆動手段と、ベローズの軸線方向他端部が固定される基体と、基体に設けられ、外部の空気をベローズの内部空間に導く給気逆止弁と、基体に設けられ、ベローズの前記内部空間内の空気を患者の吸気として導く吐出逆止弁とを含むことを特徴とする人工呼吸器用空気ポンプ。
【0077】
前述の図6に示されるように、駆動手段はベローズの軸線の延長線上に配置されるので、駆動手段がベローズを囲んで配置されるときのように、駆動手段をベローズの直径よりも大きくする必要がない。したがって、駆動手段を小形化することができる。
【0078】
(5)駆動手段は、ベローズの前記一端部に固定されるコイルと、コイルの移動領域内で、ベローズの軸線方向に垂直な磁界を発生し、これによってコイルに電磁力を発生する磁界発生手段とを含むことを特徴とする人工呼吸器用空気ポンプ。
【0079】
駆動手段は、磁界発生手段によって形成された直流磁界内で、コイルに流れる駆動電流に対応した電磁力が得られ、これによってベローズの前記一端部を、正確に変位駆動して、希望する正確な圧力の空気を吸気として供給することができる。このコイルに作用する電磁力は、フレミング左手の法則に従う。
【0080】
ベローズに固定されたコイルに、磁界発生手段によって得られる磁界中で電磁力が作用し、こうしてコイルに供給される電流によってベローズでの駆動力を制御することができるようになり、ベローズの駆動制御が正確であり、容易に可能になる。
【0081】
(6)ベローズの前記一端部を挿通する案内部材が、基体に立設され、この案内部材は、ベローズの軸線上に軸線を有し、またはベローズの軸線を含む一仮想平面内でベローズの軸線に平行な軸線を有することを特徴とする人工呼吸器用空気ポンプ。
【0082】
ベローズが案内部材に沿って変位し、芯ずれを生じることが防がれ、こうして案内部材によってベローズがその軸線方向に円滑に変位することが可能である。これによって患者に呼気を円滑に安定して供給することができるようになる。
【0083】
(7)前記磁界発生手段とコイルとは対向して設けられ、前記磁界発生手段とコイルとの対向する面には、摩擦係数の小さい材料から成る案内摺動部材が設けられることを特徴とする人工呼吸器用空気ポンプ。
【0084】
磁界発生手段とコイルとの対向する面には、案内摺動部材が設けられ、案内摺動部材は摩擦係数の小さい材料から成るので、コイルの芯ずれの発生を防止することができ、さらにコイルを円滑に変位させることができる。
【0085】
(8)前記磁界発生手段は略円筒状の永久磁石片であって、永久磁石片は周方向に分割されていることを特徴とする人工呼吸器用空気ポンプ。
【0086】
永久磁石片が周方向に分割されているので、永久磁石片の半径方向に空気通路が形成される。これによって、空気の出入が可能となり、コイルの発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0087】
(9)ベローズの軸線方向の速度を検出する速度検出手段と、速度検出手段の出力に応答し、検出される速度が高くなるにつれて、駆動手段の駆動力を減少させる駆動制御手段とを含むことを特徴とする人工呼吸器用空気ポンプ。
【0088】
図16および図17に関連して前述されるように、速度検出手段によってベローズの軸線方向の速度を検出し、こうして検出された速度が高いときに、駆動制御手段による駆動手段の駆動力を減少し、これによってベローズの高速度変位時にベローズが自励振動を生じることを防ぐ。これによってベローズを含む可動部分の構成要素によって構成される発振系の安定化を図り、ベローズの軸線方向の変位の速度を、予め定める値に正確に追従させることができるようになる。
【0089】
速度検出手段は、ベローズの軸線方向の位置を検出する位置検出器と、その位置検出器の出力の時間変化率を演算する演算器とを含む構成によって実現されてもよいけれども、本発明の実施の他の形態では、ベローズの速度を直接に検出する構成であってもよく、そのほかの構成であってもよい。
【0090】
ベローズの軸線方向の移動速度が高いとき、駆動手段による駆動力を減少させ、これによってベローズと駆動手段との移動部分の構成要素の自励振動を抑制し、発振系の安定化を図り、希望する速度で正確にベローズを変位駆動することが容易に可能になる。
【0091】
(10)ベローズの軸線方向の位置を検出する位置検出手段と、ベローズの軸線方向の位置に対応した前記軸線方向のばね力を打消すように駆動手段の駆動力を発生する駆動制御手段とを含むことを特徴とする人工呼吸器用空気ポンプ。
【0092】
図18および図19に関連して前述されるように、ベローズの有しているばね定数がほぼ零となるように、位置検出手段によって検出したベローズの軸線方向の位置に対応してベローズが発生するばね力を打消すように駆動手段の駆動力を調整して制御する。こうしてベローズの見かけのばね定数が零となり、こうして高速度の応答性で、駆動手段によってベローズの変位駆動を行うことができるようになる。位置検出手段は、ベローズの軸線方向の位置を検出する構成を有していてもよいけれども、ベローズの軸線方向の速度または加速度を検出する検出器と、その検出器の出力を時間に関して積分してベローズの位置を演算する演算器とを含む構成によって実現されてもよい。
【0093】
また、見かけのばね定数は、零以外の予め定める値となるように、駆動手段の駆動力を、駆動制御手段によって発生するように構成してもよい。
【0094】
ベローズの見かけのばね定数を零などの予め定める値に設定し、これによってベローズを高い応答速度で駆動制御することができるようになり、適切な吸気を患者に与えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に関連する実施の一形態である人工呼吸装置用ポンプ2の構成を簡略化して示す断面図である。
【図2】図1に示される空気ポンプ2を含む人工呼吸装置1の全体の構成を示す系統図である。
【図3】本発明に関連する実施の他の形態の空気ポンプ46の断面図である。
【図4】本発明に関連する実施のさらに他の形態である空気ポンプ50の断面図である。
【図5】図4に示される空気ポンプ50の動作を説明するための図である。
【図6】本発明に関連する実施の他の形態である空気ポンプ71の簡略化した断面図である。
【図7】本発明の実施の一形態である人工呼吸装置用空気ポンプ71の構成を簡略化して示す断面図である。
【図8】図7に示される空気ポンプ71のベローズ11の一部拡大断面図である。
【図9】本発明の実施の他の形態のベローズ11の一部の断面図である。
【図10】本発明に関連する実施の形態の空気ポンプ76の断面図である。
【図11】図10に示されるベローズ77の一部の拡大断面図である。
【図12】本発明に関連する実施のさらに他の形態の空気ポンプ87の断面図である。
【図13】本発明の実施のさらに他の形態の空気ポンプ91の断面図である。
【図14】図13に示されるベローズ96の一部の拡大断面図である。
【図15】本発明の実施の他の形態のベローズ11の軸線に垂直な断面図である。
【図16】図2に示される駆動制御回路43の具体的な電気的構成を示すブロック図である。
【図17】図16に示される関数発生回路103の特性を示す図である。
【図18】本発明に関連する実施のさらに他の形態の駆動制御手段43の具体的な電気的構成を示すブロック図である。
【図19】関数発生回路106の特性を示す図である。
【図20】本発明に関連する実施のさらに他の形態である空気ポンプ113の構成を簡略化して示す断面図である。
【0096】
【図21】図20の切断面線XXI−XXIから見た断面図である。
【図22】本発明に関連する実施のさらに他の形態である空気ポンプ118の構成を簡略化して示す断面図である。
【図23】図22の切断面線XXIII−XXIIIから見た断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 人工呼吸装置
2,46,50,71,76,87,91,113,118 人工呼吸装置用空気ポンプ
9 呼気弁手段
11,53,77,96 ベローズ
13 端板
14,110 基体
14a,14b 基部
16,57 給気逆止弁
21,58 吐出逆止弁
26,47 駆動手段
27 取付部材
28 コイル
29,119 永久磁石片
33 連結片
35 案内部材
37 軸受
38 カバー
41 位置検出器
43 駆動制御手段
44 設定回路
55,55a 連結部材
101 加算回路
102 演算器
103,106 関数発生回路
104 増幅器
114 案内摺動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)予め定める軸線方向に伸縮可能なほぼ筒状のベローズであって、
(a1)円筒状に形成され、可撓性を有する膜と、
(a2)前記膜の内周面に形成され、軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並ぶ複数の第1リングと、
(a3)前記膜の外周面に形成され、第1リングと交互に軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並び、前記第1リングよりも小径に形成される複数の第2リングとを備えるベローズと、
(b)ベローズの軸線方向一端部に連結され、ベローズの前記一端部を軸線方向に往復駆動する駆動手段と、
(c)ベローズの軸線方向他端部が固定される基体と、
(d)基体に設けられ、外部の空気をベローズの内部空間に導く給気逆止弁と、
(e)基体に設けられ、ベローズの前記内部空間内の空気を患者の吸気として導く吐出逆止弁とを含むことを特徴とする人工呼吸装置用空気ポンプ。
【請求項2】
(a)予め定める軸線方向に伸縮可能なほぼ筒状のベローズであって、
(a1)円筒状に形成され、可撓性を有する膜と、
(a2)前記膜に同軸に一体化され、軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並ぶ複数の第1リングと、
(a3)前記膜に同軸に一体化され、第1リングと交互に軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並び、前記第1リングよりも小径に形成される複数の第2リングとを備えるベローズと、
(b)ベローズの軸線方向一端部に連結され、ベローズの前記一端部を軸線方向に往復駆動する駆動手段と、
(c)ベローズの軸線方向他端部が固定される基体と、
(d)基体に設けられ、外部の空気をベローズの内部空間に導く給気逆止弁と、
(e)基体に設けられ、ベローズの前記内部空間内の空気を患者の吸気として導く吐出逆止弁とを含むことを特徴とする人工呼吸装置用空気ポンプ。
【請求項3】
(a)予め定める軸線方向に伸縮可能なほぼ筒状のベローズであって、
(a1)軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並ぶ複数の大径筒部と、
(a2)大径筒部と交互に軸線方向にそれぞれ並ぶとともに軸線方向に間隔あけてそれぞれ並び、大径筒部よりも小径に形成される複数の小径筒部と、
(a3)可撓性を有し、前記大径筒部と前記小径筒部との間に介在され、大径筒部と小径筒部との半径方向の隙間を塞ぐ膜とを備えるベローズと、
(b)ベローズの軸線方向一端部に連結され、ベローズの前記一端部を軸線方向に往復駆動する駆動手段と、
(c)ベローズの軸線方向他端部が固定される基体と、
(d)基体に設けられ、外部の空気をベローズの内部空間に導く給気逆止弁と、
(e)基体に設けられ、ベローズの前記内部空間内の空気を患者の吸気として導く吐出逆止弁とを含むことを特徴とする人工呼吸装置用空気ポンプ。
【請求項4】
ベローズの軸線方向の伸縮速度を検出する速度検出手段と、
速度検出手段の出力に応答し、検出される伸縮速度が高くなるにつれて、駆動手段の駆動力を減少させる駆動制御手段とを含むことを特徴とする請求項1〜3のうちの1つに記載の人工呼吸装置用空気ポンプ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの1つに記載の人工呼吸装置用ポンプと、
吐出逆止弁に接続され、ベローズの内部空間内の空気を患者の吸気として患者に導くための吸気管路と、
患者の呼気を大気放散するための呼気管路と、
前記呼気管路に介在される呼気弁手段とを含むことを特徴とする人工呼吸装置。
【請求項6】
人工呼吸装置用ポンプに用いられ、予め定める軸線方向に伸縮可能なほぼ筒状のベローズであって、
円筒状に形成され、可撓性を有する膜と、
前記膜に同軸に一体化され、軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並ぶ複数の第1リングと、
前記膜に同軸に一体化され、第1リングと交互に軸線方向に間隔をあけてそれぞれ並び、前記第1リングよりも小径に形成される複数の第2リングとを備えることを特徴とするベローズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−21061(P2006−21061A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276370(P2005−276370)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【分割の表示】特願2000−183385(P2000−183385)の分割
【原出願日】平成12年6月19日(2000.6.19)
【出願人】(390010342)川重防災工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】